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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023880
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20230209BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230209BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C08G18/65 011
C08G18/32 021
C08G18/32 018
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129808
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌信
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB02
4J034CB03
4J034CB04
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC28
4J034CC37
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC69
4J034CD04
4J034CD06
4J034DA01
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4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB07
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4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC33
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC08
4J034KC17
4J034KC18
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA05
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA02
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】タンニン酸誘導体を用いた新規なポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオールと、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、イソシアネートと、を混合した原料を用いて得られる、ポリウレタンフォーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、
タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、
イソシアネートと、を混合した原料を用いて得られる、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記タンニン酸誘導体は、前記タンニン酸の水酸基の40%以上96%以下が前記鎖状炭化水素基により置換されている、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記鎖状炭化水素基の炭素数は、1以上6以下である、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンニン分子中に含まれる水酸基の少なくとも一部がアルキルエーテル基またはアルキルエステル基で置換された分子構造を備えた水不溶性のタンニン酸誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-307362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンニン酸誘導体を用いた新規なポリウレタンフォームを得る技術が求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、タンニン酸誘導体を用いた新規なポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリオールと、
タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、
イソシアネートと、を混合した原料を用いて得られる、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、タンニン酸誘導体を用いた新規なポリウレタンフォームを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記タンニン酸誘導体は、前記タンニン酸の水酸基の40%以上96%以下が前記鎖状炭化水素基により置換されている、ポリウレタンフォーム。
【0008】
〔3〕前記鎖状炭化水素基の炭素数は、1以上6以下である、ポリウレタンフォーム。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリオールと、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、イソシアネートと、を混合した原料を用いて得られる。この原料には、発泡剤、触媒、整泡剤等の任意の成分が含まれてもよい。以下、原料に含まれる各成分について説明する。
【0011】
(1)タンニン酸誘導体
タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、鎖状炭化水素基により置換されている。
タンニンは、加水分解で多価フェノールを生じる植物成分の総称であり、没食子酸やエラグ酸がグルコースなどの糖にエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンに大別される。タンニン酸誘導体に用いられるタンニンは、いずれのタイプのタンニンであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。タンニン酸誘導体は、化学的な修飾のしやすさの観点から、加水分解型タンニンの誘導体であることが好ましい。加水分解型タンニンとしては、例えば下記式(1)で表されるタンニン酸を主成分とするものが例示される。なお、後述する実施例で使用しているタンニン酸は、ヌルデの虫こぶ由来の天然物であり、抽出や精製の過程で没食子酸やエラグ酸のエステル結合の切断や再結合などによって生成される物質を含み得るが、殺菌等の各効果は十分に達成できることが確認されている。
【0012】
【化1】
(1)
【0013】
タンニン酸誘導体は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部の水酸基における水素原子が鎖状炭化水素基により置換されている。タンニン酸の水酸基の総数は種類に応じて異なる。例えば上記式(1)の場合、水酸基の総数は25個である。
【0014】
タンニン酸誘導体は、原料への溶解性の観点から、タンニン酸の水酸基の20%以上が置換されていることが好ましく、30%以上が置換されていることが好ましく、40%以上が置換されていることが更に好ましい。例えば上記式(1)の場合、好ましくは5個以上、より好ましくは7個以上、特に好ましくは10個以上置換されている。
【0015】
タンニン酸誘導体は、タンニン酸の水酸基の96%以下が置換されていることが好ましく、80%以下が置換されていることが好ましく、60%以下が置換されていることが更に好ましい。例えば上記式(1)の場合、好ましくは24個以下、より好ましくは20個以下、さらに好ましくは15個以下置換されている。
タンニン酸誘導体が置換されずに残った水酸基を有している場合には、タンニン酸誘導体の水酸基がイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る。また、タンニン酸誘導体が置換されずに残った水酸基を有している場合には、タンニン酸誘導体の抗菌性等の効力を十分に確保できると推測される。
【0016】
これらの観点から、タンニン酸誘導体は、タンニン酸の水酸基の40%以上96%以下が鎖状炭化水素基により置換されていることが好ましい。
なお、タンニン酸誘導体における鎖状炭化水素基により置換される水酸基の数(鎖状炭化水素基のタンニン酸中への導入数)は、例えば、タンニン酸誘導体生成時の原料の配合比、反応時間等によって調整できる。10個の水酸基が置換されたタンニン酸の一例を下記式(2)に示す。式(2)中、mは鎖状炭化水素基の炭素数を表す。15個の水酸基が置換されたタンニン酸の一例を下記式(3)に示す。式(3)中、mは鎖状炭化水素基の炭素数を表す。
【0017】
【化2】
(2)
【0018】
【化3】
(3)
【0019】
鎖状炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、これが水酸基由来の酸素原子を含む結合を介して、タンニン酸骨格に結合される。鎖状炭化水素基の具体例には、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、プロピレン基、ヘキシレン基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が包含される。酸素原子を含む結合としては、例えばエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられる。
【0020】
鎖状炭化水素基の炭素数は、ポリウレタンフォームの発泡性の観点から、14以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。鎖状炭化水素基の炭素数がポリウレタンフォームの発泡性に影響を与えるメカニズムは定かではないが、炭素数の増加に伴って、原料の粘度が上昇し、ポリウレタンフォームの発泡性が悪化すると推測される。
鎖状炭化水素基の炭素数は、少なくとも1以上であれば、ポリウレタンフォームの原料へのタンニン酸誘導体の溶解性を向上する効果が期待できる。鎖状炭化水素基の炭素数は、2以上であってもよい。
なお、鎖状炭化水素基の炭素数は、タンニン酸誘導体を合成する際の原料に応じて適宜設定できる。例えば、鎖状炭化水素基の炭素数が6のタンニン酸誘導体を得るためには、タンニン酸誘導体を合成する際の原料として、ハロゲン化ヘキシルや、ヨウ化ヘキシルを用いればよい。
【0021】
タンニン酸誘導体は、例えば、アルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法によって得られる。具体的には、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、ジメチルスホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、タンニン酸にハロゲン化アルキルを反応させて作ることができる。塩基性触媒としてはMH、MCO、M(M:アルカリ金属)の群から選択されるいずれか1又は2以上の触媒を使うことができる。例えば、KCOは、OH基をOに変換し、ハロゲン化アルキル(X-R:X:ハロゲン、R:アルキル基)へのO基の求核反応を促進することができる。ハロゲン化アルキルとしては、例えば、ヨウ化アルキルを用いることができる。また、ハロゲン化アルキルの代わりに、スルホニル基などを脱離基として有するものも使用できる。また、上記、ウィリアムソンエーテル合成法以外のアルキル化反応を用いることもできる。さらに、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤を用いたカルボン酸類との脱水縮合反応や、イソシアネートとの縮合反応を用いることもできる。
【0022】
反応は、例えば、70℃以上100℃以下で、約1時間程度加熱する。式(1)のタンニン酸の誘導体化の一例としては、塩基性触媒としてKCOを用い、DMF中で、85℃に加熱して、デシル基を9つ有する誘導体(TA(C10)を合成する例が示される。タンニン酸に対するハロゲン化アルキルのモル比を変えることにより、アルキル基のタンニン酸中への導入数であるnの値を所望の値に設定できる。
【0023】
タンニン酸誘導体の配合量は、ポリウレタンフォームの発泡性の観点から、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3.0質量部未満であり、より好ましくは2.5質量部以下であり、さらに好ましくは2.0質量部以下である。タンニン酸誘導体の配合量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1質量部以上とすることができ、0.5質量部以上としてもよい。
【0024】
(2)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールやテトラヒドロフランを開環重合させたポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プ
ロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールやε-カプロラクトンを開環重合させたポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等を挙げることできる。
【0026】
本開示のポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好適である。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、特に限定されない。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~20000であり、より好ましくは1000~10000であり、さらに好ましくは3000~6000である。
【0027】
(3)発泡剤
発泡剤は、特に限定されない。発泡剤としては、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が好適に用いられる。発泡剤が水の場合、配合量はポリウレタン発泡体において目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100質量部に対して1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0028】
(4)触媒
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、ビス[2‐(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.001質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
【0029】
(5)整泡剤
整泡剤は、特に限定されない。
整泡剤は、具体的には、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.03質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0030】
(6)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。各種のイソシアネートは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネート、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。変性体としては、具体的には、ウレタン変性、アロファネート変性、ビューレット変性、カルボジイミド/ウレトニミン変性等種々の変性がなされたものが挙げられる。
【0031】
芳香族イソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジメチルビフェニルジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂環族イソシアネートとしては、シロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
本開示のイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)が好適である。
【0033】
その他、架橋剤、可塑剤、発泡助剤、顔料、難燃剤等などの添加剤を適宜配合することができる。架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の短鎖ジオール系の架橋剤等が挙げられる。可塑剤は、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよい。発泡助剤としては、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。
【0034】
2.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームの製造方法は、ワンショット法を採用することが好ましい。ワンショット法は、ポリオール、タンニン酸誘導体、イソシアネート、及び発泡剤等を一括に仕込み、反応させる方法である。ワンショット法は製造工程が一工程で済み、製造条件の制約も少ないことから好ましい方法であり、製造コストを低減させることができる。
ワンショット法によるポリウレタンフォームは、例えば、各成分を一括して混合した原料をモールド(金型)に充填して、モールド内で発泡させるモールド成形法によって得ることができる。
【0035】
3.ポリウレタンフォームの物性及び用途
ポリウレタンフォームのタンニン酸誘導体の含有量は、ポリウレタンフォーム全体を100質量%とした場合に、好ましくは0.2質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である。タンニン酸誘導体の含有量が下限以上であれば、ポリウレタンフォームに好適に抗菌性を付与できる。
【0036】
ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンは、タンニン酸誘導体に由来する構成単位(タンニン酸誘導体ユニット、タンニン骨格)を含有することが好ましい。このようなポリウレタンフォームによれば、タンニン酸誘導体ユニットがブリードアウトしにくく、種々の用途に好適である。
【0037】
ポリウレタンフォームの見掛け密度(JIS K7222に準拠)は、好ましくは10kg/m~100kg/mであり、より好ましくは20kg/m~80kg/mである。
【0038】
硬さ(JIS K6400-2 D法)は、10N~600Nが好ましく、20N~400Nがより好ましい。600N以下であれば柔軟性に富み、ポリウレタンフォームとして好ましい。
【0039】
本開示のポリウレタンフォームが使用される物品は限定されない。
ポリウレタンフォームは、抗菌性を有する観点から、靴のインソール、歩行器・杖の足ゴム、マットレス、掛け及び敷き布団、まくら、ベッドパッド等の寝具、ブラジャー等のパッド、防寒材ライナー等の衣料用品、シートクッション等のクッション材として好適である。
【実施例0040】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。
1.ポリウレタンフォームの製造
ポリウレタンフォームの製造に用いた各原料成分の詳細は以下の通りである。
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、数平均分子量5000、品番;LUPRANOL 2095、BASF社製
・タンニン酸誘導体:水酸基数 15、アルキル基の炭素数6、以下の方法で調整した。
タンニン酸の粉末(品番;203-06331、WAKO社製)とヨウ化n-ヘキシルをDMFに溶解した。そこにヨウ化n-ヘキシルと、等量のKCOを添加した。その後、85℃で8時間加熱して、OH基数15、アルキル基の炭素数6のタンニン酸誘導体を合成した。
・タンニン酸:水酸基数 25、品番;203-06331、WAKO社製
・発泡剤(水)
・触媒:トリエチレンジアミン、品番;TEDA-L33、東ソー社製
・整泡剤:シリコーン系化合物、品番;VORASURF 2962、東レダウコーニング社製
・イソシアネート(MDI):ポリメリックMDI、NCO%;32%、品番;LUPRANATE M5S、BASF社製
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す配合割合で各原料成分を配合し、一括して混合して原料を得た。得られた原料からモールド成形法によって、実施例及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。
【0043】
2.評価方法
見掛け密度(kg/m)は、得られたポリウレタンフォームをそのまま使用し(上下面及び側面全てスキン層有り)、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
【0044】
硬さ(N)は、JIS K6400-2 D法にて測定した。
【0045】
また、実施例及び比較例のポリウレタンフォームについて、発泡性及び外観を評価した。
【0046】
3.結果
測定結果と、発泡性及び外観の評価結果を表1に併記する。
実施例は、発泡性が良く、外観が良好であった。他方、比較例は、原料にタンニン酸が溶解しないため、発泡不良であり、外観が不可であった。また、実施例は、実用に適した見掛け密度及び硬さを有していた。
【0047】
また、実施例及び比較例とは別に、タンニン酸の水酸基の20%(具体的には、5個)が鎖状炭化水素基により置換されたポリウレタンフォームを得た。このポリウレタンフォームは、実用可能であるものの、ポリウレタンフォームの発泡性がやや悪く、外観があまり良くなかった。一方、タンニン酸の水酸基の40%が鎖状炭化水素基により置換された実施例のポリウレタンフォームは、発泡性が良く、外観が良好であった。この結果から、タンニン酸の水酸基の20%以上、さらに30%以上、特に40%以上が鎖状炭化水素基により置換されていることが好ましいことが示唆された。
さらに、実施例及び比較例とは別に、鎖状炭化水素基の炭素数を15としたポリウレタンフォームを得た。このポリウレタンフォームは、実用可能であるものの、ポリウレタンフォームの発泡性がやや悪く、外観があまり良くなかった。一方、鎖状炭化水素基の炭素数が6である実施例のポリウレタンフォームは、発泡性が良く、外観が良好であった。この結果から、鎖状炭化水素基の炭素数は、14以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましいことが示唆された。
さらに、実施例及び比較例とは別に、タンニン酸の配合量をポリオール100質量部に対して3.0質量部としてポリウレタンフォームを得た。このポリウレタンフォームは、実用可能であるものの、ポリウレタンフォームの発泡性がやや悪く、外観があまり良くなかった。一方、タンニン酸の配合量をポリオール100質量部に対して1.25質量部とした実施例のポリウレタンフォームは、発泡性が良く、外観が良好であった。この結果から、タンニン酸の配合量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3.0質量部未満であり、より好ましくは2.5質量部以下であり、さらに好ましくは2.0質量部以下であることが示唆された。
【0048】
4.実施例の効果
本実施例では、有用なポリウレタンフォームが得られることが確認された。
以上の実施例によれば、タンニン酸誘導体を用いた新規なポリウレタンフォームを提供できる。
【0049】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。