(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023780
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】支柱アセンブリ、食害防止チューブ及び防獣柵
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20230209BHJP
A01M 29/30 20110101ALI20230209BHJP
A01G 13/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A01G13/02 G
A01M29/30
A01G13/02 B
A01G13/02 M
A01G13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129603
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】521348683
【氏名又は名称】モリマーマテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596058720
【氏名又は名称】東工コーセン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】金野 智広
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】森田 智美
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬浩
(72)【発明者】
【氏名】岩井 言葉
【テーマコード(参考)】
2B024
2B121
【Fターム(参考)】
2B024AA02
2B024DB04
2B024DD07
2B024EA11
2B024EB06
2B024EB10
2B024EC01
2B024EC06
2B024GA02
2B024GA06
2B024GA07
2B121AA02
2B121BB27
2B121BB30
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA24
2B121EA26
2B121FA01
2B121FA05
2B121FA12
2B121FA16
(57)【要約】
【課題】積雪に対する折損を防止できる支柱アセンブリ、食害防止チューブ及び防獣柵を提供する。
【解決手段】
食害防止チューブ用、又は防獣柵用の支柱アセンブリは、2mm以上6mm以下の径を有する複数のロッド材で構成されるロッド束と、ロッド束の長さ方向の両端部を結束固定する端部結束固定部を有する結束固定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食害防止チューブ用、又は防獣柵用の支柱アセンブリであって、
2mm以上6mm以下の直径を有する複数のロッド材で構成されるロッド束と、
前記ロッド束の長さ方向の両端部を結束固定する結束固定部と、
を備える支柱アセンブリ。
【請求項2】
前記ロッド束を構成する前記複数のロッド材は全て同じ直径である、
請求項1に記載の支柱アセンブリ。
【請求項3】
前記ロッド束を構成する前記複数のロッド材は、異なる直径のロッド材を少なくとも1本含む、
請求項1に記載の支柱アセンブリ。
【請求項4】
前記ロッド材の材質は、強化繊維を含む繊維強化熱硬化性樹脂、又は強化繊維を含む繊維強化熱硬化性樹脂である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の支柱アセンブリ。
【請求項5】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、鋼繊維、アラミド繊維、及びその他有機繊維のいずれかである、
請求項4に記載の支柱アセンブリ。
【請求項6】
前記繊維強化熱硬化性樹脂のマトリックス樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記ビニルエステル樹脂との質量比が20:80~70:30である、請求項4また5に記載の支柱アセンブリ。
【請求項7】
前記ロッド束の端部を結束固定する前記結束固定部の間に、前記ロッド束を結束固定する少なくとも1個以上の追加の結束固定部を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の支柱アセンブリ。
【請求項8】
前記結束固定部は、接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、固定具又はこれらの組み合わせである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の支柱アセンブリ。
【請求項9】
地面に植生された幼齢木に装着される食害防止チューブであって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の支柱アセンブリと、
前記幼齢木を覆う筒状の覆い部と、前記覆い部から内方に突出して前記覆い部の長手方向に沿って延びる、前記支柱アセンブリが挿通可能な筒状の挿通部と、を含むネット部材と、
前記挿通部に挿通された前記支柱アセンブリと前記ネット部材とを固定する留め具と、
を備える食害防止チューブ。
【請求項10】
野生動物の侵入を防止する防獣柵であって、
複数の請求項1から8のいずれか一項に記載の支柱アセンブリと、
前記複数の支柱アセンブリの間に設けられるネット部材と、
前記複数の支柱アセンブリと前記ネット部材とを固定する留め具と、
を備える防獣柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食害防止チューブ用及び防獣柵用の支柱アセンブリ、この支柱アセンブリを備える食害防止チューブ及び防獣柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植樹された苗木又は若木の苗などの幼齢木を野生動物からの食害等から保護するため種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1は、幼齢木を保護するため、ポリエステル、ポリオレフィン繊維の布あるいは不織布を縫製、融着あるいは接着してなる苗木の被覆保護用筒状物を、筒の基部から先端まで直線状に支柱で固定し、被覆保護用筒状物により幼齢木を覆うことを開示する。
【0004】
特許文献2は、鳥獣被害を防止するため、金属パイプ等の筒状の複数の支柱と、支柱の上端に係止する上段係止金具と、支柱の下部を挟持して係止する下段係止金具と、上段係止金具と下段係止金具とに上端と下端とを係止させることにより支柱の間に張設する樹脂製の網とを備えた鳥獣侵入防止柵を開示する。
【0005】
この、鳥獣侵入防止柵では、冬季間には、網の下端に位置する下端ロープも上段係止金具に係止して、網を上下中間で折り畳んだ状態に維持し、積雪による網の損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-190165号公報
【特許文献2】特開2011-239712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では以下の問題がある。
【0008】
特許文献1では、湿雪や霜粗目雪が堆雪する地域では、雪の自重や融雪時の沈降圧により、単木保護資材に使用される支柱が折損し、植栽木が野生動物による食害を受ける懸念がある。
【0009】
特許文献2では、奥地造林地の増加や林業従事者の減少など様々な要因から、現状では、冬季間に網を上下中間で折り畳んだ状態にし、冬季間終了時に網をもとの状態に戻すことは現実的ではない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、積雪に対する折損を防止できる食害防止チューブ用及び防獣柵用の支柱アセンブリ、食害防止チューブ及び防獣柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様の食害防止チューブ用、又は防獣柵用の支柱アセンブリは、2mm以上6mm以下の直径を有する複数のロッド材で構成されるロッド束と、ロッド束の長さ方向の両端部を結束固定する結束固定部と、を備える。
【0012】
第2態様の支柱アセンブリにおいて、ロッド束を構成する複数のロッド材は全て同じ直径である。
【0013】
第3態様の支柱アセンブリにおいて、ロッド束を構成する複数のロッド材は、異なる直径のロッド材を少なくとも1本含む。
【0014】
第4態様の支柱アセンブリにおいて、ロッド材の材質は、強化繊維を含む繊維強化熱硬化性樹脂、又は強化繊維を含む繊維強化熱硬化性樹脂である。
【0015】
第5態様の支柱アセンブリにおいて、強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、鋼繊維、アラミド繊維、及びその他有機繊維のいずれかである。
【0016】
第6態様の支柱アセンブリにおいて、繊維強化熱硬化性樹脂のマトリックス樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂とからなり、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂との質量比が20:80~70:30である。
【0017】
第7態様の支柱アセンブリにおいて、ロッド束の端部を結束固定する結束固定部の間に、ロッド束を結束固定する少なくとも1個以上の追加の結束固定部を含む。
【0018】
第8態様の支柱アセンブリにおいて、結束固定部は、接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、固定具又はこれらの組み合わせである。
【0019】
第9態様の地面に植生された幼齢木に装着される食害防止チューブは、上記の支柱アセンブリと、幼齢木を覆う筒状の覆い部と、覆い部から内方に突出して覆い部の長手方向に沿って延びる、支柱アセンブリが挿通可能な筒状の挿通部と、を含むネット部材と、挿通部に挿通された支柱アセンブリとネット部材とを固定する留め具と、を備える。
【0020】
第10態様の野生動物の侵入を防止する防獣柵は、複数の上記支柱アセンブリと、複数の支柱アセンブリの間に設けられるネット部材と、複数の支柱アセンブリとネット部材とを固定する留め具と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の支柱アセンブリ、食害防止チューブ及び防獣柵によれば、積雪に対する折損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は支柱アセンブリの構造を説明するための図である。
【
図2】
図2は支柱アセンブリの作用を説明するための図である。
【
図3】
図3は支柱アセンブリの作用を説明するための図である。
【
図4】
図4は食害防止チューブを幼齢木に装着した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は
図4に示す食害防止チューブを切断面線V-Vから見た断面図である。
【
図6】
図6は防獣柵の構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0024】
<発明の経緯>
従来、ニホンジカやニホンカモシカなどの野生動物による食害への対策として、忌避剤と呼ばれる薬剤を苗木に噴霧することや、繊維製の柵で造林地の周囲を囲うことが主流であった。上記の対策は、定期的な散布や見回りによって効果を最大限に発揮するが、林業従事者の減少や造林地の奥地化などにより、メンテナンスコストが高額になるにつれて、その効果が薄れてきた。
【0025】
そこで、ネット部材と支柱とで構成される単木保護資材(食害防止チューブ)により、植栽木を個々に保護する方法はイニシャルコストが高いものの、メンテナンスにかかるランニングコストが低いこともあり、広く使用されている。
【0026】
支柱に関して、樹脂成型硬質型と繊維製軟質型の二種類が存在し、硬質型はφ20mm程度の樹脂被覆鋼管、軟質型はφ8mm程度のFRP製の支柱を用いることが多い。林地においては、資材の運搬性も重視されることから、単木保護資材の支柱には軽量かつ柔軟性の高いFRP製の支柱の使用が望まれる。しかしながら、軟質型はその本体が樹脂成型品のため、柔軟性のあるFRP製の支柱では直立形状の維持が難しく、使用できないという問題があった。
【0027】
防獣柵は最も一般的な防獣資材であり、造林地の周囲に3m~4m間隔で支柱を地面に挿し、その中を囲うようにして繊維製の網を設置する。主な部材は50mm~150mm目合いのネット、φ20mm~40mm前後の樹脂被覆鋼管もしくはFRP製の支柱、ABS製の杭となっている。また、支柱の材質については材料コストの観点では樹脂被覆鋼管が優位だが、耐久性や運搬性の観点ではFRP製の支柱が優位である。
【0028】
ところで、湿雪や霜粗目雪が堆雪する地域では、雪の自重や融雪時の沈降圧により、防獣柵や食害防止チューブに使用される支柱が折損し、植栽木が野生動物による食害を受ける場合があった。この支柱折損は、地際より10~30cm程度の根本部分で発生が多いことが判明している。支柱の直径や樹脂、ガラス繊維の配合割合を変更することに加え、根本部分に全長1.0mの短い支柱を付け足す、40cm程度の鉄管を埋めてその中に支柱を挿す、地面から30cm程度をゴムホースで補強するといった外部補強を試したが、いずれの方法においても必ず折損が生じた。
【0029】
支柱の直径を太くすることで剛性を強めることも可能だが、造林地で使用する場合には人力で資材を運搬する必要があり、直径が太い支柱を打ち込むためには専用機材が必要となる。耐雪性を克服できたとしても、運搬性や利便性を著しく欠くため、直径を太くすることは現実的ではない。一方、支柱の径を細くし剛性を弱めることで、雪による力を受け流すことができると考えられるが、支柱の自立性が低くなることで、植栽木が曲がるなど生育上の悪影響が懸念される。
【0030】
防獣柵においても、食害防止チューブと同様に耐雪用支柱が切望されている。特に防獣柵の場合、ネット部分の面に雪が固着することで大きな重さが支柱にかかり、支柱が折損することが多い。折損を避けるために剛性を高めた支柱が提供されているが、特に湿雪による支柱の折損は依然として発生していた。
【0031】
雪による支柱の折損を避ける最も一般的な方法は、降雪前にネット部分を支柱から外し、融雪後に再びネット部分を支柱にかける「雪下ろし」という作業を実施することである。しかしながら、奥地造林地の増加や林業従事者の減少など様々な要因から、現状では「雪下ろし」の実施は非現実的である。
【0032】
そこで発明者等は、食害防止チューブ及び防獣柵に用いられる支柱について、鋭意検討した結果、自立性を保ちながらも剛性を下げることで、積雪の重みに対する局部的な屈曲が緩和され、破壊が抑制される支柱アセンブリを発明するに至った。
【0033】
<支柱アセンブリ>
食害防止チューブ用、又は防獣柵用の支柱アセンブリについて、図面を参照して説明する。
図1は、支柱アセンブリ1の構造を説明するため図である。
【0034】
図1の101Aは、支柱アセンブリ1(101C参照)を構成するロッド束12の斜視図である。101Aに示すロッド束12は7本のロッド材10で構成される。ロッド束12は、最小本数2本から最大本数10本まで本数のロッド材10で構成することができる。
【0035】
ロッド束12の長さLは、180cm以上210cm以下であることが好ましい。長さLを180cm以上とすることにより地中に40cmを埋め込んだ際にも、地表部で140cmを確保でき、また長さLを210cm以下とすることにより地中に40cmを埋め込んだ際にも、地表部で170cmを確保できる。
【0036】
ロッド材10の材質は、強化繊維を含む繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)、又は強化繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)であることが好ましい。繊維強化熱硬化性樹脂及び繊維強化熱可塑性樹脂の含まれる強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び鋼繊維などの無機繊維、アラミド繊維及びその他有機繊維など含む有機繊維を適用することができる。
【0037】
繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)に含まれるマトリックス樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを適用することができる。
【0038】
上記のマトリックス樹脂のなかでも、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂との2種のブレンド品であることが好ましく、不飽和ポリエステル樹脂とビニルエステル樹脂との質量比が20:80~70:30であることが好ましい。このような構成にすることにより、ロッド材10のマトリックス樹脂は、曲げ応力に対して柔軟に対応するために可撓性を有することができ、また、コスト的にも安価にできる。
【0039】
繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)に含まれるマトリックス樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などを適用することができる。上記のマトリックス樹脂なかでも、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂であることが好ましい。
【0040】
図1の101Bは、ロッド束12を切断面線I-Iから見た断面図である。101Bに示すように、ロッド束12は7本のロッド材10で構成されている。それぞれのロッド材10の直径Dは、2mm以上6mm以下の範囲内とされる。101Bでは、ロッド束12を構成する複数(7本)のロッド材10は同じ直径Dである。
【0041】
ただし、複数のロッド材10は同じ直径Dでなくてもよく、複数のロッド材10は、異なる直径のロッド材10を少なくとも1本含む、例えば、異なる直径D同士の組み合わせでもよい。
【0042】
異なる直径D同士の組み合わせは、例えば、複数のロッド材10の直径Dは全て異なっていてもよい。また、複数のロッド材10は、ある直径Dを有する数本のロッド材10のグループと、異なる直径Dを有する数本のロッド材10のグループとにより、構成できる。ただし、複数のロッド材10の直径Dはこれらに限定されない。
【0043】
図1の101Cは、支柱アセンブリ1の全体図である。101Cにように、支柱アセンブリ1は、ロッド束12と、ロッド束12の長さ方向の両端部を結束固定する結束固定部14と、を備える。
【0044】
結束固定部14は、接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、固定具又はこれらの組み合わせで構成できる。
【0045】
101Cの支柱アセンブリ1の結束固定部14は、金属、プラスチック、各種材料のキャップ状の固定具で構成されている。キャップ状の固定具がロッド束12の端部に取り付けられている。
【0046】
結束固定部14となる接着剤としては、エポキシ接着剤、アクリル接着剤などを適用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂などを適用でき、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などを適用できる。
【0047】
結束固定部14により結束固定されるロッド束12の結束部分の結束長さL1は、5cm以上20cm以下であることが好ましい。また、結束長さL1とロッド束10の長さLとの比は、1:21~1:5.25であることが好ましい。
【0048】
結束固定部14は、ロッド束12の長さ方向両端部の少なくとも2箇所に設けられ、さらに、両端部の結束固定部14の間に少なくとも1個以上の追加の結束固定部(不図示)を設けることができる。両端部の結束固定部14を含め、ロッド束12に最大で10箇所の位置に結束固定部14を設けることができる。
【0049】
<支柱アセンブリの作用>
支柱アセンブリ1によれば、2mm以上6mm以下の直径のロッド材10を複数本のロッド束12とし、ロッド束12の長さ方向の両端部の少なくとも2か所を結束固定部14で結束固定することにより、支柱アセンブリ1の自立性を維持しながら、積雪の荷重に対し、屈曲時における局部的な断面形状の変形自由度を確保することにより、折損を低減することができる。
【0050】
支柱アセンブリ1の作用について、7本のロッド材10で構成されたロッド束12を例に、
図2及び
図3に基づいて説明する。
【0051】
図2は施工後、静置時から小変形時における支柱アセンブリ1のロッド束12の断面形状の変化を示している。
【0052】
図2の102Aは、支柱アセンブリ1の静置時の状態の全体図であり、
図2の102Bは支柱アセンブリ1の静置時の状態のロッド束12を切断面線II-IIから見た断面図である。
図2の102A及び102Bに示すように、支柱アセンブリ1に荷重が加えられていない鉛直状態の場合、ロッド束12の断面形状は、隣接するロッド材10同士が接触する配置となる断面形状となる。なお、
図2の102Bの断面形状は、ロッド束12の結束固定部14により結束固定されている部分(結束部分)の断面形状(不図示)と基本的に一致する。
【0053】
図2の102Cは、支柱アセンブリ1に外力(荷重)が加えられた小変形状態の全体図であり、
図2の102Dは支柱アセンブリ1の小変形状態のロッド束12を切断面線III-IIIから見た断面図である。
図2の102C及び102Dに示すように、曲げ変位に応じて、結束固定部14により結束固定されていな部分(無結束部分)は、断面形状に微少な変形が発生し、静置段階における座屈強度及び曲げ剛性からは徐々に低下していく。
図2の102Bと102Dとを比較すると、各ロッド材10の配置位置に小さな変化が見られる。
【0054】
一方、支柱アセンブリ1の静置時から小変形時において、ロッド束12の結束部分の断面形状(不図示)は変化しない。
【0055】
図3は施工後、小変形時から大変形時における支柱アセンブリ1のロッド束12の断面形状の変化を示している。
【0056】
図3の103A及び103Bは、
図2の102C及び102Dと同じで、支柱アセンブリ1に外力が加えられた小変形状態を示している。
図3の103A及び103Bの説明は省略する。
【0057】
図3の103Cは、支柱アセンブリ1に、さらに外力が加えられた大変形状態の全体図であり、
図3の103Dは支柱アセンブリ1の大変形状態のロッド束12を切断面線IV-IVから見た断面図である。
【0058】
支柱アセンブリ1に小変形時から大変形時に至るまでの曲げ特性は、
図3の103Dに示すように、ロッド束12が無結束部分の中央付近を起点として、均一な曲率になる様に、外力に応じて安定した断面配置を求めて概ね規則的に移動することにより断面形状が変化する。
【0059】
結果として、曲げ荷重の入力に対して直交する方向から見て、断面形状が見かけ上、薄肉化を模する様に変形する。尚、変形の終局においては、ロッド束12を構成する各ロッド材10が、
図3の103Dに示すように、一直線に近い形状に配置されることにより、個々のロッド材10に発生する局部的な屈曲が緩和され、ロッド束12の破壊が抑制される。
【0060】
支柱アセンブリ1の小変形時から大変形時において、ロッド束12の結束部分の断面形状(不図示)は変化しない。
【0061】
図2及び
図3において、ロッド束12の断面形状を例示したが、これらの断面形状に限定されず、支柱アセンブリ1に加えられる外力に応じて、ロッド束12の断面形状は変化しうることが理解できる。
【0062】
支柱アセンブリ1のロッド束12は、複数本のロッド材10を、その両端部の位置において結束固定部14により結束固定されているので、自立性も確保できる。
【0063】
<食害防止チューブ>
次に、支柱アセンブリ1を備える食害防止チューブについて説明する。
図4は食害防止チューブを幼齢木に装着した状態を示す斜視図である。
【0064】
図4に示すように、食害防止チューブ30は、支柱アセンブリ1と、ネット部材32と、留め具50と、を備える。
【0065】
ネット部材32は、合成繊維の織物から成り、筒状の覆い部33と、覆い部33から内方に突出して覆い部33の長手方向に沿って延び、支柱アセンブリ1が挿通可能な筒状の挿通部34とを含む。食害防止チューブ30は、ネット部材32の覆い部33が、地面35に植生された幼齢木36を覆った状態で、挿通部34に挿通された支柱アセンブリ1が地面35に打ち込まれて、幼齢木36に装着される。既述したように支柱アセンブリ1は、複数のロッド材10を備えるロッド束12と、ロッド束12の両端部を結束固定する結束固定部14とを備える。
【0066】
ネット部材32に用いられる合成繊維として、例えば、ポリ乳酸繊維である東レ株式会社製の商品名「エコディア」(登録商標)、高耐候性ポリプロピレンなどが適用される。ポリ乳酸繊維であるエコディアは、生分解性繊維であり、耐久性を有する期間が経過した後、微生物によって、完全に消費され、炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなどの自然的副産物に変化するので、自然環境に悪影響を与えることを防止できる。
【0067】
図5は、
図4に示す食害防止チューブ30を切断面線V-Vから見た断面図である。
図5に示すように、ネット部材32は、覆い部33である第1筒状部40と、挿通部34である第2筒状部41とが二重織(筒織)された合成繊維の織物の第1筒状部40が表裏反転されて、挿通部34が覆い部33から内方に突出して、覆い部33の長手方向に沿って延びた状態で使用される。
【0068】
ネット部材32は、覆い部33を実現するための第1筒状部40の一方側に、一重織によって第1筒状部40の長さ方向に製織される第1耳部42を有し、第1筒状部40の他方側に、一重織によって第1筒状部40の長さ方向に製織される第2耳部43を有している。さらに、挿通部34を実現するための第2筒状部41が、第1耳部42の中間部に第1筒状部40と平行に製織されている。第1筒状部40の両側は、一重織された、第1耳部42と第2耳部43とによって、第1筒状部40の長手方向に補強されており、第2筒状部41の両側は、一重織された、第1耳部42によって、第2筒状部41の長手方向に補強されている。また、支柱アセンブリ1を挿通部34に挿通することによって、挿通部34と覆い部33とで構成されるネット部材32を支柱アセンブリ1に沿って延びる筒状とすることができる。これによって、食害防止チューブ30の部品点数を削減し、現場での組み立てを容易化できる。
【0069】
また、覆い部33が地面35に植生された幼齢木36を覆った状態で、支柱アセンブリ1を挿通部34に挿通し、支柱アセンブリ1の下端を地面35に打ち込むだけで、地面35に植生された幼齢木36に食害防止チューブ30を容易に装着することができる。
【0070】
図4に示すように、ネット部材32が支柱アセンブリ1から抜け出ないように、留め具50によりネット部材32と支柱アセンブリ1とを固定することが好ましい。留め具50は弾性変形可能な断面形状がC形の部材である。
【0071】
図4では、2個の留め具50によりネット部材32と支柱アセンブリ1とが固定されている。上側の留め具50は、覆い部33(第1筒状部40)の内側から、挿通部34(第2筒状部41)と支柱アセンブリ1とを、支柱アセンブリ1と直交する方向から挟み込むようにして固定する。また、下側の留め具50は、覆い部33(第1筒状部40)の外側から、覆い部33(第1筒状部40)と挿通部34(第2筒状部41)と支柱アセンブリ1とを支柱アセンブリ1と直交する方向から挟み込むようにして固定する。上側の留め具50は、覆い部33の上部(開口部)より0cm~20cmの範囲内に取り付けられる。上側の留め具50は、例えば、上部から15cm程度の位置に取り付けられる。下側の留め具50は、地際部より0cm~10cmの範囲内に取り付けられる。下側の留め具50は、例えば、地際部から5cm程度の位置に取り付けられる。上側の留め具50と下側の留め具50とで、支柱アセンブリ1を挟み込む方向を異ならせることで、左右様々な方向からの風に対して留め具50の耐久性を高める効果がある。
【0072】
図4では、2個の留め具50を利用する場合を例示したが、留め具50は2個に限定されない。例えば、上側の留め具50のみで、ネット部材32と支柱アセンブリ1とを固定してもよい。
【0073】
ネット部材32の覆い部33の直径×長さは、例えば、25cm×170cmである。覆い部33の直径が25cmであれば、該直径方向の幅寸法が概ね30cm以下の幼齢木36に、幼齢木36の成長を妨げることなく装着できる。なお、覆い部33は、円筒状に装着されるものに限定されない。例えば、幼齢木36の枝の向きに沿った、断面が楕円形の筒状に装着されるものでも良い。
【0074】
例えば、支柱アセンブリ1の長さが210cmで、地面35に40cm程度打ち込まれ、ネット部材32の長さが170cmである場合、支柱アセンブリ1は、ネット部材32の開口部から上方向に突出する長さを10cm未満にすることが好ましい。
【0075】
また、支柱アセンブリ1の長さが、210cmで、地面35に40cm程度打ち込まれ、ネット部材32の長さが140cmである場合、支柱アセンブリ1は、ネット部材32の開口部から上方向に突出する長さを30cm未満にすることが好ましい。
【0076】
支柱アセンブリ1は、屈曲時における局部的な断面形状の変形自由度を確保するので、覆い部33に積もった雪の重み、および強風などによって、曲げ荷重が支柱アセンブリ1に加わった場合でも、曲げ荷重に起因して支柱アセンブリ1が破断することを抑制できる。覆い部33に積もった雪が解け、覆い部33が受ける荷重が解除されると、支柱アセンブリ1は、荷重を受ける前の形状に戻る。支柱アセンブリ1のロッド束12を構成するロッド材10がFRPである場合、軽量であるため持ち運びが容易になる。
【0077】
覆い部33の下端部は、幼齢木36が植生された地面35に、杭60により杭打ちされる。杭60は、細長な竹製の短尺材を用いて作製可能である。杭60の打ち込み方向先端部61は、杭打ちされるときに杭60が地面35から受ける抵抗を低減するために、鋭角に形成されている。杭60の打ち込み方向と垂直な側部62には、杭60に覆い部33を係止する係止部63が形成されている。係止部63は、例えば、側部62に形成された溝部である。
【0078】
ネット部材32は、覆い部33の下端部を地面35に固定する杭60を含んでいるので、覆い部33の下端部と、幼齢木36が植生されている地面35との間に隙間がない状態で、覆い部33の下端部を地面35に固定できる。これによって、ネット部材32が風に煽られて、支柱アセンブリ1から抜け出ることを防止できる。また、害獣が覆い部33の下端部を捲り上げて、ネット部材32を損壊することを防止できる。
【0079】
<防獣柵>
次に、支柱アセンブリ1を備える防獣柵について説明する。
図6は防獣柵の構造を説明するための図であり、106Aは防獣柵の一部正面図であり、106Bは側面図である。
【0080】
図6の106Aに示すように、防獣柵80は、複数の支柱アセンブリ1と、複数の支柱アセンブリ1の間に設けられるネット部材81と、複数の支柱アセンブリ1とネット部材81とを固定する留め具82と、を備える。
【0081】
ネット部材81の長さ(縦方向)×横幅は、例えば、2.6m×48m/反であり、ポリエチレン繊維を主として構成され、補強用として超高分子量ポリエチレン繊維(イザナス:東洋紡績の登録商標)やステンレス線を挿入したラッセル網、有結網ないしは無結網で構成される。ラッセル網方式を採用することにより、動物の衝突や、落石等に対する衝撃吸収性を向上できる。有結網ないしは無結網を採用することにより、低コストで汎用性の高いネットを製造できる。ネット部材81の目合いは、例えば、70mmであり、50mm~200mmであることがより好ましい。なお、ネット部材81は、幅方向に1m毎に色を変えてもよい。遠くから設置距離が判別できる。
図6では、1m毎の色の違いを、ネット材81の網の太さの違いで表現している。実際のネット部材81は、基本的には同じ太さの網で構成される。
【0082】
複数の支柱アセンブリ1は、例えば、3m間隔で地面35に打ち込まれる。支柱アセンブリ1の長さは270cmであり、地面35に40cm程度打ち込まれる。既述したように支柱アセンブリ1は、複数のロッド材10を備えるロッド束12と、ロッド束12の両端部を結束固定する結束固定部14とを備える。
【0083】
複数の支柱アセンブリ1とネット部材81とは、留め具82により固定される。留め具82は、例えば、固定用補修糸であり、1本の支柱アセンブリ1に対して3箇所、50cm間隔で設けられる。固定用補修糸を巻き結びすることにより支柱アセンブリ1とネット部材81とが固定される。支柱アセンブリ1とネット部材81とを固定する際、ネット部材81をたわませることが好ましい。落石や土砂の堆積、野生動物からの攻撃に対するネット部材81の耐衝撃性を担保できる。
【0084】
図6の106Bに示すように、小動物の地際からの侵入防止のため、ネット部材81は、その下端部が支柱アセンブリ1から約60cm(長さL2)程度、地面35に沿って広がるように、すなわち、垂れ下がり部が形成されるように、支柱アセンブリ1に固定される。ネット部材81を基準に、支柱アセンブリ1が取り付けられる側が野生動物から保護すべき領域となる。
【0085】
図6の106A及び106Bに示すように、アンカー杭83により、ネット部材81の下端部(垂れ下がり部の下端)が地面35に固定される。隣接する支柱アセンブリ1の間に、2本のアンカー杭83が打ち込まれる。アンカー杭83の数、打ち込む位置などは、
図6に限定されず、適宜変更できる。
【0086】
図6の106A及び106Bに示すように、支柱支持ロープ84が、支柱アセンブリ1の上部に取り付けられる。支柱支持ロープ84は支柱アセンブリ1が倒れないように、支柱アセンブリ1を支持する。支柱支持ロープ84は2方向に延び、支柱支持ロープ84の端部が、それぞれアンカー杭83により地面35に固定される。
図6の106Bに示すように、支柱支持ロープ84は、ネット部材81を挟んで、逆方向(2方向)に張られている。支柱支持ロープ84は、例えば、φ8mmであり、長さが9mである。支柱支持ロープ84は、例えば、支柱アセンブリ1に巻き結びで取り付けられる。支柱支持ロープ84は、1本ごと又は複数本ごとに支柱アセンブリ1に取り付けることができる。
【0087】
支柱アセンブリ1は、屈曲時における局部的な断面形状の変形自由度を確保するので、ネット部材81に積もった雪の重み、および強風などによって、曲げ荷重が支柱アセンブリ1に加わった場合でも、曲げ荷重に起因して支柱アセンブリ1が破断することを抑制できる。ネット部材81に積もった雪が解け、ネット部材81が受ける荷重が解除されると、支柱アセンブリ1は、荷重を受ける前の形状に戻る。支柱アセンブリ1のロッド束12を構成するロッド材10がFRPである場合、軽量であるため持ち運びが容易になる。
【符号の説明】
【0088】
1…支柱アセンブリ、10…ロッド材、12…ロッド束、14…結束固定部、30…食害防止チューブ、32…ネット部材、33…覆い部、34…挿通部、35…地面、36…幼齢木、40…第1筒状部、41…第2筒状部、42…第1耳部、43…第2耳部、50…留め具、60…杭、61…方向先端部、62…側部、63…係止部、80…防獣柵、81…ネット部材、82…留め具、83…アンカー杭、84…支柱支持ロープ