(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024205
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】接続体の製造方法及び接続体
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20230209BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145565
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2021130260の分割
【原出願日】2021-08-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】591145335
【氏名又は名称】パナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大脇 正樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 政孝
(72)【発明者】
【氏名】両角 寛
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051CA03
(57)【要約】
【課題】製造効率に優れた接続体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の工程1~2を有する、接続体の製造方法。
工程1:第1の金属基材上に、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して、導電性接着剤層を形成する工程。工程1では、前記導電性接着剤層の平均厚みをT1[μm]、前記導電性粒子の平均粒子径をD1[μm]と定義した際に、T1<D1の関係を満たすようにする。
工程2:前記導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、前記第1の金属基材、前記導電性接着剤層及び前記第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得る工程。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1~2を有する、接続体の製造方法。
工程1:第1の金属基材上に、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して、導電性接着剤層を形成する工程。工程1では、前記導電性接着剤層の平均厚みをT1[μm]、前記導電性粒子の平均粒子径をD1[μm]と定義した際に、T1<D1の関係を満たすようにする。
工程2:前記導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、前記第1の金属基材、前記導電性接着剤層及び前記第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得る工程。
【請求項2】
前記樹脂コアの圧縮回復率が5%以上55%以下である、請求項1に記載の接続体の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤100質量部に対して、前記導電性粒子を0.1質量部以上2.0質量部以下含む、請求項1又は2に記載の接続体の製造方法。
【請求項4】
工程1において、前記接着剤が、主剤と硬化剤とを含み、前記主剤のガラス転移温度が-5℃以上である、請求項1~3の何れかに記載の接続体の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤が、主剤と硬化剤とを含み、工程2のラミネート温度を、前記主剤のガラス転移温度以上とする、請求項1~4の何れかに記載の接続体の製造方法。
【請求項6】
さらに、下記の工程3を有する、請求項1~5の何れかに記載の接続体の製造方法。
工程3:接続体をエージング処理する工程。
【請求項7】
工程3において、エージング処理の温度を55℃以下とする、請求項6に記載の接続体の製造方法。
【請求項8】
工程3の後の前記接着剤のガラス転移温度が-1℃以上である、請求項6又は7に記載の接続体の製造方法。
【請求項9】
工程3の後の導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、請求項6~8の何れかに記載の接続体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の金属基材のロール状物から前記第1の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程1を行うとともに、前記第2の金属基材のロール状物から前記第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程2を行う、請求項1~9の何れかに記載の接続体の製造方法。
【請求項11】
第1の金属基材、導電性接着剤層及び第2の金属部材をこの順に有し、前記導電性接着剤層は、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含み、前記導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、前記導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、接続体。
【請求項12】
前記樹脂コアの圧縮回復率が5%以上55%以下である、請求項11に記載の接続体。
【請求項13】
前記接着剤100質量部に対して、前記導電性粒子を0.1質量部以上2.0質量部以下含む、請求項11又は12に記載の接続体。
【請求項14】
前記接着剤のガラス転移温度が-1℃以上である、請求項11~13の何れかに記載の接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続体の製造方法及び接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気及び電子機器等の材料として、2つの金属基材を接着剤層を介して電気的に接続した接続体が用いられる場合がある。
接続体に用いられる接着剤は、等方導電性接着剤及び異方導電性接着剤が挙げられる。
【0003】
等方導電性接着剤の代表例として、導電剤としてカーボンブラックを用いた接着剤が挙げられる。等方導電性接着剤は、電気的に接続するために、接着剤中に導電剤を多量に含む必要がある。このため、等方導電性接着剤を用いた接続体は、層間密着性が低下しやすいという問題がある。また、等方導電性接着剤を用いた接続体は、抵抗値を十分に低くできないという問題がある。
【0004】
異方導電性接着剤を用いた接続体の代表例として、異方導電フィルム(ACF:Anisotropically Conductive Film)を用いた接続体が挙げられる。ACFは、金属粒子及び金属メッキ樹脂粒子等の導電粒子を均一に分散させた接着フィルムである。
ACFは、例えば、回路基板間に配置した後、加熱及び加圧することにより、回路基板間の加圧方向を電気的に接続する一方で、加圧方向の垂直方向では絶縁性を確保する接続材料である。
【0005】
ACFを用いた接続体として、例えば、特許文献1~2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-1562号公報
【特許文献2】特開2019-179647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2等のACFを用いた接続体は、加圧方向を電気的に接続する。このため、ACFを用いた接続体は、接着剤中に導電粒子を多量に含む必要がないため、層間密着性の向上が期待できる。
しかし、ACFを用いた接続体は、上面板と下面板との位置を合わせるアライメント工程、及び、アライメント工程後の加熱圧着工程が必要であるため、連続的に製造することができず、製造効率に劣るものであった。
【0008】
本発明は、製造効率に優れた接続体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、簡易な構成により2つの金属基材を電気的に接続し得る接続体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、以下[1]~[2]を提供する。
[1]下記の工程1~2を有する、接続体の製造方法。
工程1:第1の金属基材上に、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して、導電性接着剤層を形成する工程。工程1では、前記導電性接着剤層の平均厚みをT1[μm]、前記導電性粒子の平均粒子径をD1[μm]と定義した際に、T1<D1の関係を満たすようにする。
工程2:前記導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、前記第1の金属基材、前記導電性接着剤層及び前記第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得る工程。
[2]第1の金属基材、導電性接着剤層及び第2の金属部材をこの順に有し、前記導電性接着剤層は、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含み、前記導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、前記導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、接続体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接続体の製造方法は、接続体を連続的に製造することができ、製造効率を良好にすることができる。また、本発明の接続体は、簡易な構成により2つの金属基材を電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の接続体の製造方法において、工程1の後の状態の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の接続体の製造方法において、工程2の後の状態の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の接続体の製造方法の一実施形態である、ロールトウーロールでの製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の接続体の製造方法の実施の形態、及び、本発明の接続体の実施の形態を説明する。
【0013】
[接続体の製造方法]
本発明の接続体の製造方法は、下記の工程1~2を有する。
工程1:第1の金属基材上に、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して、導電性接着剤層を形成する工程。工程1では、前記導電性接着剤層の平均厚みをT1[μm]、前記導電性粒子の平均粒子径をD1[μm]と定義した際に、T1<D1の関係を満たすようにする。
工程2:前記導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、前記第1の金属基材、前記導電性接着剤層及び前記第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得る工程。
【0014】
<工程1>
工程1は、第1の金属基材上に、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥して、導電性接着剤層を形成する工程である。工程1では、前記導電性接着剤層の平均厚みをT1[μm]、前記導電性粒子の平均粒子径をD1[μm]と定義した際に、T1<D1の関係を満たすようにすることを要する。
【0015】
図1は、工程1の後の状態の一実施形態を示す断面図である。
図1の積層体50は、第1の金属基材10の上に導電性接着剤層30を有している。
図1において、導電性接着剤層30は、接着剤31、及び、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子32を有している。
【0016】
工程1では、T1<D1の関係を満たすようにすることを要する。
T1<D1の関係を満たすことにより、従来のACFを用いた接続体のように、製造時に高温及び高圧で処理をしなくても、簡易なラミネート工程により、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続することができる。
【0017】
D1とT1との比(D1/T1)は、1.03以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましく、1.10以上であることがさらに好ましい。前記比を1.03以上とすることにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
D1とT1との比(D1/T1)は、1.50以下であることが好ましく、1.30以下であることがより好ましく、1.20以下であることがさらに好ましい。前記比を1.50以下とすることにより、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
【0018】
D1とT1との差(D1-T1)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましい。前記差を0.1μm以上とすることにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
D1とT1との差(D1-T1)は、2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。前記差を2.0μm以下とすることにより、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
【0019】
T1及びD1の範囲は、T1<D1の関係を満たす限り特に制限されないが、以下の範囲であることが好ましい。
導電性接着剤層の平均厚みを示すT1は、1.0μm以上10.0μm以下が好ましく、2.0μm以上8.0μm以下がより好ましく、3.0μm以上6.0μm以下がさらに好ましい。T1を1.0μm以上とすることにより、接続体の層間密着性を良好にしやすくできるとともに、第1の金属基材と第2の金属基材とが導電性粒子を介さずに接触することを抑制しやすくできる。T1を10.0μm以下とすることにより、導電性接着剤層の塗工安定性を良好にしやすくできる。
導電性粒子の平均粒子径を示すD1は、1.5μm以上12.0μm以下が好ましく、2.5μm以上9.0μm以下がより好ましく、3.5μm以上7.0μm以下がさらに好ましい。
【0020】
本明細書において、導電性接着剤層の平均厚みを示すT1は、ランダムに選択した30箇所の導電性接着剤層の厚みの平均値とする。前述した30箇所の厚みの測定は、工程1が完了した後であって、工程2の開始前に実施するものとする。前述した30箇所の厚みは、例えば、SEM等で撮影した導電性接着剤層の断面写真から測定できる。
【0021】
本明細書において、導電性粒子の平均粒子径を示すD1は、例えば、下記A1及びA2の手順で測定できる。下記A1及びA2は、工程1が完了した後であって、工程2の開始前に実施するものとする。
A1:SEM等で導電性接着剤層の断面写真を撮影する。
A2:前記断面写真に写った導電性粒子の最大径を測定する。合計30個の導電性粒子の最大径の平均を、D1とする。
【0022】
《金属基材》
工程1で用いる第1の金属基材、及び、工程2で用いる第2の金属基材を構成する金属としては、銅、ステンレス、黄銅、銀、アルミニウム及びニッケル等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
第1の金属基材及び第2の金属基材を構成する金属は、同一種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
第1の金属基材及び第2の金属基材は、密着性を良好にするために、基材表面を凹凸化したり、基材表面の残油を取り除く処理をしたりしてもよい。
【0023】
第1の金属基材及び第2の金属基材の厚みは、1μm以上200μm以下であることが好ましく、3μm以上100μm以下であることがより好ましく、6μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
厚みを1μm以上とすることにより、第1の金属基材及び第2の金属基材に所定の強度を付与することができ、基材にテンションがかかった際に基材が破損することを抑制しやすくできる。
厚みを200μm以下とすることにより、第1の金属基材及び第2の金属基材が巻き取りやすくなるため、接続体をロールトウーロールで製造しやすくできる。
【0024】
第1の金属基材及び第2の金属基材は、枚葉状であってもよいが、ロール状であることが好ましい。第1の金属基材及び第2の金属基材をロール状とすることにより、後述するロールトウーロールでの製造が可能となり、製造効率を飛躍的に高めることができる。
【0025】
《導電性接着剤層》
工程1において、導電性接着剤層は、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含む導電性接着剤層用塗布液を塗布、乾燥することにより、形成する。
【0026】
導電性接着剤層用塗布液は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等)、等が挙げられる。溶剤は、1種類からなる溶剤であってもよいし、2種類以上の混合溶剤であってもよい。
【0027】
塗布手段としては、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、ダイコート等の汎用の塗布手段が挙げられる。
乾燥条件は、金属基材の特性、導電性接着剤層用塗布液を構成する材料、塗布液の塗布量等により調整すればよい。例えば、乾燥温度は80℃以上120℃以下、乾燥時間は30秒以上90秒以下とすることが好ましい。前記温度範囲であれば、金属基材の膨張等を抑制しやすくでき、接続体の品質を良好にしやすくできる。
【0028】
―接着剤―
接着剤は、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤及びゴム系接着剤等の接着剤が挙げられる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤及びアクリル系接着剤が好ましく、ウレタン変性されたアクリル系接着剤がより好ましい。接着剤は、熱硬化系の接着剤が好ましい。
接着剤は、抵抗値を経時的に安定させるため、主剤と硬化剤とを含むことが好ましい。
【0029】
接着剤の主剤は、汎用の化合物を用いることができる。主剤の具体例としては、アクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール等のポリオール化合物;エポキシ系樹脂等のエポキシ基を有する化合物;等が挙げられる。ポリオール化合物は、変性されたものであってもよい。変性されたポリオール化合物としては、ウレタン変性されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0030】
接着剤の主剤のガラス転移温度は、-5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましく、30℃以上であることがよりさらに好ましい。主剤のガラス転移温度を-5℃以上とすることにより、工程2の後に、導電性粒子が元の形状に復元しようとすることを接着剤が抑制しやすくなるため、経時的に接続体の抵抗値が上昇することを抑制しやすくできる。
接着剤の主剤のガラス転移温度は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。主剤のガラス転移温度を100℃以下とすることにより、工程2のラミネート時の熱で接着剤が軟化しやすくなる。このため、接着剤層と第2の金属基材との接触面積が増加しやすくなり、密着性を良好にしやすくできる。また、工程2のラミネート時の熱で接着剤が軟化しやすくなることによって、導電性粒子の上方に存在する接着剤(
図1の導電性粒子32の上側に存在する接着剤31)が、ラミネート時の圧力で薄く広がりやすくなり、導電性粒子と第2の金属基材とを接触させやすくできる。
主剤のガラス転移温度は、重量平均分子量等の汎用の手段で調整できる。
【0031】
接着剤の硬化剤は、汎用の化合物を用いることができる。硬化剤の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネ-ト、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物が挙げられる。また、硬化剤の他の具体例として、アミン系化合物、フェノール系化合物、活性エステル系化合物等が挙げられる。
【0032】
硬化剤としてイソシアネート系化合物を用いる場合、主剤の水酸基に対する、イソシアネートのイソシアネート基の当量比を、0.1以上2.0以下とすることが好ましく、0.5以上1.0以下とすることがより好ましい。
前記比を0.1以上とすることにより、接続体の完成後の接着剤のガラス転移温度を-1℃以上にしやすくできる。前記比を2.0以下とすることにより、ラミネート時に予期せず含まれてしまった水分との反応で発生した二酸化炭素による膨れを抑制することができる。
【0033】
―導電性粒子―
本発明では、導電性粒子として、樹脂コアの表面に導電層を有する粒子を用いる。かかる導電性粒子は、表面に導電層を有するため、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続することができる。また、かかる導電性粒子は、コアが樹脂であるため、工程2のラミネート時の圧力により、厚み方向の粒子径が小さくなる。そして、導電性粒子の厚み方向の粒子径が小さくなることにより、導電性接着剤層と第2の金属基材との接触面積が増え、密着性を良好にしやすくできる(
図1及び
図2参照)。
樹脂コアの表面に導電層を有する粒子は、例えば、樹脂コアに金属をメッキ又は蒸着することにより得ることができる。
【0034】
導電性粒子は、表面に突起を有する粒子が好ましい。第1の金属基材及び第2の金属基材の表面に酸化物膜が形成されている場合がある。かかる場合において、表面に突起を有する導電性粒子は、前記突起により酸化物膜を突き破りやすいため、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
表面に突起を有する粒子は、例えば、樹脂コアの表面に、突起を形成する芯物質を複数配置した後、金属をメッキ又は蒸着することにより得ることができる。
樹脂コア粒子の表面に芯物質を付着させる方法としては、例えば、樹脂コアの分散液中に、芯物質を添加し、ファンデルワールス力等により、樹脂コア粒子の表面に芯物質を集積させる方法等が挙げられる。
【0035】
樹脂コアを構成する樹脂としては、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂及びポリブタジエン樹脂等が挙げられる。また、樹脂コアを構成する樹脂としては、前述した樹脂を構成するモノマーの2種以上を組み合わせた共重合体も挙げられる。
【0036】
樹脂コアは、圧縮回復率が55%以下であることが好ましく、47%以下であることがより好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがより好ましく、18%以下であることがより好ましい。圧縮回復率を55%以下とすることにより、工程2のラミネート時の圧力により、導電性粒子の厚み方向の粒子径が小さくなりやすくなる。このため、導電性接着剤層と第2の金属基材との接触面積が増え、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
樹脂コアは、圧縮回復率が5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましい。圧縮回復率を5%以上とすることにより、工程2のラミネート時の圧力により、導電性粒子の厚み方向の粒子径が極端に小さくなることを抑制できる。このため、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
樹脂コアの圧縮回復率は、例えば、樹脂コアを構成する樹脂の成分、樹脂コアを構成する樹脂の架橋度により調整できる。具体的には、樹脂の架橋度を高くすると圧縮回復率は大きくなり、樹脂の架橋度を低くすると圧縮回復率は小さくなる傾向がある。
【0037】
本明細書において、圧縮回復率は、以下のように測定できる。
試料台上に樹脂コアを散布する。散布された樹脂コア1個について、微小圧縮試験機を用いて、樹脂コアの中心方向に、樹脂コアが30%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
圧縮回復率(%)=[(L1-L2)/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでのまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0038】
芯物質は、モース硬度が5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。
芯物質の材質としては、ニッケル(モース硬度5)、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。芯物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
芯物質の平均粒子径は、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ましくは100nm以上200nm以下である。また、樹脂コアの表面に形成する突起の数は、好ましくは1個以上500個以下、より好ましくは30個以上200個以下である。
【0040】
導電層は、金属から構成することが好ましい。導電層を構成する金属としては、金、パラジウム、ニッケル、銅、銀、スズ及びアルミニウム等が挙げられる。導電層を構成する金属は合金であってもよい。
【0041】
導電層の厚みは、導電性及び経済性とのバランスの観点から、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ましくは80nm以上150nm以下である。
【0042】
前記導電性粒子の含有量は、前記接着剤100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以上1.8質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上1.7質量部以下であることがさらに好ましい。
導電性粒子の含有量を0.1質量部以上とすることにより、接続体の抵抗値を低くしやすくできる。導電性粒子の含有量を2.0質量部以下とすることにより、導電性粒子の凝集を抑制しやすくできるため、接続体の抵抗値を低くしやすくできる。
【0043】
<工程2>
工程2は、前記導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、前記第1の金属基材、前記導電性接着剤層及び前記第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得る工程である。
【0044】
図2は、工程2の後の状態の一実施形態を示す断面図である。
図2の接続体100は、第1の金属基材10の上に、導電性接着剤層30及び第2の金属基材20をこの順に有している。
図2において、第1の金属基材10と第2の金属基材20とは、導電性粒子30を介して電気的に接続されている。
【0045】
図1と
図2とを対比すると、
図2の導電性粒子30は、厚み方向につぶされることにより、厚み方向の粒子径が小さくなっている。このように、導電性粒子が厚み方向につぶされることにより、導電性粒子の上方に存在する接着剤(
図1の導電性粒子32の上側に存在する接着剤31)は、ラミネート時の圧力で幅方向に広がりやすくなる。このため、導電性接着剤層と第2の金属基材との接触面積が増加しやすくなり、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
【0046】
図2の左右両端は、導電性接着剤層30と第2の金属基材20とが接触していない。このような箇所は、ラミネート時に混入した気泡である。後述するように、ラミネート時の温度を調整することにより、気泡を減らしやすくできる。
【0047】
工程2で用いる第2の金属基材の実施の形態は上述した通りである。
【0048】
前記接着剤が、主剤と硬化剤とを含み、工程2のラミネート温度を、前記主剤のガラス転移温度以上とすることが好ましい。すなわち、工程2のラミネート温度と、接着剤の主剤のガラス転移温度とは、下記の関係を満たすことが好ましい。下記の関係を満たすことにより、初期の抵抗値を低くしやすくできるとともに、接続体の抵抗値の経時的な上昇を抑制しやすくできる。
接着剤の主剤のガラス転移温度≦工程2のラミネート温度
【0049】
工程2において、ラミネート温度は55℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。特に、接着剤の主剤のガラス転移温度が室温以上の場合に、ラミネート温度を55℃以上とすることが好ましい。
ラミネート温度を55℃以上とすることにより、ラミネート時の気泡の混入を抑制し、抵抗値を低くしやすくできる。ラミネート時に気泡が混入すると、導電性粒子が元の形状に復元しようとすることを接着剤が抑制しにくくなるため、接続体の抵抗値が経時的に上昇する場合がある。このため、ラミネート温度を上記範囲とすることにより、初期の抵抗値を低くできるとともに、接続体の抵抗値の経時的な上昇を抑制しやすくできる。
ラミネート温度の上限は特に制限されないが、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0050】
工程2のラミネートの圧力は、0.1MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.2MPa以上0.7MPa以下がより好ましく、0.3MPa以上0.5MPa以下がさらに好ましい。
圧力を0.1MPa以上とすることにより、導電性粒子を厚み方向に潰しやすくできる。また、圧力を0.1MPa以上とすることにより、導電性粒子の上方に存在する接着剤(
図1の導電性粒子32の上側に存在する接着剤31)をは、ラミネート時の圧力で幅方向に広がりやすくできる。
圧力を1.0MPa以下とすることにより、高い圧力を付加することが不要になるため、接続体の製造を簡易にすることができ、かつ接続体の製造が安定し、さらに、接続体を連続的に製造しやすくできる。
【0051】
工程2のラミネートの速度は、0.2m/min以上30m/min以下が好ましく、0.4m/min以上2.0m/min以下がより好ましく、1.0m/min以上15.0m/min以下がさらに好ましい。
【0052】
<ロールトウーロール>
本発明の接続体の製造方法は、前記第1の金属基材のロール状物から前記第1の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程1を行うとともに、前記第2の金属基材のロール状物から前記第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程2を行うことが好ましい。
上記手段を採用することにより、接続体を連続的に製造することができ、製造効率を飛躍的に高めることができる。
なお、工程1の後に、第1の金属基材上に導電性接着剤層を形成した積層体を一旦巻き取ってもよい。そして、巻き取ったロール状の積層体から積層体を連続的に送り出すとともに、前記第2の金属基材のロール状物から前記第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、工程2を行ってもよい。このように、工程1と工程2との間に、積層体を巻き取る工程を含んでいても、ロールトウーロールでの製造であるため、製造率を飛躍的に高めることができる。
【0053】
図3は、ロールトウーロールでの製造方法の一実施形態を示す模式図である。
図3では、第1の金属基材のロール状物11から、第1の金属基材10を連続的に送り出すことにより、工程1を行っている。また、
図3では、第2の金属基材のロール状物21から、第2の金属基材20を連続的に送り出すことにより、工程2を行っている。
図3では、工程1と工程2とを、一つのラインで連続して実施している。
なお、上述したように、工程1の後に、第1の金属基材上に導電性接着剤層を形成した積層体を一旦巻き取ってもよい。すなわち、工程1と工程2との間には、所定の時間が空いても良い。
図3では、導電性接着剤層30上に第2の金属基材20をラミネートして、接続体100を得た後の工程が記載されていない。導電性接着剤層30上に第2の金属基材20をラミネートして接続体100を得た後は、接続体100をロール状に巻き取ることが好ましい。
【0054】
<工程3>
本発明の接続体の製造方法は、さらに、下記の工程3を有していてもよい。
工程3:接続体をエージング処理する工程。
【0055】
工程3のエージング処理を行うことにより、導電性接着剤層中の接着剤の硬化を進行させることができる。このため、工程3を実施した接続体は、導電性粒子が元の形状に復元しようとすることを接着剤が抑制しやすくなるため、接続体の抵抗値の経時的な変化を抑制しやすくできる。
【0056】
工程3において、エージング処理の温度及び時間は、使用する接着剤の種類等により適宜調整できるが、以下の範囲が好ましい。
【0057】
エージング処理の温度は、55℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、47℃以下であることがさらに好ましい。エージング処理の温度を55℃以下とすることにより、エージング処理中に導電性粒子が元の形状に復元することを抑制しやすくできる。
エージング処理の温度の下限は、接着剤の硬化を促進するため、25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。
エージング処理の時間は特に制限されないが、1日以上9日以下が好ましく、3日以上7日以下がより好ましい。エージング処理の温度が高温の場合、エージング処理の時間は、1日未満が好ましい。
【0058】
<諸物性>
工程3の後の接着剤は、ガラス転移温度が-1℃以上であることが好ましく、より好ましくは23℃以上、さらに好ましくは30℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上である。エージング処理後の接着剤のガラス転移温度を高くすることにより、導電性粒子が元の形状に復元しようとすることを接着剤が抑制しやすくできるため、接続体の抵抗値の経時的な変化を抑制しやすくできる。
工程3の後の接着剤のガラス転移温度の上限は特に制限されないが、100℃以下であることが好ましい。
【0059】
工程3の後の導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義する。この際、Tn及びDnは、Tn≦Dnの関係を満たすことが好ましい。
Tn≦Dnの関係を満たすことにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続することができる。
【0060】
DnとTnとの比(Dn/Tn)は、1.00超であることが好ましく、1.01以上であることがより好ましい。Dn/Tnを1.00超とすることにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
DnとTnとの比(Dn/Tn)は、1.50以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましく、1.30以下であることがさらに好ましい。前記比を1.50以下とすることにより、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
【0061】
DnとTnとの差(Dn-Tn)は、0μm超であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。前記差を0μm超とすることにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続しやすくできる。
DnとTnとの差(Dn-Tn)は、1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。前記差を1.0μm以下とすることにより、接続体の層間密着性を良好にしやすくできる。
【0062】
本明細書において、Tnは、ランダムに選択した30箇所の導電性接着剤層の厚みの平均値とする。前述した30箇所の厚みの測定は、工程3が完了した後に実施するものとする。前述した30箇所の厚みは、例えば、SEM等で撮影した導電性接着剤層の断面写真から測定できる。Tnは、上述したT1と実質的に一致する場合が多い。
【0063】
本明細書において、Dnは、例えば、下記B1及びB2の手順で測定できる。下記B1及びB2は、工程3が完了した後に実施するものとする。Dnは、上述したD1よりも小さくなる。
B1:SEM等で導電性接着剤層の断面写真を撮影する。
B2:前記断面写真に写った導電性粒子の厚み方向の径を測定する。合計30個の導電性粒子の厚み方向の径の平均を、Dnとする。
【0064】
<抵抗値>
接続体は、抵抗値が10.0mΩ以下であることが好ましく、8.0mΩ以下であることがより好ましく、6.0mΩ以下であることがさらに好ましい。接続体の抵抗値の下限は特に制限されないが、1.0mΩ以上であることが好ましく、2.0mΩ以上であることがより好ましい。
上記の抵抗値は、工程2の後で満たすことが好ましく、工程2及び工程3の後で満たすことがより好ましい。
【0065】
接続体の抵抗値は、一方の端子を第1の金属基材に設置し、他方の端子を第2の金属基材に設置して、4端子法により測定できる。
【0066】
[接続体]
本発明の接続体は、第1の金属基材、導電性接着剤層及び第2の金属部材をこの順に有し、前記導電性接着剤層は、接着剤と、樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子とを含み、前記導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、前記導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、ものである。
【0067】
Tn≦Dnの関係を満たすことにより、第1の金属基材と第2の金属基材とを電気的に接続することができる。
【0068】
本発明の接続体における、第1の金属基材、第2の金属部材、導電性接着剤層、接着剤、及び樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子の実施の形態は、上述した本発明の接続体の製造方法における、第1の金属基材、第2の金属部材、導電性接着剤層、接着剤、及び樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子の実施の形態と同様である。
例えば、DnとTnとの比(Dn/Tn)は、1.00超であることが好ましく、1.01以上であることがより好ましい。また、DnとTnとの比(Dn/Tn)は、1.50以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましく、1.30以下であることがさらに好ましい。
また、DnとTnとの差(Dn-Tn)は、0μm超であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。また、DnとTnとの差(Dn-Tn)は、1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。
また、導電性粒子は、表面に突起を有する粒子が好ましい。
また、導電性粒子の樹脂コアは、圧縮回復率が55%以下であることが好ましく、47%以下であることがより好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがより好ましく、18%以下であることがより好ましい。樹脂コアは、圧縮回復率が5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましい。
また、導電性粒子の含有量は、接着剤100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上0.8質量部以下であることがさらに好ましい。
また、接着剤のガラス転移温度は、-1℃以上であることが好ましく、より好ましくは23℃以上、さらに好ましくは30℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上である。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0070】
1.測定
1-1.平均粒子径及び厚み
明細書本文の記載に従い、工程1の後の導電性接着剤層の平均厚みを示すT1、工程1の後の導電性粒子の平均粒子径を示すD1、工程3の後の導電性接着剤層の平均厚みを示すTn、工程3の後の導電性粒子の厚み方向の径の平均を示すDnを測定した。比較例1の導電性粒子は、粒子径がナノレベルであるため、測定は省略した。
【0071】
1-2.ガラス転移温度
実施例及び比較例で用いた接着剤の主剤のガラス転移温度を測定した。さらに、実施例及び比較例で用いた接着剤に関して、工程3のエージング処理後のガラス転移温度を測定した。測定装置は日立ハイテクサイエンス社の商品名「DSC7000X」を用いた。測定温度条件は昇温速度20℃/minとした。
【0072】
1-3.抵抗値
実施例及び比較例で作製した接続体の抵抗値を測定した。一方の一対の端子を第1の金属基材に設置し、他方の一対の端子を第2の金属基材に設置して、4端子法により抵抗値を測定した。測定装置は日置電機社の商品名「抵抗計RM3544」を用いた。抵抗値は、工程2の直後、及び、工程3の後に測定した。比較例1は、工程2の直後の抵抗値が極めて高かったため、工程3の後の抵抗値の測定は省略した。
【0073】
1-4.密着性(剥離力)
実施例及び比較例で作製した接続体を、幅15mm、長さ10cmに切断したサンプルを2つ作製した。一方のサンプルの先端10mmの第2の金属基材を剥離し、剥離した第2の金属基材をチャックでつかみ、島津製作所社の商品名「AUTOGRAPH AGS-50D」を用いて、剥離角度180°剥離速度200mm/minの条件で剥離し、剥離力1を測定した。
もう1方のサンプルの先端10mmの第1の金属基材を剥離し、剥離した第1の金属基材をチャックでつかみ、島津製作所社の商品名「AUTOGRAPH AGS-50D」を用いて、剥離角度180°剥離速度200mm/minの条件で剥離し、剥離力2を測定した。
剥離力1及び剥離力2のうち、弱い方の剥離力を表1に示す。弱い方の剥離力が0.10N/mm以上が合格レベルである。
【0074】
2.樹脂コアの表面に導電層を有する導電性粒子の作製
2-1.導電性粒子1の作製
(1)重合体シード粒子分散液の作製
セパラブルフラスコにイオン交換水2500g、スチレン250g、オクチルメルカプタン50g、及び塩化ナトリウム0.5gを入れ、窒素雰囲気下で攪拌した。その後、70℃に加熱し、過硫酸カリウム2.5gを添加し、24時間反応を行うことにより、重合体シード粒子を得た。
得られた重合体シード粒子5gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコール5重量%水溶液100gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに入れて攪拌し、重合体シード粒子分散液を得た。
(2)樹脂コアの作製
ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート100gと、メチルメタクリレート90gと、過酸化ベンゾイル2.6gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10gと、エタノール130gとをイオン交換水1000gに加え、攪拌し、乳化液を得た。得られた乳化液を数回に分けて重合体シード粒子分散液に加え、12時間攪拌した。その後、ポリビニルアルコール5重量%水溶液500gを加え、85℃の窒素雰囲気下で、9時間反応を行い、樹脂コア(平均粒子径4.4μm)を得た。樹脂コアの圧縮回復率は46%であった。
(3)導電性粒子の作製
(3-1)パラジウム付着工程
得られた樹脂コアをエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂コアを添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に樹脂コアを添加し、パラジウムが付着した樹脂コアを得た。
(3-2)芯物質付着工程
パラジウムが付着した樹脂コアをイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着した樹脂コアを得た。
(3-3)無電解ニッケルめっき工程
硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。芯物質が付着した樹脂コアにイオン交換水500mLを加え、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。樹脂コアの表面に、厚み0.1μm程度の導電層(ニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層)が形成されたときに、無電解めっき液の滴下を終了した。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂コアの表面にニッケル-ボロン導電層(厚み96.4nm)が設けられており、ニッケル-ボロン導電層の表面に突起を有する導電性粒子1を得た(平均粒子径4.5μm)。
【0075】
2-2.導電性粒子2の作製
特開2020-97739号公報の実施例3の記載に準じて、樹脂コア(圧縮回復率:9.8%)の表面に、厚み0.1μm程度の導電層(ニッケル層)が形成された導電性粒子2を得た(平均粒子径3.1μm)。
【0076】
3.接続体の作製
[実施例1]
下記の工程1~3により、実施例1の接続体を作製した。
工程1:第1の金属基材(厚み50μmのアルミニウム)上に、下記の導電性接着剤層用塗布液1をグラビアコート法により塗布した。次いで、100℃で1分間乾燥して、平均厚み4.0μmの導電性接着剤層を形成した。工程1は、第1の金属基材のロール状物から、第1の金属基材を連続的に送り出すことにより、連続的に実施した。
【0077】
<導電性接着剤層用塗布液1>
・上記「2-1」で作製した導電性粒子1 0.54質量部
・接着剤の主剤 31.3質量部
(ポリエステル系樹脂)
(東洋紡社、商品名:バイロンGK810、固形分100質量%)
・接着剤の硬化剤 2.64質量部
(イソシアネート系化合物)
(東ソー社、商品名:コロネートHX、固形分100質量%)
・希釈溶剤 適量
【0078】
工程2:導電性接着剤層上に、第2の金属基材をラミネートして、第1の金属基材、導電性接着剤層及び第2の金属基材とをこの順に有する、接続体を得た。ラミネート条件は下記の通りとした。
工程2は、第2の金属基材のロール状物から、第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、連続的に実施した。工程1及び工程2は、一つのラインで連続的に実施した。
<ラミネート条件>
・ラミネートロールの温度:60℃
・ラミネートの圧力:0.4MPa
・ラミネート速度:0.8m/min
【0079】
工程3:工程2で得られた接続体を巻き取り、45℃で5日間エージング処理した。
【0080】
[実施例2]
導電性接着剤層用塗布液1中の導電性粒子の添加量を0.20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の接続体を作製した。
【0081】
[実施例3]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液2>
・上記「2-1」で作製した導電性粒子1 1.1質量部
・接着剤の主剤 100質量部
(ポリエステル系樹脂)
(東亞合成社、商品名:アルフォンUH2170、固形分52質量%)
・接着剤の硬化剤 12.3質量部
(イソシアネート系化合物)
(東ソー社、商品名:コロネートHX、固形分100質量%)
・希釈溶剤 適量
【0082】
[実施例4]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液3に変更し、導電性接着剤層の平均厚みを2.9μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液3>
・上記「2-2」で作製した導電性粒子2 0.24質量部
・接着剤の主剤 100質量部
(ポリエステル系樹脂、ガラス転移温度:0℃)
(東洋モートン社、商品名:AD76P1、固形分51質量%)
・接着剤の硬化剤 10.0質量部
(イソシアネート系化合物)
(東洋モートン社、商品名:CAT10L、固形分53質量%)
・希釈溶剤 適量
【0083】
[実施例5]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液4に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液4>
・上記「2-1」で作製した導電性粒子1 0.24質量部
・接着剤の主剤 100質量部
(ポリエステル系樹脂)
(東洋モートン社、商品名:AD76P1、固形分51質量%)
・接着剤の硬化剤 10.0質量部
(イソシアネート系化合物)
(東洋モートン社、商品名:CAT10L、固形分53質量%)
・希釈溶剤 適量
【0084】
[実施例6]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液5に変更し、工程3のエージング条件を下記の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液5>
・上記「2-1」で作製した導電性粒子1 0.20質量部
・接着剤の主剤1 30質量部
(ポリイミド系樹脂)
(荒川化学工業社、商品名:PIAD200、固形分30質量%)
・接着剤の主剤2 70質量部
(ポリイミド系樹脂)
(荒川化学工業社、商品名:PIAD150H、固形分30質量%)
・接着剤の主剤3 2.3質量部
(エポキシ系樹脂)
(三菱ケミカル社、商品名:jER630、固形分100質量%)
・接着剤の硬化剤 8.0質量部
(活性エステル系化合物)
(DIC社、商品名:HPC-8000、固形分65質量%)
・硬化促進剤 0.0025質量部
(四国化成社、商品名;キュアゾール2E4MZ-a)
・希釈溶剤 適量
<工程3>
工程2で得られた接続体を巻き取り、160℃で1時間エージング処理した。
【0085】
[実施例7]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液6に変更し、工程3のエージング条件を下記の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液6>
・上記「2-1」で作製した導電性粒子1 0.10質量部
・接着剤の主剤1 100質量部
(ポリイミド系樹脂)
(荒川化学工業社、商品名:PIAD152H、固形分42質量%)
・接着剤の主剤2 11.5質量部
(エポキシ系樹脂)
(三菱ケミカル社、商品名:YL980、固形分100質量%)
・接着剤の硬化剤 12.8質量部
(フェノール系化合物)
(荒川化学工業社、商品名:タマノル759、固形分100質量%)
・硬化促進剤 0.24質量部
(四国化成社、商品名;キュアゾール2E4MZ)
・希釈溶剤 適量
<工程3>
工程2で得られた接続体を巻き取り、120℃で2時間エージング処理した。
【0086】
[比較例1]
導電性接着剤層用塗布液1を、下記の導電性接着剤層用塗布液7に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の接続体を作製した。
<導電性接着剤層用塗布液7>
・カーボンブラック分散液 115.3質量部
(御国色素社、商品名:RK046、固形分26.5質量%)
・接着剤の主剤 100質量部
(ポリエステル系樹脂)
(東洋モートン社、商品名:AD76P1、固形分51質量%)
・接着剤の硬化剤 10質量部
(イソシアネート系化合物)
(東洋モートン社、商品名:CAT10L、固形分53質量%)
・希釈溶剤 適量
【0087】
[比較例2]
導電性接着剤層の平均厚みを7.0μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の接続体を作製した。
【0088】
【0089】
表1の結果から明らかなように、実施例の接続体の製造方法は、接続体の製造直後(工程2の直後)、及び、接続体のエージング処理後(工程3の後)、の何れにおいても、接続体の抵抗値を低くすることができることが確認できる。また、実施例の接続体の製造方法は、ロールトウーロールでの製造であるため、製造効率を飛躍的に高くすることができる。
工程3の後の導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、請求項6~8の何れかに記載の接続体の製造方法。
前記第1の金属基材のロール状物から前記第1の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程1を行うとともに、前記第2の金属基材のロール状物から前記第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程2を行う、請求項1~9の何れかに記載の接続体の製造方法。
工程3の後の導電性接着剤層の平均厚みをTn[μm]、導電性粒子の厚み方向の径の平均をDn[μm]と定義した際に、Tn≦Dnの関係を満たす、請求項6~8の何れかに記載の接続体の製造方法。
前記第1の金属基材のロール状物から前記第1の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程1を行うとともに、前記第2の金属基材のロール状物から前記第2の金属基材を連続的に送り出すことにより、前記工程2を行う、請求項1~9の何れかに記載の接続体の製造方法。