IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋スチレン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023976
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20230209BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20230209BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230209BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20230209BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L25/06
C08L25/08
C08L51/06
C08L25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129979
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】今野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC03X
4J002BC04X
4J002BC07X
4J002BC12X
4J002BN03X
4J002CF16W
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】耐熱性および耐衝撃性に優れた、スチレン系樹脂と液晶ポリマーとを含有するスチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、スチレン系樹脂Aと液晶ポリマーBの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A20~70質量部と液晶ポリマーB30~80質量部を含有する、スチレン系樹脂組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂Aと液晶ポリマーBの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A20~70質量部と液晶ポリマーB30~80質量部を含有する、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂Aが、スチレン系モノマーa1の単独重合体A1、スチレン系モノマーa1とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマーa2との共重合体A2、またはゴム含有スチレン系樹脂A3である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記エステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマーa2が、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルである、請求項2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸またはメタクリル酸メチルである、請求項3に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
JIS K 7191に準拠し、フラットワイズ法、1.8MPa応力の条件における100℃以上の荷重たわみ温度を有する、請求項1~4の何れかの1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記液晶ポリマーBの融点が240℃未満である、請求項1~5の何れかの1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れかの1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
【請求項8】
請求項1~6の何れかの1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および耐衝撃性に優れた、スチレン系樹脂と液晶ポリマーとを含有するスチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の樹脂を組み合わせることで個々の樹脂の欠点を補い、更には従来にない機能を生み出す手段としてポリマーアロイ技術が知られている。例えば、特許文献1では、相溶化剤として特定のジグリシジルエーテルエステル化合物を添加することによってポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂と液晶ポリマーとの相溶性を改善することが開示されている。また、特許文献2では、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂と流動性改良剤を組み合わせることにより流動性および機械特性に優れる熱可塑性樹脂を得て、これをコネクター用樹脂組成物として利用することが開示されている。さらに、特許文献3には、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体と液晶ポリマー樹脂の少なくとも一方と、特定の条件下において比誘電率温度係数が正の値である無機充填材とを含有してなる熱可塑性樹脂により1GHz以上の高周波数領域で大きな比誘電率と、小さな誘電正接と、小さな比誘電率の温度係数を有する成形品を得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-214460号
【特許文献2】特開2007―234260号
【特許文献3】特開2003-342478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱性および耐衝撃性に優れた、スチレン系樹脂と液晶ポリマーとを含有するスチレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らの検討の結果、スチレン系樹脂(A)と液晶ポリマー(B)の合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂(A)20~70質量部と液晶ポリマー(B)30~80質量部を含有するスチレン系樹脂組成物が、耐熱性および耐衝撃性に優れることを見出した。
即ち、本発明は、
(1)スチレン系樹脂Aと液晶ポリマーBの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A20~70質量部と液晶ポリマーB30~80質量部を含有する、スチレン系樹脂組成物。
(2)前記スチレン系樹脂Aが、スチレン系モノマーa1の単独重合体A1、スチレン系モノマーa1とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマーa2との共重合体A2、またはゴム含有スチレン系樹脂A3である、(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3)前記エステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマーa2が、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルである、(2)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(4)前記(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸またはメタクリル酸メチルである、(3)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(5)JIS K 7191に準拠し、フラットワイズ法、1.8MPa応力の条件における100℃以上の荷重たわみ温度を有する、(1)~(4)の何れかの1つに記載のスチレン系樹脂組成物。
(6)前記液晶ポリマーBの融点が240℃未満である、(1)~(5)の何れかの1つに記載のスチレン系樹脂組成物。
(7)(1)~(6)の何れかの1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
(8)(1)~(6)の何れかの1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性および耐衝撃性に優れた、スチレン系樹脂と液晶ポリマーとを含有するスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A~B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0009】
<スチレン系樹脂組成物>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と液晶ポリマー(B)とを含有する。また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、スチレン系樹脂(A)と液晶ポリマーB以外のその他樹脂成分(C)を含んでもよい。
以下、本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含有される成分について説明する。
【0010】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂Aと液晶ポリマーBの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂(A)を20~70質量部含有し、好ましくは40~65質量部含有する。具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。スチレン系樹脂(A)の含有量を上記の範囲内とすることにより、スチレン系樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、および流動性のバランスが優れる。なお、スチレン系樹脂(A)を併用する場合には、スチレン系樹脂(A)の使用量は、併用するスチレン系樹脂(A)の合計量を意味する。
【0011】
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂Aと液晶ポリマーBの合計を100質量部としたとき、液晶ポリマー(B)を30~80質量部含有し、好ましくは35~60質量部含有する。具体的には例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。液晶ポリマー(B)の含有量を上記の範囲内とすることにより、スチレン系樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、および流動性のバランスが優れる。なお、液晶ポリマー(B)を併用する場合には、液晶ポリマー(B)の使用量は、併用する液晶ポリマー(B)の合計量を意味する。
【0012】
<スチレン系樹脂(A)>
本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)は、例えばラジカル重合により得られるものであり、アタクチックポリスチレンである。好ましくは、スチレン系樹脂(A)は、スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)、スチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)、またはゴム含有スチレン系樹脂(A3)である。一態様においては、これらの中でもの相容性の観点からスチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)が好ましい。これらのスチレン系樹脂(A)は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
<スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)は、芳香族ビニル系単量体であるスチレン系モノマー(a1)を重合して得られるものである。重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が公知であり、いずれの方法で製造されたものでも使用可能である。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも強度と成形加工性のバランスの観点からスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。すなわち、ここでいうスチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)とは、スチレン系モノマー(a1)のみの重合体であることを意味し、2種類以上のスチレン系モノマー(a1)の共重合体であってもよい。
【0014】
<重量平均分子量(Mw)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)は、強度と成形加工性の観点から、重量平均分子量(Mw)が5万~70万であることが好ましく、より好ましくは15万~40万である。具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Mwが小さすぎると成形品の強度が不十分となり、Mwが大きすぎると成形性が低下する。スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0015】
重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定できる。
GPC機種:昭和電工株式会社製ShodexGPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製PLgel10μmMIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出する。
【0016】
<ガラス転移温度(Tg)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)は、耐熱性と成形加工性の観点からガラス転移温度(Tg)が50~160℃であることが好ましく、より好ましくは70~120℃である。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体(A1)を構成するモノマー(a1)および共重合体(A1)の重量平均分子量を調整することによって制御することができる。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定できる。
【0017】
<スチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)は、芳香族ビニル系単量体であるスチレン系モノマー(a1)と、これと共重合可能なエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマーを共重合して得られるものである。重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が公知であり、いずれの方法で製造されたものでも使用可能である。
【0018】
芳香族ビニル系単量体としては、上述の重合体(A1)を構成するスチレン系モノマー(a1)が挙げられ、好ましくはスチレンである。これらの芳香族ビニル系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、単独重合体(A1)と共重合体(A2)とを併用する場合には、単独重合体(A1)に使用されるスチレン系モノマー(a1)と共重合体(A2)に使用されるスチレン系モノマー(a1)とは同一であっても、異なっていてもよい。
【0019】
エステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらのモノマー(a2)は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。これらの中でも耐熱性の観点からメタクリル酸が好ましい。これらのモノマー(a2)は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも強度と成形加工性のバランスの観点からメタクリル酸メチルが好ましい。これらのモノマー(a2)は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本実施形態にかかる共重合体(A2)を構成するモノマーは、耐熱性と成形加工性のバランスの観点からスチレン系モノマー(a1)とモノマー(a2)の合計量を100質量部とした場合に、スチレン系モノマー(a1)5~97質量部、より好ましくは15~90質量部含有することが好ましい。具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、スチレン系モノマー(a1)を併用する場合には、スチレン系モノマー(a1)の使用量は、併用するスチレン系モノマー(a1)の合計量を意味する。
【0023】
本実施形態にかかる共重合体(A2)を構成するモノマーは、耐熱性と成形加工性のバランスの観点からスチレン系モノマー(a1)とモノマー(a2)の合計量を100質量部とした場合に、モノマー(a2)3~95質量部、より好ましくは10~85質量部含有することが好ましい。具体的には例えば、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、モノマー(a2)を併用する場合には、モノマー(a2)の使用量は、併用するモノマー(a2)の合計量を意味する。
【0024】
<重量平均分子量(Mw)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)は、強度と成形加工性のバランスの観点から重量平均分子量(Mw)が5~70万であることが好ましく、より好ましくは6~40万である。具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Mwが小さすぎると成形品の強度が不十分となり、Mwが大きすぎると成形性が低下する。共重合体(A2)の重量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
重量平均分子量(Mw)は、例えば、スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)と同様にして測定できる。
【0025】
<ガラス転移温度(Tg)>
本実施形態にかかるスチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)は、耐熱性と成形加工性のバランスの観点からガラス転移温度(Tg)が50~160℃であることが好ましく、より好ましくは70~125℃である。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、共重合体(A2)を構成するモノマー(a1)および(a2)の種類、含有量、および共重合体(A2)の重量平均分子量を調整することによって制御することができる。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)と同様にして測定できる。
【0026】
<ゴム含有スチレン系樹脂(A3)>
本実施形態にかかるゴム含有スチレン系樹脂(A3)は、芳香族ビニル系重合体にゴム状重合体をグラフト重合し、マトリックスとなるスチレン系樹脂相にグラフト重合体粒子を分散させる事で得られるスチレン系樹脂である。芳香族ビニル系重合体は、芳香族ビニル系単量体であるスチレン系モノマー(a1)を重合して得られるものである。重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が公知であり、いずれの方法で製造されたものでも使用可能である。また、芳香族ビニル系重合体を与える芳香族ビニル系単量体としては、上述の重合体(A1)を構成するスチレン系モノマー(a1)が挙げられ、強度と成形加工性のバランスの観点から、好ましくはスチレンである。これらの芳香族ビニル系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、ゴム含有スチレン系樹脂(A3)を単独重合体(A1)および/または共重合体(A2)を併用する場合には、単独重合体(A1)に使用されるスチレン系モノマー(a1)、共重合体(A2)に使用されるスチレン系モノマー(a1)、およびゴム含有スチレン系樹脂(A3)に使用されるスチレン系モノマー(a1)はそれぞれ独立に選択することができる。
【0027】
本実施形態にかかるゴム含有スチレン系樹脂(A3)に用いるゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム又はブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が好ましい。また、これらは一部水素添加されていてもよく、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本実施形態にかかるゴム含有スチレン系樹脂(A3)100質量部中のゴム状重合体の含有量は、強度と成形加工性の観点から1.0~25.0質量部が好ましく、5.0~20.0質量部がさらに好ましい。なお、ゴム状重合体の含有量は1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の使用量は、併用するゴム状重合体の合計量を意味する。
【0029】
ゴム状重合体の含有量は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出する。
【0030】
ゴム含有スチレン系樹脂(A3)中のゴム状重合体の体積平均粒子径は、強度と剛性の観点から2.0~8.0μmが好ましく、特に好ましくは2.3~7.0μmが好ましい。なお、この体積中位粒子径は2.0、2.1、2.2、2.3、02.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の体積平均粒子径は、併用するゴム状重合体全体での体積平均粒子径を意味する。
【0031】
ゴム状重合体の体積平均粒子径は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回析方式粒度分布装置(ベックマン・コールター社製レーザー回析方式粒子アナライザー「LS-230型」)にて測定する。
【0032】
<Z平均分子量(Mz)>
本実施形態にかかるゴム含有スチレン系樹脂(A3)は、強度と成形加工性のバランスの観点からZ平均分子量(Mz)が20万~150万であることが好ましく、より好ましくは30万~140万である。具体的には例えば、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Mzが小さすぎると成形品の強度が不十分となり、Mzが大きすぎると成形性が低下する。ゴム含有スチレン系樹脂(A3)の重量平均分子量は、マトリックスとなるスチレン系樹脂の重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0033】
ゴム含有スチレン系樹脂(A3)のZ平均分子量(Mz)は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定することができる。なお、本実施例で使用したゴム含有スチレン系樹脂(A3)はポリスチレン樹脂のマトリクス相にゴム状分散粒子が分散した形態であり、分子量はマトリクス相の分子量を意味する。そのため分子量測定に用いる試料は50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液にゴム含有スチレン系樹脂(A3)を溶解させ、遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にてゴム状分散粒子を除去し、メタノールに再沈殿させたポリマー物を使用する。
GPC機種:昭和電工株式会社製 Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 5μm MIXED-C
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出する。
【0034】
<ガラス転移温度(Tg)>
本実施形態にかかるゴム含有スチレン系樹脂(A3)は、耐熱性と成形加工性の観点からガラス転移温度(Tg)が50~160℃であることが好ましく、より好ましくは70~120℃である。ガラス転移温度(Tg)は、例えば、ゴム含有スチレン系樹脂(A3)の芳香族ビニル系重合体を構成するモノマー(a1)の種類、含有量、ゴム含有スチレン系樹脂(A3)に用いるゴム状重合体の種類、含有量、およびゴム含有スチレン系樹脂(A3)の重量平均分子量を調整することによって制御することができる。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)と同様にして測定できる。
【0035】
<(A1)~(A3)以外のスチレン系樹脂>
本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、前述の単独重合体(A1)、共重合体(A2)、およびゴム含有スチレン系樹脂(A3)以外のスチレン系樹脂(A4)を含有してもよい。このようなスチレン系樹脂(A4)としては、例えばスチレン―無水マレイン酸共重合体、スチレン―N-フェニルマレイミド共重合体、スチレン―アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。また、本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)100質量部中のスチレン系樹脂(A4)の含有量は、10質量部未満であることが好ましい。さらに好ましくは、本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)は実質的に単独重合体(A1)、共重合体(A2)、およびゴム含有スチレン系樹脂(A3)からなる群から選択される1種以上のみを含有する。
【0036】
スチレン系樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0037】
スチレン系樹脂の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0038】
<液晶ポリマー(B)>
本実施形態にかかる液晶ポリマー(B)とは、溶融時に液晶性を示し、異方性溶融相を形成し得る熱可塑性樹脂であり、分子構造により全芳香族系と半芳香族系に分類されるものである。例えば、芳香族オキシカルボニル単量体単位、芳香族ジオキシ単量体単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単量体単位、アルキレンジオキシ単量体単位などから選ばれた単量体単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記単量体単位と芳香族イミノカルボニル単量体単位、芳香族ジイミノ単量体単位、芳香族イミノオキシ単量体単位などから選ばれた単量体単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。また、本実施形態にかかる液晶ポリマー(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0039】
<芳香族オキシカルボニル単量体単位を与える単量体>
芳香族オキシカルボニル単量体単位を与える単量体としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4'-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの芳香族オキシカルボニル単量体単位を与える単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0040】
<芳香族ジオキシ単量体単位を与える単量体>
芳香族ジオキシ量体単位を与える単量体としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、3,3'-ジヒドロキシビフェニル、3,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェニルエーテルなどの芳香族ジオール、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの芳香族ジオキシ量体単位を与える単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0041】
<芳香族ジカルボニル単量体単位を与える単量体>
芳香族ジカルボニル単量体単位を与える単量体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジカルボキシビフェニルなどの芳香族ジカルボン酸、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの芳香族ジカルボニル単量体単位を与える単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0042】
<液晶ポリマーの融点>
本実施形態にかかる液晶ポリマー(B)の融点は、成形加工性の観点から240℃未満であることが好ましく、より好ましくは220℃未満である。具体的には例えば、240、235、230、または220℃未満である。
液晶ポリマー(B)の融点は、例えば、液晶ポリマーを構成する単量体単位の種類、含有量を調整することによって制御することが可能である。また、このような融点を有する市販の液晶ポリマーを使用することもできる。市販品の例としては、上野製薬株式会社製の液晶ポリマー、AL-8100(融点220℃)が挙げられる。
なお、本実施形態において、液晶ポリマー(B)の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0043】
<液晶ポリマーの製造方法>
本実施形態にかかる液晶ポリマー(B)の製造方法は、特に限定されず、例えば前記単量体を適宜組合せて公知の重縮合方法、例えば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などによりエステル結合やアミド結合などを形成させることにより得られる。
【0044】
<その他樹脂成分(C)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、スチレン系樹脂(A)と液晶ポリマー(B)以外の、その他樹脂成分(C)を含んでもよい。また、本実施形態にかかるスチレン系樹脂組成物100質量部中のその他樹脂成分(C)の含有量は、10質量部未満であることが好ましく、5質量部未満であることがより好ましい。さらに好ましくは、本実施形態にかかるスチレン系樹脂組成物は、実質的にスチレン系樹脂(A)および液晶ポリマー(B)のみを含有する。
【0045】
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、本発明の効果が得られる範囲で各種添加物、例えば染顔料、着色防止剤、滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、相溶化剤等の公知の添加剤、酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤などの改質剤を添加できる。好ましくは、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、相溶化剤を含有しない。
これらの添加方法は特に限定される訳では無く、公知の方法、例えば、使用するスチレン系樹脂(A)の重合開始前、重合途中の反応液に対して、又は重合終了後、及び液晶ポリマー(B)を配合する際、更には、押出機や成形機においても添加することができる。
【0046】
<混合方法>
本実施形態にかかるスチレン系樹脂組成物の混合方法は、公知の混合技術を適用することが出来る。例えばミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置であらかじめ予備混合しておいた混合物を、溶融混練することで均一な樹脂組成物とすることが出来る。溶融混練機に特段の制限は無い。好適な溶融混練機として、バンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等がある。更に押出機等の溶融混練装置の途中から難燃剤等の添加剤を別途に添加する方法がある。
【0047】
溶融混練時の温度は、二軸押出機を使用する場合、混練部のシリンダー温度で200~260℃であり、好ましくは220~255℃である。シリンダー温度が200℃未満だと樹脂が溶融十分に溶融せず、均一な分散体が得られない。また、260℃を超えるとスチレン系樹脂が分解し、物性低下を引き起こすため好ましくない。
【0048】
本実施形態において、混練部のシリンダー温度とは、二軸押出機において、シリンダーが配置される空間を、原料の投入部から放出部にかけて複数の区画に分割し、各区画の温度を制御することができるように構成されている場合において、溶融混練する材料を混練する区画のうち、混練部シリンダー(ミキシングエレメント)が配置され、最も温度が高い区画の設定温度である。
【0049】
<スチレン系樹脂組成物の荷重たわみ温度>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の荷重たわみ温度は、実用上の耐熱性の観点から90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上である。具体的には、例えば、90、95、100、105、110、115、120、または130℃以上が好ましい。
荷重たわみ温度は、スチレン系樹脂組成物を構成するスチレン系樹脂(A)と液晶ポリマー(B)の種類および含有量を調整することによって制御することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の荷重たわみ温度は、JIS K 7191に準拠し、フラットワイズ法、1.8MPa応力の条件において求めることができる。
【0050】
<成形品>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物から成形品を得る成形法には押出成形、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられる。
【実施例0051】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の具体的な実施態様をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0052】
<スチレン系樹脂組成物の製造例>
[使用材料]
[スチレン系樹脂(A)]
<スチレン系モノマー(a1)の単独重合体(A1)>
・(A1-1) GPPS(スチレンの重合体、重量平均分子量(Mw)30万、ガラス転移温度(Tg)100℃)

<ゴム含有スチレン系樹脂(A3)>
・(A3-1) HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、Z平均分子量(Mz)40万、ガラス転移温度(Tg)93℃、ゴム状重合体の含有量6.0質量部、体積平均粒子径2.7μm)

<スチレン系モノマー(a1)とエステル基またはカルボキシル基の少なくとも1種以上を有するモノマー(a2)との共重合体(A2)>
・(A2-1) スチレン-メタクリル酸共重合体(重量平均分子量(Mw)16万、ガラス転移温度(Tg)125℃、メタクリル酸モノマー10質量部)
・(A2-2) スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(重量平均分子量(Mw)7万、ガラス転移温度(Tg)93℃、メタクリル酸メチルモノマー75質量部)
[液晶ポリマー(B)]
・(B-1)上野製薬株式会社製 AL-8100(融点220℃)

[非スチレン系樹脂]
・非スチレン系樹脂 ユニチカ製ポリエチレンテレフタレート SA-863JP(融点235℃)
【0053】
スチレン系樹脂(A)、液晶ポリマー(B)、非スチレン系樹脂を、表に示す量にて配合し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給して、シリンダー温度250℃、供給量35kg/hの条件にてストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。
上述にようにして得られたペレットを80℃で3時間加熱乾燥後、射出成形機(日本製鋼所株式会社製「J100E-P」)にて、JIS K 7139に記載のA型試験片(ダンベル)を成形した。この際、シリンダー温度:240℃、金型温度:45℃とした。
【0054】
<メルトマスフローレート(MFR)>
本実施形態にかかるスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレートは、JIS K7210に基づき200℃、49N荷重の条件により測定した。
【0055】
<荷重たわみ温度>
本実施形態にかかるスチレン系樹脂組成物の荷重たわみ温度は、JIS K 7191に準拠し、フラットワイズ法、1.8MPa応力の条件により測定した。
【0056】
<シャルピー衝撃強さ>
本実施形態における樹脂組成物の耐衝撃性はシャルピー衝撃値によりで評価した。シャルピー衝撃強さは、ダンベル片の中央部より切り出し、切削でノッチ(タイプA、r=0.25mm)を入れた試験片を用いて、JIS K 7111-1の条件により測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1の結果より、実施例にかかるスチレン系樹脂組成物は、耐熱性および耐衝撃性に優れていることが見いだせる。他方、表2の結果より、比較例にかかる共重合体は、耐熱性および耐衝撃性の一つ以上の観点において劣ることが分かる。また、流動性が著しく低く、試験片を作成することができないものもあった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかるスチレン系樹脂と液晶ポリマーとを含有するスチレン系樹脂組成物は、耐熱性および耐衝撃性に優れている。本発明にかかるスチレン系樹脂組成物は、成形品やフィルムとして好適に用いることができ、産業上の利用可能性を有する。