(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023812
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】建設機械におけるバケット制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/32 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B66C13/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129671
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】細井 英彰
(72)【発明者】
【氏名】加門 嘉樹
(72)【発明者】
【氏名】角尾 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 拓朗
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204BA09
3F204DD13
(57)【要約】
【課題】建設機械において、閉じ上げの動作を簡単な操作で行うことができ、しかも、閉じ上げの動作中にバケット装置が開いてしまうことを抑制できる制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラ70のドラム動作制御部73は、制御モードが同調制御モードに設定され、特定巻き取り操作が行われ、かつ、バケット装置10が閉じ状態である場合に、一対のバケット13,13が開くことを回避するために予め設定された支持側緩み量に関する設定値に基づいて繰り出し量相対差目標値ΔLrを設定し、開閉側繰り出し量と支持側繰り出し量との差である繰り出し量相対差ΔLを演算し、繰り出し量相対差目標値ΔLrと繰り出し量相対差ΔLとの偏差Hを演算し、この偏差Hがゼロに近づくような指令信号を出力して支持ドラムDR2及び開閉ドラムDR1の動作を制御することにより、バケット装置10の閉じ状態を維持しながらバケット装置10を上昇させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と当該本体部に開閉可能に取り付けられた一対のバケットとを含むバケット装置と、前記本体部に接続されて当該本体部を支持する支持ロープの繰り出し及び巻き取りを行うウインチドラムである支持ドラムと、前記一対のバケットを開閉するための開閉ロープの繰り出し及び巻き取りを行うウインチドラムである開閉ドラムと、を備える建設機械に搭載されるバケット制御装置であって、
前記支持ロープの巻き取りを行うように前記支持ドラムを回転させるための操作である支持側巻き取り操作と前記支持ロープの繰り出しを行うように前記支持ドラムを回転させるための操作である支持側繰り出し操作が与えられる支持側ウインチ操作装置と、
前記開閉ロープの巻き取りを行うように前記開閉ドラムを回転させるための操作である開閉側巻き取り操作と前記開閉ロープの繰り出しを行うように前記開閉ドラムを回転させるための操作である開閉側繰り出し操作が与えられる開閉側ウインチ操作装置と、
前記支持ロープの繰り出し量である支持側繰り出し量を検出するための支持側検出器と、
前記開閉ロープの繰り出し量である開閉側繰り出し量を検出するための開閉側検出器と、
前記支持ロープの巻き取り及び前記開閉ロープの巻き取りを前記支持側巻き取り操作及び前記開閉側巻き取り操作の何れか一方の操作である特定巻き取り操作に基づいて行うことが可能な同調制御モードに制御モードを設定することが可能な制御モード設定部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記一対のバケットが閉じ状態であるか否かを判定する開閉状態判定部と、
前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定巻き取り操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記閉じ状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、前記一対のバケットが開くことを回避するために設定された設定値であって前記支持ロープの緩み量である支持側緩み量に関する設定値に基づいて前記開閉側繰り出し量と前記支持側繰り出し量との差の目標値である繰り出し量相対差目標値を設定し、前記開閉側繰り出し量と前記支持側繰り出し量との差である繰り出し量相対差を演算し、前記繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差を演算し、前記偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記閉じ状態を維持しながら前記バケット装置を上昇させるドラム動作制御部と、を含む、建設機械におけるバケット制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバケット制御装置であって、
前記同調制御モードでは、前記支持ロープの繰り出し及び前記開閉ロープの繰り出しを前記支持側繰り出し操作及び前記開閉側繰り出し操作の何れか一方の操作である特定繰り出し操作に基づいて行うことが可能であり、
前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定繰り出し操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記閉じ状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、前記設定値に基づいて前記繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差を演算し、前記偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記閉じ状態を維持しながら前記バケット装置を下降させる、バケット制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバケット制御装置であって、
前記開閉状態判定部は、前記一対のバケットが開き状態であるか否かを判定することが可能であり、
前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定巻き取り操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記開き状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、一対のバケットを所定の開度に維持するための目標値である第2の繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記第2の繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差である第2の偏差を演算し、前記第2の偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記開き状態を維持しながら前記バケット装置を上昇させる、バケット制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のバケット制御装置であって、
前記同調制御モードでは、前記支持ロープの繰り出し及び前記開閉ロープの繰り出しを前記支持側繰り出し操作及び前記開閉側繰り出し操作の何れか一方の操作である特定繰り出し操作に基づいて行うことが可能であり、
前記開閉状態判定部は、前記一対のバケットが開き状態であるか否かを判定することが可能であり、
前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定繰り出し操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記開き状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、一対のバケットを所定の開度に維持するための目標値である第2の繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記第2の繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差である第2の偏差を演算し、前記第2の偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記開き状態を維持しながら前記バケット装置を下降させる、バケット制御装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のバケット制御装置であって、
前記制御モード設定部は、前記制御モードを、前記同調制御モードと非同調制御モードとを含む複数のモードのうちの何れかに設定することが可能なように構成され、
前記非同調制御モードは、前記一対のバケットの開閉状態を変化させることを含む動作を、予め設定された特定の操作に基づいて前記バケット装置に行わせることが可能な制御モードである、バケット制御装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のバケット制御装置であって、
前記開閉状態判定部は、前記支持側繰り出し量と前記開閉側繰り出し量との差に基づいて前記一対のバケットが閉じ状態であるか否かを判定する、バケット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クレーンなどの建設機械においてバケット装置を開閉及び昇降させるためのバケット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の中には、第1のウインチロープの繰り出し及び巻き取りを行う第1のウインチドラムと、第2のウインチロープの繰り出し及び巻き取りを行う第2のウインチドラムと、を備え、第1及び第2のウインチロープの先端が接続された負荷の上昇及び下降の動作を行わせるものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、建設機械の中には、例えばクラムシェルバケットのように開閉可能で昇降可能なバケット装置を備えたものが知られている。このバケット装置は、第1及び第2のウインチロープの先端が接続されており、第1及び第2のウインチドラムによるウインチロープの繰り出し及び巻き取りに応じて開閉及び昇降の動作を行う。従って、このような建設機械は、第1のウインチドラムを動作させるための操作が与えられる第1のウインチ操作レバーと、第2のウインチドラムを動作させるための操作が与えられる第2のウインチ操作レバーと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設機械のオペレータは、例えばバケット装置が閉じた状態を維持しながらバケット装置を上昇させる動作である「閉じ上げ」の動作をバケット装置に行わせるためには、第1のウインチ操作レバーの操作と第2のウインチ操作レバーの操作を同時に行う必要がある。このような2つの操作を同時に行うことは、建設機械の操作に熟練していない非熟練オペレータにとって時間を要し、また、建設機械の操作に熟練している熟練オペレータにとっても疲労を伴う。具体的には、上記のような閉じ上げの動作をバケット装置に行わせるためには、当該動作中にバケット装置が開いてしまうことがないように、第1のウインチ操作レバーの操作量と第2のウインチレバーの操作量のバランスを調節することが必要であるため、作業性を高めることが難しいという問題がある。特許文献1の制御装置では、閉じ上げの動作に関する上記のような問題については何ら考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記の課題を解決することを目的とする。すなわち、本開示は、建設機械において、オペレータによる簡単な操作でバケット装置に閉じ上げの動作を行わせることができ、しかも、閉じ上げの動作中にバケット装置が開いてしまうことを抑制できるバケット制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
提供されるのは、本体部と当該本体部に開閉可能に取り付けられた一対のバケットとを含むバケット装置と、前記本体部に接続されて当該本体部を支持する支持ロープの繰り出し及び巻き取りを行うウインチドラムである支持ドラムと、前記一対のバケットを開閉するための開閉ロープの繰り出し及び巻き取りを行うウインチドラムである開閉ドラムと、を備える建設機械に搭載されるバケット制御装置であって、前記支持ロープの巻き取りを行うように前記支持ドラムを回転させるための操作である支持側巻き取り操作と前記支持ロープの繰り出しを行うように前記支持ドラムを回転させるための操作である支持側繰り出し操作が与えられる支持側ウインチ操作装置と、前記開閉ロープの巻き取りを行うように前記開閉ドラムを回転させるための操作である開閉側巻き取り操作と前記開閉ロープの繰り出しを行うように前記開閉ドラムを回転させるための操作である開閉側繰り出し操作が与えられる開閉側ウインチ操作装置と、前記支持ロープの繰り出し量である支持側繰り出し量を検出するための支持側検出器と、前記開閉ロープの繰り出し量である開閉側繰り出し量を検出するための開閉側検出器と、前記支持ロープの巻き取り及び前記開閉ロープの巻き取りを前記支持側巻き取り操作及び前記開閉側巻き取り操作の何れか一方の操作である特定巻き取り操作に基づいて行うことが可能な同調制御モードに制御モードを設定することが可能な制御モード設定部と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記一対のバケットが閉じ状態であるか否かを判定する開閉状態判定部と、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定巻き取り操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記閉じ状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、前記一対のバケットが開くことを回避するために設定された設定値であって前記支持ロープの緩み量である支持側緩み量に関する設定値に基づいて前記開閉側繰り出し量と前記支持側繰り出し量との差の目標値である繰り出し量相対差目標値を設定し、前記開閉側繰り出し量と前記支持側繰り出し量との差である繰り出し量相対差を演算し、前記繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差を演算し、前記偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記閉じ状態を維持しながら前記バケット装置を上昇させるドラム動作制御部と、を含む。
【0008】
このバケット制御装置では、オペレータは、支持側巻き取り操作及び開閉側巻き取り操作の両方の操作を行わなくてもこれらの操作の何れか一方である特定巻き取り操作を行うことで閉じ上げの動作を行うことができ、しかも、支持側緩み量に関する設定値に基づいて設定される繰り出し量相対差目標値と実際の繰り出し量相対差との偏差がゼロに近づくようにフィードバック制御が行われるので、オペレータによる簡単な操作でバケット装置に閉じ上げの動作を行わせることができ、しかも、閉じ上げの動作中にバケット装置が開いてしまうことを抑制できる。このことは、簡単な操作で閉じ上げの動作中のバケット装置からの荷こぼれを抑制することを可能にする。
【0009】
前記同調制御モードでは、前記支持ロープの繰り出し及び前記開閉ロープの繰り出しを前記支持側繰り出し操作及び前記開閉側繰り出し操作の何れか一方の操作である特定繰り出し操作に基づいて行うことが可能であり、前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定繰り出し操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記閉じ状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、前記設定値に基づいて前記繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差を演算し、前記偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記閉じ状態を維持しながら前記バケット装置を下降させることが好ましい。この構成では、オペレータによる簡単な操作でバケット装置に閉じ下げの動作を行わせることができ、しかも、閉じ下げの動作中にバケット装置が開いてしまうことを抑制できる。このことは、簡単な操作で閉じ下げの動作中のバケット装置からの荷こぼれを抑制することを可能にする。
【0010】
前記開閉状態判定部は、前記一対のバケットが開き状態であるか否かを判定することが可能であり、前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定巻き取り操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記開き状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、一対のバケットを所定の開度に維持するための目標値である第2の繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記第2の繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差である第2の偏差を演算し、前記第2の偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記開き状態を維持しながら前記バケット装置を上昇させることが好ましい。この構成では、オペレータによる簡単な操作でバケット装置の開度を所定の開度に維持しながらバケット装置に開き上げの動作を行わせることができる。これにより、開き上げの動作の完了時点でバケット装置の開き状態が維持されるので、オペレータは次の操作をすぐに行うことができ、作業性が向上する。
【0011】
前記同調制御モードでは、前記支持ロープの繰り出し及び前記開閉ロープの繰り出しを前記支持側繰り出し操作及び前記開閉側繰り出し操作の何れか一方の操作である特定繰り出し操作に基づいて行うことが可能であり、前記開閉状態判定部は、前記一対のバケットが開き状態であるか否かを判定することが可能であり、前記ドラム動作制御部は、前記制御モードが前記同調制御モードに設定され、前記特定繰り出し操作が行われ、かつ、前記バケット装置が前記開き状態であると前記開閉状態判定部が判定した場合に、一対のバケットを所定の開度に維持するための目標値である第2の繰り出し量相対差目標値を設定し、前記繰り出し量相対差を演算し、前記第2の繰り出し量相対差目標値と前記繰り出し量相対差との偏差である第2の偏差を演算し、前記第2の偏差がゼロに近づくような指令信号を出力して前記支持ドラム及び前記開閉ドラムの動作を制御することにより、前記バケット装置の前記開き状態を維持しながら前記バケット装置を下降させることが好ましい。この構成では、オペレータによる簡単な操作でバケット装置の開度を所定の開度に維持しながらバケット装置に開き下げの動作を行わせることができる。これにより、開き下げの動作の完了時点でバケット装置の開き状態が維持されるので、オペレータは次の操作をすぐに行うことができ、作業性が向上する。
【0012】
前記制御モード設定部は、前記制御モードを、前記同調制御モードと非同調制御モードとを含む複数のモードのうちの何れかに設定することが可能なように構成され、前記非同調制御モードは、前記一対のバケットの開閉状態を変化させることを含む動作を、予め設定された特定の操作に基づいて前記バケット装置に行わせることが可能な制御モードであることが好ましい。この構成では、同調制御モードと非同調制御モードとの切り換えを制御モード設定部によって行うことができるので、同調制御モードで行われるバケット装置の動作と非同調制御モードで行われるバケット装置の動作とを含む一連の作業を連続的に行うことが可能になり、当該作業の作業性が向上する。
【0013】
前記開閉状態判定部は、前記支持側繰り出し量と前記開閉側繰り出し量との差に基づいて前記一対のバケットが閉じ状態であるか否かを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本開示によれば、建設機械において、オペレータによる簡単な操作でバケット装置に閉じ上げの動作を行わせることができ、しかも、閉じ上げの動作中にバケット装置が開いてしまうことを抑制できるバケット制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態に係るバケット制御装置を備えたクレーンを示す側面図である。
【
図2】前記バケット制御装置の機能構成の概略を示すブロック図である。
【
図3】前記クレーンが備える油圧回路を示す図である。
【
図4】前記クレーンが備えるバケット装置の開閉動作を説明するための図である。
【
図5】前記バケット装置に接続された支持ロープ及び開閉ロープにかかる荷重について説明するための図である。
【
図6】前記クレーンが備えるコントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図7】前記コントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図8】前記コントローラが行う演算制御動作を示すブロック線図である。
【
図9】前記コントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、前記実施形態に係る建設機械であるクレーン100を示す。このクレーン100は、下部体101と、この下部体101の上に旋回可能に支持される上部旋回体102と、この上部旋回体102に起伏可能に支持される起伏部材104と、この起伏部材104の先端部に取り付けられた第1のポイントシーブ105及び第2のポイントシーブ106と、下部体101又は上部旋回体102に配置された複数のウインチと、バケット装置10と、バケット制御装置と、を備える。
【0018】
下部体101は、例えばクローラ走行装置などの走行装置を備え、自走可能なように構成される。ただし、下部体は、上部旋回体102を旋回可能に支持し、自走できない支持台のような構造体により構成されていてもよい。上部旋回体102は、下部体101に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム103と、旋回フレーム103の前部に支持されたキャビンと、旋回フレーム103の後部に支持されたカウンタウエイトと、を備える。複数のウインチは、第1のウインチWC1、第2のウインチWC2及び起伏ウインチWC3を含む。
【0019】
起伏部材104は、旋回フレーム103に起伏可能に支持されたブームにより構成される。ただし、起伏部材は、ブームと、このブームの先端部に回動可能に支持されたジブと、を含むものであってもよい。旋回フレーム103の上にはガントリ107が立設されている。ガントリ107の上端部には下部スプレッダ110が配置されている。起伏部材104の先端部にはガイライン108の一端が接続されており、ガイライン108の他端には上部スプレッダ109が接続されている。下部スプレッダ110と上部スプレッダ109とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ110及び上部スプレッダ109には、起伏ロープ111が掛け回されている。起伏ウインチWC3は、旋回フレーム103上に配置されており、起伏ロープ111が巻き付けられたウインチドラムDR3を有する。起伏ウインチWC3は、起伏ロープ111の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ110に対する上部スプレッダ109の離間距離を縮小又は拡大させる。当該離間距離の縮小又は拡大に伴って、起伏部材104が起伏される。
【0020】
図2は、バケット制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3は、クレーン100が備える油圧回路を示す図である。
【0021】
第1のウインチWC1及び第2のウインチWC2は、バケット装置10を開閉及び昇降させるように駆動される。具体的には、
図1~
図3に示すように、第1のウインチWC1は、第1のウインチロープR1が巻き付けられた第1のウインチドラムDR1と、この第1のウインチドラムDR1に接続される第1のウインチモータ34と、第1のクラッチブレーキ40Aと、減速機47と、を有する。同様に、第2のウインチWC2は、第2のウインチロープR2が巻き付けられる第2のウインチドラムDR2と、この第2のウインチドラムDR2に接続される第2のウインチモータ35と、第2のクラッチブレーキ40Bと、減速機47と、を有する。第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bは、クラッチブレーキ機構40を構成する。第1のウインチロープR1は、バケット装置10の開閉を行うための開閉ロープであり、第2のウインチロープR2は、バケット装置10を支持する支持ロープである。第1のウインチドラムDR1は、前記開閉ロープの繰り出し及び巻き取りを行う開閉ドラムであり、第2のウインチドラムDR2は、前記支持ロープの繰り出し及び巻き取りを行う支持ドラムである。
【0022】
第1のウインチドラムDR1は、第1のウインチロープR1の繰り出し及び巻き取りを行うことが可能なように水平軸回りに回動可能に図略の支持部材に支持されている。第2のウインチドラムDR2は、第2のウインチロープR2の繰り出し及び巻き取りを行うことが可能なように水平軸回りに回動可能に図略の支持部材に支持されている。
【0023】
第1のポイントシーブ105及び第2のポイントシーブ106は、左右に並ぶように配置され、起伏部材104の先端部に取り付けられている。第1のウインチロープR1は、第1のポイントシーブ105に巻き掛けられた状態で当該第1のポイントシーブ105から垂下している。第2のウインチロープR2は、第2のポイントシーブ106に巻き掛けられた状態で当該第2のポイントシーブ106から垂下している。第1及び第2のウインチロープR1,R2の下端(先端)は、バケット装置10に接続されている。
【0024】
バケット装置10は、いわゆるクラムシェルバケットと呼ばれる作業装置である。
図4の右図は、バケット装置10が開いた状態である開き状態を示し、
図4の左図は、バケット装置10が閉じた状態である閉じ状態を示している。バケット装置10は、上部材11と、当該上部材11の下方に配置された下部材16と、一対のリンク部材12,12と、一対のバケット13,13と、下シーブ14と、上シーブ15と、を備える。
【0025】
一対のリンク部材12,12は、水平方向に互いに間隔をおいて配置されている。一対のリンク部材12,12の上端部は、水平軸回りに回動可能なように上部材11にそれぞれ接続されている。一対のリンク部材12,12の一方の下端部は、水平軸回りに回動可能なように一対のバケット13,13の一方に接続され、一対のリンク部材12,12の他方の下端部は、水平軸回りに回動可能なように一対のバケット13,13の他方に接続されている。
【0026】
下シーブ14は、水平軸回りに回動可能なように下部材16に支持されている。一対のバケット13,13のそれぞれは、水平軸回りに回動可能なように下部材16に支持される被支持部を有する。上シーブ15は、水平軸回りに回動可能なように上部材11に支持されている。
【0027】
一対のバケット13,13は、土砂などの運搬対象物を収容することが可能な収容空間を有する。一対のバケット13,13は、前記被支持部を中心として回動することにより、バケット13,13の下端同士が隣接した状態(前記閉じ状態)と、バケット13,13の下端が水平方向に離れた状態(前記開き状態)と、の間で変位することが可能である。一対のリンク部材12,12は、バケット13,13を支持しながらバケット13,13の変位に伴って上部材11に対して回動する。一対のバケット13,13は、閉じ状態が維持されることにより、前記収容空間に収容された前記運搬対象物を保持することが可能である。一対のバケット13,13は、閉じ状態から開き状態に切り換わることにより、前記運搬対象物を前記収容空間からバケット13,13の外に排出することが可能である。
【0028】
第1のウインチロープR1は、下シーブ14及び上シーブ15にかけ回され、第1のウインチロープR1の先端は、上部材11及び下部材16の何れか一方に固定されている。第2のウインチロープR2の先端は、上部材11に固定されている。上部材11は本体部の一例である。
【0029】
第1及び第2のウインチモータ34,35は、油圧モータであり、油圧ポンプ31に接続されている。第1のウインチモータ34は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより第1のウインチドラムDR1を正逆方向、すなわち、繰り出し方向及び巻き取り方向の何れか一方に回転させるように作動する。同様に、第2のウインチモータ35は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより第2のウインチドラムDR2を正逆方向、すなわち、繰り出し方向及び巻き取り方向の何れか一方に回転させるように作動する。これにより、第1のウインチWC1及び第2のウインチWC2の協働によるバケット装置10の開閉及び昇降が達成される。油圧ポンプ31は、図示されないエンジンなどの駆動源によって駆動される。
【0030】
第1のウインチWC1の減速機47は、第1のウインチモータ34の回転速度を減速し、第1のウインチモータ34から第1のウインチドラムDR1に駆動力(回転力)を伝える。第2のウインチWC2の減速機47は、第2のウインチモータ35の回転速度を減速し、第2のウインチモータ35から第2のウインチドラムDR2に駆動力(回転力)を伝える。これらの減速機47は、例えば遊星歯車機構をそれぞれ有する。
【0031】
第1のクラッチブレーキ40Aは、第1のウインチモータ34の駆動力を第1のウインチドラムDR1に伝えることが可能な状態である接続状態と、第1のウインチロープR1を第1のウインチドラムDR1からバケット装置10の重量によって繰り出すことが可能な状態であるフリー状態と、の間で切り換わることが可能である。第1のクラッチブレーキ40Aは、前記接続状態と前記フリー状態との間で第1のウインチモータ34と第1のウインチドラムDR1との連結の度合いを調節することが可能である。
【0032】
同様に、第2のクラッチブレーキ40Bは、第2のウインチモータ35の駆動力を第2のウインチドラムDR2に伝えることが可能な状態である接続状態と、第2のウインチロープR2を第2のウインチドラムDR2からバケット装置10の重量によって繰り出すことが可能な状態であるフリー状態と、の間で切り換わることが可能である。第2のクラッチブレーキ40Bは、前記接続状態と前記フリー状態との間で第2のウインチモータ35と第2のウインチドラムDR2との連結の度合いを調節することが可能である。
【0033】
前記接続状態は、第1及び第2のウインチモータ34,35の駆動力により第1及び第2のウインチロープR1,R2の繰り出し及び巻き取りが可能な状態である。すなわち、前記接続状態で第1及び第2のウインチモータ34,35が駆動すると、第1及び第2のウインチモータ34,35の駆動力が減速機47,47を介して第1及び第2のウインチドラムDR1,DR2にそれぞれ伝わる。第1及び第2のウインチドラムDR1,DR2が回転すると、第1及び第2のウインチロープR1,R2の繰り出し又は巻き取りが行われる。
【0034】
前記フリー状態は、第1及び第2のウインチロープR1,R2の張力によって第1及び第2のウインチドラムDR1,DR2から第1及び第2のウインチロープR1,R2を繰り出すことが可能な状態、つまりバケット装置10が自由落下可能な状態、である。すなわち、前記フリー状態は、第1及び第2のウインチロープR1,R2を繰り出す繰り出し方向に第1及び第2のウインチモータ34,35を回転させなくても、第1及び第2のウインチドラムDR1,DR2から第1及び第2のウインチロープR1,R2を繰り出すことが可能な状態である。
【0035】
また、第1のクラッチブレーキ40Aは、第1のウインチドラムDR1に対して第1のブレーキ力を与えること、つまり第1のウインチドラムDR1にブレーキをかけること、が可能である。同様に、第2のクラッチブレーキ40Bは、第2のウインチドラムDR2に対して第2のブレーキ力を与えること、つまり第2のウインチドラムDR2にブレーキをかけることが可能である。
【0036】
第1のウインチドラムDR1の回転に対する第1のブレーキ力が所定の大きさ以上になると、第1のウインチドラムDR1にブレーキがかかり、第1のウインチドラムDR1から第1のウインチロープR1を繰り出すことが不可能となる。同様に、第2のウインチドラムDR2の回転に対する第2のブレーキ力が所定の大きさ以上になると、第2のウインチドラムDR2にブレーキがかかり、第2のウインチドラムDR2から第2のウインチロープR2を繰り出すことが不可能となる。従って、第1のクラッチブレーキ40Aの第1のブレーキ力及び第2のクラッチブレーキ40Bの第2のブレーキ力は、バケット装置10が自由落下せずに静止した状態を維持することができ、また、自由落下しているバケット装置10を停止させることができる。
【0037】
本実施形態では、第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bのそれぞれは、いわゆる湿式ブレーキであり、パイロット油圧源Pから加えられる油圧により駆動されるピストン42と、複数のブレーキディスク41(複数のクラッチプレート)と、を備える。複数のブレーキディスク41のそれぞれは、例えば作動油に浸された摩擦板である。
【0038】
複数のブレーキディスク41は、ピストン42の作動により、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態と、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態と、の間で切り換わることが可能である。第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bのそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態であるときには前記フリー状態となり、これにより、バケット装置10は自重により下降(フリーフォール)することが可能である。また、第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bのそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態になることにより、前記接続状態となる。
【0039】
より具体的には、第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bのそれぞれは、バネ46を備え、第1のクラッチブレーキ40A及び第2のクラッチブレーキ40Bのそれぞれには一対の油室43,44が形成されており、ピストン42は、一対の油室43,44を仕切るフランジ45を有する。パイロット油圧源Pから一対の油室43,44に加えられる油圧が同じである場合には、バネ46は、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態となるようにピストン42を付勢する。パイロット油圧源Pから一方の油室44に加えられる油圧が他方の油室43に加えられる油圧よりも所定の大きさ以上に大きくなると、複数のブレーキディスク41は、互いに離れた状態となる。
【0040】
前記バケット制御装置は、第1のウインチドラムDR1及び第2のウインチドラムDR2の駆動を制御することによりバケット装置10を開閉及び昇降させるための装置である。このバケット制御装置は、第1のコントロールバルブ32と、第2のコントロールバルブ33と、第1の繰り出し用比例弁61Aと、第1の巻き取り用比例弁61Bと、第2の繰り出し用比例弁63Aと、第2の巻き取り用比例弁63Bと、第1のブレーキ用比例弁62と、第2のブレーキ用比例弁64と、複数の操作装置と、コントローラ70と、を備える。本実施形態では、比例弁61A,61B,62,63A,63B,64のそれぞれは、電磁比例減圧弁である。
【0041】
第1のコントロールバルブ32は、油圧ポンプ31と第1のウインチモータ34との間に介在し、第2のコントロールバルブ33は、油圧ポンプ31と第2のウインチモータ35との間に介在する。第1及び第2のコントロールバルブ32,33のそれぞれは、一対のパイロットポートを有する油圧パイロット切換弁により構成される。
【0042】
一対のパイロットポートは、繰り出し用パイロットポートと巻き取り用パイロットポートである。第1及び第2のコントロールバルブ32,33のそれぞれは、両パイロットポートにパイロット圧が加えられていないときには、中立位置に保持されて第1及び第2のウインチモータ34,35のうち当該コントロールバルブに対応するウインチモータ(以下「対応ウインチモータ」と称する)を油圧ポンプ31から遮断する。第1及び第2のコントロールバルブ32,33のそれぞれは、繰り出し用パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、対応ウインチモータを繰り出し方向に回転させるための油路、つまり油圧ポンプ31から対応ウインチモータに繰り出し方向に作動油を供給するための油路、を形成するように開弁する。第1及び第2のコントロールバルブ32,33のそれぞれは、巻き取り用パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、対応ウインチモータを巻き取り方向に回転させるための油路、つまり油圧ポンプ31から対応ウインチモータに巻き取り方向に作動油を供給するための油路、を形成するように開弁する。第1及び第2のコントロールバルブ32,33のそれぞれの開度は、当該コントロールバルブに入力されるパイロット圧に対応した流量で作動油が流れるのを許容するように、当該パイロット圧の増大に伴って増大する。
【0043】
第1の繰り出し用比例弁61Aは、図示されないパイロット油圧源と第1のコントロールバルブ32の繰り出し用パイロットポートとの間に介在し、当該比例弁61Aに電気信号である第1の繰り出し指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第1の繰り出し指令に比例したパイロット圧が前記繰り出し用パイロットポートに入力されるのを許容するように開弁する。第1の巻き取り用比例弁61Bは、前記パイロット油圧源と第1のコントロールバルブ32の巻き取り用パイロットポートとの間に介在し、当該比例弁61Bに電気信号である第1の巻き取り指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第1の巻き取り指令に比例したパイロット圧が前記巻き取り用パイロットポートに入力されるのを許容するように開弁する。
【0044】
同様に、第2の繰り出し用比例弁63Aは、図示されないパイロット油圧源と第2のコントロールバルブ33の繰り出し用パイロットポートとの間に介在し、当該比例弁63Aに電気信号である第2の繰り出し指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第2の繰り出し指令に比例したパイロット圧が前記繰り出し用パイロットポートに入力されるのを許容するように開弁する。第2の巻き取り用比例弁63Bは、前記パイロット油圧源と第2のコントロールバルブ33の巻き取り用パイロットポートとの間に介在し、当該比例弁63Bに電気信号である第2の巻き取り指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第2の巻き取り指令に比例したパイロット圧が前記巻き取り用パイロットポートに入力されるのを許容するように開弁する。
【0045】
上記のように、第1のコントロールバルブ32、第1の繰り出し用比例弁61A及び第1の巻き取り用比例弁61Bは、比例弁61A,61Bに入力される指令に応じて第1のウインチモータ34に流入する作動油の流量及び方向を変化させる第1の速度調節器を構成する。つまり、第1の速度調節器は、第1のウインチモータ34が第1のウインチドラムDR1を回転駆動する速度を変化させる。同様に、第2のコントロールバルブ33、第2の繰り出し用比例弁63A及び第2の巻き取り用比例弁63Bは、比例弁63A,63Bに入力される指令に応じて第2のウインチモータ35に流入する作動油の流量及び方向を変化させる第2の速度調節器を構成する。つまり、第2の速度調節器は、第2のウインチモータ35が第2のウインチドラムDR2を回転駆動する速度を変化させる。
【0046】
第1のブレーキ用比例弁62は、パイロット油圧源Pと第1のクラッチブレーキ40Aとの間に介在し、当該比例弁62に電気信号である第1のブレーキ指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第1のブレーキ指令に比例した油圧(第1のパイロット圧)が第1のクラッチブレーキ40Aの油室43に入力されるのを許容するように開弁する。これにより、第1のブレーキ用比例弁62は、第1のクラッチブレーキ40Aの状態を前記フリー状態と前記接続状態との間で切り換えることができる。
【0047】
同様に、第2のブレーキ用比例弁64は、パイロット油圧源Pと第2のクラッチブレーキ40Bとの間に介在し、当該比例弁64に電気信号である第2のブレーキ指令がコントローラ70から入力されるのに伴い、当該第2のブレーキ指令に比例した油圧(第2のパイロット圧)が第2のクラッチブレーキ40Bの油室43に入力されるのを許容するように開弁する。これにより、第2のブレーキ用比例弁64は、第2のクラッチブレーキ40Bの状態を前記フリー状態と前記接続状態との間で切り換えることができる。
【0048】
複数の操作装置は、第1のウインチ操作装置51と、第2のウインチ操作装置53と、第1のブレーキ操作装置52と、第2のブレーキ操作装置54と、を含む。第1のウインチ操作装置51は、第1のウインチ操作レバー51Aと、第1のウインチ操作装置本体51Bと、を有する。第2のウインチ操作装置53は、第2のウインチ操作レバー53Aと、第2のウインチ操作装置本体53Bと、を有する。第1のブレーキ操作装置52は、第1のブレーキ操作ペダル52Aと、第1のブレーキ操作装置本体52Bと、を有する。第2のブレーキ操作装置54は、第2のブレーキ操作ペダル54Aと、第2のブレーキ操作装置本体54Bと、を有する。第1のウインチ操作装置51は、開閉側ウインチ操作装置の一例であり、第2のウインチ操作装置53は、支持側ウインチ操作装置の一例である。第1のブレーキ操作装置52は、開閉側ブレーキ操作装置の一例であり、第2のブレーキ操作装置54は、支持側ブレーキ操作装置の一例である。
【0049】
以下の説明において、第1のウインチドラムDR1は開閉ドラム又は主巻ドラムと称されることがあり、第2のウインチドラムDR2は支持ドラム又は補巻ドラムと称されることがある。また、第1のウインチ操作レバー51Aは、主巻レバーと称されることがあり、第2のウインチ操作レバー53Aは、補巻レバーと称されることがある。また、第1のブレーキ操作ペダル52Aは、主巻ペダルと称されることがあり、第2のブレーキ操作ペダル54Aは、補巻ペダルと称されることがある。第1のウインチロープR1は、開閉ロープ又は主巻ロープと称されることがあり、第2のウインチロープR2は、支持ロープ又は補巻ロープと称されることがある。クレーン100では、バケット装置10に代えて、第1のウインチロープR1(主巻ロープ)の先端に図示されない主巻フックが取り付けられ、第2のウインチロープR2(補巻ロープ)の先端に図示されない補巻フックが取り付けられることがある。「主巻」は、主に、重い荷を吊るための重荷重用のものに用いられ、「補巻」は、主に、軽い荷を吊る補助用のものに用いられる。
【0050】
第1のウインチ操作レバー51Aは、第1のウインチドラムDR1の駆動速度(回転速度)を指定するためのオペレータによる第1の回動操作が与えられる操作部材である。具体的に、第1のウインチ操作レバー51Aには、第1のウインチロープR1(開閉ロープ)の繰り出しを行うように第1のウインチドラムDR1(開閉ドラム)を繰り出し方向に回転させるための第1の繰り出し操作(開閉側繰り出し操作の一例)及び第1のウインチロープR1の巻き取りを行うように第1のウインチドラムDR1を巻き取り方向に回転させるための第1の巻き取り操作(開閉側巻き取り操作の一例)の何れかが前記第1の回動操作として与えられる。第1の繰り出し操作(開閉側繰り出し操作)は、特定繰り出し操作の一例である。第1の巻き取り操作(開閉側巻き取り操作)は、特定巻き取り操作の一例である。
【0051】
第1のウインチ操作装置本体51Bは、第1のウインチ操作レバー51Aに与えられる第1の回動操作(開閉側繰り出し操作又は開閉側巻き取り操作)の操作量に対応した回転速度を指令するための指令信号をコントローラ70に入力する。
【0052】
同様に、第2のウインチ操作レバー53Aは、第2のウインチドラムDR2の駆動速度(回転速度)を指定するためのオペレータによる第2の回動操作が与えられる操作部材である。具体的に、第2のウインチ操作レバー53Aには、第2のウインチロープR2(支持ロープ)の繰り出しを行うように第2のウインチドラムDR2(支持ドラム)を繰り出し方向に回転させるための第2の繰り出し操作(支持側繰り出し操作)及び第2のウインチロープR2の巻き取りを行うように第2のウインチドラムDR2を巻き取り方向に回転させるための第2の巻き取り操作(支持側巻き取り操作)の何れかが前記第2の回動操作として与えられる。
【0053】
第2のウインチ操作装置本体53Bは、第2のウインチ操作レバー53Aに与えられる第2の回動操作(支持側繰り出し操作又は支持側巻き取り操作)の操作量に対応した回転速度を指令するための指令信号をコントローラ70に入力する。
【0054】
第1のブレーキ操作ペダル52Aは、第1のウインチドラムDR1(開閉ドラム)に対する第1のブレーキ力(開閉側ブレーキ力の一例)を指定するためのオペレータによる第1のペダル操作(開閉側ブレーキ操作の一例)が与えられる操作部材である。第1のブレーキ操作装置本体52Bは、第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられる第1のペダル操作の操作量に対応した大きさのブレーキ力を指令するための指令信号をコントローラ70に入力する。
【0055】
第2のブレーキ操作ペダル54Aは、第2のウインチドラムDR2(支持ドラム)に対する第2のブレーキ力(支持側ブレーキ力の一例)を指定するためのオペレータによる第2のペダル操作(支持側ブレーキ操作の一例)が与えられる操作部材である。第2のブレーキ操作装置本体54Bは、第2のブレーキ操作ペダル54Aに与えられる第2のペダル操作の操作量に対応した大きさのブレーキ力を指令するための指令信号をコントローラ70に入力する。
【0056】
前記バケット制御装置は、その他、
図2に示されるように、第1の回転センサ81と、第2の回転センサ82と、制御モード設定部と、をさらに備える。本実施形態では、制御モード設定部は、非同調制御モードスイッチ90と、バケットアシストモードスイッチ91と、を含む。第1の回転センサ81は、開閉側検出器の一例であり、第2の回転センサ82は、支持側検出器の一例である。
【0057】
第1の回転センサ81は、第1のウインチドラムDR1の回転量である第1の回転量ωmについての第1の検出信号を生成し、コントローラ70に入力する。第2の回転センサ82は、第2のウインチドラムDR2の回転量である第2の回転量ωaについての第2の検出信号を生成し、コントローラ70に入力する。なお、第1の回転センサ81は、第1のウインチドラムDR1の回転量ではなく第1のポイントシーブ105の回転量についての検出信号を生成するセンサであってもよく、第2の回転センサ82は、第2のウインチドラムDR2の回転量ではなく第2のポイントシーブ106の回転量についての検出信号を生成するセンサであってもよい。
【0058】
本実施形態では、コントローラ70は、前記制御モード設定部から入力される指令信号に基づいて、当該コントローラ70による制御モードを、予め定められた複数の制御モードの何れかに設定する。本実施形態では、複数の制御モードは、バケットアシストモードと、非アシストモードと、を含み、前記バケットアシストモードは、同調制御モードと、非同調制御モードと、を含む。前記複数の制御モードは、さらに他の制御モードを含んでいてもよい。
【0059】
バケットアシストモードは、オペレータが簡単な操作でバケット装置10に開閉及び昇降の少なくとも一方の動作を行わせることが可能なようにコントローラ70がオペレータをアシストするアシスト制御を実行するための制御モードである。非アシストモードは、上記のようなアシスト制御が実行されない制御モードである。アシスト制御は、主補同調制御及びフリー同調制御と、バケット静止閉じ制御、掘削制御及びバケット静止開き制御と、を含む。これらの制御については後述する。
【0060】
本実施形態では、バケットアシストモードスイッチ91がオンの状態である場合に制御モードがバケットアシストモードに設定され、バケットアシストモードスイッチ91がオフの状態である場合に制御モードが非アシストモードに設定される。バケットアシストモードにおいて非同調制御モードスイッチ90がオンの状態である場合に制御モードが非同調制御モードに設定され、バケットアシストモードにおいて非同調制御モードスイッチ90がオフの状態である場合に制御モードが同調制御モードに設定される。具体的には以下の通りである。
【0061】
バケットアシストモードスイッチ91は、コントローラ70による制御モードを、バケットアシストモードに設定することが可能である。バケットアシストモードスイッチ91は、バケットアシストモードのオン操作がオペレータによってバケットアシストモードスイッチ91に与えられた場合、当該オン操作に応じたオン指令信号をコントローラ70に入力し、コントローラ70は、制御モードをバケットアシストモードに設定する。バケットアシストモードスイッチ91に前記オン操作が与えられない場合には、コントローラ70は、制御モードをバケットアシストモードに設定せず、制御モードを予め定められた他の制御モード(例えば非アシストモード)に設定する。バケットアシストモードスイッチ91は、例えば、キャビン内に配置されたタッチパネルなどのモニタ上に設けられた入力機器であってもよく、キャビン内に配置された押しボタン(例えば操作レバーなどの操作部材に設けられた押しボタン)を有する入力機器であってもよい。
【0062】
非同調制御モードスイッチ90は、コントローラ70による制御モードを、前記非同調制御モードに設定することが可能である。非同調制御モードスイッチ90は、制御モードがバケットアシストモードに設定されている状態で、非同調制御モードのオン操作がオペレータによって非同調制御モードスイッチ90に与えられた場合、当該オン操作に応じたオン指令信号をコントローラ70に入力し、コントローラ70は、制御モードを非同調制御モードに設定する。制御モードがバケットアシストモードに設定されている状態で、非同調制御モードスイッチ90に前記オン操作が与えられない場合には、コントローラ70は、制御モードを同調制御モードに設定する。非同調制御モードスイッチ90は、例えば、キャビン内に配置された押しボタンを有する入力機器であってもよく、キャビン内に配置されたタッチパネルなどのモニタ上に設けられた入力機器であってもよい。前記押しボタンは、例えば操作レバーなどの操作部材に配置されていてもよい。
【0063】
本実施形態では、前記同調制御モードでは、後述する主補同調制御、フリー同調制御などの同調制御が行われる。また、前記非同調制御モードでは、後述するバケット静止閉じ制御、掘削制御、バケット静止開き制御などの非同調制御が行われる。非同調制御モードは、一対のバケット13,13の開閉状態を変化させることを含む動作を、予め設定された特定の操作に基づいてバケット装置10に行わせることが可能な制御モードである。
【0064】
また、前記制御モード設定部は、前記主補同調制御、前記フリー同調制御、前記バケット静止閉じ制御、前記掘削制御、前記バケット静止開き制御などの特定の制御におけるバケット装置10の動作をより具体的に指定するためのオペレータによる操作が与えられる図略の複数のスイッチを含んでいてもよく、複数のスイッチのそれぞれは、その操作に応じた指令信号をコントローラ70に入力するように構成されていてもよい。前記同調制御モードにおけるバケット装置10の動作として、バケット装置10を閉じた状態で上昇させる動作である「閉じ上げ」の動作、バケット装置10を開いた状態で上昇させる動作である「開き上げ」の動作、バケット装置10を開いた状態で下降させる動作である「開き下げ」の動作、及びバケット装置10を閉じた状態で下降させる動作である「閉じ下げ」の動作が挙げられる。
【0065】
同調制御モードにおけるフリー同調制御では、第1及び第2のクラッチブレーキ40A,40Bにおける第1及び第2のブレーキ力は、第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられる第1のペダル操作の操作量(ペダル操作量)に基づいて調節される。
【0066】
コントローラ70は、第1のウインチWC1及び第2のウインチWC2の駆動を制御することによりバケット装置10を開閉及び昇降させるためのものであって、
図2に示すように、開閉状態判定部71と、ブレーキ力調節部72と、ドラム動作制御部73と、を有する。ブレーキ力調節部72、第1のブレーキ用比例弁62及び第2のブレーキ用比例弁64は、ブレーキ力調節機構を構成する。
【0067】
開閉状態判定部71は、バケット装置10の開閉状態を判定する。すなわち、開閉状態判定部71は、バケット装置10が開き状態であるか閉じ状態であるかを判定する。本実施形態における開閉状態判定部71は、第1の回転量ωm及び第2の回転量ωaに基づいてバケット装置10の開閉状態を判定する。具体的には次の通りである。
【0068】
まず、開閉状態判定部71は、第1の回転量ωmに基づいて、第1のウインチドラムDR1から繰り出された第1のウインチロープR1の繰り出し量である第1の繰り出し量Lmを推定し、第2の回転量ωaに基づいて、第2のウインチドラムDR2から繰り出された第2のウインチロープR2の繰り出し量である第2の繰り出し量Laを推定する。第1の繰り出し量Lmは、例えば下記の式(1)を用いて演算され、第2の繰り出し量Laは、例えば下記の式(2)を用いて演算される。式(1)におけるRmは、第1のウインチドラムDR1の有効半径であり、式(2)におけるRaは、第2のウインチドラムDR2の有効半径である。
【0069】
Lm=Rm×ωm ・・・式(1)
La=Ra×ωa ・・・式(2)
なお、以下では、バケット装置10の巻き下げ時(つまりバケット装置10の下降時)における第1及び第2の繰り出し量Lm,Laの符号を正とし、バケット装置10の巻き上げ時(つまりバケット装置10の上昇時)における第1及び第2の繰り出し量Lm,Laの符号を負として説明する。
【0070】
次に、開閉状態判定部71は、第1及び第2の繰り出し量Lm,Laの相対差(ΔL=Lm-La)を演算する。例えば、
図4の左図のようにバケット装置10が閉じた状態を初期状態とし、この初期状態におけるΔLがゼロにセットされる。バケット装置10を閉じた状態でバケット装置10の巻き下げ及び巻き上げが行われているときに、第1及び第2の繰り出し量Lm,Laはそれぞれ増減するが、バケット装置10が閉じた状態が維持されている場合には、「ΔL≦0」の関係が維持される。
【0071】
一方、バケット装置10が開いた状態となる場合には、第1の繰り出し量Lmが第2の繰り出し量Laに対して相対的に増加する。開閉状態判定部71は、バケット装置10の開度(開閉度)を例えば次のように判定することができる。
【0072】
図4の左図のようにバケット装置10が閉じた状態(閉じ状態)であるときの上シーブ15と下シーブ14との間隔をL1とし、
図4の右図のようにバケット装置10が開いた状態(開き状態)であるときの上シーブ15と下シーブ14との間隔をL2とし、上シーブ15と下シーブ14にかけ回された第1のウインチロープR1のかけ回し数(ロープかけ本数)をNとする。この場合、相対差ΔLは、下記の式(3)のように表される。
【0073】
ΔL=(L2-L1)×N ・・・(3)
バケット装置10が完全に開放された状態である場合、つまりバケット装置10が最も開いた状態である場合の上シーブ15と下シーブ14との間隔をL2maxとし、このときの第1及び第2の繰り出し量Lm,Laの相対差をΔLmaxとする。この場合、ΔLmaxは、下記の式(4)のように表され、バケット装置10の開度は、下記の式(5)により表される。
【0074】
ΔLmax=(L2max-L1)×N ・・・(4)
バケット装置10の開度=ΔL/ΔLmax ・・・(5)
従って、開閉状態判定部71は、上記のように演算されるバケット装置10の開度に基づいて、バケット装置10の開閉状態を判定することができる。
【0075】
ブレーキ力調節部72は、前記第1のブレーキ力及び前記第2のブレーキ力を調節する。ブレーキ力調節部72は、制御モードが同調制御モードに設定され、第1のブレーキ力を小さくするような第1のブレーキ操作が第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられ、かつ、バケット装置10が開き状態であると開閉状態判定部71が判定した場合に、次のような開き下げ制御を行う。この開き下げ制御では、ブレーキ力調節部72は、バケット装置10の開き状態が維持されながらバケット装置10がその自重によって下降するように第1のブレーキ力及び第2のブレーキ力を調節する。このようなブレーキ操作ペダルに与えられる操作に応じて実行される開き下げ制御は、フリー同調制御の一例である。また、ブレーキ力調節部72は、制御モードが同調制御モードに設定され、第1のブレーキ力を小さくするような第1のブレーキ操作が第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられ、かつ、バケット装置10が閉じ状態であると開閉状態判定部71が判定した場合に、次のような閉じ下げ制御を行う。この閉じ下げ制御では、ブレーキ力調節部72は、バケット装置10の閉じ状態が維持されながらバケット装置10が下降するように第1のブレーキ力及び第2のブレーキ力を調節する。このようなブレーキ操作ペダルに与えられる操作に応じて実行される閉じ下げ制御は、フリー同調制御の一例である。第1のブレーキ力を小さくするような第1のブレーキ操作は、例えば、第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられるペダル操作量(踏み込み量)が小さくなるような操作である。
【0076】
ドラム動作制御部73は、第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作を制御する。同調制御モードにおける主補同調制御では、第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作は、第1のウインチ操作装置51に与えられる第1の回動操作に基づいて制御される。
【0077】
具体的には、ドラム動作制御部73は、制御モードが同調制御モードに設定され、第1のウインチ操作装置51の第1のウインチ操作レバー51Aに対して第1の繰り出し操作が与えられた場合に、次のような開き下げ制御又は閉じ下げ制御を行う。開き下げ制御では、ドラム動作制御部73は、バケット装置10の開き状態が維持されながらバケット装置10が下降するように第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作を制御する。閉じ下げ制御では、ドラム動作制御部73は、バケット装置10の閉じ状態が維持されながらバケット装置10が下降するように第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作を制御する。上記のようなウインチ操作レバーに与えられる操作に応じて実行される開き下げ制御及び閉じ下げ制御のそれぞれは、主補同調制御の一例である。
【0078】
また、ドラム動作制御部73は、制御モードが同調制御モードに設定され、第1のウインチ操作装置51の第1のウインチ操作レバー51Aに対して第1の巻き取り操作が与えられた場合に、次のような開き上げ制御又は閉じ上げ制御を行う。開き上げ制御では、ドラム動作制御部73は、バケット装置10の開き状態が維持されながらバケット装置10が上昇するように第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作を制御する。閉じ上げ制御では、ドラム動作制御部73は、バケット装置10の閉じ状態が維持されながらバケット装置10が上昇するように第1のウインチドラムDR1の動作及び第2のウインチドラムDR2の動作を制御する。上記のようなウインチ操作レバーに与えられる操作に応じて実行される開き上げ制御及び閉じ上げ制御のそれぞれは、主補同調制御の一例である。
【0079】
図5は、バケット装置10に接続された第1のウインチロープR1及び第2のウインチロープR2にかかる荷重について説明するための図である。
図5の左図は、第1及び第2のウインチドラムDR1,DR2と、これらのウインチドラムDR1,DR2に巻き付けられた第1及び第2のウインチロープR1,R2と、これらのウインチロープR1,R2の先端が接続されたバケット装置10と、を示している。
図5の右図は、
図5の左図における力のつり合いの関係を説明するための概略図である。
【0080】
第1のウインチロープR1の張力をT1(T開閉)とし、第2のウインチロープR2の張力をT2(T支持)とする。また、
図5の右図では、上シーブ15と下シーブ14にかけ回された第1のウインチロープR1のかけ回し数(ロープかけ本数)が4である場合(4本掛けの場合)を例示している。
図5の右図より、張力T1は、左右一対のリンク部材12,12に対する作用力(左右合計)とT1の3倍(T1×3)とを合計した力と釣り合っている(式(6))。
【0081】
T2=T1×3+リンクに対する作用力(左右合計) ・・・(6)
ここで、バケット装置10の重量をリンク部材12,12と下シーブ14がおおむね均等に支えていると仮定すると、次の式(7)が成立する。
【0082】
リンクに対する作用力(左右合計)=T1×4 ・・・(7)
式(7)を式(6)に代入すると、次の式(8)で示される関係が得られる。
【0083】
T2=T1×3+T1×4=T1×7 ・・・(8)
従って、下記の式(9)の関係が満たされる場合には、バケット装置10は開き、下記の式(10)の関係が満たされる場合には、バケット装置10は閉じる。
【0084】
T2>T1×7 ・・・(9)
T2<T1×7 ・・・(10)
なお、式(9)及び式(10)の右辺「T1×7」は、上記のような4本掛けの場合における計算例であり、ロープかけ本数が変わると、右辺はそれに応じて変えればよい。また、バケット装置10の形状が変われば、右辺はそれに応じて変えればよい。
【0085】
また、第1のウインチロープR1の張力T1及び第2のウインチロープR2の張力T2と、第1のブレーキ力及び第2のブレーキ力とは、次のような関係にある。
【0086】
張力T1=第1のブレーキ力(開閉側ブレーキ力)
張力T2=第2のブレーキ力(支持側ブレーキ力)
以上より、バケット装置10の開き下げの動作時において、第1のブレーキ力と第2のブレーキ力は下記の式(11)及び式(12)のように設定される。第1の設定値及び第2の設定値は、予め設定された値であり、第2の設定値は、例えば第1の設定値の7倍の値に設定される。
【0087】
第1のブレーキ力(開閉側ブレーキ力)<第1の設定値 ・・・(11)
第2のブレーキ力(支持側ブレーキ力)>第2の設定値 ・・・(12)
また、バケット装置10の閉じ下げの動作時において、第1のブレーキ力と第2のブレーキ力は下記の式(13)及び式(14)のように設定される。
【0088】
第1のブレーキ力(開閉側ブレーキ力)>第1の設定値 ・・・(13)
第2のブレーキ力(支持側ブレーキ力)<第2の設定値 ・・・(14)
上述したように、コントローラ70は、前記制御モード設定部から入力される指令信号に基づいてバケットアシストモードのオンとオフを切り換えることができ、バケットアシストモードがオンのときには前記制御モード設定部から入力される指令信号に基づいて同調制御モードと非同調制御モードを切り換えることができる。
【0089】
本実施形態では、同調制御モードは、閉じ上げの動作、閉じ下げの動作、開き上げの動作、及び閉じ上げの動作をバケット装置10に行わせる場合に用いられる。この同調制御モードの主補同調制御では、オペレータによる1つのレバー操作によってバケット装置10が開き状態又は閉じ状態を維持しながらバケット装置10を下降又は上昇させる動作が行われる。同調制御モードのフリー同調制御では、オペレータによる1つのペダル操作によってバケット装置10が開き状態又は閉じ状態を維持しながらバケット装置10を下降させる動作が行われる。
【0090】
一方、本実施形態では、非同調制御モードは、掘削動作をバケット装置10に行わせる場合、バケット装置10を空中で閉じる動作である空中閉じ動作をバケット装置10に行わせる場合、バケット装置10を空中で開く動作である空中開き動作をバケット装置10に行わせる場合、などに用いられる。
【0091】
この非同調制御モードにおける掘削動作のための掘削制御では、第2のウインチドラムDR2(補巻ドラム)をフリー状態にしつつ、第1のウインチドラムDR1(主巻ドラム)で第1のウインチロープR1(開閉ロープ)を巻き取ることで、第2のウインチロープR2(支持ロープ)のテンションを緩めつつ、バケット装置10を閉じる動作をバケット装置10に行わせる。これにより、掘削動作においてバケット装置10が閉じる過程で、土砂などの掘削対象が掘削されるにしたがってバケット装置10が沈み込み、より多くの掘削対象をバケット装置10内に格納することができる。
【0092】
非同調制御モードにおける空中閉じ動作のためのバケット静止閉じ制御では、第2のウインチ操作レバー53Aが中立位置にあり、第2のブレーキ操作ペダル54Aが踏まれた状態(第2のウインチドラムDR2の回転を阻止するように当該第2のウインチドラムDR2に対してブレーキがかれられた状態)で、第1のウインチ操作レバー51Aに対して巻き取り操作が与えられる。これにより、第2のウインチロープ(支持ロープ)の繰り出し及び巻き取りを行わせずに第1のウインチロープ(開閉ロープ)の巻き取りを行うことができ、バケット装置10の高さを空中で維持しながらバケット装置10を閉じる方向に動作させることができる。
【0093】
非同調制御モードにおける空中開き動作のためのバケット静止開き制御では、第2のウインチ操作レバー53Aが中立位置にあり、第2のブレーキ操作ペダル54Aが踏まれた状態(第2のウインチドラムDR2の回転を阻止するように当該第2のウインチドラムDR2に対してブレーキがかれられた状態)で、第1のブレーキ力を小さくする(弱める)ように第1のブレーキ操作ペダル52Aが操作される。これにより、第2のウインチロープ(支持ロープ)の繰り出し及び巻き取りを行わせずに第1のウインチロープR1(開閉ロープ)の繰り出しを行って開閉ロープのテンションを緩めることができ、バケット装置10の高さを空中で維持しながらバケット装置10を開く方向に動作させることができる。この空中開き動作は、例えば、閉じ状態のバケット装置10に保持された土砂などの運搬対象物を運搬先(例えばトラックの荷台)の上で排土するような作業である排土作業において用いられる。
【0094】
また、バケット装置10を下降させる動作は、第1及び第2のウインチモータ34,35の駆動力を用いて行われることが可能であるが、第1及び第2のクラッチブレーキ40A,40Bをフリー状態にしてバケット装置10を自由落下させることで行われることも可能である。バケット装置10の自由落下では、第1及び第2のブレーキ操作ペダル52A,54Aにペダル操作を与えることにより第1,第2のブレーキ力が調節されることでバケット装置10の下降速度が調節される。
【0095】
次に、このコントローラ70が行う演算制御動作を、
図6~
図8を参照しながら説明する。
【0096】
図6は、コントローラ70が行う演算制御動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、コントローラ70は、制御モード設定部から入力される指令信号に基づいて同調制御モードのオンとオフを切り換える。コントローラ70は、ステップS100において、同調制御モードのオンとオフを切り換えるための指令信号が入力されたか否かを判定する(ステップS100)。具体的には、コントローラ70は、ステップS100において、例えば、制御モードを同調制御モードに設定するための指令信号である同調制御モード指令信号が入力されたか否かを判定してもよい。また、コントローラ70は、ステップS100において、例えば、制御モードを非同調制御モードに設定するための指令信号である非同調制御モード指令信号が入力されたか否かを判定してもよい。
【0097】
コントローラ70は、同調制御モード指令信号が制御モード設定部から入力されると(ステップS100においてYES)、制御モードを同調制御モードに設定する。コントローラ70は、同調制御モードにおいて、例えば、前記主補同調制御、前記フリー同調制御などの同調制御を実行する(ステップS101)。一方、コントローラ70は、非同調制御モード指令信号が制御モード設定部から入力されと(ステップS100においてNO)、同調制御モードを解除し、制御モードを非同調制御モードに設定する。コントローラ70は、非同調制御モードにおいて、例えば、前記バケット静止閉じ制御、前記掘削制御、前記バケット静止開き制御などの非同調制御を実行する(ステップS102)。
【0098】
本実施形態では、同調制御モードと非同調制御モードの切り換えは、非同調制御モードスイッチ90に入力される入力操作に基づいて行われる。具体的には、非同調制御モードをオフにするための入力操作をオペレータが非同調制御モードスイッチ90に入力すると、非同調制御モードスイッチ90は、同調制御モード指令信号をコントローラ70に入力し、コントローラ70は、入力された同調制御モード指令信号に基づいて制御モードを同調制御モードに設定して同調制御を行う(ステップS100,S101)。非同調制御モードをオンにするための入力操作をオペレータが非同調制御モードスイッチ90に入力すると、非同調制御モードスイッチ90は、非同調制御モード指令信号をコントローラ70に入力し、コントローラ70は、入力された非同調制御モード指令信号に基づいて制御モードを非同調制御モードに設定して非同調制御を行う(ステップS100,S102)。
【0099】
本実施形態に係る制御装置では、同調制御モードにおける動作(例えば閉じ下げの動作、閉じ上げの動作など)の次に、掘削動作、空中閉じ動作、又は空中開き動作をバケット装置10に行わせる場合には、オペレータは、上記のように同調制御モードをオフにするためのオフ操作(本実施形態では、非同調制御モードをオンにするためのオン操作)を非同調制御モードスイッチ90に与えるだけで、同調制御モードを解除し(キャンセルし)、制御モードを非同調制御モードに設定することができる。また、非同調制御モードにおける動作(例えば掘削動作など)の次に、例えば閉じ上げの動作をバケット装置10に行わせる場合には、オペレータは、上記のように同調制御モードをオンにするためのオン操作(本実施形態では、非同調制御モードをオフにするためのオフ操作)を非同調制御モードスイッチ90に与えるだけで、非同調制御モードを解除し、制御モードを同調制御モードに設定することができる。これにより、例えば掘削動作及び閉じ上げの動作を含む一連の作業を連続的に円滑に行うことが可能となり、一連の作業性が向上する。
【0100】
以下では、まず、同調制御モードについて説明し、その後に非同調制御モードについて説明する。
【0101】
[同調制御モード]
図7は、コントローラ70が行う同調制御モードにおける演算制御動作を示すフローチャートである。同調制御モードにおいて、第1のウインチ操作レバー51A(主巻レバー)の操作量に関する指令信号が第1のウインチ操作装置51(開閉側ウインチ操作装置)からコントローラ70に入力され、第1のウインチロープR1(主巻ロープ)の繰り出し量に関する検出信号が第1の回転センサ81(開閉側検出器)からコントローラ70に入力され、第2のウインチロープR2(補巻ロープ)の繰り出し量に関する検出信号が第2の回転センサ82(支持側検出器)からコントローラ70に入力される(ステップS1)。
【0102】
次に、コントローラ70は、第1の繰り出し量Lm(開閉側繰り出し量Lm)と第2の繰り出し量La(支持側繰り出し量La)との差である繰り出し量相対差ΔLを演算し、バケット装置10の開度(開閉度)を演算する(ステップS2)。
【0103】
次に、コントローラ70は、主巻レバーの操作があるか否か、すなわち、主巻レバーに操作が与えられているか否かを判定する(ステップS3)。コントローラ70は、例えばステップS1においてコントローラ70に入力される主巻レバーの操作量に関する指令信号に基づいて主巻レバーに操作が与えられているか否かを判定することができる。
【0104】
コントローラ70は、主巻レバーに操作が与えられていない場合(ステップS3においてNO)、比例弁に対する指令値を、第1及び第2のウインチモータ34,35が駆動されないような指令値(例えば指令値=0)にセットし、当該指令値を、第1の繰り出し用比例弁61A、第1の巻き取り用比例弁61B、第2の繰り出し用比例弁63A及び第2の巻き取り用比例弁63Bに入力する(ステップS4)。
【0105】
一方、コントローラ70は、主巻レバーに操作が与えられている場合(ステップS3においてYES)、主巻レバーの操作があると判定された時点からこの処理(ステップS5の処理)が1ステップ目(1周期目)であるか否かを判定する(ステップS5)。言い換えると、コントローラ70は、ステップS3において主巻レバーに操作が与えられていると判定してからステップS5の処理を初めて行うか否かを判定する。
【0106】
コントローラ70が、当該処理が1ステップ目であると判定した場合(ステップS5においてYES)、開閉状態判定部71は、バケット装置10が開き状態であるか閉じ状態であるかを判定する(ステップS7)。具体的には、開閉状態判定部71は、ステップS2において演算されたバケット装置10の開度に基づいて、バケット装置10が開き状態であるか閉じ状態であるかを判定してもよい。また、オペレータがバケット装置10の開閉状態を入力することが可能なスイッチである開閉状態入力スイッチがキャビン内に備えつけられている場合には、開閉状態判定部71は、オペレータが開閉状態入力スイッチを介して入力する情報に基づいて、バケット装置10が開き状態であるか閉じ状態であるかを判定してもよい。
【0107】
バケット装置10が閉じ状態であると開閉状態判定部71が判定した場合(ステップS7においてYES)、ドラム動作制御部73は、開閉側繰り出し量Lmと支持側繰り出し量Laとの差の目標値である繰り出し量相対差目標値を、例えば、閉じ上げ動作及び閉じ下げ動作のために予め設定された設定値である閉じ動作設定値(閉じ上げ/下げ時設定値)にセットする(ステップS8)。閉じ動作設定値は、一対のバケット13,13が開くことを回避するために設定された設定値であって、第2のウインチロープR2(支持ロープ)の緩み量である支持側緩み量に関する設定値である。閉じ動作設定値は、第1のウインチロープR1(開閉ロープ)がぴんと張ってバケット装置10が閉じているときに支持ロープがやや緩んだ状態となるように予め設定された値である。
【0108】
同調制御モードにおいてバケット装置10の閉じ上げの動作又は閉じ下げの動作が行われる場合、仮に当該動作中にバケット装置10が開いてしまうと、バケット装置10に保持された内容物(運搬対象物)がバケット装置10からこぼれ落ちるので、当該動作中にはバケット装置10の閉じ状態が確実に維持される必要がある。閉じ上げの動作中又は閉じ下げの動作中において支持ロープにテンションがかかると、当該動作中にバケット装置10が開いてしまうリスクが生じる。一方、当該動作中に支持ロープが緩んだ状態が維持されることで、バケット装置10の閉じ状態が確実に維持されながら閉じ上げの動作又は閉じ下げの動作が行われることが可能になる。
【0109】
支持ロープの緩み量である支持側緩み量は、大きくなるほどバケット装置10の閉じ状態を維持しやすくなるが、大きくなりすぎるとバケット装置10が開閉ロープのみで支持された状態となってバケット装置10が傾きやすくなる。従って、閉じ動作設定値は、変更可能であることが好ましい。この場合、オペレータは、例えば、キャビン内に配置された入力機器に対して、閉じ動作設定値を変更する入力を与える。これにより、オペレータは、例えばバケット装置10が保持する運搬対象物の種類に応じて、閉じ上げ動作又は閉じ下げ動作における支持ロープの支持側緩み量を調節することが可能になる。具体的には、バケット装置10が掴む種々の内容物(運搬対象物)のうち、運搬中に多少の荷こぼれを許容できるものである場合には、支持側緩み量が小さくなるように閉じ動作設定値が設定される。これにより、バケット装置10の傾きを抑えつつ、かつ、バケット装置10の閉じ状態をある程度維持しながら、閉じ下げの動作及び閉じ上げの動作をバケット装置10に行わせることができる。また、バケット装置10が掴む種々の内容物(運搬対象物)のうち、運搬中に荷こぼれを許容できないものである場合には、支持側緩み量が大きくなるように閉じ動作設定値が設定される。これにより、バケット装置10の閉じ状態を確実に維持しながら閉じ下げの動作及び閉じ上げの動作をバケット装置10に行わせることができる。
【0110】
一方、バケット装置10が閉じ状態でない(開き状態である)と開閉状態判定部71が判定した場合(ステップS7においてNO)、ドラム動作制御部73は、繰り出し量相対差目標値を、例えば、開き上げ動作及び開き下げ動作のために予め設定された設定値である開き動作設定値(開き上げ/下げ時設定値)にセットする(ステップS9)。この繰り出し量相対差目標値は、開閉側繰り出し量Lmと支持側繰り出し量Laとの差である繰り出し量相対差の目標値であり、一対のバケット13,13を所定の開度に維持するための目標値である。開き上げ動作及び開き下げ動作のための当該繰り出し量相対差目標値は、第2の繰り出し量相対差目標値の一例である。
【0111】
前記開き動作設定値は、例えば、以下の(A),(B),(C)の何れかであってもよい。
【0112】
(A)開き動作設定値は、例えば、前記1ステップ目(1周期目)における繰り出し量相対差(初期検出値)であってもよい。
【0113】
(B)前記開き動作設定値は、バケット装置10が所定の開度だけ開いた状態となるように予め設定された値である所定開度対応値であってもよい。
【0114】
(C)前記開き動作設定値は、バケット装置10が完全に開いた状態であり、開閉ロープが緩んだ状態となるように予め設定された値である全開対応値であってもよい。
【0115】
前記開き動作設定値が前記初期検出値である場合(上記(A)の場合)には、開き上げの動作又は開き下げの動作が開始された時点でのバケット装置10の開度が維持されたまま当該動作が行われる。前記開き動作設定値が前記所定開度対応値である場合(上記(B)の場合)には、開き上げの動作又は開き下げの動作が開始されると、バケット装置10の開度が前記所定の開度となるようにコントローラ70によって自動的に変化し、その所定の開度を維持しながら前記動作が行われる。また、前記開き動作設定値が前記全開対応値である場合(上記(C)の場合)には、開き上げの動作又は開き下げの動作が開始されると、バケット装置10が完全に開いた状態で開閉ロープが緩んだ状態となるようにコントローラ70によって自動的に主補繰り出し量相対値が変化し、その状態を維持しながら前記動作が行われる。
【0116】
前記開き動作設定値は、オペレータが作業の種類、使い勝手の良さなどの種々の条件を考慮して適宜切り替えることができるように構成されていてもよい。
【0117】
コントローラ70は、ステップS5の処理が2ステップ目以降(2周期目以降)であると判定した場合(ステップS5においてNO)、1ステップ目のステップS8において設定された主補繰り出し量相対差目標値を維持する(ステップS6)。
【0118】
ステップS10において、ドラム動作制御部73は、繰り出し量相対差目標値と繰り出し量相対差(現在値)との偏差をフィードバックして主巻レバー51Aの操作量に対する補正を行うことにより比例弁に対する指令値(補正指令値)を決定し、比例弁に当該補正指令値を出力する。具体的には、閉じ上げ動作又は開き上げ動作の場合、すなわち、主巻レバーに与えられる操作が第1の巻き取り操作である場合には、ドラム動作制御部73は、第1の巻き取り用比例弁61Bに対して当該比例弁61Bのために演算された補正指令値を出力するとともに、第2の巻き取り用比例弁63Bに対して当該比例弁63Bのために演算された補正指令値を出力する。また、閉じ下げ動作又は開き下げ動作の場合、すなわち、主巻レバーに与えられる操作が第1の繰り出し操作である場合には、ドラム動作制御部73は、第1の繰り出し用比例弁61Aに対して当該比例弁61Aのために演算された補正指令値を出力するとともに、第2の繰り出し用比例弁63Aに対して当該比例弁63Aのために演算された補正指令値を出力する。
【0119】
図8は、同調制御モードにおけるフィードバック制御に関するブロック線図である。コントローラ70は、実際の主補繰り出し量相対値を、上記のように設定された繰り出し量相対差目標値に近づけることで、バケット装置10の閉じ状態若しくは開き状態を維持しながらバケット装置10を上昇させる閉じ上げ若しくは開き上げの動作、又はバケット装置10の閉じ状態若しくは開き状態を維持しながらバケット装置10を下降させる閉じ下げ若しくは開き下げの動作をバケット装置10に行わせるために、例えば
図8に示すようなフィードバック制御を行う。
【0120】
具体的には、コントローラ70は、繰り出し量相対差目標値から実際の繰り出し量相対差(現在値)を減算することで、偏差(繰り出し量相対差偏差)を演算する。次に、コントローラ70は、上記繰り出し量相対差偏差をフィードバックすることによる補正を主巻レバーの操作量に対して行うことで、主巻及び補巻の比例弁指令電流値、すなわち、比例弁61A,61B,63A,63Bに出力する指令電流値を演算する。
【0121】
例えば、開閉側繰り出し量(主巻繰り出し量)の検出値(演算値)をLm、支持側繰り出し量(補巻繰り出し量)の検出値(演算値)をLaとした場合、繰り出し量相対差ΔLは、開閉側繰り出し量Lmから支持側繰り出し量Laを減算することにより演算される(ΔL=Lm-La)。
【0122】
さらに、上記のように設定された繰り出し量相対差目標値をΔLrとすると、繰り出し量相対差偏差Hは、目標値ΔLrから上記の相対差ΔLを減算することにより演算される(H=ΔLr-ΔL)。
【0123】
主巻レバーの操作量の検出値をAmとすると、例えばPID制御を行った場合の主巻レバー用の比例弁61A又は比例弁61Bへの指令値(補正指令値)、及び補巻レバー用の比例弁63A又は比例弁63Bへの指令値(補正指令値)は、例えば下記の式を用いてそれぞれ演算される。ここで、K1は比例ゲイン、K2は積分ゲイン、K3は微分ゲインである。
【0124】
主巻レバー用の比例弁への指令値=Am-K1×H-K2×(Hの積分値)-K3×(Hの微分値)
補巻レバー用の比例弁への指令値=Am+K1×H+K2×(Hの積分値)+K3×(Hの微分値)
ドラム動作制御部73は、上記のように演算された指令値、すなわち、前記偏差Hがゼロに近づくような指令信号を対応する比例弁に出力して支持ドラムDR2及び開閉ドラムDR1の動作を制御することにより、バケット装置10の前記閉じ状態を維持しながらバケット装置10を上昇又は下降させることができる。
【0125】
[非同調制御モード]
次に、非同調制御モードについて説明する。上述したように、コントローラ70は、同調制御モードのオフを指定するための指令信号、すなわち、非同調制御モードをオンにするための指令信号が非同調制御モードスイッチ90から入力されると(
図6のステップS100においてNO)、同調制御モードを解除し、制御モードを非同調制御モードに設定する(
図6のステップS102)。
【0126】
図9は、コントローラ70が行う非同調制御モードにおける演算制御動作を示すフローチャートである。
【0127】
掘削制御では、第2のウインチドラムDR2(補巻ドラム)をフリー状態としつつ、主巻ドラムで開閉ロープを巻き取ることで、支持ロープのテンションを緩めつつ、バケット装置10を閉じるような動作をバケット装置10に行わせる。これにより、掘削動作でバケット装置10が閉じる過程で、掘削対象が掘削されるにしたがってバケット装置10が沈み込み、より多くの掘削対象をバケット装置10内に格納することができる。
【0128】
具体的には、第1のウインチ操作レバー51Aに対して巻き取り操作が与えられ(ステップS31においてYES)、かつ、第1のブレーキ力を小さくする(弱める)ように第1のブレーキ操作ペダル52Aが操作された場合(ステップS32においてNO)、コントローラ70は、バケット装置10を閉じる方向に動作させ、かつ、第1のブレーキ操作ペダル52Aに対する操作量の減少に応じて第2のブレーキ力(第2のウインチロープR2の張力)を小さくするような掘削制御を行う(ステップS34)。この掘削制御では、土をバケット装置10で掘削する際に、掘削しながらバケット装置10が下に沈むようにバケット装置10を動作させることができる。この制御は、バケット装置10の高さを変えずにバケット装置10を閉じるバケット静止閉じ制御に比べて、より多くの土を掴むことが可能となる。掘削制御において、第1のウインチ操作レバー51Aに対して与えられる巻き取り操作、及び第1のブレーキ力を小さくするように第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられる操作は、特定の操作の一例である。
【0129】
バケットを空中で閉じる(バケット静止閉じ制御)では、第2のウインチ操作レバー53A(補巻レバー)を中立位置とし、第1のウインチ操作差レバー51A(主巻レバー)に対して巻き取り操作を与えることで、支持側を固定しつつ開閉側を巻き上げて空中でバケット閉じ動作を行わせることができる。
【0130】
具体的には、第1のウインチ操作レバー51Aに対して巻き取り操作が与えられ(ステップS31においてYES)、かつ、第1のブレーキ操作ペダル52Aが踏まれた状態にある場合(ステップS32においてYES)、コントローラ70は、バケット装置10の高さを維持しながらバケット装置10を閉じる方向に動作させるバケット静止閉じ制御を行う。バケット静止閉じ制御において、第1のウインチ操作レバー51Aに対して与えられる巻き取り操作、及び第1のブレーキ操作ペダル52Aが踏まれる操作は、特定の操作の一例である。
【0131】
また、バケットの排土操作は、補巻レバーを中立位置とし、主巻ドラムをフリー状態にすることで開閉ロープ(開閉側ワイヤ)のテンションを緩める。これにより、バケット装置10を空中で開くことが可能となる。
【0132】
具体的には、第1のウインチ操作レバー51Aに対して巻き取り操作が与えられず(ステップS31においてNO)、かつ、第1のブレーキ力を小さくする(弱める)ように第1のブレーキ操作ペダル52Aが操作された場合(ステップS35においてYES)、コントローラ70は、バケット装置10の高さを維持しながらバケット装置10が開くようなバケット静止開き制御を行う。このバケット静止開き制御は、バケット装置10は、第2のウインチロープR2(補巻ロープ)で支持される一方で、第1のウインチドラムDR1をフリーの状態にして第1のウインチロープR1の張力を減少させることにより、空中でバケット装置10が開く動作が実行される。バケット静止開き制御において、第1のブレーキ力を小さくするように第1のブレーキ操作ペダル52Aに与えられる操作は、特定の操作の一例である。
【0133】
以上のように、本実施形態に係るバケット制御装置では、クレーン100において、オペレータによる簡単な操作でバケット装置10に閉じ上げの動作などの種々の動作を行わせることができ、しかも、閉じ上げの動作中にバケット装置10が開いてしまうことを抑制できる。このバケット制御装置では、1つの操作レバーで自動的に開閉ドラムと支持ドラムの動作を同調制御するため、オペレータの疲労を軽減でき、非熟練オペレータでも比較的高い作業速度で作業が可能になる。また、支持側緩み量を自動的に補正するため、支持側緩み量を調整する操作が不要となり作業性が向上する。
【0134】
また、バケット装置10の閉じ上げの動作又は閉じ下げの動作の場合には、支持ロープにテンションをかけずに巻き上げることができ、荷こぼれを起こさずに確実にバケット装置10の閉じ上げ又は閉じ下げの動作において同調巻き上げ又は同調巻き下げが可能になる。また、バケット装置10の開き上げの動作又は開き下げの動作の場合にも、バケット装置10が開いた姿勢(例えば初期姿勢)を維持しながらの同調巻き上げ又は同調巻き下げが可能となり、同調巻き上げ又は同調巻き下げ後にもバケット装置10の開度(開閉度)が維持されるため、次の操作に直ぐ入ることができ、作業性が向上する。
【0135】
具体的には、バケット装置10を閉じながら上昇させる場合、支持ロープにテンションがかかると、閉じ上げの動作中にバケット装置10が開くリスクがあるため、確実な閉じ上げの動作を行うには、支持ロープに緩みを持たせて開閉ロープにテンションを掛けた状態をキープしながら開閉ドラムと支持ドラムを同調制御する。ただし、支持ロープを過度に緩ませるとバケット装置10が傾くため、バケット装置10の内容物などによって荷こぼれを許容できない場合は、支持ロープを十分に緩ませて開閉ドラムと支持ドラムを同調して動作させることでバケット装置10の巻き上げ又は巻き下げを行う。一方、バケット装置10からの多少の荷こぼれがあっても許容される場合は、支持ロープの緩み量を少なくして開閉ドラムと支持ドラムを同調制御してバケット装置10の巻き上げ又は巻き下げを行う。従来の技術では、支持側緩み量を考慮した同調制御が行われていないので、操作レバーの操作が複雑になり、操作による疲労、非熟練オペレータの操作速度の低下などの問題がある。
【0136】
また、バケット装置10の動作の流れとしては、バケット装置10で掘削動作を行った後に、バケット装置10の閉じ上げの動作を行うという動作パターンが一般的である。掘削動作時には、開閉ドラムにより開閉ロープの巻き取りを行う一方で、支持ドラムをフリー状態にする。支持ドラムをフリー状態にすることで、地面などの掘削対象を掘削するにしたがってバケット装置10が自重で掘削対象に対して沈み込むため、よりたくさんの掘削対象を掴むことができる。このような掘削動作では、バケット装置10が閉じきった後にも開閉ドラムによる巻き上げの動作を継続すると、支持ロープの緩みがさらに進行する。支持ロープがある程度緩んだタイミングで支持ドラムによる巻き上げの動作を開始すれば、開閉ロープと支持ロープの両方が巻き上がるため、支持ロープが緩んだ状態を維持しながらバケット装置10の巻き上げが行われる。このような場合において、例えば支持ドラムによる巻き上げ動作の開始のタイミングが遅れた場合、支持ロープの緩みが過剰となるため、バケット装置を開閉ロープのみで支える状態となり、バケット装置が傾く可能性がある。また、支持ロープの緩みが過剰となった場合、開閉ドラムの巻き上げ動作を一旦止めて、支持ドラムのみを巻き上げ動作させて支持ロープの緩みを取る必要があり、余計な操作が増えてサイクルタイムが低下する問題がある。一方、支持ドラムの巻き上げ動作の開始のタイミングが早過ぎる場合、支持ロープの緩みが不足して支持ロープにテンションがかかり、閉じ上げの動作中にバケット装置10が開くリスクがある。この場合、調整のために開閉ドラムのみを巻き上げ動作させて支持ロープに緩みを作る必要があり、上記同様に余計な操作が増えてサイクルタイムが低下する問題がある。本実施形態にかかるバケット制御装置では、閉じ下げの動作及び閉じ上げの動作において、支持側緩み量を自動的に補正するため、支持側緩み量を調整する操作が不要となり、上記のような問題を解消することができる。
【0137】
また、従来の制御装置(例えば特許文献1の制御装置)では、バケット装置の開閉状態を判定する手段を備えておらず、また、バケット装置の閉じ状態で支持ロープをたるませて張力がかからないようにすることについては考慮されていない。
【0138】
また、掘削動作、空中でのバケット装置10の閉じ動作などの動作が行われる場合には、同調制御モードをキャンセルする必要があるが、本実施形態にかかるバケット制御装置では、このキャンセル機能をモード切替で実現することで、非同調制御モードにおける掘削動作から同調制御モードにおける閉じ上げの動作を含む一連の作業を連続的に行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0139】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0140】
(A)クレーンの仕様について
図1に示す前記実施形態に係るクレーンは、ジブ及びストラットを備えていないが、クレーンの仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係るクレーンは、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係るクレーンは、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。
【0141】
(B)ウインチロープ及びウインチドラムについて
前記実施形態では、第1のウインチロープR1が開閉ロープであり、第2のウインチロープR2が支持ロープであり、第1のウインチドラムDR1が開閉ドラムであり、第2のウインチドラムDR2が支持ドラムであるが、これらは逆の構成であってもよい。すなわち、第1のウインチロープR1が支持ロープであり、第2のウインチロープR2が開閉ロープであり、第1のウインチドラムDR1が支持ドラムであり、第2のウインチドラムが開閉ドラムであってもよい。
【0142】
(C)開閉状態判定部は、一対のバケット13,13の下端部同士の相対位置に基づいてバケット装置10の開閉状態を判定するように構成されていてもよい。この場合、バケット制御装置は、一対のバケット13,13の下端部同士の相対位置を検出する検出センサを備える。当該検出センサは、例えば、一対のバケット13,13の下端部同士が接触しているか否かを検出するセンサであってもよく、一対のバケット13,13の下端部同士の距離を検出するセンサであってもよい。
【0143】
(D)操作装置について
本開示に係る操作装置は、第1及び第2のウインチの種類及びその駆動装置によって適宜選定すればよい。例えば、
図2及び
図3に示される第1のウインチ操作装置51、第2のウインチ操作装置53、第1のブレーキ操作装置52及び第2のブレーキ操作装置54の操作装置本体51B,53B,52B,54Bのそれぞれが、操作に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁に置換されてもよい。この場合、比例弁61A,61Bが第1のウインチ操作装置51の前記リモコン弁と第1のコントロールバルブの一対のパイロットポートとの間にそれぞれ介在し、比例弁63A,63Bが第2のウインチ操作装置53の前記リモコン弁と第2のコントロールバルブ33の一対のパイロットポートとの間にそれぞれ介在する。また、比例弁62が第1のブレーキ操作装置52の前記リモコン弁と第1のクラッチブレーキ40Aとの間に介在し、比例弁64が第2のブレーキ操作装置54の前記リモコン弁と第2のクラッチブレーキ40Bとの間に介在する。
【0144】
(E)ウインチについて
本開示に係る第1及び第2のウインチは、例えば電動ウインチであってもよい。この場合、
図3に示す油圧回路は、当該電動ウインチを駆動する電気回路(例えばインバータを含む回路)に置換されることが可能である。
【符号の説明】
【0145】
10 :バケット装置
11 :バケット装置の上部材(本体部の一例)
13 :バケット
40 :クラッチブレーキ機構
51 :第1のウインチ操作装置(開閉側ウインチ操作装置の一例)
52 :第1のブレーキ操作装置(開閉側ブレーキ操作装置の一例)
53 :第2のウインチ操作装置(支持側ウインチ操作装置の一例)
54 :第2のブレーキ操作装置(支持側ブレーキ操作装置の一例)
70 :コントローラ
71 :開閉状態判定部
72 :ブレーキ力調節部
73 :ドラム動作制御部
81 :第1の回転センサ(開閉側検出器の一例)
82 :第2の回転センサ(支持側検出器の一例)
90 :非同調制御モードスイッチ(制御モード設定部の一例)
91 :バケットアシストモードスイッチ(制御モード設定部の一例)
100 :クレーン(建設機械の一例)
DR1 :第1のウインチドラム(開閉ドラムの一例)
DR2 :第2のウインチドラム(支持ドラムの一例)
H :偏差(繰り出し量相対差偏差)
Lm :第1の繰り出し量(開閉側繰り出し量)
La :第2の繰り出し量(支持側繰り出し量)
R1 :第1のウインチロープ(開閉ロープの一例)
R2 :第2のウインチロープ(支持ロープの一例)
ΔL :繰り出し量相対差
ΔLr :繰り出し量相対差目標値