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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024186
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】シート剥離装置及びシート剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230209BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130342
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA05
5F057AA42
5F057BA11
5F057BB01
5F057CA11
5F057DA11
5F057EC15
5F057EC20
5F057FA30
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA53
5F131CA09
5F131CA62
5F131CA70
5F131EA07
5F131EB01
5F131EB81
5F131EC34
5F131EC72
5F131EC73
5F131KA12
5F131KB12
(57)【要約】
【課題】剥離に要するコストを低減することが可能であり、ウエハ等の板状部材の破損を抑制可能なシート剥離装置を提供する。
【解決手段】シート剥離装置1は、シートSが貼り付けられた板状部材Wを保持する保持テーブル10と、尖端部21と、シートSの剥離開始端部S1を保持可能な第一シート保持部30と、シートSの幅方向に沿って設けられた第二シート保持部40,40とを有する。尖端部21は、水平動により側端面S2に対して水平方向から係合可能であり、上方に向けた移動により、シートSを引っ掛けて剥離始端部S1を形成可能である。第一シート保持部30は、剥離始端部S1を挟持した上方への移動により、剥離始端部S1を上方側に引き起こすことが可能であり、第二シート保持部40,40は、剥離始端部S1の幅方向両側を幅方向に沿って挟持すると共に剥離方向他端側に向けて移動することでシートSを剥離可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に貼付されたシートを一端側から他端側に向けて剥離するシート剥離装置であって、
前記シートが上面側となるように前記板状部材を保持する保持テーブルと、
前記シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から向き合うように設けられた少なくとも一つの尖端部と、
前記シートにおける剥離開始側の一端を保持可能なシート保持部と、を有し、
前記尖端部は、前記保持テーブルに対する相対的な水平動により、前記側端面に対して水平方向から係合可能であると共に、前記側端面に係合させた状態で前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記シートを引っ掛けて剥離始端部を形成することが可能であり、
前記シート保持部は、前記剥離始端部を挟持した状態で、前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記剥離始端部を前記板状部材の上面から上方側に向けて引き起こすと共に、
前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離させること、を特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記シート保持部が、第一シート保持部と、前記第一シート保持部を介して剥離方向と交差する幅方向に沿って設けられた第二シート保持部と、を有しており、
前記第一シート保持部は、前記剥離始端部を挟持すると共に、前記保持テーブルに対する上方に向けた相対移動により、前記剥離始端部を前記板状部材の上面から上方側に向けて引き起こすことが可能であり、
一対の前記第二シート保持部は、引き起こされた前記剥離始端部の幅方向両側を幅方向に沿って挟持すると共に、前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離させること、を特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記尖端部が、前記シートの剥離方向と交差する幅方向に間隔を空けて一対配されており、
一対の前記尖端部のそれぞれを、前記側端面に対して係合させると共に、前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記剥離始端部を形成すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記第一シート保持部が、一対の前記尖端部の間に配されていること、を特徴とする請求項2に記載のシート剥離装置。
【請求項5】
前記保持テーブルの保持面の高さと、前記板状部材及び前記シートのそれぞれの厚みと、を測定可能な測定部と、
前記測定部で測定された情報に基づいて前記尖端部の高さを制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシート剥離装置。
【請求項6】
前記板状部材における剥離開始端側の外周部を上方側から前記保持テーブルに向けて押える押え板を有しており、
前記剥離始端部の形成に伴って、前記押え板により、前記外周部を押えた状態で、前記シートを前記板状部材から剥離させること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシート剥離装置。
【請求項7】
前記保持テーブル及び前記尖端部のいずれか一方又は双方を加熱するための加熱部を有すること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシート剥離装置。
【請求項8】
前記板状部材が、半導体ウエハであり、前記シートが、裏面研削用の保護シートであること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシート剥離装置。
【請求項9】
板状部材に貼付されたシートを一端側から他端側に向けて剥離するシート剥離方法であって、
前記シートが上面側となるように前記板状部材を保持テーブルに保持する板状部材保持工程と、
前記シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から少なくとも一つの尖端部を係合させる尖端部係合工程と、
前記尖端部を前記保持テーブルに対して上方側に相対移動させることにより、前記シートを上方側に引き起こして剥離始端部を形成する剥離始端部形成工程とを経た後、
前記剥離始端部を挟持するシート保持部により挟持した状態で引っ張ることにより、前記板状部材から前記シートを剥離すること、を特徴とするシート剥離方法。
【請求項10】
前記剥離始端部形成工程とを経た後、
前記剥離始端部を前記シート保持部を構成する第一シート保持部により挟持する第一シート保持工程と、
前記剥離始端部を前記第一シート保持部により挟持した状態で上方側に引っ張ることにより前記板状部材と前記シートとの隙間を広げるシート引き起こし工程と、
引き起こされた前記剥離始端部の幅方向両側を、前記シート保持部を構成するものであって幅方向に沿って形成された一対の第二シート保持部によって挟持すると共に、前記第一シート保持部による前記剥離始端部の挟持を解除する第二シート保持工程と、
前記第二シート保持部により前記剥離始端部の幅方向に沿った両側を挟持した状態で、前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離するシート剥離工程と、
を順次実行することにより、前記板状部材から前記シートを剥離すること、を特徴とする請求項9に記載のシート剥離方法。
【請求項11】
前記尖端部係合工程に先立って、前記保持テーブルの保持面の高さと、前記板状部材及び前記シートのそれぞれの厚みとを測定部により測定する測定工程と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記側端面に対する前記尖端部の位置決めを行う位置決め工程と、が実行されること、を特徴とする請求項9又は10に記載のシート剥離方法。
【請求項12】
前記剥離始端部形成工程において、前記剥離始端部が形成された後に前記板状部材における剥離開始端側の外周部が、押え板により上方側から前記保持テーブル側に向けて押え付けられる板状部材押え工程が実行されること、を特徴とする請求項10に記載のシート剥離方法。
【請求項13】
前記尖端部係合工程に先立って、前記保持テーブル及び前記尖端部のいずれか一方又は双方が、加熱される加熱工程が実行されること、を特徴とする請求項10又は12に記載のシート剥離方法。
【請求項14】
前記板状部材が、半導体ウエハであり、前記シートが、裏面研削用の保護シートであること、を特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載のシート剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート剥離装置及びシート剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ(ウエハとも称する)は、表面側に回路パターンが形成された後、裏面側が研削等されることにより薄厚化されている。また、ウエハの裏面側の研削等にあたり、回路パターンを保護すべく、ウエハの表面側に保護シート(保護テープ,B/Gテープとも称する)が貼り付けられている。保護シートが貼り付けられたウエハは、裏面研削が行われた後、保護シートが剥離される。保護シートが剥離されたウエハは、ダイシングによりチップ化される。上述した保護シートの剥離は、保護シート上に剥離テープを貼り付け、当該剥離テープと一体的に保護シートを剥離させることにより行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2994356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の保護テープ剥離装置は、吸着ステージ(保持テーブルに相当)に保護テープ(保護シートに相当)が上面側となるようにウエハを吸着保持しておき、当該保護テープ上に剥離テープを貼り付けた後、当該剥離テープを巻き取ることにより保護テープをウエハから剥離している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の保護テープ剥離装置は、保護テープの剥離にあたり、剥離テープを保護テープに貼り付ける必要があり、剥離テープのコストを別途要する問題があった。また、上記保護テープ剥離装置は、剥離テープが吸着ステージ(保持テーブルに相当)に貼り付くため、これを防止すべく、吸着テーブル上にフロン加工されたマスク板を設けたり、剥離テープの粘着面が接触する部分にフロン等の非粘着処理を行ったりする必要がある。従って、これらのコストを別途要する問題があった。また、最近ではウエハの薄厚化が進み、保護テープからはみ出した部分に剥離テープが接触すると、ウエハがチッピング等により破損する恐れもある。また、裏面研削工程を経た後の保護テープは、研削屑等の汚れが付着しており、剥離テープを保護テープに貼り付けた場合に、貼り付け不良が発生する問題があった。そのため、保護テープの剥離中に剥離テープが外れて、剥離不良が発生する問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、剥離に要するコストを低減することが可能であり、ウエハ等の板状部材の破損を抑制可能なシート剥離装置及びシート剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供されるシート剥離装置は、板状部材に貼付されたシートを一端側から他端側に向けて剥離するシート剥離装置であって、前記シートが上面側となるように前記板状部材を保持する保持テーブルと、前記シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から向き合うように設けられた少なくとも一つの尖端部と、前記シートにおける剥離開始側の一端を保持可能なシート保持部と、を有し、前記尖端部は、前記保持テーブルに対する相対的な水平動により、前記側端面に対して水平方向から係合可能であると共に、前記側端面に係合させた状態で前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記シートを引っ掛けて剥離始端部を形成することが可能であり、前記シート保持部は、前記剥離始端部を挟持した状態で、前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記剥離始端部を前記板状部材の上面から上方側に向けて引き起こすと共に、前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離させること、を特徴とするものである。
【0008】
上述したシート剥離装置は、尖端部が前記シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から向き合うように設けられており、シートの側端面に対して水平方向から係合可能なものとされている。すなわち、尖端部がシート面に対して平行に設けられている。従って、尖端部が、シート面と交差する方向から突き抜けて板状部材に接触することを抑制できる。これにより、板状部材が破損することを抑制できる。また、シートの側端面に対して水平方向から尖端部を突き刺して係合させることができるので、ウエハが破損することを抑制できる。ここで、尖端部は、先端が鋭利な針、スクレーパ、刃物等の各種のものを用いることができる。シートの厚みが薄い場合は、針等の先端の面積が小さいものを用いることが望ましい。また、尖端部は、シートの幅に合わせて、適宜、設ける数を変更することができる。尖端部を複数設ける場合は、シートの幅方向に沿って均等に配することが望ましい。尖端部を複数設けることにより、剥離の際に掛かる負荷を均等に分散させることができ、板状部材に掛かる負荷を均等に分散させることができる。
【0009】
(2)上述した本発明のシート剥離装置は、前記シート保持部が、第一シート保持部と、前記第一シート保持部を介して剥離方向と交差する幅方向に沿って設けられた第二シート保持部と、を有しており、前記第一シート保持部は、前記剥離始端部を挟持すると共に、前記保持テーブルに対する上方に向けた相対移動により、前記剥離始端部を前記板状部材の上面から上方側に向けて引き起こすことが可能であり、一対の前記第二シート保持部は、引き起こされた前記剥離始端部の幅方向両側を幅方向に沿って挟持すると共に、前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離させるとよい。
【0010】
かかる構成によれば、尖端部にシートの側端面を引っ掛けて上方側に引き上げることにより剥離始端部を形成することができ、当該剥離始端部を第一シート保持部により挟持することができる。そのため、尖端部が側端面から外れることを抑制でき、確実に剥離始端部を形成することができる。また、形成された剥離始端部の幅方向両側を一対の第二シート保持部により幅方向に沿って挟持することができる。また、一対の第二シート保持部によりシートを挟持した状態で、シートを引っ張って剥離させることができる。従って、幅広のシートを剥離させる場合であっても、シートを引っ張った際にシートが中央に絞り込まれることを抑制できる。これにより、板状部材に掛かる負荷を低減することができ、板状部材が破損することを抑制できる。また、第二シート保持部によりシートが確実に保持されるので、剥離の途中にシートが外れて剥離不良が発生することを抑制できる。ここで、第一シート保持部や第二シート保持部は、シートと接する面にローレット加工等を施して、凹凸面を形成することが望ましい。これにより、シートが第一シート保持部や第二シート保持部から脱落することを抑制できる。
【0011】
また、上述したシート剥離装置は、剥離テープを使用せずにシートを剥離できる。そのため、剥離テープのコストを低減することができる。また、上述したシート剥離装置は、剥離テープを使用しないので、剥離テープが保持テーブルに貼り付くことがない。また、シート表面が汚れていても、確実にシートを剥離することができる。
【0012】
(3)上述した本発明のシート剥離装置は、前記尖端部が、前記シートの剥離方向と交差する幅方向に間隔を空けて一対配されており、一対の前記尖端部のそれぞれを、前記側端面に対して係合させると共に、前記保持テーブルに対して上方に向けて相対移動することにより、前記剥離始端部を形成するものであるとよい。
【0013】
かかる構成によれば、一対の尖端部により、前記幅方向の両側からシートを係合させることができる。すなわち、前記幅方向の両側からバランス良くシートと尖端部とを係合させることができる。そのため、係合が解除されることが抑制される。また、剥離始端部を精度良く確実に形成することができる。
【0014】
(4)上述した本発明のシート剥離装置は、前記第一シート保持部が、一対の前記尖端部の間に配されているものであるとよい。
【0015】
かかる構成によれば、一対の尖端部と干渉することなく第一シート保持部を配することができる。これにより、尖端部によって形成された剥離始端部が、確実に、より早く第一シート保持部に保持される。
【0016】
(5)上述した本発明のシート剥離装置は、前記保持テーブルの保持面の高さと、前記板状部材及び前記シートのそれぞれの厚みと、を測定可能な測定部と、前記測定部で測定された情報に基づいて前記尖端部の高さを制御する制御部と、を有するものであるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、板状部材と尖端部とが、接触することを抑制できる。そのため、板状部材が破損することを抑制できる。また、板状部材が薄厚化(例えば、厚みが100μm)されていても、確実にシートに対して尖端部を係合させることができる。これにより、板状部材から確実にシートを剥離させることができる。
【0018】
(6)上述した本発明のシート剥離装置は、前記板状部材における剥離開始端側の外周部を上方側から前記保持テーブルに向けて押える押え板を有しており、前記剥離始端部の形成に伴って、前記押え板により、前記外周部を押えた状態で、前記シートを前記板状部材から剥離させるものであるとよい。
【0019】
かかる構成によれば、板状部材が薄厚化されていても、板状部材がシートに引っ張られて浮き上がることを抑制できる。これにより、板状部材が破損したり、外縁部分がチッピングしたりすることを抑制できる。
【0020】
(7)上述した本発明のシート剥離装置は、前記保持テーブル及び前記尖端部のいずれか一方又は双方を加熱するための加熱部を有するものとすればよい。
【0021】
かかる構成によれば、シートの粘着剤が軟化されるので、剥離の際の抵抗を軽減できる。そのため、シートを容易に剥離させることができ、板状部材が破損することを抑制できる。
【0022】
(8)上述した本発明のシート剥離装置は、前記板状部材が、半導体ウエハであり、前記シートが、裏面研削用の保護シートであるとよい。
【0023】
かかる構成によれば、半導体ウエハの表面を保護する保護シート(保護テープ又はBGテープとも称する)の剥離に適したシート剥離装置を提供することができる。また、裏面研削工程によって、表面に汚れが付着した保護シートであっても、確実に剥離させることができるシート剥離装置を提供することができる。
【0024】
(9)上述した課題を解決すべく提供されるシート剥離方法は、板状部材に貼付されたシートを一端側から他端側に向けて剥離するシート剥離方法であって、前記シートが上面側となるように前記板状部材を保持テーブルに保持する板状部材保持工程と、前記シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から少なくとも一つの尖端部を係合させる尖端部係合工程と、前記尖端部を前記保持テーブルに対して上方側に相対移動させることにより、前記シートを上方側に引き起こして剥離始端部を形成する剥離始端部形成工程とを経た後、前記剥離始端部を挟持するシート保持部により挟持した状態で引っ張ることにより、前記板状部材から前記シートを剥離すること、を特徴とするものである。
【0025】
上述したシート剥離方法は、尖端部係合工程において、シートにおける剥離開始側の側端面に対して水平方向から尖端部を係合させることができる。従って、尖端部が、シート面と交差する方向から突き抜けて板状部材に接触することを抑制できる。これにより、板状部材が破損することを抑制できる。また、剥離始端部形成工程において、確実に剥離始端部を形成することができる。上述したシート剥離方法は、このようにして形成された剥離始端部をシート保持部により挟持した状態で引っ張ることにより、板状部材からシートを剥離するものである。そのため、上述したシート剥離方法によれば、剥離テープを使用せずにシートを剥離でき、剥離テープのコストを低減することができる。また、上述したシート剥離方法は、剥離テープを使用しないので、剥離テープが保持テーブルに貼り付くことがない。また、シート表面が汚れていても、確実にシートを剥離することができる。
【0026】
(10)上述したシート剥離方法は、前記剥離始端部形成工程とを経た後、前記剥離始端部を前記シート保持部を構成する第一シート保持部により挟持する第一シート保持工程と、前記剥離始端部を前記第一シート保持部により挟持した状態で上方側に引っ張ることにより前記板状部材と前記シートとの隙間を広げるシート引き起こし工程と、引き起こされた前記剥離始端部の幅方向両側を、前記シート保持部を構成するものであって幅方向に沿って形成された一対の第二シート保持部によって挟持すると共に、前記第一シート保持部による前記剥離始端部の挟持を解除する第二シート保持工程と、前記第二シート保持部により前記剥離始端部の幅方向に沿った両側を挟持した状態で、前記保持テーブルに対して剥離方向他端側に向けて相対移動することにより、前記板状部材から前記シートを剥離するシート剥離工程と、を順次実行することにより、前記板状部材から前記シートを剥離するものであると良い。
【0027】
上述したような方法によれば、第一シート保持工程において、剥離始端部を確実に保持することができ、これに続くシート引き起こし工程により、第二シート保持部で挟持するシート代を確実に形成することができる。そのため、剥離ミスを抑制することができる。また、第二シート保持工程により、引き起こされた剥離始端部の幅方向両側を、幅方向に沿って形成された一対の第二シート保持部によって挟持することができる。従って、これに続くシート剥離工程において、シートを引っ張った際にシートが中央に絞り込まれることを抑制できる。これにより、板状部材に掛かる負荷を低減することができ、板状部材が破損することを抑制できる。また、第二シート保持部によりシートが確実に保持されるので、剥離の途中に、シートが外れて剥離不良が発生することを抑制できる。また、第二シート保持部によって、剥離始端部の幅方向両側を挟持した状態で、第一シート保持部による剥離始端部の挟持を解除するので、第一シート保持部と第二シート保持部との干渉を避けた状態で、第一シート保持部から第二シート保持部にシートを持ち替えることができる。
【0028】
(11)上述した本発明のシート剥離方法は、前記尖端部係合工程に先立って、前記保持テーブルの保持面の高さと、前記板状部材及び前記シートのそれぞれの厚みとを測定部により測定する測定工程と、前記測定部による測定結果に基づいて、前記側端面に対する前記尖端部の位置決めを行う位置決め工程と、が実行されるものであるとよい。
【0029】
かかる構成によれば、板状部材と尖端部とが、接触することを抑制できる。そのため、板状部材が破損することを抑制できる。また、板状部材が薄厚化(例えば、厚みが100μm)されていても、確実にシートに対して尖端部を係合させることができる。これにより、板状部材から確実にシートを剥離させることができる。
【0030】
(12)上述した本発明のシート剥離方法は、前記剥離始端部形成工程において、前記剥離始端部が形成された後に前記板状部材における剥離開始端側の外周部が、押え板により上方側から前記保持テーブル側に向けて押え付けられる板状部材押え工程が実行されるものであるとよい。
【0031】
かかる構成によれば、板状部材が薄厚化されていても、板状部材がシートに引っ張られて浮き上がることを抑制できる。これにより、板状部材が破損したり、外縁部分がチッピングしたりすることを抑制できる。
【0032】
(13)上述した本発明のシート剥離方法は、前記尖端部係合工程に先立って、前記保持テーブル及び前記尖端部のいずれか一方又は双方が、加熱される加熱工程が実行されるものであるとよい。
【0033】
かかる構成によれば、シートの粘着剤が軟化されるので、剥離の際の抵抗を軽減できる。そのため、シートを容易に剥離させることができ、板状部材が破損することを抑制できる。
【0034】
(14)上述した本発明のシート剥離方法は、前記板状部材が、半導体ウエハであり、前記シートが、裏面研削用の保護シートであるとよい。
【0035】
かかる構成によれば、半導体ウエハの表面を保護する保護シート(保護テープ又はBGテープとも称する)の剥離に適したシート剥離方法を提供することができる。また、裏面研削工程によって、表面に汚れが付着した保護シートであっても、確実に剥離させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、剥離に要するコストを低減することが可能であり、ウエハ等の板状部材の破損を抑制可能なシート剥離装置及びシート剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明のシート剥離装置の一実施形態を示す一部省略平面図である。
図2図1のA-A方向断面図である。
図3】本発明のシート剥離装置を構成する測定部の説明図である。
図4】(a)及び(b)は、本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図5】(c)及び(d)は、本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図6】(e)及び(f)は、本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図7】本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図8】本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図9】本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図10】本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
図11】本発明のシート剥離装置における動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係るシート剥離装置1の一実施形態について、図1図11を参照しつつ詳細を説明する。また、本実施形態では、板状部材が半導体ウエハW(ウエハWとも称する)であり、ウエハWの表面に貼り付けられた裏面研削用の保護シートSを剥離する場合を例として説明する。なお、各図において、保護シートSやウエハWは、厚みを誇張して描いてあることに留意されたい。
【0039】
本実施形態において剥離対象とされる保護シートS(シートSとも称する)は、例えば、ウエハWの裏面研削を行う際に、ウエハWに形成された回路パターン面を保護するために貼り付けられるものである。保護シートSは、例えばEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)やPET(ポリエチレンテレフタレート)等の基材に粘着層を積層したものとされている。保護シートSは、貼り付け前に離型シートが剥離され、粘着面側が、ウエハWに貼り付けられる。なお、保護シートSは、予めウエハWの形状に切断されたものを貼り付けるか、あるいは、半導体ウエハWに貼り付けた後に半導体ウエハWの形状に切断するかにより、ウエハWの回路パターン面に貼り付けされる。また、保護シートSは、例えば、紫外線硬化型の粘着剤が用いられており、剥離前に紫外線の照射により、粘着力を低下させることが行われる。
【0040】
図1及び図2に示すように、シート剥離装置1は、ウエハWを保持する保持テーブル10と、剥離始端部形成ユニット20と、剥離始端部S1を保持する第一シート保持部30と、保護シートSの幅方向両側に設けられた一対の第二シート保持部40,40と、を備えている。また、シート剥離装置1は、上記の他、測定部50と、シート剥離装置1を制御する制御部60等を備えている。
【0041】
図2に示すように、保持テーブル10は、ウエハWの外形に合わせて円形状に形成された吸着部11と、吸着部11を取り囲むテーブル枠12と、ウエハWの外縁を押える押え板13等を備えている。
【0042】
吸着部11は、例えば、セラミックスを素材とする多孔質体や複数の吸着孔を有する板材等で形成されている。吸着部11は、適宜の真空ポンプ(図示せず)により、上面側に吸着力を発生させることができる。これにより、吸着部11は、保護シートSが上面側となるようにウエハWを保持することができる。また、吸着部11は、吸着するウエハWの外径に合わせて、複数の領域(図示せず)を有しており、吸着力を発生させる領域を切替することができる。吸着部11は、ウエハWが載置された領域に吸着力を発生させることにより、ウエハWを吸着保持することができる。
【0043】
また、吸着部11は、例えば、シート状のヒータ15(加熱部15とも称する)が内蔵されており、保持したウエハWを加熱することができる。これにより、保護シートSの粘着剤を加熱することができ、当該粘着剤を軟化させて剥離の際の抵抗を軽減することができる。そのため、後述する保護シートSの剥離を容易に行うことができる。ヒータ15の加熱温度は、保護シートSや粘着剤の組成に合わせて適宜変更することができる。
【0044】
テーブル枠12は、吸着部11を取り囲むように形成されており、吸着部11の吸着漏れを抑制している。また、テーブル枠12は、適宜の駆動源(図示せず)により、吸着部11と一体的に、シートSの剥離方向に沿った水平動が可能なものとされている。
また、テーブル枠12の上面は、吸着部11の上面と面一に形成されており、後述する針21を位置決めする際の基準とすることができる。
【0045】
押え板13は、保持テーブル10の剥離開始側の一端に設けられている。押え板13は、適宜の駆動源(図示せず)により剥離方向に沿った水平動と、上下動とが可能である。また、押え板13は、ウエハWにおける剥離開始端側の外周部を上方側から保持テーブル10に向けて押えることができる。従って、剥離始端部S1の形成に伴って、押え板13をウエハWの外周部上に位置させて、ウエハWの外周部を押えるようにすることで、ウエハWの浮き上がりを抑制できる。また、押え板13によりウエハWの外周部を押えた状態で、保護シートSをウエハWから剥離させることができる。これにより、ウエハWが薄厚化されていても、ウエハWが保護シートSに引っ張られて浮き上がることを抑制できる。また、ウエハWが破損したり、外縁部分がチッピングしたりすることを抑制できる。
【0046】
剥離始端部形成ユニット20は、支持部25と、一対の針21,21(尖端部21,21とも称する)等を有している。
【0047】
針21,21は、先端が鋭利に形成されており、先端をシートSの側端面S2に突き刺して挿し込む(係合させる)ことができる。また、本実施形態では、針21が、保護シートSの剥離方向と交差する幅方向(以下、単に幅方向とも称する)に間隔を空けて一対配されている。針21,21は、先端側が、剥離開始側の側端面S2に対して水平方向から向き合うように設けられている。すなわち、針21,21が保護シートSの貼り付け面に対して平行に設けられている。従って、保護シートSの幅方向の両側から一対の針21,21により保護シートSを係合させることができる。すなわち、保護シートSの幅方向の両側からバランス良く保護シートSと針21,21とを係合させることができる。そのため、係合が解除されることが抑制される。また、保護シートSの側端面S2に対して水平方向から針21,21を突き刺して係合させることができるので、ウエハWが破損することを抑制できる。
【0048】
針21,21は、後述する支持部25に後端側が支持されている。また、針21,21は、支持部25の軸26回りの回動と、保持テーブル10に対する相対的な上下動及び水平動が可能なものとされている。従って、針21,21が、側端面S2と水平方向に向き合うように位置決めされた状態で、保持テーブル10を針21,21の先端に向けて水平動させることにより、針21,21を剥離開始側の側端面S2に係合させることができる。また、針21,21を側端面S2に係合させた状態で、針21,21を上方側に回転させることにより、保護シートSを上方側に引き起こして、剥離始端部S1を形成することができる。そのため、針21,21が、保護シートSの貼り付け面と交差する方向から突き抜けてウエハWに接触することを抑制できる。これにより、ウエハWが破損することを抑制できる。また、一対の針21,21でバランス良く保護シートSと針21,21とが係合されているので、剥離始端部S1を精度良く確実に形成することができる。
【0049】
また、針21,21は、後端側に向かうにつれて、上方側に向けて湾曲形成されている。針21,21は、例えば、導通が可能な金属で形成されている。従って、針21,21の最下部と、テーブル枠12の上面側とを接触させて導通を取ることにより、針21,21の高さ方向の位置決めを行うことができる。針21,21の高さ方向の位置決めについての詳細は、後述する。なお、針21は、少なくとも一つ設ければよく、本実施形態のように幅広の保護シートSを剥離させる際は、複数設けるとよい。かかる場合は、保護シートSの幅方向に沿って均等に配することが望ましい。これにより、剥離の際に掛かる負荷を均等に分散させることができ、ウエハWに掛かる負荷を均等に分散させることができる。
【0050】
支持部25は、針21,21の後端部を支持するものとされている。具体的には、支持部25は、針21,21の後端部が向く方向に沿って傾斜姿勢で針21,21を支持している。そのため、保持テーブル10と間隔を空けて支持部25を位置させることができる。これにより、支持部25が、保持テーブル10と干渉することを抑制できる。また、支持部25は、図示しない支持枠に軸26を介して回動可能に支持されている。支持部25は、適宜のモータ等の駆動源(図示せず)により、軸26に対する回動と、上下動及び剥離方向に沿った水平動が可能なものとされている。従って、針21,21は、軸26に対する上下方向への回動と、上下動及び剥離方向に沿った水平動が可能なものとされている。また、支持部25は、ヒータ27(加熱部27とも称する)を内蔵しており、針21,21を加熱することができる。これにより、保護シートSの粘着剤を加熱して軟化させて剥離の際の抵抗を軽減することができる。そのため、後述する保護シートSの剥離を容易に行うことができる。ヒータ27の加熱温度は、保護シートSや粘着剤の組成に合わせて適宜変更することができる。
【0051】
第一シート保持部30は、適宜の駆動源(図示せず)により開閉可能な一対のチャックにより構成されており、保護シートSにおける剥離始端部S1を挟持することができる。また、第一シート保持部30は、保護シートSと接する面にローレット加工等により、凹凸が形成されている。そのため、確実に保護シートSを挟持することができ、保護シートSが第一シート保持部30から脱落することを抑制できる。
【0052】
また、第一シート保持部30は、針21,21の間の略中央に位置するように配されている。従って、針21,21と干渉することなく、剥離始端部S1を挟持することができる。これにより、針21,21によって形成された剥離始端部S1が、確実に、より早く保持される。また、第一シート保持部30は、図2に示すように、直立方向に旋回が可能なものとされている。従って、詳細は後述するが、図5(d)や図10に示すように、第一シート保持部30により剥離始端部S1を挟持した状態で、第一シート保持部30を直立方向に旋回させることができる。これにより、剥離始端部S1におけるウエハWと保護シートSとの隙間が広げられる。
【0053】
図1に示すように、第二シート保持部40は、第一シート保持部30を介して剥離方向と交差する幅方向に沿った両側にそれぞれ配されている。図1及び図2に示すように、第二シート保持部40,40は、それぞれ保護シートSの幅方向に沿って、延びるように形成された一対のチャックにより構成されている。第二シート保持部40における一対のチャックは、適宜の駆動源(図示せず)により開閉可能に形成されており、引き起こされた剥離始端部S1を挟持することができる。また、第二シート保持部40は、保護シートSと接する面にローレット加工等により、凹凸が形成されている。そのため、確実に保護シートSを挟持することができ、保護シートSが第二シート保持部40から脱落することを抑制できる。
【0054】
また、一対の第二シート保持部40,40は、適宜の支持枠(図示せず)に支持されており、保持テーブル10の剥離方向への水平動に伴って、挟持した保護シートSを剥離方向他端側に向けて引っ張ることが可能である。これにより、ウエハWの表面から保護シートSを剥離することができる。このように、本実施形態では、形成された剥離始端部S1の幅方向両側を幅方向に沿って一対の第二シート保持部40、40により挟持することができる。また、一対の第二シート保持部40、40により保護シートSを挟持した状態で、保護シートSを引っ張って剥離させることができる。従って、幅広の保護シートSを剥離させる場合であっても、保護シートSを引っ張った際に保護シートSが中央に絞り込まれることを抑制できる。これにより、ウエハWに掛かる負荷を低減することができ、ウエハWが破損することを抑制できる。また、第二シート保持部40、40により保護シートSが確実に保持されるので、剥離の途中に、保護シートSが第二シート保持部40、40から外れて剥離不良が発生することを抑制できる。
【0055】
図1に示すように、測定部50は、保持テーブル10の近傍上方に設けられている。測定部50は、例えば、インプロセスゲージが用いられている。以下、測定部50をインプロセスゲージ50とも称することがある。図3に示すように、測定部50は、適宜の駆動源(図示せず)により、保持テーブル10に保持されたウエハWの外縁付近の上方に位置させることができる。インプロセスゲージ50は、例えば、光学的な手段により、インプロセスゲージ50と保持テーブル10の保持面(上面)との距離d1を測定することができる。これにより、保持テーブル10の保持面の高さが取得できる。また、インプロセスゲージ50は、インプロセスゲージ50と保護シートSの上面との距離d2を測定することができる。また、ウエハWの厚みd3は、測定により直接求めるか、あるいは、既知の厚みd3を用いることができる。ここで、保護シートSの厚みd4は、距離d1から距離d2と厚みd3とを減ずることにより算出できる。保護シートSの厚みd4の算出は、例えば、後述する制御部60の演算装置により算出することができる。
【0056】
制御部60は、例えば、制御用コンピュータを備えており、上述した保持テーブル10、剥離始端部形成ユニット20、第一シート保持部30、及び第二シート保持部40等のシート剥離装置1における各種の制御を行うことができる。制御部60は、上述した保護シートSの厚みd4、ウエハWの厚みd3、及び保持テーブル10の保持面の高さの情報に基づいて、針21,21の高さ方向の位置を制御することができる。従って、ウエハWと針21,21とが、接触することを抑制でき、ウエハWが破損することを抑制できる。また、ウエハWが薄厚化(例えば、厚みが100μm)されていても、確実に保護シートSに対して針21,21を係合させることができる。これにより、ウエハWから確実に保護シートSを剥離させることができる。
【0057】
以上が、本発明に係るシート剥離装置1の実施形態である。なお、本実施形態では、シート保持部を第一シート保持部30と第二シート保持部40とに分離しているが、第一シート保持部30又は第二シート保持部40のどちらか一方を廃することも可能である。かかる場合は、第一シート保持部30又は第二シート保持部40で剥離始端部S1を挟持した状態で、保持テーブル10を剥離方向へ水平動させることにより、挟持した保護シートSを剥離させればよい。次にシート剥離装置1を用いてウエハWから保護シートSを剥離させるシート剥離方法について、図4図11を参照しながら以下に説明する。なお、図4図11においては、関係しない部材は、図示を簡略化するため、適宜省略して描いていることに留意されたい。
【0058】
まず、図4(a)及び図7の工程に先立って、保護シートSが上面側となるようにウエハWがロボットハンド(図示せず)等により、保持テーブル10上に搬送される。保持テーブル10上に搬送されたウエハWは、位置決めされた状態で保持テーブル10上に載置される。続いて、吸着部11に吸着力を発生させることにより、ウエハW(板状部材W)が保持テーブル10上に保持される(板状部材保持工程)。
【0059】
続いて、上述したように、インプロセスゲージ50により、保持テーブル10の保持面との距離d1、保護シートSの上面との距離d2、及びウエハWの厚みd3が測定により求められ、これらに基づいて、保持テーブル10の高さ、保護シートSの保持面の高さ、保護シートSの厚みd4、及び保護シートSの高さが求められる(測定工程)。
【0060】
続いて、測定工程における測定結果に基づいて、側端面S2に対する針21,21の位置決めが行われる(位置決め工程)。位置決め工程では、まず、針21,21の基準位置となる最下部をテーブル枠12の上面に接触させて導通を取ることにより、針21,21の高さ方向の位置が取得される。続いて、針21,21の基準位置と、側端面S2の高さ方向の位置とに基づいて、針21,21が、剥離開始側の側端面S2に対して水平方向に向き合うように位置制御が行われる。なお、針21,21の基準位置は、テーブル枠12との導通以外の手段によって求めるものでもよい。
【0061】
続いて、ヒータ15により吸着部11が加熱されると共にヒータ27により針21,21が加熱される(加熱工程)。これにより、保護シートSの粘着剤が軟化されるので、剥離の際の抵抗を軽減できる。そのため、保護シートSを容易に剥離させることができ、板状部材が破損することを抑制できる。
【0062】
次に、図4(a)及び図7に示すように、保持テーブル10が針21,21(尖端部21,21)に向けて水平動することにより、針21,21が、保護シートSにおける剥離開始側の側端面S2に挿し込まれて係合する(尖端部係合工程)。このように、尖端部係合工程においては、保護シートSにおける剥離開始側の側端面S2に対して水平方向から針21,21を係合させることができる。従って、針21,21が、シート面と交差する方向から突き抜けてウエハWに接触することを抑制できる。これにより、ウエハWが破損することを抑制できる。
【0063】
続いて、図4(b)及び図8に示すように、保持テーブル10を針21,21に向けてさらに進行させつつ、針21,21を上方側に僅かに回転させることにより、剥離始端部S1が形成される(剥離始端部形成工程)。また、剥離始端部形成工程において、剥離始端部S1が形成された後にウエハWにおける剥離開始端側の外周部が、押え板13により上方側から保持テーブル10側に向けて押え付けられる(板状部材押え工程)。これにより、ウエハWが薄厚化されていても、ウエハWが保護シートSに引っ張られて浮き上がることを抑制できる。また、ウエハWが破損したり、外縁部分がチッピングしたりすることを抑制できる。
【0064】
続いて、図5(c)及び図9に示すように、針21,21の中間部において、第一シート保持部30により形成された剥離始端部S1が挟持により保持される(第一シート保持工程)。これにより、確実に剥離始端部S1を形成することができる。
【0065】
続いて、図5(d)及び図10に示すように、剥離始端部S1を第一シート保持部30により挟持した状態で第一シート保持部30が直立状態となるように第一シート保持部30を旋回させる。すなわち、第一シート保持部30で剥離始端部S1を上方側に引っ張ることによりウエハWと保護シートSとの隙間が広げられる(シート引き起こし工程)。これにより、第二シート保持部40で挟持するシート代を確実に形成することができる。そのため、剥離ミスを抑制することができる。なお、剥離始端部S1の引き起こし量は、第二シート保持部40,40で挟持する位置に応じて適宜変更することができる。これにより、シートSの保持幅を制御することが可能である。
【0066】
続いて、図6(e)及び図11に示すように、引き起こされた剥離始端部S1の幅方向両側が、一対の第二シート保持部40、40によって挟持されると共に、第一シート保持部30による剥離始端部S1の挟持が解除される(第二シート保持工程)。このように、第二シート保持工程においては、引き起こされた剥離始端部S1の幅方向両側を、幅方向に沿って形成された一対の第二シート保持部40,40によって挟持することができる。従って、これに続くシート剥離工程において、保護シートSを引っ張った際に保護シートSが中央に絞り込まれることを抑制できる。これにより、ウエハWに掛かる負荷を低減することができ、ウエハWが破損することを抑制できる。また、第二シート保持部40により保護シートSが確実に保持されるので、剥離の途中に、保護シートSが、第二シート保持部40,40から外れて剥離不良が発生することを抑制できる。
【0067】
また、第二シート保持部40,40によって、剥離始端部S1の幅方向両側を挟持した状態で、第一シート保持部30による剥離始端部S1の挟持を解除するので、第一シート保持部30と第二シート保持部40,40との干渉を避けた状態で、第一シート保持部30から第二シート保持部40,40に保護シートSを持ち替えすることができる。なお、第一シート保持部30による剥離始端部S1の挟持は、必要により解除すればよく、挟持を解除せずに第一シート保持部30と第二シート保持部40、40とで一体的に保護シートSを剥離することも可能である。
【0068】
続いて、図6(f)に示すように、第二シート保持部40、40により剥離始端部S1の幅方向に沿った両側を挟持した状態で、保持テーブル10が剥離方向に沿って後退する。すなわち、第二シート保持部40,40を保持テーブル10に対して剥離方向他端側に向けて相対移動させることにより、ウエハWから保護シートSが剥離される(シート剥離工程)。剥離された保護シートSは、図示しない適宜の廃棄ボックスに廃棄される。
【0069】
以上が、本発明のシート剥離方法の各工程の詳細である。このように本発明によるシート剥離方法によれば、剥離テープを使用せずに保護シートS等のシートSを剥離することができる。そのため、剥離テープのコストを低減することができる。また、上述したシート剥離方法は、剥離テープを使用しないので、剥離テープが保持テーブル10に貼り付くことがない。そのため、保持テーブル10のフロン処理等を廃することができる。また、シート表面が汚れていても、確実にシートSを剥離することができる。そのため、特に半導体ウエハWの裏面研削工程で用いられる保護シートSの剥離に好ましく利用することができる。本発明のシート剥離装置及びシート剥離方法は、保護シートSの側端を剥がして剥離始端部S1を形成する機構と剥離するために保護シートSを保持する機構とを別々に備えることにより、より確実に剥離することができ、様々なシートへの対応も可能となる。
【0070】
以上が、本発明のシート剥離装置1及びシート剥離方法の実施形態であるが、本発明のシート剥離装置1及びシート剥離方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形を行うことが可能である。
【0071】
本実施形態では、シートSが半導体ウエハWに用いられる保護シートSである場合を例として説明したが、保護シートSだけではなく、各種のシートを用いることができる。また、シートSは、円形のものだけではなく、各種の形状のものを用いることができる。例えば、シートSが矩形状のものであってもよい。また、本実施形態では、第二シート保持部40により、シートSを引っ張って剥離させるようにしているが、第二シート保持部40を廃して、第一シート保持部30により、シートSを剥離させてもよい。
【0072】
本実施形態では、保持テーブル10を剥離方向に沿って水平動させることにより、シートSを剥離させるようにしているが、尖端部21、第一シート保持部30、第二シート保持部40が、保持テーブル10に対して相対的に剥離方向に沿って水平動可能であればよい。すなわち、尖端部21、第一シート保持部30及び第二シート保持部40が剥離方向に沿って水平動するものでもよい。また、本実施形態では、尖端部21、第一シート保持部30、及び第二シート保持部40が、保持テーブル10に対して上下動可能に設けられているが、保持テーブル10側が上下動するものとしてもよい。すなわち、尖端部21、第一シート保持部30及び第二シート保持部40が、保持テーブル10に対して相対的に上下動すればよい。
【0073】
また、本実施形態では、尖端部21として針を用いているが、尖端部21は針だけではなく、スクレーパ、刃物等の各種のものを用いることができる。また、尖端部21の形状や大きさは、剥離させるシートSの厚み等に合わせて各種の形状のものを採用できる。なお、シートSの厚みが薄い場合は、針等の先端の面積が小さいものを用いることが望ましい。
【0074】
また、本実施形態では、シートSの幅方向に沿って間隔を空けて一対の尖端部21,21を設けるようにしているが、尖端部21は、シートSの幅や形状に合わせて単一のものや、2つ以上のものを採用することもできる。また、複数の尖端部21を設ける場合における幅方向の間隔は、シートSの幅や形状に合わせて適宜変更することができる。
【0075】
また、本実施形態では、第一シート保持部30が、単一のものであるが、第一シート保持部30が、複数設けられていてもよい。また、本実施形態では、第二シート保持部40が、シートSの幅方向に沿って第一シート保持部30の両側に設けられているが、一対の第二シート保持部40,40が一体化されていてもよい。かかる場合は、第一シート保持部30と干渉しないように設けることが望ましい。また、第二シート保持部40は、単一のものや2つ以上に分割して形成されているものなど、各種の個数のものとすることができる。また、第二シート保持部40の幅方向の長さは、シートSに合わせて適宜変更することができる。また、第二シート保持部40,40により、挟持するシートSの挟持幅は、剥離始端部S1の引き起こし量によって、適宜調整することが可能である。また、本実施形態では、第一シート保持部30や第二シート保持部40のシート挟持面がローレット加工により凹凸が形成されているものを例示したが、ローレット加工に代えて、各種の手段で摩擦力を向上させることができる。また、確実にシートSを保持できるものであれば、ローレット加工等を廃することも可能である。
【0076】
本実施形態では、測定部50にインプロセスゲージを設けるようにしたが、インプロセスゲージに代えて各種の測定機器を設けることが可能である。また、シートSの厚み及び板状部材Wの厚みが一定の場合やシートSの厚みが厚い場合は、測定部50を設けない構成としてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、板状部材Wを保持テーブルに向けて押える押え板13を設けているが、板状部材Wが持ち上がる恐れがない場合は、押え板13を廃することができる。また、押え板13の形状や大きさは、板状部材Wの形状等に合わせて適宜変更することができる。また、本実施形態では、保持テーブル10及び尖端部21の双方を加熱するための加熱部15,27を設けているが、加熱部15,27は、剥離させるシートSの組成に合わせて適宜設ければよく、加熱部15,27のいずれか一方又は双方を廃止することも可能である。
【0078】
以上が、本発明に係るシート剥離装置及びシート剥離方法の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のシート剥離装置及びシート剥離方法は、各種の板状部材に貼り付けられた粘着シート等の各種のシートの剥離に用いることができる。また、本発明のシート剥離装置及びシート剥離方法は、半導体ウエハに貼り付ける保護シート等の各種の貼付シートの剥離に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
S :シート(保護シート)
S1 :剥離始端部
S2 :側端面
W :板状部材(半導体ウエハ)
1 :シート剥離装置
10 :保持テーブル
13 :押え板
15 :ヒータ(加熱部)
20 :剥離始端部形成ユニット
21 :針(尖端部)
27 :ヒータ(加熱部)
30 :第一シート保持部
40 :第二シート保持部
50 :インプロセスゲージ(測定部)
60 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11