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特開2023-24023騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024023
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20230209BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230209BHJP
【FI】
G01H3/00 A
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130060
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】眞木 幹晴
(72)【発明者】
【氏名】夏目 直和
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】 寄与の度合をより正確に解析するために必要となる正確な観測点の総音圧を推定できる騒音源寄与解析装置等を提供する。
【解決手段】
騒音源寄与解析装置は、騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得部と、伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得部と、伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出部と、高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出部と、低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出部と、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における前記総音圧を算出する総音圧算出部と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析装置において、
前記複数の騒音源の各々の近傍で検出された前記騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得部と、
前記複数の騒音源の各々から前記観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を前記複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得部と、
前記伝達関数取得部により取得された前記複数の騒音源ごとの前記伝達関数に、当該伝達関数に対応する前記騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出部と、
前記観測点音圧算出部により算出された前記観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出部と、
前記観測点音圧算出部により算出された前記観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出部と、
前記複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と前記複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、前記観測点における前記総音圧を算出する総音圧算出部と、
を備える騒音源寄与解析装置。
【請求項2】
算出された前記総音圧に対して、前記複数の騒音源それぞれの寄与の度合を算出する寄与度算出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の騒音源寄与解析装置。
【請求項3】
前記高周波帯域と前記低周波帯域との境界となるカットオフ周波数は、前記騒音源と前記観測点との間の距離に基づいて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の騒音源寄与解析装置。
【請求項4】
前記カットオフ周波数は、前記騒音源と前記観測点との間の距離を1波長とする周波数であることを特徴とする請求項3に記載の騒音源寄与解析装置。
【請求項5】
前記高周波帯域と前記低周波帯域との境界となるカットオフ周波数は、前記騒音源が存在する面の寸法に基づいて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の騒音源寄与解析装置。
【請求項6】
複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析方法において、
騒音源寄与解析装置に用いられるコンピュータに、
前記複数の騒音源の各々の近傍で検出された前記騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得ステップと、
前記複数の騒音源の各々から前記観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を前記複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得ステップと、
前記伝達関数取得ステップにおいて取得された前記複数の騒音源ごとの前記伝達関数に、当該伝達関数に対応する前記騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出ステップと、
前記観測点音圧算出ステップにおいて算出された前記観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出ステップと、
前記観測点音圧算出ステップにおいて算出された前記観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出ステップと、
前記複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と前記複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、前記観測点における前記総音圧を算出する総音圧算出ステップと、
を実行させる騒音源寄与解析方法。
【請求項7】
複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析プログラムにおいて、
騒音源寄与解析装置に用いられるコンピュータに、
前記複数の騒音源の各々の近傍で検出された前記騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得機能と、
前記複数の騒音源の各々から前記観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を前記複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得機能と、
前記伝達関数取得機能により取得された前記複数の騒音源ごとの前記伝達関数に、当該伝達関数に対応する前記騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出機能と、
前記観測点音圧算出機能により算出された前記観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出機能と、
前記観測点音圧算出機能により算出された前記観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出機能と、
前記複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と前記複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、前記観測点における前記総音圧を算出する総音圧算出機能と、
を発揮させる騒音源寄与解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラムに関し、特に騒音対策を講ずるべき場所での騒音の音圧に、複数の騒音源の音圧がそれぞれどのように寄与しているかを解析する騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
騒音対策を行う際に、騒音源が複数あるなかで観測点での騒音の音圧に最も寄与している騒音源に対して対策を講じることは有効である。観測点の騒音の音圧に対する、騒音源の音圧の寄与の度合を解析する装置としては、従来、騒音源寄与解析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の騒音源寄与解析装置において、観測点での騒音の音圧は、複数の騒音源の観測点における音圧エネルギーの加算により算出され、この算出された観測点での騒音の音圧に基づいて観測点における複数の騒音源の寄与の度合を解析していた。
【0004】
上記した方法で算出された観測点での騒音の音圧は、観測点で実際に測定した音圧に対して、高周波領域では概ね一致しているが低周波領域では乖離が大きいことが分かっている。これにより従来の騒音源寄与解析装置では、観測点における複数の騒音源の寄与の度合を正確に解析することが困難になる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-26722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本開示は、観測点における複数の騒音源の寄与の度合をより正確に解析するために必要となる正確な観測点の総音圧を推定できる騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の態様に係る騒音源寄与解析装置は、複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析装置において、複数の騒音源の各々の近傍で検出された騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得部と、複数の騒音源の各々から観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得部と、伝達関数取得部により取得された複数の騒音源ごとの伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出部と、観測点音圧算出部により算出された観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出部と、観測点音圧算出部により算出された観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出部と、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における総音圧を算出する総音圧算出部と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る振動源寄与解析装置において、算出された総音圧に対して、複数の騒音源それぞれの寄与の度合を算出する寄与度算出部と、をさらに備えることとしてもよい。
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る振動源寄与解析装置において、高周波帯域と低周波帯域との境界となるカットオフ周波数は、騒音源と観測点との間の距離に基づいて設定されることとしてもよい。
【0010】
第4の態様は、第3の態様に係る振動源寄与解析装置において、カットオフ周波数は、騒音源と観測点との間の距離を1波長とする周波数であることとしてもよい。
【0011】
第5の態様は、第1または第2の態様に係る振動源寄与解析装置において、カットオフ周波数は、騒音源が存在する面の寸法に基づいて設定されることとしてもよい。
【0012】
第6の態様に係る騒音源寄与解析方法は、複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析方法において、騒音源寄与解析装置に用いられるコンピュータに、複数の騒音源の各々の近傍で検出された騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得ステップと、複数の騒音源の各々から観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得ステップと、伝達関数取得ステップにおいて取得された複数の騒音源ごとの伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出ステップと、観測点音圧算出ステップにおいて算出された観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出ステップと、観測点音圧算出ステップにおいて算出された観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出ステップと、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における総音圧を算出する総音圧算出ステップと、を実行させる。
【0013】
第7の態様に係る騒音源寄与解析プログラムにおいて、複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析する騒音源寄与解析プログラムにおいて、騒音源寄与解析装置に用いられるコンピュータに、複数の騒音源の各々の近傍で検出された騒音源音圧を取得する騒音源音圧取得機能と、複数の騒音源の各々から観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する伝達関数取得機能と、伝達関数取得機能により取得された複数の騒音源ごとの伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する観測点音圧算出機能と、観測点音圧算出機能により算出された観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する高周波帯域抽出機能と、観測点音圧算出機能により算出された観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する低周波帯域抽出機能と、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における総音圧を算出する総音圧算出機能と、を発揮させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、観測点における複数の騒音源の寄与の度合をより正確に解析するために必要となる正確な観測点の総音圧を推定できる騒音源寄与解析装置、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る自動車の内部における騒音を説明するための図である。
図2】本実施形態に係る耳位置(観測点)での騒音について説明する図である。
図3】本実施形態に係る耳位置(観測点)での騒音について説明する図である。
図4】本実施形態に係る騒音の周波数と位相差との関係を説明する図である。
図5】本実施形態に係る位相差による音波干渉の特徴を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る耳位置(観測点)における、騒音の音圧の実測値と従来手法での計算値との乖離を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る騒音源寄与解析装置の計算値の一例を説明するための図である。
図8】本実施形態に係る騒音源寄与解析装置の機械的構成の一例を説明するためのブロック図である。
図9】本実施形態に係る騒音源寄与解析装置の機能的構成の一例を説明するためのブロック図である。
図10】本実施形態に係る騒音源寄与解析装置の内部の処理の流れについて説明するための図である。
図11】本実施形態に係る耳位置(観測点)における正確な総音圧が必要な理由を説明するための図である。
図12】本実施形態に係る耳位置(観測点)における正確な総音圧が必要な理由を説明するための図である。
図13】本実施形態に係る騒音源寄与解析プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図12を参照して本実施形態に係る騒音源寄与解析装置50について説明する。
騒音源寄与解析装置50は、複数の騒音源が寄与する観測点における総音圧に対し、当該騒音源ごとの騒音源音圧の寄与の度合を解析するものである。以下、自動車10の居住空間の内部に向かって放射される騒音を例にして説明する。なお、自動車10に限定されるものではなく、鉄道、船舶、飛行機などの自動車以外の乗り物、若しくはビル、家などの建物などの内部に侵入する騒音に対しても本実施形態に係る騒音源寄与解析装置50は適用可能である。
【0017】
図1を参照して、自動車10の居住空間での騒音について説明する。図1は本実施形態に係る自動車10の内部における騒音を説明するための図である。
自動車10の居住空間の内部で感じる騒音には、エンジン音、風きり音、ロードノイズ、及びこもり音などがある。これらの騒音は、自動車10の居住空間を構成する壁面(パネル12)が振動することで騒音源になり、自動車10の居住空間内に向けて放射されて搭乗者の耳に騒音として届く。
【0018】
エンジン音は、自動車10のエンジンルームに設置されたエンジン14を起源とする振動・騒音が固体伝搬21及び空気伝搬22によりパネル12に伝わる。風きり音は、自動車10のボディー11の外表面に沿って流れる空気20がパネル12を振動させることによって生じる。ロードノイズは、自動車10の走行中の路面とタイヤ13との間に生じる振動・騒音が固体伝搬21及び空気伝搬22によりパネル12に伝わる。こもり音は、プロペラシャフト16に起因する振動・騒音が固体伝搬21及び空気伝搬22によりパネル12に伝わる。
【0019】
パネル12に複数の騒音源が発生した場合、搭乗者の耳位置(観測点)で聞こえる騒音は複数の騒音源から放射される騒音が重ね合わさったものである。
自動車10の居住空間内の騒音対策の手段として、搭乗者の耳位置(観測点)で聞こえる騒音に大きく影響するパネル12の振動を特定し、当該振動を抑えることが有効である。そこで効果的に耳位置(観測点)で聞こえる騒音に大きく影響するパネル12を特定・対策するために、各パネル12の振動が耳位置(観測点)の騒音にどの程度の割合で寄与しているかを算出する騒音源寄与解析が実施される。
【0020】
次に、図2乃至図7を参照して、異なる騒音源から放射される2つの騒音の耳位置(観測点)24での重ね合わせについて説明する。高周波帯域の騒音の重ね合わせについて図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る耳位置(観測点)での騒音について説明する図である。
【0021】
図2において、騒音源は第1騒音源28と第2騒音源29とがある。第1騒音源28と第2騒音源29との音圧は、それぞれの騒音源の近傍に設置された第1マイク32aと第2マイク32bによって検出される。第1マイク32aと第2マイク32bとに音響粒子速度センサのPUプローブを用いた。
【0022】
第1騒音源28、及び第2騒音源29の近傍で計測された音圧をそれぞれ音圧a1、a2とする。第1騒音源28、及び第2騒音源29から耳位置(観測点)までの伝達関数をそれぞれ伝達関数(f1)、及び(f2)とする。第1騒音源28、及び第2騒音源29から放射された騒音の耳位置(観測点)の音圧の計算値をそれぞれ音圧b1、b2と定義すると、以下の式(1)、(2)が成立する。
【0023】
【数1】

耳位置(観測点)の音圧を(c)と定義すると以下の式(3)が成立する。
【0024】
【数2】
【0025】
式(3)は、高周波帯域において耳位置(観測点)での音圧エネルギーは、寄与する音のエネルギーの和にほぼ等しいことに由来する。式(3)はさらに以下の式(4)に拡張することができる。
【0026】
【数3】
【0027】
式(4)は、高周波帯域における耳位置(観測点)での音圧エネルギーは寄与する音圧エネルギーの総和にほぼ等しいことを意味する。これは、高周波帯域における音同士は干渉の度合が小さく独立していると見なせることによる。
【0028】
次に、低周波帯域の騒音の重ね合わせについて図3乃至図7を参照して説明する。図3は本実施形態に係る耳位置(観測点)での騒音について説明する図であり、図4は本実施形態に係る騒音の周波数と位相差との関係を説明する図であり、図5は本実施形態に係る位相差による音波干渉の特徴を説明するための図であり、図6は本実施形態に係る耳位置(観測点)における、騒音の音圧の実測値と従来手法での計算値との乖離を説明するための図であり、図7は本実施形態に係る騒音源寄与解析装置の計算値の一例を説明するための図である。
【0029】
第1騒音源28と第2騒音源29との間の距離が近い場合は、この2つの騒音源は1つの騒音源33とみなすことができる(図3参照)。この場合、耳位置(観測点)での騒音の音圧(c)は、以下の式(5)により算出することができる。
【0030】
【数4】
【0031】
式(5)のPcont(yi)は、騒音源yiから放射された騒音の耳位置(観測点)における音圧の計算値であり、前述の伝達関数に騒音源yiの近傍の音圧を乗じて得た値となる。Pref(x)は、耳位置(観測点x)における音圧の実測値である。
【0032】
低周波帯域では、耳位置(観測点)での音圧は、当該音に寄与する音同士の干渉を考慮する必要があり、各騒音の位相が同相であれば振幅の和、逆相であれば振幅の差として計算する。
【0033】
さらに、第1騒音源28及び第2騒音源29と耳位置(観測点)との間の距離に対して騒音の波長が長い場合(即ち、低周波帯域の場合)についても、耳位置(観測点)での騒音の音圧(c)は、式(5)により算出することができる。
【0034】
経路長の差による位相のずれの影響は、低周波帯域より高周波帯域のほうが大きいことが知られている(図4参照)。さらに、2つの騒音における相互の干渉度については、低周波帯域は高周波帯域と比較して、その影響は大きいことが知られている(図5参照)。
【0035】
図6を参照して従来の計算手法の問題点について説明する。図6に示す様に、従来の計算手法の計算結果(c)39と実測値(d)38とは、1400Hz以下で乖離が拡大している。従来の計算手法では、高周波帯域及び低周波帯域を含む全ての帯域で式(4)を用いて(c)を算出する。式(4)では低周波帯域における騒音相互間の干渉について考慮されておらず、これが計算結果(c)39と実測値(d)38との乖離の原因であることを本開示の発明者らは見出した。
【0036】
本開示の発明者らは、従来の計算手法を調査し、当該計算手法は各騒音源の振動による騒音が耳位置(観測点)で無相関に干渉することを前提としていることをつきとめた。耳位置(観測点)での各騒音の相互間では、各騒音源の振動による騒音は耳位置(観測点)に届くまでの経路長に差がある等の原因のため、耳位置(観測点)の各騒音の相互間に位相差ができる(図4参照)。さらに低周波帯域では各騒音の相互間の位相差が小さいため、波の重ね合わせの原理により耳位置(観測点)における各騒音の相互間の干渉度が強くなり、高周波帯域では逆に干渉度が弱くなる(図5参照)。
【0037】
そこで各騒音源での音響粒子速度および音圧の計測値を複素数として求め、騒音源の間で発生する位相差を保持して寄与度を計算する計算手法(式(5))に改修した結果、計算値71と実測値70との最大乖離幅を12dBから6dBに低減することができ、精度の向上が見られた(図7参照)。以上より、従来の解析手法で発生していた計測値72と実測値70の乖離を約6dB低減し精度向上を実現することができた。
【0038】
次に図8を参照して、騒音源寄与解析装置50の機械的構成について説明する。本実施形態に係る騒音源寄与解析装置50の機械的構成の一例を説明するためのブロック図である。騒音源寄与解析装置50は通信ネットワーク51に接続されてもよい。
騒音源寄与解析装置50は、Read Only Memory(ROM)50a、Random Access Memory(RAM)50b、記憶部50c、Central Processing Unit(CPU)50d、入出力インターフェース50e、通信インターフェース50fなどを備えている。また、騒音源寄与解析装置50は、その外部装置として入力装置50g及び出力装置50hを備えている。
【0039】
記憶部50cは、記憶装置として利用でき、騒音源寄与解析装置50が動作する上で必要となる後述の騒音源寄与解析プログラム、各種アプリケーション及び当該アプリケーションによって利用される各種データなどが記録される。
【0040】
入出力インターフェース50eは、入力装置50g、及び出力装置50hに対してデータなどの送受信を行う。入力装置50gは、キーボード52、マウス53、Webカメラ54などのことであり、出力装置50hはモニター55、スピーカ56、及びプリンタ57などのことであり、これらはいわゆる情報処理装置の周辺機器である。
【0041】
図9を参照して、騒音源寄与解析装置50の機能的構成について説明する。図9は本実施形態に係る騒音源寄与解析装置50の機能的構成の一例を説明するためのブロック図である。
騒音源寄与解析装置50は、動作する上で必要となる騒音源寄与解析プログラムをROM50a若しくは記憶部50cに保存し、RAM50bなどで構成されるメインメモリに騒音源寄与解析プログラムを取り込む。CPU50dは、騒音源寄与解析プログラムを取り込んだメインメモリにアクセスして、騒音源寄与解析プログラムを実行する。
【0042】
騒音源寄与解析装置50は、騒音源寄与解析プログラムを実行することで、CPU50dに騒音源音圧取得部60、伝達関数取得部61、観測点音圧算出部62、高周波帯域抽出部63、低周波帯域抽出部64、総音圧算出部65、及び寄与度算出部66などを機能部として備える。
【0043】
騒音源音圧取得部60は、複数の騒音源の各々の近傍で検出された騒音源音圧を取得する。
騒音源音圧は、複数の騒音源の各々の近傍に設置されたマイクにより検出される。騒音源音圧取得部60は、当該マイクから騒音源音圧を取得する。
【0044】
伝達関数取得部61は、複数の騒音源の各々から観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する。
伝達関数は騒音源から発せられた騒音が、観測点に伝わるまでにどのように変化しているかを示す関数である。
【0045】
観測点音圧算出部62は、伝達関数取得部61により取得された複数の騒音源ごとの伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する。
【0046】
高周波帯域抽出部63は、観測点音圧算出部62により算出された観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する。
高周波帯域音圧を抽出するカットオフ周波数は、音場の環境によって異なる。従って、総音圧算出部65の算出結果と観測点音圧の実測値との間の乖離が最小となるカットオフ周波数を予め調査し、カットオフ周波数を設定する必要がある。カットオフ周波数は、騒音源と耳位置(観測点)との間の距離に基づいて設定してもよく、当該距離を1波長とする周波数に設定してもよい。
【0047】
さらにカットオフ周波数は、騒音源が存在する面の寸法に基づいて設定してもよい。
【0048】
低周波帯域抽出部64は、観測点音圧算出部62により算出された観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する。
低周波帯域音圧を抽出するカットオフ周波数は、高周波帯域音圧を抽出するカットオフ周波数と同じものを用いる。
【0049】
総音圧算出部65は、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における総音圧を算出する。
【0050】
総音圧算出部65は、式(4)を用いて高周波帯域における総音圧を算出し、式(5)を用いて低周波帯域における総音圧を算出する。
【0051】
寄与度算出部66は、算出された総音圧に対して、複数の騒音源それぞれの寄与の度合を算出する。
寄与度算出部66は、耳位置(観測点)での総音圧に対する当該各々の音圧の割合により、各々の騒音源近傍で計測された音圧の寄与の度合を算出する。
【0052】
次に図10を参照して、騒音源寄与解析装置50の処理の流れについて説明する。
図10において説明の便宜上、騒音源は4箇所とする。4箇所の騒音源近傍には第1マイク32a、第2マイク32b、第3マイク32c、及び第4マイク32dがそれぞれ設置され、4箇所の騒音源の音圧が検出される。実施形態において、高周波帯域と低周波帯域とは波長の長さにより区分される。概ね1m以上の波長の音については低周波帯域としている。これは、車内空間(図1参照)において、騒音源から運転手の耳までの距離が1mであることに基づいている。
【0053】
なお、高周波帯域と低周波帯域とを区分する波長の長さは、騒音源が存在する面(パネル12)の寸法に基づいて設定してもよい。一例として、騒音源が存在する面が長方形(正方形を含む)の場合、高周波帯域と低周波帯域とを区分する波長の長さは、騒音源が存在する面の長辺の長さとしてもよい。第二の例として、高周波帯域と低周波帯域とを区分する波長の長さは、騒音源が存在する面の径に基づいて、又は径と同じ長さに設定してもよい。ここで、図形の「径」とは、当該図形の両側から接する二本の平行線の間の最長距離をいい、円や楕円のみならず凸図形一般に対して定義される概念である。なお、凸図形とは、図形上の任意の2点を結ぶ線分上の点はまた図形上にある図形のことをいう。
【0054】
4箇所の騒音源近傍の検出された音圧は、騒音源音圧取得部60によりCPU50dに取り込まれる。次に、観測点音圧算出部62は、4箇所の騒音源近傍の検出された音圧を伝達関数f1~f4(67a~67d)に乗じることで、4箇所の騒音源から放射された騒音の観測点における音圧をそれぞれ算出する。
【0055】
観測点音圧算出部62により算出された4個の音圧の算出値は、高周波帯域抽出部63であるHPF(High Pass Filter)1~HPF4(63a~63d)、及び低周波帯域抽出部64であるLPF(Low Pass Filter)1~LPF4(64a~64d)へと送られる。
【0056】
総音圧算出部65は、高周波帯域加算部65a及び低周波帯域加算部65bを備える。
高周波帯域加算部65aは、HPF1~HPF4(63a~63d)より抽出された高周波帯域音圧をそれぞれ(b1~b4)として式(4)に代入し高周波帯域における観測点の音圧(c)を算出する。
【0057】
低周波帯域加算部65bは、LPF1~LPF4(64a~64d)より抽出された低周波帯域音圧をそれぞれ(Pcont(y1)~Pcont(y4))として式(5)に代入し低周波帯域における観測点の音圧(c)を算出する。
【0058】
総音圧算出部65の算出結果である音圧P(t)は、高周波帯域における観測点の音圧(c)と低周波帯域における観測点の音圧(c)とを足し合わせることで得られる。
【0059】
次に、図11及び図12を参照して、寄与解析の考え方について説明する。
図11及び図12は、本実施形態に係る耳位置(観測点)における正確な総音圧が必要な理由を説明するための図である。
【0060】
騒音源寄与解析は、耳位置(観測点)での総音圧に対する各騒音源の音圧の割合を求めるだけではなく、次の観点が必要となる。すなわち、各騒音源から耳位置(観測点)に到達した騒音の音圧b1、b2、総音圧cとすると、音圧b1若しくはb2を無くした場合の総音圧cの変化について知ることである。上述した従来の計算手法と本開示の計算手法とでは、総音圧cへの影響が異なって算出される。図11及び図12において、音場1に従来と本開示との間に大差がない例を示し、一方で音場2に従来と本開示の間に大きな差が生じる例を示す。
【0061】
音場1(図11参照)は、t=0での振幅が1.0の余弦波が第1騒音源28から放射され、t=0での振幅が0.5の余弦波が第2騒音源29から放射されているものとする。
【0062】
音場2(図12参照)は、t=0での振幅が1.0の余弦波が第3騒音源30から放射され、t=0での振幅が-0.5の余弦波が第4騒音源31から放射されているものとする。
【0063】
音場1において、上記した従来の計算手法を用いた解析結果を以下に述べる。
総音圧cの最大振幅は式(4)より1.12である。第1騒音源28を無くした場合の総音圧cの最大振幅は0.5(0.62減)となる。従って、第1騒音源28を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.45倍になり、-7dBの減少となった。第2騒音源29を無くした場合の総音圧cの最大振幅は1.0(0.12減)となる。従って、第2騒音源29を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.89倍になり、-1dBの減少となった。
【0064】
第1騒音源28を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.62(1.12-0.5)の減少である。第2騒音源29を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.12(1.12-1.0)の減少である。従って、耳位置(観測点)における第1騒音源28及び第2騒音源29の寄与度それぞれの算出を以下の様に行ってもよい。
第1騒音源28の寄与度=100×0.62/(0.62+0.12)=83.8%
第2騒音源29の寄与度=100×0.12/(0.62+0.12)=16.2%
【0065】
次に、音場1において、本開示の計算手法を用いた解析結果を以下に述べる。
総音圧cの最大振幅は式(5)より1.5である。第1騒音源28を無くした場合の総音圧cの最大振幅は0.5(1.0減)となる。従って、第1騒音源28を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.33倍になり、-9.6dBの減少となった。第2騒音源29を無くした場合の総音圧cの最大振幅は1.0(0.5減)となる。従って、第2騒音源29を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.7倍になり、-3.1dBの減少となった。
【0066】
第1騒音源28を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、1.0(1.5--0.5)の減少である。第2騒音源29を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.5(1.5-1.0)の減少である。従って、耳位置(観測点)における第1騒音源28及び第2騒音源29の寄与度それぞれの算出を以下の様に行ってもよい。
第1騒音源28の寄与度=100×1.0/(1.0+0.5)=66.7%
第2騒音源29の寄与度=100×0.5/(1.0+0.5)=33.3%
【0067】
音場1において、従来の計算手法の結果と本開示の計算手法の結果ともに、第1騒音源28、第2騒音源29の両方に騒音対策の効果があるという結果となる。さらに、従来の計算手法の結果と本開示の計算手法の結果ともに、第1騒音源28の対策に、より大きな効果があるという示唆が得られる。しかしながらその一方で、以下に示す音場2の場合では、従来の計算手法よりも本開示の計算手法の結果の方が妥当である。
【0068】
次に、音場2において、上記した従来の計算手法を用いた解析結果を以下に述べる。
総音圧cの最大振幅は式(4)より1.12である。第3騒音源30を無くした場合の総音圧cの最大振幅は0.5(0.62減)となる。従って、第3騒音源30を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.45倍になり、-7dBの減少となった。第4騒音源31を無くした場合の総音圧cの最大振幅は1.0(0.12減)となる。従って、第4騒音源31を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は0.89倍になり、-1dBの減少となった。
【0069】
第3騒音源30を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.62(1.12-0.5)の減少である。第4騒音源31を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.12(1.12-1.0)の減少である。従って、耳位置(観測点)における第3騒音源30及び第4騒音源31の寄与度それぞれの算出を以下の様に行ってもよい。
第3騒音源30の寄与度=100×0.62/(0.62+0.12)=83.8%
第4騒音源31の寄与度=100×0.12/(0.62+0.12)=16.2%
【0070】
次に、音場2において、本開示の計算手法を用いた解析結果を以下に述べる。
総音圧cの最大振幅は式(5)より0.5である。第3騒音源30を無くした場合の総音圧cの最大振幅は0.5(0.0減)となる。従って、第3騒音源30を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は1.0倍になり、効果なし。第4騒音源31を無くした場合の総音圧cの最大振幅は1.0(0.5増)となる。従って、第4騒音源31を無くしたことにより、総音圧cの最大振幅は2倍になり、6.0dBの増加となった。
【0071】
第3騒音源30を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、0.0(0.5-0.5)の減少である。第4騒音源31を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値は、-0.5(0.5-1.0)の減少、即ち0.5の増加である。従って、耳位置(観測点)における第3騒音源30及び第4騒音源31の寄与度それぞれの算出を以下の様に行ってもよい。
第3騒音源30の寄与度=100×0.0/(0.0+0.5)=0.0%
第4騒音源31の寄与度=100×(-0.5)/(0.0+0.5)=-100.0%
【0072】
実際に音場2では第3騒音源30を対策しても効果が無く、第4騒音源31を対策すると逆に騒音が増加する。本開示の計算手法の結果は当該実際の結果を表しており妥当である。一方で従来の計算手法では第3騒音源30、第4騒音源31ともに対策の効果があり、さらに第3騒音源30の対策に、より大きな効果があるという結果となるため、間違った示唆を与える。
【0073】
なお、上記した各騒音源の寄与度の算出は、次のように拡張することができる。
すなわち、総音圧cに寄与している騒音源が第1から第Nまで有り、第n(nは1からNまでの任意の整数)騒音源を無くした場合の総音圧cの最大振幅の変化した値をanとする。この場合、第n騒音源の寄与度は式(6)により算出することができる。anは、総音圧cの最大振幅が減少した場合を正とし、総音圧cの最大振幅が増加した場合を負とする。
【0074】
【数5】
【0075】
次に図13を参照して、本実施形態に係る騒音源寄与解析方法について騒音源寄与解析プログラムとともに説明する。図13は、本実施形態に係る騒音源寄与解析プログラムのフローチャートである。
【0076】
図13に示す様に、騒音源寄与解析プログラムは、騒音源音圧取得ステップS60、伝達関数取得ステップS61、観測点音圧算出ステップS62、高周波帯域抽出ステップS63、低周波帯域抽出ステップS64、総音圧算出ステップS65、及び寄与度算出ステップS66などを含む。
【0077】
騒音源寄与解析装置50は、ROM50a若しくは記憶部50cに保存された騒音源寄与解析プログラムをメインメモリに取り込み、CPU50dにより騒音源寄与解析プログラムを実行する。
【0078】
騒音源寄与解析プログラムは、騒音源寄与解析装置50のCPU50dに対して、騒音源音圧取得機能、伝達関数取得機能、観測点音圧算出機能、高周波帯域抽出機能、低周波帯域抽出機能、総音圧算出機能、及び寄与度算出機能などの機能を実現させる。
【0079】
これらの機能は図13のフローチャートに示す順序で処理を行う場合を例示したが、これに限らず、これらの順番を適宜入れ替えて騒音源寄与解析プログラムを実行してもよい。
【0080】
なお、上記した各機能は、前述の騒音源寄与解析装置50の騒音源音圧取得部60、伝達関数取得部61、観測点音圧算出部62、高周波帯域抽出部63、低周波帯域抽出部64、総音圧算出部65、及び寄与度算出部66の説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0081】
騒音源音圧取得機能は、複数の騒音源の各々の近傍で検出された騒音源音圧を取得する(S60:騒音源音圧取得ステップ)。
【0082】
伝達関数取得機能は、複数の騒音源の各々から観測点までの騒音の伝達特性を示す伝達関数を複数の騒音源ごとに取得する(S61:伝達関数取得ステップ)。
【0083】
観測点音圧算出機能は、伝達関数取得部61により取得された複数の騒音源ごとの伝達関数に、当該伝達関数に対応する騒音源音圧をそれぞれ入力し、その出力をそれぞれ観測点音圧として出力する(S62:観測点音圧算出ステップ)。
【0084】
高周波帯域抽出機能は、観測点音圧算出部62により算出された観測点音圧のうち高周波帯域のものを高周波帯域音圧として抽出する(S63:高周波帯域抽出ステップ)。
【0085】
低周波帯域抽出機能は、観測点音圧算出部62により算出された観測点音圧のうち低周波帯域のものを低周波帯域音圧として抽出する(S64:低周波帯域抽出ステップ)。
【0086】
総音圧算出機能は、複数の騒音源の各々の高周波帯域音圧の2乗和と複数の騒音源の各々の低周波帯域音圧の和とに基づき、観測点における総音圧を算出する(S65:総音圧算出ステップ)。
【0087】
寄与度算出機能は、算出された総音圧に対して、複数の騒音源それぞれの寄与の度合を算出する(S66:寄与度算出ステップ)。
【0088】
上述した本実施形態によれば、耳位置(観測点)での総音圧を算出する計算式を高周波帯域と低周波帯域とでそれぞれ異なる計算式を用いた。低周波帯域での総音圧の算出では、騒音の相互間の干渉の影響を考慮した。これにより、耳位置(観測点)の総音圧と計算値との乖離が減少し、約6dB低減し精度を向上させることができる。
【0089】
本開示は上記した実施形態に係る騒音源寄与解析装置50、騒音源寄与解析方法、及び騒音源寄与解析プログラムに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 自動車
11 ボディー
12 パネル
13 タイヤ
14 エンジン
15 シート
16 プロペラシャフト
17 フロントガラス
18 リアガラス
20 風の流れ
21 固体伝搬
22 空気伝搬
23 音の放射
24 耳位置(観測点)
28 第1騒音源
29 第2騒音源
30 第3騒音源
31 第4騒音源
32a 第1マイク
32b 第2マイク
32c 第3マイク
32d 第4マイク
33 騒音源
34 第1パネル
35 第2パネル
36 低周波
37 高周波
38 実測値(d)
39 計算値(c)
50 騒音源寄与解析装置
50a Read Only Memory(ROM)
50b Random Access Memory(RAM)
50c 記憶部
50d Central Processing Unit(CPU)
50e 入出力インターフェース
50f 通信インターフェース
50g 入力装置
50h 出力装置
51 通信ネットワーク
52 キーボード
53 マウス
54 Webカメラ
55 モニター
56 スピーカ
57 プリンタ
60 騒音源音圧取得部
61 伝達関数取得部
62 観測点音圧算出部
63 高周波帯域抽出部
63a 高周波帯域抽出部
63b 高周波帯域抽出部
63c 高周波帯域抽出部
63d 高周波帯域抽出部
64 低周波帯域抽出部
64a 低周波帯域抽出部
64b 低周波帯域抽出部
64c 低周波帯域抽出部
64d 低周波帯域抽出部
65 総音圧算出部
65a 高周波帯域加算部
65b 低周波帯域加算部
66 寄与度算出部
67a 伝達関数f1
67b 伝達関数f2
67c 伝達関数f3
67d 伝達関数f4
70 実測値
71 今回計算値
72 従来計算値
75 騒音源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13