(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023773
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】センサ用電極
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G01B7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129592
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106817
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 みふね
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴行
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA49
2F063DA02
2F063HA04
2F063HA10
2F063HA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】柔軟性を有し複雑な形状の物品の表面に追従させることができ、また折れ曲がってもスイッチとして機能することができ、さらに高いパターン精度及びパターン自由度を有する新規なタッチセンサを提供する。
【解決手段】絶縁層3と、絶縁層3の両側に配置される2層の導電部を有する導電材層2,4とを含み、導電材層2,4のうち少なくとも1層を、例えば導電糸を用いた二重編みからなる高密度組織の導電性編物を所望の形状に形成した導電部のみで構成される導電性布帛層2として、タッチセンサ用電極を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層の両側に配置される2層の導電部を有する導電材層とを含む積層複合体で構成され、前記導電材層のうち少なくとも1層は導電部のみで構成される導電性布帛層である、センサ用電極。
【請求項2】
前記導電性布帛層が、導電糸を用いた導電性編物を所望の形状に形成した導電部のみで構成される、請求項1記載のセンサ用電極。
【請求項3】
前記導電性編物が、金属分布面積率が60%以上の高密度組織で構成されている、請求項2記載のセンサ用電極。
【請求項4】
前記導電材層が、前記導電性布帛層と導電パターンが形成された基材層とを含む、請求項1~3のいずれかに記載のセンサ用電極。
【請求項5】
前記導電性布帛層が支持体上に形成されている、請求項1~4のいずれかに記載のセンサ用電極。
【請求項6】
前記支持体が布帛からなり、且つその片側に熱可塑性樹脂層が形成されている、請求項5記載のセンサ用電極。
【請求項7】
厚みが1.5mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載のセンサ用電極。
【請求項8】
真空成形により形成される、請求項1~7のいずれかに記載のセンサ用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ用電極及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、導電糸のみからなる導電性布帛層を含む積層複合体からなる、高いパターン精度及びパターン自由度を有するセンサ用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の発展に伴い、近年、タッチセンサを採用したパソコンやテレビ等の大型電子機器、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、タブレット、電子辞書等の小型電子機器、OA・FA機器等の表示機器が普及している。
【0003】
タッチセンサは通常、タッチパネルのディスプレイ表面に設けられる。ディスプレイに表示されているボタン等のオブジェクトの位置にスタイラスや指等をタッチ(接触)すると、その位置がタッチセンサにより検出される仕組みを備えている。そのため、ユーザは、例えばキーボードやマウスを用いた従来方法と比べ、より直感的に操作を行うことができる。
【0004】
タッチセンサの方式としては、抵抗膜方式、電磁誘導方式など、いくつかの方式が提案され、また実用化されている。それらのタッチセンサの方式の一つに静電容量方式と呼ばれるものがある。静電容量方式のタッチセンサは、通常、高周波電圧がかけられた導電膜を備えている。ユーザが例えば指を導電膜のいずれかの位置に触れると、その位置において導通が生じ、電流が流れる。その電流の流れを検出することで、タッチされた位置(タッチ位置)の特定が行われる。
【0005】
静電容量方式のタッチセンサとしては、現在、表面型と呼ばれる方式と、投影型と呼ばれる方式が実用化されている。表面型においては、例えば導電膜の四隅の各々に配置された電極に対し電圧がかけられる。ユーザの指が導電膜のいずれかの位置にタッチされると、電極と指との間に電流が流れる。四隅の各々の電極と指との間の抵抗値の違いにより、それらの電極と指との間を流れる電流量に差が生じる。その差に基づき、タッチ位置の特定が行われる。
【0006】
一方、投影型は、マトリックス状の電極層が形成された支持基板を保護用の絶縁性樹脂で被覆した構成である。ユーザの指が導電膜のいずれかの位置にタッチされると、タッチされた位置を中心とする領域の電極の静電容量が変化する。その変化を制御ICが各々の電極に関し検出することで、タッチされた位置の中心点の特定が行われる。
【0007】
上記のように、静電容量方式のタッチセンサにおいては、ユーザは電動膜に直接指を触れることで端末装置に対する入力操作を行うことができるため、例えば専用の電子ペンを要する電磁誘導方式等のタッチセンサと比較し、より手軽である。さらに、投影型の静電容量方式によるタッチセンサは、複数点において同時にタッチが行われた際、それらの複数点の各々の位置を検出することができるため、複数の指を用いた様々な操作が可能である。そのような利便性により、今般急速に普及しているスマートフォン(携帯電話機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant))やパッド型PCにおいては、投影型の静電容量方式のタッチパネルが広く採用されている。
【0008】
タッチパネル等のパネル型デバイスに加え、近年、複雑な形状を有する物品の表面などの自由曲面に追随することができるセンサが提案されている。例えば、導電糸を織り込んだ布を使用したタッチセンサ(特許文献1;特開2006-234716号公報)や、導電性繊維を織り込んだ導電性織物をタッチセンサとして使用するタッチセンサ装置(特許文献2;特開2011-102457号公報)などが提案されている。また、例えば特許文献3(特開2013-206315号公報)のように、合成樹脂フィルムを基材とするフィルム状タッチパネルセンサも提案されている。
【0009】
しかしながら、導電性繊維を用いた特許文献1のタッチセンサではパターンの自由度が低く、また製造しにくいといった欠点を有する。また、感度を高めにくい可能性がある。導電糸と絶縁糸を用いてパターン状に織り編みされた導電材を用いた特許文献2のタッチセンサ装置では、直線以外のパターン形成は困難であるため、用途が限定される。加えて、目曲がりや収縮等によりパターン精度も低くなりセンサ精度が安定しない。更に、合成樹脂フィルムを基材とする特許文献3のタッチセンサは柔軟性や風合いに欠けるという欠点を有する。
【0010】
布帛に近い柔軟性を有し、複雑な形状の物品の表面に張り付けることができ、折れ曲がっていてもスイッチとして機能し得るタッチセンサ装置の提供を目途として、本願発明者らはこれまでに、繊維質基材とウレタン樹脂層とからなる積層体の間にタッチセンサを構成する電極部を備えた複合材を提案した(特許文献4;特願2016-003128)が、さらに高いパターン精度及びパターン自由度を有するタッチセンサ及びそれに用いるセンサ用電極の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006-234716号公報
【特許文献2】特開2011-102457号公報
【特許文献3】特開2013-206315号公報
【特許文献4】特願2016-003128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、柔軟性を有し複雑な形状の物品に追従させることができ、また折れ曲がってもスイッチとして機能することができ、さらに高いパターン精度及びパターン自由度を有する、タッチセンサ等に好適に使用できる新規なセンサ用電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討した結果、電極を構成する導電層の少なくとも1層を導電部のみからなる導電性布帛とすることにより、パターンの寸法精度及び自由度が格段に高まることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示すセンサ用電極に関する。
(1)絶縁層と、該絶縁層の両側に配置される2層の導電部を有する導電材層とを含む積層複合体で構成され、前記導電材層のうち少なくとも1層は導電部のみで構成される導電性布帛層である、センサ用電極。
【0015】
(2)前記導電性布帛層が、導電糸を用いた導電性編物を所望の形状に形成した導電部のみで構成される、(1)記載のセンサ用電極。
(3)前記導電性編物が、金属分布面積率が60%以上の高密度組織で構成されている、(2)記載のセンサ用電極。
【0016】
(4)前記導電材層が、前記導電性布帛層と導電パターンが形成された基材層とを含む、(1)~(3)のいずれかに記載のセンサ用電極。
(5)前記導電性布帛層が支持体上に形成されている、(1)~(4)のいずれかに記載のセンサ用電極。
【0017】
(6)前記支持体が布帛からなり、且つその片側に熱可塑性樹脂層が形成されている、(5)に記載のセンサ用電極。
(7)積層複合体の厚みが1.5mm以下である、(1)~(6)のいずれかに記載のセンサ用電極。
(8)真空成形により形成される、(1)~(7)のいずれかに記載のセンサ用電極。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサ用電極は、導電部のみで構成される導電性布帛を任意の形状にカットしてパターン形成できる導電材層を含むため、パターンの寸法精度を高めることができる。カットしてパターン形成する方法を用いれば、電極のパターン形状の自由度を高めることも容易となる。また本発明のセンサ用電極は、その厚みを薄くすることができるため、より厚みの薄いタッチセンサを提供することができる。さらに、真空成形を可能とすることもできる。
【0019】
本発明のセンサ用電極は各種タッチセンサに有用であり、本発明のセンサ用電極を用いたタッチセンサは、各種スイッチとして広範囲の利用可能性がある。一般の合成皮革等と比べても遜色のない柔軟性を備えているので、複雑な形状の物品の表面に追従させることができ、折れ曲がっていてもスイッチとして機能し得る。よって、自動車、航空機、列車などの内装品、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのカバー等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【
図6】本発明のセンサ用電極の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のセンサ用電極は、絶縁層と、該絶縁層の両側に配置される2層の導電部を有する導電材層とを含む積層複合体で構成され、前記導電材層のうち少なくとも1層は導電部のみで構成される導電性布帛層である。
【0022】
1.導電材層
(1)導電部のみで構成される導電性布帛層
積層複合体において、絶縁層の両側に配置される2層の導電材層のうち、少なくとも一層は、導電部のみで構成される導電性布帛層である。この導電性布帛層における導電部は、導電糸を用いた導電性編物で形成されるのが好ましい。
【0023】
(i)導電糸
導電糸としては、金属細線、導電性繊維、導電性繊維からなるフィラメント等が挙げられる。
金属細線に用いられる金属としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ等が挙げられる。細線の太さは、好ましくは50~200dtex程度である。
【0024】
導電性繊維としては、導電性ポリマーからなる繊維、金属繊維、炭素繊維等が挙げられる。導電性ポリマーの具体例としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)等が挙げられる。導電性繊維の太さ(単繊度)は特に限定されないが、好ましくは5~420dtexである。
【0025】
また、導電性繊維として芯糸である非導電性繊維に金属メッキしたものを用いることもできる。非導電性繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0026】
非導電性繊維に金属メッキする場合のメッキ用金属としては金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、およびこれらの合金等が挙げられる。メッキ方法としては乾式法、湿式法が挙げられる。乾式法の例としては蒸着法、スパッタリング法等が挙げられ、湿式法としては無電解メッキ法、電気メッキ法等が挙げられる。
【0027】
かかるメッキにより形成される金属皮膜の厚さは、0.075μm~0.50μmであることが好ましく、より好ましい範囲は0.1μm~0.3μmである。得られた導電性繊維は、抵抗値が10000Ω/m以下であることが好ましく、より好ましくは1000Ω/m以下である。
【0028】
導電性繊維として、非導電性繊維にカーボン等の導電材料を被覆した導電性樹脂被覆糸を用いることもできる。その具体例としては、ナイロン繊維をカーボンで被覆した導電糸(商品名;メタリアン、帝人株式会社製)が挙げられる。
【0029】
導電性繊維からなるフィラメントとしては、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよい。フィラメントの太さ(総繊度)は特に限定されないが、10~150dtex程度が好ましい。フィラメント数は特に限定されないが、1~100程度が好ましい。
【0030】
(ii)導電性編物
導電性編物は、導電糸を通常の方法で編むことによって形成されるが、二重編み等の方法により高密度組織とするのが好ましい。高密度組織とすることによって、導電性編物の圧縮変形によって大きな静電容量変化を生じさせることができるため、2枚の導電材の間に配される絶縁材にはクッション性が不要となり、タッチセンサ(センサ用電極)を薄くすることが可能となる(積層複合体の厚みが、例えば1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下)。
【0031】
ここで言う導電性編物の密度とは、編物組織における金属分布面積率のことを示す。金属分布面積率は、編物組織表面を撮影した平面画像において、金属成分の分布している面積率で示す。高密度組織とは、金属分布面積率が60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0032】
本発明のセンサ用電極は、圧力センサとして用いられるものであり、静電容量変化を圧力変化に換算して検知するシステムに利用される。
静電容量は電極面積と電極間距離に依存するが、電極に導電性編物を使用した場合、電極面積は導電糸密度(金属分布面積率)により、電極間距離は絶縁層厚みと導電性編物の表面凹凸により決定される。
【0033】
編物は糸のループで形成されているため表面に凹凸があり、この凹凸が圧縮時に潰れることで電極間距離が変化して静電容量が変化するが、導電性編物を高密度組織にすると、電極面積が大きくなり静電容量が大きくなるので、上記した静電容量変化の絶対量が大きくなる。したがって、高密度の導電性編物を電極として使用することにより、電極の変形のみで大きな静電容量変化を検出できる。そのため、わざわざクッション性の絶縁層を用いる必要がない。クッション性の絶縁層には通常、厚みが2~5mmの発泡スポンジが使用されるが、本発明では高密度組織の導電性編物を採用することにより、後述するように、150μm以下の薄い絶縁層で十分に高精度の検出能力を有するセンサ用電極を得ることができ、それによりタッチセンサを薄くすることができる。
【0034】
導電性編物をこのような高密度組織とするには、編物を二重編みで形成することが好ましい。具体的には、丸編み機にてスムース組織に仕立てる、ゲージ数を大きくする(ハイゲージ、例えば12本/inch以上)等の方法で編むことによって作製することができる。
【0035】
前記導電性編物は、コース35~45本/インチ、ウェール35~45本/インチの編物とするのが好ましい。また、前記導電性編物の厚みは200~500μm程度が好ましい。
【0036】
(iii)導電性布帛層
導電部のみで構成される導電性布帛層は、上記導電性編物を帯状、波状、リボン状などの所望の形状に成形(カット)して絶縁層上に配置することによって形成される。任意の形状にカットしてパターン形成できるため、パターンの寸法精度を高めることができる。また、カットしてパターン形成するため、形状の自由度が高い。導電性布帛層は、絶縁層の片側のみに配置しても良く、絶縁層の両側に配置しても良い。
【0037】
なお、導電性布帛層の導電部は帯状、波状、リボン状などの線状の他、円状等の形状とすることができるが、線状が好ましい。したがって、上記導電性編物を帯状、波状、リボン状などの線状にカットして用いることが好ましい。
線状にカットする場合、幅を5~20mm程度とするのが好ましい。また、絶縁層上に配置する場合、線状の導電性編物を5~20mmピッチで平行に並べることが好ましい。
【0038】
(2)導電パターンが形成された基材層
積層複合体において、絶縁層の両側に配置される2層の導電材層のうち、上記導電性布帛層以外の導電材層として、任意の導電層を配置することもできる。上記導電性布帛層以外の導電材層としては、導電部のみで構成される必要はなく、少なくとも一部に導電部を有する層であれば特に制限されないが、好ましいものとして、導電パターンが形成された基材層が挙げられる。
【0039】
具体的には、少なくとも一部に導電パターンが形成された基材が挙げられる。基材としては、布帛、フィルムなどが挙げられる。導電パターンは基材の少なくとも一部に形成すればよく、基材全面であっても一部のみであってもよい。
【0040】
(i)導電パターンが形成された布帛
基材として布帛を用いる場合、布帛の少なくとも一部に導電パターンを形成する方法としては、導電性の糸条又は導電性の繊維を含む糸条を少なくとも一部に用いて製織又は製編する方法、あるいは無電解めっき処理を含む方法が挙げられる。このうち、布帛を形成する非導電性の糸条に無電解めっき処理を施す方法が、導電パターンの自由度がより高いことなどから好ましい。
【0041】
製織又は製編を含む方法で用いられる導電性の糸条としては、金属糸、導電性樹脂被覆糸、等が挙げられる。金属糸に用いられる金属としては、銅、ニッケル、スズ、及び銀等が挙げられる。導電性樹脂被覆糸の具体例としては、ナイロン繊維をカーボンで被覆した導電糸(商品名;メタリアン、帝人株式会社製)が挙げられる。かかる導電性糸条の太さは特に限定されないが、好ましくは10~170dtexである。
【0042】
導電性の繊維としては、導電ポリマーからなる繊維、金属繊維、炭素繊維等が挙げられる。導電ポリマーの具体例としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)等が挙げられる。導電性繊維の太さは特に限定されないが、好ましくは10~170dtexである。
【0043】
導電性の繊維を含む糸条(マルチフィラメント)としては、導電性の繊維からなる糸条や導電性の繊維を一部に用いた糸条などが挙げられる。導電性の繊維を含む糸条の太さは特に限定されないが、好ましくは10~170dtexである。製織又は製編の方法は特に制限されず、従来公知の方法が用いられる。
【0044】
無電解めっき処理を含む方法としては、めっき触媒活性を有するパターンが形成された布帛に無電解めっき処理を施して導電パターンを形成する方法が挙げられる。
より具体的には、布帛上にめっきレジストを印刷して所望の導電パターンとは逆のパターンを有するレジスト層を形成したのち、前記布帛に無電解めっき触媒を付与後還元処理してめっき触媒活性を有する金属からなる所望パターンを形成する。
【0045】
次いでレジスト層を除去する。レジスト層の除去方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、0.1%NaOH水溶液に浸漬させて、超音波洗浄機(例えば商品名;US CLEANER、アズワン株式会社製)等を用い、浴温約25~35℃(より好ましくは約30℃)、洗浄時間1~2分で、レジスト層の除去を行うことができる。
次いでこれに無電解めっき処理を施すことによって、布帛上に所望の導電パターンを形成することができる。
【0046】
めっきレジストは、無電解めっき処理工程で用いられる触媒、還元液に対する薬剤耐性があれば特に限定されない。
逆パターン状のめっきレジスト層を形成する方法としては、逆パターン状に印刷されためっきレジストを硬化させることが好ましい。硬化方法としては熱硬化及び紫外線硬化のいずれであってもよい。したがって、本発明のめっきレジストは熱硬化型であっても、紫外線硬化型であってもよい。
【0047】
めっきレジストは通常、溶剤、バインダー樹脂、着色成分、添加剤等が必要に応じて適宜配合されている。バインダー樹脂としては、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、イソシアネート系などの樹脂を用いることができる。バインダー樹脂は熱硬化型であってもよく、紫外線硬化型であってもよい。
【0048】
めっきレジストを布帛上に印刷するときの印刷方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、フォトリソグラフィー、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷など、既知の方法を適用することができる。これらのうち、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが好ましい。
【0049】
めっき触媒活性を有する金属としては銅、ニッケル、銀、スズ、ロジウム、パラジウム、金、白金を例示することができるが、めっき触媒活性が高いパラジウムを用いることが好ましい。
【0050】
無電解めっき触媒としては、還元してめっき触媒活性を有する金属となりうる金属イオンを含む溶液が挙げられる。かかる金属イオンとしてはパラジウムイオンが挙げられ、パラジウムイオンを生成する化合物の例としては、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、酸化パラジウムが挙げられる。中でも一般的触媒として広く用いられている塩化パラジウムは入手が比較的容易であるため好適に用いられる。
【0051】
金属イオン含有溶液に用いられる溶媒は特に限定されないが、好ましくは水である。
前記金属イオン含有溶液中の金属イオン濃度は、30~80g/Lが好ましく、より好ましくは30~50g/Lである。
【0052】
布帛を金属イオン含有溶液に接触させるときの反応温度は10℃~80℃、好ましくは10℃~50℃である。金属イオン含有溶液の接触時間は、10秒~800秒が好ましく、より好ましくは30秒~500秒である。
【0053】
金属イオン含有溶液に接触させた後は、布帛を水洗し、非特異的に付着した金属イオンを除去することが好ましい。水洗方法としては公知の洗浄方法を適用することができる。
【0054】
還元方法としては、金属イオンを吸着させた布帛を、還元剤を含む酸性処理液(以下、還元処理液という)に接触させる方法が好ましい。ここで還元剤を含む酸性処理液に用いる還元剤としては、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、ジエチルアミン、アスコルビン酸、ホウフッ化水素酸(テトラフルオロホウ酸)等が挙げられる。
【0055】
また、還元処理液の還元剤濃度は、5~20g/Lが好ましい。還元処理液に使用される溶媒は、特に限定されないが、水等が好ましい。還元処理液のpHは、好ましくは6以下、より好ましくは2~6、更に好ましくは3~5.9である。
【0056】
布帛を還元処理液に接触させる時間は、30秒~600秒、好ましくは60秒~300秒である。接触温度は10℃~80℃、好ましくは30℃~50℃である。還元処理液に接触させた後、布帛を水洗し、非特異的に付着した還元剤を除去する。還元処理の後、必要に応じて洗浄、乾燥をすることにより、めっき触媒活性を有する所望パターンが形成された布帛を得ることができる。
【0057】
無電解めっき処理の方法としては公知の無電解めっき法を用いることができる。無電解めっき用金属としては、銅、ニッケル、スズ、及び銀からなる群から選択される少なくとも1種の金属またはこれらの合金(たとえば銅とスズの合金など)が挙げられる。好ましくは銅及びニッケルであり、特に好ましくは銅である。
【0058】
無電解めっきには既存のめっき浴を使用することができ、このめっき浴に前記布帛を浸漬すればよい。無電解めっきの反応時間と温度は、めっき膜厚に応じて適宜調整することができるが、好ましいめっき時間は5~20分であり、好ましい温度は40~50℃である。
【0059】
このようにして得られる無電解めっき膜(導電パターン)の膜厚は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~7μmである。
無電解めっき膜を形成後は、必要に応じて布帛を水洗し非特異的に付着しためっき液を除去することができる。
【0060】
(ii)導電パターンが形成されたフィルム基材
導電パターンを有する基材としてフィルムを用いる場合、フィルムとして好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0061】
合成樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、好ましくは10~200μm、さらに好ましくは50~100μmである。
【0062】
フィルム基材の上に導電パターンを形成する方法としては、例えばフィルム基材上に導電性インクを用いて導電パターンを印刷する方法、フィルム基材上にパターン状導電部材を配置する方法、フィルム基材に金属メッキによって導電パターンを形成する方法等が挙げられる。
【0063】
導電パターンの印刷方法は特に制限されないが、グラビア印刷、スクリーン印刷、フォトリソグラフィー、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷など、既知の方法を適用することができる。これらのうち、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が好ましい
【0064】
導電性インクとしては、導電体含有樹脂組成物、導電性高分子組成物等が挙げられる。導電部材としては、導電性高分子組成物からなるフィルムや膜若しくは金属箔(以下「導電性フィルム」という)、又は、金属細線、導電性繊維、導電性繊維からなる布帛等の繊維系材料(以下、「導電性繊維系材料」という)が挙げられる。
【0065】
導電性インクは、印刷手法により導電部をパターン状に形成することができる。導電性フィルムや導電性繊維系材料からなる導電部材を用いる場合、それらをパターン状に打ち抜いて(パターン状導電部材)配置することで導電パターンを形成することができる。また、フィルム基材に対し、金属メッキによって直接導電パターンを形成してもよい。
【0066】
導電性インクとして使用できる導電体含有樹脂組成物は、導電体を含有する樹脂組成物であって、より具体的には金属微粒子やカーボン粒子等の導電体とバインダー樹脂とを配合した組成物である。導電体としては金属微粒子、カーボン粒子等が挙げられる。金属微粒子としては金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウムおよびこれらの酸化物等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは銀、銅、ニッケルである。
【0067】
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂あるいはアクリル樹脂等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂である。
【0068】
その他に添加剤として溶剤、分散剤、還元剤、硬化剤、表面調整剤、増粘剤等を配合してもよい。
導電体の好ましい配合割合は、導電体含有樹脂組成物全量に対し好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%である。
【0069】
導電性高分子組成物は、導電性高分子(導電性ポリマー)を主体とする。導電性ポリマーとしては、PEDOT/PSS(チオフェン系導電性ポリマー)、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)等が挙げられる。
【0070】
導電部材として使用できる導電性フィルムは、導電性高分子組成物からなるフィルムである。導電性高分子組成物に用いられる導電性ポリマーとしては、PEDOT/PSS、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)等が挙げられる。
【0071】
導電性高分子組成物には、この他にバインダー樹脂(非導電性ポリマー)、導電性向上剤、溶剤、架橋剤、表面調整剤、増粘剤等が配合されていてもよい。前記導電性高分子組成物中における導電性高分子の配合割合は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~95質量%である。フィルム厚さとしては10~200μmが好ましい。
【0072】
金属箔としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ等の金属からなる箔が挙げられる。金属箔の厚みとしては、10~200μmが好ましく、より好ましくは10~100μm程度である。
【0073】
導電性繊維系材料としては、金属細線、導電性繊維、導電性繊維からなる布帛等が挙げられる。金属細線に用いられる金属としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ等が挙げられる。細線の太さは、好ましくは50~200dtex程度である。
【0074】
導電性繊維としては、導電性ポリマーからなる繊維、金属繊維、炭素繊維等が挙げられる。導電性ポリマーの具体例としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)等が挙げられる。導電性繊維の太さは特に限定されないが、好ましくは5~420dtexである。
【0075】
また、導電性繊維として非導電性繊維に金属メッキしたものを用いることもできる。非導電性繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0076】
非導電性繊維に金属メッキする場合のメッキ用金属としては金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、およびこれらの合金等が挙げられる。メッキ方法としては乾式法、湿式法が挙げられる。乾式法の例としては蒸着法、スパッタリング法等が挙げられ、湿式法としては無電解メッキ法、電気メッキ法等が挙げられる。
【0077】
導電性繊維からなる布帛としては、上記の導電性繊維から構成された織物、編物、不織布等が挙げられる。特に非導電性繊維からなるメッシュ織物に金属メッキを施した導電性メッシュが好ましい。
【0078】
導電性メッシュからなる導電部材は、打ち抜きによってパターン状にしてもよいし、非導電性繊維からなるメッシュ織物の一部にパターン状に金属メッキを施して導電部が形成されたパターン状導電部材としてもよい。
【0079】
非導電性繊維からなるメッシュ織物の一部を電極部とする方法は、メッキ触媒を印刷によって部分的に付与した後触媒活性化、メッキ処理を施す方法が挙げられる。他の方法としては、非導電性繊維からなるメッシュ織物の全面をメッキ処理した後、電極部となる部分以外の金属メッキをエッチングによって除去する方法がある。エッチングの方法としては、公知のエッチング方法を用いることができる。
【0080】
基材に直接金属メッキ処理を行なって導電パターンを形成してもよい。メッキ用金属としては金、銀、銅、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、およびこれらの合金等が挙げられる。メッキ方法としては乾式法、湿式法が挙げられる。導電パターン形成方法としては、メッキ触媒をパターン印刷する方法や、基材の前面に金属メッキ処理を施した後導電部以外の部分の金属メッキをエッチングによって除去する方法が挙げられる。
【0081】
2.絶縁層
絶縁層は、絶縁性樹脂等の絶縁材によって形成することができる。絶縁性の目安としては特に制限されないが、抵抗値が好ましくは1×1011Ω/□以上、より好ましくは1×1012Ω/□、特に好ましくは7×1012Ω/□である。
【0082】
絶縁性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂が挙げられる。これらのうちで特に好ましいものは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂である。
【0083】
また、絶縁層は両側に配置される導電材を絶縁する必要があるため、無孔構造であることが好ましい。具体的には合成樹脂フィルムが挙げられ、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等からなる無孔の合成樹脂フィルムが特に好ましい。
【0084】
絶縁性樹脂の厚みは特に制限されないが、下限としては好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、上限としては好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。
【0085】
本発明において、導電部のみで構成される導電性布帛層として高密度組織の導電性編物を採用した場合、2枚の導電材層の間に配される絶縁層にはクッション性が不要となり、センサ用電極を薄く設計することができる。例えばセンサ用電極の厚みを1.5mm以下、さらには1.3mm以下、特に1.0mm以下とすることができる。
【0086】
3.支持体
本発明のセンサ用電極を構成する積層複合体では、導電部のみで構成される導電性布帛層を絶縁体からなる支持体上に形成することができる。すなわち、導電性布帛を帯状、波状、リボン状など所望の形状にカットし、絶縁体からなる支持体上に一個以上好ましくは複数個配置することによって、導電部のみで構成される導電性布帛層を支持体上に形成することができる。支持体の絶縁性の目安としては、好ましくは抵抗値1×1011Ω/□以上、より好ましくは1×1012Ω/□以上、特に好ましくは1×1013Ω/□以上である。
【0087】
前記支持体は、布帛、フィルム等から形成することができる。このうち布帛を用いるのが好ましい。
布帛は、主に非導電性の糸条からなるものである。糸条はモノフィラメント糸であっても、多数の繊維が集束してなるマルチフィラメント糸であってもよい。糸条の太さは特に限定されないが、モノフィラメントの場合、好ましくは10~70dtexであり、マルチフィラメントの場合、好ましくは10~170dtex程度である。マルチフィラメントの場合、フィラメント数は特に制限されないが、好ましくは1~100本である。
【0088】
布帛の具体例としては、織物、編物、不織布などの繊維布帛を挙げることができる。また、繊維素材としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリアクリル等の合成繊維などを挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも、繊維物性全般に優れた合成繊維からなる布帛が好ましく、さらにポリエステル繊維、ナイロン繊維などの一般的に用いられる合成繊維からなる布帛が好ましい。
【0089】
繊維布帛には、必要に応じて染色、帯電防止加工、難燃加工、カレンダー加工などが施されていてもよい。布帛の厚みは特に限定されないが、下限としては好ましくは0.02mm、より好ましくは0.05mm、特に好ましくは0.1mmであり、上限としては好ましくは1mm以下、より好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。
【0090】
フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは50~100μm程度である。
【0091】
4.熱可塑性樹脂層
支持体は、その少なくとも片側に特定の熱可塑性樹脂層を設けることができる。特に、支持体として布帛を選択し、その片側に熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けるのが好ましい。このように熱可塑性樹脂層を少なくとも片側に有する布帛を支持体として用いる場合、それによって得られる積層複合体を立体成形(真空成形)することが可能となる。
【0092】
支持体として布帛を用い且つ熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けることによって、導電材層を伸長変形させても導電部のみで構成される導電性布帛層部分は変形しにくい構成とすることができる。これによって、高いパターン精度を保つことができる。
【0093】
また、導電性布帛層を有する積層複合体を用いた本発明には、真空成形を可能とするという利点がある。導電性布帛層など編物層を含む積層体では、通気性があるために真空成形時の吸引が困難となることがあるが、熱可塑性樹脂層を積層構造に含めることによって、真空吸引時の目張り且つ形状維持の役割を果たすことができる。よって、真空成形を可能にし、製品の形状自由度を高めることもできる。
【0094】
支持体に貼り付けて用いる熱可塑性樹脂層としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等からなるフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂層の厚みは特に限定されないが、下限は好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、上限は好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0095】
熱可塑性樹脂層は、絶縁体であることが好ましい。絶縁性の目安としては、抵抗値が好ましくは1×1011Ω/□以上、より好ましくは1×1012Ω/□である。抵抗値の上限は特に制限されないが、好ましくは6×1012Ω/□以下である。
【0096】
4.層構成
本発明のセンサ用電極の一例の概略図を
図1~6に示す。
図1中、1は積層複合体、2は導電材層(導電部のみで構成される導電性布帛層)、3は絶縁層、4は導電材層(導電パターンが形成された基材層)、5は支持体、6は熱可塑性樹脂フィルムを表す。
【0097】
本発明のセンサ用電極は、一例を
図1に示すとおり、絶縁層3と、該絶縁層の両側に配置される2層の導電部を有する導電材層2,4とを含む積層複合体1で構成される。すなわち、絶縁層及びそれを挟んで両側に2層の導電材層が少なくとも配置されている。その絶縁層の両側の導電材層は、少なくとも一方が導電部のみで構成される導電性布帛層2である。導電部のみで構成される導電性布帛層は一方のみであっても両方ともであってもよい。
【0098】
図1では、絶縁層3の片側に、導電糸のみからなるリボン状の導電性布帛が複数平行に配置された導電部のみで構成される導電性布帛層2が形成されている。絶縁層の他の片側には導電材層として、導電パターンが形成された基材層4を配置することができる(
図1、
図2)。また、この導電材層を反対側と同様の導電部のみで構成される導電性布帛層2とすることもできる(
図3)。
【0099】
導電部のみで構成される導電性布帛層2は、支持体5上に配置することができる(
図2)。支持体5上に形成された導電部のみで構成される導電性布帛層2は、導電部が絶縁層3と接するように重ね合わされる。したがってこの場合、導電部のみで構成される導電性布帛層2は支持体4と絶縁層3の間に形成される。
【0100】
絶縁層3の他の側にも導電部のみで構成される導電性布帛層2を配置する場合も、該導電性布帛層2を支持体5上に形成したものを重ね合わせることもできる(
図3)。その場合も、導電部が絶縁層と接するように重ね合わせる(
図3)。
【0101】
絶縁層の両側に導電部のみで構成される導電性布帛層2を設ける場合、両側の導電部が帯状やリボン状等の線状を平行に配置したものであることが好ましい。線状の導電部を有する導電性布帛層2を絶縁層の両側に配置するとき、両導電部が互いに交差するように重ね合わせることができる(
図3)。それによって、交差した部分で圧縮変形の程度を検知することが可能となり、圧力センサとして機能させることができる。
【0102】
絶縁層の一方に導電部のみで構成される導電性布帛層2を、他方に導電パターンが形成された基材層4を配置する場合(
図1,2,4など)も同様に、線状の導電部と導電パターンが互いに交差するように重ね合わせることができる。
【0103】
支持体5として布帛を用い且つ熱可塑性樹脂フィルム6を貼り付ける場合、支持体側に導電性布帛層2を配置すると、その層構成としては、導電性布帛層2/支持体5/熱可塑性樹脂フィルム6の順に絶縁層上に積層・配置することができる(
図4a)。
【0104】
一方、同様に支持体5として布帛を用い且つ熱可塑性樹脂フィルム6を貼り付ける場合、熱可塑性樹脂フィルム側に導電性布帛層2を配置すると、その層構成としては、導電性布帛層2/熱可塑性樹脂フィルム6/支持体5の順に絶縁層上に積層・配置することもできる(
図4b)。
【0105】
また、絶縁層の反対側には導電パターンが形成された基材層を配置することができるが、基材に布帛を使った場合、絶縁層側とは反対側に熱可塑性樹脂層を配置することができる(
図5a)。また、熱可塑性樹脂層を絶縁層側に配置することもできるが、その場合、熱可塑性樹脂層は絶縁層の役割を果たすことができる(
図5b)。絶縁層の役割を果たす熱可塑性樹脂層が、基材に布帛を使った導電材層とあらかじめ一体化されていれば真空成形が可能となる。
【0106】
絶縁層の両側に導電部のみで構成される導電性布帛層を重ね合わせる場合、熱可塑性樹脂層は導電部とは反対側(支持体の外側)に配置することができる(
図6a)。支持体の布帛と導電部との間に熱可塑性樹脂層を配置することもできる(
図6b)。また、絶縁層の両側に配置される導電材層のうち、一方の導電材層は導電部とは反対側(支持体の外側)に熱可塑性樹脂層を配置し、もう一方の導電材層は支持体の布帛と導電部との間に熱可塑性樹脂層を配置してもよい(
図6c)。熱可塑性樹脂層を設けることにより、立体成形(真空成形)が可能となる。
【0107】
本発明のセンサ用電極の厚みは、好ましくは1.5mm以下、さら好ましくは1.0mm以下である。本発明では導電部のみからなる導電性布帛層を採用しており、さらには高密度組織の導電性編物とすることにより、圧縮変形によって大きな静電容量変化を生じさせることができる。そのため、絶縁層にはクッション性が不要となり、センサ用電極を薄くすることができる。
【0108】
5.センサ用電極の製造方法
本発明のセンサ用電極の製造方法は、特に制限されないが、先に導電材層を形成したのち、絶縁層と積層するのが好ましい。導電材層が導電部のみから構成される導電性布帛層からなる場合、導電性布帛層の片側に予めホットメルトフィルムを熱プレス機等で貼り合わせたのち所望の形状にカットして用いることができる。
【0109】
導電材層が導電性布帛層と支持体及び必要に応じて熱可塑性樹脂層とからなる場合、導電性布帛層と支持体と熱可塑性樹脂層とは、相互にホットメルトフィルムを用いて貼り合わせることができる。例えば、支持体上に予めホットメルトフィルムを熱プレス機等で貼り合わせたのち、該ホットメルトフィルム上に熱可塑性樹脂層を熱圧着させ、さらに予めホットメルトフィルムを熱プレス機等で貼り合わせたのち所望の形状にカットした導電性布帛層を熱圧着させることができる。
【0110】
ホットメルトフィルムとしては、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等が挙げられ、厚みは特に制限されないが、好ましくは10~100μm程度である。
【0111】
支持体として布帛を選択し且つ熱可塑性樹脂層を積層させたものを用いる場合、真空成形により立体成形が可能となる。真空成形の具体的な方法としては、導電性布帛層と支持体と熱可塑性樹脂層とを含む導電材層をヒーターで加熱し、熱可塑性樹脂層を可塑化させたのちに金型上に設置し、金型内部から真空吸引し成形・冷却する。熱可塑性樹脂層が固化したのちに金型から離型することで立体成形品が得られる。そして、同様の方法及び金型で真空成形された絶縁層からなる立体成形品と積層することにより、所望の立体形状を有する積層複合体を得ることができる。
【0112】
上記
図5bのように熱可塑性樹脂層を絶縁層として用いる場合、導電パターンが形成された基材層に熱可塑性樹脂層を貼り付けて真空成形して立体成形品とし、別途真空成形して得られる導電性布帛層と支持体と熱可塑性樹脂層とを含む導電材層からなる立体成形品と積層して、積層複合体からなる立体成形品を得ることができる。
【0113】
また、導電材層と絶縁層とを予め積層して得られる積層複合体を真空成形してセンサ用電極を作製する方法、導電材層と絶縁層とを別々に真空成形してからそれらを重ね合わせてセンサ用電極を作製する方法など、いずれであってもよい。
【実施例0114】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0115】
<実施例1>
1.導電部を有する導電材層
以下に示す各材料及び方法を用いて導電部を有する導電材層を作製した。
(1)導電部のみで構成される導電性布帛層
導電糸を用いた導電性編物を帯状にカットし導電性布帛層とした。導電糸はAgメッキ糸(セーレン株式会社製、金属皮膜厚み1.5μm;抵抗値350Ω/m;芯糸ポリエステル)を使用した。この導電糸は、フィラメント数12本のマルチフィラメント糸であり、総繊度は40dtexである。
【0116】
前記導電糸を用いて丸編み機にてスムース組織に仕立て、コース40本/インチ、ウェール44本/インチの導電性編物(厚み300μm;抵抗値0.6×100Ω/□)を得た。得られた導電性編物を幅1cmの帯状にカットし導電性布帛層とした。この導電性編物は金属分布面積率が60%以上の高密度組織からなるものである。
【0117】
(2)支持体
非導電糸を使用した非導電性編物を支持体とした。非導電糸は、ポリエステル糸(フィラメント数24本のマルチフィラメント糸;総繊度33dtex)を使用した。この非導電糸を用いて丸編み機にて天竺組織に仕立て、コース44本/インチ、ウェール44本/インチの筒状の非導電性編物(厚み250μm;抵抗値2.0×1013Ω/□)を得た。得られた筒状の非導電性編物から15cm×15cmサイズでシート状に切り出した。
【0118】
(3)熱可塑性樹脂層
熱可塑性樹脂層として、ポリウレタンフィルム(セーレン株式会社製、厚み15μm;抵抗値5.9×1012Ω/□)を使用した。ロール状のポリウレタンフィルムから15cm×15cmサイズでシート状に切り出した。
【0119】
(4)各材料の積層
得られた各材料を以下のように積層した。
支持体の片面にホットメルトフィルム(日本マタイ社製:エルファンUH203、厚み30μm)を熱プレス機にて貼り合わせた。次いで、熱可塑性樹脂層としてポリウレタンフィルムを、前記ホットメルトフィルム上に熱プレス機にて貼り合わせた。
【0120】
さらに、事前にホットメルトフィルム(日本マタイ社製:エルファンUH203、厚み30μm)を熱プレス機にて貼り合わせた導電性布帛層(幅1cmの帯状)を、前記熱可塑性樹脂層であるポリウレタンフィルム上に2cmピッチで平行に4本配置し、熱プレス機にて貼り合わせ、導電部を有する導電材層とした。この「導電性布帛層/熱可塑性樹脂層/支持体」の構造を有する導電材層を、2層作製した。
【0121】
2.絶縁層
絶縁層としてポリウレタンフィルム(日本マタイ社製「エスマーURS」、厚み50μm;抵抗値7.9×1012Ω/□)を使用した。ロール状のポリウレタンフィルムから15cm×15cmサイズでシート状に切り出した。
【0122】
3.真空成形及び寸法変化の評価
導電材層と絶縁層を真空成形機にて成形した。成形の型として、底面が直径7cm、高さが2.5cmのドーム状の金型を使用した。すなわち、前記導電材層又は絶縁層を、各々ヒーターで180℃に熱したのち金型上に設置して、金型内部から真空吸引して成形・冷却し、その後金型から離型して同じ型のドーム状成形品を3つ(導電材層2つと絶縁層1つ)を得た。
【0123】
得られた導電材層の成形品において、帯状の導電性布帛層4本の幅を1本ずつ金尺にて計測し、成形前後での変化率を求めた。その結果、導電性布帛層の幅の成形前後での変化率は4%(導電性布帛層4本の平均変化率)であった。導電材層として、導電部のみから構成される導電性布帛層を用いたことにより、立体成形後でもパターンの寸法精度を維持することができた。
【0124】
4.タッチセンサ用電極の作製
得られた成形品を、導電材層、絶縁層、導電材層の順で重ね合わせた。この際、2層の導電材層の導電性布帛層がそれぞれ絶縁層側を向くように、かつ、互いに直角に交差するように重ね合わせ、タッチセンサ用電極(厚み;1.2mm)とした。得られたタッチセンサ用電極にて、導電性布帛層が交差した部分の加圧時の静電容量をキャパシタンスメーターにて計測すると、十分な静電容量変化がみられ、圧力センサとして機能することを確認できた。
【0125】
<比較例>
1.導電部を有する導電材層
以下に示す各材料及び方法を用いて導電部を有する導電材層を作製した。
(1)導電パターンが形成された布帛
導電糸と非導電糸を交互に帯状に編み込んだ導電性編物を導電材層とした。導電糸はAgメッキ糸(セーレン株式会社製、金属皮膜厚み1.5μm;抵抗値350Ω/m;芯糸ポリエステル)を使用した。この導電糸はフィラメント数12本のマルチフィラメント糸であり、総繊度は40dtexである。非導電糸はポリエステル糸(フィラメント数24本のマルチフィラメント糸;総繊度33dtex)を使用した。
【0126】
上記導電糸及び非導電糸を用い、帯状の導電部(幅12mm)と、帯状の非導電部(幅12mm)とが交互に並列した形の導電パターンが形成されるように、丸編み機にてスムース組織で仕立て、コース40本/インチ、ウェール44本/インチの筒状の導電性編物(厚み300μm;導電部抵抗値0.6×100Ω/□、非導電部抵抗値2.2×1011Ω/□)を得た。得られた筒状の導電性編物から15cm×15cmサイズでシート状に切り出した。
【0127】
(2)熱可塑性樹脂層
熱可塑性樹脂層として、ポリウレタンフィルム(セーレン株式会社製、厚み15μm;抵抗値5.9×1012Ω/□)を使用した。ロール状のポリウレタンフィルムから15cm×15cmサイズでシート状に切り出した。
【0128】
(3)各材料の積層
得られた各材料を以下のように積層した。
導電材層の片面にホットメルトフィルム(日本マタイ社製:エルファンUH203、厚み30μm)を熱プレス機にて貼り合わせた。次いで、熱可塑性樹脂層(ポリウレタンフィルム)を、前記ホットメルトフィルム上に熱プレス機にて貼り合わせた。
【0129】
2.絶縁層
導電材層に貼り合わせた熱可塑性樹脂層を絶縁層として機能させた。
【0130】
3.真空成形及び寸法変化の評価
熱可塑性樹脂層を貼り合わせた導電材層を真空成形機にて成形した。成形の型として、底面が直径7cm、高さが2.5cmのドーム状の金型を使用した。すなわち、前記導電材層を、ヒーターで180℃に熱したのち金型上に設置して、金型内部から真空吸引して成形・冷却し、その後金型から離型して成形品を得た。
【0131】
得られた導電材層の成形品において、導電部4本の幅を1本ずつ金尺にて計測し、成形前後での変化率を求めた。その結果、導電部の幅の成形前後での変化率は21%(導電部4本の平均変化率)であった。
本発明のセンサ用電極は、各種スイッチとして広範囲の利用可能性がある。立体成形(真空成形)が可能であるため、複雑な形状の物品の表面に追従させることができ、折れ曲がっていてもスイッチとして機能し得る。また、圧縮変形を検知できるため、圧力センサとして機能させることができる。よって、自動車、航空機、列車などの内装品、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのカバー等として利用することができる。