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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024273
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】インクジェット装置を用いた塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20230209BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230209BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230209BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B41J2/01 451
B41J2/01 203
B05D3/00 D
B05D7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083814
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2021129776
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 幸也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光
(72)【発明者】
【氏名】山原 誠
(72)【発明者】
【氏名】大森 健志
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB27
2C056EB36
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC79
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA07
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA33
(57)【要約】
【課題】塗布対象物へのインク塗布における位置安定性を確保する。
【解決手段】塗布対象物上において配列方向に所定のセルピッチCPで配置された複数のセル81に所定数の液滴を塗布する塗布方法に関する。本塗布方法は、各ノズルNにあらかじめ設定された目標着弾位置に対して各ノズルNから吐出された液滴の着弾位置ズレを観測する観測工程と、それぞれのノズルNの設計位置のデータとそれぞれのノズルについての着弾位置ズレのデータとに基づいて、複数のノズルNの中から駆動ノズルを選定し、置換配列データを生成する生成工程と、置換配列データを用いて、ヘッドユニット2を制御して複数のセル81のそれぞれに所定数の液滴を吐出させる塗布工程とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の走査方向と直交する配列方向に沿って配列された複数のノズルが形成されたヘッドユニットを用いて、塗布対象物上において前記配列方向に所定のセルピッチで配置された複数のセルのそれぞれに所定数の液滴を塗布する塗布方法であって、
前記各ノズルにあらかじめ設定された目標着弾位置に対して前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレを観測する観測工程と、
それぞれのノズルの設計位置のデータとそれぞれのノズルについての前記着弾位置ズレのデータとに基づいて、前記複数のノズルの中から駆動対象となる駆動ノズルを選定し、駆動ノズルの配列データである置換配列データを生成する生成工程と、
前記置換配列データを用いて、前記ヘッドユニットを制御して前記複数のセルのそれぞれに前記所定数の液滴を吐出させる塗布工程とを含む、
塗布方法。
【請求項2】
前記置換配列データを用いて印刷データを生成する印刷データ生成工程をさらに含み、
前記塗布工程は、前記印刷データを用いて前記ヘッドユニットを制御して前記複数のセルのそれぞれに前記所定数の液滴を吐出させる、
請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記置換配列データを用いて、前記各セルに塗布される液滴数が最大となる前記ヘッドユニットの前記配列方向へのオフセット移動量である第2ヘッド移動量を探索する第2探索工程をさらに備え、
前記印刷データ生成工程では、前記ヘッドユニットを前記配列方向に前記第2ヘッド移動量シフトさせた状態で前記印刷データを生成する、請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記置換配列データを用いて、前記複数のノズルの中で駆動ノズルとして選定されない不吐出ノズルの数が最も少なくなる前記ヘッドユニットの前記配列方向へのオフセット移動量である第1ヘッド移動量を探索する第1探索工程をさらに備え、
前記印刷データ生成工程では、前記ヘッドユニットを前記配列方向に前記第1ヘッド移動量と前記第2ヘッド移動量の合計をシフトさせた状態で前記印刷データを生成する、請求項3に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記第2ヘッド移動量は、前記塗布対象物が載置されたステージを移動させることで実現する、請求項4に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記観測工程で前記着弾位置ズレを観測した結果、一の前記ノズルの設計位置に対して、精度保証距離に適合する前記ノズルが複数ある場合、前記生成工程では、前記ノズルの設計位置に最も近いノズルを前記駆動ノズルとして選定する、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項7】
前記置換配列データを用いて、前記複数のノズルの中で駆動ノズルとして選定されない不吐出ノズルの数が最も少なくなる前記ヘッドユニットの前記配列方向へのオフセット移動量である第1ヘッド移動量を探索する第1探索工程をさらに備え、
前記印刷データ生成工程では、前記ヘッドユニットを前記配列方向に前記第1ヘッド移動量シフトさせた状態で前記印刷データを生成する、請求項2に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記生成工程は、
前記ノズルの設計位置に対応する目標着弾位置から精度保証距離の範囲内に着弾した液滴を吐出したノズルを探索することと、
前記ノズルを探索できた場合に、前記探索されたノズルを前記ノズルの設計位置に対応する駆動ノズルとして選定することと、
前記ノズルを探索できない場合に、前記ノズルの設計位置に対応する駆動ノズルとしていずれのノズルも選定しないことと、
を含む請求項1に記載の塗布方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置を用いた塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット装置を用いてデバイスを製造する方法が注目されている。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドを基板に対して相対的に走査させながらインクを吐出することで、基板上に複数のフィルタエレメントが形成されたカラーフィルタを製造する方法が示されている。このものでは、R、G、Bのインクを吐出する複数の着色ヘッドを相対移動方向に移動させつつ、所定のタイミングでそれぞれの着色ヘッドの吐出口からインクを吐出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-108820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、印刷の走査方向と直交する方向にインクジェットヘッドを長くする場合、複数のインクジェットヘッドを組み合わせてインクジェットヘッドユニットを構成することが行われる。しかしながら、インクジェットヘッドユニットが長くなると、それに伴って伸縮や歪が生じやすくなるので、理想的なノズル位置からの物理的な位置ズレが生じる場合がある。
【0006】
さらに、インクジェットヘッドのノズルは、理想的には、ノズル直下に向けて液滴を吐出する。しかしながら、ノズルの癖によりノズルから吐出された液滴の飛翔角度にズレが生じる場合がある。
【0007】
ノズルの位置ズレおよび液滴の飛翔角度ズレは、液滴の着弾位置ズレ(実際の着弾位置の目標着弾位置からのズレ)を生じさせる。そのため、従来技術では、ディスプレイパネルのセルに対してインクを塗布する場合に、それぞれのセルに規定数の液滴を着弾させるのが困難であった。近年、ディスプレイの高画質化に伴いセルの狭ピッチ化が進んでおり、この問題がより顕著に表れている。
【0008】
本開示の一態様は、塗布目標物に規定数の液滴を着弾させることが可能な塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、印刷の走査方向と直交する配列方向に沿って配列された複数のノズルが形成されたヘッドユニットを用いて、塗布対象物上において前記配列方向に所定のセルピッチで配置された複数のセルのそれぞれに所定数の液滴を塗布する塗布方法に関し、前記各ノズルにあらかじめ設定された目標着弾位置に対して前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレを観測する観測工程と、それぞれのノズルの設計位置のデータとそれぞれのノズルについての前記着弾位置ズレのデータとに基づいて、前記複数のノズルの中から駆動対象となる駆動ノズルを選定し、駆動ノズルの配列データである置換配列データを生成する生成工程と、前記置換配列データを用いて、前記ヘッドユニットを制御して前記複数のセルのそれぞれに前記所定数の液滴を吐出させる塗布工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様の塗布方法によれば、塗布目標物に規定数の液滴を着弾させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インクジェット装置の構成例を示す模式図
図2】ヘッドユニットの設計状態におけるノズル位置の一例を示す図
図3】製造後におけるヘッドユニットのノズル位置の一例を示す図
図4】ノズルの吐出角度癖に起因する位置ズレを説明するための図
図5】本実施形態の塗布方法の処理フローを示すフローチャート
図6】第1位置補正処理の処理フローを示すフローチャート
図7】本実施形態に係る塗布方法のデータ処理の流れを示す図
図8】各テーブルのデータ処理方法の一例を示す図
図9】比較例に係るヘッドユニットのノズル位置の一例を示す図
図10】設計値に従いワークに印刷した際にセルに割り付けられるノズルを示した図
図11図10において位置ズレ及び使用不可ノズルがある場合の例を示す図
図12】変形例についての図2相当図
図13】変形例についての図3相当図
図14】ヘッドユニットの設計状態におけるノズル位置の他の例を示す図
図15】ヘッドユニットの設計状態におけるノズル位置の他の例を示す図
図16】変形例に係る塗布方法の処理フローを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
<インクジェット装置>
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態のインクジェット装置の構成について説明する。
【0014】
インクジェット装置1は、複数のインクジェットヘッド3(図2参照)を備えるヘッドユニット2と、パネル8を載置するためのステージ7とを備える。
【0015】
インクジェット装置1は、ステージ7上のパネル8とヘッドユニット2とを走査方向に相対移動させることができるように構成されている。インクジェット装置1は、この相対移動中に、インクジェットヘッド3に形成されたノズルNからパネル8上のセル81にインクを塗布する。例えば、インクジェット装置1は、有機機能材料を含むインクの液滴をセルに塗布して有機機能層を形成するのに用いられる。
【0016】
本実施形態では、複数のセル81が配列方向に配列されて第1セル列82を形成し、別の複数のセル81が配列方向に配列されて第2セル列83を形成し、さらに別の複数のセル81が配列方向に配列されて第3セル列84を形成している。第2セル列83は、走査方向に第1セル列82に隣接している。第3セル列84は、走査方向に第2セル列83に隣接している。この例では、第2セル列83および第3セル列84は、配列方向に第1セル列82に対してオフセットを有しない。ただし、第2セル列83および第3セル列84は、配列方向に第1セル列82に対してオフセットを有してもよい。
【0017】
本実施形態では、各セル81は、長円の形状を有している。ただし、各セル81は、円形、四角形、六角形、その他の形状を有してもよい。
【0018】
インクジェット装置1は、第1セル列82、第2セル列83および第3セル列84にRGBストライプ配列でインクを塗布してもよく、第1セル列82、第2セル列83および第3セル列84にペンタイル配列でインクを塗布してもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、RGB用の3つの種類のセル(異なるインクが吐出される3種類のセル)が含まれており、第1セル列82、第2セル列83および第3セル列84がそれぞれRGBに対応する。ただし、これに限るものではなく、パネル8が、1種類のセルだけを含んでいてもよいし、複数種類のセルを含んでいてもよい。また、以下では、RGBのそれぞれに対応するセルを、赤色セル、緑色セル、青色セルと称する。
【0020】
パネル8上には、配列方向に、所定のピッチ(図2のCP参照)でセル(発色領域)が形成されている。本開示では、配列方向のセルのピッチを「セルピッチCP」と称する。
【0021】
-ステージ-
ステージ7は、インクの塗布対象であるパネル8を載置可能に構成される。ステージ7は、載置されたパネル8を走査方向及び走査方向に直交する配列方向に移動させる移動機構(図示省略)を有する。ステージ7の移動機構は、例えば、後述する駆動制御部から出力された制御信号に基づいて動作する。ステージ7の移動機構については、従来から一般的に知られている構成が採用できる。
【0022】
-インクジェットユニット-
図2の上段には、理想状態、すなわち、設計時におけるヘッドユニット2の構成の一例を示している。ヘッドユニット2は、互いに平行に配置された複数のインクジェットヘッド3を備える。
【0023】
インクジェットヘッド3は、長尺状であり、走査方向に対してそれぞれ所定の角度に傾けた状態で配置されている。それぞれのインクジェットヘッド3には、複数のノズルNが長手方向に沿って等ピッチで形成されている。また、複数のインクジェットヘッド3は、配列方向に対してノズルN同士の間隔が等ピッチとなるように配置されている。配列方向におけるノズル間ピッチNPは、例えば、20μm程度である。このように、インクジェットヘッド3を傾けて配置することで、狭ピッチのヘッドユニット2を実現することができる。
【0024】
本開示では、図2に示すように、ノズル間ピッチNPが等ピッチとなるように理想状態で配置されたノズルNの位置を「ノズルNの設計位置」と称する。理想的には、ノズルNから吐出された液滴が真下に着弾される。すなわち、理想状態では、配列方向および走査方向において、ノズルNの設計位置と、液滴の着弾位置は等しい。
【0025】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、それぞれのノズルNを区別して説明する場合に、図面左側から順にN1,N2,N3,・・・の符号を付けて説明する場合がある。そのときに、ノズルと同じ符号を使用して各ノズルの位置についての説明をする場合がある。さらに、N1,N2,N3,・・・からNを除いた数字部分を各ノズルNの論理ノズル番号という。図2以外の図面においても同様とする。
【0026】
図3の上段は、製造後におけるヘッドユニット2の構成(実際の状態)の一例を示している。
【0027】
前述のとおり、ノズルNは、理想状態では、配列方向において等ピッチになるように配置されている。しかし、実際には、図3上段に示すように、ヘッドユニット2の伸縮や歪などによって「ノズルNの設計位置」と実際のノズル位置との間に、位置ズレが生じる場合がある。この位置ズレは、例えば、(1)個々のインクジェットヘッド3の伸縮、(2)複数台のインクジェットヘッド3を固定するプレート(ヘッドユニット2)に取り付ける際の取付け誤差、(3)複数台のインクジェットヘッド3を固定するプレートの熱による材料伸縮に伴うインクジェットヘッド3の固定位置の伸縮や歪、により生じる。これにより、実際に組み立てられたノズル位置の精度は、インクジェットヘッドを取り付けるプレート及びヘッドの絶対精度誤差、及び、組み合わせた際の組み立て精度誤差等の誤差を含んでいる。
【0028】
さらに、ノズルNから吐出された液滴の飛翔角度にズレが生じてノズル直下に対して着弾位置がズレる場合がある。実際に、インクジェットヘッド3は、ノズルNからのインクを吐出する際に、ノズル毎の吐出角度癖をもっている。そのため、インクジェットヘッド3と、塗布対象のパネル8とのギャップGにより、吐出位置が決定する。
【0029】
図4の(a)は、インクジェットヘッド3のノズル位置に基づき吐出角度癖によって位置ズレしたパネル8上での着弾位置を上から見た図であり、図4の(b)は図4の(a)と同じ着弾位置を横から見た図である。なお、図4の(a)において、N1~N5は、各ノズルの設計位置を示している。すなわち、図4では各ノズルN1~N5は、設計位置に配置されているものとする。図4の(a),(b)に示すように、吐出角度癖により、それぞれのノズルの設計位置N1~N5に対して対応する液滴の着弾位置P1~P5が位置ズレしている。本開示の技術は、このようなノズルNの物理的な位置ズレおよびノズルNの吐出角度ズレに起因して液滴の着弾位置ズレが生じた場合においても、塗布目標物に規定数の液滴を着弾させることができる点に特徴がある。詳細は、後術する「インクジェット装置を用いた塗布方法」において説明する。
【0030】
-演算処理部-
演算処理部4は、インクジェット装置1を制御するための処理を実行する。演算処理部4は、着弾位置演算部41と、後述する第1位置補正処理及び第2位置補正処理を実行する補正処理部42とを含む。演算処理部4は、例えば、1または複数のチップ構成のマイコンまたはCPU(プロセッサ)で実現される。
【0031】
(着弾位置演算部)
着弾位置演算部41は、各ノズルNから吐出された液滴の着弾位置Pを撮像した撮像結果に基づいて、それぞれの着弾位置Pの目標着弾位置からの位置ズレを算出する。目標着弾位置は、各ノズルNの設計位置から真下に液滴が吐出された場合における各液滴の着弾位置である。
【0032】
-記憶部-
記憶部5は、CPU(マイコン)を動作させるためのプログラムやCPU(マイコン)での処理結果などの情報を記憶する機能を有する。また、記憶部5は、第1領域51と、第2領域52と、第3領域53を有する。
【0033】
図7に示すように、第1領域51には、後述する着弾位置ズレデータT2が保存される。第2領域52には、ノズル配列データT1と、後述するノズル補正テーブルT3とが保存される。第3領域53には、印刷データT4及び目標座標データT5が保存される。
【0034】
ノズル配列データT1は、論理ノズル情報と物理ノズル情報とが紐づけされて保存されたデータである。
【0035】
論理ノズル情報は、ノズルの設計位置についてのデータであり、論理ノズル番号と、それぞれの論理ノズル番号に対応するノズルの位置情報とが紐づけされたデータである。図8左上には、ノズル配列データT1の一例を示す。図8の例では、論理ノズル番号が「1」であるノズルN1の位置を原点(ゼロ点)としている。図8は、ノズルNが配列方向に100μmピッチで配置された例を示している。
【0036】
物理ノズル情報は、ヘッドユニット2におけるインクジェットヘッド3の位置を示すヘッド番号と、各インクジェットヘッド3におけるノズルNの位置を示す物理ノズル番号からなる。例えば、図8では、図2のヘッド番号として、図面左側のインクジェットヘッド3から順に1,2,3,…の番号が付されている。また、それぞれのインクジェットヘッド3において、図面左側のノズルNから順に1,2,3,4のノズル番号が付されている。例えば、図2左端のインクジェットヘッド3の一番左のノズルには、図8ではヘッド番号1の物理ノズル番号1が付され、それが、論理ノズル番号1(ノズルN1)と紐づけされる。
【0037】
物理ノズル情報に基づくノズルの配列を物理ノズル配列35とし、論理ノズル情報に基づくノズル配列を論理ノズル配列36とする。
【0038】
印刷データT4は、ヘッドユニット2の走査中の複数のタイミングのそれぞれで、複数のノズルのそれぞれの駆動態様を示すデータである。例えば、複数のタイミングは、ノズルが赤色のセルの上に位置する第1タイミング、ノズルが緑色のセルの上に位置する第2タイミング、青色のセルの上に位置する第3タイミングを含む。駆動態様は、インクを吐出する第1駆動と、インクの吐出を阻止する第2駆動とを含む。例えば、複数のノズルは、ヘッドユニット2の走査中に赤色、緑色および青色のセルの上を順番に通過する、赤色インクを吐出可能な赤色ノズルを含む。印刷データT4は、このような赤色ノズルに関して、第1タイミングでは第1駆動、第2タイミングでは第2駆動、第3タイミングでは第2駆動を示す。
【0039】
また、複数のノズルは、ヘッドユニット2の走査中に配列方向においてセルとセルの間を通過し、いずれのセルの上も通過しないノズルを含む。印刷データT4は、このようなノズルに関して、第1タイミング、第2タイミングおよび第3タイミングのいずれでも第2駆動を示す。
【0040】
なお、インクの吐出を阻止する第2駆動とは、ノズルからインクが吐出されない程度に、圧電素子に電圧を印加することを意味する。
【0041】
目標座標データT5は、セル配置の開始座標、セルサイズ、セル間ピッチを定義している。なお、複数セットの目標座標データT5を用意してもよい。そうすることで、複数の目標セル位置に対して、全セルに対する割当ノズル数のチェックが可能になる。
【0042】
なお、記憶部5(メモリ)は、演算処理部4と同じチップ内に設けられてもよいし、演算処理部4とは別チップとして設けられてもよい。また、記憶部5をHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)のような記憶媒体で実現してもよい。
【0043】
-駆動制御部-
駆動制御部6は、インクジェットヘッド3をパネル8に対して相対的に走査させながらインクを吐出する一連の動作において、パネル8が載置されたステージを移動させたり、ノズルNの駆動を制御する機能を有する。駆動制御部6は、例えば、1または複数のチップ構成のマイコンまたはCPU(プロセッサ)で実現される。
【0044】
具体的に、駆動制御部6は、記憶部5から印刷データT4を読み出し、印刷データT4に基づいて、駆動波形信号発生器(図示省略)から受け取った駆動波形をインクジェットヘッド3の各ノズルNへ出力する。例えば、印刷データT4があるノズルに関してあるタイミングで第1駆動を示す場合、駆動制御部6は、インクを吐出するための駆動波形をそのタイミングでそのノズルに供給する。印刷データT4がそのノズルに関して別のタイミングで第2駆動を示す場合、駆動制御部6は、インクの吐出を阻止するための駆動波形をそのタイミングでそのノズルに供給する。
【0045】
また、駆動制御部6は、後述する第1ヘッド移動量や第2ヘッド移動量に基づいて、パネル8またはヘッドユニット2を配列方向に移動させる機能を有する。
【0046】
なお、駆動制御部6について、軸(ステージなど)系の駆動制御を行うモジュールと、ヘッドの吐出駆動制御を行うモジュールとに分けて構成してもよい。
【0047】
<インクジェット装置を用いた塗布方法>
以下において、図3図5図6及び図7を参照しつつ、インクジェット装置1を用いた塗布方法について具体的に説明する。ここで説明するのは、ノズルNを用いて、パネル8上に設けられた前述のセル81のそれぞれに所定数の液滴を塗布する塗布方法である。ノズルNは、ノズル間ピッチNPで配置されるように設計されているが、実際には位置ズレを有する。本塗布方法は、観測工程と、生成工程と、印刷データ生成工程と、塗布工程とを含む。本塗布方法は、全体的または部分的に、プロセッサと、このプロセッサに実行されるプログラムを保存するメモリとを備えたコンピュータにより実施されてもよい。プロセッサは、例えば、上述の通り、演算処理部4および駆動制御部6に含まれていてもよい。メモリは、例えば、記憶部5であってもよい。
【0048】
-観測工程-
観測工程では、各ノズルから吐出された液滴の着弾位置ズレを観測する。
【0049】
具体的には、図5のステップF1において、印刷データを生成し(図7のF10)、着弾位置検出用パターン(以下、着弾パターンという)を印刷する(図7のF11)。着弾パターンを印刷するときは、各ノズルNから1滴以上の液滴が吐出されるようにする。
【0050】
次のステップF2では、ステップF1で印刷された着弾パターンを、着弾観測用のカメラ(図示省略)を用いて観測する(図7のF21)。着弾位置演算部41は、カメラの撮像結果に基づいて、着弾パターンの目標着弾位置からの位置ズレを算出する(図7のF22)。
【0051】
このとき、図4の(a)に示すように、走査方向と配列方向の位置ズレが観測される。本実施形態では、少なくとも配列方向の着弾位置ズレの情報(以下、単に「着弾位置ズレデータT2」という)を算出し、その着弾位置ズレデータT2を使用する。すなわち、以下において、単に「着弾位置ズレデータT2」といった場合、配列方向の着弾位置ズレの情報を指すものとする。図8左下には、着弾位置ズレデータT2の一例を示す。
【0052】
なお、走査方向の着弾位置ズレは、例えば、各ノズルNからのインクの吐出タイミングを調整することで解消することができる。取得された着弾位置ズレデータT2は、記憶部5の第1領域51に格納される。
【0053】
-生成工程-
生成工程では、ノズル配列データT1と、着弾位置ズレデータT2とに基づいて、駆動対象とする駆動ノズルを選定し、その駆動ノズルの配列データである置換配列データ(更新配列データ)を生成する。
【0054】
以下、具体的な生成工程の処理フローについて図5図6を参照しつつ説明する。
【0055】
まず、図5のステップF3において、前述のノズル配列データT1と、ステップF2で算出された着弾位置ズレデータT2に基づいて、ノズル配列データを最適化する位置補正処理(以下、第1位置補正処理という)が実行される。
【0056】
(第1位置補正処理)
図6は、第1位置補正処理(第1探索工程に相当)の詳細を示すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップF31において、ノズル配列データT1と着弾位置ズレデータT2とに基づいて、各ノズルNの配列方向における精度保証距離に従ったノズルNの並び替え処理を実行する。この並び替えには、印刷対象に対する必要精度に従い、精度保証距離を設定する必要がある。図8のノズル補正テーブルT3では、精度保証距離を0.045mmとして、上記の並べ替えを実施した結果を示している。
【0058】
具体的な処理としては、各ノズルNの設計位置に対して、着弾位置が精度保証距離範囲にあるノズルNを選択して紐づけしなおすことでノズル補正テーブルT3を生成する。さらに具体的には、ノズルNの設計位置に対応する目標着弾位置から精度保証距離の範囲内に着弾した液滴を吐出したノズルが探索される。このようなノズルが探索できた場合、探索されたノズルがノズルNの設計位置に対応する駆動ノズルとして選定される。ノズルが探索できない場合、ノズルNの設計位置に対応する駆動ノズルとしていずれのノズルも選定されない。1つのノズルNの設計位置について、その精度保証距離範囲に2つ以上の物理ノズルが存在する場合、ノズルNの設計位置に最も近い物理ノズルを選択して紐づけする。また、選択されなかった物理ノズルは、液滴を吐出しないノズルである「不吐出ノズル」に設定する。
【0059】
例えば、図8の着弾位置ズレデータT2の例では、ノズルN4及びノズルN7がノズルの設計位置に対する着弾位置ズレが精度保証距離である0.045mmを超えている。したがって、ノズルN4及びノズルN7をそれぞれの設計位置における駆動ノズルとして割り当てることができない。次に、ノズルN5の設計位置に関し、ノズルN4の着弾位置P4とノズルN5の着弾位置P5とを比較した場合に、ノズルN4の着弾位置P4の方がノズルN5の設計位置に近い。そこで、ノズル補正テーブルT3では、論理ノズル番号「4」のノズルNを、ノズルN5の設計位置における駆動ノズルとして設定している。そして、駆動ノズルとしての割当先がない論理ノズル番号「5」及び「7」のノズルNが不吐出ノズルに設定される。
【0060】
次のステップF32では、更新ノズル情報Z6を生成する。更新ノズル情報Z6は、ノズル配列データT1をベースとする更新配列データT6と、着弾位置ズレデータT2をベースとする更新位置ずれデータT7とを含む。
【0061】
具体的には、更新配列データT6は、上記のノズル補正テーブルT3に示す更新後の新たなノズル位置に対応するように、ノズル配列データT1の論理ノズルと物理ノズルの紐づけを更新したものである。更新位置ずれデータT7は、ノズル補正テーブルT3に示す更新後の新たなノズル位置に対応させて着弾位置ズレデータT2を更新したものである。
【0062】
次のステップF33では、第1ヘッド移動量を算出する。第1ヘッド移動量は、ヘッドユニット2全体としての配列方向のオフセット移動量である。このオフセット移動量は、前述のステップF31のノズルNの並び替え処理において、紐づけされないノズル数、すなわち、不吐出ノズルが最も少なくなるように設定される。具体的には、任意の指定範囲、指定ピッチにおいて、最適なオフセット移動量を探索する処理を実行する。
【0063】
例えば、図8の例で説明すると、第1ヘッド移動量として-0.02mmが設定されるのが好ましい。そうすると、ノズルN1の着弾位置ズレは、+0.03mmから+0.01mmに更新される。同様に、ノズルN2~N7の着弾位置ズレは、それぞれ、-0.04mm、-0.01mm、+0.045mm、+0.02mm、+0.07mmに更新される。これにより、ノズルN4の着弾位置ズレが、+0.065mmから+0.045mmになる。そうすると、前述の精度保証距離を満たすので、ノズルN4を論理ノズル番号「4」の設計位置に割り当てることができるようになる。さらに、ノズルN5は、論理ノズル番号「5」の設計位置に割り当てることができる。一方、論理ノズル番号「7」には、引き続き、どのノズルも駆動ノズルとして割り当てられない。このように、図8の例において第1ヘッド移動量として-0.02mmを設定することで、第1ヘッド移動量の設定前と比較して、駆動ノズルを1つ増やすことができる。このようにして、不吐出ノズルが最も少なくなるような第1ヘッド移動量を算出する。
【0064】
ここまでの処理が終わると、図5に戻り、フローは次のステップF4に進む。
【0065】
ステップF4では、ノズル補正テーブルT3について、ステップF33で算出された第1ヘッド移動量を加味したデータに更新する。そして、ノズル補正テーブルT3の更新にあわせて、更新配列データT6及び更新位置ずれデータT7を再更新する。
【0066】
次のステップF5では、最適化処理の有効/無効が判定される。最適化処理が必要かどうか(有効にするかどうか)の判断は、例えば、各セルに所定数の液滴を吐出させることができるか否かに基づいて判断してもよい。
【0067】
ステップF5のノズル最適化処理が無効である場合、インクジェット装置1に対して、ヘッド移動量として前述の第1ヘッド移動量が設定される(ステップF6)。そして、ステップF6の処理が終わると、フローは、次のステップF9(印刷データ生成工程)に進む。印刷データ生成工程については後ほど説明する。
【0068】
一方で、ステップF5のノズル最適化処理が有効である場合、各セル81に対してより多くの液滴数を確保する観点から、ヘッドユニット2全体に配列方向のオフセット移動量を加えて最適化する位置補正処理(以下、第2位置補正処理という)を実行する。第2位置補正処理では、任意の指定範囲、指定ピッチにおいて、各セル81に対してより多くの液滴数を確保できるような最適なオフセット移動量を探索する処理を実行する。
【0069】
(第2位置補正処理)
第2位置補正処理(第2探索工程に相当)の具体例について、図10及び図11を用いて説明する。
【0070】
図10は、設計値に従いパネル8に印刷した際にセルに割り付けられるノズルNを示した図であり、理想状態で配置された設計上のノズルの位置を示している。図10において、ハッチングで示すように、理想状態では、各セル81に対して最大で3滴の液滴を着弾させることができるようになっている。
【0071】
これに対し、図11では、ノズルNの位置ズレ及び不吐出ノズルがある場合の例を示している。不吐出ノズルは、ノズルの位置ズレ、その他の理由により、或る印刷データ上で、使用されないノズル(R、G、Bの何れのインクも一度も吐出しないノズル)をいう。図11では、不吐出ノズルを破線で示しており、ノズルN5,N13,N20,N25,N31,N38が不吐出ノズルとなっている。なお、図11では、ノズルNの吐出角度癖による着弾位置ズレはないものとする。
【0072】
図11の上段では、第2位置補正処理を行っていない例を示している。この例では、図面左から6つ目のセル81において、不吐出ノズルと位置ズレの影響により、セル81内に着弾される液滴が2滴となっている。ここで、セル内におけるR,G,Bの均一化した膜厚を形成することを実現する観点から、液滴は均一に塗布するのが好ましい。そこで、すべてのセルの中で液滴数が最小のセルにあわせて液滴数が設定される。そうすると、図11では、すべてのセルに対して1回の動作で吐出できる液滴数が2滴となり、十分な液滴数を確保できなくなる。
【0073】
そこで、第2位置補正処理として、所定の探索範囲、及び所定の探索ピッチにおいて、各セル81に対してより多くの液滴数を確保できるような最適なオフセット移動量を探索する処理を実行する。ここでは、算出されたオフセット量を「第2ヘッド移動量」と称する。本実施形態では、第2ヘッド移動量による各セル81への液滴数の確保が第1ヘッド移動量による不吐出ノズルの最小化よりも優先される。
【0074】
具体的に、例えば、「探索範囲」が-15μm~15μmに設定され、「探索ピッチ」が5μmに設定されたとする。
【0075】
そうすると、ステップF33で算出された第1ヘッド移動量に加えて、ヘッドユニット2全体を-15μm、-10μm、-5μm、0μm、5μm、10μm、15μmだけシフトさせ、それぞれの位置での各セル81に対する液滴数の割り付け状態を算出する。例えば、第2ヘッド移動量を-10μmに設定した場合に、図11の下段に示す状態になったとする。そうすると、算出された第2ヘッド移動量(-10μm)を適用することで、1回の塗布動作で各セル内に均一に吐出できる液滴数を最大3滴とすることが可能となる。そして、他にすべてのセル81において3滴以上の着弾数を実現できるオフセット移動量がない場合、第2ヘッド移動量として-10μmが設定される。
【0076】
なお、ここでは、各セル内に吐出できる液滴数の最大値を増やす目的で第2位置補正処理を行う例について示したが、これに限定されない。例えば、第2位置補正処理として、各ノズルからの液滴がよりセルの中心に近い位置となるように、オフセット移動量を求めてもよい。この場合においても、上記と同様の動作を行うことで対応することができる。位置合わせの精度をより高めたい場合には、探索ピッチを狭くすればよい。これにより、セル81から液滴が飛び出すことに起因した不良品が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0077】
なお、上記の説明において、不吐出ノズル率を考慮して、最大吐出可能数を3滴から2滴に減らしてもよい。また、すべての探索範囲を探索したにもかかわらずセルに割り付けられた液滴数が所定数未満の場合に、印刷不可と判定し、外部装置(図示省略)に対してエラー通知をするようにしてもよい。
【0078】
第2ヘッド移動量の算出が終わると、次のステップF8において、インクジェット装置1に対して、ヘッド移動量として「第1ヘッド移動量+第2ヘッド移動量」が設定される。そして、ステップF8の処理が終わると、フローは、次のステップF9(印刷データ生成工程)に進む。
【0079】
-印刷データ生成工程-
ステップF9の印刷データ生成工程では、駆動ノズルの配列データである置換配列データを用いて印刷データを生成する。具体的な印刷データの生成方法については、従前から知られている一般的な方法が適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。印刷データ生成工程が終わると、次のステップF10(塗布工程)に進む。印刷データは、算出されたヘッド移動量だけヘッドユニット2が配列方向に移動している状態で生成される。例えば、ヘッド移動量が第1ヘッド移動量のみの場合は、印刷データは、ヘッドユニット2が配列方向に第1ヘッド移動量だけ移動している状態で生成される。ヘッド移動量が第1ヘッド移動量と第2ヘッド移動量の合計の場合は、印刷データは、ヘッドユニット2が配列方向に第1ヘッド移動量と第2ヘッド移動量の合計だけ移動している状態で生成される。
【0080】
-塗布工程-
ステップF10の塗布工程では、印刷データ生成工程で生成された印刷データを用いて、ヘッドユニット2を制御して各セル81に所定数の液滴を吐出させる。具体的には、例えば、駆動制御部6が、記憶部5から置換配列データに基づいた印刷データを読み出し、印刷データに基づいて、駆動波形信号発生器(図示省略)から受け取った駆動波形をインクジェットヘッド3の各ノズルNに出力する。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る塗布方法を用いることで、塗布対象となるセル81に対して最適なノズル割り付け状態を作り出すことができる。具体的には、図9に示すように、ノズルの割り付け状態を修正しなかった場合(比較例)では、図面中央のセルにおいて1滴しか液滴数が確保できていない。これに対し、本実施形態の塗布方法を用いることで、図3に示すようにセルの中央付近に2滴ずつの液滴を塗布することができるようになっている。
【0082】
さらに、本実施形態によると、第1ヘッド移動量を用いてヘッドユニットを移動させることで、印刷対象となるセルに対して最適なノズル割り付け状態を作り出すことができる。さらに、第1ヘッド移動量に加えて、第2ヘッド移動量を用いてヘッドユニットを移動させることで、セル内に塗布できる液滴数を増加させたり、インクの着弾位置の位置合わせをすることができる。なお、第1ヘッド移動量による移動を行わずに、ヘッド移動量として第2ヘッド移動量のみに基づいてヘッドユニットを移動させてもよい。
【0083】
<その他の実施形態>
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0084】
例えば、上記の実施形態では、インクジェットヘッド3は、走査方向に対してそれぞれ所定の角度傾けた状態で配置されているものとしたが、これに限定されない。例えば、図12に示すように、配列方向に延びるインクジェットヘッド3を走査方向に並べて配置してもよい。この場合に、各インクジェットヘッド3の配列方向の位置をノズル間ピッチNPずつずらしながら配置する。これにより、ノズル間ピッチNPをより狭ピッチにすることができる。
【0085】
なお、図13には、図3相当図を示しており、この場合においても、前述の「インクジェット装置を用いた塗布方法」と同様の処理を実行することで、同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、図14に示すように、図12の構成から、インクジェットヘッド3を走査方向に対してそれぞれ所定の角度傾けた状態で配置してもよい。また、図15に示すように、図14の構成を1ユニットとして、それを走査方向及び配列方向に段違いに並べるようにしてもよい。図14及び図15においても、前述の「インクジェット装置を用いた塗布方法」と同様の処理を実行することで、同様の効果を得ることができる。
【0087】
上記の実施形態では、各ノズルNの配列方向における精度保証距離に従ったノズルNの並び替え処理を実行する(図6のF31)。しかし、本開示はこれに限られず、ノズルNの並び替え処理を実行しなくてもよい。
【0088】
そのような塗布方法は、例えば、図16に示すように、着弾位置検出用パターンを印刷する工程(ステップF51)と、設計位置からの着弾位置ズレを検出する工程(ステップF52)を含む。ステップF51およびF52は、それぞれステップF1およびF2(図5参照)と同じなので詳細な説明を省略する。
【0089】
本変形例に係る塗布方法は、さらに、各ノズルの設計位置からの着弾位置ズレに基づいて、ヘッドユニット2の配列方向のヘッド移動量を算出する工程(ステップF53)を含む。ヘッド移動量は、例えば、不吐出ノズルが最少になるように算出されてもよく、各セルに所望の液滴数が吐出されるように算出されてもよい。
【0090】
本変形例に係る塗布方法は、さらに、ヘッドユニット2が算出されたヘッド移動量だけ移動した状態で印刷データを生成する工程(ステップF54)を含む。ステップF54は、ステップF9(図5参照)と同じなので詳細な説明を省略する。
【0091】
本変形例に係る塗布方法は、さらに、ヘッドユニット2の配列方向の位置を調整する工程(ステップF55)を含む。具体的には、ヘッドユニット2がステージ7に対して相対的に配列方向にヘッド移動量だけ移動される。ステップF55は、ステップF54の前に実施されてもよく、ステップF54の後で実施されてもよい。
【0092】
本変形例に係る塗布方法は、さらに、塗布工程(ステップF56)を含む。ステップF56は、ステップF10と同じなので詳細な説明を省略する。
【0093】
以上の通り、上記変形例に係る塗布方法は、印刷の走査方向と直交する配列方向に沿って配列された複数のノズルが形成されたヘッドユニットを用いて、塗布対象物上において前記配列方向に所定のセルピッチで配置された複数のセルのそれぞれに所定数の液滴を塗布する塗布方法であって、(a)前記各ノズルにあらかじめ設定された目標着弾位置に対して前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレを観測することと、(b)前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレに基づいて、前記各セルに塗布される液滴数が所定の液滴数となる前記ヘッドユニットの前記配列方向へのオフセット移動量である第2ヘッド移動量を探索することと、(c)前記ヘッドユニットを前記配置方向に前記第2ヘッド移動量だけシフトすることと、(d)前記ヘッドユニットを制御して前記複数のセルのそれぞれに前記所定数の液滴を吐出させることとを含む。
【0094】
あるいは、上記変形例に係る塗布方法は、印刷の走査方向と直交する配列方向に沿って配列された複数のノズルが形成されたヘッドユニットを用いて、塗布対象物上において前記配列方向に所定のセルピッチで配置された複数のセルのそれぞれに所定数の液滴を塗布する塗布方法であって、(a)前記各ノズルにあらかじめ設定された目標着弾位置に対して前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレを観測することと、(b)前記複数のノズルを前記複数のセルの上を通過する使用ノズルと、前記複数のセルの上を通過しない不使用ノズルに分類することと、(c)前記各ノズルから吐出された液滴の前記配列方向の着弾位置ズレに基づいて、前記不吐出ノズルの数が最少となる前記ヘッドユニットの前記配列方向へのオフセット移動量である第1ヘッド移動量を探索することと、(d)前記ヘッドユニットを前記配置方向に前記第1ヘッド移動量だけシフトすることと、(e)前記ヘッドユニットを制御して前記複数のセルのそれぞれに前記所定数の液滴を吐出させることとを含む。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本開示の塗布方法によると、インクジェットヘッド内でのノズル位置を変更できない中で、高精細で一定ピッチの印刷対象物にインク等を塗布するのに有効である。特に、有機ELの発光体、ホール輸送層、電子輸送層の印刷、カラーフィルタの印刷、あるいは、均一な膜の形成のための印刷等におけるインクジェット印刷装置に適用することができ、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0096】
2 ヘッドユニット
7 ステージ
8 パネル(塗布対象物)
81 セル
N ノズル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16