(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024061
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】反応装置、反応システム、電池用材料製造システム、電池製造システム、固体電解質製造システムおよび反応生成物製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 7/20 20060101AFI20230209BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230209BHJP
F27B 7/08 20060101ALI20230209BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230209BHJP
B01F 29/60 20220101ALI20230209BHJP
B01J 19/24 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F27B7/20
H01B13/00 Z
F27B7/08
H01M10/0562
B01F9/02 B
B01F9/02 D
B01J19/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130117
(22)【出願日】2021-08-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
【テーマコード(参考)】
4G036
4G075
4K061
5H029
【Fターム(参考)】
4G036AA04
4G075AA24
4G075AA27
4G075AA63
4G075BA02
4G075BB05
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4G075CA02
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4G075DA18
4G075EA03
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4G075ED04
4G075ED09
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4G075FB04
4K061AA08
4K061BA07
4K061BA09
4K061CA29
4K061DA09
4K061EA10
4K061FA04
4K061GA02
4K061GA05
4K061GA06
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029HJ03
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供する。
【解決手段】反応装置10において、キルン部100は、一端側に供給される原料を受け入れる供給口101と、他端側に反応生成物を送出する送出口102と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部103と、筒部103の内壁から中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板104と、を有する。駆動部120は、中心軸を回転中心としてキルン部を回転させる。加熱部110は、キルン部100の外周部を加熱する。キルン部100は、受け入れた所定の原料が邪魔板104に接触しながら中心軸に沿って送出口102へ搬送されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部と、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させる駆動部と、
前記キルン部の外周部を加熱する加熱部と、を備え、
前記キルン部は、受け入れた所定の原料が前記邪魔板に接触しながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送されるように構成されている、
反応装置。
【請求項2】
前記邪魔板は、前記内壁において前記中心軸を跨ぎ対向する2カ所を接続するように延伸する梁を成す、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記邪魔板は、前記筒部を前記中心軸に直交する面に投影した場合に円筒内部の3分の1以上の面積を塞ぐ、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記邪魔板は、前記原料が接触する接触面に複数の凸部を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記邪魔板は、前記原料が接触する接触面において前記原料の粒径より大きい凹部を複数有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記邪魔板は、前記原料が通過可能な大きさの孔部を複数有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記邪魔板は、前記原料の粒径より大きい凹部または前記原料が通過可能な大きさの孔部を複数有し、
前記キルン部は、前記送出口の近傍である第3領域に形成される前記邪魔板が有する前記凹部または前記孔部の数が、前記第3領域より前記送出口から遠い第4領域に形成される前記邪魔板が有する前記凹部または前記孔部の数よりも多くなるように設定される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記キルン部は、複数の前記邪魔板が前記内壁に螺旋状に形成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記キルン部は、前記供給口の近傍である第1領域において螺旋状に形成される前記邪魔板の第1リード角が、前記第1領域より前記供給口から遠い第2領域において螺旋状に形成される前記邪魔板の第2リード角よりも大きくなるように設定される、
請求項8に記載の反応装置。
【請求項10】
前記邪魔板は、前記加熱部により所定の温度に制御された流体を循環させる循環路を内包する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記邪魔板は、前記原料と接触する接触面がカーボンまたはセラミックスを含む部材により構成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記邪魔板は、前記原料と接触する接触面の内層に、金属を主成分とした部材を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記加熱部は、前記キルン部の内部温度を室温から摂氏1500度に加熱可能である
請求項1~12のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
前記キルン部は、前記筒部の延伸方向が水平方向に対して-90度から+90度の範囲の傾きを有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置である第1反応装置と第2反応装置とを直列に連結した、
反応システム。
【請求項16】
前記原料に圧力を加えて造粒物を製造する造粒装置と、
前記造粒物を受け入れて反応生成物を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、を備える
反応システム。
【請求項17】
反応生成物として固体電解質を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、
前記固体電解質と、バインダ樹脂と、を混練して連続的に押し出すことにより混練物を製造する混練物製造装置と、
前記混練物をシート状に成形して電解質シートを製造するシート製造装置と、を備える
電池用材料製造システム。
【請求項18】
請求項17に記載の電池用材料製造システムと、
前記電池用材料製造システムが製造した前記電解質シートに正極活物質を含む電極シートをラミネートするラミネータと、を備える、
電池製造システム。
【請求項19】
反応生成物として固体電解質を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、
前記固体電解質と、バインダ樹脂と、を混練して連続的に押し出すことにより混練物を製造する混練物製造装置と、
前記混練物をシート状に成形してシート状の前記固体電解質を製造するシート製造装置と、を備える
固体電解質製造システム。
【請求項20】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部を用意し、
前記キルン部の内部を所定の温度に加熱し、
前記供給口から前記原料を供給し、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させることにより、前記原料を前記邪魔板に接触させながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送し、
前記送出口から反応生成物を送出する、
反応生成物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応装置、反応システム、電池用材料製造システム、電池製造システム、固体電解質製造システムおよび反応生成物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料に対して所定の雰囲気を与えることにより所望の製品を連続的に製造するための反応装置が存在する。例えば一般には、ロータリーキルンと称される反応装置は、中心軸周りに回転する中空のキルン部を加熱し、このキルン部に材料を転動させながら通過させることにより所望の製品を製造する。また例えばローラーハースキルンと称される反応装置は、トンネル型のキルン部に原料やワークを通過させることにより所望の製品を製造する。またその他にも種々の反応装置が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1は、以下の反応装置について開示している。反応装置は、圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体と、スクリュフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、スクリュフィーダ本体内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、を有する。またこの反応装置は、生成したナノ炭素を移送するスクリュと、スクリュによって移送される触媒とナノ炭素を送出する固体送出部と、生成した水素をフィーダ本体外に送出する気体送出部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所で、固体電解質などの所望の反応生成物を製造する場合には、例えば原料に対して摂氏1000度を超える温度環境を付与する工程が必要となる。このような温度環境を伴う工程により所望の反応生成物を製造するためには、次のような課題がある。まず、上述のスクリュを用いた反応装置は、摂氏1000度を超える温度に対応することが難しい。またローラーハースキルンは、炉内の原料に対して均一に温度を付加することが難しい。さらにロータリーキルンは、炉内全体を高温に保つことにより、炉の下部を転動流動する原料に熱を付与するため熱効率が悪い。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる反応装置は、キルン部、駆動部および加熱部を有する。キルン部は、一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、筒部の内壁から中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有する。駆動部は、中心軸を回転中心としてキルン部を回転させる。加熱部は、キルン部の外周部を加熱する。上記キルン部は、受け入れた所定の原料が邪魔板に接触しながら中心軸に沿って送出口へ搬送されるように構成されている。
【0008】
本開示にかかる反応生成物製造方法は、反応装置を使用して反応生成物を製造する使用者が以下の方法を実行する。使用者は、一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部を用意する。使用者は、キルン部の内部を所定の温度に加熱する。使用者は、供給口から原料を供給する。使用者は、中心軸を回転中心としてキルン部を回転させることにより、原料を邪魔板に接触させながら中心軸に沿って送出口へ搬送する。使用者は、送出口から反応生成物を送出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる反応装置の側面方向の断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる反応装置の正面方向の断面図である。
【
図3】反応装置が実行する処理のフローチャートである。
【
図4】加熱部および邪魔板の構成例を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2にかかる反応装置の側面方向の断面図である。
【
図6】実施の形態2にかかる反応装置の正面方向の断面図である。
【
図7】実施の形態3にかかる反応装置の側面方向の断面図である。
【
図8】実施の形態3にかかる反応装置の正面方向の断面図である。
【
図9】実施の形態4にかかる反応システムの構成図である。
【
図10】実施の形態5にかかる反応システムの構成図である。
【
図11】実施の形態6にかかる電池用材料製造システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
図1を参照しながら、実施の形態1にかかる反応装置の主な構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる反応装置10の側面方向の断面図である。反応装置10は、原料に所定の物理的な刺激等の条件を与えることにより反応生成物を製造するための装置である。
【0013】
原料や反応生成物の種類や状態は特に制限されないが、リチウムを成分の一つに含む金属酸化物や金属硫化物のような無機物であってもよいし、炭化水素のような有機物であってもよい。また、原料や反応生成物の形状や大きさは特に制限されないが、形状が塊状の場合の対角長さは、好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは1~20mmである。さらに、原料や反応生成物の形状が塊状の場合、対角長さの比率(アスペクト比)は、好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1.3~1.8である。反応装置10は主な構成として、キルン部100、駆動部120および加熱部を有する。また反応装置10は上記構成に加えて、フード130、フィーダ140およびキルンフット150を有する。
【0014】
キルン部100は主な構成として、供給口101、送出口102、筒部103および邪魔板104を有する。供給口101は、一端側に供給される原料を受け入れる。送出口102は、他端側に反応生成物を送出する。筒部103は、一端側に供給口101を有し他端側に送出口102を有する円筒状の部材であって、中心軸C10に沿って回転可能に延伸する。
【0015】
邪魔板104は、筒部103の内壁から中心軸C10を含む中央領域C11を通過するように設けられている。加熱部110は、キルン部100の内部温度を室温から摂氏1500度に加熱可能である。そのため邪魔板104は、例えば原料R10と接触する接触面がカーボンまたはセラミックスを含む部材により構成されている。
【0016】
なお中央領域C11は、例えば筒部103の内壁が形成する円の半分の直径の領域である。邪魔板104はキルン部100の内部において、中心軸C10に沿って複数設けられている。より具体的には、
図1に示す邪魔板104は、中心軸C10に直交する方向に延伸する四角柱状の邪魔板104Aと、この邪魔板104Aと同じ形状であって延伸する方向が邪魔板104Aと異なる邪魔板104Bとを含む。なお、邪魔板104は1つ以上であればよい。また以降の説明において、単に邪魔板104と記載した場合には、邪魔板104Aおよび邪魔板104Bのいずれも含む。
【0017】
キルン部100は受け入れる原料に対して室温から摂氏1500度の範囲における所定の温度を付与する。そのため、キルン部100の主たる構成はこの温度に耐えうる部材により形成されている。すなわちキルン部100を構成する部材は、セラミックスまたはカーボンである。あるいはキルン部100を構成する部材は、ニッケルやクロムなどを主成分とする合金が採用され得る。
【0018】
キルン部100は筒部103における供給口側が送出口側より高くなるように傾斜して設置されてもよい。
図1に示すキルン部100は、筒部103の中心軸C10が水平方向に対して所定の角度θの傾斜を有している。これにより、キルン部100は、受け入れた所定の原料が邪魔板104に接触しながら中心軸C10に沿って送出口102へ搬送されるように構成されている。なお、角度θは-90度から+90度の範囲から選択し得る。
【0019】
図1に示すキルン部100は、供給口101にフード130が係合する。フード130は、キルン部100における供給口101の側を回転可能に支持するとともに、フィーダ140を支持する。フィーダ140は上方に設けられた開口部である原料投入口141から原料R10を受け入れて、受け入れた原料R10を供給口101に案内する。
【0020】
またキルン部100は、送出口102にキルンフット150が係合する。キルンフット150は送出口102の側を回転可能に支持するとともに、送出口102から送出される反応生成物R11を反応生成物出口151から送出する。
【0021】
駆動部120は、モータと、このモータから突出する駆動軸に嵌合する駆動力伝達部121とを有する。駆動部120は駆動力伝達部121が従動部105を駆動してキルン部100を回転させる。駆動力伝達部121および従動部105は例えば互いに噛み合うように構成された歯車である。駆動部120はこのような構成により中心軸C10を回転中心としてキルン部100を回転させる。これにより、キルン部100は、供給口101から受け入れた原料R10を転動させながら送出口102に搬送する。
【0022】
加熱部110は、キルン部100の外周部を加熱する。加熱装置は例えば室温から摂氏1500度程度の範囲の加熱を行う。加熱部110は、例えば筒状のキルン部100の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。あるいは加熱装置は、ガスを燃焼して加熱した流体を循環させるものであってもよい。加熱部110は、キルン部100の温度を制御するための制御装置を含みうる。例えば加熱部110は、キルン部100の所定の位置に温度を監視するための温度計を有していてもよい。
【0023】
また加熱部110はキルン部100の延伸方向に沿って複数設置されていてもよい。反応装置10は例えば、供給口101に比較的に近い側であって、供給口101から離間した位置に第1加熱部110Aを有し、第1加熱部110Aよりも送出口102に比較的に近い側に第2加熱部110Bを有し得る。この場合例えば、供給口101における内部温度は供給口101の領域では室温となる。また第1加熱部110Aはキルン部100の内部温度を例えば500度になるように制御する。さらに第2加熱部110Bはキルン部100の内部温度を例えば1500度になるように制御する。この場合、反応装置10は、第1制御装置により設定された温度(500度)の領域において原料R10を脱脂し、第2制御装置により設定された温度(1500度)の領域において原料R10を焼結し得る。上述のように、反応装置10は複数の加熱部110を有することによりキルン部100の延伸方向に沿って複数の温度プロファイルを設定できる。
【0024】
反応装置10は上述の構成により、キルン部100を回転させるとともに、キルン部100を加熱する。キルン部100は、加熱部110により外周部が加熱されると、その熱を中央領域C11に向かって伝導する。図において示す太い実線の矢印は加熱部110の熱が筒部103および邪魔板104に伝わる状態を示している。筒部103および邪魔板104に熱が伝わると、この熱はキルン部100の内部に放射される。図において示す点線の矢印は、邪魔板104から熱が放射される状態を示している。図に示すように、反応装置10は、邪魔板104を介してキルン部100の内部を効率よく加熱できる。
【0025】
次に、
図2を参照してキルン部100についてさらに説明する。
図2は、実施の形態1にかかる反応装置の正面方向の断面図である。
図2は、
図1のII-II断面を中心軸C10に平行な方向から観察した断面図である。キルン部100は、中心軸C10を中心として図に示す白い矢印の方向に(時計回りに)回転する。
【0026】
キルン部100の周囲は加熱部110が配置されている。加熱部110は筒部103の外周を加熱する。なお、加熱部110は、キルン部100とともに回転する構成であってもよいし、キルン部100の回転を妨げないように回転しない構成であってもよい。
【0027】
キルン部100が有する邪魔板104Aは、筒部103の内径部における対向する位置を橋渡しするように設けられている。すなわち邪魔板104Aは、筒部103の内壁における所定の対向する位置を、中央領域C11を通過して橋渡しする。邪魔板104Bは、邪魔板104Aと離間した位置において、邪魔板104と同様に筒部103の内径部における対向する位置を橋渡しするように設けられている。ただし図に示すように、邪魔板104Aと邪魔板104Bとは、筒部103の径方向において互いに直交する方向に延伸している。
【0028】
図2に示す太い実線の矢印は、加熱部110が発した熱がキルン部100に伝わる様子を部分的に例示したものである。また点線の矢印は、キルン部100が内部に放射する熱を例示したものである。加熱部110が筒部103の外周部を加熱すると、熱は筒部103から邪魔板104に伝わる。筒部103および邪魔板104に伝わった熱は、キルン部100の内部に放射される。このように、キルン部100は、中央領域C11を通過する邪魔板104が加熱部110の熱を中央領域C11にも放射する。これによりキルン部100は内部全体を効率よく加熱できる。そのため、反応装置10は原料R10に効率よく熱を付与し、反応を促進できる。
【0029】
次に、
図3を参照して、反応装置10が実行する処理について説明する。
図3は、反応装置が実行する処理(反応生成物製造方法)のフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、例えば反応装置10を使用して反応生成物を製造する使用者が反応装置10を使って実行する。
【0030】
まず、使用者は、キルン部100を含む反応装置10を用意する(ステップS11)。使用者が用意する反応装置10は、上述した構成を有する。
【0031】
次に、使用者は、反応装置10を操作し、加熱部110にキルン部100を加熱させる。すなわち加熱部110は、キルン部100の内部を所定の温度に加熱する(ステップS12)。
【0032】
次に、使用者は、供給口101からキルン部100に原料R10を供給する(ステップS13)。なお、使用者はフィーダ140に原料R10を投入することにより原料R10を供給口101に供給する。
【0033】
次に、使用者は、反応装置10を操作してキルン部100を回転させる。反応装置10は、駆動部120を駆動することによりキルン部100を回転させる。これにより、反応装置10は、原料R10を邪魔板104に接触させながら送出口102へ搬送する(ステップS14)。
【0034】
次に、使用者は、送出口102から反応生成物を送出させる(ステップS15)。
【0035】
以上、反応装置10が実行する反応生成物製造方法について説明した。上述の方法は、反応装置10が原料R10から反応生成物R11を製造し、製造した反応生成物R11を送出するまでの流れに沿って示されている。しかし、反応装置10は、例えばステップS14におけるキルン部100の回転操作を、ステップS13の前から実行していてもよい。
【0036】
次に、
図4を参照して、加熱部110および邪魔板104の構成例について説明する。
図4は、加熱部110および邪魔板104の構成例を示す断面図である。
図4の例において、邪魔板104は、加熱部110により温度制御された流体を循環させる循環路を内包する。また加熱部110は、加熱流体循環部112を有している。加熱流体循環部112は、所定の流体の温度を制御し、この流体をキルン部100に循環させる。より具体的には例えば加熱流体循環部112は、流体の温度が室温から摂氏1500度の間の所定の温度になるようにこの流体を加熱または冷却する。加熱流体循環部112が温度制御した流体は、筒部103および邪魔板104の内部に設けられた流路111を介してキルン部100を循環しながら流路111において適宜熱交換を行う。これにより、加熱部110は、キルン部100を加熱することもできるし、冷却することも出来る。
【0037】
加熱流体循環部112が温度制御する流体は、オイルまたはガス等である。キルン部100は、例えば中心軸C10方向の両端部において流路111の入口または出口を有している。流路111の入口および出口は、キルン部100が回転をしながら流体が出入り可能に構成される。これにより、例えば邪魔板104は、邪魔板104の表面において接触する原料R10と熱交換を行うとともに、キルン部100の内部空間を加熱または冷却する。よって、反応装置10はキルン部100の内部を効率よく温度制御できる。
【0038】
以上、実施の形態1について説明した。上述の通り、反応装置10は邪魔板104を有することによりキルン部100の内部を効率よく加熱する。これにより原料R10は邪魔板104が存在しない場合に比べて例えばキルン部100をコンパクトに設計し得る。
【0039】
なお、邪魔板104の配置や形状は、上述の構成に限られない。例えば邪魔板104は、上述したように、筒部103の内壁において中心軸C10を跨ぎ対向する2カ所を接続するように延伸する梁を成すものであってもよい。また邪魔板104は、筒部103を中心軸C10に直交する面に投影した場合に円筒内部の3分の1以上の面積を塞ぐものであってもよい。また邪魔板104の形状は、四角柱状でなく、任意の形状であってもよい。このような構成により、邪魔板104はキルン部100の内部に効率よく熱を放射する。また邪魔板104は、原料R10と接触する接触面の内層に、金属を主成分とした部材を含むものであってもよい。これにより邪魔板104は、加熱部110により付与される熱を効率よく中央領域C11に伝達できる。以上、実施の形態1によれば、所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供することができる。
【0040】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。
図5は、実施の形態2にかかる反応装置20の側面方向の断面図である。
図5に示す反応装置20は、邪魔板104の構成が
図1に示す反応装置10と異なる。
【0041】
図5に示す邪魔板104は中心軸C10に沿ってピッチP10の距離によりそれぞれ配置されている。また邪魔板104は中心軸C10に沿って所定の角度ずつ捻じれながら配置されている。すなわち、反応装置20は、キルン部100において複数の邪魔板104が内壁に螺旋状に形成されている。邪魔板104が形成する螺旋のリード角は、筒部103の内壁において隣接する邪魔板104が立設される位置を接続する線により定義され得る。
図5に示すキルン部100における邪魔板104はリード角A10を有している。
【0042】
次に、
図6を参照して邪魔板104についてさらに説明する。
図6は、実施の形態2にかかる反応装置の正面方向の断面図である。
図6は、
図5のVI-VI断面を中心軸C10に平行な方向から観察した断面図である。図に示すキルン部100において、断面により示されている邪魔板104Aと、この邪魔板104Aに隣接する邪魔板104Bとは、中心軸C10を基準として捻じれ角A11を成している。また同様に邪魔板104Bから送出口102に向かってそれぞれ隣接する邪魔板104も、同様に捻じれ角A11ずつ捻じれた位置に配置されている。
【0043】
本実施の形態にかかる邪魔板104は、このような螺旋状の配置により、原料R10を好適に搬送する機能を有する。なお、
図5および
図6に示した邪魔板104は原料R10との接触面が平面を形成する四角柱状の形状を例示した。しかし、邪魔板104の形状はこれに限られない。例えば、邪魔板104は、原料R10を効率よく搬送することを目的として、捻じれた四角柱形状を呈していてもよい。また邪魔板104は、延伸方向に直交する断面形状が四角形でなくてもよい。
【0044】
なお、複数の邪魔板104が形成する螺旋は、キルン部100において均一でなくてもよい。邪魔板104が形成する螺旋のリード角は、キルン部100による原料R10の搬送機能に関連する。螺旋のリード角が比較的に大きい場合における原料R10の搬送速度は、螺旋のリード角が比較的に小さい場合における原料R10の搬送速度よりも早くなる。そこで、例えばキルン部100は、供給口101の近傍である第1領域におけるリード角(第1リード角)と、第1領域より供給口101から遠く送出口102に近い第2領域におけるリード角(第2リード角)とが異なるように構成されていてもよい。すなわち、キルン部100は、第1領域における邪魔板104の第1リード角が、第2領域における邪魔板104の第2リード角よりも大きくなるように設定されるものであってもよい。
【0045】
このような構成により、反応装置20は、温度が比較的に安定しにくい供給口101の近傍における搬送速度が比較的に速くなるように設定する一方、温度が比較的に安定し易い領域における搬送速度が比較的に遅くなるように設定できる。これにより、実施の形態2にかかる反応装置20は、原料R10の反応を促進し、より効率よく反応生成物を製造できる。
【0046】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。
図7は、実施の形態3にかかる反応装置30の側面方向の断面図である。
図7に示す反応装置30は、邪魔板104の構成が上述の反応装置10および反応装置20と異なる。
【0047】
図7に示す邪魔板104は中心軸C10に直交する面F12に対して傾斜角A12を成す。また互いに隣接する邪魔板104は、面F12を基準として中心軸C10の方向に対称となる方向に傾斜角を有している。そのため、隣接する2つの邪魔板104は傾斜角A12の2倍の角度2*A12を成す関係となっている。
【0048】
次に、
図8を参照して本実施の形態にかかる邪魔板104についてさらに説明する。
図8は、実施の形態3にかかる反応装置30の正面方向の断面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII断面を中心軸C10に平行な方向から観察した断面図である。本実施の形態にかかる邪魔板104は、筒部103を中心軸C10に直交する面に投影した場合に円筒内部の3分の1以上の面積を塞ぐ半円形状を呈している。また邪魔板104は中央領域C11を通過するように形成されている。さらに、図に示すキルン部100において、断面により示されている邪魔板104Aと、この邪魔板104Aに隣接する邪魔板104Bとは、中心軸C10を基準として回転対称を成している。
【0049】
以上に述べたように、本実施の形態にかかる邪魔板104は、半円形状を呈し、隣接する邪魔板104は中心軸C10に直交する面に対して互いに異なる方向に傾斜している。また複数の邪魔板104は、中心軸C10に対して回転対称を成しながら中心軸C10に沿って交互に配置されている。このような構成により、邪魔板104は原料R10に接触しながら搬送する。すなわち、本実施の形態にかかる邪魔板104は、原料R10に接触しながら好適に加熱し、且つ、原料R10を好適に搬送する。
【0050】
なお、邪魔板104が成す傾斜角A12は、螺旋のリード角に相当する指標となり得る。そのため、本実施の形態にかかるキルン部100において、傾斜角A12が比較的に大きく設定された領域における搬送速度は、傾斜角A12が比較的に小さく設定された領域における搬送速度より速くなる。そこで、例えばキルン部100は、供給口101の近傍である第1領域における傾斜角(第1傾斜角)と、第1領域より供給口101から遠く送出口102に近い第2領域における傾斜角(第2傾斜角)とが異なるように構成され得る。すなわち、キルン部100は、第1領域における邪魔板104の第1傾斜角が、第2領域における邪魔板104の第2傾斜角よりも大きくなるように設定されるものであってもよい。
【0051】
このような構成により、反応装置30は、温度が比較的に安定しにくい供給口101の近傍における搬送速度が比較的に速くなるように設定する一方、温度が比較的に安定し易い領域における搬送速度が比較的に遅くなるように設定できる。これにより、実施の形態3にかかる反応装置30は、原料R10の反応を促進し、より効率よく反応生成物を製造できる。
【0052】
また本実施の形態にかかる反応装置30は、邪魔板104が原料R10に接触し、且つ、接触した原料R10を上方に持ち上げたうえで落下させる。すなわち、本実施の形態にかかる邪魔板104は、原料R10を攪拌する機能も有している。よって、反応装置30は、原料R10を攪拌することにより原料R10の反応を促進させることができる。
【0053】
なお
図8に示す邪魔板104は、原料R10が接触する接触面において複数の凹部106を有している。凹部106は球状の凹部であって、表面の円の直径が原料R10の粒径より大きい。このような凹部を複数有することにより、邪魔板104は表面積が大きくなり、加熱部110から伝わった熱をキルン部100の内部に放射しやすくなる。また凹部106は原料R10が接触し、且つ、滞留しやすくなる。よって反応装置30は原料R10の反応を効率よく促進させることができる。
【0054】
なお、邪魔板104は、上述の凹部106に代えて、または上述の凹部106に加えて、原料R10の粒径より大きい大きさであって原料R10が通過可能な孔部を有するものであってもよい。このような孔部を有することにより、邪魔板104は、表面積が大きくなる。また邪魔板104はこのような孔部を有することにより原料R10に接触しやすくなる。
【0055】
さらに、邪魔板104は、上述の構成に代えて、または上述の構成に加えて、原料R10と接触する接触面に複数の凸部を有していてもよい。凸部を有することにより、邪魔板104は、表面積が大きくなる。また邪魔板104は凸部を有することにより原料R10に接触しやすくなる。
【0056】
また本実施の形態にかかる反応装置30において、邪魔板104が、原料R10の粒径より大きい凹部または原料が通過可能な大きさの孔部を複数有している場合、キルン部100は以下の構成を有していてもよい。すなわち、キルン部100は、送出口102の近傍である第3領域における邪魔板104が有する凹部または孔部の数が、第3領域より送出口102から遠い第4領域に形成される邪魔板が有する凹部または孔部の数よりも多くなるように設定されていてもよい。このような構成により、キルン部100は、送出口102の近傍である第3領域よりも比較的に送出口102から遠く、比較的に温度が安定している第4領域において原料R10を滞留させやすくなる。これにより反応装置30は原料R10の反応を好適に促進できる。
【0057】
以上、実施の形態3について説明した。本実施の形態にかかる反応装置30は、邪魔板104がキルン部100の内部に好適に熱を放射し、キルン部100の内部を加熱する。また邪魔板104は原料R10を好適に搬送する。さらに邪魔板104は原料R10を攪拌する。実施の形態3によれば、所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供することができる。
【0058】
<実施の形態4>
次に、
図9を参照して実施の形態4について説明する。
図9は、実施の形態4にかかる反応システムの構成図である。
図9は、実施の形態4にかかる反応システム1の構成図である。
図9に示す反応システム1は、2つの反応装置30すなわち第1反応装置30Aおよび第2反応装置30Bが直列に連結されたシステムである。
図9には、第1反応装置30Aと第2反応装置30Bとが連結した状態が模式的に示されている。反応システム1は、第1反応装置30Aにおける反応生成物の反応生成物出口151Aと、第2反応装置30Bにおける原料投入口141Bとが連結している。
【0059】
図に示す第1反応装置30Aは、原料投入口141Aから受け入れた原料R10に対して所定の物理的刺激Aを与えることにより反応生成物Aを生成する。第1反応装置30Aは、生成した反応生成物Aを、反応生成物出口151Aから送出する。
【0060】
第2流体制御領域140Aは、第1反応装置30Aの反応生成物出口151Aから送出された反応生成物Aを原料投入口141Bに受け入れる。第2反応装置30Bは所定の物理的刺激Bを与えることにより反応生成物Aから反応生成物Bを生成する。第2反応装置30Bは、生成した反応生成物Bを、反応生成物出口151Bから送出する。
【0061】
以上、実施の形態4について説明した。なお、上述の反応システム1において、第1反応装置30Aおよび第2反応装置30Bの一方または両方は、もちろん反応装置10または反応装置20であってもよい。また反応システム1は、3つ以上の反応装置が連結するものであってもよい。このような構成により、実施の形態4にかかる反応システム1は、原料に対して複数の物理的刺激を連続して付与できる。またこのような構成により、反応システム1は、システム自体の柔軟な配置および柔軟なシステム構成を可能とする。すなわち、実施の形態4によれば、複数の反応を要する所望の製品を効率よく製造する反応システムを提供することができる。
【0062】
<実施の形態5>
次に、
図10を参照して実施の形態5について説明する。
図10は、実施の形態5にかかる反応システムの構成図である。
図10に示す反応システム2は主な構成として、造粒装置210および反応装置30を有している。
【0063】
造粒装置210は、粉粒体である原料に圧力を加えて造粒物を製造する。造粒物は例えば数十ミクロンから数百ミクロン程度の粉粒体に圧力を加えることにより凝集して数ミリメートルから数十ミリメートルの大きさを有する粒体を製造する。造粒装置210は、製造した粒体を原料投入口141に供給する。
【0064】
反応装置30は、原料投入口141において粒体を受け入れると、受け入れた粒体をキルン部100に供給する。反応装置30は、受け入れた粒体に対して所定の物理的刺激を付与し、反応生成物を生成する。反応装置30は反応生成物を生成すると、生成した反応生成物を反応生成物出口151から送出する。
【0065】
以上、実施の形態5について説明した。本実施の形態にかかる反応システム2は、造粒装置210において原料に圧力を付与し、次いで、反応装置30において熱を加えながら攪拌する。これにより、反応システム2は例えば酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質を連続的に製造できる。すなわち、実施の形態5によれば、所望の反応生成物を効率よく連続的に製造できる。
【0066】
<実施の形態6>
次に、実施の形態6について説明する。
図11は、実施の形態6にかかる電池用材料製造システム3の構成図である。
図11に示す電池用材料製造システム3は、例えば固体二次電池の負極シートを製造するためのシステムである。電池用材料製造システム3は主な構成として第1工程領域P31、第2工程領域P32、第3工程領域P33および第4工程領域P34を有する。すなわち電池用材料製造システム3は、上述の第1工程、第2工程、第3工程および第4工程を経ることにより電池用材料を製造する。
【0067】
以下に示す例は、電池用材料製造システム3を用いて負極活物質を含む負極シートを製造するものである。第1工程領域P31において、電池用材料製造システム3は、負極活物質である固体電解質を製造する。第1工程領域P31は主な構成として、造粒装置210および反応装置30を有する。
【0068】
第1工程領域P31において、造粒装置210は粉粒体である原料を受け入れ、圧力を加えてタブレット状の粒体を製造する。造粒装置210は、製造した粒体を、反応装置30に供給する。反応装置30は受け入れた粒体を加熱しながら攪拌し、固体電解質を製造する。反応装置30は、製造した固体電解質を第2工程領域P32に供給する。
【0069】
第2工程領域P32において、電池用材料製造システム3は、固体電解質とバインダ樹脂との混合化を行う。第2工程領域P32は、押出機350を有する。押出機350は、第1工程領域P31において生成された固体電解質と、別途供給されるバインダ樹脂とを併せて受け入れ、受け入れた固体電解質とバインダ樹脂とを混練して混練物を製造する。押出機350は、製造した混練物を第3工程領域P33に供給する。
【0070】
第3工程領域P33において、電池用材料製造システム3は、第2工程領域P32から混練物を受け入れ、受け入れた混練物から負極シートを製造する。第3工程領域P33は主な構成として、押出成形機360、コータ370、乾燥機380および圧延機390を有する。
【0071】
押出成形機360は、押出機350から混練物を受け入れ、受け入れた混練物を押出成形してシート状の成形物を連続的に製造する。このとき第3工程領域P33は、押出成形機360が押し出したシートに不織布などの基材361を合わせて一体化してもよい。すなわち第3工程領域P33は、シート製造装置を含む。なお、押出成形機360は混練物製造装置と称されてもよい。
【0072】
次にコータ370は、成形物の表面に所定の保護膜等を塗布する。さらに乾燥機380は、所定の保護膜等が塗布された成形物を乾燥し、圧延機390に供給する。圧延機390は、乾燥した成形物を圧延して第4工程領域P34に供給する。
【0073】
第4工程領域P34において、電池用材料製造システム3は、所定のシートを貼り合わせ、これを巻き取る工程を有する。第4工程領域P34は主な構成として、ラミネータ400および巻取機410を有する。ラミネータ400は、圧延機390から供給されるシート状の成形物に、正極活物質を含む電解質シート401(または電極シート)を貼り合わせ、貼り合わせた製造物を巻取機410に供給する。巻取機410は、ラミネータ400から供給される電解質シートを巻き取る。
【0074】
以上、電池用材料製造システム3の構成および電池用材料製造システム3が実行する電池用材料製造方法について説明した。本実施の形態にかかる電池用材料製造システム3は、複数の反応を要する固体電解質等の反応生成物を一貫して効率よく製造し、製造した反応生成物を用いて連続的にシートを製造できる。なお、本実施の形態にかかる電池用材料製造システム3は、
図11に示したものに限られない。例えば電池用材料製造システム3は例えば第4工程領域P34におけるラミネータ400を有していなくてもよい。
【0075】
また
図11に示すシステムは、電池用材料ではない所定の材料を製造することもできる。すなわち、
図11に示すシステムは、材料製造システムまたは固体電解質製造システムと称することが出来る。また、かかる材料製造システムが実行する方法を、材料製造方法と称することが出来る。
【0076】
また
図11に示す電池用材料製造システム3は、上述のように、第3工程領域P33において負極シートを製造し、且つ、第4工程領域P34において正極シートを含む電解質シートをラミネートすることができる。これにより、電池用材料製造システム3は、電池を製造することが出来る。すなわちこの場合、
図11に示すシステムを、電池製造システムと称し、
図11に示すシステムが実行する方法を、電池製造方法と称することが出来る。
【0077】
以上に述べたように、実施の形態6によれば、所望の電池用材料、電池または所定の材料を効率よく製造するためのシステムまたはその方法を提供できる。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 反応システム
2 反応システム
3 電池用材料製造システム
10 反応装置
20 反応装置
30 反応装置
100 キルン部
101 供給口
102 送出口
103 筒部
104 邪魔板
105 従動部
106 凹部
110 加熱部
111 流路
112 加熱流体循環部
120 駆動部
121 駆動力伝達部
130 フード
140 フィーダ
141 原料投入口
150 キルンフット
151 反応生成物出口
210 造粒装置
350 押出機
360 押出成形機
361 基材
370 コータ
380 乾燥機
390 圧延機
400 ラミネータ
401 電解質シート
402 負極シート
410 巻取機
A10 リード角
C10 中心軸
C11 中央領域
C12 螺旋
R10 原料
R11 反応生成物
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部と、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させる駆動部と、
前記キルン部の外周部を加熱する加熱部と、を備え、
前記キルン部は、受け入れた所定の原料が前記邪魔板に接触しながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送されるように構成され、
前記邪魔板は、前記原料が接触する接触面に複数の凸部を含む、
反応装置。
【請求項2】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部と、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させる駆動部と、
前記キルン部の外周部を加熱する加熱部と、を備え、
前記キルン部は、受け入れた所定の原料が前記邪魔板に接触しながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送されるように構成され、
前記邪魔板は、前記原料が接触する接触面において前記原料の粒径より大きい凹部を複数有する、
反応装置。
【請求項3】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた邪魔板と、を有するキルン部と、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させる駆動部と、
前記キルン部の外周部を加熱する加熱部と、を備え、
前記キルン部は、受け入れた所定の原料が前記邪魔板に接触しながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送されるように構成され、
前記キルン部は、前記邪魔板が前記内壁に螺旋状に形成されている、
反応装置。
【請求項4】
前記キルン部は、螺旋状に形成されている前記邪魔板が捻れた四角柱形状を呈している、
請求項3に記載の反応装置。
【請求項5】
前記キルン部は、前記供給口の近傍である第1領域において螺旋状に形成される前記邪魔板の第1リード角が、前記第1領域より前記供給口から遠い第2領域において螺旋状に形成される前記邪魔板の第2リード角よりも大きくなるように設定される、
請求項3または4に記載の反応装置。
【請求項6】
前記邪魔板は、前記内壁において前記中心軸を通過するように対向する2カ所を接続する梁を成す、
請求項1~5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記邪魔板は、前記筒部を前記中心軸に直交する面に投影した場合に円筒内部の3分の1以上の面積を塞ぐ、
請求項1~6のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記邪魔板は、前記原料が通過可能な大きさの孔部を複数有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記邪魔板は、前記原料の粒径より大きい凹部または前記原料が通過可能な大きさの孔部を複数有し、
前記キルン部は、前記送出口の近傍である第3領域に形成される前記邪魔板が有する前記凹部または前記孔部の数が、前記第3領域より前記送出口から遠い第4領域に形成される前記邪魔板が有する前記凹部または前記孔部の数よりも多くなるように設定される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記邪魔板は、前記加熱部により所定の温度に制御された流体を循環させる循環路を内包する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記邪魔板は、前記原料と接触する接触面がカーボンまたはセラミックスを含む部材により構成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記邪魔板は、前記原料と接触する接触面の内層に、金属を主成分とした部材を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記加熱部は、前記キルン部の内部温度を室温から摂氏1500度に加熱可能である
請求項1~12のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
前記キルン部は、前記筒部の延伸方向が水平方向に対して-90度から+90度の範囲の傾きを有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置である第1反応装置と第2反応装置とを直列に連結した、
反応システム。
【請求項16】
前記原料に圧力を加えて造粒物を製造する造粒装置と、
前記造粒物を受け入れて反応生成物を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、を備える
反応システム。
【請求項17】
反応生成物として固体電解質を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、
前記固体電解質と、バインダ樹脂と、を混練して連続的に押し出すことにより混練物を製造する混練物製造装置と、
前記混練物をシート状に成形して電解質シートを製造するシート製造装置と、を備える
電池用材料製造システム。
【請求項18】
請求項17に記載の電池用材料製造システムと、
前記電池用材料製造システムが製造した前記電解質シートに正極活物質を含む電極シートをラミネートするラミネータと、を備える、
電池製造システム。
【請求項19】
反応生成物として固体電解質を製造する請求項1~14のいずれか一項に記載の反応装置と、
前記固体電解質と、バインダ樹脂と、を混練して連続的に押し出すことにより混練物を製造する混練物製造装置と、
前記混練物をシート状に成形してシート状の前記固体電解質を製造するシート製造装置と、を備える
固体電解質製造システム。
【請求項20】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられ、且つ、前記原料が接触する接触面に複数の凸部を含む邪魔板と、を有するキルン部を用意し、
前記キルン部の内部を所定の温度に加熱し、
前記供給口から前記原料を供給し、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させることにより、前記原料を前記邪魔板の前記接触面に接触させながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送し、
前記送出口から反応生成物を送出する、
反応生成物製造方法。
【請求項21】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられ、且つ、前記原料が接触する接触面において前記原料の粒径より大きい凹部を複数有する邪魔板と、を有するキルン部を用意し、
前記キルン部の内部を所定の温度に加熱し、
前記供給口から前記原料を供給し、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させることにより、前記原料を前記邪魔板の前記接触面に接触させながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送し、
前記送出口から反応生成物を送出する、
反応生成物製造方法。
【請求項22】
一端側に供給される原料を受け入れる供給口と、他端側に反応生成物を送出する送出口と、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部と、を有し、さらに前記筒部の内壁から前記中心軸を含む中央領域を通過するように設けられた複数の邪魔板が前記内壁に螺旋状に形成されているキルン部を用意し、
前記キルン部の内部を所定の温度に加熱し、
前記供給口から前記原料を供給し、
前記中心軸を回転中心として前記キルン部を回転させることにより、前記原料を螺旋状に形成された前記邪魔板に接触させながら前記中心軸に沿って前記送出口へ搬送し、
前記送出口から反応生成物を送出する、
反応生成物製造方法。