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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024103
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】配管のワンタッチ継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/26 20060101AFI20230209BHJP
   F16L 37/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F16L37/26
F16L37/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130187
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】391057627
【氏名又は名称】オーエヌ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】松木 竜太
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106EA01
3J106EB02
3J106ED24
3J106EE15
3J106EF13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配管を簡単な操作で確実に継手に連結でき、しかも緩みが生じ難い配管のワンタッチ継手を提供する。
【解決手段】円環部8からなる被係合部7を有する継手本体2と、円環部と係合離脱自在な係合環部22からなる係合部6を形成したナット3と、被係合部の円環部に係合部6の係合環部を外嵌して円環部の外周面に形成した係止円弧溝10又は係止円弧突部23と係合環部の内周面に形成した係止円弧突部又は係止円弧溝とが同一高さの同一円周上にある時にナットの回転により係止円弧溝と係止円弧突部とが円弧状に係合して継手本体とナットとが引抜き方向に移動不能に連結される配管Aのワンタッチ継手1において、継手本体とナットが相互に円周方向に回転位置ずれを生じないように阻止する回転阻止機構を継手本体の外周面とナットの外周面に具備することを特徴とする配管のワンタッチ継手。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に配管挿入穴を有する連結円筒部の開口側端部に円環部からなる被係合部を有する継手本体と、
中心部に配管挿入穴を有しその端部内周面に前記被係止部の円環部と係合離脱自在な係合環部からなる係合部を形成したナットと、
前記被係合部の前記円環部に前記係合部の係合環部を外嵌して前記円環部の外周面に形成した係止円弧溝又は係止円弧突部と前記係合環部の内周面に形成した係止円弧突部又は係止円弧溝とが同一高さの同一円周上にある時に前記ナットの回転により前記係止円弧溝と前記円弧突部とが円弧状に係合して前記継手本体と前記ナットとが引抜き方向に移動不能に連結される配管のワンタッチ継手において、
前記継手本体とナットが相互に円周方向に回転位置ずれを生じないように阻止する回転阻止機構を前記継手本体の外周面と前記ナットの外周面に具備することを特徴とする配管のワンタッチ継手。
【請求項2】
前記被係合部の円環部が、外周面の同一円周上に所定間隔を開けて複数の所定長さを有する係止円弧溝を等間隔の中心角度位置に有し、且つ、前記係合部の係合環部が、内周面の同一円周上に所定間隔を開けて前記係止溝と対応する同じ等間隔の中心角度位置に複数の略同一長さを有する係止円弧突部を有し、更に隣接する前記係止円弧突部間の間隔距離は前記係止円弧溝の長さ距離より長いことを特徴とする請求項1に記載の配管のワンタッチ継手。
【請求項3】
前記被係合部の内周に前記開口側端部側から順に前記配管挿入穴に挿通される配管の外周面に密着するパッキン及びOリングをそれぞれ挿入するパッキン溝及びOリング溝、及び配管の端部に当接する配管当接壁をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管のワンタッチ継手。
【請求項4】
前記被係合部の係止円弧溝は、前記円環部に設けた所定高さを有する円弧台座上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配管のワンタッチ継手。
【請求項5】
前記回転阻止機構は、前記継手本体の円環部に設けた第1係止突起と該第1係止突起と所定角度を開けて設けた第2係止突起とを具備し、前記ナットの係合環部に該係合環部の一方向への回転時に前記第1係止突起に当接する係止突起と、前記係合環部の側面から挿入後に前記円環部側の側面へ先端が突出して前記係合環部の他方向への回転時に前記第2係止突起に当接する係止ピンと、を具備してなること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配管のワンタッチ継手。
【請求項6】
前記回転阻止機構は、ナットの前記係合環部の端部外周に設けた係止鍔部と、継手本体の前記円環部の開口側外周で前記係止鍔部と対向する位置に設けた被係止鍔部と、該2つの係止鍔部と被係止鍔部とに設けた係止穴及び該2つの係止鍔部と被係止鍔部の上面の中心軸方向に設けた係止開口部を有し、前記係止穴に挿通する係止軸と、この係止軸から前記通過開口部の深さより長い折れ曲部と、該折り曲げ部の先端を更に下方へ折り曲げてなる前記係止開口部の深さより短い長さの係止先端部を有する係止金具と、を具備することを特徴する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配管のワンタッチ継手。
【請求項7】
前記配管が端部外周に2つの向き合う傾斜面を有する山型突起を形成してなる配管であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の配管のワンタッチ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管を簡単な操作で確実に継手に連結でき、しかも緩みが生じ難い配管のワンタッチ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋内外に配水・配管等の配管と継手を連結する作業は、建造物の規模や設備の内容によっては多い少ないはあるものの数多くあるので、手早く且つ確実に作業を進める必要性がある。このような要請に応える継手構造の発明として、例えば、本出願人等が先に提案した特許文献1に示される配管のワンタッチ継手がある。
【0003】
この従来発明は、被係合部を有する継手本体と、この被係合部と係合離脱自在な係合部を内側に形成した係合環部を有するロックシリンダホルダーを具備しており、このロックリングホルダーの内壁の凹部と継手本体の開口側端面との間に平面状のロックリングを介在させ、更に、継手本体の内周にOリング、ゴムパッキンを介在させて漏れを防止した構成である。
【0004】
そして、前記被係合部と係合部を係合して継手本体とロックシリンダーホルダーが連結された状態において、ロックリングの中心孔を通って継手本体の配管挿入孔にワンタッチで配管が押し込まれて挿通された時に、ロックシリンダーの中心孔に形成されている係止片の刃先が配管の外周面に引き抜き方向に抗するように食い込み、且つ、刃先の前面がOリンクを押圧して止水効果を上げ、更に継手本体とロックリングホルダーとが相互に反対方向への付勢力を受けることでより強固に連結されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4352434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、配管の軸線方向への継手本体の挿入がワンタッチで容易で簡単に連結でき、しかもロックリングの係止片の刃先の食い込みにより引き抜き方向への引っ張り力に対して阻止力が働くので抜けにくい連結機構が形成される有用な効果があるが、長年月の経過による建造物の微振動などが繰り返し発生するなどの要因によって、ロックリングホルダーが継手本体に対して僅かずつ緩み方向へも回転して、被係合部である継手本体と係合部であるロックシリンダホルダーの連結が外れる可能性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記事情に鑑みなされたものであって、ロックリングホルダー(本発明のナットに相当)の係合部と継手本体の被係合部との係合が緩む恐れがない構造の配管のワンタッチ継手を提供することを目的としてなされたものである。
その手段とするところは、中心部に配管挿入穴を有する連結円筒部の開口側端部に円環部からなる被係合部を有する継手本体と、中心部に配管挿入穴を有しその端部内周面に前記被係止部の円環部と係合離脱自在な係合環部からなる係合部を形成したナットと、前記被係合部の前記円環部に前記係合部の係合環部を外嵌して前記円環部の外周面に形成した係止円弧溝又は係止円弧突部と前記係合環部の内周面に形成した係止円弧突部又は係止円弧溝とが同一高さの同一円周上にある時に前記ナットの回転により前記係止円弧溝と前記円弧突部とが円弧状に係合して前記継手本体と前記ナットとが引抜き方向に移動不能に連結される配管のワンタッチ継手において、前記継手本体とナットが相互に円周方向に回転位置ずれを生じないように阻止する回転阻止機構を前記継手本体の外周面と前記ナットの外周面に具備することを特徴とする配管のワンタッチ継手としたことにある。
【0008】
又、前記被係合部の円環部が、外周面の同一円周上に所定間隔を開けて複数の所定長さを有する係止円弧溝を等間隔の中心角度位置に有し、且つ、前記係合部の係合環部が、内周面の同一円周上に所定間隔を開けて前記係止溝と対応する同じ等間隔の中心角度位置に複数の略同一長さを有する係止円弧突部を有し、更に隣接する前記係止円弧突部間の間隔距離は前記係止円弧溝の長さ距離より長いことを特徴とする。
【0009】
更に、前記被係合部の内周に前記開口側端部側から順に前記配管挿入穴に挿通される配管の外周面に密着するパッキン及びOリングをそれぞれ挿入するパッキン溝とOリング溝、及び配管の端部に当接する配管当接壁をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0010】
更に又、前記被係合部の係止円弧溝は、前記円環部に設けた所定高さを有する円弧台座上に形成されていることを特徴とする。
【0011】
又、前記回転阻止機構は、前記継手本体の円環部に設けた第1係止突起と該第1係止突起と所定角度を開けて設けた第2係止突起とを具備し、前記ナットの係合環部に該係合環部の一方向への回転時に前記第1係止突起に当接する係止突起と、前記係合環部の側面から挿入後に前記円環部側の側面へ先端が突出して前記係合環部の他方向への回転時に前記第2係止突起に当接する係止ピンと、を具備してなること、を特徴とする。
【0012】
更に、前記回転阻止機構は、ナットの前記係合環部の端部外周に設けた係止鍔部と、継手本体の前記円環部の開口側外周で前記係止鍔部と対向する位置に設けた被係止鍔部と、該2つの係止鍔部と被係止鍔部とに設けた係止穴及び前記2つの係止鍔部と被係止鍔部の上面の中心軸方向に設けた係止開口部を有し、前記係止穴に挿通する係止軸と、この係止軸から前記通過開口部の深さより長い折れ曲部と、該折り曲げ部を係止軸方向へ折り曲げた横軸部と、該横軸部の先端を更に下方へ折り曲げてなる係止先端部を有する係止金具と、を具備すること、を特徴とする。
【0013】
更に又、前記配管が端部外周に2つの向き合う傾斜面を有する山型突起を形成してなる配管であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
継手本体とナットとが引抜き方向に移動不能に連結される配管のワンタッチ継手において、前記継手本体とナットが相互に円周方向に回転位置ずれを生じないように阻止する回転阻止機構を前記継手本体の外周面と前記ナットの外周面に具備するので、建造物に生じる微振動の積み重ねが年月の経過によって大きくなって回転方向に緩みが生じることを防止できる。係止ピンを外部から観察することで連結の確認をすることができる。
【0015】
又、被係合部の円環部の係止円弧溝と、係合部の係合環部の係止円弧突部が対になって等間隔に複数設けられており、しかも、隣接する前記係止円弧突部間の間隔距離は前記係止円弧溝の長さ距離より長いために、この間隔距離から係止円弧溝を挿入して回転させるだけで良いので、ワンタッチで連結出来、連結後は、係止円弧溝と係止円弧突部とが円弧状に係合しているために、両者の円弧状の接触部分に間に生じる摩擦力により相互の緩み方向への回転がより生じ難くなる。
【0016】
前記の引抜き方向への移動不能の連結は、継手本体の被係合部に係止円弧突部を設け、ナットの係合部に係止円弧溝を設けることに代えて、逆に、継手本体の被係合部に係止円弧溝を設け、ナットの係合部に係止円弧突部を設けてもよい。
【0017】
前記被係合部の配管挿入穴にパッキン及びOリングをそれぞれ挿入するパッキン溝及びOリング溝、及び配管の端部に当接する配管当接壁をそれぞれ形成しているので、流体の漏れが生じ難い構成とすることが出来る。
【0018】
前記被係合部の係止円弧溝は、前記円環部に設けた所定高さを有する円弧台座上に形成されているので、係合部の係合環部の内周面に形成している係止円弧突起と高さ合せを行えて同一高さの同一円周上に揃えられるので、摺動自在に嵌合し易くなる。
【0019】
前記回転阻止機構は、前記継手本体の円環部に設けた第1係止突起と該第1係止突起と所定角度を開けて設けた第2係止突起とを具備し、前記ナットの係合環部に該係合環部の一方向への回転時に前記第1係止突起に当接する係止突起と、前記係合環部の一側面からの挿入後に前記円環部側の他側面へ先端が突出して前記係合環部の他方向への回転時に前記第2係止突起に当接する係止ピンと、を具備してなるので、ナットと継手本体との相互の左右回転を有効に阻止出来る。更に、該係止ピンを外部から観察することにより、連結が完了していることを確認できるので、後の確認作業が容易になる。
【0020】
前記回転阻止機構は、係止穴に係止金具の係止軸を差込むだけで、係止鍔部と被係止鍔部の相互の離反方向の回転を阻止できるので、緩みが生じない。又、この時に係止開口部を横軸部と係止先端部が通過しているので、係止軸を約90度だけいずれかの方向へ回転させると、係止先端部が係止鍔部又は被係止鍔部に引っ掛って係止軸が係止穴から抜け出ることがないので、簡単な構造に係わらず安定して係止できる。又、この係止金具を外部から観察することで、連結が完了していることを確認できるので確認作業が楽になる。
【0021】
前記配管が端部外周に2つの向き合う傾斜面を有する山型突起を形成してなる配管である場合には、山型突起部の一方の傾斜面をナット側から、他方の傾斜面を継手本体側から押圧して抜けないように保持するために、確固に配管を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ナットと継手本体の連結前の斜視説明図
図2】ナットと継手本体の連結前の図1と反対側に向きを変えて見た斜視説明図
図3】ナットと継手本体の連結状態の斜視説明図
図4】ナットと継手本体の連結部分の断面斜視説明図
図5】ナットと継手本体の連結部分の配管を含む断面図
図6】継手本体の回転阻止機構を説明するための正面図
図7】他の回転阻止機構の断面説明図及び動作説明図
図8】拡管機の要部断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施形態について以下図を参照しつつ説明する。この発明の配管のワンタッチ継手1は、図1~3に良く示されているように、継手本体2とナット3のそれぞれの配管挿通穴4に配管Aを挿通した状態でワンタッチで連結したものである。ここでのワンタッチ継手とは、工具を使用しなくても少なくともナット3と配管Aの双方又はいずれか一方を作業者が素手でもって継手本体2と配管Aとをナット3によって連結することができる継手のことをいう。この時、継手本体2は空いた素手で保持していても他の部材に固定されるなどして動かなければよい。
【0024】
継手本体2は、中心部に配管挿通穴4を有する連結円筒部5の両端の開口部にそれぞれ前記ナット3の係合部6と連結する被係合部7を有している。連結円筒部5は直線状であっても曲線状であってもよい。前記被係合部7は、厚みのある輪状の円環材8からなり、前記ナット3の係合部6の内周側内部へ少なくともその一部が挿入できる程度の径を有している。円環材8の外周面8aには、開口側端部から内側寄りに設けられた所定の厚みと幅を有する円弧台座9上に形成された所定長さの係止突部円弧溝10が設けられている。この係止円弧溝10を設けた円弧台座9は、外周面8aに等間隔を開けて同心円上に複数個設けられている。そして、前記円弧台座9上には第1係止突起11が設けられていると共に円弧台座9を有しない外周面8aには、第2係止突起12が所定間隔を開けて設けられる。
【0025】
継手本体2の被係合部7の円環部8の配管挿通穴4の内周面8bには、配管Aの外周面が当接し、図2,4,5に良く現われているように、開口端部側から順に、配管Aの外周面に密着するパッキン13,Oリング14を嵌め込み挿入する円環状のパッキン溝15、Oリング溝16が所定間隔を開けて形成されている。又、配管Aの端部が当接する内周面8bの端部には、連結円筒部5の内部に形成されている配管挿通穴4との配管Aの肉厚分の厚さの段差である配管当接壁17が形成されている。更に、パッキン溝15とOリング溝16の境界には仕切壁18が設けられている。又、開口端部19の内側面はパッキン溝15の一部を形成すると共に開口端部面19aはナット3の内面に当接する。
【0026】
前記ナット3は、配管Aを挿通する配管挿通穴4を有する配管挿入筒部20と、この配管挿入筒部20の一端側外周から立ち上った環側面部21と、この:環側面部21の外周縁と接続する係合環部22を有しており、前記係合環部22の内部に前記継手本体2の被係合部7の円環部8の一部が内篏挿入されることで、継手本体2とナット3とが連結される。
【0027】
係合環部22の開口端部側の内周面には、図1,4に良く現われているように、前記係止円弧溝10にガイドされて嵌め込まれる係止円弧突部23が同心円上に形成されている。この係止円弧突部23の設置個数及びその長さも係止円弧溝10と同じであり、隣接する係止円弧突部23の間隔距離に相当する円弧凹部24も隣接する係止円弧溝10の間隔距離と同じになるように設けられているが、この円弧凹部24の間隔距離のほうが係止円弧突部23の長さよりは長く形成されている。これによって、係止円弧溝10を設けた円弧台座9が横方向から円弧凹部24を軸心方向へ通過できるようになっている。
【0028】
更に、図1~3に現れているように、環状側面22bには被係止部7の円弧台座9上に設けた第1係止突起11とナット3の右回転時に当接する係止突起28が設けられている。又、前記係合環部22の前記円弧凹部24が位置する外周面22aには、当該外周面22aを軸心方向へ横断してピン係止溝25が形成されると共に、このピン係止溝25の裏面側に相当する環側面部21にはピン下片挿入穴26が形成されている。これらピン係止溝25とピン下片挿入穴26に2つに折れ曲って内側方向に弾力性のある係止ピン27の上片27aと下片27bがそれぞれ挿入されることにより、図6に示すように、係合環部22の配管挿入筒部20と反対側の環状側面22bから突出した係止ピン27の先端部27cが被係止部7の第2係止突起12に当接してナット3の左方向への回転力が掛かってもピン係止溝25の側面で横方向に位置ずれをしないように係止できるようにしている。このようにして、被係合部7と係合部6を連結してから係止ピン27をピン係止溝25とピン下片挿入穴26に差し込むことで継手本体2とナット3の相互の回転を阻止し、回転方向への緩みを防止している。しかも、係止ピン27の上片27aと下片27bとは相互接近する方向に付勢されているので、振動等が生じてもピン下片挿入穴26から抜けで難くなっており長期の使用にも耐え得る。
【0029】
次に、上記構成からなる配管のワンタッチ継手1の使用について説明する。この使用例においては、図5に示すように、配管Aが端部側の外周に2つの傾斜面29a、29bからなる山型突起29を有する場合について説明する。予め被係合部7の配管挿入穴4の内周面に形成しているパッキン溝15、Oリング溝16に、それぞれパッキン13、Oリング14を嵌め込んだ状態としておく。
【0030】
そして、配管Aの山型突起部29を形成していない反対側の先端をナット3の係合環部22側から配管挿入筒部20の配管挿通穴4に挿入して、図1図5に示すように、山型突起部29の一方の傾斜面29bが配管挿入穴4の環側面部21との境界の角部に形成している押圧傾斜面30に当接するまで押し込む。次に、係止部6の係合環部22内に被係合部7の円環部8を挿入して連結することによってなされる。この挿入は図1に良く現われているように、円環部8の円弧台座9を係合環部22の内周面に形成した円弧凹部24の位置に合わせて円環部8方向へ開口端部19の開口端部面19aが環側面部21の内周面の尾窪み部21aに当接するまで押し込んで通過させる。この時同時に、配管Aの先端は配管当接壁17に当接する。
【0031】
これによって、円環部8の外周面8aの円弧台座9に設けた係止円弧溝10と、係合環部22の開口側端部内周に設けた係止円弧突部23が同じ高さ位置で同心上に位置するので、ナット3を右回転させると、係止円弧突部23が係止円弧溝10内に篏合された状態で係止突起28が第1係止突起11に当接して回転が止まる。この状態で、ナット3と継手本体2の引き抜き方向への動きは阻止できている。この作業時には、作業者は片方の手で持ったナット3を継手本体2に接近させるだけの作業でよい。継手本体2が固定されていない場合にはもう片方の手で保持するようにしてもよい。
【0032】
次に、ナット3の左回転を阻止するために、係止ピン27を係合環部22の環側面部21に開けているピン下片挿入穴26から下片27bをその上方のピン溝25から上片27aを同時に差し込むだけでよい。すると、係合環部22の環状側面22b側へ先端部27cが突出して円環部8の外周面8a上に位置して突出している第2係止突起12に当接して左回転を阻止される。ナットの3の継手本体2に対する回転はこれによって左右両方向回転が阻止されて係止円弧溝10と係止円弧突部23の係合が外れることを防止できる。又、仮に係止ピン27が外れたとしても、係止円弧溝10と係止円弧突部23の係合距離があるので、すぐにはナット3と継手本体2の係合が外れることはない。
【0033】
第1係止突起11と係止突起28のそれぞれの円環部8及び係合環部22の取付位置や取付個数は、この実施形態に限定されるものではない。又、第2係止突起12と係止ピン27の取付位置やその個数も限定されるものではない。この実施形態では、図6に示されるように、第1係止突起11は180度毎に、第2係止突起12は、それぞれ90度間隔で円環部8の外周面8aに設けられている。同様にして、円弧台座9及びこの円弧台座9に形成されている係止円弧溝10の取付位置や取付個数も限定されるものではない。右回転止めや左回転止めは、使用時においてはどれか1つの第1係止突起11又は第2係止突起12に係止突起部28又は係止ピン27が当接して係止されれば回転止めできるので十分である。又、ナット3の係止突起28、ピン係止溝25とピン下片挿入穴26の取付位置や取付個数も適宜対応する継手本体2の部材に応じて設けられている。前記円弧台座9の高さは、係止円弧溝10と係止円弧突部23が係合する位置に合うように調整されている。又、係止円弧溝10と係止円弧突部23は同一円周上に位置するようになっている。
【0034】
このように、継手本体2とナット3とが連結されると、配管Aの山型突起部29のもう一方の傾斜面29aは、パッキン13をパッキン溝15の内周面方向に押圧するが、その際のパッキン13の弾性力の反力によって、パッキン13と傾斜面29aとの密着度合いが大きくなり、配管A内の流体の漏洩防止が図られる。加えて、Oリング14は、配管Aの端部側の外周面によってOリング溝16の内周面方向に押圧されるが、同様にOリング14の弾性力の反力によって、配管Aの外周面とOリング14との密着度合いが大きくなり、配管Aの先端部と配管当接壁17の隙間からの流体の漏れを阻止する。
【0035】
なお、上記した実施形態では、円環部8の外周面8aの円弧台座部9上に係止円弧溝10を設け、係合環部22の内周面に係止円弧突部23を設けた形態について説明したが、係止円弧溝10と係止円弧突部23の設ける位置を逆にしてもよい。更に又、係止円弧溝10がねじ溝で係止円弧突部23がねじ山として、ナット3を継手本体2に対して一方向に螺合するように回転させて連結させてもよいので、雄ねじ、雌ねじによるナット3と継手本体2の連結による継手もこの発明の範囲に含まれるものである。
【0036】
この回転阻止機構の他の実施形態は、図7(a)に示されるように、ナット3の前記係合環部22の端部外周に設けた係止鍔部31と、継手本体2の前記円環部8の開口側外周で前記係止鍔部31と対向する位置に設けた被係止鍔部32とが設けられ、該2つの係止鍔部31と被係止鍔部32とに設けた係止穴33及び前記2つの係止鍔部31と被係止鍔部32の上面の中心軸方向に設けた係止開口部34を有し、更に、前記係止穴33に挿通する係止軸部35aと、この係止軸部35aから折り曲げて前記係止開口部34の上方迄の長さより長い折れ曲部35bと、該折り曲げ部35bの端部を更に直角折り曲げてなる止着部35cと、該止着部35cの先端を前記通過開口部34の開口深さより短い長さの係止先端部35dを有する係止金具35、を具備している。
【0037】
この回転阻止機構によると、継手本体2とナット3が、継手本体2の被係合部7に設けた係止円弧溝10とナット3の係合部6に設けた係止円弧突部23とが係合して、係止鍔部31と被係止鍔部32の双方の係止穴33が一致した状態で係止金具35の係止軸部35aを挿入してから、(b)に示すように、いずれかの方向へ回転させるだけで良い。挿入時には係止先端部35dは通過開口部34を通過出来て挿入後は被係止鍔部32の外側へ出ているので、これを回転させると止着部35cが係止鍔部31と被係止鍔部32に跨って一体不動に止着する。これによって、継手本体2とナット3は相互に回転方向への位置ずれが生ずることを防止でき、継手本体2とナット3の緩みを防止できる。且つ、係止先端部35dによって軸心方向への抜けを防止できる。一円周上に複数組の係止額部31と被係止額部32のセットを設けるとより確実に回転阻止を図ることが出来る。外す際には、係止金具35を逆方向に回転させて逆の動作をすればよいので簡単である。
【0038】
この実施形態では、配管Aとして、端部側外周に向い合う2つの傾斜面29a、29bからなる山型突起部29を連結する継手構造について説明したが、拡管機40を使用してこの山型突起部29を形成する手順について説明する。図8にはこの配管Aの拡管機40の拡管時の断面概略を示す。拡管すべき配管Aを長尺な引き棒41に外嵌する。そして、拡管機40の先端部の拡管ヘッド42の先端に固定されている取付部43とこの取付部43に着脱自在に固定されたナット3との配管挿入穴4に先端が配管係止壁44に当たるまで押し込む。引き棒41は別途設けてあるシリンダのピストン45等のように引張力のある駆動軸に連結されているので、ピストン45の作動により矢印方向に引かれると、拡管ゴム46の矢印方向の外周方向への膨張によってこの拡管ゴム46の外周に位置する配管Aの部位が外側へ拡管される。配管Aのこの部分の外周にはナット3の配管挿入筒部20の押圧傾斜面30が面しており、更に、取付部43の端部内周にはナット3の押圧傾斜面30と対をなすテーパ面43aが設けられているので、拡管されると配管Aの外周面にはこれら押圧傾斜面30とテーパ面43aによって2つの傾斜面29a、29bを有する山型突起部29が形成される。その後、ナット3と取付部43の係合を外してから配管Aの先端側を引き抜くことでナット3を外嵌した状態のまま、前記した継手本体2との連結作業を行う。ナット3と取付部43との係合及び取外しは前記ナット3と継手2の連結及び取外しと同様の作業によって行ってもよいし、単純化構造であってもよい。尚、配管Aの拡管はこの実施形態に限定されず、他の手段によって拡管しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の配管のワンタッチ継手は、内部の通路に流体を流すことが出来る全ての金属製配管に応用することが出来るので、利用用途は広い。
【符号の説明】
【0040】
1 配管のワンタッチ継手
2 継手本体
3 ナット
4 配管挿通穴
5 連結円頭部
6 係合部
7 被係合部
8 円環部
9 円弧台座
10 係止円弧溝
11 第1係止突起
12 第2係止突起
13 パッキン
14 Oリング
15 パッキン溝
16 Oリング溝
17 配管当接壁
18 仕切壁
19 開口端部
20 配管挿入部
21 環側面部
22 係合環部
23 係止円弧突部
24 円弧凹部
25 ピン係止溝
26 ピン下片挿入穴
27 係止ピン
28 係止突起
29 山型突起部
30 押圧傾斜面
31 係止鍔部
32 被係止鍔部
33 係止穴
34 通過開口部
35 係止具
40 配管の拡管機
A 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8