IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ・ハー・エル・アンラーゲンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図1
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図2a
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図2b
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図3
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図4
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図5
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図6
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図7
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図8
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図9
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図10
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図11
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図12
  • 特開-多連スパッタリングターゲット 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024280
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】多連スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
C23C14/34 B
C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097797
(22)【出願日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】10 2021 120 332.5
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514219673
【氏名又は名称】エフ・ハー・エル・アンラーゲンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・クラインヘンペル
(72)【発明者】
【氏名】ベアテ・ベルク
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029CA05
4K029DC13
4K029DC15
4K029DC35
4K029DC39
4K029DC45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】真空チャンバを通して直線的に又は円軌道上を搬送される基板を、僅かな労力ながらも、選択可能な多数の材料で連続的にマグネトロン・スパッタリングによりコーティングできるように用いられる多連スパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】これは、角のある断面形状を持つ少なくとも一つの多角形支持管(1)が設けられ、ターゲット(2)を受容するための長手方向に延在する複数の外面(3)を備え、少なくとも一つの多角形支持管(1)内には、自由空間部(5)が存在し、自由空間部が、多角形支持管を貫いて長手方向に延び、自由空間部内には、多角形支持管の回転により選択可能なターゲット(2)の正面の作用位置において多角形支持管(1)の外側にプラズマ雲(6)を形成するための磁石バー(4)が存在し、移動する又は静止した基板(7)がプラズマ雲(6)から所定の距離に存在することにより解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバを通して直線的に又は円軌道上を搬送される基板または静止した基板をコーティングする円筒状マグネトロンを備えたマグネトロン装置のための多連スパッタリングターゲットであって、円筒状マグネトロンは、エンドブロックか又はその他の駆動ユニットに支持され、当該円筒状マグネトロン内に磁石バーが存在する多連スパッタリングターゲットにおいて、
角のある断面形状を持つ少なくとも一つの多角形支持管(1)が設けられ、当該多角形支持管が、ターゲット(2)を受容するための長手方向に延在する複数の外面(3)を備え、
少なくとも一つの多角形支持管(1)内には、自由空間部(5)が存在し、当該自由空間部が、この多角形支持管を長手方向に貫いて延び、当該自由空間部内には、多角形支持管の回転により選択可能なターゲット(2)の正面の作用位置において多角形支持管(1)の外側にプラズマ雲(6)を形成するための磁石バー(4)が存在し、
移動する又は静止した前記基板(7)が前記プラズマ雲(6)の正面の所定の距離に存在する
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
多角形支持管(1)の外面(3)のそれぞれにターゲット(2)が存在し、当該ターゲット(2)は、同じかまたは異なる材料からなる
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
多角形支持管(1)は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形または八角形の断面形状を備えている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
多角形支持管(1)は、磁石バー(4)と当該磁石バーの正面に存在するプラズマ雲(6)との間にターゲット(2)を個別に配置できるように、所定の角度刻みで回転可能である
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
磁石バー(4)は、自由空間部(5)内の上側において、当該自由空間部の対称軸線より上に固定的に配置されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
磁石バー(4)は、自由空間部(4)内の下側において、当該自由空間部の対称軸線より下に固定的に配置されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
磁石バー(4)は、自由空間部(5)内の側方において、当該自由空間部の対称軸線より側方に固定的に配置されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
上側と下側において各ターゲット(2)の正面にプラズマ雲(6,6.1)がそれぞれ存在するように、自由空間部(5)内には、互いに対向して存在する二つの磁石バー(4,4,1)が固定的に配設されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
多角形支持管(1)は、固定的な磁石バー(4)の周りで往来を繰り返しながら動くことができる
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
磁石バー(4)は、自由空間部(5)内において仮想軸線の周りに多角形支持管(1)に対して任意の角度刻みで旋回できる
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
多角形支持管(1)は、支持管(1)の回転駆動のため並びに磁石バー(4)に対するエネルギー供給と冷却水供給のための通常入手可能なマグネトロン・エンドブロック(8)に接続部材(9)を介して接続されていること
を特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項12】
基板をコーティングするためのスパッタアップ法、スパッタサイド法またはスパッタダウン法を実行するために請求項1から11のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットを使用する方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
自由空間部(5)内に存在する磁石バー(4)と、外面(3)上に存在するターゲット(2)であって、磁石バー(4)とそれに対応するターゲット(2)との間の距離が同じかまたは異なるターゲットとを備えた二つの多角形支持管(1)が、バイポーラ型の配列で並列に隣り合わせに共通の真空チャンバ内に共通のMF電源(10)を備えて配設されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の多連スパッタリングターゲットにおいて、
自由空間部(5)内に存在する磁石バー(4)を備えた多角形支持管(1)と、円筒状マグネトロン(11)またはプレーナマグネトロンとが、バイポーラ型の配列で並列に隣り合わせに共通の真空チャンバ内に共通のMF電源(10)を備えて配設されている
ことを特徴とする多連スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバを通して直線的に又は円軌道上を搬送される基板または静止した基板をコーティングする円筒状マグネトロンを備えたマグネトロン装置のための多連スパッタリングターゲットであって、円筒状マグネトロンは、エンドブロックか又はその他の駆動ユニットに支持され、この円筒状マグネトロン内に磁石バーが存在する多連スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に知られている円筒状マグネトロンは、その内部に位置的に動かない磁石バーが存在し、マグネトロン・エンドブロックに片持ち支持されているか或いはさらに対向支持部に回転可能に支持されており、そのマグネトロン・エンドブロックが、円筒状マグネトロンのための回転駆動部を提供する一方で、マグネトロンのためのエネルギー源と必要な冷却水を提供する。
【0003】
特許文献1より、回転可能な円筒状マグネトロンを備えたそのような類のマグネトロン装置が明らかとなっている。エンドブロックは、円筒状ターゲットの回転駆動部を内蔵している一方で、他方では、コーティングされる基板と円筒状マグネトロンとの間にプラズマを点火して維持するための必須のエネルギー供給部を内蔵している。円筒状ターゲットは、支持管と、外側に載置されたターゲット材料とからなる。
【0004】
このような類のマグネトロン装置により、マグネトロンの前を横切るように移動する大面積の基板を真空チャンバ内でコーティングすることができる。とりわけ不便なのは、一回の通過の際に、それぞれ一種類の材料しかスパッタリングすることができず、別の材料をスパッタリングするためには、真空チャンバの真空を破った後、別の円筒状ターゲットを取り付けて真空チャンバを再び真空引きしなければならないという点である。
【0005】
回避策の一つは、複数の円筒状マグネトロンを一つの真空チャンバ内に前後に連続して配置することなのかもしれないが、このことは当然、そうすることでより大きくなるシステムに起因して手間と費用がかなり増えることになると予想される。
【0006】
内部に位置する磁石システムを備えたさらに他の円筒状マグネトロンが、特許文献2からも明らかになっている。この円筒状マグネトロンは、管(チューブ)の形をした(円筒形の)ターゲット支持部と、多数の平らなターゲット板からなる外側のターゲットから主に構成され、多数のターゲット板は、管形のターゲット支持部上に接線方向に載置されていることで、隙間の無い多角形のターゲット表面をなしている。
【0007】
ここで、改良を遂行するのに、つまり、異なる材料を連続して次々にスパッタリングできるようにするのに、市販で入手可能な“ターゲット・レボルバー”が利用できるようになったが、この場合、中心軸線周りに一定の角度おきに複数の完全なマグネトロンが組み込まれ、これらのマグネトロンが、必要な磁場の生成、陽極、必要な冷却並びに電源接続部に起因して比較的大きな組立スペースを必要とし、その手の込んだ構造の帰結として実に高価である。
【0008】
スパッタリング工程を実行できるようにするために、“ターゲット・レボルバー”は、マグネトロンと基板の間にプラズマを点火できるように、コーティングされる基板に所望のマグネトロンが対向して位置するまで、組み込まれたマグネトロンの数に応じて決まった角度刻み(角度ステップ)で回されなければならない。このような“ターゲット・レボルバー”の利点は、同じ装置内で異なる材料をスパッタで飛ばすことができる点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008048785号公報
【特許文献2】国際公開第2003/081634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、真空チャンバを通して直線的に又は円軌道上を搬送される基板を、僅かな労力ながらも、選択可能な多数の材料で連続的にマグネトロン・スパッタリングによりコーティングできるように用いられる多連スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、冒頭に述べた類の多連スパッタリングターゲットにおいて、角のある断面形状を有した少なくとも一つの多角形支持管が設けられ、当該多角形支持管が、ターゲットを受容するための長手方向に延在する複数の外面を備え、少なくとも一つの多角形支持管内に、自由空間部が存在するようにし、当該自由空間部が、この多角形支持管を貫いて長手方向に延び、当該自由空間部内には、多角形支持管の回転により選択可能なターゲットの正面(前面)(vor)の作用位置において多角形支持管の外側にプラズマ雲を形成するための磁石バーが存在し、移動する又は静止した基板がプラズマ雲の正面の所定の距離に存在することで達成される。
【0012】
本発明の発展形態では、支持管の外面のそれぞれに、同じかまたは異なる材料からなるターゲットが存在する。後者によれば、真空を破ることなく同一の基板上に或いは一度に装填した複数の同様の基板上に異なる材料を連続してスパッタリングすることが可能になる。
【0013】
ターゲットは、好ましくは接着によるか或いは他の方法で機械的に外面に固定されている。
【0014】
本発明のさらに他の態様では、多角形支持管は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形または八角形の断面形状を備えることで、相当する数のターゲットを多角形支持管上に収容することができる。
【0015】
最後に、多角形支持管は、磁石バーと、磁石バーの正面(前面)に存在するプラズマ雲との間にターゲットを個別に配置できるように、所定の角度刻みで回転可能である。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、磁石バーは、自由空間部内の上側において、この自由空間部の対称軸線より上に固定的に配置されている。
【0017】
或いは、磁石バーは、自由空間部内の下側において、この自由空間部の対称軸線より下に固定的に配置されているか或いは自由空間部内の側方において、この自由空間部の対称軸線より側方に固定的に配置されているのでもよい。これにより、公知のスパッタリング法、すなわち、スパッタアップ法、スパッタダウン法、スパッタサイド法が、或いは水平または垂直に対して斜めにも、磁石バーの相応の旋回または配設により特に簡単な方法で実現され得る。
【0018】
本発明の特殊な変形例では、上側と下側において各ターゲットの正面に二つのプラズマ雲がそれぞれ形成されるように、自由空間部内には、互いに対向して位置する二つの磁石バーが固定的に配設されている。これにより、スパッタアップ法とスパッタダウン法が、同じか或いは異なる基板の上に同時に適用できる。
【0019】
ターゲットをより有効に活用できるようにするために、多角形支持管は、固定的な磁石バーの周りで往来を繰り返しながら動くことができる。
【0020】
本発明のさらなる発展態様では、自由空間部内に存在する磁石バーは、多角形支持管に対して所定の角度刻みで旋回でき、その結果、様々なスパッタリング法に必要な磁石バーの配置を特に容易に調整できることになる。
【0021】
最後に、多角形支持管は、支持管の回転駆動のため並びに磁石バーに対するエネルギー供給と冷却水供給のための通常(市販で)入手可能なマグネトロン・エンドブロックに接続部材を介して接続されている。
【0022】
本発明による多連スパッタリングターゲットは、スパッタアップ法、スパッタサイド法またはスパッタダウン法を実行するため或いは水平または垂直に対して斜めの方向に取り付けられた基板をコーティングするために等しく使用することができる。
【0023】
本発明の特殊な形態では、二つの多角形支持管が、それぞれ、それらの自由空間部内に存在する磁石バーと、それらの外面に存在するターゲットであって、磁石バーとそれに対応するターゲットとの間の距離が同じか又は異なるターゲットとを備え、バイポーラ型の配列で並列に隣り合わせに共通の真空チャンバ内に共通のMF電源を備えて配設されている。異なる材料からなるターゲットを簡易に配置することにより、つまり、所望のターゲットがそれぞれの磁石バーの上に配置されるまで二つの多角形支持管を所定の角度刻みで回転することにより、ほぼあらゆる材料の組み合わせを作り出すことができる。
【0024】
本発明のさらなる発展態様では、内部の自由空間部内に存在する磁石バーを備えた多角形支持管と、慣用的な円筒状マグネトロンまたはプレーナマグネトロンとが、バイポーラ型の配列で並列に隣り合わせに共通の真空チャンバに共通のMF電源を備えて配設されている。ここでも、基板上に多数の材料の組み合わせを作り出すことができるが、そのときに、本来プレーナマグネトロンにしか利用できない材料も含めることができる。
【0025】
所定の角度刻みで回転可能な、多連スパッタリングターゲットの多角形支持管を用いると、大幅に少ない手間で、複数の異なる或いは同じ材料を連続して次々にスパッタリングして一つの基板上に堆積させることができる。
【0026】
多連スパッタリングには、この目的のため、本発明により、細長く延びた慣用的な円筒状ターゲットの代わりに、角のある断面形状を有した細長く延びた多角形の支持管が使用され、これらの支持管では、長手方向に延びた外面上に、異なる或いは同じ材料からなるターゲットがスパッタリング源として載置されている。
【0027】
スパッタリング中に基板上に形成されるコーティングのための材料源としての役割を担うターゲットの、好ましくは同じ大きさの支持管の外面における固定は、慣用的なクランプレール(Klemmschiene)(爪(Pratzen))または接着により行なうことができる。
【0028】
支持管は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、或いはさらに八角形など、多数の断面を備えることができ、相当する数の異なる材料からなるターゲットで覆うことができる。三角形または四角形の断面形状と三つまたは四つの異なるターゲットを備え且つ面取りされたエッジを備えた支持管などの特殊な形も可能である。
【発明の効果】
【0029】
発明の長所:
-ターゲット交換のため或いはマグネトロン交換のために途中で真空チャンバを破らなくても、一つのコーティング工程において異なる又は同じターゲット材料を使用することが可能である。
-同じターゲット材料による多重コーティングも可能であり、これが、付着層(Anlage)の耐用年数を高めるのに有利である。
-異なる材料からなる二つ、三つ、さらに最大で八つのターゲット2を多角形支持管1上で使用することが可能である。
-必要スペースを極端に減らせる。
-ターゲット材料は、所定角度刻みで多角形支持管1を回転させ続けて行くことで“交換”することができる。
-標準の磁石バーを備えた円筒状マグネトロンの標準の磁場を用いることができる。
-円筒状マグネトロンの場合と同様の冷却しか必要としない。
-標準の円筒状ターゲット・エンドブロックを多角形支持管用の駆動部および受容部として用いることができる。
-エネルギー供給部を一つしか必要としない。
-ターゲットは、既存の標準のエンドブロックと、典型的な円筒状陰極スパッタソースの標準の磁石バーとともに用いることができる。
-バイポーラ型の配列を使用する場合、多様な材料混合の可能性がでてくる。
-例えば、同じターゲットを取り付け、スパッタ済みのターゲットを常に回し続けるようにする場合、装置の長寿命を達成することができる。
-異なる材料によるコーティングに対する高い柔軟性が可能になる。
-本発明による多連ターゲットは、設置済みの円筒状マグネトロンシステムにも投入することができるので、顧客にとって投資コストが比較的低い。
-本発明による多連スパッタリングターゲットを、慣用的な円筒状またはプレーナ型のターゲットとともに、共通のMF電源を備えた並列に隣り合わせで存在する配列で使用することが問題なく可能であり、これがシステムの柔軟性を高めるのにつながる。
【0030】
以下に、実施例に沿って本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】断面形状で多角形の支持管からなる多連スパッタリングターゲットであって、所定の角度刻みで回転可能な3連ターゲットシステムを外面に備えるとともにターゲットが三つある支持管の内側に磁石バーを備える多連スパッタリングターゲットと、それぞれ上側に存在するターゲットの正面の略示されたプラズマ雲と、そのプラズマ雲の上を通過する基板とを示す図である。
図2a図1と同様の多角形支持管を備えているが、四つのターゲットを備えた4連ターゲットシステムとしての多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図2b】4連ターゲットシステムを備えた図1と同様の多角形支持管を備えているが、面取りされた角部を備えた多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図3】5連ターゲットシステムを備えた図1と同様の多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図4】6連ターゲットシステムを備えた図1と同様の多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図5】8連ターゲットシステムを備えた図1と同様の多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図6】エンドブロックに取り付けられた多連スパッタリングターゲットの多角形支持管の概略的な側面図である。
図7】内部において磁石バーが自由空間部の下側領域に配置されている多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図8】内部において磁石バーが自由空間部内の側方に配置されている多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図9】内部において二つの磁石バーが図のとおりそれぞれ自由空間部内の上側と下側に配置されていることで、上側と下側において、対応するターゲットの正面に二つのプラズマ雲がそれぞれ形成されて、そこをそれぞれ基板が通過できるようになっている多角形支持管を備えている多連スパッタリングターゲットを示す図である。
図10】基板上に同じ材料を堆積させるための、共通のMF電源を備えた二つの多連スパッタリングターゲットの並列配置を示す図である。
図11】基板上に異なる材料を堆積させるための、共通のMF電源を備えた二つの多連スパッタリングターゲットの並列配置を示す図である。
図12】基板上に異なる材料を堆積させるための、共通のMF電源を備えた多連スパッタリングターゲットと円筒状マグネトロンの並列配置を示す図である。
図13】磁石バーとターゲットの間の距離が異なる、対称的な構成と非対称的な構成の二つの4連スパッタリングターゲットの並列配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明において特別な点は、多角形支持管1の形態の多連スパッタリングターゲットが、ターゲット2を受容するための複数の外面3を備えてなり、その多角形支持管1の内側には、自由空間部5内に磁石バー4が存在していることである。自由空間部5は、支持管1の中心を通って長手方向に延び、好ましくは円形断面を有している。
【0033】
当然のことながら、多角形支持管1を備えた多連スパッタリングターゲットの様々な変形例を用いた後述のコーティングは、不図示の真空チャンバ内の真空下で作製されなければならない。
【0034】
図1には、三つのターゲット2を持つ所定の角度刻みで回転可能な3連ターゲットシステムを備えた多連スパッタリングターゲットの多角形支持管1が示されており、それらターゲットは、断面形状が三角形の支持管1の各外面3上に個別に固定されるが、ターゲット2は、同じ材料からなる或いは好ましくは異なる材料からなるのでもよい。
【0035】
支持管1の内側には、位置的に動かない(固定的な)磁石バー4が存在し、これが自由空間部5内の上側、すなわち、自由空間部の対称軸線より上に配置されている。磁石バー4により、それぞれ上側において支持管1上に存在するターゲット2の正面に二つのプラズマ雲6が生成され、それらのプラズマ雲を利用して、プラズマ雲6の上に存在する或いは通過する基板7が、ターゲット2からスパッタで飛ばされた材料により、スパッタアップ法でコーティングされる。
【0036】
スパッタアップ法は、よく知られているように、主に上方に加速された、スパッタで飛ばされた粒子が基板7上に堆積するという長所を有する。
【0037】
図2aは、長手方向に延びる四つの外面3を備え、それらの上にそれぞれターゲット2が固定されている断面形状が四角形の多角形支持管1を示す。自由空間部5内には、自由空間部の対称軸線より上に、磁石バー4が存在する。
【0038】
図2bには、図1,2aと似た構成を備えているものの多角形支持管1の角部3.1が面取りされている長手方向に延びる四つの外面3を備えた多角形支持管1を備えた多連スパッタリングターゲットが示されている。
【0039】
面取りされたこの種の角部は、基本的には、図1による3連ターゲットシステムにおいても実現可能である。
【0040】
図3は、図1のような構成を備えているが、最大五つのターゲット2を受容するための、長手方向に延びる五つの支持管1の外面3を持つ5連ターゲットシステムを備えた多角形支持管1を備えた多連スパッタリングターゲットを示す。
【0041】
さらに、図4は、図1のような構成を備えているが、全部で六つのターゲット2を受容するための、長手方向に延びる六つの外面3を備えた6連ターゲットシステムを備えた多角形支持管1を備えた多連スパッタリングターゲットを示す。
【0042】
図5は、図1のような構成を備えているが、それぞれが一つのターゲット2を受容する長手方向に延びる八つの外面3を備えた8連ターゲットシステムを備えた多角形支持管1を備えた多連スパッタリングターゲットを示す。
【0043】
上述の変形例の大半において、磁石バー4は、自由空間部5内において自由空間部の対称軸線より上に存在し、その自由空間部5は、支持管1を通って中心に延在している。
【0044】
この配置を取らないとすれば、それは、多角形支持管1が特に大きな直径を有して、多角形支持管1内の磁石バー4と支持管1の外面3上のターゲット2との間の距離が大きくなり過ぎてプラズマ雲7の強度が弱められるかもしれないのを防ぐようにする場合に有意義となり得る。
この場合、前述の距離は、縮められることになろう。
【0045】
支持管1の外面3上に固定されたターゲット2の異なるハッチングは、それぞれ異なる材料を象徴するものとなっている。スパッタリングされる材料を選択するために、支持管1は、上側で磁石バー4の上方に所望のターゲット2が配置されるまで、同じ角度刻みで回転されさえすればよい。そうすれば、必要なプラズマ雲6は、磁石バー4が作用して、上側に存在するターゲット2の正面に発生する。
【0046】
断面形状が異なる多角形支持管1は、市販のマグネトロン・エンドブロック8により接続部材9を介して動作させることができ、支持管1の内部では、慣用的な円筒状ターゲットの位置的に動かない磁石バー4を使用することができる。図6は、ターゲット2が外面3上に存在する六角形の支持管1の側面図を示す。
【0047】
とりわけ、長い支持管1は、たわみを最小限に抑えるために、その自由端で不図示の対向支持部に支持させることができる。
【0048】
スパッタリングに必要なスパッタリングプラズマは、磁石4による磁場に起因して、ターゲット表面の近くに生成される。こうして、ターゲット2を載せた支持管1を回転させることで、連続して次々に、磁石バー3に対向する側に、異なる材料か或いは同じ材料を-支持管1の外面3上にターゲット2がどのように配分されているかに応じて-スパッタで飛ばすことができ、通過する基板7にそれに応じたコーティングを施すことができる。さらに、多角形支持管1または磁石バー4を繰返し往来させることで、ターゲット侵食(エロージョン)領域の拡張を成し得ることができ、これにより、ターゲット2がより良好に使用されることになる。
【0049】
図1から図5の図面には、スパッタアップ法で動作する本発明によるスパッタリング装置が示されている。これは、ターゲット2からスパッタで飛ばされた粒子が、プラズマ雲6の上方を移動するコーティング対象の基板7に向かって上方に移動することを意味する。
【0050】
スパッタダウン法などの他のスパッタリング法は、上述の多角形支持管1と組み合わせた多連スパッタリングターゲットを用いて、磁石バー4が自由空間部5の対称軸線より下に存在するように、磁石バー4を仮想の旋回軸線周りに180°下方に旋回することで簡単に実施することができる。或いは、下側において支持管1上に存在するターゲット2の正面にプラズマ雲6が形成されるように、磁石バー4は、自由空間部5内で下方に向けて配置することができる。
【0051】
ターゲット2からスパッタで飛ばされた粒子は、この場合、プラズマ雲6の下を通過するコーティング対象の基板7上に堆積される。(図7
【0052】
スパッタサイド法、つまり、側方における基板7上での堆積が実行されなければならないときには、磁石バー4が90°ほど側方の位置にもたらされることで、側方に配置されるターゲット2の正面にプラズマ雲6が形成されるようにすればよいであろう。コーティングされる基板7は、この場合、側方においてプラズマ雲6の正面で垂直に配置することができるか或いは通過させることができることになろう。(図8
【0053】
本発明の特別な形態が図9に示されている。ここで説明する多角形支持管1は、中心の自由空間部5を備えてなり、その中に二つの磁石バー4,4.1がそれぞれ対称軸線より上と下に配設されている。このようにして、上側と下側において、対応するターゲット2の正面に二つのプラズマ雲6,6.1をそれぞれ形成することができ、そこにそれぞれ基板7,7.1を通過させるか或るいは配置することができる。本発明のこの形態の前提条件は、多角形支持管1が偶数の外面3を有することである。
【0054】
図10から図11には、共通の真空チャンバにおいてバイポーラプロセスを実行できるようにするための複数の多連スパッタリングターゲットを用いた或いは従来の円筒状マグネトロンを組み合わせて用いた特殊な実施形態が示されている。これにより、スパッタリングシステムの柔軟性が大幅に向上する。
【0055】
共通のMF電源10を備えた本発明による二つの多連スパッタリングターゲットの並列配置であって基板7上に同じ材料を堆積するものが図10に示されている。
【0056】
図11は、共通のMF電源を備えた二つの多連スパッタリングターゲットの基本的に同じ並列配置であって、基板上に異なる材料を堆積するものを示し、ここでは、図で右側の多角形支持管1が、別のターゲット2を上向きにしてコーティング位置まで回転させられている。これにより、基板7上に異なる材料の組み合わせを堆積させることが可能になる。
【0057】
図12は、共通のMF電源10を備えた本発明による多連スパッタリングターゲットと慣用的な円筒状マグネトロン11の並列配置を同時に動作させて基板7上に異なる材料を堆積させる特殊な変形例を示す。円筒状マグネトロン11は、中心の自由空間部5を有し、その中に磁石バー4が存在し、円筒状ターゲット12が自由空間部を囲んでいる。
【0058】
最後に、図13は、それぞれが多角形支持管1と自由空間部5内に位置する磁石バー4とを有して共通のMF電源を備えた二つの多連スパッタリングターゲットの並列配置であって、基板7上に同じ材料を堆積するものを示し、図で左側の多連スパッタリングターゲットは対称的に構成され、図で右側の多連スパッタリングターゲットは非対称的に構成されている。これにより、磁石バー4とターゲット2との間の距離を異なるものにすることができる。こうして、異なる強さの磁場でスパッタリングを行なうことができる。
【0059】
本発明による複数の多連スパッタリングターゲットを慣用的なプレーナマグネトロン(不図示)と組み合わせた、共通のMF電源を備えた共通の真空チャンバ内のものも問題なく可能である。この組み合わせを用いても、通過する基板上に材料を組み合わせて堆積することができる。
【0060】
四つの外面3と面取りされた角部3.1を備えた図7から図9に示された多角形支持管に代えて、多角形支持管1は、他の図面に示された断面形状を備えることもできる。
【0061】
多連スパッタリングターゲットのこの形態の長所により、スパッタアップ法とスパッタダウン法を同時に実施することが可能になる。
【0062】
磁石バー4としては、標準的な磁石バーまたは他のあらゆる適切な磁石バーを自由空間部5において使用することができる。
【0063】
支持ベアリング部(Stuetzlager)における動作とマグネトロン・エンドブロック8上での動作に必要な円形の複数の接続部材9は、溶接により支持管1に取り付けることができるか、或いは、アダプタとしての相応の接続部材9が使用される(図6)。
【0064】
多角形支持管1上の異なるターゲット2を正しい位置まで、つまり、コーティングされる基板7,7.1と平行になるまで移動させるために、正確な角度で回転移動させることが前提にはなるものの、市販のマグネトロン・エンドブロック7に代えて、位置調整モータを備えた他の適切な収容装置も使用することができる。
【0065】
固定的な磁石バーの周りに、多連ターゲットの多角形支持管1を繰返し往来させることも考えられ得る。
【符号の説明】
【0066】
1 支持管
2 ターゲット
3 外面
3.1 面取りされた角部
4 磁石バー
4.1 磁石バー
5 自由空間部
6 プラズマ雲
6.1 プラズマ雲
7 基板
7.1 基板
8 マグネトロン・エンドブロック
9 接続部材
10 MF電源
11 円筒状マグネトロン
12 円筒状ターゲット
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】