IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ BASF INOACポリウレタン株式会社の特許一覧

特開2023-23882衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォーム
<>
  • 特開-衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォーム 図1
  • 特開-衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォーム 図2
  • 特開-衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォーム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023882
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20230209BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230209BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230209BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230209BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C08G18/65 011
C08G18/32 021
C08G18/32 015
C08G18/10
F16F7/00 F
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129810
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
【テーマコード(参考)】
3J066
4J034
【Fターム(参考)】
3J066AA22
3J066AA26
3J066AA29
3J066BA01
3J066BD05
4J034BA08
4J034CA03
4J034CB02
4J034CC12
4J034CC28
4J034CC37
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC69
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DH00
4J034DP12
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC33
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC08
4J034KC17
4J034KC18
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA05
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QD03
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】抗菌性を有するとともに衝撃吸収性が向上した衝撃吸収部材及びポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオールと、タンニン系化合物と、イソシアネートと、を含有する組成物から得られる、衝撃吸収部材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られる、衝撃吸収部材。
【請求項2】
プレポリマー法により得られる、請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
5Hz、25℃、圧縮率30%、振幅7mmの条件にて、圧縮モードで動的粘弾性測定をした場合に、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E'')の比E''/E'の値が、0.12以上である、ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
プレポリマー法により得られる、請求項3に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られる、制振部材。
【請求項6】
プレポリマー法により得られる、請求項5に記載の制振部材。
【請求項7】
ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
JIS K 7391:2008に準じて測定される、2000Hz反共振点における損失係数が、0.01以上である、ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
プレポリマー法により得られる、請求項7に記載の制振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衝撃吸収部材及びポリウレタンフォーム、並びに制振部材及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンニン分子中に含まれる水酸基の少なくとも一部がアルキルエーテル基またはアルキルエステル基で置換された分子構造を備えた水不溶性のタンニン酸誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-307362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンニン、及びタンニンから生成される誘導体等のタンニン系化合物は、抗菌作用を有している。タンニン系化合物を用いた、抗菌性を有する高付加価値の製品が求められている。また、衝撃吸収部材、制振部材、及びポリウレタンフォームにおいては、粘弾性及び制振性の特性についても種々の要望がある。例えば、ポリウレタンフォームのtanδ(損失係数)を高くして、衝撃吸収性を向上することも望まれている。ポリウレタンフォームの所定の振動数における損失係数を高くして、制振性を向上することも望まれている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、抗菌性を有するとともに衝撃吸収性が向上した衝撃吸収部材及びポリウレタンフォームを提供することを目的とする。また、抗菌性を有するとともに制振性が向上した制振部材及びポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られる、衝撃吸収部材。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、抗菌性を有するとともに衝撃吸収性が向上した衝撃吸収部材及びポリウレタンフォームを提供できる。本開示によれば、抗菌性を有するとともに制振性が向上した衝撃吸収部材及びポリウレタンフォームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】動的粘弾性測定(圧縮モード)の結果を表すグラフ。
図2】動的粘弾性測定(せん断モード)の結果を表すグラフ。
図3】振動減衰特性試験の結果を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕プレポリマー法により得られる、衝撃吸収部材。
【0010】
〔3〕ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
5Hz、25℃、圧縮率30%、振幅7mmの条件にて、圧縮モードで動的粘弾性測定をした場合に、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E'')の比E''/E'の値が、0.12以上である、ポリウレタンフォーム。
【0011】
〔4〕プレポリマー法により得られる、ポリウレタンフォーム。
【0012】
〔5〕ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られる、制振部材。
【0013】
〔6〕プレポリマー法により得られる、制振部材。
【0014】
〔7〕ポリオールと、
タンニン系化合物と、
イソシアネートと、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
JIS K 7391:2008に準じて測定される、2000Hz反共振点における損失係数が、0.01以上である、ポリウレタンフォーム。
【0015】
〔8〕プレポリマー法により得られる、制振部材。
【0016】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0017】
1.衝撃吸収部材
衝撃吸収部材は、ポリオールと、タンニン系化合物と、イソシアネートと、を含有する組成物から得られる。衝撃吸収部材は、ポリオールと、タンニン系化合物と、イソシアネートと、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームであることが好ましい。
【0018】
ポリウレタンフォームは、例えば、プレポリマー法、ワンショット法などにより得られる。プレポリマー法は、ポリオールとイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマーを得て、ウレタンプレポリマーを用いてポリウレタンフォームを得る方法である。ワンショット法は、ポリオール、イソシアネート等を一括に仕込み、反応させる方法である。
ポリウレタンフォームは、プレポリマー法により得られることが好ましい。プレポリマー法によれば、結晶性のよい構造となり、ポリウレタンフォームの機械強度、耐久性等を向上できる。ポリウレタンフォームは、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(NCO末端ウレタンプレポリマー)と発泡剤を用いて得ることができる。
【0019】
(1)タンニン系化合物
本開示において、タンニン、及びタンニンから生成される誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物をタンニン系化合物と称する。
タンニンは、加水分解で多価フェノールを生じる植物成分の総称であり、没食子酸やエラグ酸がグルコースなどの糖にエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンに大別される。タンニン系化合物に用いられるタンニンは、いずれのタイプのタンニンであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。タンニン系化合物は、化学的な修飾のしやすさの観点から、加水分解型タンニンであることが好ましい。加水分解型タンニンとしては、例えば下記式(1)で表されるタンニン酸を主成分とするものが例示される。
【0020】
タンニン系化合物は、下記式(1)で表されるタンニン酸、及びタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。これらの中でも、タンニン系化合物は、タンニン酸であることがより好ましい。タンニン系化合物としてタンニン酸を用いた場合には、タンニン酸からタンニン酸誘導体を生成する工程を省くことができ好ましい。また、タンニン系化合物は、フェノール性水酸基の数が多いほどラジカル消去能が高いと考えられる。このため、タンニン酸誘導体よりも水酸基の数が多いタンニン酸を用いることで、高い抗菌性が得られると推測される。
タンニン酸は、環境に配慮する観点から、天然由来の化合物であることがさらに好ましい。天然由来のタンニン酸は、ヌルデの虫こぶ由来の天然物から得ることができる。なお、天然由来のタンニン酸は、抽出や精製の過程で没食子酸やエラグ酸のエステル結合の切断や再結合などによって生成される物質を含んでいてもよい。
【0021】
【化1】
(1)
【0022】
タンニン酸誘導体を用いる場合には、置換率、置換基の種類は特に限定されない。タンニン酸誘導体としては、タンニン酸の複数の水酸基のうちの少なくとも一部の水酸基における水素原子が鎖状炭化水素基により置換されているものが好適である。なお、原料タンニン酸の水酸基の総数は種類に応じて異なる。
【0023】
タンニン酸誘導体は、好ましくは、置換基数の10%以上が置換されており、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上が置換されている。例えば上記式(1)の場合、水酸基の総数は25個であり、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上置換されている。置換基数の置換率の上限は、特に限定されない。タンニン酸誘導体は、好ましくは、置換基数の100%が置換されていてもよく、好ましくは80%以下、さらに好ましくは60%以下が置換されている。例えば上記式(1)の場合、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下置換されている。なお、タンニン酸誘導体の置換率(鎖状炭化水素基の導入率)は、例えば、タンニン酸誘導体生成時の原料の配合比、反応時間等によって調整できる。
本開示の技術によれば、より少ない置換率(置換率0%を含む)であっても、タンニン系化合物の凝集を抑制でき、タンニン系化合物を用いたポリウレタン樹脂を好適に得ることができる。
【0024】
鎖状炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、これが水酸基由来の酸素原子を含む結合を介して、タンニン酸骨格に結合される。鎖状炭化水素基の具体例には、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、プロピレン基、ヘキシレン基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が包含される。鎖状炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~18であり、より好ましくは4~17であり、さらに好ましくは6~16である。酸素原子を含む結合としては、例えばエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられる。タンニン酸誘導体は、例えば、アルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法によって得ることができる。
【0025】
(2)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。
【0026】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールやテトラヒドロフランを開環重合させたポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プ
ロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールやε-カプロラクトンを開環重合させたポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等を挙げることできる。
【0027】
本開示のポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及びポリプロピレングルコール(PPG)からなる群より選ばれる1種以上であることが好適である。
【0028】
ポリオールの数平均分子量は、特に限定されない。ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~10000であり、より好ましくは1000~6000であり、さらに好ましくは2000~5000である。
【0029】
(3)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。各種のイソシアネートは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネート、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。変性体としては、具体的には、ウレタン変性、アロファネート変性、ビューレット変性、カルボジイミド/ウレトニミン変性等種々の変性がなされたものが挙げられる。
【0030】
芳香族イソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジメチルビフェニルジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂環族イソシアネートとしては、シロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
本開示のイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)が好適である。
【0032】
(4)ウレタンプレポリマーを得るためのその他の成分
ウレタンプレポリマーを得るために、必要に応じて、触媒等を用いることができる。触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
【0033】
(5)発泡剤
発泡剤は、イソシアネート成分と反応する活性水素基を有する化合物である。発泡剤としては、水、ヒマシ油等の乳化剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール等を挙げることができる。発泡剤は、水が用いられることが好ましく、水と乳化剤が併用されることが好ましい。発泡剤として水を用いる場合、イソシアネート成分との反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。
発泡剤の配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5質量部~4質量部が好ましい。
【0034】
(6)ポリウレタンフォームを得るためのその他の成分
ウレタンプレポリマーと発泡剤を用いてポリウレタンフォームを得る際に、触媒を更に配合してもよい。触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ビス[2‐(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.001質量部~0.5質量部が好ましい。
【0035】
その他、可塑剤、整泡剤、発泡助剤、顔料、難燃剤等などの添加剤を適宜配合することができる。可塑剤は、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよい。可塑剤は、例えばNCO末端ウレタンポリマーと発泡液の配合比率を適切にし、安定して混合・撹拌するために添加される。整泡剤は、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。発泡助剤としては、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。
【0036】
2.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームの製造方法は、例えば、タンニン系化合物及びポリオールを混合し加熱して、タンニン系化合物含有のポリオール溶液を得て、得られたタンニン系化合物含有のポリオール溶液中で、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてウレタンプレポリマーを得て、ウレタンプレポリマーと発泡剤を用いてポリウレタンフォームを得る方法が好ましい。具体的には以下のような手順で行うことができる。
【0037】
まず、必要に応じてポリオールを予備的に加熱して溶融させ、粉末状のタンニン系化合物を添加する。
タンニン系化合物の配合量は、特に限定されない。タンニン系化合物の配合量は、成形性の観点から、ポリオール全体を100質量部とした場合に、5.0質量部未満が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。タンニン系化合物の配合量の下限は、特に限定されず、0質量部より多ければよい。
【0038】
次に、タンニン系化合物を添加したポリオールを混合し加熱する。この際、混合液を攪拌してもよい。すると、所定時間経過後に、沈殿物がなく、黄褐色透明なタンニン系化合物含有のポリオール溶液が得られる。タンニン系化合物含有のポリオール溶液は、凝集していたタンニン系化合物分子が分離して、ポリオール中に略均一に溶解した状態となっていると推測される。
加熱温度は、特に限定されない。加熱温度は、タンニン系化合物の溶解性の観点から、100℃以上が好ましい。加熱温度は、製造上のエネルギー効率の観点から、イソシアネートの反応温度(例えば140℃)以下が好ましい。
【0039】
次に、タンニン系化合物含有のポリオール溶液に、所定量のイソシアネートを添加する。イソシアネートの配合量は、ウレタンプレポリマー中に存在するNCO基の質量%(以下、NCO%と称する)が後述する範囲となるように調整することが好ましい。
ポリオールとイソシアネートは、常法に従って反応させることができる。例えば、タンニン系化合物含有のポリオール溶液を加熱し、加熱した温度を維持しつつ窒素を充填した状態で攪拌しながら、イソシアネートを投入して反応させることができる。ポリオールとイソシアネートの反応温度は100℃~150℃が好ましい。
【0040】
ウレタンプレポリマーのNCO%は、特に限定されない。ウレタンプレポリマーのNCO%(理論値)は、成形性の観点から、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。ウレタンプレポリマーのNCO%は、成形性の観点から、8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。また、ウレタンプレポリマーのNCO%が上限値以下であれば、ウレタン化反応の均一性を好適に確保できる。これらの観点から、ウレタンプレポリマーのNCO%(理論値)は、2.0以上8.0以下が好ましく、3.0以上6.0以下がより好ましい。
なお、ウレタンプレポリマーのNCO%(理論値)は、以下のようにして算出できる。
NCO%(理論値)=[〔NCO基のモル数-(ポリオールのモル数+タンニン系化合物のモル数)〕×NCO分子量]/[イソシアネートの配合量+ポリオールの配合量+タンニン系化合物の配合量]×100
【0041】
ポリオールと過剰のイソシアネートを反応させることによって、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(NCO末端ウレタンプレポリマー)を得ることができる。NCO末端ウレタンプレポリマーは、ポリウレタンフォームの原料として好適である。ウレタンプレポリマーと発泡剤は、常法に従って反応させることができる。
【0042】
ウレタンプレポリマーは、タンニン系化合物に由来する構成単位(タンニン系ユニット、タンニン系骨格)を含有することが好ましい。例えば、タンニン系化合物が水酸基を有している場合には、ポリオールとイソシアネートとの反応時に、タンニン系化合物の水酸基がイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る。このようにして得られたウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマー中にウレタン結合を介してタンニン系化合物由来の構成単位が含まれ得る。
【0043】
ポリウレタンフォームを得る際の発泡は、例えば、モールド発泡、スラブ発泡が挙げられる。モールド発泡は、例えば、混合したポリウレタン発泡体用組成物をモールド(金型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。スラブ発泡は、例えば、混合したポリウレタン発泡体用組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
【0044】
3.ポリウレタンフォームの物性及び用途1
ポリウレタンフォームのタンニン系化合物の含有量は、ポリウレタンフォーム全体を100質量%とした場合に、好ましくは0.2質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である。タンニン系化合物の含有量が下限以上であれば、ポリウレタンフォームに好適に抗菌性を付与できる。
【0045】
ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンは、タンニン系化合物に由来する構成単位(タンニン系ユニット、タンニン系骨格)を含有することが好ましい。このようなポリウレタンフォームによれば、タンニン系ユニットがブリードアウトしにくく、種々の用途に好適である。
【0046】
ポリウレタンフォームの見掛け密度(JIS K7222:2005に準拠)は、好ましくは0.10g/cm~0.80g/cmであり、より好ましくは0.20g/cm~0.60g/cmである。
【0047】
ポリウレタンフォームの引張強度(JIS K6251:2017(ダンベル状2号形)に準拠)は、好ましくは1.0MPa以上である。ポリウレタンフォームの引張強度の上限は特に限定されないが、通常5.0MPa以下である。なお、引張強度を測定するための試験片は、上下面及び側面全てスキン層無しとする。
【0048】
ポリウレタンフォームは、5Hz、25℃、圧縮率30%、振幅7mmの条件にて、圧縮モードで動的粘弾性測定をした場合に、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E'')の比E''/E'の値が、好ましくは0.12以上である。以下、E''/E'の値をtanδ(損失係数)とも称する。上記のtanδ(損失係数)の上限値は特に限定されないが、例えば1.0以下であってもよい。
上記の条件で測定したポリウレタンフォームのtanδ(損失係数、E''/E')は、タンニン系化合物を含まない他は同様の組成の組成物から、同様に得られたポリウレタンフォームのtanδ(損失係数)よりも大きくなり得る。その理由は定かではないが、タンニン系化合物や、ポリウレタンのタンニン系ユニットがtanδ(損失係数)の増大に寄与している可能性がある。
【0049】
ポリウレタンフォームは、1Hz、歪1%の条件にて、せん断モードで動的粘弾性測定をした場合に、10℃以上50℃以下の範囲において、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G'')の比G''/G'の値が、タンニン系化合物を含まない他は同様の組成の組成物から、同様に得られたポリウレタンフォームのG''/G'よりも大きくなり得る。以下、G''/G'の値をtanδ(損失係数)とも称する。
ポリウレタンフォームのtanδ(損失係数、G''/G')が上記の温度域で高くなる理由は定かではないが、タンニン系化合物や、ポリウレタンのタンニン系ユニットが寄与している可能性がある。このようなポリウレタンフォームは、室温環境下で使用される衝撃吸収部材として好適である。
【0050】
本開示のポリウレタンフォームが使用される物品は限定されない。
ポリウレタンフォームは、抗菌性を有する観点から、靴のインソール、歩行器・杖の足ゴム、マットレス、掛け及び敷き布団、まくら、ベッドパッド等の寝具、ブラジャー等のパッド、防寒材ライナー等の衣料用品、シートクッション等のクッション材として好適である。
また、ポリウレタンフォームは、衝撃吸収性が高い観点から、衝撃吸収部材として好適である。衝撃吸収部材としては、例えば、靴のインソール、歩行器・杖の足ゴム、椅子等の家具の保護具、スポーツ用具、住宅の床・壁等の制振材等が挙げられる。
【0051】
4.ポリウレタンフォームの物性及び用途2
本開示の用途2に関するポリウレタンフォームについて、上述の説明と同様の説明は省略する。例えば、用途2に関するポリウレタンフォームについて、用途1に関するポリウレタンフォームと同様のタンニン系化合物の含有量、見掛け密度、引張強度等とすることができる。
ポリウレタンフォームは、JIS K 7391:2008に準じて測定される、2000Hz反共振点における損失係数が、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上である。2000Hz反共振点における損失係数の上限値は特に限定されないが、例えば0.5以下であってもよい。なお、2000Hz反共振点とは、上記制振性評価において、2000Hz前後にピークの見られる反共振点である。
上記の条件で測定した2000Hz反共振点における損失係数は、タンニン系化合物を含まない他は同様の組成の組成物から、同様に得られたポリウレタンフォームの2000Hz反共振点における損失係数よりも大きくなり得る。その理由は定かではないが、タンニン系化合物や、ポリウレタンのタンニン系ユニットが損失係数の増大に寄与している可能性がある。
【0052】
本開示のポリウレタンフォームが使用される物品は限定されない。
ポリウレタンフォームは、制振性が高い観点から、制振部材として好適である。制振部材としては、例えば、住宅の床・壁等の制振部材、車両用の制振部材、工場プラントの制振部材、モータ・発電機等の制振部材等が挙げられる。
【実施例0053】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。
1.ウレタンプレポリマーの製造
実施例1,2ウレタンプレポリマーの製造に用いた各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール(PTMG2000):ポリテトラメチレングリコール、官能基数2、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量2000、品番;PTMG2000、保土谷化学工業社製
・タンニン酸:OH基数25、分子量1702、富士化学工業社製
・イソシアネート(MDI):4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、NCO%;33.6%、品名;ミリオネートMT、東ソー社製
【0054】
実施例1は、ポリオール1000質量部に対して、タンニン酸 13質量部、イソシアネート270質量部の配合割合で配合し、次のようにして実施例1のNCO末端ウレタンプレポリマーを作製した。実施例1のウレタンプレポリマーのNCO%(理論値)は5.0%であった。実施例1について、ポリウレタンフォームのタンニン酸含有量は、ポリウレタンフォーム全体を100質量%とした場合に、1.0質量%であった。
【0055】
20Lの金属製反応釜に、ポリオール(あらかじめ100℃程度に加熱し、溶融状態とした)を投入し、投入後、タンニン酸(固体状態)を反応釜に投入した。その後、120℃まで昇温し、120℃に保持したまま10分間混合してタンニン酸を溶融させつつ、ポリオール中に均一に分散させた。反応釜を130℃まで昇温し、イソシアネート(MDIの場合、固体状態)を投入し、更に20分間混合した。その後、反応釜を室温(25℃)で放置し、徐冷することにより実施例1のNCO末端ウレタンプレポリマーを作製した。
【0056】
実施例2は、ポリウレタンフォームのタンニン酸含有量が、ポリウレタンフォーム全体を100質量%とした場合に、0.5質量%となるようにタンニン酸の配合量を調整した他は、実施例1と同様にしてNCO末端ウレタンプレポリマーを作製した。
【0057】
2.ポリウレタンフォームの製造
作製したNCO末端ウレタンポリマー(B液)と次の発泡液(A液)を用い、実施例1,2のポリウレタンフォームを後述の方法で作製した。実施例1,2のイソシアネートインデックスは、100~120であった。なお、イソシアネートインデックスは、特に限定されない。
発泡液は、発泡剤:触媒=100:0.2の割合で配合・混合することで作製した。
・発泡剤:水と乳化剤(スルホン化ヒマシ油のナトリウム塩、高スルホン化脂肪酸のナトリウム塩等の混合物)とを含む混合液、品番;アドベードSV(水と乳化剤の重量比50:50)、ラインケミージャパン社製
・触媒:アミン触媒、品番;Addocat PP、ラインケミージャパン社製
【0058】
80℃に温調したNCO末端ウレタンポリマー(B液)と、40℃に温調した発泡液(A液)を、NCO末端ウレタンポリマー100質量部に対して発泡剤2.2質量部の配合割合で配合してポリウレタンフォーム用組成物を作製した。そのポリウレタンフォーム用組成物を混合した後、80℃に温調した金型内に注入した。金型は、200×110×30mmのキャビティを有するものを使用した。ポリウレタンフォーム用組成物を金型内で発泡させ、80℃で30分キュア(一次キュア)した後に得られたポリウレタン発泡体を脱型する。脱型後のポリウレタンフォームを、更に100℃で12時間キュア(二次キュア)し、200mm×110mm×30mmの実施例1,2のポリウレタンフォームを得た。
【0059】
3.評価方法
実施例1のポリウレタンフォームについて、見掛け密度、動的粘弾性を測定した。
【0060】
見掛け密度は、得られたポリウレタンフォーム(200×110×30mm)をそのまま使用し(上下面及び側面全てスキン層有り)、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
【0061】
動的粘弾性は、ARESレオメータ(TA Instruments社製)を用いて測定した。
圧縮モードでの動的粘弾性は、直径50mm、厚み30mmの試験片を作製して測定した。測定条件は、圧縮率30%、振幅7mm、周波数1Hz~10Hz、測定温度 室温(25℃)とした。
せん断モードでの動的粘弾性は、直径8mm、厚み0.9mm~1.2mmの試験片を作製して測定した。上下部測定治具として、直径8mmの平板のパラレルプレートを用いた。測定条件は、温度域-100℃~100℃、昇温速度6℃/分、歪0.10%、周波数1Hzとした。
【0062】
実施例2のポリウレタンフォームについて、振動減衰特性を測定した。
損失係数は、JIS K 7391:2008(非拘束形制振複合はりの振動減衰特性試験方法による中央加振法)に基づいて、振動試験装置(513-AH エミック社製)を用いて測定した。
この損失係数は、長さ200mm、幅30mm、厚み5mmの試験片を作製し、試験片を鉄板(長さ300mm、幅30mm、厚み1mm)に両面テープで貼り付けて測定した。測定条件は、測定温度 室温(25℃)とした。
【0063】
また、実施例1,2のポリウレタンフォームについて、発泡性及び外観を評価した。
【0064】
4.結果
実施例1の見掛け密度は0.5g/cmであった。実施例1の発泡性及び外観は、良好であった。
また、図1に、実施例1のポリウレタンフォームについて、動的粘弾性測定(圧縮モード)をした結果を示す。このグラフの横軸は、周波数(Hz)であり、縦軸はtanδ(損失係数、E''/E’)である。実線は実施例1の測定結果である。点線は、タンニン系化合物を含まない他は実施例1と同様の組成の組成物から、実施例1と同様に得られたポリウレタンフォーム(ブランク)の測定結果である。
図2に、実施例1のポリウレタンフォームについて、動的粘弾性測定(せん断モード)をした結果を示す。このグラフの横軸は、温度(℃)であり、縦軸はtanδ(損失係数、G''/G’)である。実線は実施例1の測定結果である。点線は、タンニン系化合物を含まない他は実施例1と同様の組成の組成物から、実施例1と同様に得られたポリウレタンフォーム(ブランク)の測定結果である。
【0065】
実施例1は、5Hz、25℃、圧縮率30%、振幅7mmの条件にて、圧縮モードで動的粘弾性測定をした場合に、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E'')の比E''/E'の値が、0.196であった。実施例1は、圧縮モードで動的粘弾性測定をした場合に、所定の周波数域(1Hz~10Hz)においてブランクのポリウレタンフォームよりもtanδ(損失係数、E''/E’)が高かった。
実施例1は、せん断モードで動的粘弾性測定をした場合に、所定の温度域(10℃以上50℃以下)においてブランクのポリウレタンフォームよりもtanδ(損失係数、G''/G’)が高かった。
実施例1は、発泡性が良く、外観が良好であった。また、実施例1は、実用に適した見掛け密度(g/cm)を有していた。
【0066】
図3に、実施例2のポリウレタンフォームについて、JIS K 7391:2008に基づく振動試験をした結果を示す。図3では、5点の測定点で得られた損失係数の値に基づいて、室温での振動数に対する損失係数の線形を示している。このグラフの横軸は、振動数(Hz)であり、縦軸は損失係数である。実線は実施例2の測定結果である。点線は、タンニン系化合物を含まない他は実施例2と同様の組成の組成物から、実施例2と同様に得られたポリウレタンフォーム(ブランク)の測定結果である。2000Hz反共振点における損失係数は、実施例2は0.022(測定点1923Hz)、ブランクのポリウレタンフォームは0.005(測定点1917Hz)であった。
【0067】
実施例2は、2000Hz反共振点における損失係数が、0.01以上であった。実施例2は、所定の振動数域(1500Hz~2500Hz)においてブランクのポリウレタンフォームよりも反共振点における損失係数が高かった。
実施例2は、発泡性が良く、外観が良好であった。また、実施例2は、実用に適した見掛け密度(g/cm)を有していた。
【0068】
5.実施例の効果
以上の実施例1によれば、抗菌性を有するとともに衝撃吸収性が向上した衝撃吸収部材及びポリウレタンフォームを提供できる。以上の実施例2によれば、抗菌性を有するとともに制振性が向上した制振部材及びポリウレタンフォームを提供できる。
【0069】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。
図1
図2
図3