(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024011
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】振動試験機、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20230209BHJP
G01M 7/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G01M7/02 B
G01M7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130043
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】榎本 勇介
(72)【発明者】
【氏名】法輪 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹端 純一
(72)【発明者】
【氏名】田中 真司
(72)【発明者】
【氏名】毛木 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】森永 洋史
(57)【要約】
【課題】 制御分解能に関わらずステージを静止させることができる振動試験機を提供する。
【解決手段】 振動試験機は、レールと、レールに対して摺動可能に取り付けられるステージと、ステージに取り付けられ、レールを把持可能なクランパと、ステージをレールに沿って駆動させるアクチュエータと、クランパ及びアクチュエータを制御する制御器と、を備え、制御器は、ステージをレールに沿って移動させる移動モードと、ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、保持モードにおいては、クランパがレールを把持するように制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールに対して摺動可能に取り付けられるステージと、
前記ステージに取り付けられ、前記レールを把持可能なクランパと、
前記ステージを前記レールに沿って駆動させるアクチュエータと、
前記クランパ及び前記アクチュエータを制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ステージを前記レールに沿って移動させる移動モードと、前記ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、前記保持モードにおいては、前記クランパが前記レールを把持するように制御を行う、振動試験機。
【請求項2】
前記制御器は、前記保持モードから前記移動モードに移行する場合に、前記アクチュエータに対して前記ステージを一定の位置に一定時間保持することを指示する第1信号を送信するとともに、前記クランパに対して前記一定時間内において前記レールの把持の解除を指示する
ことを特徴とする請求項1記載の振動試験機。
【請求項3】
前記制御器は、前記移動モードから保持モードに移行する場合に、前記アクチュエータに対して前記ステージを一定の位置に一定時間保持することを指示する第2信号を送信するとともに、前記クランパに対して前記一定時間内において前記レールの把持の開始を指示する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動試験機。
【請求項4】
前記クランパは、動力の非供給時に前記レールを把持し、動力の供給時に前記レールを把持せず、
前記制御器は、前記レールの把持の解除指示として、前記クランパへの動力の供給を開始する
ことを特徴とする請求項2に記載の振動試験機。
【請求項5】
前記クランパは、動力の非供給時に前記レールを把持し、動力の供給時に前記レールを把持せず、
前記制御器は、前記レールの把持の開始指示として、前記クランパへの動力の供給を断つ
ことを特徴とする請求項3に記載の振動試験機。
【請求項6】
レールと、前記レールに対して摺動可能に取り付けられるステージと、前記ステージに取り付けられ、前記レールを把持可能なクランパと、前記ステージを前記レールに沿って駆動させるアクチュエータと、前記クランパ及び前記アクチュエータを制御する制御器と、を備える振動試験機の前記制御器による制御方法であって、
前記制御器は、前記ステージを前記レールに沿って移動させる移動モードと、前記ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、
前記保持モードにおいて、前記クランパが前記レールを把持するように制御を行う把持ステップと、
前記移動モードにおいて、前記クランパが前記レールの把持の解除を維持する制御を行う解除ステップとを含む制御方法。
【請求項7】
レールと、前記レールに対して摺動可能に取り付けられたステージと、前記ステージに取り付けられ、前記レールを把持可能なクランパと、前記ステージを前記レールに沿って駆動させるアクチュエータと、前記クランパ及び前記アクチュエータを制御する制御器と、を備える振動試験機の前記制御器のコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記制御器は、前記ステージを前記レールに沿って移動させる移動モードと、前記ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、
前記制御プログラムは、前記コンピュータに、
前記保持モードにおいて、前記クランパが前記レールを把持するように制御を行う把持機能と、
前記移動モードにおいて、前記クランパが前記レールの把持の解除を維持する制御を行う解除機能とを実現させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動試験機及び振動試験方法に関し、特に振動試験に供する被試験物を静止保持する振動試験機と、当該振動試験機における制御方法、当該振動試験機のプロセッサにより実行される制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被試験物に振動を付与する振動試験機の一例として、例えば、特許文献1には、複数の加振装置がネットワークで接続された加振システムにおいて、油圧加振機に対して、指令信号を出力して振動台を制御する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、振動試験機においては、振動台(ステージともいう)を加振するだけでなく、静止させる場合もある。そのような場合において、特許文献1においては、動力の制御、即ち、油圧加振機に対する指令信号を定数とすることで、振動台を静止させる。しかし、特許文献1においては、制御分解能内において微小に動くことがあり、正確な評価を行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、制御分解能に関わらずステージを静止させることができる振動試験機と、同振動試験機による制御方法並びに同振動試験機のプロセッサにより実行される制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る振動試験機は、レールと、レールに対して摺動可能に取り付けられるステージと、ステージに取り付けられ、レールを把持可能なクランパと、ステージをレールに沿って駆動させるアクチュエータと、クランパ及びアクチュエータを制御する制御器と、を備え、制御器は、ステージをレールに沿って移動させる移動モードと、ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、保持モードにおいては、クランパがレールを把持するように制御を行う。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、レールと、レールに対して摺動可能に取り付けられるステージと、ステージに取り付けられ、レールを把持可能なクランパと、ステージをレールに沿って駆動させるアクチュエータと、クランパ及びアクチュエータを制御する制御器と、を備える振動試験機の制御器による制御方法であって、制御器は、ステージをレールに沿って移動させる移動モードと、ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、保持モードにおいて、クランパがレールを把持するように制御を行う把持ステップと、移動モードにおいて、クランパがレールの把持の解除を維持する制御を行う解除ステップとを含む。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御プログラムは、レールと、レールに対して摺動可能に取り付けられたステージと、ステージに取り付けられ、レールを把持可能なクランパと、ステージをレールに沿って駆動させるアクチュエータと、クランパ及びアクチュエータを制御する制御器と、を備える振動試験機の制御器のコンピュータに実行させる制御プログラムであって、制御器は、ステージをレールに沿って移動させる移動モードと、ステージを静止保持する保持モードとのいずれかのモードで動作し、制御プログラムは、コンピュータに、保持モードにおいて、クランパがレールを把持するように制御を行う把持機能と、移動モードにおいて、クランパがレールの把持の解除を維持する制御を行う解除機能とを実現させる。
【0009】
また、上記振動試験機において、制御器は、保持モードから移動モードに移行する場合に、アクチュエータに対してステージを一定の位置に一定時間保持することを指示する第1信号を送信するとともに、クランパに対して一定時間内においてレールの把持の解除を指示することとしてもよい。
【0010】
また、上記振動試験機において、制御器は、移動モードから保持モードに移行する場合に、アクチュエータに対してステージを一定の位置に一定時間保持することを指示する第2信号を送信するとともに、クランパに対して一定時間内においてレールの把持の開始を指示することとしてもよい。
【0011】
また、上記振動試験機において、クランパは、動力の非供給時にレールを把持し、動力の供給時にレールを把持せず、制御器は、レールの把持の解除指示として、クランパへの動力の供給を開始することとしてもよい。
【0012】
上記振動試験機において、クランパは、動力の非供給時にレールを把持し、動力の供給時にレールを把持せず、制御器は、レールの把持の開始指示として、クランパへの動力の供給を断つこととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の振動試験機によると、保持モードにおいては、クランパがレールを把持するように制御を行うので、アクチュエータの制御分解能によらず、レールを把持してステージを静止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(a)振動試験機の模式的正面図である。(b)振動試験機の模式的側面図である。
【
図3】(a)エアクランパの内部構造例を示す図であって、解除状態を示す概念図である。(b)エアクランパの内部構造例を示す図であって、把持状態を示す概念図である。
【
図4】振動試験機の構成例を示すブロック図である。
【
図5】振動試験機の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】保持モードから移動モードへの移行時における制御器から出力される指示信号のタイミングチャートである。
【
図7】移動モードから保持モードへの移行時における制御器から出力される指示信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る振動試験機1について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
<実施形態>
実施形態に係る振動試験機1は、上下動により生じる振動を被試験物に対して付与し、被試験物の振動、衝撃への耐性を確認するための試験機である。
【0017】
<構成>
図1は、振動試験機1の外観の一例を示す斜視図である。また、
図2(a)は振動試験機1の模式的正面図である。また、
図2(b)は、振動試験機1の模式的側面図であって、振動試験機1の左側面図である。
【0018】
図1、
図2(a)、
図2(b)に示すように、振動試験機1は、台部11と、ステージ12と、レール13a、13b(分けて説明する必要がない場合には、単にレール13と記載することもある)と、アクチュエータ14a、14b(分けて説明する必要がない場合には、単にアクチュエータ14と記載することもある)と、エアクランパ15a、15b(分けて説明する必要がない場合には、単にエアクランパ15と記載することもある)と、を備える。
【0019】
図1、
図2(a)、
図2(b)に示すように、振動試験機1は、床面等に固定される台部11に対して、2本のレール13a、13bが立設し、レール13a、13bに対して、アクチュエータ14a、14bが摺動可能に取り付けられ、そして、アクチュエータ14a、14bに接続されたステージ12が、レール13a、13bに対して摺動可能に構成されている。
【0020】
アクチュエータ14は、
図1、
図2(a)、(b)には、図示しない制御器により制御され、ステージ12が所望の動作をするように駆動する。
【0021】
ステージ12には、エアクランパ15a、15bが接続されている。エアクランパ15aは、15bは、コの字型(C字型)の部材であり、それぞれ、レール13a、13bを挟み込むように設けられている。エアクランパ15a、15bは、非通電時には、レール13a、13bをクランプする。また、エアクランパ15a、15bは、通電時には、それぞれレール13a、13bのクランプを解除する。
【0022】
なお、ステージ12は、平板状の部材であり、図示においては、台部11に対して垂直となるように構成されているが、ステージ12は、アクチュエータ14とエアクランパ15と接続されていれば、台部11に対して平行となるように構成されていてもよい。
【0023】
振動試験機1においては、ステージ12に対して載置される供試体の試験を行う。
【0024】
図3(a)、
図3(b)は、エアクランパの内部構造例を示す図である。
【0025】
図3(a)は、エアクランパ15が、クランプ対象であるレールをクランプ(把持)していない状態を示し、
図3(b)は、エアクランパ15が、クランプ対象であるレールをクランプしている状態を示している。
【0026】
図3(a)に示すように、エアクランパ15は、その筐体内に、バネ31と、ピストン部32と、スライド部33と、接触部34と、エア供給部35と、を備える。
【0027】
バネ31は、弾性部材であり、一端がエアクランパ15の内壁に接触し、他端がピストン部32に接触する。そして、ピストン部32を付勢する。
【0028】
ピストン部32は、その外縁がエアクランパ15の内壁に接触し、バネ31により付勢される方向に、エアクランパ15内部を摺動する。エアクランパ15内部には、エアクランパ15に対して電力が供給されている間は、エア供給部35から、エアクランパ15の筐体内部に、ガスが供給される。これにより、エアクランパ15内部であってピストン部32により分けられるエア供給部35が存在する側のエアクランパ15内部には、ガスが充填される。その結果、ピストン部32は、ガスにより付勢される。なお、ガス充填に際して、制御器1により、図示しない圧縮空気のコンプレッサと電磁弁の制御によりガスは供給される。
【0029】
スライド部33は、ピストン部32に接続されており、ピストン部32の摺動に伴って、摺動する。
【0030】
スライド部33は、変換部36に接触する。
【0031】
変換部36は、ピストン部32の摺動方向、即ち、
図3(a)、(b)の図面上下方向の運動を、図面左右方向、即ち、エアクランパ15によるレール13のクランプ方向への運動に変換する。図示の実施形態では、変換部36は「ころ」となっており、傾斜部分の設けられたスライド部33の降下に伴い、変換部36は押されて接触部34を圧迫するようになっている。変換部36は、スライド部33に向けて付勢されるように構成されており、接触部34に接続されている。
【0032】
接触部34は、エアクランパ15に設けられた変換部36と図面左右方向、即ち、レール13の延伸方向に対して垂直方向に移動可能に構成されている。図示はしていないが、エアクランパ15は、図面左右で対象となる構造を有している。即ち、図面の左右から、即ち、レール13の左右から接触部34によって把持される状態と把持されていない状態とを実現することができる。
【0033】
即ち、エア供給部35から、エアクランパ15の筐体内部にガスが充填されている状態にあっては、ピストン部32がバネ31の方向に向けて付勢される。その結果、ピストン部32の付勢(摺動)に伴って、スライド部33もバネ31の方向に向けて移動する。そうすると、スライド部33に対して付勢される変換部36は、図面右方向に移動し、変換部36に接続する接触部34も共に移動する。その結果、接触部34は、レール13から離隔することになり、エアクランパ15がレール13を把持している状態を解除、即ち、クランプを解除する(
図3(a)参照)。
【0034】
一方、エアクランパ15に対して電力が供給されていない場合には、エア供給部35からガスが供給されない。その結果、エアクランパ15内部から、エア供給部35等からガスが排出されていく。その結果、バネ31による付勢力がガスの充填による付勢を上回ったときに、スライド部33が、図面下方に向けて付勢される。その結果、変換部36は、図面左方向に向けて付勢されるのに伴って、接触部34も図面左方向に移動する。その結果、接触部34は、レール13に接触し、反対側の接触部34とともに、レール13をクランプする(
図3(b)参照)。
【0035】
なお、本実施形態においては、通電時にレール13をクランプせず、非通電時にレール13をクランプするものであれば、クランパはエアクランパに限定するものではない。また、アクチュエータ14もレール13に沿ってステージ12を移動させることができるのであれば、リニアモータに限定するものではなく、その他の駆動装置を用いてもよい。
【0036】
図4は、振動試験機1の構成例を示すブロック図である。
【0037】
図4に示すように、振動試験機1は、アクチュエータ14と、エアクランパ15と、制御器130と、記憶部140と、を備える。また、振動試験機1は、通信部150を備えてもよい。
【0038】
アクチュエータ14は、制御器130により制御され、振動試験機1のレール13に対して、摺動可能に取り付けられているステージ12の位置制御を行う。一例として、レール13は、リニアレールであり、アクチュエータ14はリニアモータである。アクチュエータ14は、ステージ12が、制御器130により指定された位置に移動したり、指定された位置に制止したりするよう、駆動する。
【0039】
エアクランパ15は、上述の通り、通電時にエア供給部35からガスが供給されてレール13のクランプを解除し、被通電時にレール13のクランプするクランパである。
【0040】
制御器130は、振動試験機1を制御するプロセッサである。制御器130は、記憶部140に記憶されている制御プログラムにしたがって、振動試験機1の駆動を制御する。制御器130として、例えば、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)等が採用される。
【0041】
記憶部140は、制御器130に内包されていてもよい。記憶部140は、振動試験機1を動作させるために必要とする各種プログラム、データを記憶する機能を有する。記憶部140は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリ、ROM、RAMなどにより実現されてよい。
【0042】
通信部150は、外部の装置と通信可能な通信インターフェースである。通信部150は、振動試験機1の各部に関する情報を外部の装置に送信してもよい。また、通信部150は、外部の装置から、振動試験機1に係る制御に関する情報を受信して、制御器130に伝達してもよい。制御器130は、外部の装置からの制御に関する情報にしたがって振動試験機1を制御してもよい。
【0043】
振動試験機1は、図示していないが外部の商用電源の供給を受けて駆動してもよいし、内部電源により駆動してもよい。
【0044】
以上が、振動試験機1の構成例である。
【0045】
<動作>
図5は、振動試験機1の動作例を示すフローチャートである。
図5は、振動試験機1において、振動試験を行う際の動作例を示すフローチャートであり、エアクランパ15がレール13をクランプしている状態の保持モードから、クランプを解除した状態の移動モードに移行して、振動試験を行い、移動モードから再び保持モードに戻って、振動試験を終了するまでの流れの示すフローチャートである。
【0046】
図5に示すように、振動試験機1の制御器130は、試験を開始すると、アクチュエータ14を起動し、ステージ12が同じ位置に位置するように駆動制御を行う(ステップS501)。その後に、制御器130は、エアクランパ15に通電し、エア供給部35からガスを供給し、レール13のクランプを解除する(ステップS502)。先にアクチュエータ14を駆動させて静止制御を行うようにすることで、エアクランパ15によるレール13のクランプを解除した際のステージ12の落下を防止することができる。
【0047】
エアクランパ15によるレール13のクランプを解除して移動モードに移行し、制御器130は、振動試験のためのアクチュエータ14の制御を実行する(ステップS503)。制御器130は、試験項目の動作を終了するまでアクチュエータ14の制御を継続する(ステップS504のNO)。
【0048】
一方で、試験項目の動作を終了した場合や、通信部150等を介してオペレータからの試験終了の指示を受け付けた場合などにおいては(ステップS504のYES)、制御器130は、アクチュエータ14に静止するように指示を出力する。
【0049】
そして、制御器130は、エアクランパ15に対する通電を停止すること(または、エア供給部35からのガスの供給を停止すること)で、エアクランパ15に、レール13をクランプ(把持)させる(ステップS505)。
【0050】
その後に、制御器130は、アクチュエータ14に対して停止指示を行い、制御信号をOFFし(ステップS506)、処理を終了する。
図5に示す制御処理を行うことで、振動試験機1は、安全に、即ち、ステージ12を落下させることなく、ステージ12を静止させている保持モードから、ステージ12を移動させる移動モードに移行させるとともに、移動モードから保持モードに戻すことができる。
【0051】
図6(a)は、
図5のステップS501~S503に示す処理をタイミングチャートで示した図であり、保持モードから移動モードへの移行における処理を示すタイミングチャートである。
【0052】
図6(a)は、上段から、試験開始、アクチュエータ14に対する制御信号、エアクランパに対する制御信号、モード変更のタイミングを示している。
図6(a)に示すように、時刻T0において試験を開始し、制御器130は、アクチュエータ14に対する制御信号をONする。ここでの制御信号は、ステージ12を静止状態に保つための制御信号であり、
図5のステップS501の処理に相当する。
【0053】
時刻T1において、制御器130は、エアクランパ15に通電し、レール13のクランプを解除する(
図5のステップS502の処理に相当)。そして、時刻T2において、制御器130は、(
図5のステップS503の処理に相当)。
【0054】
なお、時刻T1と時刻T0との間は、1sであり、時刻T2と時刻T1との間も、1sであるが、これは一例であり、1sに限定するものではない。時刻T1と時刻T0との間の時間は、アクチュエータ14が安定的にステージ12を静止させるのに要する時間であればよく、時刻T2と時刻T1との間の時間は、エアクランパ15に通電して充分クランプが解除されるに足る時間であれば、1sである必要はない。
【0055】
図6(b)は、
図5のステップS504~S506に示す処理をタイミングチャートで示した図であり、移動モードから保持モードへの移行における処理を示すタイミングチャートである。
【0056】
時刻T3において、試験が終了したとする。即ち、時刻T3において、制御器130からアクチュエータ14に対する振動試験用の制御信号の出力を停止し、静止するようにする(
図5のステップS504のYESの処理に相当)。
【0057】
ステージ12が静止すると、時刻T4において、制御器130は、エアクランパ15に対する通電を停止する(
図5のステップS505の処理に相当)。そして、エアクランパ15がレール13をクランプしたころを見計らって時刻T5において、アクチュエータ14に対する制御信号の出力を停止し、移動モードから保持モードにモード変更する(
図5のステップS506の処理に相当)。
【0058】
なお、時刻T4と時刻T3との間は、1sであり、時刻T5と時刻T4との間は、2であるが、これは一例であり、1s及び2sに限定するものではない。時刻T4と時刻T3との間の時間は、アクチュエータ14がステージ12を静止状態にするために要する時間であり、時刻T5と時刻T4との間の時間は、エアクランパ15がレール13をクランプするのに必要とする時間である。
【0059】
最後に、
図7は、振動試験機1を駆動中に、停電等の緊急事態によって商用電源からの電力の供給が途絶えたり、内部電源が切れたりした場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図7は、このような突発的な事態においても、振動試験機1がステージ12を落下させないように把持することができることを説明するための図である。
【0060】
図7に示すように、時刻T6において、停電等の異常が発生したとする。すると、エアクランパ15に対して電力が供給されないので、エアクランパ15は自動的にレール13のクランプを開始する。
【0061】
振動試験機1は、非常用電源等を備えている場合には、アクチュエータ14に静止指示を行い、時刻T7まで待って、アクチュエータ14の制御をOFFする。時刻T7と時刻T6との間は、3sであるが、これは、3sに限定するものではない。時刻T7と時刻T6との間の時間は、エアクランパ15がレール13を十分にクランプするのに要する時間である。
【0062】
上記実施形態に示したように、実施形態に係る振動試験機1は、エアクランパ15によるレール13をクランプすることで、アクチュエータ14の制御分解能によらず、ステージ12の静止状態を維持することができる。したがって、アクチュエータ14による静止制御を実行するよりも、ステージ12を適切に停止(分解制御能による微小な動きが発生しない)させることができ、振動試験の評価を正確に行なうことができる。また、停電時等の緊急時においても、非通電時にレール13をクランプするエアクランパ15によって、ステージ12の過度な落下を防止することができる。
【0063】
なお、上記実施形態の制御プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。記憶媒体は、「一時的でない有形の媒体」に、制御プログラムを記憶可能である。記憶媒体は、HDDやSSDなどの任意の適切な記憶媒体、またはこれらの2つ以上の適切な組合せを含むことができる。記憶媒体は、揮発性、不揮発性、または揮発性と不揮発性の組合せでよい。なお、記憶媒体はこれらの例に限られず、制御プログラムを記憶可能であれば、どのようなデバイスまたは媒体であってもよい。
【0064】
なお、振動試験機1は、例えば、記憶媒体に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムを実行することによって、各実施形態に示す複数の機能部の機能を実現することができる。また、当該制御プログラムは、任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して、振動試験機1に提供されてもよい。振動試験機1は、例えば、インターネット等を介してダウンロードした制御プログラムを実行することにより、各実施形態に示す複数の機能部の機能を実現する。
【0065】
なお、当該制御プログラムは、例えば、C++、ActionScript、JavaScript(登録商標)、Objective―C、Java(登録商標)などを用いて実装できる。
【0066】
振動試験機1の各機能部は、上記実施形態に示した機能を実現する1または複数の回路によって実現されてもよく、1の回路により複数の機能部の機能が実現されることとしてもよい。
【0067】
また、本開示の実施形態を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、各実施形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 振動試験機
11 台部
12 ステージ
13(13a、13b) レール
14(14a、14b) アクチュエータ
15(15a、15b) エアクランパ
31 バネ
32 ピストン部
33 スライド部
34 接触部
35 エア供給部