(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024242
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】焼成炉用の乾式吹付材
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20230209BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230209BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
F27D1/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002583
(22)【出願日】2022-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2021130218
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳富 篤史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正徳
(72)【発明者】
【氏名】川邊 勇介
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA03
4K051AB03
4K051AB05
4K051BE03
4K051LA11
4K051LA12
(57)【要約】
【課題】吹付施工後に乾燥工程が不要であって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる焼成炉用の乾式吹付材を提供する。
【解決手段】炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、当該乾式吹付材中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する。また、原料配合物中に、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有する。結合剤としては、珪酸アルカリ及びリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上を用い、セメントの使用量は5質量%以下に制限する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、
前記乾式吹付材は原料配合物からなり、
前記原料配合物は、粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上を合計で2質量%以上15質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有し、
前記原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物粗粒の含有量が合計で10質量%以下(0を含む)であると共に、セメントの含有量が5質量%以下(0を含む)であり、
前記原料配合物の残部の構成は、次の(1)から(3)のいずれかであり、
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
当該原料配合物中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する、焼成炉用の乾式吹付材。
【請求項2】
炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、
前記乾式吹付材は原料配合物と、液状結合剤とからなり、
前記液状結合剤は、液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上であって、当該液状結合剤の添加量は5質量%以上40質量%以下であり、
前記原料配合物は、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有し、
前記原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物粗粒の含有量が合量で10質量%以下(0を含む)であると共に、セメントの含有量が5質量%以下(0を含む)であり、
前記原料配合物の残部の構成は、次の(1)から(3)のいずれかであり、
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
当該乾式吹付材中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する、焼成炉用の乾式吹付材。
【請求項3】
前記塩基性化合物微粉は酸化マグネシウムである、請求項1又は2に記載の焼成炉用の乾式吹付材。
【請求項4】
前記粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上の含有量が合計で3.5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の焼成炉用の乾式吹付材。
【請求項5】
前記液状結合剤の添加量が8質量%以上30質量%以下である、請求項2に記載の焼成炉用の乾式吹付材。
【請求項6】
前記原料配合物の含有水分量が1質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の焼成炉用の乾式吹付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉、流動床炉、産業廃棄物キルン処理炉、循環流動層(CFB)ボイラ用炉、セメント製造設備用炉、ガス化溶融炉、ストーカ炉等の焼成炉用の乾式吹付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結合剤としてアルミナセメントを適用した吹付材が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、その用途として高炉樋、混銑車等のほかにも焼却炉に適用できる旨が記載されている。しかし、焼却炉のように炉内物を熱処理(焼成・焼却)する焼成炉において、その炉壁となる吹付施工体は、炉内で流動している炉内物から物理的な衝撃や侵食反応を受けやすいという問題がある。
【0003】
また、特許文献1に記載の吹付材は、湿式吹付施工に適用される湿式吹付材である。湿式吹付施工は、ミキサー等の機械的な混練機構により事前に原料配合物と水とを十分に混練し、その混練した混練物をポンプで圧送しながら、ノズル又はノズル直前でエアーと急結剤(硬化剤)とを導入し吹き付ける施工方法である。このため、乾式吹付施工と比較して、機械的な混錬機構が必要となり装置が大掛かりとなる。また、湿式吹付施工の場合、吹付時の圧力が高いため反力が強く、短尺のノズルしか使用できない。そのため、作業者が炉内に入って施工する必要があり、冷間のみの施工しかできない。また短尺のノズルしか使用できないため、施工箇所が限定されるという問題もある。
【0004】
さらに、特許文献1に記載のように焼成炉用の吹付材の結合剤としてセメント(アルミナセメント、ポルトランドセメント、マグネシアセメント等)を用いる手法があるが、結合剤としてセメントを用いた場合、常温で水和反応が起こって吹付施工体の強度が向上するため脱水がしづらくなり、炉内の温度が上昇すると爆裂を生じる危険性がある。そのため、吹付施工後に乾燥工程が必要となり、乾燥工程の実施に費用を要すると共に長時間の操業停止時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、吹付施工後に乾燥工程が不要であって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる焼成炉用の乾式吹付材を提供することにある。
【0007】
本発明の一観点によれば、次の焼成炉用の乾式吹付材が提供される。
炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、
前記乾式吹付材は原料配合物からなり、
前記原料配合物は、粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上を合計で2質量%以上15質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有し、
前記原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物粗粒の含有量が合計で10質量%以下(0を含む)であると共に、セメントの含有量が5質量%以下(0を含む)であり、
前記原料配合物の残部の構成は、次の(1)から(3)のいずれかであり、
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
当該原料配合物中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する、焼成炉用の乾式吹付材。
【0008】
本発明の他の観点によれば、次の焼成炉用の乾式吹付材が提供される。
炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、
前記乾式吹付材は原料配合物と、液状結合剤とからなり、
前記液状結合剤は、液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上であって、当該液状結合剤の添加量は5質量%以上40質量%以下であり、
前記原料配合物は、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有し、
前記原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物粗粒の含有量が合量で10質量%以下(0を含む)であると共に、セメントの含有量が5質量%以下(0を含む)であり、
前記原料配合物の残部の構成は、次の(1)から(3)のいずれかであり、
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
当該乾式吹付材中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する、焼成炉用の乾式吹付材。
【0009】
ここで、本発明でいう「粒径」とは、原料粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径75μm未満の塩基性化合物微粉とは、篩い目が75μmの篩いを通過する塩基性化合物微粉のことで、粒径1mm以上の塩基性化合物粗粒とは、篩い目が1mmの篩い目を通過しない塩基性化合物粗粒のことである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、詳細は後述するが、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉と、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分と、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分とが反応することにより、コージェライト、ゲーレナイト又はアノーサイトを生成し吹付施工体の強度が向上する。また、珪酸アルカリを用いた場合、珪酸アルカリと粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分との反応によりガラス被膜を形成する効果と、コージェライト等の生成による強度向上効果とがあいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。一方、リン酸アルカリを用いた場合、リン酸アルカリと、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉とが反応することにより、耐火度の高いオルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム等を生成することから耐火度が向上する。この耐火度向上効果とコージェライト等の生成による強度向上効果があいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。
【0011】
そして、セメントを用いた場合、上述の通り常温で水和反応が起こって吹付施工体の強度が向上するため脱水ができなくなり、炉内の温度が上昇すると爆裂を生じる危険性があるため、吹付施工後に乾燥工程が必要であるが、本発明によればセメントの含有量を5質量%以下(0を含む)に制限し、さらに上述のガラス被膜やコージェライト等は炉内の温度が上昇する過程で生成されるので、爆裂が生じる危険性は低減される。そのため、吹付施工後に乾燥工程が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態(以下「第1実施形態」という。)の乾式吹付材は、炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、ノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物からなるものである。また、本発明の他の実施形態(以下「第2実施形態」という。)の乾式吹付材は、炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用の乾式吹付材であって、ノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物と、ノズル又はノズル直前で添加する液状結合剤とからなるものである。まず、第1実施形態の乾式吹付材について説明する。
【0013】
第1実施形態の乾式吹付材である原料配合物は、粉末状結合剤として粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上を合計で2質量%以上15質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有する。また、この原料配合物中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する。
【0014】
第1実施形態では、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉と、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分と、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分とが反応することにより、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)又はアノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)を生成し吹付施工体の強度が向上する。また、珪酸アルカリを用いた場合、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、主として珪酸アルカリと粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分との反応によりガラス被膜を形成する。そして、このガラス被膜を形成する効果と、コージェライト等の生成による強度向上効果とがあいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。なお、1400℃を超える温度領域では、ガラス被膜が溶融するので上述の効果は得られない。そのため、本発明の乾式吹付材の用途は、炉壁温度が1400℃以下の焼成炉用に限定している。炉壁温度は1200℃以下であることが好ましい。炉壁温度の下限は特に限定されず、その焼成炉の焼成温度の下限により決まるが、ガラス被膜生成による効果を確実に得る点から概ね800℃以上であることが好ましい。
【0015】
一方、リン酸アルカリを用いた場合、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、主としてリン酸アルカリと、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉とが反応することにより、耐火度の高いオルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム等を生成することから耐火度が向上する。そして、この耐火度向上効果とコージェライト等の生成による強度向上効果があいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。なお、珪酸アルカリとリン酸アルカリを併用した場合、上述のガラス被膜形成効果と耐火度向上効果の両方の効果が得られる。
【0016】
粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上の含有量が合計で2質量%未満であると、上述のガラス被膜形成効果や耐火度向上効果が得られない。また、結合性が不足するため耐食性及び乾式吹付材の炉壁に対する接着性(以下、単に「接着性」という)が低下する。一方、15質量%を超えると、低融物を生成して耐食性が低下する。粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上の含有量は合計で3.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。ここで、粉末状の珪酸アルカリは、典型的には粉末状の珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム及び珪酸カルシウムのうちの1種又は2種以上からなる。また粉末状のリン酸アルカリは、典型的には粉末状のリン酸ソーダ、リン酸リチウム、リン酸カリウム及びリン酸カルシウムのうちの1種又は2種以上からなる。
【0017】
また、上述の粒径75μm未満の塩基性化合物微粉の含有量が合計で0.1質量%未満であるとコージェライト等の生成による強度向上効果が得られない。一方、5質量%を超えると膨張収縮が大きくなり、接着性が低下する。粒径75μm未満の塩基性化合物微粉の含有量は合計で0.2質量%以上3質量%以下であることが好ましい。粒径75μm未満の塩基性化合物微粉は、粒径75μm未満の酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化カルシウム(セメント由来の酸化カルシウムを除く)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カルシウムから選択される1種又は2種以上である。このうち、揮発分が少なく、かつ耐消化性に比較的優れているとの観点から酸化マグネシウムが最も好ましい。酸化マグネシウムとしては、電融マグネシウム、重焼マグネシウム、軽焼マグネシウム等を用いることができる。ここで、原料配合物中において粒径75μm未満の塩基性化合物微粉は、酸化マグネシウム微粉、酸化カルシウム微粉等として単独で含有させることができるほか、例えば焼成ドロマイト微粉として酸化マグネシウムと酸化カルシウムを複合的に含有させることもできる。なお、酸化カルシウムとしては、アルミナセメント、ポルトランドセメント、マグネシアセメント等のセメント由来の酸化カルシウムを除くものとする。セメント由来の酸化カルシウムは、コージェライト等の生成に寄与しにくいからである。
【0018】
一方、原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒の含有量は合計で10質量%以下(0を含む)に制限する。粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒の含有量が10質量%を超えると膨張収縮が大きくなり接着力が低下するからである。粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒の含有量は5質量%以下(0を含む)であることが好ましい。
【0019】
第1実施形態の原料配合物は、上述の通り粉末状の珪酸アルカリ及び/又はリン酸アルカリ、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉等を含むが、その残部の構成は、次の(1)から(3)のいずれかである。
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
【0020】
上記(1)は原料配合物の残部に主としてアルミナ原料を含有する場合であり、特に耐熱性の要求が高い用途に好適である。
上記(2)は原料配合物の残部に主としてアルミナ-シリカ原料を含有する場合であり、耐熱性の要求が上記(1)ほど高くない用途に好適であって原料コストを低減する観点から有効である。
上記(3)は原料配合物の残部に主として炭化珪素原料を含有する場合であり、特に耐摩耗性及び耐食性の要求が高い用途に好適である。
ここで、「主として」とは原料配合物の総量100質量%中に占める割合で、その原料の含有量が50質量%を超えることをいう。
【0021】
原料配合物の残部についてさらに詳しく説明すると、原料配合物の残部に主としてアルミナ原料を含有する上記(1)の場合、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。後述する原料由来のSiO2成分とAl2O3成分とを共に確保するためである。すなわち、上記(1)では、主として含まれるアルミナ原料によって原料由来のAl2O3成分を確保し、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン(ZrO2・SiO2)原料のうちの少なくとも一種によって原料由来のSiO2成分を確保している。
一方、原料配合物の残部に主としてアルミナ-シリカ原料を含有する上記(2)の場合、当該主として含まれるアルミナ-シリカ原料以外の耐火原料を含む必要性はない。すなわち、上記(2)では、主として含まれるアルミナ-シリカ原料によって原料由来のSiO2成分とAl2O3成分とを共に確保することができるからである。
他方、原料配合物の残部に主として炭化珪素原料を含有する上記(3)の場合、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。すなわち、上記(3)では、主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含む場合と、主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ原料とシリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方とを含む場合とがあり、前者の場合は、アルミナ-シリカ原料によって原料由来のSiO2成分とAl2O3成分とを共に確保し、後者の場合は、アルミナ原料によって原料由来のAl2O3成分を確保すると共に、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方によって原料由来のSiO2成分を確保している。
【0022】
なお、残部には上記の耐火原料以外の耐火原料や、粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリ以外の粉末状結合剤(アルミナセメント等)、硬化調整剤(硫酸塩、消石灰等)、爆裂防止剤(有機繊維等)などを適宜含み得る。ただし、セメントを多量に含有すると、上述の通り乾燥時の爆裂が起こりやすくなるので、セメントの含有量は5質量%以下(0を含む。)に制限する。セメントの含有量は2質量%以下(0を含む。)であることが好ましい。
【0023】
第1実施形態では原料配合物中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する。粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が1質量%未満であると、上述のコージェライト等の生成による強度向上効果が得られない。一方、10質量%を超えると、低融物を生成して耐食性が低下する。また、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が5質量%未満であると、上述のガラス被膜形成効果や耐火度向上効果が得られない。一方、40質量%を超えると、吹付施工時の添加水量が増えることにより吹付施工体の緻密性が損なわれ、耐食性が低下する。粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量は3質量%以上7質量%以下であることが好ましく、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量は25質量%以上38質量%以下であることが好ましい。ここで、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分及びAl2O3成分は、粒径75μm未満の耐火原料(アルミナ原料、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料等)及びその他原料(硬化調整剤等)に含まれる主成分又は不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分、粒径75μm未満の珪酸アルカリ及びリン酸アルカリに含まれる主成分又は不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分、並びに粒径75μm未満の塩基性化合物微粉に含まれる不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分の合計であり、これは乾式吹付材の原料配合により特定することができる。
【0024】
第1実施形態において原料配合物は、ノズル又はノズル直前まで空気搬送され、ノズル又はノズル直前において水を添加して焼成炉へ吹付施工される。その添加水量は、原料配合物からなる乾式吹付材の吹付軟度が適切な範囲となるように適宜決定すればよいが、原料配合物の総量100質量%に対して外掛けで概ね10質量%以上15質量%以下である。
【0025】
ここで、ノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物が搬送管内面に付着して閉塞するのを抑制する観点から、原料配合物の含有水分量は1質量%以下であることが好ましい。なお、原料配合物の含有水分量は、JIS K 0068に規定の乾燥減量法により測定する。すなわち、試料を約105℃で恒量になるまで加熱乾燥し、乾燥後の減量を量り、その量を水分とする。
なお、第1実施形態においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ノズル又はノズル直前で液状結合剤(液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上)を添加してもよく、水と液状結合剤を併用して添加してもよい。
【0026】
次に、第2実施形態の乾式吹付材について説明する。第2実施形態の乾式吹付材は、ノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物と、ノズル又はノズル直前で添加する液状結合剤とからなる。第2実施形態において液状結合剤は、液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上である。ここで、第1実施形態では、ノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物中に、粉末状結合剤(粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上)を含有させたが、第2実施形態ではノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物に対して、液状結合剤(液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上)をノズル又はノズル直前で添加する。このように第1実施形態と第2実施形態では、結合剤の形態は異なるが、以下の通り課題を解決するための基本的な技術的思想は共通する。
【0027】
すなわち、第2実施形態においてノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物は、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉を合計で0.1質量%以上5質量%以下含有する。そして、第2実施形態ではノズル又はノズル直前で、液状結合剤(液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリから選択される1種又は2種以上)が添加される。このように第2実施形態の乾式吹付材は、原料配合物と液状結合剤とからなり、この乾式吹付材中に、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する。
【0028】
このように第2実施形態の乾式吹付材において、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分、及び粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の各含有量は第1実施形態と同じであり、各含有量の好ましい範囲も第1実施形態と同じである。また、第2実施形態の乾式吹付材において液状結合剤の成分も第1実施形態と同じである。したがって第2実施形態においても、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉と、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分と、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分とが反応することにより、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)又はアノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)を生成し吹付施工体の強度が向上する。また、結合剤として珪酸アルカリを用いた場合、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、主として珪酸アルカリと粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分との反応によりガラス被膜を形成する。そして、このガラス被膜を形成する効果と、コージェライト等の生成による強度向上効果とがあいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。一方、結合剤としてリン酸アルカリを用いた場合、炉壁温度1400℃以下という温度領域において、主としてリン酸アルカリと、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉とが反応することにより、耐火度の高いオルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム等を生成することから耐火度が向上する。そして、この耐火度向上効果とコージェライト等の生成による強度向上効果があいまって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できる。なお、第2実施形態においても珪酸アルカリとリン酸アルカリを併用した場合、上述のガラス被膜形成効果と耐火度向上効果の両方の効果が得られる。
【0029】
第2実施形態において液状結合剤の添加量は5質量%以上40質量%以下とする。その添加量が5質量%未満であると、上述のガラス被膜形成効果や耐火度向上効果が得られない。また、結合性が不足するため耐食性及び接着性が低下する。一方、40質量%を超えると、低融物を生成して耐食性が低下する。第2実施形態において液状結合剤の添加量は8質量%以上30質量%以下であることが好ましい。なお、本発明でいう「添加量」とは、原料配合物の総量100質量%に対する外掛けの添加量のことをいう。
【0030】
第2実施形態において液状結合剤は上述の通り、液状の珪酸アルカリ及び液状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上である。このうち液状の珪酸アルカリは、典型的には液状の珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム及び珪酸カルシウムのうちの1種又は2種以上からなる。また液状のリン酸アルカリは、典型的には液状のリン酸ソーダ、リン酸リチウム、リン酸カリウム及びリン酸カルシウムのうちの1種又は2種以上からなる。なお、液状結合剤は、珪酸アルカリ、リン酸アルカリの固形分に水を含むものであり、固形分濃度は、液状結合剤100質量%中概ね5質量%以上50質量%以下の範囲で調整する。
また、第2実施形態においてノズル又はノズル直前で添加する液状結合剤は1つの搬送経路から添加するのが好ましいが、複数の搬送経路から添加してもよく、この場合、液状結合剤の添加量は複数の搬送経路から添加された合量となる。このとき、固形分濃度の異なる液状結合剤を異なる搬送経路から添加してもよい。さらには、液状結合剤の搬送経路とは別の搬送経路から水を添加してもよく、この場合、液状結合剤は別の搬送経路から添加された水を含めたものとする。
【0031】
第2実施形態においても原料配合物中における粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒の含有量は合計で10質量%以下(0を含む)に制限し、好ましくは5質量%以下(0を含む)に制限する。また、第2実施形態において原料配合物の残部の構成は第1実施形態と同様に、次の(1)から(3)のいずれかである。
(1)主としてアルミナ原料を含有し、当該主として含まれるアルミナ原料以外に、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料及びジルコン原料のうちの少なくとも一種を含む。
(2)主としてアルミナ-シリカ原料を含有する。
(3)主として炭化珪素原料を含有し、当該主として含まれる炭化珪素原料以外に、アルミナ-シリカ原料を含み、又は、アルミナ原料と、シリカ原料及びジルコン原料の少なくとも一方と、を含む。
なお、残部には上記の耐火原料以外の耐火原料や、粉末状結合剤(アルミナセメント等)、硬化調整剤(硫酸塩、消石灰等)、爆裂防止剤(有機繊維等)などを適宜含み得る。ただし、セメントを多量に含有すると、上述の通り乾燥時の爆裂が起こりやすくなるので、セメントの含有量は5質量%以下(0を含む。)に制限する。セメントの含有量は2質量%以下(0を含む。)であることが好ましい。なお、第2実施形態においては、本発明の効果を損なわない範囲で、原料配合物中に粉末状結合剤(粉末状の珪酸アルカリ及び粉末状のリン酸アルカリのうちの1種又は2種以上)を含有してもよい。
【0032】
上述の通り第2実施形態の乾式吹付材は、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分を1質量%以上10質量%以下含有すると共に、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分を5質量%40質量%以下含有する。粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が1質量%未満であると、上述のコージェライト等の生成による強度向上効果が得られない。一方、10質量%を超えると、低融物を生成して耐食性が低下する。また、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が5質量%未満であると、上述のガラス被膜形成効果や耐火度向上効果が得られない。一方、40質量%を超えると、ノズル又はノズル直前で添加する液状結合剤中の水分量が増えることにより吹付施工体の緻密性が損なわれ、耐食性が低下する。ここで、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分及びAl2O3成分は、粒径75μm未満の耐火原料(アルミナ原料、シリカ原料、アルミナ-シリカ原料等)及びその他原料(硬化調整剤等)に含まれる主成分又は不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分、液状結合剤中の粒径75μm未満の珪酸アルカリ及びリン酸アルカリに含まれる主成分又は不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分、並びに粒径75μm未満の塩基性化合物微粉に含まれる不純物成分としてのSiO2成分及びAl2O3成分の合計であり、これは乾式吹付材の原料配合により特定することができる。
【0033】
ここで、第2実施形態においてもノズル又はノズル直前まで空気搬送される原料配合物が搬送管内面に付着して閉塞するのを抑制する観点から、原料配合物の含有水分量は1質量%以下であることが好ましい。第2実施形態では、乾式吹付材の吹付軟度が適切な範囲となるようには液状結合剤の添加量や固形分濃度を適宜調整する。
【実施例0034】
表1に上述の第1実施形態に係る実施例、表2に比較例を示している。
表1及び表2に示す各例の乾式吹付材について、耐摩耗性、耐食性、接着性及び耐爆裂性を評価し、これらの評価結果に基づき総合評価を行った。なお、表1及び表2において、「珪酸アルカリ(粉末)」とは、粉末状の珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム及び珪酸カルシウムのうちの1種又は2種以上であり、「リン酸アルカリ(粉末)」とは、粉末状のリン酸ソーダ、リン酸リチウム、リン酸カリウム及びリン酸カルシウムのうちの1種又は2種以上である。
【0035】
【0036】
【0037】
各評価項目の評価方法及び評価基準は以下の通りである。
<耐摩耗性>
適切な吹付軟度を想定した水量で混錬し、成形した試料を焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度(表1参照)で焼成した後、サンドブラストで摩耗量を評価した。
摩耗量が10cc未満の場合を◎(優良)、10cc以上15cc未満の場合を○(良好)、15cc以上の場合を×(不良)とした。
【0038】
<耐食性>
適切な吹付軟度を想定した水量で混練し、るつぼ形状に成形し、焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度(表1参照)で焼成した後、るつぼに侵食剤を30g入れ、さらに上述の炉壁温度を想定した焼成温度で12時間加熱し、侵食状態を確認した。侵食剤としては、CaO:60質量%、MgO:10質量%、K2O:10質量%、P2O5:20質量%の合成スラグを用いた。各例の最大溶損面積を測定し、実施例7を100とした相対値を求めた。この相対値が小さいほど耐食性に優れるということである。
この相対値が100未満の場合を◎(優良)、100以上120未満の場合を〇(良好)、120以上の場合を×(不良)とした。
【0039】
<接着性>
接着性を表す指標として接着強度を測定した。接着強度は熱間施工を想定し次の方法で測定した。700℃の雰囲気中にれんがを置き、その上に筒状の金枠をセットする。この金枠内に適量の水と混練した乾式吹付材(施工材)を鋳込んで一定時間後に、金枠をセットしたまま施工材とれんがとのせん断強度を測定する。表1では、実施例1のせん断強度を100として指数化して示した。
この指数が110以上の場合を◎(優良)、100以上110未満の場合を〇(良好)、100未満の場合を×(不良)とした。
【0040】
<耐爆裂性>
適切な吹付軟度を想定した水量で混練し、成形した試料を1000℃の雰囲気に投入し、爆裂の程度を評価した。
爆裂なし及び微亀裂なしの場合を◎(優良)、爆裂はないが微亀裂があった場合を○(良好)、爆裂した場合を×(不良)とした。
【0041】
<総合評価>
全ての評価が◎の場合を◎(優良)、×がなくいずれか1つでも○がある場合を○(良好)、いずれか1つでも×がある場合を×(不良)とした。
【0042】
なお、実施例11と実施例18については、搬送性についての評価も行った。搬送性は、ノズルから噴出した材料が脈動していない場合を◎(優良)、わずかに脈動有りの場合を○(良)とした。
【0043】
表1中、実施例1~24は本発明の範囲内にある乾式吹付材である。これらの総合評価は◎(優良)又は○(良好)であり、耐摩耗性、耐食性、接着性及び耐爆裂性のいずれも良好な評価が得られた。なかでも実施例10~14、16~18は、各含有量が上述の好ましい範囲内にある乾式吹付材である。その総合評価は◎(優良)であり、その他の実施例に比べてより良好な評価が得られた。なお、実施例13は、原料配合物中に粒径75μm未満の焼成ドロマイト微粉を配合し、酸化マグネシウムと酸化カルシウムを複合的に含有させたものである。
搬送性については、原料配合物の含有水分量が1質量%を超えている実施例18ではわずかに脈動が生じたが、含有水分量が1質量%以下の実施例11では脈動は生じなかった。
【0044】
表2中、比較例1は、珪酸アルカリ(粉末状)の含有量が少ない例であり、耐摩耗性、耐食性及び接着性の評価が×(不良)となった。
比較例2は、珪酸アルカリ(粉末状)の含有量が多い例であり、耐食性の評価が×(不良)となった。
比較例3は、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉(酸化マグネシウム微粉)を含有していない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例4は、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉(酸化マグネシウム微粉)の含有量が多い例であり、接着性の評価が×(不良)となった。
比較例5は、粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒(酸化マグネシウム粗粒)の含有量が多い例であり、接着性の評価が×(不良)となった。
比較例6は、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が少ない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例7は、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が多い例であり、耐食性の評価が×(不良)となった。
比較例8は、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が少ない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例9は、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が多い例であり、耐食性及び接着性の評価が×(不良)となった。
比較例10は、焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度が高い例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例11は、アルミナセメントの含有量が多い例であり、耐爆裂性の評価が×(不良)となった。
【0045】
表3に上述の第2実施形態に係る実施例、表4に比較例を示している。
表3及び表4に示す各例の乾式吹付材について、耐摩耗性、耐食性、接着性及び耐爆裂性を評価し、これらの評価結果に基づき総合評価を行った。なお、表3及び表4において、「珪酸アルカリ(液状)」とは、液状の珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム及び珪酸カルシウムのうちの1種又は2種以上であり、「リン酸アルカリ(液状)」とは、液状のリン酸ソーダ、リン酸リチウム、リン酸カリウム及びリン酸カルシウムのうちの1種又は2種以上である。
【0046】
【0047】
【0048】
各評価項目の評価方法及び評価基準は以下の通りである。
<耐摩耗性>
各例の乾式吹付材を混錬し、成形した試料を焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度(表1参照)で焼成した後、サンドブラストで摩耗量を評価した。
摩耗量が10cc未満の場合を◎(優良)、10cc以上15cc未満の場合を○(良好)、15cc以上の場合を×(不良)とした。
【0049】
<耐食性>
各例の乾式吹付材を混練し、るつぼ形状に成形し、焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度(表1参照)で焼成した後、るつぼに侵食剤を30g入れ、さらに上述の炉壁温度を想定した焼成温度で12時間加熱し、侵食状態を確認した。侵食剤としては、CaO:60質量%、MgO:10質量%、K2O:10質量%、P2O5:20質量%の合成スラグを用いた。各例の最大溶損面積を測定し、実施例27を100とした相対値を求めた。この相対値が小さいほど耐食性に優れるということである。
この相対値が100未満の場合を◎(優良)、100以上120未満の場合を〇(良好)、120以上の場合を×(不良)とした。
【0050】
<接着性>
接着性を表す指標として接着強度を測定した。接着強度は熱間施工を想定し次の方法で測定した。700℃の雰囲気中にれんがを置き、その上に筒状の金枠をセットする。この金枠内に混練した乾式吹付材(施工材)を鋳込んで一定時間後に、金枠をセットしたまま施工材とれんがとのせん断強度を測定する。表2では、実施例21のせん断強度を100として指数化して示した。
この指数が110以上の場合を◎(優良)、100以上110未満の場合を〇(良好)、100未満の場合を×(不良)とした。
【0051】
<耐爆裂性>
各例の乾式吹付材を混練し、成形した試料を1000℃の雰囲気に投入し、爆裂の程度を評価した。
爆裂なし及び微亀裂なしの場合を◎(優良)、爆裂はないが微亀裂があった場合を○(良好)、爆裂した場合を×(不良)とした。
【0052】
<総合評価>
全ての評価が◎の場合を◎(優良)、×がなくいずれか1つでも○がある場合を○(良好)、いずれか1つでも×がある場合を×(不良)とした。
【0053】
なお、実施例41と実施例48については、搬送性についての評価も行った。搬送性は、ノズルから噴出した材料が脈動していない場合を◎(優良)、わずかに脈動有りの場合を○(良)とした。
【0054】
表3中、実施例31~54は本発明の範囲内にある乾式吹付材である。これらの総合評価は◎(優良)又は○(良好)であり、耐摩耗性、耐食性、接着性及び耐爆裂性のいずれも良好な評価が得られた。なかでも実施例40~44、46~48は、各含有量が上述の好ましい範囲内にある乾式吹付材である。その総合評価は◎(優良)であり、その他の実施例に比べてより良好な評価が得られた。なお、実施例33は、原料配合物中に粒径75μm未満の焼成ドロマイト微粉を配合し、酸化マグネシウムと酸化カルシウムを複合的に含有させたものである。
搬送性については、原料配合物の含有水分量が1質量%を超えている実施例48ではわずかに脈動が生じたが、含有水分量が1質量%以下の実施例41では脈動は生じなかった。
【0055】
表4中、比較例31は、珪酸アルカリ(液状)の添加量が少ない例であり、耐摩耗性、耐食性及び接着性の評価が×(不良)となった。
比較例32は、珪酸アルカリ(液状)の添加量が多い例であり、耐食性の評価が×(不良)となった。
比較例33は、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉(酸化マグネシウム微粉)を含有量していない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例34は、粒径75μm未満の塩基性化合物微粉(酸化マグネシウム微粉)の含有量が多い例であり、接着性の評価が×(不良)となった。
比較例35は、粒径1mm以上5mm未満の塩基性化合物粗粒(酸化マグネシウム粗粒)の含有量が多い例であり、接着性の評価が×(不良)となった。
比較例36は、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が少ない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例37は、粒径75μm未満の原料由来のSiO2成分の含有量が多い例であり、耐食性の評価が×(不良)となった。
比較例38は、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が少ない例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例39は、粒径75μm未満の原料由来のAl2O3成分の含有量が多い例であり、耐食性及び接着性の評価が×(不良)となった。
比較例40は、焼成炉の炉壁温度を想定した焼成温度が高い例であり、耐摩耗性の評価が×(不良)となった。
比較例41は、アルミナセメントの含有量が多い例であり、耐爆裂性の評価が×(不良)となった。