(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024214
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】浄水装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20230209BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B01D21/24 H
B01D21/26
B01D21/24 D
B01D21/24 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021146496
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】392019271
【氏名又は名称】青木 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 朝夫
(57)【要約】
【課題】 特に小水力発電装置に適合可能に小型化することができ、しかも、固形物が混合する混合水を容易に処理することができる浄水装置を提供する。
【解決手段】 浄水装置は、沈殿する砂等の固形物を含有する被処理水から、固形物を分離する浄水装置であって、河川等の源流から非処理水を流入口2から流入させて貯水する貯水槽1と、流入口2から離間した貯水槽1の一方側の底面6に設けられ、固形物が混合する混合水を排出する混合排出口7と、貯水槽1の上側に設けた浄水を排出する浄水排出口4を備え、貯水槽1の底面6は、流入口2側よりも混合排出口7側を低くした傾斜面に形成され、浄水排出口4から排出する混合水を源流の下流に排出する流路を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿する砂等の固形物を含有する被処理水から、固形物を分離する浄水装置であって、
河川等の源流から前記非処理水を流入口から流入させて貯水する貯水槽と、
前記流入口から離間した前記貯水槽の一方側の底面に設けられ、前記固形物が混合する混合水を排出する混合排出口と、
前記貯水槽の上側に設けた浄水を排出する浄水排出口を備え、
前記貯水槽の底面は、前記流入口側よりも前記混合排出口側を低くした傾斜面に形成され、前記浄水排出口から排出する混合水を前記源流の下流に排出する流路を設けたことを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記貯水槽は略円形に形成され、接線方向に前記流入口を設けるとともに、前記流入口側の円弧周縁の底面に前記混合排出口を設け、前記貯水槽の略中央に前記貯水槽の深さよりも低くした開口を有する前記浄水排出口を設け、前記混合排出口が前記貯水槽の最深部となるように前記貯水槽の底面を傾斜させた請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
前記貯水槽は略四角形に形成され、一方側の上部に前記流入口を設けるとともに、他方側の上部に前記浄水排出口を設け、前記貯水槽の底面を傾斜させ、前記混合排出口を前記貯水槽の最深部に設けた請求項1に記載の浄水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿する砂などの固形物を含有する被処理水から、固形物と浄水を分離する浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、河川を流れる流水には、水に、砂などの固形物が含有されている。この砂などの固形物は、例えば、小水力発電装置を設置する場合には、固形物が発電用の水車を損傷或いは破損する他、寿命を短くする原因となる。このため、取水する水から砂などの固形物を除去することが必要となる。また、河川の水から飲料水を得る水道設備において、砂などの固形物が貯水槽の内部に堆積し、女帝期間毎に排除する作業が必要となる。
【0003】
河川を流れる流水から砂を分離する手段としては、特許第6317249号公報(特許文献1)や、特許第6373215号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1に開示されている沈砂分離装置は、沈砂を含有する被処理水を、沈砂と処理水に分離する沈砂分離装置であって、内部に被処理水の旋回流が形成され、旋回流により被処理水を沈砂と処理水に分離するための分離槽と、分離槽から沈砂を排出するための沈砂排出部と、被処理水を旋回流の旋回方向に向けて流入するための流入部と、流入部より流入した被処理水の旋回流の旋回中心側へ拡散する流量を均等化するための均等化手段を備えている。また、特許文献2に開示されている沈砂分離装置は、底面に排出部が形成され、前記排出部から沈砂を排出する沈砂分離槽と、前記排出部から排出された沈砂を搬送する第一の搬送部と、前記第一の搬送部に連結され、前記第一の搬送部で搬送された沈砂を前記沈砂分離槽の水位より上に搬送する第二の搬送部を備え、前記第二の搬送部の水平面に対する角度を前記第一の搬送部の水平面に対する角度よりも大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6317249号公報
【特許文献2】特許第6373215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に開示された沈砂分離装置は、沈砂池の底面に堆積した沈砂を、ポンプを用いて揚砂され、比重分離、遠心分離等を用いた固液分離装置により水分と分離するものであり、堆積した沈砂を揚砂するポンプ、或いは、固液分離装を用いることから、必然的に大型になるとともに高額になる問題があった。このため、例えば小水力発電装置に使用する場合には、発電装置よりも沈砂分離装置が大型になってしまう。また、分離された沈砂をスクリューコンベア等の搬送装置によって搬送する必要があるが、この沈砂が堆積することから、所定時間毎に他の貯留場に搬送しなくてはならず、このための費用がさらに高騰する問題もある。
【0006】
本発明の課題は、特に小水力発電装置に適合可能に小型化することができ、しかも、固形物が混合する混合水を容易に処理することができる浄水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による浄水装置は、沈殿する砂等の固形物を含有する被処理水から、固形物を分離する浄水装置であって、河川等の源流から前記非処理水を流入口から流入させて貯水する貯水槽と、前記流入口から離間した前記貯水槽の一方側の底面に設けられ、前記固形物が混合する混合水を排出する混合排出口と、前記貯水槽の上側に設けた浄水を排出する浄水排出口を備え、前記貯水槽の底面は、前記流入口側よりも前記混合排出口側を低くした傾斜面に形成され、前記浄水排出口から排出する混合水を前記源流の下流に排出する流路を設けたことを要旨としている。
【0008】
また、前記貯水槽は略円形に形成され、接線方向に前記流入口を設けるとともに、前記流入口側の円弧周縁の底面に前記混合排出口を設け、前記貯水槽の略中央に前記貯水槽の深さよりも低くした開口を有する前記浄水排出口を設け、前記混合排出口が前記貯水槽の最深部となるように前記貯水槽の底面を傾斜させている。
【0009】
さらに、前記貯水槽は略四角形に形成され、一方側の上部に前記流入口を設けるとともに、他方側の上部に前記浄水排出口を設け、前記貯水槽の底面を傾斜させ、前記混合排出口を前記貯水槽の最深部に設けている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浄水装置によれば、沈殿する砂等の固形物を含有する被処理水を貯水する貯水槽の底面を、流入口側よりも混合排出口側を低くした傾斜面に形成しているので、流入口から流入する被処理水が混合排出口に至るに従って固形物が低くなった底面に集合させて沈殿させることから、底面における固形物の混合率を高めることができる。この結果、固形物を多く含む混合水を浄水排出口から排出することができる。さらに、浄水排出口から排出する混合水を源流の下流に排出するための流路を設けているので、底面の固形物を混合水とともに貯水槽の底面から排出することができる。
【0011】
また、貯水槽を略円形に形成し、接線方向に流入口を設け、流入口側の円弧周縁の底面に混合排出口を設けているので、流入した被処理水を貯水槽の内面に沿って混合排出口の方向に向けることができる。さらに、貯水槽の略中央の上部に開口を有する浄水排出口を設けているので、沈殿した砂等の固形物を含まない浄水のみを排出することができる。一方、混合排出口が貯水槽の最深部となるように底面を傾斜させているので、沈殿した固形物を効率よく排出することができる。
【0012】
さらに、貯水槽を略四角形に形成し、貯水槽の一方側の上部に流入口を設け、他方側の上部に浄水排出口を設けているので、流入口から固形物を含む被処理水は、他方側の浄水排出口の到達するまでに固形物が沈殿して浄化することができる。また、貯水槽の底面を傾斜させ、混合排出口の位置を貯水槽の最深部となるように設けているので、沈殿した砂等の固形物を傾斜面により混合排出口の方向に流して効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による浄水装置の第1の実施例を示す平面図である。
【
図3】本発明による浄水装置の第2の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による浄水装置は、沈殿する砂等の固形物を含有する被処理水から、固形物を分離する浄水装置であって、河川等の源流から前記非処理水を流入口から流入させて貯水する貯水槽と、前記流入口から離間した前記貯水槽の一方側の底面に設けられ、前記固形物が混合する混合水を排出する混合排出口と、前記貯水槽の上側に設けた浄水を排出する浄水排出口を備え、前記貯水槽の底面は、前記流入口側よりも前記混合排出口側を低くした傾斜面に形成され、前記浄水排出口から排出する混合水を前記源流の下流に排出する流路を設けている。
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。
図1、
図2は、本発明による浄水装置の第1の実施例を示している。貯水槽1は、略円形に形成されていて、流入口2が設けられた接線方向の個所は直角に形成されている。この貯水槽1は、適宜の直径に形成されるが、浄水装置を必要とする小水力発電装置の規模に応じて、数メートルから数十メートルとしている。また、貯水槽1は、コンクリート、木或いはプラスチックによって形成される。
【0016】
貯水槽1の直角に形成された個所には、流入口2が設けられている。この流入口2からは、図示しない河川等の源流から非処理水を貯水槽1に流入させている。非処理水は、沈殿する砂等の固形物を含有している。また、貯水槽1の流入口2付近には、非処理水が貯水槽1の中央方向に流入しないように水路を規制する堰(せぎ)3が設けられている。さらに、貯水槽1の略中央には、
図2に示すように、貯水槽1の深さよりも低くした開口4aを有する浄水排出口4が設けられている。すなわち、開口4aは、貯水槽1の周縁よりも低い位置とし、浄水が貯水槽1から漏出しないようにしている。浄水排出口4が形成された流水管4bは、小水力発電装置5の水車に向けて流出させる。
【0017】
また、貯水槽1の底面5は、流入口2から
図1の右方に至るに従って低くなるように傾斜させるとともに、
図1の上方から下方に至るに従って低くなるように傾斜させている。これにより、貯水槽1の底面6は、図示の右下側が最も深い最深部となっている。
【0018】
貯水槽1の底面6の最深部には、混合排出口7が設けられている。混合排出口7は、所定の内径を有する例えば塩化ビニール製のパイプによって形成され、先端側には沈殿する砂等の固形物を含有する混合水を流通させる透孔7aが形成されている。そして、混合排出口7は、排出管7bを介して、前述した源流の下流に放出するようにしている。この混合排出口7は、1個所に設けてもよいが、水量、或いは、固形物の含有量に応じて、
図1に示すように、2乃至3個とした複数個を設けることが望ましい。
【0019】
次に、以上のように構成した浄水装置の浄水作用について説明する。まず、流入口2からは、河川等の源流から非処理水を取り入れて貯水槽1に流入させる。非処理水には、河川等の源流に含まれる砂等の固形物が含有している。この固形物は比重が水よりも大きいため沈殿する。非処理水に含まれる固形物は、
図2に示すように沈下するが、貯水槽1の底面6は、図示の右下側が最も深くなるように傾斜していることから、非処理水の流れとともに最深部に移動して蓄積する。貯水槽1の底面6の最深部には、混合排出口7が設けられているので、蓄積した固形物は非処理水とともに混合排出口7に流入し、排出管7bを介して源流の下流に流出させる。源流の下流は、上流と同様に大量の水量を有しているので、本来の水流に従って固形物も流されるので、堆積することはない。
【0020】
一方、貯水槽1に流入した非処理水は、固形物が沈下して混合排出口7から排出され、貯水槽1には、固形物を含まない非処理水が、
図1に示す矢示のように貯水槽1の内面の円弧に沿って渦流のように旋回し、浄化されながら浄水となる。この浄水は、貯水槽1の上方に至るに従って浄化されるので、最も浄化された浄水が、浄水排出口4の開口4aに流入し、流水管4bを介して小水力発電装置5の水車に向けて流出させる。なお、浄水は、小水力発電装置5の用途以外に使用しても良い。
【0021】
図3乃至
図5は、本発明による浄水装置の第2の実施例を示している。この第2の実施例は、基本的な構成は前述した第1の実施例と同様であるが、相違する点は、貯水槽を略四角形に形成したことである。第2の実施例における貯水槽10は、
図4に示すように、略四角形に形成されている。貯水槽10の一方側の上方には、流入口11が設けられている。この流入口11からは、第1の実施例と同様に河川等の源流から非処理水を貯水槽10に流入させている。貯水槽10の流入口11を設けた一方側近傍からは、他方側に向けて非処理水が貯水槽10の中央方向に流入しないように水路を規制する堰(せぎ)16が設けられている。そして、貯水槽10の他方側の上方には、貯水槽10の深さよりも低くした浄水排出口12が設けられている。浄水排出口12に接続した流水管12aは、前述した例えば小水力発電装置5の水車に連結させている。
【0022】
貯水槽10の底面13は、流入口11から
図3の右方の浄水排出口12側に至るに従って低くなるように傾斜させている。また、貯水槽10に設けられた堰16の内部の底面14は、
図5に示すように、図示右方に至るに従って低くなるように、緩やかに傾斜させている。これにより、貯水槽1の堰16により隔離された内部の底面14は、
図5における図示右下側が最も深い最深部となっている。なお、貯水槽10は、堰16に隔離された内部の幅が、流入口11から浄水排出口12に向けて幅広に形成されている。
【0023】
この貯水槽1の最深部には、混合排出口15が設けられている。混合排出口15は、所定の内径を有する例えば塩化ビニール製のパイプによって形成され、先端側には沈殿する砂等の固形物を含有する混合水を流通させる透孔が形成されている。そして、混合排出口15は、排出管15aを介して、前述した源流の下流に放出するようにしている。この混合排出口15は、水量、或いは、固形物の含有量に応じて、複数個を設けても良い。
【0024】
次に、第2の実施例における浄水装置の浄水作用について説明する。流入口11から、河川等の源流から非処理水を取り入れて貯水槽10の堰12に隔離された内部に流入させる。河川等の源流に含まれる砂等の固形物は、比重が水よりも大きいため沈殿する。この固形物は沈下して、貯水槽10の堰16に隔離された内部の底面14に沈下する。この底面14は傾斜していることから、固形物は非処理水の流れとともに最深部に移動して蓄積する。蓄積した固形物は非処理水とともに混合排出口15に流入し、排出管15を介して源流の下流に流出させる。
【0025】
一方、貯水槽10には、固形物を含まない非処理水が、堰16に隔離された内部から貯水槽10内に移行し、浄水排出口12に流入し、流水管12aを介して小水力発電装置5の水車に向けて流出させる。
【0026】
なお、上述した第2の実施例において、流入口11から、河川等の源流から非処理水を取り入れて貯水槽10の堰16に隔離された内部に流入させるようにしたが、堰16を設けることなく、貯水槽10底面全面を傾斜させて最も深い最深部を形成し、この最深部に混合排出口15を設けるようにしてもよい。
【0027】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。例えば、貯水槽は円形或いは四角形としたが、これは基本形であり、設置する場所に応じて若干変形しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 貯水槽
2 流入口
4 浄水排出口
6 底面
7 混合排出口