(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024264
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20230209BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230209BHJP
F24S 10/40 20180101ALI20230209BHJP
【FI】
E04B1/70 B
E04B1/76 100A
E04B1/76 200A
E04B1/76 200E
E04B1/76 300
F24S10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062886
(22)【出願日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021129854
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521349071
【氏名又は名称】株式会社イヨダホーム
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】伊與田 司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 修一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD03
2E001DD04
2E001DD12
2E001DD13
2E001FA12
2E001FA24
2E001NA07
2E001ND06
(57)【要約】
【課題】結露と、該結露によるカビの発生を抑制し得る建造物を提案する。
【解決手段】床材61と床下断熱材62との間に形成された床下空域11と、内壁材69と外壁断熱材63との間に形成された内壁側通気空域12とを連通させると共に、該内壁材69に該内壁側通気空域12と居住域78とを連通するスリット18が形成されたものであるから、内壁側通気空域12と床下空域11と居住域78とで空気を流通させることができ、該内壁側通気空域12と床下空域11とに湿気が滞留することを抑制できるため、該湿気によるカビの発生を抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住域に露出する床材と該床材の下側に配設された床下断熱材との間に形成された床下空域と、
前記床下空域に連通され、前記居住域に露出する内壁材と該内壁材の外側に配設された壁断熱材との間に上下方向に沿って形成された内壁側通気空域と、
前記内壁材に貫通形成されて前記内壁側通気空域と前記居住域とを連通するスリットと
を備えた壁床構造を有するものであることを特徴とする建造物。
【請求項2】
内壁側通気空域の上端寄り部位または該内壁側通気空域に連成された建物上部空域に配設され、該内壁側通気空域の空気を引き込んで外部へ排出する排気手段を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の建造物。
【請求項3】
床下空域に配設された流水管と、該流水管に水を循環させる水循環制御手段とを備え、前記流水管に水を循環させることにより変温された前記床下空域の空気と内壁側通気空域を流れる空気とによる、床材と内壁材とを介した輻射伝熱作用により、居住域を冷暖房する冷暖房システムを備えたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
冷暖房システムは、
太陽熱を集熱する集熱部と、該集熱部で集熱した太陽熱により加熱される水を貯留する貯留部とを有し、該水を床下空域の流水管と夫々循環可能に配設された複数の太陽熱温水装置と、
前記流水管と水を循環させる前記太陽熱温水装置を選択的に切り替える切替手段と
を備え、
前記流水管と前記太陽熱温水装置とで水を循環させて前記床下空域の空気を温めることにより、居住域を暖房する暖房システムを備えたものであることを特徴とする請求項3に記載の建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅などの建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建造物の外壁構造として、例えば特許文献1には、屋内側から屋外側にかけて、内装材、防湿シート、断熱材、透湿防水シート、外装材が配設された構成が開示されている。かかる構成にあって、内装材と断熱材との間に防湿シートが配設されており、該防湿シートにより屋内への湿気の侵入を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-125333号公報(
図1,2及び段落番号0014参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来構成の外壁構造にあっては、防湿シートにより外装材側から内装材側への湿気の侵入を防止できるものの、該防湿シートと内装材との間や該内装材内部には、屋内からの湿気が侵入して滞留してしまう。さらに、一般的な断熱材は、熱の伝わる時間を遅滞させるものであって、熱を完全に遮蔽するものでないことから、外部からの熱が内壁材側へ伝わってしまう。そのため、防湿シートと内装材とで比較的大きな温度差が生ずる。こうした温度差と湿気とによって、内装材の内部や該内装材の外側(防湿シートとの境界)に結露が生じ易く、該結露によってカビが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、外壁構造を構成する内壁材や該内壁材の外側に結露が発生することを抑制し、該結露によるカビの発生を抑制し得る建造物を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、居住域に露出する床材と該床材の下側に配設された床下断熱材との間に形成された床下空域と、前記床下空域に連通され、前記居住域に露出する内壁材と該内壁材の外側に配設された壁断熱材との間に上下方向に沿って形成された内壁側通気空域と、前記内壁材に貫通形成されて前記内壁側通気空域と前記居住域とを連通するスリットとを備えた壁床構造を有するものであることを特徴とする建造物である。
【0007】
かかる構成にあっては、内壁材と壁断熱材との間に形成された内壁側通気空域が、床材の下側に形成された床下空域と連通されると共に、該内壁側通気空域がスリットにより居住域と連通されたものであるから、内壁側通気空域と床下空域と居住域との間で空気を流通させることができる。これにより、例えば内壁側通気空域、床下空域、および居住域との間で生ずる温度差が生ずると、該温度差に応じて、これら間で空気が流通する。このように空気が流通することで、内壁側通気空域や床下空域に湿気が滞留することを抑制できるため、該湿気の滞留によるカビの発生を抑制することができる。
【0008】
尚、本発明の構成にあって、内壁側通気空域と床下空域とを連通する連通部は、その開口面積を、前記スリットの開口面積に比して大きくした構成が好適である。この構成によれば、内壁側通気空域と床下空域との間で空気を一層容易に流通させることができるため、該内壁側通気空域や該床下空域での湿気の滞留を抑制する効果が向上する。
【0009】
前述した本発明の建造物にあって、内壁側通気空域の上端寄り部位または該内壁側通気空域に連成された建物上部空域に配設され、該内壁側通気空域の空気を引き込んで外部へ排出する排気手段を備えた構成が提案される。
ここで、排気手段は、空気を引き込んで排出する作動状態と、該空気を引き込まない作動停止状態とに変換可能なものが好適である。
【0010】
かかる構成にあっては、排気手段により、スリットを介して内壁側通気空域へ侵入した空気を引き込んで排出できると共に、床下空域の空気を内壁側通気空域を介して引き込んで排出できる。さらに、床下空域から空気が排出されると、該床下空域に負圧が生ずることから、圧力差によって居住域の空気が前記スリットを介して該床下空域にも流れ得る。こうしたことから、居住域から内壁側通気空域を介して排気手段により外部へ排出される空気の流れと、該居住域から床下空域と内壁側通気空域とを介して排気手段により外部へ排出される空気の流れとが生ずる。本構成によれば、このような空気の流れを排気手段により強制的に生じさせ得ることから、内壁側通気空域と床下空域とに湿気が滞留することを一層抑制でき、カビ発生を抑制する効果を著しく向上できる。
【0011】
前述した本発明の建造物にあって、床下空域に配設された流水管と、該流水管に水を循環させる水循環制御手段とを備え、前記流水管に水を循環させることにより変温された前記床下空域の空気と内壁側通気空域を流れる空気とによる、床材と内壁材とを介した輻射伝熱作用により、居住域を冷暖房する冷暖房システムを備えた構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、床材と内壁材とを介して居住域に伝える輻射熱により冷暖房する冷暖房システムを備えたものであり、該冷暖房システムが、輻射伝熱作用の発生領域を居住域の床(床材)に加えて壁(内壁材)に拡張されていることから、居住域の全域に該冷暖房効果が安定して生じ易く、該冷暖房の効率を高めることができる。特に、本発明の壁床構造は、床下空域と内壁側通気空域との空気が流れ易くなっていることから、前記冷暖房効果を一層効率的に発揮できる。さらに、本構成の冷暖房システムは、床下空域の流水管に水を循環させるものであるから、従来から公知の天井裏まで水を循環させる構成に比して、該流水管に水を供給するために必要なポンプを小型化することが可能である。したがって、本発明の構成によれば、輻射伝熱作用により高効率な冷暖房効果を安定して生じさせ得ると共に、設置に要するコストとランニングコストとを軽減できるという優れた利点もある。
【0013】
尚、こうした冷暖房システムにあって、水供給制御手段は、地下に埋設され、流水管との間で循環される水を、地熱により水温調整する水温調整手段と、前記水温調整手段により水温調整された水を流水管へ供給する水供給制御手段とを備えたものである構成が好適である。
【0014】
かかる構成にあっては、流水管に循環される水の水温調整を地熱により行うものであるから、比較的安定した水温の水を循環させることができる。詳述すると、地下の地温は年間を通じて略一定であるから、該地温との熱交換作用によって夏季には気温より低い水温に調整でき、この水温に調整された水を流水管に循環させることができる。こうした本構成は、地熱により水温調整するものであるから、この水温調整に要する機械装置を要せず、該機械装置に要する費用を削減できると共に、水温調整に要するランニングコストを削減できる。
【0015】
前述した本発明の建造物にあって、冷暖房システムは、太陽熱を集熱する集熱部と、該集熱部で集熱した太陽熱により加熱される水を貯留する貯留部とを有し、該水を床下空域の流水管と夫々循環可能に配設された複数の太陽熱温水装置と、前記流水管と水を循環させる前記太陽熱温水装置を選択的に切り替える切替手段とを備え、前記流水管と前記太陽熱温水装置とで水を循環させて前記床下空域の空気を温めることにより、居住域を暖房する暖房システムを備えたものである構成が提案される。ここで、本構成にあって、前記した水循環制御手段が、太陽熱温水装置と切替手段とを備えたものである。
【0016】
かかる構成にあっては、太陽熱温水装置から流水管を流れる温水により床下空域の空気を温め、該床下空域の空気と内壁側通気空域を流れる空気とによる床材と内壁材とを介した輻射伝熱作用によって、居住域を暖房するようにしたものである。これにより、冬季には外気より高い温度の温水を流水管に循環させることができるため、居住域の全域で高い暖房効果が安定して生じ得る。さらに、本構成は、流水管と温水を循環させる太陽熱温水装置を切り替えることができるから、所望温度の温水を該流水管へ安定して供給でき、居住域の暖房効率を飛躍的に高めることができる。したがって、本構成によれば、冬季における暖房効率を向上でき、暖房に要するコストを軽減できる。
【0017】
また、本発明の建造物にあって、土台に所定間隔をおいて立設された左右の柱と、前記土台の上方で前記柱間に差し渡された横架材と、前記柱および横架材の外側に配設された外壁材と、前記柱および横架材の内側に配設された内壁材とを備えた建造物の外壁構造であって、前記外壁材に沿って配設され、熱反射性を有する矩形状の熱反射シート部と、前記熱反射シート部の前記内壁材側と前記外壁材側とに夫々配設され、該熱反射シート部の外周縁を挟持する矩形環状の枠部と、前記熱反射シート部の前記内壁材側および前記外壁材側に前記枠部を介して夫々並設され、該熱反射シート部との間に該枠部で囲繞された非通気空域を形成する矩形状の透湿防水シート部とを有する遮熱壁部を備え、前記遮熱壁部は、前記内壁材側の透湿防水シート部の外周縁が、前記土台と横架材と左右の柱との少なくとも一に取り付けられて、前記外壁材の内側に配設された外壁構造を備えた構成が提案される。
【0018】
ここで、遮熱壁部は、建造物の外壁として施工された状態(施工完了状態)で、前記した本発明の構成であれば良い。すなわち、予め成形された遮熱壁部を用いて、本発明の外壁構造が施工される構成であっても良いし、該遮熱壁部を成形するための複数の部材を用いて外壁構造が施工されることによって、該遮熱壁部が形成される構成であっても良い。
【0019】
本構成にあっては、熱反射シート部の内壁材側の面(以下、内表面という)と外壁材側の面(以下、外表面という)とに、透湿防水シート部が非通気空域を介して夫々並設されたものであるから、空気に含まれる水分が該熱反射シート部の内表面および外表面に接触することを防ぎ得る。さらに、熱反射シート部の内外両側の非通気空域によって、該熱反射シート部の内表面側と外表面側との間での熱移動である対流および伝導を大幅に抑制することができる。加えて、熱反射シート部によって、輻射による熱移動を防止できることから、遮熱壁部の内壁材側と外壁材側との間で、前記対流、伝導、および輻射による熱移動を大幅に抑制でき、極めて高い遮熱効果を安定して発揮できる。このように熱反射シート部に湿気が接触することを防止でき、且つ該熱反射シート部の内外間での熱移動を大幅に抑制できることから、熱反射シート部の内表面および外表面(非通気空域)で結露の発生を抑制する効果が著しく向上できる。而して、本構成の外壁構造は、遮熱壁部によって、該遮熱壁部の内壁材側と外壁材側との間で熱と湿気との移動が確実かつ安定して防止できることから、該外壁構造の内部で結露が発生することを抑制する効果が極めて高く生ずる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建造物によれば、内壁側通気空域や床下空域に湿気が滞留することを抑制できるため、該湿気の滞留によるカビの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】遮熱壁部21の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【
図8】実施例2の冷暖房システム101を示す概略図である。
【
図9】(A)第一太陽熱温水装置104と流水管2とで水循環させる状態と、(B)第二太陽熱温水装置105と流水管2とで水循環させる状態とを示す説明図である。
【
図10】地熱調水温装置3と流水管2とで水循環させる状態を示す説明図である。
【
図11】変形例の遮熱壁部91の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を具体化した実施例1,2を、添付図面を用いて説明する。
【実施例0023】
図1は、本実施例にかかる建造物51を示し、一般的な木造住宅で例示している。建造物51は、
図1,2に示すように、二階建ての住宅であり、コンクリート製の基礎52上に配設された土台53と、前記土台53上に所定間隔をおいて立設された複数の柱65(
図5参照)と、該柱65に差し渡された軒桁67および梁(図示せず)と、該軒桁67および梁上に複数の垂木56を介して設けられた屋根55とを備える。さらに、各垂木56間に配設される面戸板57が前記軒桁67に沿って設けられている。前記土台53には、格子状に配設された大引きと根太とが水平方向に組み付けられており(図示せず)、該根太に一階床材61が乗載されると共に、該大引きと根太との間に床下断熱材62が配設されている。また、建造物51の平側には、前記柱65と、該柱65に差し渡された胴差し66と、該胴差し66の上方に設けられた前記軒桁67とを備えた外壁54が、前記土台53上に配設されている。一方、建造物51の妻側には、前記柱65と、胴差し66と、該胴差し66の上方に設けられた前記梁(図示せず)とを備えた外壁54が、前記土台53上に配設されている。こうした平側と妻側との外壁54は、隣合う柱65間に配設された外壁断熱材63を備えると共に、前記柱65、胴差し66、および軒桁67の外側に配設された外壁材68と内側に配設された内壁材69とを備える。尚、胴差し66と軒桁67(又は梁)とが、本発明にかかる横架材に相当し、一階床材61が、本発明にかかる床材に相当する。前記外壁断熱材63が、本発明にかかる壁断熱材に相当する。
【0024】
前記胴差し66には、二階用の床梁(図示せず)が水平方向に組み付けられており、該床梁に平板状の二階床材71が乗載されている。そして、二階床材71の下方に、平板状の一階天井材72が配設されていると共に、該二階床材71の上方に、平板状の二階天井材73が配設されている。一階天井材72と二階天井材73とは、前記内壁材69に組み付けられている。さらに、二階天井材73の上方には、屋根断熱材64が配設されており、該二階天井材73と屋根断熱材64との間に屋根裏空域74が形成されている。
【0025】
建造物51にあって、前記一階床材61と、一階天井材72と、内壁材69とに囲まれた領域が、一階居住域78であり、前記二階床材71と、二階天井材73と、内壁材69とに囲まれた領域が、二階居住域79である。すなわち、一階床材61と一階天井材72と内壁材69とが一階居住域78に露出し、二階床材71と二階天井材73と内壁材69とが二階居住域79に露出する。尚、一階居住域78が、本発明にかかる居住域に相当する。
【0026】
以下に、本発明の要部について説明する。
本実施例の建造物51は、
図1~3に示すように、前記一階床材61と床下断熱材62との間に床下空域11が形成されている。また、前記した外壁54には、内壁材69と外壁断熱材63および柱65との間に、内壁側通気空域12が形成されており、この内壁材69は、該内壁側通気空域12によって外壁断熱材63および柱65と離間されている。この内壁側通気空域12は、その下端が前記床下空域11に連通すると共に、上端が前記屋根裏空域74に連通されている。これにより、床下空域11、内壁側通気空域12、および屋根裏空域74の間で空気が流通可能となっている。尚、床下空域11を設けた一階の床と外壁54とが、本発明にかかる壁床構造に相当する。
【0027】
前記内壁材69には、内壁側通気空域12と前記一階居住域78とを連通するスリット18が開口形成されている。これにより、スリット18を介して、一階居住域78の空気を内壁側通気空域12へ流入させ、内壁側通気空域12を介して屋根裏空域74(および床下空域11)へ流すことができる。尚、本実施例にあって、前記内壁側通気空域12と前記床下空域11とを連通する連通口の開口面積が、前記スリット18の開口面積に比して大きく形成されている。これにより、内壁側通気空域12が、一階居住域78に比して、床下空域11と空気が流通し易くなっている。
【0028】
さらに、前記屋根裏空域74を構成する妻側の外壁54に、換気扇75が配設されている。換気扇75は、湿度センサを備えており、予め設定された湿度(例えば、60%)以上の場合に自動的に作動する機能を有している。この換気扇75が作動することによって、床下空域11の空気を、内壁側通気空域12を介して屋根裏空域74に流すことができると共に、前記スリット18を介して、一階居住域78の空気を内壁側通気空域12へ流入させて、内壁側通気空域12を介して屋根裏空域74へ流すことができる。このように床下空域11および一階居住域78から内壁側通気空域12を通じて該換気扇75に至る空気の流れをつくることができる。尚、本実施例にあっては、換気扇75が後述の作動制御装置により駆動制御可能に設けられており、該作動制御装置を介して手動で作動することも可能となっている。
【0029】
また、外壁54は、
図1~4に示すように、前記外壁材68と外壁断熱材63および柱65との間に配設された遮熱壁部21を備えている。この遮熱壁部21は、冷暖房システム1を構成するものであり、柱65、軒桁67(又は梁)、胴差し66、および土台53の外表面に当接されており、前記外壁材68と所定間隔をおいて配設されている。これにより、外壁材68と遮熱壁部21との間に、外壁側通気空域13が形成されている。この外壁側通気空域13は、その上端と下端とで建造物51の外部と連通されており、外気を流通させることができる。
【0030】
前記遮熱壁部21は、前記外壁54として施工された施工完了状態において、
図6,7に示すように、略矩形状の熱反射シート部22と、該熱反射シート部22の内表面(施工完了状態で内壁材69側に位置する面)および外表面(施工完了状態で外壁材68側に位置する面)に夫々並設された略矩形状の透湿防水シート部23,23とを備え、内外(前記内表面側および外表面側)の透湿防水シート部23,23が矩形環状の枠部24,24を介して熱反射シート部22に一体的に取り付けられている。ここで、枠部24は、前記軒桁67(又は梁)と土台53とに夫々沿って配設される長尺状の横材31,31と、外壁54の左右両端に配された柱(通し柱)65,65に夫々沿って配設される長尺状の縦材32,32とから構成されており、各縦材32,32の上下両端と上下の横材31,31の左右両端とが夫々固結されて矩形環状に形成されている。そして、この枠部24と、前記熱反射シート部22と、透湿防水シート部23とは、同じ外寸の矩形状に形成されており、該枠部24の上下の横材31,31が熱反射シート部22と透湿防水シート部23との各上下両側縁に夫々取り付けられ、かつ該枠部24の左右の縦材32,32が該熱反射シート部22と透湿防水シート部23との各左右両側縁に夫々取り付けられる。このように熱反射シート部22が、その内表面と外表面とに夫々当接された枠部24,24によって挟持され、かつ透湿防水シート部23,23が、前記熱反射シート部22の内表面側と外表面側と前記枠部24,24を介して夫々に並設されることによって、遮熱壁部21が形成される。そして、この遮熱壁部21には、前記熱反射シート部22と内外の透湿防水シート部23,23との間に、該枠部24により囲繞された非通気空域26,26が夫々形成される。この非通気空域26は、密閉状に形成されており、外部との間で空気を入出不能である。
【0031】
前記熱反射シート部22は、シート状基材の両面にアルミニウム層が設けられた熱反射シートにより構成されており、例えば、ポリエチレン製エアクッションシートの両面に高純度のアルミ箔が貼付された熱反射シートが適用できる。こうした熱反射シート部22は、熱を反射(遮断)する特性を有する。一方、透湿防水シート部23は、水を通さず且つ湿気を通す性能を有する透湿防水シートにより構成されており、例えば、ポリエチレン製の不織布を用いた透湿防水シートが適用できる。こうした熱反射シート(熱反射シート部22)と透湿防水シート(透湿防水シート部23)とには、従来から公知のものが適用できることから、その詳細な説明を省略する。
【0032】
こうした遮熱壁部21は、枠部24の上下の横材31,31が前記軒桁67(又は梁)と土台53とに夫々固結されると共に、該枠部24の左右の縦材32,32が前記柱(通し柱)65,65に夫々固結される。これにより、遮熱壁部21は、その内側(熱反射シート部22の内表面側)の透湿防水シート部23の外周縁が、前記軒桁67(又は梁)、土台53、および前記柱(通し柱)65,65の各外面に当接された状態で、配設される。
【0033】
外壁54は、
図2,5に示すように、外壁材68、遮熱壁部21、及び内壁材69と、該遮熱壁部21および内壁材69の間に配設された柱65、胴差し66、軒桁67(又は梁)、および外壁断熱材63とから構成されている。そして、外壁材68と遮熱壁部21との間に形成された外壁側通気空域13、内壁材69と外壁断熱材63との間に形成された内壁側通気空域12、および遮熱壁部21を構成する内外の非通気空域26,26が、外壁54の内外方向に並設されている。
【0034】
また、本実施例の建造物51は、
図2,4に示すように、屋根55下に、熱反射シート部37が該屋根55と空隙39を介して配設されており、該熱反射シート部37の下縁が前記面戸板57と該空隙39を塞ぐ横架材58とにより挟持されている。ここで、横架材58は、面戸板57に沿って設けられており、前記空隙39が、前記熱反射シート部37と屋根55と横架材58とにより囲繞された密閉状の非通気空域として形成されている。さらに、本実施例では、屋根断熱材64と垂木56との間に、透湿防水シート部38が配設されている。尚、こうした熱反射シート部37は、前記遮熱壁部21の熱反射シート部22と同じ熱反射シートにより構成され、透湿防水シート部38は、該遮熱壁部21の透湿防水シート部23と同じ透湿防水シートにより構成されている。
【0035】
さらに、本実施例の建造物51は、屋根55下に空隙39を介して熱反射シート部37が配設されていることから、屋根55を介した熱移動も防いでいる。このように建造物51は、窓を除いて、外部からの熱移動を防ぐ構造となっていることから、居住域78,79における冷暖房を極めて効率的に行うことができ、該冷暖房に要するコスト(電気料など)を低減する効果も高い。
【0036】
一方、本実施例の建造物51には、前記居住域78,79を冷暖房可能な冷暖房システム1が配設されている。この冷暖房システム1は、
図1に示すように、前記床下空域11に配設された流水管2と、該流水管2に冷水または温水を供給制御する循環水制御装置(図示せず)とを備える。ここで、循環水制御装置は、前記流水管2に冷水を供給する地熱調水温装置3と、該流水管2に温水を供給する太陽熱温水装置4と、該地熱調水温装置3および太陽熱温水装置4から前記流水管2へ水を送出するポンプ5と、該ポンプ5による送水源を該地熱調水温装置3と太陽熱温水装置4との一方に切り替える切替弁6と、該ポンプ5の駆動制御および切替弁6の作動制御を実行する作動制御装置(図示せず)とを備え、住宅内に取り付けられた操作盤(図示せず)によって該作動制御装置を操作可能である。尚、循環水制御装置が、本発明にかかる水循環制御手段に相当し、地熱調水温装置3が、本発明にかかる水温調整手段に相当する。そして、ポンプ5、切替弁6、および作動制御装置が、本発明にかかる水供給制御手段に相当する。
【0037】
前記流水管2は、架橋ポリエチレン製のパイプにより構成されており、該流水管2の外表面が前記床下空域11の空気に晒されている。こうした流水管2は、一端が前記ポンプ5を介して前記地熱調水温装置3と太陽熱温水装置4とに連通され、他端が該地熱調水温装置3と太陽熱温水装置4とに連通されている。そして、流水管2の他端と該地熱調水温装置3との間、および該他端と太陽熱温水装置4との間に前記切替弁6が夫々配設されると共に、前記ポンプ5と該地熱調水温装置3との間、および該他端と太陽熱温水装置4との間に前記切替弁6が夫々配設されている。
【0038】
前記地熱調水温装置3は、伝熱性を有する鋼管が蛇行環状に形成されてなるものであり、地下約7.5mに埋設されている。この地熱調水温装置3によって、前記流水管2から切替弁6を介して流入される水の水温が、地熱との熱交換作用により所定温度に調整(加熱または冷却)される。そして、この所定温度の水が、前記ポンプ5により前記流水管2へ送出される。ここで、地熱は、一般的に、地表から離れると、年間を通じて略一定に保たれることから、夏季は外気温よりも低く、冬季は外気温よりも高くなる。すなわち、この地熱調水温装置3によれば、流水管2から流入した水を、夏季に冷却でき、冬季に加熱できる。尚、本実施例にあっては、地熱調水温装置3が建造物51下の地中に埋設されている。
【0039】
前記太陽熱温水装置4は、太陽熱により水を加熱するものであり、従来から公知の構成を適用できる。この太陽熱温水装置4については、その詳細な説明を省略する。
【0040】
前記ポンプ5は、前記地熱調水温装置3と太陽熱温水装置4とから流水管2へ水を圧送するものであり、流水管2への流量を制御する機能を有する。また、切替弁6は、例えば電磁弁により構成されるものであり、前記作動制御装置によって開閉作動される。こうしたポンプ5と切替弁6とは、従来から公知の構成を適用できるため、その説明を省略する。
【0041】
さらに、本実施例の冷暖房システム1は、
図1に示すように、二階居住域79に配設されたエアコン81とパネルヒータ82とを備える。ここで、パネルヒータ82には、前記した床下空域11に配設された流水管2から分岐された配管(図示せず)が接合されており、該配管を介して流水管2と水を循環可能となっている。そして、この配管には、流水管2から水を循環させる開放状態と循環停止させる閉鎖状態とに変換可能な開閉弁(図示せず)が配設されており、該開閉弁の開閉作動によりパネルヒータ82への水の循環を制御できる。こうしたエアコン81、パネルヒータ82、および前記開閉弁とは、前記した作動制御装置により作動制御可能となっている。尚、エアコン81、パネルヒータ82、および開閉弁は、従来から公知の構成を適用できることから、その説明を省略する。
【0042】
本実施例の冷暖房システム1は、前記した作動制御装置(図示せず)が操作されることにより、前記ポンプ5を駆動させて、地熱調水温装置3または太陽熱温水装置4と流水管2とに水を循環させる。これにより、建造物51の居住域78,79を冷暖房する。
【0043】
詳述すると、夏季は、前記切替弁6により前記地熱調水温装置3と前記流水管2とを連通させた状態とし、前記ポンプ5を駆動させて、地熱調水温装置3と流水管2とに水を循環させる。この流水管2を流れる水により床下空域11の空気が冷やされ、この空気による一階床材61を介した輻射熱によって、一階居住域78の温度上昇(窓などから入射する熱量による室温の上昇)を抑制することができ、該一階居住域に居る居住者が冷感を得られる。さらに、前記した換気扇75を作動させる(又は、湿度60%以上で自動的に作動する)ことにより、一階居住域78の空気が内壁材69のスリット18を介して内壁側通気空域12に入って上昇する。ここで、内壁側通気空域12は、前記遮熱壁部21と外壁断熱材63との内側に設けられていることから、後述するように外壁材68から伝わる熱(外気の熱)を遮断できる。そのため、内壁側通気空域12内の空気が、外部からの熱により暖められることなく、上昇する。こうした内壁側通気空域12の空気によっても、内壁材69を介した輻射熱により一階居住域78と二階居住域79との温度上昇を抑制でき、これら居住域78,79に居る居住者が冷感を得られる。さらにまた、夏季は、前記エアコン81とパネルヒータ82(前記開閉弁を開放させる)とを駆動させて、二階居住域79を冷房し、これにより生ずる一階と二階との温度差によって、二階居住域79の冷気が一階居住域78へ降下する。こうして冷やされた一階居住域78の空気も、前記スリット18を介して内壁側通気空域12へ流入する。このように本実施例の冷暖房システム1によれば、夏季に、前記輻射伝熱作用により室温の上昇を抑制し、かつ二階居住域79から内壁側通気空域12へ空気を循環させることによって、建造物51の居住域78,79全体を冷房することができる。
【0044】
一方、冬季は、前記切替弁6により前記太陽熱温水装置4と前記流水管2とを連通させた状態とし、前記ポンプ5を駆動させて、太陽熱温水装置4と流水管2とに水を循環させる。これにより、太陽熱温水装置4で温められた水が流水管2に流れ、床下空域11の空気が温められる。そして、この空気による一階床材61を介した輻射熱によって、一階居住域78に居る居住者に温熱を伝えることができる。さらに、温められた床下空域11の空気が、該床下空域11と連通する内壁側通気空域12を上昇することから、該内壁側通気空域12の空気による内壁材69を介した輻射熱によって、一階居住域78と二階居住域79とに居る居住者に温熱を伝えることができる。さらに、前記換気扇75を作動させることにより、前記床下空域11の空気を安定して内壁側通気空域12で上昇させることができ、前記内壁材69を介して輻射伝熱作用を一層効果的に行い得る。加えて、換気扇75の作動により、スリット18を介して一階居住域78の空気を内壁側通気空域12へ流入させて、該空気を循環させ易くできる。さらにまた、本実施例の建造物51は、前述したように、外壁54の遮熱壁部21と屋根55下に設けた熱反射シート部37の構造とによって、外部からの熱移動を防ぐ構造となっていることから、冬季に外部からの冷気を遮断する効果が高い。こうしたことから、冬季では、一階床材61と内壁材69とを介した輻射伝熱作用によって、建造物51の居住域78,79全体を暖房することができる。
【0045】
加えて、本実施例の冷暖房システム1は、前記作動制御装置がタイマー機能を備え、該タイマー機能により前記ポンプ5の駆動と停止との制御を行うことによって、より効率的な暖房を行うことができるようになっている。具体的には、冬季に、前記タイマー機能によって前記太陽熱温水装置4から温水を循環させるポンプ5の作動時刻(例えば、午前9時)と作動停止時刻(例えば、午後4時)とを設定する。さらに、太陽熱温水装置4が水温センサを備え、前記作動制御装置が、該水温センサから入力された情報(太陽熱温水装置4の水温)に従って、前記ポンプ5の作動開始と作動停止とを制御する水温作動機能を有する。例えば、水温センサが41度以下となると、前記ポンプ5を作動停止制御する一方、該水温センサが44度以上となると、該ポンプ5を作動開始制御する。このようにタイマー機能と水温作動機能との組み合わせによって、効率よく暖房運転することができる共に、これに加えて前記エアコン81を作動制御することにより、居住域78,79の全域で超省エネ暖房運転を24時間行うことができる。
【0046】
尚、本実施例にあって、冬季は、流水管2とパネルヒータ82とを連通する配管の開閉弁を閉鎖状態とし、該パネルヒータ82を作動させない。
【0047】
本実施例の建造物51は、前述したように床下空域11と、外壁54の内壁側通気空域12と、換気扇75が配設された屋根裏空域74とを連通させ、さらに内壁材69のスリット18を介して一階居住域78を前記内壁側通気空域12に連通させたものであるから、これら相互に空気を流入出可能であると共に、前記換気扇75の作動によって、内壁側通気空域12の空気と床下空域11の空気とを引き込んで強制的に屋外に排出することができる。これにより、内壁側通気空域12と床下空域11とに湿気が滞留することを抑制することができる。特に、本実施例では、換気扇75が湿度センサを備えており、所定湿度で自動的に作動することから、前記湿気の滞留を一層効果的に抑制することができる。さらに詳述すると、換気扇75の作動により、内壁側通気空域12の空気が排出されると、該内壁側通気空域12には、床下空域11の空気が流れ込むと共に、スリット18を介して居住域78の空気が引き込まれる。そして、床下空域11から空気が流れ込むと、該床下空域11に負圧が生ずることから、圧力差によって居住域78の空気がスリット18を介して床下空域11にも流れると考えられる。特に、本実施例では、前述したように、スリット18の開口面積に比して、内壁側通気空域12と床下空域11とを連通する連通口の開口面積が大きいことから、スリット18を介して流入した空気の一部が、前記圧力差に応じて、床下空域11に流れ込み、該床下空域11を通じて内壁側通気空域12に流入する空気の流れを生じ易くしている。
【0048】
こうしたことから、居住域78から内壁側通気空域12を介して屋根裏空域74の換気扇75により外部へ排出される空気の流れと、床下空域11(居住域78から流入する空気を含む)から内壁側通気空域12を介して前記換気扇75により外部へ排出される空気の流れとが生ずる。このような空域の流れが前記換気扇75の作動により強制的に発生されることによって、床下空域11と内壁側通気空域12とに湿気が滞留することを一層抑制できる。
【0049】
また、この建造物51の外壁54は、前記遮熱壁部21によって該遮熱壁部21の内外で熱の伝達を遮断できる。ここで、遮熱壁部21は、熱反射シート部22によって、該熱反射シート部22の内外で輻射による熱移動を防止できる。加えて、熱反射シート部22の内表面と外表面とが、内外両側の透湿防水シート部23,23と非通気空域26,26によって、外気と屋内(外壁54の内部)の空気とに接触しないように構成されていることから、熱反射シート部22の内表面と外表面との間で対流および伝導による熱移動を遮断できる。こうしたことから、遮熱壁部21の内外で、対流、伝導、および輻射による熱移動を遮断でき、外部の熱が外壁材68から内壁側通気空域12(および居住域78,79)へ伝わることを大幅に抑制できる。加えて、前記非通気空域26,26を介して並設された透湿防水シート部23,23によって、外壁側通気空域13の外気に含まれる水分が熱反射シート部22に触れることを防止できると共に、内壁側通気空域12の空気に含まれる水分が該熱反射シート部22に触れることを防止できる。このように遮熱壁部21は、その内外方向への熱移動と水分の通過とを防ぐことができる。
【0050】
このように本実施例の建造物51は、外壁54の遮熱壁部21(および外壁断熱材63)によって、内壁側通気空域12と外壁側通気空域13との間で熱移動と水分通過とを遮断でき、かつ前述したように該内壁側通気空域12における湿気の滞留を抑制できることから、該内壁側通気空域12、内壁材69、および外壁断熱材63に結露が発生することを抑制できる。換言すれば、外壁54は、遮熱壁部21が非通気空域26,26によって、該遮熱壁部21の熱移動防止と水分通過防止という作用効果を生じると共に、内壁側通気空域12で湿気の滞留を抑制し且つ外壁側通気空域13で湿気の滞留を抑制できるものである。このように外壁54が、内壁側通気空域12、遮熱壁部21の非通気空域26,26、および外壁側通気空域13の四個の空域が内外方向に並んで設けられた構造によって、前述した結露の発生を抑制するという作用効果が極めて高く発揮され得る。
【0051】
さらに、前述したように、床下空域11にも湿気が滞留することを抑制できることから、該床下空域11に結露が生ずることも抑制できる。また、本実施例は、前述したように、屋根55下に密閉状の空隙39を介して熱反射シート部37が配設されていることから、屋根55を介して屋内に伝わる熱と湿気とを抑制することができる。さらにまた、屋根裏空域74は、前記換気扇75の作動により空気が排出されて、湿気の滞留が抑制される。こうしたことから、屋根裏空域74に結露が生ずることも抑制できる。
【0052】
このように建造物51は、前記外壁54と屋根55とから屋内へ熱と湿気(水分)とが伝わることを抑制する効果が極めて高い高気密性を有する建物であるから、前述した結露発生の抑制という作用効果が極めて高く生じ、該結露によるカビの発生を抑制できる。さらに、こうした高気密性によって、前記冷暖房システム1による冷暖房効果が安定かつ高効率で発揮され得るものとなっている。
【0053】
また、こうした本実施例の構成では、流水管2が床下空域11に配設されており、該流水管2の外表面が該床下空域11の空気に晒されており、流水管2からの伝熱作用が前記床下空域11の空気を介して生ずる。これにより、一階床材61と床下断熱材62とに結露が生ずることを抑制でき、該結露によるカビ発生を抑制できる。
尚、実施例2にあっては、前記した冷暖房システム101を構成する太陽熱温水装置104,105、切替弁106a~106c、これらの配管が異なる以外は前述の実施例1と同じであることから、同じ構成には同じ符号を記し、詳細な説明を適宜省略した。
本実施例の冷暖房システム101は、第一太陽熱温水装置104が建造物51の屋根上に配設され、第二太陽熱温水装置105が敷地内の庭に配設されており、該第一太陽熱温水装置104が該第二太陽熱温水装置105の上方に位置する。そして、これら第一,第二太陽熱温水装置104,105と、前記建造物51の床下空域11に配設された流水管2とを連通させる配管(図示せず)が設けられている。
第一,第二太陽熱温水装置104,105は、太陽熱により水を加熱する集熱部112と、加熱する水を貯留する貯留部113とを備える。本実施例の第一,第二太陽熱温水装置104,105は、いわゆる真空管ヒートパイプ方式のものであり、集熱部112が、複数の真空管と、各真空管の内部に配設されたヒートパイプ(銅管)とを備え、該ヒートパイプ内の熱媒が太陽熱により加熱されることで、該ヒートパイプの上部を介して前記貯留部113の水が加熱される。こうした構成によれば、比較的高い水温の水を効率的に得ることができる。尚、真空管ヒートパイプ方式は、従来から知られた構成を適用できることから、詳細な説明を省略する。
本実施例の冷暖房システム101は、前記した作動制御装置(図示せず)の操作により、地熱調水温装置3または第一,第二太陽熱温水装置104,105と流水管2とに水を循環させることで、建造物51の居住域78,79を冷暖房する。
加えて、本実施例では、第一太陽熱温水装置104と第二太陽熱温水装置105とを切り替えて流水管2に温水を循環させる。ここで、第一太陽熱温水装置104は、屋根上に配設されていることから、敷地内の庭に配設された第二太陽熱温水装置105に比して、太陽熱を集熱し易く水の加熱効率が良い。そのため、外気温が上昇し難い朝から昼にかけての時間(8時~13時)で、第一太陽熱温水装置104から流水管2に温水を循環させる。そして、外気温が上昇し易くなる昼から夕方にかけての時間(13時~18時)で、第二太陽熱温水装置105から流水管2に温水を循環させる。この第二太陽熱温水装置105では、朝から昼にかけての時間(8時~13時)で温めた温水を、昼から夕方の時間(13時~18時)で、集熱部112により温めながら流水管2に循環させるため、第一太陽熱温水装置104に比して太陽熱の集熱効率が低くとも、床下空域11の空気を十分に温めることができる。また、第一太陽熱温水装置104では、貯留部113の水が昼以降で温められることから、夜間における水温低下を抑制できる。そのため、朝から昼にかけての時間で、集熱部112により温めながら流水管2に循環させることによって、床下空域11の空気を十分に温めることができる。このように第一太陽熱温水装置104と第二太陽熱温水装置105とを切り替えることにより、床下空域11の空気を効率良く温めることができる。
尚、冬季は、前述した実施例1と同様に、換気扇75の作動により空気を循環させることができると共に、外壁54の遮熱壁部21により外部との熱移動を防ぐことができる。こうしたことから、居住域78,79全体を暖房できるという、実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
本実施例の冷暖房システム101にあっては、前述したように、冬季に、屋根上の第一太陽熱温水装置104と敷地内の第二太陽熱温水装置105とを切り替えて床下空域11の流水管2と温水を循環させることにより、床下空域11の空気を効率的に暖めることができ、居住域78,79の暖房効果を飛躍的に向上できる。さらに、夏季では、実施例1と同様に、優れた冷房効果が得られる。こうしたことから、冷暖房に要する電気や燃料とコストとを抑制することができるため、環境と人にやさしい住居を提供できる。
また、実施例2の建造物51は、前述した実施例1と同様に、床下空域11、内壁側通気空域12、遮熱壁部21などを備えていることから、該遮熱壁部21で熱移動防止と水分通過防止という作用効果を奏すると共に、該床下空域11と内壁側通気空域12とで結露の発生を抑制する作用効果を奏する。
また、実施例2にあって、冬季に第一太陽熱温水装置104と第二太陽熱温水装置105とを切り替える時間(8時~13時と13時~18時)は、適宜変更して設定できる。さらに、第一,第二太陽熱温水装置104,105を切り替える条件は、前記した時間に限らず、気温や水温などで設定することも可能である。
また、実施例2では、第一太陽熱温水装置104を屋根上に配設し、第二太陽熱温水装置105を敷地内の庭に配設した構成であるが、これに限らず、第一太陽熱温水装置104と第二太陽熱温水装置105との両方を屋根上に並設した構成とすることもできる。さらに、敷地内の庭に、第一太陽熱温水装置104と第二太陽熱温水装置105とを上下に並べて設ける構成としても良い。