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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023794
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129626
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 巧
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087FF06
5E087GG26
5E087GG32
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】リテーナの挿抜に要する力の増大を抑えてコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が確実に安定して得られるようにすること。
【解決手段】リテーナ30は、端子14との係合部を含む棒状のリテーナ本体32と、その挿入方向Aについてリテーナ本体32から一側方に突出する第1突部36と、挿入方向Aについて第1突部36の後方位置にて、リテーナ本体32から延出し、且つリテーナ本体32に前記一側方から間隔をおいて対峙する弾発片40と、弾発片40からリテーナ本体32に向けて突出する第2突部42とを有し、コネクタハウジング10は、受容孔16に対するリテーナ30の挿入過程にて第1突部36に乗り上がるべき係止片20を有し、リテーナ30の挿入完了状態にて、挿入方向Aについて第1突部36の後端が係止片20の前端に係合し、且つ第2突部42が係止片20に、当該係止片20と第1突部36との係合側に対して離反する側から乗り上がった状態になる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延在する少なくも1つの端子を収容するコネクタハウジングと、前記端子の延在方向に対して横切る方向に前記コネクタハウジングに設けられた受容孔に挿入されることにより前記端子を前記コネクタハウジングに係止するためのリテーナとを有する電気コネクタであって、
前記リテーナは、
前記端子との係合部を含む棒状のリテーナ本体と、
前記リテーナ本体から一側方に突出する第1突部と、
前記リテーナの挿入方向における前記第1突部の後方位置にて前記リテーナ本体に前記一側方から間隔をおいて対峙する弾発片と、
前記弾発片から前記リテーナ本体に向けて突出する第2突部とを有し、
前記コネクタハウジングは、前記受容孔に対する前記リテーナの挿入過程にて前記第1突部に乗り上がるべき係止片を有し、
前記リテーナの挿入完了状態にて、前記挿入方向における前記第1突部の後端が前記係止片の前端に係合し、且つ前記第2突部が前記係止片に、当該係止片と前記第1突部との係合側に対して離反する側から乗り上がった状態にある電気コネクタ。
【請求項2】
前記リテーナの挿入完了状態において、前記係止片は前記リテーナ本体と前記第2突部とにより前記挿入方向に直交する方向から挟まれる請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記リテーナは前記リテーナ本体から前記挿入方向に対して直交する方向に延出したフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記リテーナの挿入完了状態に於いて前記係止片を受容する開口を有し、前記開口を画定する前記フランジ部の部分が両持ち梁状の前記弾発片をなす請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記フランジ部は前記コネクタハウジングと前記挿入方向における当接すべき部分を含み、前記コネクタハウジングとの当接により前記リテーナの挿入完了状態を規定する請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記係止片は、前記コネクタハウジングの壁面から前記挿入方向における後方に延出し、前記開口に進入可能な片持ち片により構成されている請求項3又は4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第1突部は前記挿入方向における後端面が傾斜面を含む請求項1~5の何れか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記第2突部の前記挿入方向における前端面及び当該前端面に対向する前記係止片の前記挿入方向における後端面の少なくとも一方が傾斜面を含む請求項1~6の何れか一項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、更に詳細には、コネクタハウジングに配置される端子の抜け止めを行うリテーナを含む電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタとして、所定の方向に延在する少なくも1つの端子を収容するコネクタハウジングと、前記端子の延在方向に対して横切る方向に前記コネクタハウジングに設けられた受容孔に挿入されることにより前記端子を前記コネクタハウジングに係止するためのリテーナとを有する電気コネクタが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
リテーナは、遊端にリテーナ側突部を有する係合爪を備え、コネクタハウジングの受容孔に対する挿入により、リテーナ側突部がコネクタハウジングに形成されたハウジング側突部を乗り越え、リテーナ側突部の後端がハウジング側突部の前端に係合することにより、コネクタハウジングに保持(係止)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-181470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電気コネクタでは、リテーナの挿抜が繰り返されると、リテーナ側突部がハウジング側突部に当接してハウジング側突部を乗り越える際にこれらに作用する押圧力によりリテーナ側突部及びハウジング側突部が変形し、リテーナ側突部とハウジング側突部との係合代が低減する虞がある。このことにより、コネクタハウジングに対するリテーナの保持力を安定して維持することが難しい。
【0006】
リテーナ側突部及びハウジング側突部の突出高さを大きくしてリテーナ側突部とハウジング側突部との係合代の初期値を大きくし、コネクタハウジングに対するリテーナの保持力の増大を図ることが考えられる。しかし、係合代が大きいと、リテーナの挿抜に要する力が大きくなると共に、リテーナ側突部及びハウジング側突部が潰れ易くなる。このため、係合代の初期値が大きく設定されてもコネクタハウジングに対するリテーナの保持力を長期間に亘って安定して得ることが難しい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、リテーナの挿抜に要する力の増大を抑えてコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が確実に安定して得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、所定の方向(X9)に延在する少なくも1つの端子(14)を収容するコネクタハウジング(10)と、前記端子の延在方向に対して横切る方向に前記コネクタハウジングに設けられた受容孔(16)に挿入されることにより前記端子を前記コネクタハウジングに係止するためのリテーナ(30)とを有する電気コネクタであって、前記リテーナは、前記端子との係合部を含む棒状のリテーナ本体(32)と、前記リテーナ本体から一側方に突出する第1突部(36)と、前記リテーナの挿入方向における前記第1突部の後方位置にて、前記リテーナ本体から延出し、且つ前記リテーナ本体に前記一側方から間隔をおいて対峙する弾発片(40)と、前記第1弾発片から前記リテーナ本体に向けて突出する第2突部(42)とを有し、前記コネクタハウジングは、前記受容孔に対する前記リテーナの挿入過程にて前記第1突部に乗り上がるべき係止片(20)を有し、前記リテーナの挿入完了状態にて、前記挿入方向における前記第1突部の後端が前記係止片の前端に係合し、且つ前記第2突部が前記係止片に、当該係止片と前記第1突部との係合側に対して離反する側から乗り上がった状態になる。
【0009】
この態様によれば、リテーナの挿抜に要する力の増大を抑えてコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が確実に安定して得られる。
【0010】
上記の態様において、前記リテーナの挿入完了状態において、前記係止片は前記リテーナ本体と前記第2突部とにより前記挿入方向に直交する方向から挟まれる。
【0011】
この態様によれば、係止片とリテーナとの間に、がた付きの原因になる前記挿入方向に直交する方向に隙間が生じることが抑制される。
【0012】
上記の態様において、前記リテーナは前記リテーナ本体から前記挿入方向に対して直交する方向に延出したフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記リテーナの挿入完了状態に於いて前記係止片を受容する開口を有し、前記開口を画定する前記フランジ部の部分が両持ち梁状の前記弾発片をなしていてもよい。
【0013】
この態様によれば、弾性変形可能な第1弾発片がリテーナの構造を複雑にすることなく適確に設けられる。
【0014】
上記の態様において、前記フランジ部は前記コネクタハウジングと前記挿入方向における当接すべき部分を含み、前記コネクタハウジングとの当接により前記リテーナの挿入完了状態を規定してもよい。
【0015】
この態様によれば、リテーナの構造を複雑にすることなくリテーナの挿入完了状態が規定される。
【0016】
上記の態様において、前記係止片は前記コネクタハウジングの壁面から前記挿入方向における後方に延出した片持ち片により構成されていてもよい。
【0017】
この態様によれば、弾性変形可能な係止片がコネクタハウジングの構造を複雑にすることなく適確に設けられる。
【0018】
上記の態様において、前記挿入方向における前記第1突部の後端面が傾斜面であってもよい。
【0019】
この態様によれば、第1突部に対する係止片の乗り上がりが大きい力を要することなく徐々に行われる。
【0020】
上記の態様において、前記挿入方向における前記第2突部の前端面及び当該前端面に対向する前記係止片の前記挿入方向における後端面の少なくとも一方が傾斜面であってもよい。
【0021】
この態様によれば、第2突部に対する係止片の乗り上がりが大きい力を要することなく徐々に行われる。
【発明の効果】
【0022】
以上の態様によれば、リテーナの挿抜に要する力の増大を抑えてコネクタハウジングに対するリテーナの保持力が確実に安定して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一つの実施形態による電気コネクタの斜視図
図2】本実施形態による電気コネクタの断面図
図3】本実施形態による電気コネクタの右側面図
図4】本実施形態による電気コネクタの左側面図
図5】本実施形態による電気コネクタのリテーナ挿入過程1を示す要部の拡大断面図
図6】本実施形態による電気コネクタのリテーナ挿入過程2を示す要部の拡大断面図
図7】本実施形態による電気コネクタのリテーナ挿入過程3を示す要部の拡大断面図
図8】本実施形態による電気コネクタのリテーナ挿入完了状態を示す要部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る電気コネクタの実施形態について説明する。以下の説明では、前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zを、図示の矢印に示すように定義する。但し、この方向の定義は説明の便宜上のことであり、これに限定されることはない。
【0025】
本実施形態の電気コネクタは、図1図4に示されているように、合成樹脂の成形品によるコネクタハウジング10を有する。コネクタハウジング10は、所定の方向、本実施形態では前後方向Xに延在する複数の端子室12を含む。端子室12は、区画壁10Cにより、上下2段の各段に、左右方向Yに10個に格子状に区画されている。各端子室12は前後方向Xに延在する雌型端子14(図3参照)を収容する。
【0026】
コネクタハウジング10には当該コネクタハウジング10を左右方向に貫通するリテーナ受容孔16が形成されている。リテーナ受容孔16は、より詳細には、図2に示されているように、コネクタハウジング10の右側壁10A、左側壁10B及び各端子室12の区画壁10Cに貫通形成されている。リテーナ受容孔16には右側壁10Aの開口端16Aからリテーナ30が挿入方向Aをもって挿入される。尚、開口端16Aは右側壁10Aに形成されている後述のフランジ受容凹部18の底部に開口している。
【0027】
コネクタハウジング10にはリテーナ受容孔16の前側を左右方向Yに連続して線状に延在するリテーナ案内レール部19(図2参照)が形成されている。
【0028】
ここで、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入方向Aは左右方向Yになる。挿入方向Aと左右方向Yとは同じ方向であり、以降の説明では、挿入方向Aと左右方向Yとを、便宜上、使い分けることがある。
【0029】
リテーナ30は、樹脂成形品であり、略矩形断面形状の棒状のリテーナ本体32と、リテーナ本体32の一端(基端)32Aから挿入方向Aに対して直交する方向に延出する平板状のフランジ部34とを一体に有する。
【0030】
リテーナ本体32は、リテーナ受容孔16に受容されて上下2段の雌型端子14間を、これらに跨るようにして左右方向Yに延在し、各雌型端子14に係合する。これにより、リテーナ30は全ての雌型端子14をコネクタハウジング10に一括して係止する。尚、リテーナ30による雌型端子14の係止について、より詳細な説明が必要ならば、特開2018-181470号公報を参照されたい。
【0031】
コネクタハウジング10の右側壁10Aにはフランジ部34を受容するフランジ受容凹部18が形成されている。フランジ部34は、フランジ受容凹部18の底壁18Aに当接することにより、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入完了状態を規定する。リテーナ30は、挿入完了状態では、リテーナ本体32の遊端32Bがリテーナ受容孔16の左側壁10Bの開口端16Bに整合し、開口端16Bからリテーナ本体32の遊端を右側に押されることにより、リテーナ受容孔16から取り出される。
【0032】
コネクタハウジング10は、図5図8に示されているように、フランジ受容凹部18の底壁18Aからリテーナ30の挿入方向Aについて後方に向けて延出した片持ち片によるハウジング側係止片(係止片)20を有する。ハウジング側係止片20は平板状の主部20A及び主部20Aの遊端の後面から後方に突出した突部20Bを含む。
【0033】
フランジ受容凹部18の底壁18Aにはリテーナ受容孔16を後方に向けて拡張したスリット状の開口17が形成されている。ハウジング側係止片20の基部は、開口17に整合する部分に、挿入方向Aについて前方に向けて露呈する前面20Eを有する。
【0034】
主部20Aの遊端の前側角部及び突部20Bの後側角部は、換言すると、ハウジング側係止片20の挿入方向Aについて後端面の前後の両角部は、挿入方向Aに傾斜した面取り状の傾斜面20C及び20Dになっている。
【0035】
リテーナ本体32の前面にはリテーナ案内レール部19に左右方向Y(挿入方向A)に摺動可能に係合すべく左右方向Yに線状に延在するレール係合溝部33が形成されている。レール係合溝部33とリテーナ案内レール部19との摺動可能な係合により、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入が左右方向Yに線状に案内される。これにより、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入が円滑に行われ得るようになる。
【0036】
リテーナ本体32には基端32Aの近傍の後面から挿入方向Aに直交する後方に向けて突出した第1突部36が形成されている。第1突部36は挿入方向Aに所定の長さに亘って延在する平らな頂面36Aを有する。第1突部36の挿入方向Aについて前後端面は、挿入方向Aに傾斜した傾斜面36B及び36Cになっている。これにより、第1突部36は側面視で台形をなす。
【0037】
フランジ部34は、リテーナ30の挿入過程及び挿入完了状態に於いてハウジング側係止片20を受容する開口38を有する。開口38はフランジ部34の後縁近傍を上下方向Zに長い矩形の開口である。フランジ部34は後縁と開口38との間に両持ち片によるリテーナ側弾発片(弾発片)40を画定している。リテーナ側弾発片40は、挿入方向Aについて第1突部36の後方位置にてリテーナ本体32から延出し、且つリテーナ本体32に対して後方から前後方向Xに間隔をおいて対峙し、左右方向Yに比して前後方向Xに弾性変形し易い両持ち片である。
【0038】
フランジ部34は、リテーナ側弾発片40から、リテーナ本体32に向けて、換言すると、開口38に向けて突出する第2突部42を有する。第2突部42は、挿入方向Aに所定の長さに亘って延在する平らな頂面42Aを有し、その挿入方向Aについての全体が第1突部36よりも挿入方向Aについて後方位置に位置している。第2突部42の挿入方向Aについて前端面は、挿入方向Aに傾斜した傾斜面42Bになっている。
【0039】
フランジ部34には、図1に示されているように、ハウジング側係止片20の突部20Bに形成された凹部21に嵌合する突部35が形成されている。
【0040】
次に、図5を参照してハウジング側係止片20及びリテーナ30の各部の寸法について説明する。リテーナ受容孔16の開口端16Aの前後方向Xの寸法aと第1突部36を含む前後方向Xの寸法bとは同一寸法である。突部20Bを含むハウジング側係止片20の前後方向Xの寸法cと前後方向Xに互いに対峙する開口38の内面38Aと第1突部36の頂面36Aとの前後方向Xの寸法dとは同一寸法である。寸法c及びdは0.50~0.70mm程度であってよい。第1突部36の前後方向Xの寸法e及び第2突部42の前後方向Xの寸法fは、同一であっても、互いに異なっていてもよい。寸法e、fは、0.08~0.14mm程度であってよい。
【0041】
次に、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入過程を、図5図8を参照して説明する。
【0042】
先ず、図5に示されているように、リテーナ30のリテーナ本体32が、遊端32B(図1参照)を先頭として、右側の開口端16Aからリテーナ受容孔16に挿入される。このリテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入が進行すると、図6に示されているように、ハウジング側係止片20の主部20Aが第1突部36の頂面36Aに弾発的に乗り上がると共に開口38にハウジング側係止片20が進入する。つまり、リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入過程にて、ハウジング側係止片20の主部20Aが第1突部36の頂面36Aに弾発的に乗り上がると共に開口38にハウジング側係止片20が進入する。寸法aと寸法bとが同一であると共に寸法cと寸法dとが同一であるから、この時に必要な挿入力はリテーナ30とコネクタハウジング10との摩擦抵抗に打ち勝つ低い値である。
【0043】
リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入の進行に伴い、第2突部42の傾斜面42Bがハウジング側係止片20の傾斜面20Dに対して上り側に摺動変位する。これにより、図7に示されているようにリテーナ側弾発片40が前後方向Xに弓状に弾性変形し、ハウジング側係止片20の主部20Aが第1突部36の頂面36Aに乗り上った状態下で、ハウジング側係止片20の突部20Bが第2突部42の頂面42Aに弾発的に乗り上がる。
【0044】
ハウジング側係止片20の主部20Aの第2突部42の頂面42Aに対する乗り上がりは、ハウジング側係止片20の傾斜面20Dに対する第2突部42の傾斜面42Bの摺動のもとに徐々に、大きい力を必要とすることなく円滑に行われる。
【0045】
リテーナ受容孔16に対するリテーナ30の挿入が更に進み、図8に示されているように、フランジ部34がフランジ受容凹部18の底壁18Aに当接するリテーナ30の挿入完了状態になると、ハウジング側係止片20の突部20Bが第2突部42の頂面42Aに乗り上った状態で、ハウジング側係止片20の主部20Aが第1突部36の頂面36Aに乗り上った状態から離脱し、ハウジング側係止片20が第1突部36を乗り越え、第1突部36の挿入方向Aについて後端(傾斜面36C)がハウジング側係止片20の挿入方向Aについて前端(挿入方向Aに直交する方向に延在する前面20E)に係合する。
【0046】
このリテーナ30の挿入完了状態では、第2突部42がハウジング側係止片20に、ハウジング側係止片20と第1突部36との係合側に対して離反する側から弾発的に当接した状態で、第1突部36が開口17に進入し、第1突部36の傾斜面36Cがハウジング側係止片20の前面20Eに挿入方向Aに対向する。この対向状態は、リテーナ30がリテーナ受容孔16から抜け出すことを抑制する、リテーナ30の第1突部36の傾斜面36Cとハウジング側係止片20の前面20Eとの係合状態である。
【0047】
第2突部42を含む部分の開口38の前後方向の寸法g(図5参照)は、寸法c-f+eであり、寸法f=eであれば、寸法g=cとなり、リテーナ30の挿入完了状態においてハウジング側係止片20とリテーナ30との間に前後方向Xに隙間が生じることがない。尚、寸法c=dでない場合には、寸法f=eでなくても寸法g=cとすることができる。
【0048】
換言すると、リテーナ30の挿入完了状態においては、リテーナ側弾発片40の前後方向Xの弾性変形が解除された状態で、リテーナ本体32と第2突部42とがハウジング側係止片20をリテーナ30の挿入方向Aに直交する前後方向Xから互いに正対する平面同士で挟む状態になり、第1突部36とハウジング側係止片20との係合代の方向(前後方向X)に実質的ながた付きが生じることがない。これにより、第1突部36の傾斜面36Cとハウジング側係止片20の前面20Eとの係合代が小さくても、第1突部36の傾斜面36Cとハウジング側係止片20の前面20Eとの係合が確実に行われる。
【0049】
このことにより、第1突部36の傾斜面36Cとハウジング側係止片20の前面20Eとの係合に大きい力を必要とすることがなく、第1突部36や第2突部42の変形や潰れ、摩損が抑制され、コネクタハウジング10に対するリテーナ30の係止が確実に行われる。
【0050】
リテーナ30をコネクタハウジング10から取り外すこと(抜去)は、リテーナ受容孔16の左側の開口端16Bからリテーナ本体32の遊端32Bを右側に押すことにより、上述したリテーナ30の挿入過程とは逆の過程によって行われる。
【0051】
かくして、リテーナ30の挿抜に要する力の増大を抑えてコネクタハウジング10に対するリテーナ30の保持力が長期間に亘って安定して得られる。
【0052】
リテーナ30の挿入時に要する挿入力は、ハウジング側係止片20が第2突部42に乗り上がるために必要な力により定まり、リテーナ30の抜去時に要する抜去力は、ハウジング側係止片20が第1突部36に乗り上がるために必要な力により定まる。このことにより、リテーナ30の挿入力及び抜去力を個別に設定できる。このリテーナ30の挿入力及び抜去力の設定は、第1突部36及び第2突部42の高さ(寸法e、f)及び又は傾斜面20D、36C、42Bの傾斜角度を選択することにより達成される。
【0053】
リテーナ30の挿入時に要する挿入力とリテーナ30の抜去時に要する抜去力とに差異を持たせたい場合には、第1突部36の寸法eと第2突部42の寸法fとに違いを持たせる、或いは/及び第1突部36の傾斜面36Cとハウジング側係止片20の傾斜面20D及び第2突部42の傾斜面42Bとに違いを持たせればよい。
【0054】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、第1突部36の高さは、本発明の課題を解決したうえで、可及的に大きいことが好ましく、第2突部42の高さより大きくても、小さくてもよい。第1突部36はリテーナ本体32の遊端32B或いはその近傍にまで延在してもよく、傾斜面36Bは必須ではない。
【符号の説明】
【0055】
10 :コネクタハウジング
10A :右側壁
10B :左側壁
10C :区画壁
12 :端子室
14 :雌型端子
16 :リテーナ受容孔
16A :開口端
16B :開口端
17 :開口
18 :フランジ受容凹部
18A :底壁
19 :リテーナ案内レール部
20 :ハウジング側係止片(係止片)
20A :主部
20B :突部
20C :傾斜面
20D :傾斜面
20E :前面
21 :凹部
30 :リテーナ
32 :リテーナ本体
32A :基端
32B :遊端
33 :レール係合溝部
34 :フランジ部
35 :突部
36 :第1突部
36A :頂面
36B :傾斜面
36C :傾斜面
38 :開口
38A :内面
40 :リテーナ側弾発片(弾発片)
42 :第2突部
42A :頂面
42B :傾斜面
A :挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8