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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023755
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】混合容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/28 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B65D51/28 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129561
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】新江 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 和則
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA26
3E084AA32
3E084AB05
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB03
3E084CC03
3E084CC05
3E084CC06
3E084DA01
3E084DC03
3E084DC05
3E084DC06
3E084FA09
3E084FD02
3E084GA08
3E084GB21
3E084HA01
3E084HB03
3E084HC02
3E084HC03
3E084KB01
3E084LA25
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
(57)【要約】
【課題】第1剤6aと第2剤7の混合性を向上できる混合容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本体開口17を有した筒状を有する本体収容部16を備える容器本体11と、流出口37を有した筒状を有する蓋収容部を備えた蓋部材と、を備え、蓋収容部36は、第2剤7を収容した状態で流出口37がフィルム38によって閉塞され、本体収容部16が第1剤6aを収容した状態で蓋収容部36が本体開口17にフィルム38が配置された面側から嵌め込まれることで、本体開口17が蓋部材に閉じられ、本体収容部16は、フィルム38を破断するための突片24を備え、突片24は、本体収容部16の内部から本体開口17に向けて延び、突片24の先端面は、相互に交差する2つの方向に延び、当該2つの方向を含む面が本体開口17を含む面と平行な面を含んでいる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体開口を有した筒状を有する本体収容部を備える容器本体と、
流出口を有した筒状を有する蓋収容部を備えた蓋部材と、を備え、
前記蓋収容部は、第2剤を収容した状態で前記流出口がフィルムによって閉塞され、
前記本体収容部が第1剤を収容した状態で前記蓋収容部が前記本体開口に前記フィルムが配置された面側から嵌め込まれることで、前記本体開口が前記蓋部材に閉塞され、
前記本体収容部は、前記フィルムを破断するための突片を備え、
前記突片は、前記本体収容部の内部から前記本体開口に向けて延び、
前記突片の先端面は、相互に交差する2つの方向に延び、当該2つの方向を含む面が前記本体開口を含む面と平行な面を含んでいる
混合容器。
【請求項2】
前記突片の先端面は、前記本体開口と対向する視点から見てくし形形状を有する
請求項1に記載の混合容器。
【請求項3】
前記本体収容部は、前記本体開口を備えた円筒状部と、光学検査の光路に位置する矩形筒状部と、を備え、
前記矩形筒状部は、前記本体収容部の第1底部を備え、
前記円筒状部は、前記矩形筒状部の開口から当該開口の外側に広がる第2底部を備え、
前記突片は、第1破断壁および第2破断壁を備え、
前記第1破断壁は、前記第2底部において、前記蓋収容部の内周面に沿うように立設され、
前記第2破断壁は、前記第2底部において、前記第1破断壁から前記円筒状部の内側に向けて延びるように立設されている
請求項1または2に記載の混合容器。
【請求項4】
前記円筒状部の前記第2底部は、前記矩形筒状部の開口に向けて下がるように傾斜している
請求項3に記載の混合容器。
【請求項5】
前記本体収容部は、前記蓋収容部が嵌め込まれる筒状の本体周壁を備え、
互いに圧接される前記本体周壁の内周面および前記蓋収容部の外周面の少なくとも一方の面は、前記蓋収容部が前記本体周壁の内部に嵌め込まれるときに、前記本体収容部の内部空気を外部に逃がすベント溝を備える
請求項1から4のうち何れか1項に記載の混合容器。
【請求項6】
前記ベント溝は、前記本体開口から、前記突片の先端面よりも前記本体収容部の底部側まで延びる
請求項5に記載の混合容器。
【請求項7】
前記本体周壁は、本体内周壁であって、
前記本体内周壁の外周側は、前記本体内周壁と二重構造を構成する本体外周壁を備え、
前記本体内周壁は、前記蓋収容部が嵌め込まれる周壁であり、
前記本体内周壁と前記本体外周壁との間は、前記蓋収容部が前記本体内周壁に嵌め込まれるときに、前記ベント溝を介して前記本体収容部に通じる溝を備える
請求項5または6に記載の混合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器に収容された流体または半流体を混合させる混合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、二液混合用キャップが記載されている。この二液混合用キャップは、添加液が収容されたサブ容器のシール壁が、キャップ本体の内筒の底壁に設けられている第1のカッターの先端によって破断される構成を有している。添加液は、キャップが取り付けられている本容器に流下し、本容器内の内容液と混合される。ここで用いられている第1のカッターは、上端が先細の十字形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4031276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1のカッターのように、上端が先細の十字形状を有している切断刃は、破断対象のシール壁に突き刺さるようにして破断することはできるものの、広範囲に亘って一度に破断することは困難である。したがって、サブ容器内の添加物が本容器にしっかりと流下し、本容器内の内容液と添加液との混合が確実に行われないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための混合容器は、本体開口を有した筒状を有する本体収容部を備える容器本体と、流出口を有した筒状を有する蓋収容部を備えた蓋部材と、を備え、前記蓋収容部は、第2剤を収容した状態で前記流出口がフィルムによって閉塞され、前記本体収容部が第1剤を収容した状態で前記蓋収容部が前記本体開口に前記フィルムが配置された面側から嵌め込まれることで、前記本体開口が前記蓋部材に閉塞され、前記本体収容部は、前記フィルムを破断するための突片を備え、前記突片は、前記本体収容部の内部から前記本体開口に向けて延び、前記突片の先端面は、相互に交差する2つの方向に延び、当該2つの方向を含む面が前記本体開口を含む面と平行な面を含んでいる。
【0006】
上記構成によれば、相互に交差する2つの方向に延びる先端面がフィルムを突き破るため、蓋収容部の嵌め込みの際に、フィルムのなかで一度に破断される部位が広がり易い。これにより、混合性が向上する。
【0007】
上記混合容器において、前記突片の先端面は、前記本体開口と対向する視点から見てくし形形状を有する構成としてもよい。上記構成によれば、くし形形状を有する先端面は、1つの方向に延びる面部分と当該面部分と異なる方向に延びる他の面部分とを有するため、フィルムのなかで一度に破断される部分を広げることができる。
【0008】
上記混合容器において、前記本体収容部は、前記本体開口を備えた円筒状部と、光学検査の光路に位置する矩形筒状部と、を備え、前記矩形筒状部は、前記本体収容部の第1底部を備え、前記円筒状部は、前記矩形筒状部の開口から当該開口の外側に広がる第2底部を備え、前記突片は、第1破断壁および第2破断壁を備え、前記第1破断壁は、前記第2底部において、前記蓋収容部の内周面に沿うように立設され、前記第2破断壁は、前記第2底部において、前記第1破断壁から前記円筒状部の内側に向けて延びるように立設されている。
【0009】
上記構成によれば、第1破断壁が蓋収容部の内周面に沿う形状を有するため、フィルムのなかで一度に破断される部位を蓋収容部の内周面に沿って広げることができる。第2破断壁が第1破断壁から円筒状部の内側に向けて延びるため、フィルムのなかで一度に破断される部位を蓋収容部の内周面から蓋収容部の内側に向けて広げることができる。そして、突片の先端面によって破断されたフィルムから流出する第2剤を、突片によって、円筒状部の内側に向け、さらに矩形筒状部に向けて誘導できる。これにより、光学検査に用いられる矩形筒状部に混合剤を収容し易くもなる。
【0010】
上記混合容器において、前記円筒状部の前記第2底部は、前記矩形筒状部の開口に向けて下がるように傾斜している構成としてもよい。上記構成によれば、円筒状部の底部が矩形筒状部の開口に向けて下がるように傾斜しているため、蓋収容部から突片に沿って流出した第2剤を矩形筒状部に効率よく誘導できる。
【0011】
上記混合容器において、前記本体収容部は、前記蓋収容部が嵌め込まれる筒状の本体周壁を備え、互いに圧接される前記本体周壁の内周面および前記蓋収容部の外周面の少なくとも一方の面は、前記蓋収容部が前記本体周壁の内部に嵌め込まれるときに、前記本体収容部の内部空気を外部に逃がすベント溝を備える構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ベント溝は、蓋収容部が本体周壁の内側に嵌め込まれる状態で、本体収容部の内部空気を外部に逃がす。これにより、円滑に蓋収容部を本体周壁の内側に嵌め込むことができる。また、蓋収容部が本体周壁の内部に嵌め込まれることに伴い本体収容部が高圧化することを抑えられる。これにより、蓋収容部から第2剤が流出しにくくなることが抑えられる。
【0013】
上記混合容器において、前記ベント溝は、前記本体開口から、前記突片の先端面よりも前記本体収容部の底部側まで延びる構成としてもよい。上記構成によれば、ベント溝は、突片の先端面がフィルムを破断した後も、内部空気を外部に逃がす。これにより、フィルムの破断後に蓋収容部のさらなる嵌め込みが行われても、本体収容部の内圧上昇が抑えられる。
【0014】
上記混合容器において、前記本体周壁は、本体内周壁であって、前記本体内周壁の外周側は、前記本体内周壁と二重構造を構成する本体外周壁を備え、前記本体内周壁は、前記蓋収容部が嵌め込まれる周壁であり、前記本体内周壁と前記本体外周壁との間は、前記蓋収容部が前記本体内周壁に嵌め込まれるときに、前記ベント溝を介して前記本体収容部に通じる溝を備える構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、蓋収容部が本体内周壁に嵌め込まれるとき、本体内周壁の内部空気がベント溝を通じて本体内周壁と本体外周壁との間の溝に流出する。この際、本体収容部の内部空気と共に第1剤や第2剤が漏出するとしても、漏れ出た第1剤や第2剤は、溝に溜まる。これにより、本体収容部の内部空気を逃がしながら本体収容部における内部圧力の上昇を抑えつつも、本体収容部から第1剤や第2剤が漏出することも抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1剤と第2剤の混合性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】混合容器の使用方法を説明する斜視図である。
図2図1に示す混合容器の斜視図である。
図3図2に示す混合容器の容器本体の平面図である。
図4図3の4-4断面斜視図である。
図5図2に示す混合容器の蓋部材を表面側から見た斜視図である。
図6図2に示す混合容器の蓋部材を裏面側から見た斜視図である。
図7図2に示す混合容器において、蓋部材で容器本体の本体開口を閉める前の状態を示す断面図である。
図8図7の続きであって、蓋部材で容器本体の本体開口を閉めた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明が適用された混合容器について図面を参照して説明する。
〔診断キット〕
図1は、本発明が適用された混合容器が使用される体外診断用医薬品である診断キットである。この診断キットは、容器1と、容器1を閉塞するノズルキャップ2と、混合容器3とを備えている。容器1には、薬剤、生理食塩水などの第1剤6が貯留されている。そして、第1剤6が貯留された状態でアルミシールなどのフィルム1aによって閉塞されている。ノズルキャップ2は、容器1の開口をねじ作用によって閉塞するキャップ部2aと、キャップ部2aに突設されたノズル部2bとを備えている。
【0019】
検査にあたっては、フィルム1aが剥がされた状態で、スワプなどで血液、鼻咽頭ぬぐい液などの検体を採取して、当該スワブを第1剤6に浸漬する。次いで、容器1の開口をノズルキャップ2で閉塞する。また、検体を、第1剤6を貯留した容器1に滴下する。なお、検体としては、水質・菌・ドラッグ・食物アレルゲン検査の検体の場合がある。
【0020】
混合容器3は、容器1から検体が混合された第1剤6aが注入される容器本体11と、第2剤7を貯留している蓋部材31とを備えている。容器本体11には、容器1に貯留されている第1剤6aがノズル部2bを通じて注入される。容器本体11は、光学検査装置4(図2参照)に装着され、測定光の光路中におかれ、測定光が照射されることで第1剤6aのブランク値が測定される。この後、容器本体11は、光学検査装置4から取り外される。そして、図2に示すように、容器本体11は、蓋部材31によって閉塞され、これと同時に、蓋部材31に貯留されている薬液などの第2剤7が容器本体11内に流下される。これにより、容器本体11内において、第1剤6aと第2剤7とが混合される。そして、再度、混合容器3は、光学検査装置4に再度装着され、測定光が照射されることで、混合剤8(図2参照)の特性値が測定される。
【0021】
〔混合容器〕
図2に示すように、混合容器3は、容器本体11と、蓋部材31とを備えている。
容器本体11は、蓋部材31で閉塞されていない状態で、容器1から第1剤6aが注入される。第1剤6aが注入された後に、容器本体11は、蓋部材31によって閉塞される。蓋部材31は、第2剤7を貯留している。容器本体11は、蓋部材31によって閉塞されたとき、これと同時に、第2剤7が容器本体11に対して流下し、第1剤6aと第2剤7とが混合された混合剤8が生成される。
【0022】
容器本体11に対しては、本体開口17から第1剤6aが注入され、さらに、蓋部材31によって閉塞するという作業が行われる。したがって、容器本体11は、自立させるための支持部と光学検査装置4の装着部に装着するための案内部として機能する支持片21を備えている。さらに、混合容器3は、第1剤6aと第2剤7とを混合するため揺動される。そこで、蓋部材31は、容器本体11に対しては、閉塞時、混合剤8が漏れないようにしっかりと装着される。
【0023】
〔容器本体〕
図3および図4に示すように、容器本体11は、アクリル樹脂や、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの透光性に優れた透光性樹脂または透明樹脂やガラスなどによる成形品である。なお、少なくとも、後述の測定光が照射される矩形筒状部15の幅面15bが透光性を有する材料で形成されていればよい。
【0024】
容器本体11は、本体周壁である本体内周壁12と、本体外周壁13とを備えている。また、容器本体11は、上部と下部に区画されており、上部は、円筒状部14を備え、下部は、矩形筒状部15とを備えている。上部は、本体内周壁12と本体外周壁13による二重構造の壁によって構成されている。円筒状部14は、本体内周壁12の内側に構成された空間である。また、円筒状部14と矩形筒状部15とは、あわせて本体収容部16を構成する。
【0025】
容器本体11は、その上面が本体開口17により構成されている。本体開口17は、本体外周壁13の内側に構成された開口である。本体開口17に臨む本体内周壁12および本体外周壁13のなかでは、本体内周壁12の先端の方が本体外周壁13の先端よりも高い位置に位置する。さらに、本体内周壁12と本体外周壁13との間の空間は、有底の環状の溝18が構成されている。本体外周壁13は、上部と下部に亘る一連の外周壁であって、上部では、円筒形状を有し、下部では、矩形筒状部15を構成している。また、本体外周壁13は、上部と下部の間に傾斜部22を備えている。
【0026】
本体外周壁13の先端は、相対する位置において、蓋部材31を結合するための一対の結合片19を備えている。一対の結合片19の間には、蓋部材31の一対の係止片35が挿入され、一対の係止片35は、結合片19と係止される。これにより、蓋部材31は、容器本体11に対して本体開口17を閉塞した状態で一体化される。
【0027】
本体外周壁13の下部は、矩形筒状部15が構成される部分である。矩形筒状部15は、相対する長さ面15aと、相対する幅面15bとを備えている(図2参照)。一対の幅面15bは、一対の長さ面15aの間に位置する面であって、長さ面15aより小面積の面である。幅面15bと長さ面15aとがなす各コーナには、支持片21を備えている。支持片21は、幅面15bに対して垂直であって、かつ、上下方向に延びている。支持片21は、矩形筒状部15の底部(第1底部)の下側に隙間を構成するように矩形筒状部15の下方に突出している。すなわち、4本の支持片21の下端は、支持脚となっており、同じ高さである。
【0028】
相対する長さ面15aの内で一方の長さ面15aには、位置決め片21aを備えている。位置決め片21aも上下方向に延びる突片であって、その下端は、支持片21の下端と同じ高さである。支持片21は、光学検査装置4の装着部に装着する際、装着部の案内レールに係合することで案内部としても機能する。位置決め片21aは、装着部の凹溝に係合することで装着位置の位置決めとして機能するとともに、装着部に対する誤挿入防止部としても機能する。矩形筒状部15の一対の幅面15bは、装着部に装着された際,測定光が照射される面となるため、支持片21や位置決め片21aは設けず、平坦で透光性に優れた面で構成されている。
【0029】
本体外周壁13において、上部と下部との境界部分は、外側から内側に向って下る傾斜した傾斜部22となっている。傾斜部22の上面でもある内面は、円筒状部14の底部(第2底部)を構成する。そして、傾斜部22の内面で囲まれた開口は、矩形筒状部15の上部開口であって、円筒状部14と繋ぐ。
【0030】
容器本体11の内側は、傾斜部22の内面に本体内周壁12が立設され、本体内周壁12は、内側に円筒状部14を構成している。本体内周壁12の内面は、上下方向に延びる有底の直線溝で構成されたベント溝23を備えている。ベント溝23は、矩形筒状部15を構成する一対の幅面15bの上側に設けられている。ベント溝23は、相対する位置に、複数本ずつ設けられている(本実施形態では2本ずつ)。ベント溝23の上端は、本体内周壁12の上端に位置し、ベント溝23の下端は、本体内周壁12の基端に位置する。ベント溝23は、蓋部材31によって本体開口17が閉塞された状態において、本体開口17から突片24の先端面よりも本体収容部16の底部側まで延びている。蓋部材31の蓋収容部36が円筒状部14に嵌め込む際に、ベント溝23は、圧縮される本体収容部16の空気を溝18へと排気する。
【0031】
傾斜部22には、本体内周壁12のさらに内側に、一対の突片24が設けられている。一対の突片24は、矩形筒状部15を構成する一対の長さ面15aの上側に設けられている。一対の突片24の各々は、本体開口17と対向する視点から見てくし形形状を有している。各突片24は、傾斜部22から本体開口17に向けて延びており、第1破断壁24aと第2破断壁24bとを備えている。
【0032】
第1破断壁24aは、第2底部を構成する傾斜部22において、本体内周壁12よりも内側であって、かつ、本体内周壁12に対して離間して立設された円弧壁である。第2破断壁24bは、傾斜部22において、第1破断壁24aから円筒状部14の内側に向けて直線状に延びるように立設されている。第1破断壁24aの先端面および第2破断壁24bの先端面は、相互に交差する2つの方向に延び、当該2つの方向を含む面が本体開口17を含む面と平行な面を含んでいる。本実施形態での先端面は、面一の平面で構成されている。すなわち、第1破断壁24aの先端面および第2破断壁24bの先端面は、高さが揃っている。
【0033】
第1破断壁24aの先端および第2破断壁24bの先端は、本体内周壁12および本体外周壁13の先端よりも低い高さである。すなわち、突片24の先端面の位置は、ベント溝23の下端よりも本体開口17に近い。本体内周壁12と一対の突片24の間には、蓋部材31の蓋収容部36を構成する蓋筒壁33が挿入される。突片24の先端面は、本体開口17から蓋収容部36が嵌め込まれるとき、本体収容部16のなかでフィルム38と最初に接する部分であり、フィルム38を破断するための部分である。
【0034】
容器本体11の中で、本体開口17に対して最も下側に位置するのが矩形筒状部15である。矩形筒状部15は、円筒状部14の下方に位置し、かつ、円筒状部14と連続する空間である。矩形筒状部15の底部(第1底部)は、本体収容部16の底部でもある。矩形筒状部15の底部は、一対の幅面15bの間の中央であって、一対の長さ面15aと平行に延びる底部中央を最深部とし、底部中央から長さ面15aに連続する曲面で構成されている。矩形筒状部15の内部には、蓋部材31が本体開口17を開放された状態で容器1から注入された第1剤6aが貯留される。さらに、本体開口17が蓋部材31で閉塞されたときには、蓋部材31の蓋収容部36から流下した第2剤7が注入される。すなわち、矩形筒状部15の内部には、第1剤6aと第2剤7の混合剤8が貯留される。
【0035】
円筒状部14と矩形筒状部15との間に位置する傾斜部22は、円筒状部14の底部(第2底部)を構成し、第2剤7が矩形筒状部15の方向へ流れ易くする。そして、矩形筒状部15では、第1剤6aと第2剤7とが混合される。さらに、第1剤6aまたは混合剤8が貯留された状態において、光学検査装置4の装着部に装着されたときに、矩形筒状部15を構成する幅面15bには、幅面15bに対して測定光が照射される。矩形筒状部15は、装着部における測定光の光路に位置される。
【0036】
〔蓋部材〕
図5および図6に示すように、蓋部材31は、蓋板32と、蓋筒壁33と、挿入壁34とを備え、本体開口17を閉塞する。蓋部材31は、容器本体11と同様な樹脂材料またはガラスなどで成形された成形品である。
【0037】
蓋板32は、円形の板体であって、外径が本体外周壁13の外径よりも若干大きい。蓋板32の縁部であって相対する位置には、容器本体11の結合片19に係止される一対の係止片35を備えている。一対の係止片35は、先端に、外方に向って突出した係止爪35aを備えている。一対の係止片35は、一対の結合片19の間に若干内側に撓みながら挿入され、弾性復帰することで係止爪35aが結合片19に係止される。
【0038】
蓋筒壁33は、円筒壁であって、容器本体11における本体内周壁12の内側に嵌め込まれる。蓋筒壁33の内側は、蓋収容部36を構成する。蓋収容部36は、蓋板32を底部とした有底の凹部であって、第2剤7が収容される。蓋筒壁33の高さは、蓋部材31が本体開口17を閉塞した状態において、蓋筒壁33の筒端が本体内周壁12の基端より若干上側に位置する高さとされる。また、蓋筒壁33の筒端の角は、周回方向に凹部33aを備えている。そして、凹部33aの間の最も高い先端面がフィルム38の固着面となる。蓋筒壁33の筒端は、第2剤7の流出口37を構成する。
【0039】
蓋筒壁33の筒端は、流出口37を閉塞するフィルム38が配置される。フィルム38は、アルミシールや樹脂シールである。フィルム38は、流出口37を閉塞するに足る円形形状を有している。フィルム38の外周縁にバリなど形成されてしまうことがある。蓋筒壁33は、本体内周壁12の内側に嵌め込まれる際に、バリが蓋筒壁33の外周面と本体内周壁12の内周面との間に挟まって、嵌め込みの妨げとなるおそれがある。凹部33aは、嵌め込みの際におけるバリの逃げとなる。これにより、フィルム38の外周縁にバリがあっても、蓋筒壁33は、本体内周壁12の内側に嵌め込むことが可能となる。
【0040】
なお、フィルム38は、蓋筒壁33の筒端であって、凹部33aが形成されていない先端面に熱溶着、接着剤などによって固着されている。フィルム38は、突片24による破断の際にも、フィルム38の固定部分が突片24によって引っ張られることで剥がれることはない強度で固着されている。
【0041】
蓋板32の裏面であって蓋筒壁33の外周側には、蓋筒壁33に対して離間して挿入壁34が立設されている。挿入壁34は、蓋筒壁33よりも低い環状壁である。挿入壁34は、溝18に挿入される。挿入壁34の先端は、蓋部材31が本体開口17を閉塞した状態において、突片24の先端より若干下側に位置する高さとされる。また、挿入壁34の高さは、先端が溝18の底部に接触しない高さとされる。
【0042】
挿入壁34の基端は、先端側より肉厚の肉厚部34aである(図7参照)。すなわち、挿入壁34の外周面は、その外径が肉厚部34aによって基端よりも先端側が縮径する形状を有している。これにより、挿入壁34は、溝18に対して圧入される。挿入壁34は、基端の肉厚部34aを厚くしたり、先端側に延ばすほど、蓋部材31が本体開口17から外れにくくできる。
【0043】
蓋筒壁33と挿入壁34との間は、有底の蓋環状溝39が構成される。蓋部材31が本体開口17を閉塞した状態において、蓋環状溝39には、本体内周壁12が挿入される。そして、本体内周壁12の先端は、蓋環状溝39の底部に突き当てられる。すなわち、蓋環状溝39は、蓋部材31が容器本体11への押され過ぎによる破損や第1剤6a、第2剤7、混合剤8などの漏れを抑制する。
【0044】
〔実施形態の作用〕
図7に示すように、容器本体11の本体開口17が開放された状態において、容器本体11には、容器1から第1剤6aが注入される。第1剤6aは、本体収容部16に注入されると、傾斜部22の内面を伝って、矩形筒状部15に流下し貯留される。このとき、容器本体11は、手で持って作業を行ってもよいし、机上において、注入作業を行ってもよい。容器本体11は、支持片21が支持脚として機能するので、机上に安定して置くことができる。
【0045】
体外診断では、まず、第1剤6aが貯留された状態で、容器本体11が光学検査装置4の装着部に装着される。容器本体11は、矩形筒状部15側が装着部への挿入端となる。容器本体11の装着にあたっては、支持片21が装着部の案内レールに係合されて挿入される。容器本体11は、位置決め片21aが装着部の凹溝に係合されることで、正規な状態で装着部に位置決めされて装着される。
【0046】
装着部では、矩形筒状部15が測定光の光路中に配置され、測定光は、矩形筒状部15の幅面15bに対して照射される。光学検査装置4は、これにより、第1剤6aのブランク値を測定する。
【0047】
この後、容器本体11は、装着部より取り出される。次いで、容器本体11は、本体開口17を閉塞するように蓋部材31が取り付けられる。具体的に、蓋部材31は、フィルム38で閉塞されている蓋収容部36を挿入側にして、蓋収容部36が本体内周壁12の内側に構成された円筒状部14に嵌め込まれるように押し込まれる。すると、最初に、第1破断壁24aと第2破断壁24bがフィルム38に接触しフィルム38が破断される。第1破断壁24aと第2破断壁24bとは、先端面が互に交差する2つの方向に延びているので、フィルム38のなかで一度に破断される部位が広くなる。
【0048】
そして、第1破断壁24aが蓋収容部36を構成する蓋筒壁33の内周面に沿う形状を有するため、フィルム38のなかで一度に破断される部位を蓋収容部36の内周面に沿って広げることができる。また、第2破断壁24bが第1破断壁24aから円筒状部14の内側に向けて延びるため、フィルム38のなかで一度に破断される部位を蓋収容部36の内周面から蓋収容部36の内側に向けて広げることができる。
【0049】
図8に示すように、蓋部材31は、本体内周壁12の先端が蓋環状溝39の底部に突き当たるまで嵌め込まれる。蓋筒壁33は、本体内周壁12の内側に対して圧入されることになる。このため、蓋筒壁33が挿入されるほど本体収容部16の内部圧力が高まる。本体内周壁12のベント溝23は、蓋収容部36が円筒状部14の内側に圧接されながら嵌め込まれる過程で、本体収容部16の内部空気を外部に逃がす。これにより、円滑に蓋収容部36を円筒状部14の内側に嵌め込むことができる。また、蓋収容部36が円筒状部14の内部に嵌め込まれることに伴い本体収容部16が高圧化することを抑えられる。これにより、蓋収容部36から第1剤6a、第2剤7、混合剤8などが流出しにくくなることを抑えることができる。この際、本体収容部16の内部空気と共に第1剤6a、第2剤7、混合剤8などが漏出するとしても、漏れ出た剤は、溝18に溜まる。
【0050】
容器本体11の結合片19には、蓋部材31の係止片35が係止される。これにより、蓋部材31が本体開口17を閉塞した状態がロックされる。
突片24の先端面によって破断されたフィルム38から流出する第2剤7は、第1破断壁24aおよび第2破断壁24bによって、円筒状部14の内側に向け、さらに矩形筒状部15に向けて誘導できる。これにより、光学検査に用いられる矩形筒状部15に混合剤8を貯留し易くなる。
【0051】
かくして、容器本体11に対して蓋部材31の取付が完了すると、再度、混合容器3は、光学検査装置4の装着部に装着される。そして、装着部では、矩形筒状部15が測定光の光路に配置され、測定光は、矩形筒状部15の幅面15bに対して照射される。これにより、光学検査装置4は、混合剤の特性値を測定することができる。
【0052】
〔実施形態の効果〕
以上のような混合容器3は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)相互に交差する2つの方向に延びる突片24の先端面がフィルム38を突き破るため、蓋収容部36の嵌め込みの際に、フィルム38のなかで一度に破断される部位が広がり易い。これにより、混合性を向上できる。
【0053】
(2)突片24において、くし形形状を有する先端面は、1つの方向に延びる面部分と当該面部分と異なる方向に延びる他の面部分とを有するため、フィルム38のなかで一度に破断される部分を広げることができる。
【0054】
また、突片24は、くし形形状を有しており、パンチャーのように円筒形状の切断刃ではないので、フィルム38の一部が蓋筒壁33の固着されたままとなる。したがって、フィルム38が矩形筒状部15の混合剤8内に脱落し、測定を阻害することを防ぐことができる。
【0055】
(3)突片24において、第1破断壁24aが蓋収容部36を構成する蓋筒壁33の内周面に沿う形状を有するため、フィルム38のなかで一度に破断される部位を蓋筒壁33の内周面に沿って広げることができる。第2破断壁24bが第1破断壁24aから蓋筒壁33の内側に向けて延びるため、フィルム38のなかで一度に破断される部位を蓋筒壁33の内周面から蓋筒壁33の内側に向けて広げることができる。そして、突片24の先端面によって破断されたフィルム38から流出する第2剤7を、突片24によって、円筒状部14の内側に向け、さらに矩形筒状部15に向けて誘導できる。これにより、光学検査に用いられる矩形筒状部15に混合剤8を収容し易くもなる。
【0056】
(4)傾斜部22の内面である円筒状部14の第2底部が矩形筒状部15の開口に向けて下がるように傾斜している。したがって、蓋収容部36から突片24に沿って流出した第2剤7を矩形筒状部15に効率よく誘導できる。
【0057】
(5)ベント溝23は、蓋収容部36が本体内周壁12の内側に圧接されながら嵌め込まれる状態で、本体収容部16の内部空気を外部に逃がす。これにより、円滑に蓋収容部36を本体内周壁12の内側に嵌め込むことができる。また、蓋収容部36が本体内周壁12の内部に嵌め込まれることに伴い本体収容部16が高圧化することを抑えられる。これにより、蓋収容部36から第2剤7が流出しにくくなることが抑えられる。
【0058】
(6)ベント溝23は、突片24の先端面がフィルム38を破断した後も、内部空気を外部に逃がす。これにより、フィルム38の破断後に蓋収容部36のさらなる嵌め込みが行われても、本体収容部16の内部圧力の上昇が抑えられる。そして、第2剤7の表面張力などの作用によって蓋収容部36の内部に第2剤7が留まり易い場合であっても、本体収容部16の中に第2剤7を流し出し易くもなる。
【0059】
(7)蓋収容部36が本体内周壁12に嵌め込まれるとき、本体内周壁12の内部空気がベント溝23を通じて本体内周壁12と本体外周壁13との間の環状の溝18に流出する。この際、本体収容部16の内部空気と共に第1剤6aや第2剤7が漏出するとしても、漏れ出た薬罪などは、溝18に溜まる。これにより、本体収容部16の内部空気を逃がしながら本体収容部16における内部圧力の上昇を抑えつつも、本体収容部16から薬剤などが漏出することも抑えられる。
【0060】
なお、混合容器3は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・ベント溝23は、蓋収容部36を構成する蓋筒壁33の外周面に設けるようにしてもよい。ベント溝23は、本体内周壁12の内周面と蓋筒壁33の外周面の両方に設けてもよいし、いずれか一方の面設けるようにしてもよい。
【0061】
・溝18は、本体内周壁12と本体外周壁13の間に連続した環状の溝でなくてもよい。例えば、溝18は、同心の円弧溝が周回方向に間欠的に複数設けられる構成であってもよい。この場合、ベント溝23の上端に対応する位置に少なくとも設ければよい。
【0062】
・容器本体11の上部において、本体外周壁13を省略し、溝18を省略してもよい。この場合、ベント溝23からの内部空気などは、外方に流出されることになる。
・ベント溝23の下端は、突片24の高さが低い場合、突片24の先端面よりも上側に位置していてもよい。
【0063】
・ベント溝23を省略してもよい。この場合、蓋板32において、蓋筒壁33の内側の領域および/または蓋環状溝39の底部に、ベント溝23に代わるベント孔となる貫通孔を設けてもよい。
【0064】
・容器本体11からは、傾斜部22を省略してもよい。この場合、容器本体11は、円筒形状となる。そして、容器本体11の上部は、二重構造の壁ではなく、本体内周壁12だけで構成してもよい。
【0065】
・突片24において、第2破断壁24bは、第1破断壁24aから2本または1本、第1破断壁24aとは異なる方向に延びていてもよい。また、第2破断壁24bは、第1破断壁24aから第1破断壁24aとは異なる方向に4本以上延びていてもよい。
【0066】
・第1破断壁24aは、本体内周壁12または蓋筒壁33に沿う円弧形状でなくてもよい。例えば、第1破断壁24aは、直線形状や波線形状であってもよい。第2破断壁24bは、直線形状ではなく、円弧形状や波線形状を有していてもよい。
【0067】
・突片24は、基端から先端に至るまで一定厚さの板でなくてもよい。例えば、突片24は、先端面が面一であれば、先端よりも基端の方が厚くてもよいし、基端よりも先端の方が厚くてもよい。
【0068】
・突片24の先端面は、相互に交差する2つの方向に延び、当該2つの方向を含む面が本体開口17を含む面と平行な面を含んでいるのであれば、一部に突起が設けられていてもよいし、凹部が設けられていてもよい。
【0069】
図1において、容器1を用いず、本体開口17をフィルムで閉塞することで、容器本体11に第1剤6を貯留しておき、使用時、当該フィルムを剥がし、検体などを容器本体11に加えるようにしてもよい。
【0070】
・第1剤6および第2剤7は、液体の他、粉体、ゲル状体、顆粒体などの半流体であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
3…混合容器
6,6a…第1剤
7…第2剤
8…混合剤
11…容器本体
12…本体内周壁
13…本体外周壁
14…円筒状部
15…矩形筒状部
16…本体収容部
17…本体開口
18…溝
21…支持片
21a…位置決め片
22…傾斜部
23…ベント溝
24…突片
24a…第1破断壁
24b…第2破断壁
31…蓋部材
32…蓋板
33…蓋筒壁
34…挿入壁
36…蓋収容部
37…流出口
38…フィルム
39…蓋環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8