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  • 特開-クリップ 図1
  • 特開-クリップ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024199
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   B42F 1/02 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B42F1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130366
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】519372423
【氏名又は名称】有限会社テー・シー・富山
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟戸 公明
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017BA04
2C017DA01
(57)【要約】
【課題】
小形化を実現しやすく、また製造時や処分時の手間を削減するため、一つの素材で一体的に形成されたクリップを提供する。
【解決手段】
クリップは、一方帯11と他方帯31と板バネ部26で構成し、一方帯11はレバー部13と支点部14と中間板16と挟持部18に区画してあり、他方帯31も同様に区画してあり、一方帯11と他方帯31の双方の中間板16、36を板バネ部26でZ状に一体化することで、板バネ部26の反力により、対向する挟持部18、38で被挟持物を強固に挟み込むことができる。しかも一方帯11と他方帯31と板バネ部26は、一枚の板材から形成されるため、製造時や処分時の手間を抑制できる。また二枚の中間板16、36と板バネ部26を隙間なく密着させることで、美観が向上するほか、全体の小形化も実現できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方帯(11)と他方帯(31)の二枚が重なり合うように配置してあり、
前記一方帯(11)および前記他方帯(31)は、いずれもその一端側から他端側に向け、レバー部(13、33)と支点部(14、34)と中間板(16、36)と挟持部(18、38)に区画してあり、
前記支点部(14、34)は、前記レバー部(13、33)と前記中間板(16、36)との境界に位置しており、且つ対向する該支点部(14、34)同士は接触可能な状態で隣接しており、また対向する該レバー部(13、33)同士は、距離を隔てて配置してあり、さらに対向する前記挟持部(18、38)同士が接近することで被挟持物を挟み込むことができ、
対向する前記中間板(16、36)同士は、板バネ部(26)を介して一体化してあり、該板バネ部(26)は、いずれか一方の該中間板(16または36)の左側端部と、残る一方の該中間板(36または16)の右側端部と、の間を斜方向に結んでおり、
前記レバー部(13、33)同士を接近させることで、前記板バネ部(26)は、前記中間板(16、36)で引張され、ねじれるように変形していき、同時に対向する前記挟持部(18、38)同士は、離反するように移動していき、
前記一方帯(11)と前記他方帯(31)と前記板バネ部(26)は、一枚の板材で形成されていることを特徴とするクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紙面など、様々な物を束ねる際に用いるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
クリップは、複数の紙面などを挟み込み、その散乱を防ぐために用いられる文具であり、用途に応じて様々な種類が存在しているが、その中のゼムクリップは、線材を長円形に形成したものであり、数枚の紙面など、比較的薄い物を束ねる際に用いることが多い。また目玉クリップやダブルクリップは、数十枚の紙面など、より厚い物を束ねる際に用いることが多く、テコの原理によって開閉可能な構造になっており、そのツマミ部分を指などで押し込むと、反対側の挟持部が開放され、そこに紙面など、様々な物を挟み込むことができる。このようなクリップ類の技術開発の具体例については、後記の特許文献が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、シート状部材(被挟持物)が最大綴じ厚に近い場合でも、ヘタリの少ない金属板製のクリップが開示されている。このクリップは、バネ性を有する帯状の金属板を折り曲げて形成され、その背後中央に位置する背部と、背部の両端から突出する当接部と、を有する「コ」の字状であり、対向する当接部の間でシート状部材を挟持するため、背部の大きさによって最大綴じ厚が決定することになる。そしてこのクリップは、当接部自体に弾性力を生じさせるため、当接部において、背部からやや離れた位置に折り曲げ部を形成してある。この折り曲げ部が変形することで、厚目のシート状部材によって当接部同士がほぼ平行に揃った状態においても、ヘタリの発生を抑制することができる。
【0004】
特許文献2では、開閉レバーを備えたダブルクリップにおいて、束ねた書類の一部をめくり上げて裏側に巻き込む際、このめくり上げた書類が開閉レバーに接触することで巻き込みが阻害され、大きく膨れ上がることを防ぐ技術が開示されている。このダブルクリップは、書類を挟持する保持体と、その開閉レバーで構成されており、保持体は、二枚の挟み保持板を連結板で一体化した形状になっているが、この二枚の挟み保持板のうちの一方は、その先端部から連結板までの奥行きを増大させている。その結果、書類を束ねた際、その表面側の挟み保持板は、書類表面とほぼ平行に揃うことになり、開閉レバーが上方向に突出することを防ぎ、めくり上げた書類の巻き込みが円滑に進むことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-278464号公報
【特許文献2】特開2012-171353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多数の紙面など、比較的厚い物を束ねる際は、前記のような目玉クリップやダブルクリップを用いることになるが、このようなクリップは複数の部品で構成されているため、その製造時、個々の部品を形成した後、これらを組み合わせる作業が必要になり、製造時の手間が増大することになる。またこのようなクリップの処分時は、再資源化を容易にするため、分解などの作業を伴うことがあり、その際、部品に弾性応力が蓄積されていると、部品が不用意に飛び出し、思わぬトラブルを招く恐れがある。そのほかクリップ自体は、束ねた紙面のめくり上げなどを妨げないよう、できるだけ小形化することが望ましい。
【0007】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、小形化を実現しやすく、また製造時や処分時の手間を削減するため、一つの素材で一体的に形成されたクリップの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一方帯と他方帯の二枚が重なり合うように配置してあり、前記一方帯および前記他方帯は、いずれもその一端側から他端側に向け、レバー部と支点部と中間板と挟持部に区画してあり、前記支点部は、前記レバー部と前記中間板との境界に位置しており、且つ対向する該支点部同士は接触可能な状態で隣接しており、また対向する該レバー部同士は、距離を隔てて配置してあり、さらに対向する前記挟持部同士が接近することで被挟持物を挟み込むことができ、対向する前記中間板同士は、板バネ部を介して一体化してあり、該板バネ部は、いずれか一方の該中間板の左側端部と、残る一方の該中間板の右側端部と、の間を斜方向に結んでおり、前記レバー部同士を接近させることで、前記板バネ部は、前記中間板で引張され、ねじれるように変形していき、同時に対向する前記挟持部同士は、離反するように移動していき、前記一方帯と前記他方帯と前記板バネ部は、一枚の板材で形成されていることを特徴とするクリップである。
【0009】
本発明によるクリップは、一方帯および他方帯と称する二枚の帯状の板が段差なく重なり合う構成になっており、しかも一方帯と他方帯は板バネ部で一体化されており、板バネ部により、紙面など、各種の被挟持物を挟み込むための反力を発生する。また一方帯と他方帯は、双方の境界線を挟んで概ね線対称形状になっており、一方帯と他方帯のそれぞれについて、その一端側から他端側に向け、レバー部と支点部と中間板と挟持部の四箇所の領域に区画されている。
【0010】
レバー部は、一方帯および他方帯のそれぞれの一端側に位置しており、双方のレバー部は距離を隔てて対向しており、使用時、指などで押し込む部位である。対する挟持部は、レバー部とは反対の他端側に位置しており、双方の挟持部の間で被挟持物を挟み込み、クリップから離脱不能とすることができる。そして一方帯と他方帯のいずれも、レバー部と挟持部との間は、中間板で結ばれている。さらにレバー部と中間板との境界を支点部としてあり、一方帯と他方帯のいずれも、この支点部で「く」の字状に屈曲させてあり、レバー部と中間板は交角を有している。そのためレバー部は、支点部から遠ざかるに連れ、双方の間隔が広がっていく。
【0011】
一方帯と他方帯の双方の支点部は、自然な状態において、直ちに接触可能な程度に接近させておくが、実際に接触していても構わない。そして対向するレバー部同士を指などで押し込むと、支点部同士が強く接触することになり、その際、支点部の先に位置する中間板は、支点部から遠ざかるに連れ、双方の間隔が広がっていく。その結果、対向する挟持部の間隔も広がることになり、挟持部同士の間に被挟持物を差し入れることができる。
【0012】
対向する二枚の中間板は、板バネ部によって一体化してある。板バネ部は、文字通り単純な板であり、その対向する二側端面のうちの一方は、一方帯の中間板の側端部に接続しており、残る一方は、他方帯の中間板の側端部に接続しているが、この接続位置は、一方帯と他方帯で左右反転している。したがって一方帯と他方帯を横断面から見た場合、二枚の中間板の間に板バネ部が挟み込まれており、全体では「Z」状の配置になる。ただし二枚の中間板の間隔は、可能な限り狭くすることが多く、実際は「Z」が上下に潰れたような配置になる。
【0013】
レバー部同士を指などで押し込んだ際、中間板については、支点部との位置関係から、前記のように双方の間隔が広がっていく。そのため中間板と板バネ部との交角が変化していき、板バネ部にネジレを生じさせることになるが、このネジレの反力に逆らってレバー部を押し込んでいくと、対向する挟持部の間隔が広がっていく。しかしレバー部の押し込みを解除すると、板バネ部のネジレが復元していき、中間板同士が当初のように接近するほか、対向する挟持部の間隔が狭くなり、被挟持物を挟み込むことができる。
【0014】
一方帯と他方帯と板バネ部は、弾力性を有する一枚の板材を切り抜いて形成され、全てが一体化している。通常、この切り抜きは「H」形になり、その左右両側で縦に伸びる箇所が一方帯および他方帯に相当しており、また中央で横に延びる箇所が板バネ部に相当している。したがって板材を切り抜いた後、一方帯や他方帯に相当する箇所にレバー部や挟持部などを形成し、その後、板バネ部と一方帯との境界線を「U」字状に屈曲させ、同様に板バネ部と他方帯との境界線も「U」字状に屈曲させると、クリップが完成する。
【0015】
本発明によるクリップは、一枚の板材から形成されるため、必然的に一つの部品だけで構成されることになり、製造時の手間を抑制できる。また処分時においても、分解などの作業が不要であり、この際の手間も抑制できる。さらに二枚の中間板の間に板バネ部を挟み込むことで、中間板の周辺は、何らの突出物も存在しない平面状の区間が続くことになる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明のように、クリップを一方帯と他方帯と板バネ部で構成し、一方帯と他方帯の双方の中間板を板バネ部で「Z」状に一体化することで、板バネ部に生じたネジレの反力により、挟持部同士を接近させて被挟持物を強固に挟み込むことができる。また、レバー部同士を指などで押し込むことで、挟持部同士の間隔が広がっていき、その中に様々な被挟持物を差し入れることができる。
【0017】
しかも一方帯と他方帯と板バネ部の三要素は、一枚の板材から形成されるため、クリップは、必然的に一つの部品だけで構成されることになり、製造時の手間を抑制できる。また処分時においても、分解などの作業が不要であり、この際の手間も抑制できる。さらに二枚の中間板の間に板バネ部を挟み込み、しかも自然な状態において、二枚の中間板と板バネ部を隙間なく密着させることで、中間板の周辺は、何らの突出物も存在しない平面状の区間が続くことになり、美観が向上するほか、全体の小形化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるクリップの形状例を示す斜視図であり、図の上方では、クリップが閉じた状態を描いてあり、図の中程では、クリップを三箇所で分断した状態を描いてあり、図の下方では、クリップが開いた状態を描いてある。
図2図1のクリップの製造過程を順に示す斜視図である。
図3図1とは異なる構成のクリップを示す斜視図であり、ここでの挟持部は互いに常時非接触であり、被挟持物を湾曲させた状態で挟み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明によるクリップの形状例を示しており、図の上方では、クリップが閉じた状態を描いてあり、図の中程では、クリップを三箇所で分断した状態を描いてあり、図の下方では、クリップが開いた状態を描いてある。このクリップは、一方帯11と他方帯31を板バネ部26で一体化した構成になっており、一方帯11および他方帯31は、いずれも細長い帯状であり、双方が段差なく重なり合っており、その左端側から右端側に向け、レバー部13、33と支点部14、34と中間板16、36と挟持部18、38に区画されている。そして一方帯11の支点部14は、レバー部13と中間板16との境界に位置しており、他方帯31の支点部34も同様であり、双方の支点部14、34は、接触可能な程度に接近している。また一方帯11と他方帯31のいずれも、支点部14、34で幅方向に屈曲させてあり、双方のレバー部13、33は、支点部14、34から遠ざかるに連れ、互いに遠ざかっていく。
【0020】
中間板16、36は、支点部14、34と挟持部18、38との間を結ぶ帯状の部位であり、支点部14、34から遠ざかるに連れ、双方は徐々に離れていくが、途中からはほぼ平行に揃っており、最終的には挟持部18、38に接続している。そして対向する中間板16、36同士は、そのほぼ真ん中の位置において、板バネ部26で一体化されている。板バネ部26は、図の中程のように、一方帯11と他方帯31のそれぞれの中間板16、36の側端部同士を結んでいるが、一方帯11側と他方帯31側では、板バネ部26との接続箇所が左右反転しており、中間板16、36と板バネ部26は、図の中程のように、「Z」状(ただしこの図では「S」状)に並んでいる。
【0021】
挟持部18、38は、いずれも「く」の字状に形成してあり、その先端面同士で被挟持物を挟み込む。そして図の下方のように、上下のレバー部13、33を押し込むと、支点部14、34よりも右側の中間板16、36が互いに遠ざかり、同時に挟持部18、38も互いに遠ざかるため、被挟持物を差し入れるための間隔が確保される。また板バネ部26は、上下の中間板16、36に追従して立ち上がっていき、その間を斜方向に結んでおり、自然な状態に対してネジレを生じている。このネジレの反力により、レバー部13、33の押し込みを解除した際は、挟持部18、38同士が接近して被挟持物を挟み込む。
【0022】
クリップが閉じた状態において、上下の中間板16、36と、その間の板バネ部26は、図の中程のように、ほぼ隙間なく密着した三層構造になっている。そのため中間板16、36の周辺は、厚さが抑制されており、クリップの小形化が実現している。また板バネ部26は、上下の中間板16、36で覆い隠されるため、美観にも優れている。
【0023】
図2は、図1のクリップの製造過程を順に示している。このクリップは「SPCC」など、弾性を有する金属板を素材としており、まずは図の上方のように、この金属板を「H」形に切り抜く。この状態では、一方帯11と他方帯31が距離を隔てて平行に伸びており、その間を板バネ部26が結んでいる。次に図の中程のように、一方帯11と他方帯31のそれぞれについて、曲げ加工を行い、レバー部13、33と支点部14、34と中間板16、36と挟持部18、38を形成する。そして最後には、図の下方のように、板バネ部26と一方帯11との境界線を直角に折り曲げ、同様に板バネ部26と他方帯31との境界線も直角に折り曲げる。その後、この二箇所の折り曲げを180度近くに到達させることで、最終的に図1のようなクリップが完成する。
【0024】
図3は、図1とは異なる構成のクリップを示しており、ここでの挟持部18、38は互いに常時非接触であり、被挟持物を湾曲させた状態で挟み込むことができる。なおこのクリップについても、図1と同様、一方帯11と他方帯31を板バネ部26で一体化したことに変わりはなく、さらにレバー部13、33と支点部14、34と中間板16、36についても、図1のものと変わりはない。ただし一方帯11の挟持部18は、横幅を狭くした「ツノ」形状のものを中央に一本だけ配置しており、また他方帯31の挟持部38は、中央部が切り欠かれた二股形状になっており、図の上方のように、クリップが閉じた状態では、他方帯31の挟持部38の中に一方帯11の挟持部18が入り込む。
【0025】
そして図の中程のように、双方のレバー部13、33を押し込んでクリップを開き、次に双方の挟持部18、38の間に被挟持物を差し入れ、その後にレバー部13、33の押し込みを解除すると、被挟持物は、一方帯11の挟持部18によって下方に押し込まれ、他方帯31の挟持部38の中央部に嵌まり込むため、湾曲を生じた状態になり、被挟持物を一段と強力に挟み込むことができる。
【0026】
そのほか図の下方では、このクリップの製造過程を描いてある。このように金属板を「H」形に切り抜いた後、一方帯11と他方帯31の双方にレバー部13、33などを形成する点は、先の図2と同じである。さらにこの段階において、「ツノ」形状の挟持部18と、二股形状の挟持部38も形成済みである。このように本発明では、挟持部18、38の形状を用途に応じて自在に変更することができる。同様にレバー部13、33についても、美観や使いやすさなどを追及した形状を導入することができる。
【符号の説明】
【0027】
11 一方帯
13 レバー部
14 支点部
16 中間板
18 挟持部
26 板バネ部
31 他方帯
33 レバー部
34 支点部
36 中間板
38 挟持部
図1
図2
図3