IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社西原環境の特許一覧

<>
  • 特開-水処理システム 図1
  • 特開-水処理システム 図2
  • 特開-水処理システム 図3
  • 特開-水処理システム 図4
  • 特開-水処理システム 図5
  • 特開-水処理システム 図6
  • 特開-水処理システム 図7
  • 特開-水処理システム 図8
  • 特開-水処理システム 図9
  • 特開-水処理システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023854
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/08 20230101AFI20230209BHJP
【FI】
C02F3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129753
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】391022418
【氏名又は名称】株式会社西原環境
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 美帆
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA12
4D003AB02
4D003BA02
4D003CA03
4D003DA11
(57)【要約】
【課題】担体に余剰に付着する汚泥を剥離することが可能な技術を提供すること
【解決手段】汚水を処理する水槽(反応槽1.7)と、汚水を流入する流入管1.11と、活性汚泥1.4を付着させる担体2.4と、活性汚泥1.4に酸素を供給する散気装置1.8と、前記水槽で処理された処理水を流出させる流出管1.12と、を備える担体法による水処理システム1において、活性汚泥1.4に浸漬された担体2.4を、内包させつつ還流させる担体収容還流部2.1を有することを特徴とする水処理システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を処理する水槽と、
汚水を流入する流入管と、
活性汚泥を付着させる担体と、
前記活性汚泥に酸素を供給する散気装置と、
前記水槽で処理された処理水を流出させる流出管と、
を備える担体法による水処理システムにおいて、
前記活性汚泥に浸漬された前記担体を、
内包させつつ還流させる担体収容還流部を有すること、
を特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記担体収容還流部は、
一部又は全部が水槽と独立した構造であり、
底面若しくは側面を前記活性汚泥が通過できる構造を有し、
前記担体が該担体収容還流部の外部に流出しない形状を有すること、
を特徴とする、
請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記担体収容還流部の中の担体の還流部において、
前記担体の密度が高くなる箇所を形成する整流部材を有すること、
を特徴とする、
請求項1又は2に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理方式の一つである担体添加活性汚泥処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水等の汚水を処理する施設では、活性汚泥法と呼ばれる生物処理が一般的に行われている。活性汚泥法では、汚水中の汚濁成分を生物学的に分解する活性汚泥と呼ばれる液状の微生物群を水槽内に維持して処理を行う。活性汚泥を蓄えた水槽に汚水を投入し、酸素を供給しながら撹拌することで汚濁成分は生物学的に分解される。汚濁成分の分解を終えた活性汚泥は後段の沈殿池において固液分離されて水槽に返される。一方、固液分離で活性汚泥から分離した液体は清浄な処理水となる。
【0003】
ここで、汚水中の汚濁成分を分解する活性汚泥を蓄えた水槽は一般に反応タンクと呼ばれる。
【0004】
活性汚泥法では、時間あたりに投入される汚水の量と汚水中に含まれる汚濁成分の量によって、反応タンクの有効容積(実際に蓄えることが出来る活性汚泥の容積)と反応タンクに蓄える活性汚泥の濃度が決められる。
【0005】
上述の通り、時間あたり投入される汚水の量と汚水中に含まれる汚濁成分の量に基づき反応タンクは設計されるため、設計当初の汚水の量および/または汚濁成分の量に対して、実際に投入される汚水の量および/または汚濁成分の量に変動がある場合は、反応タンクの有効容積は調整出来ないため、反応タンクに蓄えられる活性汚泥の濃度を調節して安定した汚濁成分の分解を行うこととなる。実際に投入される汚水の量および/または汚濁成分の量が下方変動した場合は、活性汚泥の濃度を低く調節することで安定した汚濁成分の分解が行われる。
【0006】
しかしながら、反応タンクに投入される汚水の量が増大した場合、活性汚泥の濃度を高めることで汚濁成分を分解することは可能であるが、沈殿池では汚水量が増大することと活性汚泥濃度が高まることによって設計当初の有効容積や有効水深が不足し、それを起因として活性汚泥の固液分離が悪化し、清浄な処理水が安定して得られなくなることが懸念されるため、容易に投入される汚水の量を増やすことは出来ない。
【0007】
反応タンクに投入される汚水の量の増大と高い活性汚泥濃度による固液分離悪化の懸念に対し、反応タンクの活性汚泥濃度を増大させながらも、沈殿池で固液分離される活性汚泥濃度を低下させる技術が例えば特許文献1によって開示されている。
【0008】
特許文献1には、反応タンク内へ微生物用のキャリア物質として、砕片および/または粒状の、わずかな比重を有する多孔質の粒状物が、それぞれの粒状物が反応タンク内で自由移動可能に浮遊するような量で装入されていることで、汚濁成分の分解に伴い増殖する微生物がキャリア物質内に固定されることとなり、従来の活性汚泥法と比較して極めて大きい活性汚泥濃度を反応タンク内に維持することができるようになり、高負荷廃水の大きい浄化率を得ることのできる技術が開示されている。
【0009】
この場合においても、反応タンク内でキャリア物質に固定されていない活性汚泥の濃度は従来の活性汚泥法と同等かそれ以下であり、固液分離を行う後沈殿槽の直径および深さはキャリア物質を用いない従来の活性汚泥法における沈殿池の直径および深さと同等かそれ以下に抑えられる。
【0010】
つまり、投入される汚水負荷が増大した場合において、反応タンク内にキャリア物質を装入し、極めて大きい活性汚泥濃度を反応タンク内に維持して対応した場合においても沈殿池のサイズを変えることなく、安定した固液分離が行えることが示唆されている。
【0011】
特許文献2は、下水、産業廃水、し尿などの排水の処理に関し、特に、活性汚泥を保持する担体を利用した水処理装置に関する。
従来より、水処理においては、活性汚泥法が広く用いられているが、高い活性汚泥濃度が保持できないため、処理時間が長く、負荷変動に対する処理の安定性に問題があった。
一方、わが国の下水処理施設においては、すでに増設のスペースがなく、また、増設の
ための土地の取得が困難な状況にあり、既存の施設を利用してより高度な水処理を可能と
することが要求されている。
これに対して、微生物や活性汚泥を保持しうる担体素材の性能向上に伴い、これらの担
体を利用した水処理装置が開発されていることが特許文献2に示されている。
【0012】
特許文献2による水処理装置は、生物反応槽に返送管を設け、前記返送管は下流側に吸引口と、上流側に吐出口とを有し、かつ該吸引口と該吐出口の間に送気管を備えた水処理装置において、前記生物反応槽が担体を用いた好気槽であり、かつ担体分離器を備える。この様な構成とすることで、活性汚泥や微生物を担持した担体が、最終沈殿池に流出することを防止して、最終沈殿池の負荷を高めず、かつ、余剰汚泥の発生を抑制し、さらには、処理時間の短縮や処理の安定を図ることができる水処理装置を提供する。
【0013】
特許文献3によれば、分離用スクリーンを用いることなく、担体に廃水中の基質や酸素を効率よく供給でき、担体表面に付着した微生物の過度の増殖や、担体に保持した特殊有用微生物以外の一般微生物の付着・増殖を防ぐことができ、安定して高い処理性能を有する微生物反応槽及びこの反応槽を用いて廃水を処理する方法を提供する。
【0014】
特許文献3によれば、水面付近に浮遊した担体は、水面の波立ちにより流動が大きく、空気との接触効率が高いことに着目し、反応槽内に設けた多数枚の水平板の各々の下側に空気層を形成させ、各空気層と水層の境界部に比重が1より小さい粒状担体を浮遊させることによって空気との接触効率を向上させると共に担体どうしの衝突や担体と反応槽構造物との衝突の機会を増加することにより担体表面の微生物層の肥厚を防止する。
【0015】
また、特許文献4は、撹拌装置として撹拌翼等の機械的な撹拌手段を使用した場合は、その剪断力によって担体が損傷する危険性があるため、担体を選定する際に反応効率よりも強度を優先したり、撹拌手段として撹拌力の大きさよりも剪断力の小さなものを選定したりしており、処理効率が犠牲となることを課題としている。
特許文献4によれば、処理効率を維持しながら担体を損傷しないように、機械的な撹拌手段と担体を投入した反応槽との間に担体分離手段を設けることで、機械的な撹拌手段による担体の損傷防止を得られることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭58-67395号公報
【特許文献2】特開2005-313081号公報
【特許文献3】特開平5-84497号公報
【特許文献4】特開平10-305290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
担体法に用いる担体は、担体に付着する汚泥量を適切に保つことで、機能を発揮することが知られている。つまり担体の表面に付着する汚泥(主にBODを処理)は、増殖速度が速く、処理が進むにつれて担体の表面に厚く付着するようになり、内側の汚泥に十分な酸素供給が行なわれなくなるため、腐敗するなど処理機能の低下をもたらす。この様な状態となることを避け、担体の機能を十分に発揮するためには、担体に付着した余剰な活性汚泥を担体から剥離させる手段が必要であることが知られている。
【0018】
特許文献1の技術によれば、微生物用のキャリア物質(担体)を用いる技術により従来の活性汚泥法の約2倍の汚泥濃度を維持できることが開示されているが、汚泥量の管理技術については開示されていない。
【0019】
特許文献2には、既設の水槽に担体法を適用することによって既存の処理能力を増強させる技術が開示されているが、担体に付着した余剰な活性汚泥を担体から剥離させる手段について何ら示唆されていない。
【0020】
特許文献3では、反応槽内に多数設けた空気層と水層の境界部に比重が1より小さい粒状担体を浮遊させることによって空気との接触効率を向上させ、担体どうしの衝突や担体と反応槽構造物との衝突の機会を増加することにより担体表面の微生物層の肥厚を防止しているが、担体と空気との接触による担体が保持する汚泥の肥厚抑制を能動的にコントロールする手段を有していない。
【0021】
また、特許文献4では撹拌装置の選定が担体の損傷に繋がる危険性があるため、撹拌効率を優先することが出来ず、延いては処理効率が犠牲となるという課題に対して、撹拌機を設置する撹拌流路と担体を投入する担体投入部をスクリーンにより分離し、担体の撹拌を行う技術が開示されているが、担体に付着した余剰な汚泥の剥離に関する手段については開示されていない。
【0022】
さらに、特許文献1、3および4に係る発明は、新規に建設する際に採用が可能な設備であり、既設への適用は設置場所の制限を受けるため困難である。
【0023】
担体法は、施設を新たに築造するときに従来の処理方式よりもコンパクトな施設にできる。また、既存の処理施設での流入汚水量増加や、汚濁物質の高濃度化に対応するために処理に必要な活性汚泥量を保持するにも対応する目的で適用される。
【0024】
このような担体法において最適な環境となるように、汚水処理に必要な活性汚泥量を維持すると同時に、担体に付着する活性汚泥に万遍なく汚濁成分が供給され、担体からの余分な活性汚泥の剥離が行われることが望まれる。一方で、余分な活性汚泥の剥離を行う際に、担体を摩耗および破損しないで活性汚泥の剥離を行うことが望まれる。
【0025】
本発明は、担体に余剰に付着する汚泥を剥離することが可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(構成1)
本発明に係る水処理システムは、汚水を処理する水槽と、汚水を流入する流入管と、活性汚泥を付着する担体と、前記活性汚泥に酸素を供給する散気装置と、前記水槽で処理された処理水を流出する流出管と、を備える担体法による水処理システムにおいて、前記活性汚泥に浸漬された前記担体を、内包させつつ還流させる担体収容還流部(ケージ+撹拌装置)を有することを特徴とする。
【0027】
(構成2)
前記担体収容還流部は、一部又は全部が水槽と独立した構造であり、底面若しくは側面を前記活性汚泥が通過できる構造を有し、前記担体が該担体収容還流部の外部に流出しない形状を有することを特徴とする。
【0028】
(構成3)
前記担体収容還流部の中の担体の還流部において、前記担体の密度が高くなる箇所を形成する整流部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の水処理システムによれば、一部又は全部が水槽と独立し、活性汚泥に浸漬された担体を内包させつつ還流させる担体収容還流部を設けたことにより、担体の返送を不要とすることが可能となり、流出防止を目的としたスクリーンを不要とすることが可能となる。
【0030】
本発明の水処理システムによれば、担体収容還流部が底面若しくは側面を活性汚泥が通過できる構造を有し、担体が担体収容還流部の外部に流出しない形状を有することにより、担体の還流を能動的にコントロールすることが可能となり、担体が保持する汚泥の肥厚化を抑制できる。
【0031】
本発明の水処理システムによれば、担体収容還流部の中の担体還流部において、担体の密度が高くなる箇所を形成する整流部材を有することにより、担体の摩耗や破損を起こすことを低減し、担体に付着した余剰な汚泥を剥離する事が可能となる。
【0032】
上記のように構成された本発明は、担体と撹拌手段あるいは、汚泥剥離目的での担体同士が衝突することにより生じる摩耗や破損を低減し、担体に余剰に付着する汚泥を剥離でき、能動的にコントロールすることにより、担体法において最適な環境、つまり反応槽内の汚泥が汚水処理に必要な量となるように汚泥管理を行うことができる。
【0033】
さらに、本発明の担体収容還流部は、反応槽の形状による設置の制限がないため、新規の施設・既存の施設を問わず本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る実施形態の水処理システムを示す概略図である。
図2図1のA-A’断面における本実施形態に係る担体収容還流部内部を示す概略図である。
図3図2を垂直軸において90度回転させた本実施形態に係る担体収容還流部内部を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る担体収容還流部の内部で流動する本実施形態に係る担体と活性汚泥が本実施形態に係る整流板上部の開口部を通り抜ける状況を模式的に示した断面図である。
図5】本実施形態に係る担体収容還流部の中での本実施形態に係る整流板の位置と汚水の流入方向を概略的に示した平面図である。
図6】複数の反応槽が直列に配設された水処理システムにおいて、それぞれの反応槽に担体収容還流部を配設した一実施例である。
図7】単独の反応槽に担体収容還流部を複数配設した一実施例である。
図8】担体収容還流部が直方体である一実施例である。
図9】担体収容還流部が円柱である一実施例である。
図10】担体収容還流部の機能を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0036】
図1は本発明に係る実施形態の水処理システム1の概略図であり、水の流れに対して横方向から見た断面図となっている。本実施形態に係る水処理システム1は、流入管1.11から汚水1.1を受け入れ、活性汚泥1.4によって汚水1.1中の汚濁成分を浄化する反応槽(水槽)1.7、反応槽1.7内の活性汚泥に酸素を供給する散気装置1.8、流出管1.12によって流出される反応槽1.7で汚濁成分が浄化された反応槽流出水1.2を沈殿槽1.9で受け入れて活性汚泥1.4を沈殿槽1.9で沈降させ、沈降した汚泥1.10の一部は返送汚泥1.5として反応槽1.7に返送し、残りの一部は余剰汚泥1.6として水処理システム1外に排出する手段を備え、且つ、活性汚泥1.4が沈殿して得られた清浄な上澄水は処理水1.3として流出させる手段を備えた沈殿槽1.9から構成されている。
【0037】
反応槽1.7には、底面部および4方向の側面部からなる略立方体であり、前記底面部および4方向の側面部に、前記略立方体の内部と外部に存在する活性汚泥の往来を可能とする開口を備えた担体収容還流部2.1が配設されている。担体を担体収容還流部の外部に流出させずに、活性汚泥の往来は可能とする開口を備えた構成とするために、担体収容還流部2.1は例えば金網やパンチングスクリーンなどによって構成される。担体収容還流部2.1の内部には、前記汚水1.1中の汚濁成分を分解する活性汚泥1.4を担持する担体2.4が収容されている。担体収容還流部2.1の近傍には、前記担体2.4を担体収容還流部2.1内で流動させる撹拌装置2.3が配設されており、担体収容還流部2.1の内部には、前記担体2.4の流動を整え、担体2.4の密度が高くなる箇所を形成するための整流部材である整流板2.2が配設されている。整流板2.2は、汚水1.1の流入方向若しくは反応槽流出水1.2の流出方向に対して(或いはこれらの両方に対して)平行、且つ、水面に対して垂直方向に配設されている。
なお、本実施形態の担体収容還流部2.1は、底面部の下方に散気装置1.8等を配置可能とするための脚部を有している。
【0038】
図2は、図1のA-A’断面における本実施形態に係る担体収容還流部内部を示す概略図である。
【0039】
担体2.4は、担体収容還流部2.1内を担体流動方向A(上向流)2.5aに沿って上昇し、整流板上部2.2aと水面の隙間を通過し、B(下向流)2.5bに沿って下降する。これを繰り返し、常に担体2.4は流動している。なお、担体2.4を流動させる還流は、前述のように撹拌装置2.3によって形成されるものである。本実施形態では、担体2.4を流動させる還流を、散気装置とは別途に設けた攪拌装置によって形成するもの例としているが、本発明をこれに限るものではなく、担体2.4を流動させる還流を散気装置によって形成させるもの等であってもよい。
【0040】
図3は、図2を垂直軸において90度回転させた本実施形態に係る担体収容還流部内部を示す概略図である。
【0041】
整流板2.2は、担体収容還流部2.1の中に納められており、担体収容還流部側面(上流側)2.1cと担体収容還流部側面(下流側)2.1dに接している。担体2.4は、整流板2.2を中心に、整流板上部2.2aと水面の間の整流板上部開口部2.2cと、整流板下部2.2bと担体収容還流部底面2.2bの間の整流板下部開口部2.2dを流動し、これにより担体2.4の還流部が形成されている。
【0042】
図4は、本実施形態に係る担体収容還流部の内部で流動する本実施形態に係る担体と活性汚泥が本実施形態に係る整流板上部の開口部を通り抜ける状況を模式的に示した断面図である。
【0043】
担体2.4には、活性汚泥1.4が付着しており、担体流動方向2.5に流動している。担体収容還流部2.1の中で流動する担体2.4は整流板上部2.2aと水面の間で密度が増し、担体2.4同士が重なりあうことで担体2.4に付着した活性汚泥1.4の一部が剥離活性汚泥2.6として剥離する。
【0044】
図5は、本実施形態に係る担体収容還流部の中での本実施形態に係る整流板の位置と汚水の流入方向を概略的に示した平面図である。
【0045】
担体2.4が収容された担体収容還流部2.1は反応槽1.7中央に収容されており、担体収容還流部2.1に配設された整流板2.2は汚水1.1の流れと平行に、担体収容還流部2.1内を担体流動方向A(上向流)2.5a側と担体流動方向B(下向流)2.5b側に仕切るように配設されている。
【0046】
図6は、本発明を適用した複数の反応槽が直列に配設された水処理システムにおいて、それぞれの反応槽に担体収容還流部を配設した一実施例である。
【0047】
図6は、図1に示す本願発明を、直列に配設された複数の反応槽に適用したものである。
複数の反応槽に適用する場合、1つの担体流動還流部に汚水処理に必要な担体量を収容しても、複数の担体流動還流部に分割して収容してもよい。なお、図1に示される沈殿槽1.9は省略されている。図6では2つ反応槽が設けられているものを例としているが、2つ以上の反応槽を設けるものであっても勿論よい。また、反応槽同士を連結し、上流側の反応槽から活性汚泥を含んだ汚水を下流側の反応槽に移送するための配管等についても図示では省略しているが、複数の反応槽は、上流側から下流側へと順次活性汚泥を含んだ汚水を搬送するための配管あるいは越流口で、相互に接続されている。
【0048】
図7は、本発明を適用した水処理システムにおいて、単独の反応槽に担体収容還流部を複数配設した一実施例である。
【0049】
図7は、図1に示す担体流動還流部を、単独の反応槽内に複数適用したものである。担体流動還流部は、反応槽の形状に応じて複数配設することができる。図7では2つの担体流動還流部が一列に設けられているものを例としているが、2つ以上の担体流動還流部を複数列に設けるものや、反応槽内でランダム的な位置に複数の担体流動還流部が配置されるようなものであっても構わない。なお、図6と同様に、図1に示される沈殿槽1.9は省略されている。
【0050】
図8は、本発明を適用した水処理システムにおいて、担体収容還流部が直方体である一実施例である。
【0051】
図8は、図1に示す担体流動還流部の形状を直方体にしたものである。図8の担体収容還流部2.1によれば、図4と同様に、担体収容還流部2.1の中で流動する担体2.4は整流板上部2.2aと水面の間で密度が増す。図8において、担体収容還流部2.1は、底面部および4方向の側面部からなり、前記底面部および4方向の側面部によって、担体1.4を担体収容還流部2.1内に留め、かつ、前記担体収容還流部2.1の内部と外部に存在する活性汚泥の往来を可能とする開口を有している(なお、図8において開口等の記載は省略している)。
【0052】
図9は、本発明を適用した水処理システムにおいて、担体収容還流部が円柱である一実施例である。
【0053】
図9は、図1に示す担体流動還流部の形状を円柱にしたものである。図9の担体収容還流部によれば、図4と同様に、担体収容還流部2.1の中で流動する担体2.4は整流板上部2.2aと水面の間で密度が増す。図9において、担体収容還流部2.1は、底面部および側面部からなり、前記底面部および側面部によって、担体1.4を担体収容還流部2.1内に留め、かつ、前記担体収容還流部2.1の内部と外部に存在する活性汚泥の往来を可能とする開口を有している(なお、図9において開口等の記載は省略している)。
【0054】
本実施形態に係る水処理システム1は、汚水1.1を受け入れ、活性汚泥1.4によって汚水1.1中の汚濁成分を浄化する反応槽1.7、反応槽1.7内の活性汚泥に酸素を供給する散気装置1.8、反応槽1.7で汚濁成分が浄化された反応槽流出水1.2を沈殿槽1.9で受け入れて活性汚泥1.4を沈殿槽1.9で沈降させ、沈降した汚泥1.10の一部は返送汚泥1.5として反応槽1.7に返送し、残りの一部は余剰汚泥1.6として水処理システム1外に排出する手段を備え、且つ、活性汚泥1.4が沈殿して得られた清浄な上澄水は処理水1.3として流出させる手段を備えた沈殿槽1.9から構成されている。
【0055】
流入管1.11、反応槽1.7、散気装置1.8、活性汚泥1.4を備えることで、水処理に必要な活性汚泥1.4を一定量保持するように作用し、水処理に必要な活性汚泥1.4に酸素を共有する効果がある。
【0056】
反応槽1.7には、底面部および4方向の側面部からなる略立方体であり、前記底面部および4方向の側面部に、前記略立方体の内部と外部に存在する活性汚泥の往来を可能とする開口を備えた担体収容還流部2.1が配設されている。担体収容還流部2.1の内部には、前記汚水1.1中の汚濁成分を分解する活性汚泥1.4を担持する担体2.4が収容されている。担体収容還流部2.1の下方には、前記担体2.4を担体収容還流部2.1内で流動させる撹拌装置2.3が配設されており、担体収容還流部2.1の内部には、前記担体2.4の流動を整える整流板2.2が配設されている。整流板2.2は、汚水1.1の流入方向若しくは反応槽流出水1.2の流出方向に対して平行(本実施形態では両者に対して平行)、且つ、水面に対して垂直方向に配設されている。
【0057】
担体収容還流部、整流板、撹拌装置を備えることで、担体は一定の空間に留まり、流動を続けることができ、担体の返送(従来のシステムにおいて下流側に集まってしまう担体を上流側へと戻すための別途の構成)が不要となる効果を奏する。
【0058】
このように構成された本願実施形態の水処理システムによれば、
汚水1.1が流入して、酸素が供給された浮遊の活性汚泥は汚濁成分を分解して増殖する。
担体2.4に付着している活性汚泥1.4も同様にして、酸素の供給を受けて汚水1.1の汚濁成分を分解し増殖する。
【0059】
反応槽1.7内の活性汚泥量は浮遊の活性汚泥に加え、担体に付着した活性汚泥が存在することにより、従来の活性汚泥法による汚泥量よりも高く保持されるため、既存の処理施設での流入汚水量増加や、汚濁物質の高濃度化に対応するために処理に必要な活性汚泥量を保持するにも対応し、反応槽1.7の単位容積当たりの処理能力を向上させることが可能となる。
【0060】
担体2.4に付着する活性汚泥1.4は、除去されない環境下では増殖し続けるため、活性汚泥量が増加してしまい、担体2.4内側に付着する活性汚泥1.4に十分な酸素が共有されなくなるおそれがある。また、担体2.4に過剰に付着した活性汚泥1.4(肥厚化した状態)により、担体2.4の比重が変化したり、流動性が鈍化するおそれがある。以上から、担体2.4に付着する活性汚泥の入れ替わりが鈍化するため、活性汚泥1.4の腐敗に繋がるおそれがある。
【0061】
このような問題に対し、本実施形態の水処理システムによれば、図10に示されるように、反応槽、担体収容還流部、整流板、撹拌装置、担体を備えることで、反応槽の内部に設置された担体収容還流部には整流板が配設され、担体収容還流部内には整流板を挟んで担体が水面へ向かう方向へ移動する領域2.7aと、反応槽底部へ向かう方面へ移動する領域2.7bに分けられ、例えば整流板の水面近傍には、領域2.7aから領域2.7bへ担体が移動する通過面2.7cが構成され、整流板の下部(底面近傍)には、領域2.7bから領域2.7aへ担体が移動する通過面2.7dが構成される。
当該構成において、担体収容還流部内の水面へ向かう方向へ移動する一定量の担体が、領域2.7aに比べ、領域2.7cを通過する面の方が狭くすることで、単位面積当たりの担体量が増加し、密になることにより、担体同士の接触機会の増加を促進させ、担体に付着する余剰の活性汚泥を剥離させる効果を奏する。
【0062】
同様に、担体収容還流部底面近傍にも、担体が通過する領域2.7dが領域2.7bに比べ狭くするように構成されれば、整流板の水面近傍に加え、担体同士の接触機会の増加を促進させ、担体に付着する余剰の活性汚泥を剥離させる効果を奏する。
【0063】
上記では、担体同士の接触機会の増加を促進させる領域(流路を狭くする箇所)が、水面近傍若しくは底面近傍に設けられるものを例としたが、担体収容還流部2.1内に担体同士の接触機会の増加を促進させるような領域の位置や数は任意のものであって構わない。
【0064】
本実施形態の水処理システムによれば、担体収容還流部、整流板、担体、流出管、沈殿槽を備えることで、担体から剥離した余剰な活性汚泥が余剰な浮遊汚泥と共に反応槽から沈殿槽へ移送され、沈殿槽において処理水と活性汚泥が固液分離され、分離された汚泥の必要量が反応槽に返送され、過剰分は系外に排出される作用があり、反応槽1.7に保有する活性汚泥量が一定に保たれる。このように構成された実施形態の水処理システムは、担体収容還流部による能動的な汚泥量コントロール手法を有しているため、従来の担体法による水処理システムと比較して、高効率でありながら安定した水処理を提供することのできるシステムである。
【0065】
加えて、本実施形態で説明した担体収容還流部によれば、担体収容還流部が反応槽とは別体で構成されているため、既存の水処理システムに対して担体収容還流部を設置する(後付けする)ことができ、既存の水処理システムに本実施形態で説明した水処理システムと同等の機能を持たせることも可能である。
【0066】
なお、実施形態では、担体収容還流部が上面を有しない(上面が開放的)であるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、上面を有するものであってもよい。本実施形態のように、上面を有しないものである場合、低コストにて担体収容還流部を構成できる点で優れている、なお、上面を設けない場合には、図1等に示されているように、担体収容還流部の上端が、水面よりも上となるように担体収容還流部を設置する必要がある。一方で、上面を設ける場合には、担体収容還流部の全体を水没させることもできる。上面についても、活性汚泥を通過させつつ担体は通過させないように形成された開口部を備えさせるようにしてもよい。
【0067】
また、図8、9の例示からも理解されるように、担体収容還流部の形状は任意のものであってよい。即ち、内部に担体を保持させつつ、活性汚泥を通過させるような容器状のものであればよい。
本実施形態では、担体収容還流部自身が側面及び底面を備えるものを例としているが、側面の一部や底面が反応槽(水槽)の一部によって構成されるようなものであってもよい。例えば、底面を有さない担体収容還流部(即ち筒状の構造)として、これを反応槽の底面に接するように配置することで、担体収容還流部の底面を反応槽の底面の一部によって構成させるようにしてもよい(この場合、脚部は設けない)。同様に担体収容還流部の側面を反応槽の側面の一部によって構成させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、担体収容還流部の側面及び底面において、活性汚泥を通過させつつ担体は通過させないように形成された開口部を備えさせるようにしているが、側面又は底面の何れか(若しくは各面の一部分)において、開口部を備えさせない面(若しくは箇所)があってもよい。
【0068】
本実施形態では、整流部材として整流板を設けるものを例としているが、本発明をこれに限るものでは無い。整流部材は、担体収容還流部の内部において担体を還流させる流路を形成しつつその流路の一部を狭くすることで、担体の密度を高くして担体同士の接触を促すことができる任意の構造物であってよい。また、本実施形態では、整流板を垂直に設けるものを例としているが、整流版が水平方向に設置されるものや斜めに設置されるようなものであっても構わない。ただし、本実施形態で示したように、垂直に設置した整流板を用いることで、簡単な構成によって効率的に還流を生じさせることができる(滞留部が形成され難いようにすることができる)ため、好適である。
【符号の説明】
【0069】
1 水処理システム
1.1 汚水
1.2 反応槽流出水
1.3 処理水
1.4 活性汚泥
1.5 返送汚泥
1.6 余剰汚泥
1.7 反応槽
1.8 散気装置
1.9 沈殿槽
1.10 沈降汚泥
1.11 流入管
1.12 流出管
2 担体収容還流部型担体処理装置
2.1 担体収容還流部
2.1a 担体収容還流部底面
2.1c 担体収容還流部側面(上流側)
2.1d 担体収容還流部側面(下流側)
2.2 整流板
2.2a 整流板上部
2.2b 整流板下部
2.2c 整流板上部開口部
2.2d 整流板下部開口部
2.3 撹拌装置
2.4 担体
2.5 担体流動方向
2.5a 担体流動方向A(上向流)
2.5b 担体流動方向B(下向流)
2.6 剥離活性汚泥
2.7a 担体が水面へ向かう方向へ移動する領域
2.7b 担体が反応槽底部方面へ移動する領域
2.7c 担体が整流板の水面近傍を通過する領域
2.7d 担体が収容還流部底面近傍を通過する領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10