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特開2023-2427ゴルフ練習マット用緩衝材およびゴルフ練習マット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002427
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ゴルフ練習マット用緩衝材およびゴルフ練習マット
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
A63B69/36 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103690
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】597168088
【氏名又は名称】株式会社中勢ゴム
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸之
(57)【要約】
【課題】実際にゴルフ場でボールを打った時のような打撃感触を得られるとともに、製造コストや修理の手間が少ないゴルフ練習マット用緩衝材およびゴルフ練習マットを提供する。
【解決手段】ゴルフ練習マット用緩衝材は、人工芝4の下に配置される緩衝材1であって、複数の円筒状の弾性体2を有しており、弾性体2は、外周面同士が接触して並列するように配置され、EPDMの多孔質体で、径方向外側から2mm圧縮したときの圧縮荷重値が5~30N/100mmである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフのスイング練習に用いるゴルフ練習マットの人工芝の下に配置される緩衝材であって、
前記ゴルフ練習マット用緩衝材は、複数の円筒状の弾性体を有しており、
前記弾性体は、外周面同士が接触して並列するように配置されることを特徴とするゴルフ練習マット用緩衝材。
【請求項2】
前記弾性体は、EPDMの多孔質体であることを特徴とする請求項1記載のゴルフ練習マット用緩衝材。
【請求項3】
前記弾性体は、径方向外側から2mm圧縮したときの圧縮荷重値が5~30N/100mmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のゴルフ練習マット用緩衝材。
【請求項4】
前記弾性体は、直径が2cm~4cmであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のゴルフ練習マット用緩衝材。
【請求項5】
前記ゴルフ練習マット用緩衝材は、前記複数の弾性体を取り囲む枠体を有し、
前記枠体のJIS K7181法により測定される圧縮弾性率は、前記弾性体よりも高く、
前記枠体は、前記ゴルフ練習マット用緩衝材の外周下部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のゴルフ練習マット用緩衝材。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のゴルフ練習マット用緩衝材と、該ゴルフ練習マット用緩衝材の上に配置される前記人工芝とを備えてなる平面形状が長方形のゴルフ練習マットであり、
前記弾性体は、前記ゴルフ練習マットの短辺方向へと並列するように配置され、前記弾性体の長軸方向は前記ゴルフ練習マットの長辺方向と一致することを特徴とするゴルフ練習マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフのスイング練習に用いるゴルフ練習マットに関し、特にゴルフ練習マットの人工芝の下に配置されるゴルフ練習マット用緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ練習場や自宅でゴルフのスイング練習を行う場合に、誤って床面をゴルフクラブで叩くことでゴルフクラブを傷つけたり、騒音が発生したりすることを防ぐ目的や、打球の際の打撃感触を実際にゴルフ場で打球した場合の感触に近付けるなどの目的で、種々のゴルフ練習マットが用いられている。以下、ゴルフ練習マットを単に「マット」ともいう。
【0003】
特許文献1には、剛性フレーム内にスプリング張力のかかったケーブルシステムを配置するとともに、剛性フレームの上面に人工芝手段を配置したゴルフ練習マットが開示されている 。これにより、ゴルフスイングの際の恐れや、ためらいがちになることを迅速に緩和し、より自然かつ効果的に練習に導く旨が記載されている。
【0004】
特許文献2には、人工芝などのパッドをゴムバンドなどの弾性要素によってフレームに取付けることでゴルフクラブのスイング時に、スイング方向と平行な方向に移動可能なゴルフマットが開示されている 。クラブヘッドがパッドと接触した場合、パッドは、前にスライドすることにより、ゴルファーは、芝および土が衝撃力を吸収する、本物の芝を打つことにより似ている感覚(打撃感触)を得たり、クラブヘッドの不慮のゆがみまたは反発を低減したりしうる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-75075号公報
【特許文献2】特表2015-514555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2などに記載されているように、従来のゴルフ練習マットは、ゴルフ練習者がより高い練習成果を得られるよう、ゴルフ場で打球した時のような打撃感触を得るための種々の工夫がなされている。
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載されているゴルフ練習マットは、実際にゴルフ場でボールを打った時に近い感触を得られるとしても、それらのゴルフ練習マットを構成する部材点数が多く、複雑な構造である。そのため、製造コストが高くなりやすいうえ、修理の手間も多くなりやすい。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、実際にゴルフ場でボールを打った時のような打撃感触を得られるとともに、製造コストや修理の手間が少ないゴルフ練習マット用緩衝材およびゴルフ練習マットの提供を目的とする。以下、ゴルフ練習マット用緩衝材のことを、単に「緩衝材」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフ練習マット用緩衝材は、ゴルフのスイング練習に用いるゴルフ練習マットの人工芝の下に配置される緩衝材であって、複数の円筒状の弾性体を有しており、上記弾性体は、外周面同士が接触して並列するように配置されることを特徴とする。
【0010】
上記弾性体は、EPDMの多孔質体であることを特徴とする。
【0011】
上記弾性体は、径方向外側から2mm圧縮したときの圧縮荷重値が5~30N/100mmであることを特徴とする。ここで、圧縮荷重値は、100mmの長さに裁断したサンプルについて圧縮特性を測定して得られる値である。
【0012】
上記弾性体は、直径が2cm~4cmであることを特徴とする。
【0013】
上記ゴルフ練習マット用緩衝材は、上記複数の弾性体を取り囲む枠体を有し、上記枠体のJIS K7181法により測定される圧縮弾性率は、上記弾性体よりも高く、上記枠体は、上記ゴルフ練習マット用緩衝材の外周下部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明のゴルフ練習マットは、上記したゴルフ練習マット用緩衝材と、該ゴルフ練習マット用緩衝材の上に配置される上記人工芝とを備えてなる長方形のマットであり、上記弾性体は、上記ゴルフ練習マットの短辺方向へと並列するように配置され、上記弾性体の長軸方向は上記ゴルフ練習マットの長辺方向と一致することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴルフ練習マット用緩衝材は、ゴルフのスイング練習に用いるゴルフ練習マットの人工芝の下に配置され、複数の円筒状の弾性体を有しており、該弾性体は、外周面同士が接触して並列するように配置されるので、該緩衝材を備えたゴルフ練習マット上で打球した際に、弾性体の空洞が潰れて断面楕円形状となる大変形と、弾性体の筒部が圧縮力を受けて局所的に変形する小変形とが起こる。この大変形と小変形が同時に起こることにより、例えば、地面の硬さ、クラブの抜け感などの、実際にゴルフ場でボールを打った時のような打撃感触を得られる。また、本発明の緩衝材は、構成部材の種類が少なく、簡易な構造であるため、製造コストが低く、修理の手間が少ない。
【0016】
弾性体は、EPDMの多孔質体であるので、上述した大変形と小変形がより起こりやすい。また、弾性体は、径方向外側から2mm圧縮したときの圧縮荷重値が5~30N/100mmであるので、弾性体の変形が一層起こりやすく、打撃感触にさらに優れる。
【0017】
弾性体は、直径が2cm~4cmであるので、ゴルフクラブをスイングしてクラブヘッドがマットに接触した際に複数の弾性体が変形する。これにより、クラブヘッドのマットへの接触箇所によらずに一定の打撃感触を得ることができる。
【0018】
ゴルフ練習マット用緩衝材は、複数の弾性体を取り囲む枠体を有し、枠体のJIS K7181法により測定される圧縮弾性率は、弾性体よりも高く、枠体はゴルフ練習マット用緩衝材の外周下部に設けられているので、本発明の緩衝材は剛性に優れるとともに、外力を受けた際に弾性体の変形や、変位が起こりやすい。そのため、該緩衝材は、耐久性に優れるとともに、クラブヘッドがマットに接触した場合にクラブヘッドから弾性体が受ける力を逃がしやすく、打撃感触により優れる。
【0019】
本発明のゴルフ練習マットは、本発明のゴルフ練習マット用緩衝材と、該ゴルフ練習マット用緩衝材の上に配置される人工芝とを備えてなる平面形状が長方形のマットで、弾性体は、マットの短辺方向へと並列するように配置され、弾性体の長軸方向はマットの長辺方向と一致するので、弾性体の長軸方向とボールの打ち出し方向が一致するようにマットを設置しやすい。その場合、クラブヘッドがマットに接触した際のクラブの抜け感に一層優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の緩衝材の模式図である。
図2】第1実施形態の緩衝材を設置したゴルフ練習場の模式図である。
図3】本発明の緩衝材を備えたゴルフ練習マットの使用態様の模式図などである。
図4】従来の緩衝材を備えたゴルフ練習マットの使用態様の模式図などである。
図5】本発明の第2実施形態の緩衝材の模式図である。
図6】第2実施形態の緩衝材の隅部の拡大図である。
図7】第2実施形態の緩衝材の表面と裏面の拡大図である。
図8】弾性体の圧縮特性を測定する際の測定態様を示す図である。
図9】実施例1の圧縮特性の測定結果である。
図10】実施例2の圧縮特性の測定結果である。
図11】実施例3の圧縮特性の測定結果である。
図12】比較例1の圧縮特性の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明のゴルフ練習マット用緩衝材の第1実施形態について図1図3を用いて説明する。図1は第1実施形態の緩衝材の模式図である。ここで、図1(a)は、第1実施形態の緩衝材を斜め上方から見た斜視図である。図1(b)は、第1実施形態の緩衝材が備える弾性体の、長軸方向に直交する方向の断面図である。図1(c)は、第1実施形態の緩衝材が備える弾性体の端部の、長軸方向の断面図である。
【0022】
図1(a)に示す形態において、緩衝材1は平面形状が長方形であり、短辺の長さWcは例えば27.5cm、長辺の長さLcは例えば87.5cmである。緩衝材1は、内部に空洞を有する円筒状の弾性体2から構成される。また、図1(a)に示す形態において緩衝材1は8本の弾性体2を有している。弾性体2は、外周面同士が接触して1方向に並列するように配置されている。弾性体2の並列方向の両端に配置される弾性体2aは片側のみが他の弾性体2と接触している。また、両端の弾性体2aの間に配置される弾性体2bはその外周面上の、中心軸に対して反対側に位置する2つの部分で他の弾性体2と接触している。
【0023】
緩衝材の平面形状は特に限定されず、長方形の他、円形、楕円形、正方形などでもよい。従来のゴルフ練習マットの平面形状は長方形が多いため、従来の緩衝材との互換性の観点から、緩衝材の平面形状は長方形であることが好ましい。長方形の緩衝材の場合、各辺の長さはそれぞれ自由に選択できる。例えば、長辺の長さLcは30cm~120cmの範囲で選択できる。また、短辺の長さWcは、ゴルフ練習のしやすさの観点から、20cm~50cmであることが好ましい。緩衝材は、例えば、5本~20本の弾性体を有し、打撃感触の観点から、8本~12本の弾性体を有することがさらに好ましい。
【0024】
弾性体は、外周面同士が接触して並列されていればよく、1方向(水平方向)だけでなく上下方向にも並列して配置されてもよい。例えば、図1に示した緩衝材1を上下方向に複数重ねて、複層構造の緩衝材としてもよい。1方向のみに弾性体を配列した緩衝材の場合、少ない部材点数で構成されるため、製造コストが低く、修理の手間が少ないため好ましい。一方、1方向(水平方向)だけでなく上下方向にも弾性体を並列して配置した場合、緩衝材は多くの空洞を有するため、大きい力を受けた場合も変形によって力を減衰でき、衝撃吸収性により優れる。
【0025】
図1において、弾性体2はEPDMの多孔質体で構成される。弾性体は、EPDMに限らず、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリル樹脂、エチレン・プロピレン樹脂、クロロスルホン化ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、多硫化樹脂などから自由に選択できる。また、弾性体は、多孔質体でなく、中実体であってもよい。
【0026】
図1(b)および図1(c)に示すように、円筒状の弾性体2の直径Doは約2.5cmである。また、弾性体2の内径Di(空洞2’の直径)は約1.5cmである。弾性体2の厚み((Do-Di)/2)は約0.5cmであり、長軸方向および周方向ともに一定である。
【0027】
弾性体2の直径Doは、特に限定されず、例えば2cm~4cmの範囲で選択できる。弾性体の直径をこの範囲とすることで、ゴルフクラブをスイングしてクラブヘッドがマットに接触した際に複数の弾性体が変形する。これにより、クラブヘッドのマットへの接触箇所によらずに一定の打撃感触を得ることができる。また、弾性体2の厚みは、例えば、0.2cm~1cmの範囲で選択できる。弾性体の厚みをこの範囲とすることで、弾性体の変形性と変形後の回復性の両立が可能であるため好ましい。
【0028】
図1において、複数の弾性体2は、接着剤により隣接するそれぞれの接触部分で固定されている。なお、複数の弾性体は、接着剤に限らず、テープにより固定されてもよい。テープにより固定する場合は、例えば、各弾性体の接触部分を両面テープで貼り合わせてもよい。なお、複数の弾性体は、接着剤とテープを併用して固定してもよい。
【0029】
弾性体は、径方向外側から荷重を掛けた際に適度な変形性を有することが好ましい。具体的には、弾性体は、径方向外側から2mm圧縮したときの圧縮荷重値が5~30N/100mmであることが好ましい。また、弾性体は、径方向外側から5mm圧縮したときの圧縮荷重値が20~70N/100mmであることが好ましい。後述の実施例で示すように、従来のゴルフ練習マット用緩衝材に用いられるウレタン樹脂成形体などは、変形しにくいものが多いため、本発明の緩衝材は変形がより起こりやすく、打撃感触にさらに優れる。
【0030】
第1実施形態の緩衝材を備えたゴルフ練習マットについて図2に基づいて説明する。図2は第1実施形態の緩衝材を備えたゴルフ練習マットが設置されたゴルフ練習場の模式図である。図2(a)はゴルフ練習マットが設置されたゴルフ練習場を上方から見た平面図であり、図2(b)は図2(a)に示したゴルフ練習マットをボールの打ち出し方向Sから見た斜視図である。
【0031】
図2に示すように、本発明の緩衝材1は、ゴルフのスイング練習に用いるゴルフ練習マット3の人工芝4の下に配置される。ゴルフ練習マット3は、昇降ティー5と立ち位置6の間に設けられる。昇降ティー5の周囲と立ち位置6には人工芝4が設けられる。ゴルフ練習マット3は、緩衝材1と、緩衝材1の上に配置される人工芝4とを備えてなる平面形状が長方形のマットである。緩衝材1の短辺の長さおよび長辺の長さは、ゴルフ練習マット3の短辺の長さおよび長辺の長さに対してそれぞれ短く(例えば1cm程度)設定される。弾性体2は、長方形のマットの短辺方向に沿って並列に配置され、弾性体2の長軸方向は該マットの長辺方向と一致する。
【0032】
マットの短辺の長さは自由に選択でき、20cm~50cmの範囲であることが好ましい。マットの短辺の長さをこの範囲とすることで、既存のゴルフ練習場において、従来のゴルフ練習マットと容易に置換できるとともに、弾性体の長軸方向とボールの打ち出し方向Sが一致するようにマットを設置しやすい。その場合、クラブヘッドがマットに接触した際のクラブの抜け感に一層優れる。
【0033】
緩衝材と人工芝の固定方法は特に限定されないが、例えば両面テープによって固定される(図示省略)。両面テープは、複数の弾性体全てに貼り付けて人工芝を固定してもよく、一部の弾性体にのみ貼り付けて人工芝を固定してもよい。人工芝を固定するための両面テープは、例えば、隣接する弾性体のうち1本の弾性体に貼り付けて、それに隣接する次の1本の弾性体には貼り付けず、さらに次の隣接する1本の弾性体には貼り付けることを交互に行うなどしてもよい。あるいは、両面テープは、並列するように配置される弾性体のうち両端に位置する弾性体の各1本にそれぞれ貼り付けて人工芝を固定してもよい。このように、人工芝に対して複数の弾性体を交互に固定したり、両端の弾性体のみを固定したりすることで、弾性体が変形だけでなく水平方向での変位もしやすくなるため、クラブヘッドがマットに接触した際のクラブの抜け感に一層優れる。両面テープの貼り付けを交互に行う場合、両面テープを貼り付ける弾性体と、貼り付けない弾性体の本数は1本に限らず、それぞれ自由な本数を選択できる。
【0034】
本発明の緩衝材を備えたゴルフ練習マット上で打球した際の緩衝材の変形について図3に基づいて説明する。図3(a)は第1実施形態の緩衝材を備えたゴルフ練習マットの斜視図であり、図3(b)は該マット上のボールを打ち出す際の図3(a)におけるA矢視図である。
【0035】
上述したように、ゴルフ練習マット3は円筒状の弾性体2からなる緩衝材1と、人工芝4とから構成されており、人工芝4は自然の芝を模した樹脂製の芝部材41と、芝部材41を保持する基材42から構成される。図3に示すように、ボール7の打ち出し方向Sは弾性体2の長軸方向と同方向である。ゴルフクラブをスイングしてボール7を打ち出す際、クラブヘッド8はボール7だけでなく、その下のゴルフ練習マット3にも接触する。その際、クラブヘッド8は、ゴルフ練習マット3の表面の人工芝4だけでなく弾性体2にも力を負荷し、弾性体2を変形させる。このとき、本発明の緩衝材1は、弾性体2の空洞が潰れて断面楕円形状となる大変形と、弾性体2の筒部が圧縮力を受けて局所的に変形する小変形とが起こる。この大変形と小変形が同時に起こることにより、例えば、地面9からの反力を感じにくく、クラブの抜け感などの実際にゴルフ場でボールを打った時のような打撃感触を得られる。また、本発明の緩衝材は、構成部材の種類が少なく、簡易な構造であるため、製造コストが低く、修理の手間が少ない。
【0036】
上述した本発明の緩衝材を備えたマットとの比較として、従来の緩衝材(板状で空洞を有しない弾性体)を備えたマット上で打球した際の緩衝材の変形について図4に基づいて説明する。図4(a)は従来の緩衝材を備えたゴルフ練習マットの斜視図であり、図4(b)は該マット上のボールを打ち出す際の図4(a)におけるB矢視図である。
【0037】
従来の緩衝材11においても、ゴルフクラブをスイングしてボール7を打ち出す際、クラブヘッド8は、ゴルフ練習マット13の表面の人工芝4だけでなく弾性体12にも力を負荷し、弾性体12を変形させる。このとき、弾性体12は本発明の緩衝材のように内部に空洞を有しないため、弾性体12は変形しにくく、衝撃を変形により吸収しにくいため、ゴルフ練習者は緩衝材11の下の地面9からの反力を感じやすい。 特に、クラブヘッドを強い力でマットに接触させた場合、ゴルフ練習者は実際にゴルフ場でボールを打った時とは異なる打撃感触を感じやすく、練習効果が低下しやすい。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の緩衝材の第2実施形態について図5図7に基づいて説明する。なお、図1図3を用いて説明した事項については、詳細な説明を省略する。図5は第2実施形態の緩衝材の模式図であり、図5(a)は、第2実施形態の緩衝材を上方から見た平面図である。図5(b)は、該緩衝材の隅部を斜め上方から見た斜視図である。図5(c)は、該緩衝材が有する枠体の隅部を斜め上方から見た斜視図である。
【0039】
図5(a)に示すように、緩衝材21は、平面形状が長方形であり、弾性体2の長軸方向は緩衝材21の長辺方向と一致する。また、緩衝材21は、円筒状の弾性体2を11本有している。弾性体2は、外周面同士が接触して並列するように配置され、隣接する弾性体2の各接触部分は接着剤により固定されている。緩衝材21は、11本の弾性体2を取り囲む枠体10を有している。11本の弾性体2は枠体10によって周囲から取り囲まれることで、緩衝材21としての形状を保ちつつ、弾性体2が外部から力を受けた場合の変形や変位の自由度に優れる。弾性体は、隣接する弾性体の各接触部分が固定されているが、弾性体の地面側に配置される外周面を一枚の粘着シートでさらに固定するなどしてもよい。また、弾性体の長軸方向の両端部を枠体と固定するなどしてもよい。固定の方法としては、例えば、接着剤、熱圧着、熱融着、粘着シート、粘着テープ、ホッチキスなどから自由に選択できる。
【0040】
図5(b)に示すように、枠体10は、緩衝材21の外周下部に配置される。枠体10は、多孔質体でなく、例えば中実のEPDMからなる。枠体10のJIS K7181法により測定される圧縮弾性率は、弾性体2よりも高い。これにより、緩衝材が弾性体のみから構成される場合よりも補強されるので、緩衝材21の剛性は第1実施形態の緩衝材よりも高い。
【0041】
枠体10は、2種類の枠部材から構成される。緩衝材21の短辺側には枠部材10aが設けられ、緩衝材21の長辺側には枠部材10bが設けられる。図5(c)に示すように、枠部材10aと枠部材10bはともに断面5角形の棒状の部材で、弾性体2に対して最大面101を接触している。
【0042】
図6は第2実施形態の緩衝材の隅部の拡大図である。図6(a)は、図5(a)におけるC矢視図であり、図6(b)は図5(a)におけるD矢視図である。枠体の形状は特に限定されないが、例えば、枠部材10aおよび枠部材10bの高さHaは、弾性体2の高さ(直径Do)の1/4~1/2である。なお、図6では、枠部材10aおよび枠部材10bの高さは同じであるが、上記の範囲内で異なるようにしてもよい。枠部材の高さを上記のようにして、枠体10を、緩衝材21の外周下部を囲う(覆う)とともに、緩衝材21の外周上部を囲わない構成とすることで、弾性体の上部、つまり荷重を受ける側を自由に動かしやすくなる。そのため、緩衝材の剛性を高めて耐久性を向上させるとともに、弾性体の変形に自由度を持たせることでき、クラブヘッドがマットに接触した際のクラブの抜け感などに一層優れる。
【0043】
図7は第2実施形態の緩衝材の表面と裏面の拡大図である。図7(a)は、表面の斜視図であり、図7(b)は、裏面の斜視図である。枠体10は緩衝材21の周囲に配置されており、緩衝材21の裏面には、補強のための部材は設けられていない。なお、緩衝材の裏面には補強のための部材を設けてもよく、例えば、中実のEPDMの板状部材や、粘着シートを設けるなどしてもよい。
【実施例0044】
本発明の緩衝材が備える弾性体の圧縮特性を、圧縮試験機を用いて測定した。サンプルとして、直径Φ25mm×厚みt4.5mmの円筒状の弾性体(実施例1)、直径Φ25mm×厚みt5.5mmの円筒状の弾性体(実施例2)、直径Φ25mm×厚みt6.0mmの円筒状の弾性体(実施例3)、および厚みt25mmの板状の弾性体(比較例1)の4種の弾性体の圧縮特性を測定した。実施例1~実施例3の弾性体はスポンジ状(多孔質体)のEPDMからなり、比較例1の弾性体は発泡ウレタン樹脂からなる。
【0045】
実施例1~実施例3の弾性体の圧縮特性の測定方法について、図8(a)を用いて説明する。図8(a)は、円筒状の弾性体の圧縮特性を測定する際の測定態様を示す図である。円筒状の弾性体2の圧縮特性は、以下の手順により測定される。
1.3本の円筒状の弾性体2を並列して固定治具31にセットする。
2.真ん中の弾性体2に対して圧縮治具32(接触面積20cm)を20mm/minのスピードで圧縮方向Dpへ降下させ、所定の圧縮量Lpでの圧縮荷重値を測定する。なお、圧縮荷重値は、予備測定を2度行い、3度目の圧縮時の圧縮荷重値を採用した。
【0046】
比較例1の弾性体の圧縮特性の測定方法について、図8(b)を用いて説明する。図8(b)は、板状の弾性体の圧縮特性を測定する際の測定態様を示す図である。板状の弾性体12の圧縮特性は、以下の手順により測定される。
1.切り出した緩衝材11(板状の弾性体12)を固定治具31にセットする。
2.弾性体12に対して圧縮治具32(接触面積20cm)を20mm/minのスピードで圧縮方向Dpへ降下させ、所定の圧縮量Lpでの圧縮荷重値を測定する。なお、圧縮荷重値は、実施例1~3の場合と同様に予備測定を2度行い、3度目の圧縮時の圧縮荷重値を採用した。
【0047】
図9図12に、実施例1~実施例3、および比較例1の各弾性体の圧縮特性の測定結果をそれぞれ示す。実施例1の弾性体は、圧縮量2mmでの圧縮荷重値は11N/100mmであり、圧縮量5mmでの圧縮荷重値は28N/100mmであった(図9参照)。また、実施例2の緩衝材は、圧縮量2mmでの圧縮荷重値は16N/100mmであり、圧縮量5mmでの圧縮荷重値は42N/100mmであった(図10参照)。実施例3の緩衝材は、圧縮量2mmでの圧縮荷重値は19N/100mmであり、圧縮量5mmでの圧縮荷重値は59N/100mmであった(図11参照)。一方、比較例1の緩衝材は、圧縮量2mmでの圧縮荷重値は68N/100mmであった(図12参照)。
【0048】
圧縮量2mmでの圧縮荷重値について、実施例1~実施例3の結果と、比較例1の結果とを比較すると、実施例1~実施例3の圧縮荷重値は10~20N/100mmであるのに対し、比較例1の圧縮荷重値は約70N/100mmである。すなわち、実施例1~実施例3を一定量圧縮するために必要な圧縮荷重量は、比較例1の場合の圧縮荷重量の1/7~2/7であり、実施例1~実施例3の弾性体が、従来品である比較例1の弾性体よりも大幅に柔軟であることが分かる。逆に言えば、打球時にマットにクラブが接触し所定の荷重が掛かった場合に、本発明の緩衝材を備えたマットは従来の緩衝材を備えたマットよりも著しく変形しやすいため、クラブの抜け感などの打撃感触に優れると考えられる。
【0049】
以上、本発明の緩衝材およびゴルフ練習マットについて、各図を用いて説明したが上述の構成に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の緩衝材およびゴルフ練習マットは、これらをゴルフ練習場に設置することで、ゴルフ練習者が実際にゴルフ場でボールを打った時のような打撃感触を得られるとともに、製造コストや修理の手間が少ないので、ゴルフ練習マット用緩衝材およびゴルフ練習マットとして広く利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 緩衝材
2、2a、2b 弾性体
2’ 空洞
3 ゴルフ練習マット
4 人工芝
41 芝部材
42 基材
5 昇降ティー
6 立ち位置
7 ボール
8 クラブヘッド
9 地面
10 枠体
10a、10b 枠部材
11 緩衝材
12 弾性体
13 ゴルフ練習マット
21 緩衝材
31 固定治具
32 測定治具
101 最大面
Lc 長辺の長さ
Wc 短辺の長さ
Do 直径
Di 内径
S 打ち出し方向
Ha 高さ
Lp 圧縮量
Dp 圧縮方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12