(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024024
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】切断装置及び被切断物の切断方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230209BHJP
E02B 3/06 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E04G23/08 D
E02B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130061
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】500497652
【氏名又は名称】株式会社渋谷潜水工業
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591043477
【氏名又は名称】寄神建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小野 寿久
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 正信
(72)【発明者】
【氏名】水野 智亮
【テーマコード(参考)】
2D118
2E176
【Fターム(参考)】
2D118AA29
2D118CA03
2D118CA07
2D118GA07
2D118GA09
2E176AA01
2E176AA07
2E176DD22
(57)【要約】
【課題】液体中に設置された被切断物の切断に要する時間及びコストを削減するとともに潜水士の身体への負担を軽減することが可能な切断装置を提供する。
【解決手段】被切断物を切断する際に用いられる切断装置であって、ベースフレームと、基端側がそれぞれベースフレームに固定された第1アーム及び第2アームと、第1アームによって支持された第1滑車と、第2アームによって支持された第2滑車と、第1滑車及び第2滑車によって支持され、第1滑車と第2滑車との間の領域で被切断物に接触する無端のワイヤーソーと、ワイヤーソーを走行させる駆動機構と、被切断物を切断する際に、第1滑車を第1アームの基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第1移動機構と、被切断物を切断する際に、第2滑車を第2アームの基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第2移動機構と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物を切断する際に用いられる切断装置であって、
ベースフレームと、
基端側がそれぞれ前記ベースフレームに固定された第1アーム及び第2アームと、
前記第1アームによって支持された第1滑車と、
前記第2アームによって支持された第2滑車と、
前記第1滑車及び前記第2滑車によって支持され、前記第1滑車と前記第2滑車との間の領域で前記被切断物に接触する無端のワイヤーソーと、
前記ワイヤーソーを走行させる駆動機構と、
前記被切断物を切断する際に、前記第1滑車を前記第1アームの前記基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第1移動機構と、
前記被切断物を切断する際に、前記第2滑車を前記第2アームの前記基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第2移動機構と、を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記ベースフレーム及び前記駆動機構を覆うカバーをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記第1移動機構は、前記第1滑車が連結された第1可動体を備え、
前記第2移動機構は、前記第2滑車が連結された第2可動体を備え、
前記第1可動体には、第1圧力計と、前記第1滑車を撮影する第1カメラと、が設けられ、
前記第2可動体には、第2圧力計と、前記第2滑車を撮影する第2カメラと、が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記第1移動機構、前記第2移動機構、前記駆動機構、前記第1圧力計、前記第2圧力計、前記第1カメラ、及び前記第2カメラは、コントローラに接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の切断装置を用いて液体中に設置された前記被切断物を切断する被切断物の切断方法であって、
前記第1アームと前記第2アームとの間に前記被切断物が配置されるように、前記第1アーム及び前記第2アームの一部又は全体を前記液体中に配置する第1工程と、
前記駆動機構によって前記ワイヤーソーを走行させた状態で、前記第1滑車及び前記第2滑車を前記第1移動機構及び前記第2移動機構によって移動させることにより、前記ワイヤーソーを前記被切断物に接触させて前記被切断物を前記液体の深さの方向に沿って切断する第2工程と、を含むことを特徴とする被切断物の切断方法。
【請求項6】
前記第1工程では、前記ベースフレームを前記第1アーム及び前記第2アームとともに前記液体中に配置することを特徴とする、請求項5に記載の被切断物の切断方法。
【請求項7】
前記ワイヤーソーで前記被切断物を切断することによって前記被切断物に形成された切り口に横切り用ワイヤーソーを挿入する第3工程と、
前記横切り用ワイヤーソーによって前記被切断物を前記液体の深さの方向と交差する方向に沿って切断する第4工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の被切断物の切断方法。
【請求項8】
前記横切り用ワイヤーソーは、前記ワイヤーソーよりも細いことを特徴とする、請求項7に記載の被切断物の切断方法。
【請求項9】
前記被切断物は、鋼管及び継手を備える鋼管矢板であり、
前記第2工程では、前記ワイヤーソーで前記継手を切断することを特徴とする、請求項5又は6に記載の被切断物の切断方法。
【請求項10】
前記被切断物は、鋼管及び継手を備える鋼管矢板であり、
前記第2工程では、前記ワイヤーソーで前記継手を切断し、
前記第4工程では、前記横切り用ワイヤーソーで前記鋼管を切断することを特徴とする、請求項7又は8のいずれかに記載の被切断物の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断する際に用いられる切断装置、及び、該切断装置を用いて被切断物を切断する被切断物の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事や土木工事においては、鉄筋コンクリート建造物、鋼管、橋梁等の各種の構造物の解体、撤去に際して、ワイヤーソーイング工法が用いられる。ワイヤーソーイング工法では、ワイヤーソーを切断の対象物(被切断物)に巻き付け、所定の張力をかけながら高速で走行させることにより、被切断物を切断する。また、ワイヤーソーによる被切断物の切断には、ワイヤーソーを滑車で支持して被切断物に押し付ける、いわゆる押し切り方式が用いられることもある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被切断物の切断作業は、ダム、堤防、橋梁の建設のような、河川、海洋、港湾等における工事においても実施される。例えば、河川におけるダムの建設では、河川水中に設置された複数の鋼管矢板で囲まれる領域の内側で水面下の建設作業が行われ、工事の最終段階において鋼管矢板が切断、撤去される。このような水中に設置された被切断物の切断は、潜水士による水中アーク切断によって行われることが主流となっている。
【0005】
しかしながら、潜水士が水中で連続して作業可能な時間には限界があり、水中における被切断物の切断は作業を頻繁に中断しながら断続的に進めざるを得ない。そのため、水中アーク切断による被切断物の切断には時間とコストがかかる。また、水中で長時間の作業を行うと潜水士の身体に負担がかかり、潜水事故のリスクが高まるという問題もある。特に、鋼管矢板のような大規模な構造物が水中に設置されている場合には、施工期間の長期化及び施工コストの増加が顕著になる上、水深が深い場所での作業も必要となり潜水士の身体への負担も増大する。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、液体中に設置された被切断物の切断に要する時間及びコストを削減するとともに潜水士の身体への負担を軽減することが可能な切断装置、及び、該切断装置を用いた被切断物の切断方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、被切断物を切断する際に用いられる切断装置であって、ベースフレームと、基端側がそれぞれ前記ベースフレームに固定された第1アーム及び第2アームと、前記第1アームによって支持された第1滑車と、前記第2アームによって支持された第2滑車と、前記第1滑車及び前記第2滑車によって支持され、前記第1滑車と前記第2滑車との間の領域で前記被切断物に接触する無端のワイヤーソーと、前記ワイヤーソーを走行させる駆動機構と、前記被切断物を切断する際に、前記第1滑車を前記第1アームの前記基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第1移動機構と、前記被切断物を切断する際に、前記第2滑車を前記第2アームの前記基端側から先端側へと向かう方向に移動させる第2移動機構と、を備える切断装置が提供される。
【0008】
なお、好ましくは、前記切断装置は、前記ベースフレーム及び前記駆動機構を覆うカバーをさらに備える。また、好ましくは、前記第1移動機構は、前記第1滑車が連結された第1可動体を備え、前記第2移動機構は、前記第2滑車が連結された第2可動体を備え、前記第1可動体には、第1圧力計と、前記第1滑車を撮影する第1カメラと、が設けられ、前記第2可動体には、第2圧力計と、前記第2滑車を撮影する第2カメラと、が設けられている。また、好ましくは、前記第1移動機構、前記第2移動機構、前記駆動機構、前記第1圧力計、前記第2圧力計、前記第1カメラ、及び前記第2カメラは、コントローラに接続されている。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、上記の切断装置を用いて液体中に設置された前記被切断物を切断する被切断物の切断方法であって、前記第1アームと前記第2アームとの間に前記被切断物が配置されるように、前記第1アーム及び前記第2アームの一部又は全体を前記液体中に配置する第1工程と、前記駆動機構によって前記ワイヤーソーを走行させた状態で、前記第1滑車及び前記第2滑車を前記第1移動機構及び前記第2移動機構によって移動させることにより、前記ワイヤーソーを前記被切断物に接触させて前記被切断物を前記液体の深さの方向に沿って切断する第2工程と、を含む被切断物の切断方法が提供される。
【0010】
なお、好ましくは、前記第1工程では、前記ベースフレームを前記第1アーム及び前記第2アームとともに前記液体中に配置する。また、好ましくは、前記被切断物の切断方法は、前記ワイヤーソーで前記被切断物を切断することによって前記被切断物に形成された切り口に横切り用ワイヤーソーを挿入する第3工程と、前記横切り用ワイヤーソーによって前記被切断物を前記液体の深さの方向と交差する方向に沿って切断する第4工程と、をさらに含む。また、好ましくは、前記横切り用ワイヤーソーは、前記ワイヤーソーよりも細い。
【0011】
また、好ましくは、前記被切断物は、鋼管及び継手を備える鋼管矢板であり、前記第2工程では、前記ワイヤーソーで前記継手を切断する。また、好ましくは、前記被切断物は、鋼管及び継手を備える鋼管矢板であり、前記第2工程では、前記ワイヤーソーで前記継手を切断し、前記第4工程では、前記横切り用ワイヤーソーで前記鋼管を切断する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る切断装置は、第1滑車を支持する第1アームと第2滑車を支持する第2アームとを備え、第1滑車及び第2滑車によって支持されたワイヤーソーを走行させつつ第1アームと第2アームとの間に配置された被切断物に接触させることによって被切断物を切断する。これにより、液体中に配置された被切断物を自動で連続的に切断することが可能になり、被切断物の切断に要する時間及びコストが大幅に削減される。また、液体中における潜水士の作業量が低減され、潜水士の身体への負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】第1滑車及び第2滑車が下降した状態の切断装置を示す正面図である。
【
図5】切断装置及び鋼管矢板を示す一部断面正面図である。
【
図6】
図6(A)は第1工程における切断装置及び鋼管矢板を示す一部断面正面図であり、
図6(B)は第2工程における切断装置及び鋼管矢板を示す一部断面正面図である。
【
図7】
図7(A)は第3工程における鋼管矢板を示す断面図であり、
図7(B)は第4工程における鋼管矢板を示す断面図であり、
図7(C)は上部が撤去された鋼管矢板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る切断装置の構成例について説明する。
図1は切断装置2を示す斜視図であり、
図2は切断装置2を示す正面図である。なお、
図1及び
図2において、X軸方向(第1水平方向、左右方向)とY軸方向(第2水平方向、前後方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。以下、主に
図1を参照しつつ切断装置2の構成を説明する。
【0015】
切断装置2は、切断装置2の骨組みに相当する直方体状のベースフレーム4を備える。ベースフレーム4は、幅方向、奥行き方向、高さ方向がそれぞれX軸、Y軸、Z軸に沿うように配置されている。例えばベースフレーム4は、ステンレス等の金属でなる柱状のフレームを連結させることによって構成される。また、ベースフレーム4は、ベースフレーム4の幅方向(X軸方向)に沿う下辺に対応し互いに概ね平行に配置された第1フレーム4a及び第2フレーム4bを備える。
【0016】
ベースフレーム4の下面側には、第1アーム6a及び第2アーム6bが接続されている。第1アーム6a及び第2アーム6bは、ステンレス等の金属でなる柱状の部材であり、Z軸方向に沿って互いに概ね平行に配置されている。例えば、第1アーム6aの基端側(一端部、上端部)は第1フレーム4aの一端部に固定され、第2アーム6bの基端側(一端部、上端部)は第1フレーム4aの他端部に固定される。
【0017】
第1アーム6aには、第1アーム6aを支持して補強するX軸支持アーム8a及びY軸支持アーム10aが接続されている。X軸支持アーム8aの基端側(一端部、上端部)は第1フレーム4aに固定され、X軸支持アーム8aの先端側(他端部、下端部)は第1アーム6aの右側面に固定されている。また、Y軸支持アーム10aの基端側(一端部、上端部)は第2フレーム4bに固定され、Y軸支持アーム10aの先端側(他端部、下端部)は第1アーム6aの後面に固定されている。
【0018】
同様に、第2アーム6bには、第2アーム6bを支持して補強するX軸支持アーム8b及びY軸支持アーム10bが接続されている。X軸支持アーム8bの基端側(一端部、上端部)は第1フレーム4aに固定され、X軸支持アーム8bの先端側(他端部、下端部)は第2アーム6bの左側面に固定されている。また、Y軸支持アーム10bの基端側(一端部、上端部)は第2フレーム4bに固定され、Y軸支持アーム10bの先端側(他端部、下端部)は第2アーム6bの後面に固定されている。
【0019】
X軸支持アーム8a,8bは、XZ平面において第1アーム6a及び第2アーム6bに対して傾斜するように配置され、第1アーム6a及び第2アーム6bのX軸方向における変形を抑制する。また、Y軸支持アーム10a,10bは、YZ平面において第1アーム6a及び第2アーム6bに対して傾斜するように配置され、第1アーム6a及び第2アーム6bのY軸方向における変形を抑制する。
【0020】
第1アーム6aは、第1滑車12aを支持している。具体的には、第1アーム6aの前面側には、第1滑車12aを第1アーム6aの長さ方向(Z軸方向)に沿って移動させる第1移動機構14aが設けられている。第1移動機構14aは、第1アーム6aの基端側に装着された第1駆動滑車16aと、第1アーム6aの先端側に装着された第1従動滑車18aとを備える。第1駆動滑車16a及び第1従動滑車18aには、無端の環状に形成されたチェーン、ベルト等の第1動力伝達部材20aが巻き掛けられている。また、第1駆動滑車16aには、第1駆動滑車16aを双方向に回転させるモータ等の第1回転駆動源22a(
図2参照)が連結されている。
【0021】
さらに、第1移動機構14aは、ステンレス等の金属でなり第1動力伝達部材20aに固定された第1可動体24aを備える。第1可動体24aの前面側には第1滑車12aが回転可能な状態で連結され、第1可動体24aの後面側は、第1可動体24aが第1アーム6aに沿って移動できるように第1アーム6aに支持されている。すなわち、第1滑車12aは、第1移動機構14aを介して第1アーム6aによって支持されている。
【0022】
同様に、第2アーム6bは、第2滑車12bを支持している。具体的には、第2アーム6bの前面側には、第2滑車12bを第2アーム6bの長さ方向(Z軸方向)に沿って移動させる第2移動機構14bが設けられている。第2移動機構14bは、第2アーム6bの基端側に装着された第2駆動滑車16bと、第2アーム6bの先端側に装着された第2従動滑車18bとを備える。第2駆動滑車16b及び第2従動滑車18bには、無端の環状に形成されたチェーン、ベルト等の第2動力伝達部材20bが巻き掛けられている。また、第2駆動滑車16bには、第2駆動滑車16bを双方向に回転させるモータ等の第2回転駆動源22bが連結されている。
【0023】
さらに、第2移動機構14bは、ステンレス等の金属でなり第2動力伝達部材20bに固定された第2可動体24bを備える。第2可動体24bの前面側には第2滑車12bが回転可能な状態で連結され、第2可動体24bの後面側は、第2可動体24bが第2アーム6bに沿って移動できるように第2アーム6bに支持されている。すなわち、第2滑車12bは、第2移動機構14bを介して第2アーム6bによって支持されている。
【0024】
第1回転駆動源22aで第1駆動滑車16aを第1の方向(
図2において時計回り)に回転させると、第1動力伝達部材20aが第1の方向に走行し、第1滑車12aが第1可動体24aとともに第1アーム6aの基端側から先端側へと向かう方向に移動(下降)する。一方、第1回転駆動源22aで第1駆動滑車16aを第2の方向(
図2において反時計回り)に回転させると、第1動力伝達部材20aが第2の方向に走行し、第1滑車12aが第1可動体24aとともに第1アーム6aの先端側から基端側へと向かう方向に移動(上昇)する。
【0025】
また、第2回転駆動源22bで第2駆動滑車16bを第1の方向(
図2において反時計回り)に回転させると、第2動力伝達部材20bが第1の方向に走行し、第2滑車12bが第2可動体24bとともに第2アーム6bの基端側から先端側へと向かう方向に移動(下降)する。一方、第2回転駆動源22bで第2駆動滑車16bを第2の方向(
図2において時計回り)に回転させると、第2動力伝達部材20bが第2の方向に走行し、第2滑車12bが第2可動体24bとともに第2アーム6bの先端側から基端側へと向かう方向に移動(上昇)する。
【0026】
上記のように、第1移動機構14a及び第2移動機構14bはそれぞれ巻き掛け伝動機構を構成しており、第1滑車12a及び第2滑車12bを独立に移動(昇降)させることができる。そして、第1駆動滑車16a及び第2駆動滑車16bの回転を制御することにより、第1滑車12aと第2滑車12bとをそれぞれ任意の高さ位置(Z軸方向における位置)に位置付けることができる。
【0027】
ベースフレーム4の前面側の下部には、ステンレス等の金属でなる梁状の支持フレーム26が固定されている。支持フレーム26は、第1フレーム4aの上側に第1フレーム4aと概ね平行に配置され、駆動機構28を支持している。駆動機構28は、支持フレーム26に支持された第3駆動滑車30と、第3駆動滑車30を回転させるモータ等の第3回転駆動源32(
図1参照)とを備える。
【0028】
第1滑車12a、第2滑車12b及び第3駆動滑車30には、切断の対象物(被切断物)を切断する無端のワイヤーソー34が巻き掛けられている。例えばワイヤーソー34として、ダイヤモンド砥粒を含むビーズをワイヤー(芯材)に固定することによって形成されるダイヤモンドワイヤーソーが用いられる。
【0029】
ワイヤーソー34の下端側は、第1滑車12a及び第2滑車12bによって支持され、第1アーム6aと第2アーム6bとの間で張った状態で、例えばX軸方向に沿って配置される。そして、駆動機構28は、第3回転駆動源32で第3駆動滑車30を回転させることにより、第3駆動滑車30に接触するワイヤーソー34を送り出し、ワイヤーソー34を走行させる。
【0030】
第3駆動滑車30の両側方には、支持フレーム26に支持された複数の定滑車36が設けられている。
図1及び
図2には、第3駆動滑車30よりも第1アーム6a側に6個の定滑車36が設けられ、第3駆動滑車30よりも第2アーム6b側に2個の定滑車36が設けられている例を示している。さらに、支持フレーム26の上方には、一対の第3滑車38a及び一対の第4滑車38bが設けられている。そして、複数の定滑車36と、一対の第3滑車38a及び一対の第4滑車38bとにそれぞれ、ワイヤーソー34が巻き掛けられている。
【0031】
一対の第3滑車38aには、一対の第3滑車38aをZ軸方向に沿って移動させる第3移動機構40aが連結されている。また、一対の第4滑車38bには、一対の第4滑車38bをZ軸方向に沿って移動させる第4移動機構40bが連結されている。例えば、第3移動機構40a及び第4移動機構40bは、第1移動機構14a及び第2移動機構14bと同様の巻き掛け伝動機構によって構成される。
【0032】
具体的には、第3移動機構40aは、ステンレス等の金属でなりベースフレーム4の上端部から下端部にわたって配置された柱状の第1レール42aと、第1レール42aに沿って環状に張られたチェーン、ベルト等の第3動力伝達部材44a(
図1参照)とを備える。第3動力伝達部材44aには、第3動力伝達部材44aを走行させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0033】
また、第3移動機構40aは、ステンレス等の金属でなり第3動力伝達部材44aに固定された第3可動体46aを備える。第3可動体46aの前面側には一対の第3滑車38aが回転可能な状態で連結され、第3可動体46aの後面側は、第3可動体46aが第1レール42aに沿って移動できるように第1レール42aに支持されている。第3動力伝達部材44aを走行させると、一対の第3滑車38aが第3可動体46aとともに第1レール42aに沿ってZ軸方向に移動(昇降)する。
【0034】
同様に、第4移動機構40bは、ステンレス等の金属でなりベースフレーム4の上端部から下端部にわたって配置された柱状の第2レール42bと、第2レール42bに沿って環状に張られたチェーン、ベルト等の第4動力伝達部材44b(
図1参照)とを備える。第4動力伝達部材44bには、第4動力伝達部材44bを走行させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0035】
また、第4移動機構40bは、ステンレス等の金属でなり第4動力伝達部材44bに固定された第4可動体46bを備える。第4可動体46bの前面側には一対の第4滑車38bが回転可能な状態で連結され、第4可動体46bの後面側は、第4可動体46bが第2レール42bに沿って移動できるように第2レール42bに支持されている。第4動力伝達部材44bを走行させると、一対の第4滑車38bが第4可動体46bとともに第2レール42bに沿ってZ軸方向に移動(昇降)する。
【0036】
第3駆動滑車30から繰り出されたワイヤーソー34は、第3駆動滑車30よりも第1アーム6a側に設けられた複数の定滑車36、一対の第3滑車38a、一対の第4滑車38bを通って、第1滑車12aに到達する。また、第1滑車12aから繰り出されたワイヤーソー34は、第1アーム6aと第2アーム6bとの間を走行して第2滑車12bに到達する。そして、第2滑車12bから繰り出されたワイヤーソー34は、第3駆動滑車30よりも第2アーム6b側に設けられた複数の定滑車36を通って、第3駆動滑車30に到達する。
【0037】
第3移動機構40aは、第1滑車12aの昇降距離に応じて一対の第3滑車38aを昇降させる。また、第4移動機構40bは、第2滑車12bの昇降距離に応じて一対の第4滑車38bを昇降させる。これにより、第1アーム6aと第2アーム6bとの間を走行するワイヤーソー34を、その張りを維持した状態で昇降させることができる。
【0038】
図3は、第1滑車12a及び第2滑車12bが下降した状態の切断装置2を示す正面図である。第1移動機構14a及び第2移動機構14bによって第1滑車12a及び第2滑車12bを下降させると、第1滑車12a及び第2滑車12bに追従して一対の第3滑車38a及び一対の第4滑車38bが下降する。このとき、第3滑車38a又は第4滑車38bの一方を下降させた後に第3滑車38a又は第4滑車38bの他方を下降させてもよいし、第3滑車38a及び第4滑車38bを同時に下降させてもよい。また、第1滑車12a及び第2滑車12bの下降距離が短い場合には、第3滑車38a又は第4滑車38bの一方のみを下降させてもよい。
【0039】
第1アーム6aと第2アーム6bとの間に被切断物を配置した状態で、ワイヤーソー34を走行させつつ下降させると、ワイヤーソー34が第1滑車12aと第2滑車12bとの間の領域で被切断物に接触する。これにより、ワイヤーソー34が被切断物に押し当てられ、被切断物が切断される。
【0040】
なお、第1滑車12a又は第2滑車12bを下降させる際には、第1移動機構14a又は第2移動機構14bからワイヤーソー34に付与される下向きの力に抗する僅かな上向きの力が第3移動機構40a又は第4移動機構40bからワイヤーソー34に付与されるように、第1移動機構14a又は第2移動機構14bと第3移動機構40a又は第4移動機構40bとを連動させることが望ましい。これにより、一対の第3滑車38a又は一対の第4滑車38bが必要以上に下降してワイヤーソー34の張りが緩むことを防止できる。
【0041】
一方、第1滑車12a又は第2滑車12bを上昇させる際には、第1移動機構14a又は第2移動機構14bと第3移動機構40a又は第4移動機構40bとを連動させて、第1滑車12a又は第2滑車12bを上昇させる。なお、この際にも、ワイヤーソー34の張りが緩むことを防止するために、第3移動機構40a又は第4移動機構40bからワイヤーソー34に付与される上向きの力に抗する僅かな下向きの力が第1移動機構14a又は第2移動機構14bからワイヤーソー34に付与されるように、第1移動機構14a又は第2移動機構14bと第3移動機構40a又は第4移動機構40bとを連動させても良い。
【0042】
切断装置2を構成する各構成要素(第1移動機構14a、第2移動機構14b、駆動機構28、第3移動機構40a、第4移動機構40b等)は、コントローラ48に接続されている。コントローラ48は、切断装置2の動作を制御する制御部(制御ユニット、制御装置)に相当し、切断装置2の各構成要素に制御信号を出力する。
【0043】
具体的には、コントローラ48は、第1回転駆動源22a及び第2回転駆動源22b(
図1参照)に制御信号を出力することにより、第1滑車12a及び第2滑車12bの昇降を制御する。また、コントローラ48は、第3回転駆動源32(
図1参照)に制御信号を出力することにより、ワイヤーソー34の走行を制御する。さらに、コントローラ48は、第3移動機構40a及び第4移動機構40bがそれぞれ備える回転駆動源に制御信号を出力することにより、第3滑車38a及び第4滑車38bの昇降を制御する。
【0044】
例えばコントローラ48は、コンピュータによって構成され、切断装置2の制御に必要な演算を行う演算部と、切断装置2の制御に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。演算部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0045】
次に、切断装置2を用いた被切断物の切断方法の具体例について説明する。切断装置2は、第1アーム6aと第2アーム6bとの間に配置された切断の対象物(被切断物)をワイヤーソー34で切断する。特に切断装置2は、河川、海洋、港湾等における工事の際に、河川水、海水等の液体中に設置された様々な構造物を切断できる。以下では代表例として、被切断物が液体中に設置された鋼管矢板である場合について説明する。
【0046】
図4は切断装置2及び鋼管矢板11を示す斜視図であり、
図5は切断装置2及び鋼管矢板11を示す一部断面正面図である。例えば、海水、河川水等の液体中に複数の鋼管矢板11が環状に配列されることにより、護岸、岸壁、防波堤等が形成される。なお、鋼管矢板11の寸法に制限はなく、工事の目的に応じて適宜選択される。
【0047】
鋼管矢板11は、中空の円柱状に形成された鋼管13と、鋼管13の中心を挟むように鋼管13の外側の側面(外周面)に設けられた一対の継手15a,15bとを含む。継手15a,15bは、鋼管13の外周面から鋼管13の径方向外向きに突出する部材であり、鋼管13の一端(上端)から他端(下端)に至るように柱状に形成されている。
【0048】
一の鋼管矢板11の継手15aと他の鋼管矢板11の継手15bとが嵌め合わされることにより、鋼管矢板11同士が継手15a,15bを介して連結される。なお、継手15a,15bの形状に制限はなく、例えば鋼管矢板11の用途に応じてP-P型、L-T型、P-T型が使い分けられる。また、互いに嵌め合わされた継手15a,15bの内部には、隣接する鋼管13の間における遮水性を確保するとともに継手15a,15bの強度を向上させるため、モルタル等の充填材17が充填される。
【0049】
環状に配列された複数の鋼管矢板11の内側には、金属等でなり鋼管矢板11を支持する環状の連結部材19が設けられている。連結部材19は、鋼管13それぞれの外周面に連結されており、鋼管矢板11の傾きや移動を防止する。
【0050】
液体中に設置された鋼管矢板11を撤去する際には、継手15a,15bを切断して個々の鋼管矢板11を分離した後、鋼管矢板11を液体中から1本ずつ引き上げる。このとき、本実施形態に係る切断装置2を用いることにより、鋼管矢板11の切断作業を自動化(全自動化、又は半自動化)できる。以下、液体中に設置された鋼管矢板11を切断装置2で切断する際の手順について説明する。
【0051】
まず、第1アーム6aと第2アーム6bとの間に鋼管矢板11が配置されるように、第1アーム6a及び第2アーム6bの一部又は全体を液体中に配置する(第1工程)。
図6(A)は、第1工程における切断装置2及び鋼管矢板11を示す一部断面正面図である。なお、
図6(A)では、切断装置2の主要な構成要素のみを図示している。
【0052】
第1工程では、鋼管矢板11が設置されている河川水、海水等の液体50中に、第1アーム6aと第2アーム6bとを挿入する。このとき、第1アーム6aと第2アーム6bとは、互いに連結された継手15a,15bを挟むように配置され、第1滑車12a及び第2滑車12bによって支持されたワイヤーソー34が継手15a,15bと重なるように配置される。
【0053】
次に、ワイヤーソー34を鋼管矢板11に接触させて、鋼管矢板11を液体50の深さの方向に沿って切断する(第2工程)。
図6(B)は、第2工程における切断装置2及び鋼管矢板11を示す一部断面正面図である。なお、
図6(B)では、切断装置2の主要な構成要素のみを図示している。
【0054】
第2工程では、まず、駆動機構28(
図1等参照)によってワイヤーソー34を走行させる。具体的には、第3回転駆動源32で第3駆動滑車30を回転させることにより、ワイヤーソー34を第1滑車12aから第2滑車12bに向かって所定の速度で走行させる。このとき、第1滑車12aと第2滑車12bとの高さ位置は同じであっても異なっていてもよい。第1滑車12aと第2滑車12bとの高さ位置が異なる場合には、第1滑車12aと第2滑車12bとの間で張られたワイヤーソー34が、水平方向(X軸方向)に対して傾斜した状態となる。
【0055】
次に、ワイヤーソー34を走行させた状態で、第1滑車12a及び第2滑車12bを第1移動機構14a及び第2移動機構14b(
図1等参照)によって下降させる。具体的には、第1回転駆動源22aで第1駆動滑車16aを回転させて第1動力伝達部材20aを走行させることにより、第1可動体24aを下降させ、第1滑車12aを第1アーム6aの基端側(上端側)から先端側(下端側)へと向かう方向に移動させる。また、第2回転駆動源22bで第2駆動滑車16bを回転させて第2動力伝達部材20bを走行させることにより、第2可動体24bを下降させ、第2滑車12bを第2アーム6bの基端側(上端側)から先端側(下端側)へと向かう方向に移動させる。
【0056】
第1滑車12aから第2滑車12bに向かってワイヤーソー34が走行している状態で第1滑車12a及び第2滑車12bが下降し、第1滑車12aと第2滑車12bとの間の領域で、ワイヤーソー34が鋼管矢板11に押し当てられる。その結果、鋼管矢板11のワイヤーソー34と重なる領域が液体50の深さ方向(Z軸方向)に沿って切断される。また、鋼管矢板11のワイヤーソー34によって切断された領域には、切り口11aが形成される。
【0057】
具体的には、互いに連結された継手15a,15bが、鋼管13の高さ方向(継手15a,15bの長さ方向)に沿って切断される。このときワイヤーソー34は、X軸方向と平行な状態で継手15a,15bに切り込んでもよいし、X軸方向に対して傾斜した状態で継手15a,15bに切り込んでもよい。そして、継手15a,15bが上端から下端まで切断されると、継手15a,15bによって連結されていた一対の鋼管矢板11が分離される。
【0058】
なお、鋼管矢板11には他の部材が接続されていることがある。この場合には、ワイヤーソー34で他の部材を鋼管矢板11とともに切断してもよい。例えば、
図4及び
図5に示すように、鋼管矢板11には環状の連結部材19が固定されている。この場合、継手15a,15b及び連結部材19を第1アーム6aと第2アーム6bとの間に配置することにより、継手15a,15bと連結部材19とをワイヤーソー34で同時に切断できる。これにより、鋼管矢板11の分離に要する工程及び時間が削減される。
【0059】
互いに連結された全ての継手15a,15bをワイヤーソー34で切断すると、環状に配列された複数の鋼管矢板11が個々に分離される。そして、鋼管矢板11を1本ずつ液体50から引き上げることにより、鋼管矢板11が撤去される。
【0060】
なお、継手15a,15bの長さが第1滑車12a及び第2滑車12bの昇降距離の上限よりも大きい場合には、ワイヤーソー34を下降させても継手15a,15bが下端まで切断されない。この場合には、鋼管矢板11を横方向に切断して鋼管矢板11の上部を撤去した後、改めてワイヤーソー34で鋼管矢板11の切断を続行してもよい。
【0061】
具体的には、まず、第2工程において第1滑車12a及び第2滑車12bを第1アーム6a及び第2アーム6bの先端部まで下降させる。これにより、第1滑車12aと第2滑車12bとの間の領域で鋼管矢板11の継手15a,15bが切断され、継手15a,15bには、鋼管矢板11の下端に至らない深さの切り口11a(溝)が形成される。
【0062】
次に、鋼管矢板11に形成された切り口11aに横切り用ワイヤーソーを挿入する(第3工程)。
図7(A)は、第3工程における鋼管矢板11を示す断面図である。
【0063】
第3工程では、鋼管矢板11の切り口11aに横切り用ワイヤーソー52を挿入する。横切り用ワイヤーソー52としては、例えばワイヤーソー34と同様にダイヤモンドワイヤーソーを用いることができる。ただし、横切り用ワイヤーソー52は、ワイヤーソー34よりも細いことが好ましい。これにより、横切り用ワイヤーソー52を切り口11aにスムーズに挿入できる。そして、横切り用ワイヤーソー52は切り口11bの底部に位置付けられる。
【0064】
次に、横切り用ワイヤーソー52によって鋼管矢板11を液体50の深さの方向と交差する方向に沿って切断する(第4工程)。例えば第4工程では、横切り用ワイヤーソー52を張った状態で走行させつつ、横切り用ワイヤーソー52を鋼管13の径方向(Y軸方向)に沿って移動させる。その結果、横切り用ワイヤーソー52によって鋼管13及び継手15a,15bが鋼管13の径方向に沿って切断される。
図7(B)は、第4工程における鋼管矢板11を示す断面図である。
【0065】
横切り用ワイヤーソー52によって鋼管矢板11を横方向に切断すると、鋼管矢板11には鋼管矢板11の径方向に沿って切り口11bが形成され、鋼管矢板11が上部と下部とに分離される。そして、鋼管矢板11の上部は引き上げられて撤去される。
図7(C)は、上部が撤去された鋼管矢板11を示す断面図である。
【0066】
その後、鋼管矢板11の下部に対して第1工程乃至第4工程が繰り返され、継手15a,15b及び鋼管13が段階的に切断される。これにより、継手15a,15bの長さが第1滑車12a及び第2滑車12bの昇降距離の上限より大きい場合にも、鋼管矢板11を分離して撤去することが可能になる。
【0067】
以上の通り、本実施形態に係る切断装置2は、第1滑車12aを支持する第1アーム6aと第2滑車12bを支持する第2アーム6bとを備え、第1滑車12a及び第2滑車12bによって支持されたワイヤーソー34を走行させつつ第1アーム6aと第2アーム6bとの間に配置された被切断物に接触させることによって被切断物を切断する。これにより、液体50中に配置された被切断物を自動で連続的に切断することが可能になり、被切断物の切断に要する時間及びコストが大幅に削減される。また、液体50中における潜水士の作業量が低減され、潜水士の身体への負担が軽減される。
【0068】
なお、本実施形態では被切断物が鋼管矢板11である場合について説明したが、切断装置2によって切断される被切断物に制限はない。例えば切断装置2は、鉄筋コンクリート、鉄骨、大理石、レンガ等でなる構造物を切断することもできる。
【0069】
また、切断装置2には、切断装置2の状態や切断加工の状況を監視するためのカメラ、各種のセンサ等が設けられていてもよい。例えば、第1可動体24a(
図1等参照)には第1滑車12aを撮影可能な第1カメラが設けられていてもよく、第2可動体24b(
図1等参照)には第2滑車12bを撮影可能な第2カメラが設けられていてもよい。第1カメラ及び第2カメラで第1滑車12a及び第2滑車12bを撮影することにより、被切断物の切断中における第1滑車12a及び第2滑車12bの状態を監視することが可能になる。
【0070】
また、第1可動体24aには水圧を測定する第1圧力計が設けられていてもよく、第2可動体24bには水圧を測定する第2圧力計が設けられていてもよい。この場合、第1圧力計及び第2圧力計によって測定された圧力に基づいて、第1滑車12a及び第2滑車12bが配置されている液体50中の深さを算出できる。これにより、被切断物の切断の進捗状況を監視することが可能になる。
【0071】
第1カメラ、第2カメラ、第1圧力計、第2圧力計はそれぞれ、コントローラ48に接続される。そして、コントローラ48は、第1カメラ及び第2カメラに制御信号を出力することにより、第1カメラ及び第2カメラによる第1滑車12a及び第2滑車12bの撮影のタイミング、頻度等を制御する。また、コントローラ48は、第1圧力計及び第2圧力計に制御信号を出力することにより、水圧測定のタイミング、頻度等を制御する。
【0072】
また、液体50中の深い位置に設置されている鋼管矢板11、上部が撤去された鋼管矢板11(
図7(C)参照)等を切断する場合には、第1工程において切断装置2の全体が液体50中に配置されることがある。この場合、ベースフレーム4(
図1等参照)も第1アーム6a及び第2アーム6bとともに液体50中に配置される。その結果、駆動機構28(
図1等参照)も液体50に配置されることになり、第3駆動滑車30が液体50の抵抗によって回転しにくくなる。
【0073】
そこで、切断装置2は、ベースフレーム4及び駆動機構28(第3駆動滑車30及び第3回転駆動源32)を覆うカバーをさらに備えることが好ましい。例えば、ガラス、プラスチック、金属等でなるカバーが、ベースフレーム4の全体及び駆動機構28を覆うように装着される。
【0074】
なお、駆動機構28(第3駆動滑車30及び第3回転駆動源32)は、ベースフレーム4の内部に設けられてもよい。この場合には、ベースフレーム4の上面、下面、前面、後面、右側面及び左側面を覆うカバーを設けることにより、駆動機構28がカバーによって覆われる。また、カバーには、ワイヤーソー34が通過する貫通孔が設けられてもよい。
【0075】
ベースフレーム4をカバーによって覆うことにより、ベースフレーム4が液体50に沈むように配置された際に、ベースフレーム4の内部への液体50の浸入が防止される。これにより、ベースフレーム4の内部に設けられた第3駆動滑車30が液体50に沈むことを防止し、第3駆動滑車30の回転に要するトルクを低減できる。
【0076】
なお、上記のカバーを設ける場合には、定滑車36、第3滑車38a及び第4滑車38bもベースフレーム4の内部に設置することが好ましい。これにより、定滑車36、第3滑車38a及び第4滑車38bを円滑に回転させることができる。
【0077】
また、ベースフレーム4を覆うカバーを設ける代わりに、駆動機構28のみを覆う小型のカバーを設けることもできる。同様に、定滑車36、第3滑車38a及び第4滑車38bをそれぞれ小型のカバーで覆ってもよい。
【0078】
さらに、第1可動体24a(
図1等参照)には、第1滑車12a及び第1カメラを覆うカバーが装着されてもよい。同様に、第2可動体24b(
図1等参照)には、第2滑車12b及び第2カメラを覆うカバーが装着されてもよい。これにより、第1滑車12a及び第2滑車12bが円滑に回転するとともに、第1カメラ及び第2カメラが液体50から保護される。
【0079】
その他、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0080】
11 鋼管矢板
11a,11b 切り口
13 鋼管
15a,15b 継手
17 充填材
19 連結部材
2 切断装置
4 ベースフレーム
4a 第1フレーム
4b 第2フレーム
6a 第1アーム
6b 第2アーム
8a,8b X軸支持アーム
10a,10b Y軸支持アーム
12a 第1滑車
12b 第2滑車
14a 第1移動機構
14b 第2移動機構
16a 第1駆動滑車
16b 第2駆動滑車
18a 第1従動滑車
18b 第2従動滑車
20a 第1動力伝達部材
20b 第2動力伝達部材
22a 第1回転駆動源
22b 第2回転駆動源
24a 第1可動体
24b 第2可動体
26 支持フレーム
28 駆動機構
30 第3駆動滑車
32 第3回転駆動源
34 ワイヤーソー
36 定滑車
38a 第3滑車
38b 第4滑車
40a 第3移動機構
40b 第4移動機構
42a 第1レール
42b 第2レール
44a 第3動力伝達部材
44b 第4動力伝達部材
46a 第3可動体
46b 第4可動体
48 コントローラ
50 液体
52 横切り用ワイヤーソー