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  • 特開-ネットワーク望遠鏡システム 図1
  • 特開-ネットワーク望遠鏡システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024004
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ネットワーク望遠鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230209BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130029
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000142894
【氏名又は名称】株式会社五藤光学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】笠原 誠
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】 時間制限によらず、複数の利用者ができるだけ公平に天体観測設備を利用できるようにしたネットワーク望遠鏡システムを提供する。
【解決手段】 コンピュータからの観測命令に従って架台を駆動して観測対象を捕捉する天体望遠鏡6を備えるとともに、観測対象を撮像する手段7を備えた天体観測設備に対し、ネットワークを介して接続される複数のクライアントコンピュータ1~3からの観測要求及び撮影要求を受け付け、利用を希望する者に対して認証コードおよび閾値以上となるクレジット値を予め付与して管理サーバに記録しておき、利用者が天体観測設備を使用するたびに、管理サーバが認証コードの入力により利用資格を持つ者であることを確認し、さらに利用中は一定の条件に基づいてクレジット値を減じて管理サーバの記録を更新し、クレジット値が閾値以下であった場合には天体観測設備の利用を認めないようにする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータからの観測命令に従って架台を駆動して観測対象を捕捉する天体望遠鏡を備えるとともに、観測対象を撮像する手段を備えた天体観測設備に対し、ネットワークを介して接続される複数のクライアントコンピュータからの観測要求及び撮影要求を受け付けるネットワーク望遠鏡システムにおいて、利用を希望する者に対して認証コードおよび閾値以上となるクレジット値を予め付与して管理サーバに記録しておき、利用者が天体観測設備を使用するたびに、管理サーバが認証コードの入力により利用資格を持つ者であることを確認し、さらに利用中は一定の条件に基づいてクレジット値を減じて管理サーバの記録を更新し、クレジット値が閾値以下であった場合には天体観測設備の利用を認めないようにすることを特徴とするネットワーク望遠鏡システム。
【請求項2】
認証コードを無効とすることにより天体観測設備の利用を認めないようにする請求項1記載のネットワーク望遠鏡システム。
【請求項3】
一定の時間が経過するまでクレジットの減算を開始しないようにする請求項1または2記載のネットワーク望遠鏡システム。
【請求項4】
撮像装置による撮像回数に応じてクレジットの減算を行う請求項1から3のいずれかに記載のネットワーク望遠鏡システム。
【請求項5】
望遠鏡架台による観測対象の捕捉回数に応じてクレジットの減算を行う請求項1から4のいずれかに記載のネットワーク望遠鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、天体望遠鏡を備えた天体観測設備に関し、より詳細にはネットワークを介して望遠鏡を操作するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータからの観測命令に従って架台を駆動して観測対象を捕捉する天体望遠鏡を備えるとともに、観測対象を撮像する手段を備えた天体観測設備に対し、ネットワークを介して接続される複数のクライアントコンピュータからの観測要求及び撮影要求を受け付けるネットワーク望遠鏡システムが公知である(特許文献1)。
【0003】
前記のネットワークを利用した天体観測設備では、利用者を制限する場合に、利用者固有の認証コード、例えば利用者を特定するIDとパスワードなどを設定することが広く行われている。さらに、特定の人間が長時間天体観測設備を占有しないようにするために、一度の接続に対して時間制限を行うことでこのような問題の発生を回避していた。
【0004】
【特許文献1】特開2002-23064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、天体観測においては一つの観測に時間を要するものや、その変化を追う必要から時間をかけなければならないものなどがあり、時間制限によって一律に観測時間を制限されてしまうと、観測が中断されて必要な観測を行えない場合があった。
【0006】
本願発明は、前記の問題に鑑みて発明されたものであり、時間制限によらず、複数の利用者ができるだけ公平に天体観測設備を利用できるようにしたネットワーク望遠鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明のネットワーク望遠鏡システムは、コンピュータからの観測命令に従って架台を駆動して観測対象を捕捉する天体望遠鏡を備えるとともに、観測対象を撮像する手段を備えた天体観測設備に対し、ネットワークを介して接続される複数のクライアントコンピュータからの観測要求及び撮影要求を受け付けるネットワーク望遠鏡システムにおいて、利用を希望する者に対して認証コードおよび閾値以上となるクレジット値を予め付与して管理サーバに記録しておき、利用者が天体観測設備を使用するたびに、管理サーバが認証コードの入力により利用資格を持つ者であることを確認し、さらに利用中は一定の条件に基づいてクレジット値を減じて管理サーバの記録を更新し、クレジット値が閾値以下であった場合には天体観測設備の利用を認めないようにすることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は前記のネットワーク望遠鏡システムにおいて、認証コードを無効とすることにより天体観測設備の利用を認めないようにすることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は前記のネットワーク望遠鏡システムにおいて、一定の時間が経過するまでクレジットの減算を開始しないようにすることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は前記のネットワーク望遠鏡システムにおいて、撮像装置による撮像回数に応じてクレジットの減算を行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は前記のネットワーク望遠鏡システムにおいて、望遠鏡架台による観測対象の捕捉回数に応じてクレジットの減算を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、時間制限によって一律に観測時間を制限しないので、特定の利用者にとっては、まとまった観測時間が確保でき、観測による一定の成果を得ることができる。一方で、特定の利用者による長時間あるいは長期間の天体観測設備の占有が制限されているため、他の利用者も公平に天体観測設備を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明のネットワーク望遠鏡システムのブロック図。
図2】同上、管理サーバの認証のフロー図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明のネットワーク望遠鏡システムは利用に際して、前もって発行される利用者固有の認証コードと共に、閾値を超えるクレジット値を利用者に与え、同時に天体観測設備の管理サーバに記録する。利用者が天体観測設備と接続するために認証コードを入力すると、管理サーバは認証コードが正しく、かつクレジット値が閾値より大きい場合のみ天体観測設備との接続を許可する。
【0015】
許可された利用者が設備の利用を開始すると、クレジット値はあらかじめ定めた条件に基づいて減算を開始する。なお、接続時間の制限と本願発明による方法を併用する場合には、接続時間の制限を越えてからクレジットの減算を開始するようにしてもよい。
【0016】
減算の条件は基本的には利用時間であり、例えば10分毎に1クレジットが減算され管理サーバの値も更新される。もちろん、複数の天体観測設備がある場合には、接続する設備によって異なる時間単位で減算を行ってもよい。また、クレジットの減算条件は、天体画像の撮影枚数であったり、観測対象となる天体の導入回数であってもよい。
【0017】
クレジットの減算によって管理サーバに記録された値が閾値以下になったら、その旨を接続している利用者に提示し一定時間後に接続は解除される。利用者が再び接続を試みても、管理サーバがその利用者のクレジット値が閾値以下である場合には接続を拒否するから、利用者はクレジット値が更新されるまで天体観測設備に接続することができない。
【0018】
図1は、本願発明の最も単純なシステムのブロック図である。図中符号1~3はネットワーク望遠鏡の利用者のクライアントコンピュータ、図中符号4はクライアントコンピュータ1~3に接続される管理サーバ、図中符号5は制御装置、図中符号6は天体望遠鏡、図中符号7は撮像装置、図中符号8は望遠鏡の架台である。
【0019】
このブロック図ではクライアントコンピュータ1~3と管理サーバ4はネットワークNを介して接続されているが、制御装置5をネットワークに配して接続する構成であってもよいことはもちろんである。また、ネットワークNはインターネットに限らず、施設内のネットワークであってもよいことももちろんである。
【0020】
制御装置5は、望遠鏡6、撮像装置7、望遠鏡架台8を統括して制御する。なお、管理サーバ4に接続される天体観測設備の数が少数である場合には、設備全体のコストを削減するなどの目的のために、望遠鏡6、撮像装置7、望遠鏡架台8のいずれか、あるいは全てを直接管理サーバ4に接続する構成であってもよい。すべてが接続された場合には、管理サーバ4と制御装置5は共用されたものとなる。
【0021】
制御装置5は、管理サーバ4を経由して送られるクライアントコンピュータ1~3による利用者からの指示を解析し、望遠鏡6、撮像装置7、望遠鏡架台8へ制御命令を発行する。天体観測設備の数が多い場合には、各設備ごとに設備内容が異なる場合があるから、設備ごとの違いを吸収するために制御装置5を配置し、管理サーバ4の負荷を分散させる構成とするのがよい。制御装置5からの制御命令を受けた望遠鏡6、撮像装置7、望遠鏡架台8は、その命令を実行し必要に応じて制御装置5へ応答を返す。
【0022】
制御装置5は、受け取った応答を必要に応じて管理サーバ4に送り、管理サーバ4は、必要に応じて受け取った応答に適切な処理を行ったうえで利用者に返す。利用者に返す応答の主なものとしては、望遠鏡の指向方向(赤経、赤緯など) 、撮像装置の状態、撮影画像などがあげられる。
【0023】
図2は、管理サーバ4の認証フロー図である。通常の認証フローでは、認証コードのみで接続が許可されるが、本願発明では、認証コード確認後、さらにクレジット残量による接続判定が行われる。
【0024】
利用者は、制御装置5、望遠鏡6、撮像装置7、望遠鏡架台8 で構成される天体観測設備を使用するために、設備管理者に対しての利用許可を求める。これは、一時的な利用に対する許可であっても、定期継続的な許可であってもかまわないが、ここでは、一時的な利用を包括する期的継続的な許可として実施例を示す。
【0025】
設備管理者は、利用許可に当たって、利用者の認証コードとクレジット値を定め、利用者へ提示するとともに管理サーバに記録する。もちろん、この手続きは、管理サーバのプログラムによって、人が介さず自動で行ってもよい。また、クレジット値についても、利用者ごとに異なる値であってもよい。
【0026】
天体観測設備の実際の利用にあたっては、利用者が管理サーバ4に対して、天体観測設備への接続を要求すると、管理サーバ4は利用者に対して認証コードの入力を求める(手順S1)。利用者が認証コードを入力すると、管理サーバは認証コードを確認し(手順S1~S6)、適切な認証コードであれば、認証コードに紐づけられたクレジット値を調べ(手順S7)、閾値以上であれば接続を許可する(手順S8~S9、S10)。ここではクレジット値が0であった場合には、天体観測設備の利用が許可されない場合が示されているが、利用者のクレジット値は1以上であるため天体観測設備への接続が認められることになる。
【0027】
天体観測設備への接続が行われると、管理サーバはクレジット値の減算を開始する。ここでは、1 時間で1クレジットが減算される例を示す。典型例のため、接続時間の端数を考慮していないが、例えば6分単位で接続時間を扱い、0. 1クレジット毎に減算を行ってもよいのは当然である。
【0028】
利用者は、制御装置を経由して、望遠鏡架台に対する指示や撮像装置に対する指示を出す。なお、天体観測設備内の接続形態によっては望遠鏡架台や撮像装置に制御装置を経由せず指示を出すこともできる。
【0029】
接続開始から1時間が過ぎると、管理サーバ4は、利用者1 のクレジット値を減算する。クレジット値は0となるので、利用者は、これ以後の接続が認められなくなり、管理サーバ4は利用者と天体観測設備の接続を切断する。
【0030】
もちろん、例えば接続が切れる30分前からカウントダウンを開始し、それを利用者に提示してもよい。
【0031】
例えば、利用者に1月当たり10クレジットを付与し、管理サーバが1時間ごとにクレジットの減算を行う場合、利用者は10時間だけ天体観測設備への接続が認められる。
【0032】
一度の接続時間に制限をつけない場合、日本の冬であれば最大で10時間程度の観測が行えるから、ある利用者がそれだけ使い続ければ1晩でクレジットは失われてしまい、その月は天体観測設備への接続ができなくなる。一方で、他の利用者は、その月の残りである29晩程度について天体観測設備が利用できる。
【0033】
また、ある利用者が日々1時間使用するような場合では10日でクレジットは失われ、以後の接続ができなくなるが、他の利用者は、前記利用者が天体観測設備を使用した同じ日であっても9時間程度、さらに前記利用者が認証が許可されない残る19晩についても、天体観測設備の使用が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1~3 クライアントコンピュータ(利用者)
4 管理サーバ
5 制御装置
6 望遠鏡
7 撮像装置
8 望遠鏡架台
図1
図2