(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024313
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】背負式バッテリ溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 37/00 20060101AFI20230209BHJP
H01M 50/256 20210101ALI20230209BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230209BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20230209BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20230209BHJP
【FI】
B23K37/00 Z
H01M50/256
H01M10/613
H01M10/6551
H01M10/6563
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116105
(22)【出願日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021128070
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109819
【氏名又は名称】デンヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100963
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 陽男
(72)【発明者】
【氏名】大滝 裕太
(72)【発明者】
【氏名】丹波谷 篤史
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA01
5H040AA28
5H040AS22
5H040AY03
5H040GG23
(57)【要約】
【課題】 狭い作業現場でも溶接機の移動及び溶接作業が容易に行えるように、バッテリ溶接機をコンパクトにまとめて背負式にし、かつ、バッテリと制御回路基板の冷却が効率よく行えるようにする。
【解決手段】 ショルダーストラップ付きの背板1bを有し、制御回路基板を内蔵するボックス1の一方の側面部に電源用のバッテリを着脱自在に保持するバッテリ保持部2を複数設け、他方の側面部に溶接出力端子3を設ける。また、前記一方の側面部の、各バッテリ保持部2のバッテリと対向する位置に吸気口5を、バッテリ保持部2に隣接する位置に複数の吸気口4-1,4-2を設け、他方の側面部に複数の排気口6-1,6-2を設け、それらに電動ファンを設ける。そして、前記吸気口5,4-1,4-2から吸い込まれる空気によりバッテリを冷却しながら、ボックス1内から排気口6-1,6-2に流れる冷却空気により前記制御回路基板を冷却する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショルダーストラップ付きの背板を有し、制御回路基板を内蔵するボックスの一方の側面部に電源用のバッテリを着脱自在に保持するバッテリ保持部を複数設け、他方の側面部に溶接出力端子を設け、前記各バッテリ保持部の前記バッテリと対向する位置と、前記一方の側面部の、前記バッテリ保持部に隣接する位置とに吸気口を設け、前記他方の側面部に排気口を設け、前記各吸気口から前記排気口に向けて空気を流す電動ファンを設け、前記各吸気口から前記排気口に流れる冷却空気により前記制御回路基板に取り付けられた発熱部品を冷却するようにしたことを特徴とする背負式バッテリ溶接機。
【請求項2】
前記バッテリ保持部の内側に、該バッテリ保持部の前記バッテリと対向する位置に設けられた前記吸気口から外部の空気を吸い込んで、前記制御回路基板に向けて冷却空気を送る第1の電動ファンを設け、前記制御回路基板を冷却した後の冷却空気を、前記第1の電動ファンがある側とは反対側に送り、前記他方の側面部に設けた前記排気口から、前記冷却空気の一部を排出させる第2の電動ファンを設け、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に排気口を設け、該排気口の内側に、前記ボックス内の残りの冷却空気を外部に排出させる第3の電動ファンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項3】
前記他方の側面部に複数の排気口を設け、それぞれの排気口にボックス内の空気を排出する電動ファンを設け、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に吸気口を設け、該吸気口の内側に、外部の空気を吸い込むための電動ファンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項4】
前記バッテリ保持部を、前記一方の側面から突出しないように配置したことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項5】
前記制御回路基板の発熱部品を冷却フィンに取り付け、該冷却フィンに前記冷却空気を当てるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項6】
前記バッテリ保持部への前記バッテリの着脱方向を前記背板とは反対の方向にしたことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項7】
前記バッテリ保持部への前記バッテリの着脱方向側にあるボックス角部に、外側に向かって開くように傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項8】
当該溶接機の電源スイッチを、前記他方の側面部の表面から突出しないように設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載の背負式バッテリ溶接機。
【請求項9】
前記バッテリ保持部に装着後のバッテリの周囲に、前記一方の側面部からの高さが、前記バッテリより高い保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の背負式バッテリ溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が背中に背負って溶接作業を行うことができるようにした背負式バッテリ溶接機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源がない作業現場で、屋内作業場やトンネル内等、換気が不十分でエンジン溶接機が使用できない作業現場では、バッテリを備えたバッテリ溶接機が用いられるが、そのようなバッテリ溶接機は、狭い作業現場でも取り扱いが容易になるように、小型・軽量化が求められている。例えば、特許文献1に示されるバッテリ溶接機では、ケースを上段ケースと下段ケースとに分けて、それぞれの内部にバッテリを配設し、大溶接電流が必要な場合は、上下のケースを一体化させて作業を行う。また、小溶接電流で済む場合は、上段ケースを下段ケースから分離させて、上段ケースのみを作業現場まで移動させて作業を行えるようにしている。
【0003】
このようにすれば、溶接機を頻繁に移動させて小溶接電流を使用する溶接作業では、上段ケースのみを移動させればよいので、移動重量が小さくなって移動が容易になり、溶接の作業性が向上する。
【0004】
一方、移動が容易な電動工具等の携帯用電源として、内部にバッテリを収納した背負式電源が特許文献2により提案されている。このような携帯用電源を用いれば、大容量のバッテリを内蔵して重量が大きくなった電源でも運搬が容易になって作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3001105号公報
【特許文献2】特開2014-38728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されるバッテリ溶接機は、小溶接電流での溶接作業を行う際には、上段ケースのみを移動させればよいので、下段ケースと上段ケースとを組み合わせて用いる場合より移動重量が軽くはなるが、上段ケースの重量も簡単に持ち運べるほどではなく、作業性の向上が十分とは言えないという問題点があった。また、上記特許文献2に示されるもののように、バッテリ溶接機を背負式にすることも考えられるが、バッテリ溶接機には、大きな容量のバッテリと溶接電流を制御するための制御回路が必須であり、それらは相当な発熱を伴うため、バッテリ溶接機をコンパクトにまとめて背負式にした場合に、それらの冷却を効率よく行うのが容易ではないという問題点があった。
【0007】
本発明は、そのような問題点に鑑み、狭い作業現場でも溶接機の移動及び溶接作業が容易に行えるように、バッテリ溶接機をコンパクトにまとめて背負式にし、かつ、バッテリと制御回路基板の冷却が効率よく行えるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、ショルダーストラップ付きの背板を有し、制御回路基板を内蔵するボックスの一方の側面部に電源用のバッテリを着脱自在に保持するバッテリ保持部を複数設け、他方の側面部に溶接出力端子を設け、前記各バッテリ保持部の前記バッテリと対向する位置と、前記一方の側面部の、前記バッテリ保
持部に隣接する位置とに吸気口を設け、前記他方の側面部に排気口を設け、前記各吸気口から前記排気口に向けて空気を流す電動ファンを設け、前記各吸気口から前記排気口に流れる冷却空気により前記制御回路基板に取り付けられた発熱部品を冷却するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記バッテリ保持部の内側に、該バッテリ保持部の前記バッテリと対向する位置に設けられた前記吸気口から外部の空気を吸い込んで、前記制御回路基板に向けて冷却空気を送る第1の電動ファンを設け、前記制御回路基板を冷却した後の冷却空気を、前記第1の電動ファンがある側とは反対側に送り、前記他方の側面部に設けた前記排気口から、前記冷却空気の一部を排出させる第2の電動ファンを設け、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に排気口を設け、該排気口の内側に、前記ボックス内の残りの冷却空気を外部に排出させる第3の電動ファンを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記他方の側面部に複数の排気口を設け、それぞれの排気口にボックス内の空気を排出する電動ファンを設け、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に吸気口を設け、該吸気口の内側に、外部の空気を吸い込むための電動ファンを設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1,2又は3に係る発明において、前記バッテリ保持部を、前記一方の側面から突出しないように配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項1,2,3又は4に係る発明において、前記制御回路基板の発熱部品を冷却フィンに取り付け、該冷却フィンに前記冷却空気を当てるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項1,2,3,4又は5に係る発明において、前記バッテリ保持部への前記バッテリの着脱方向を前記背板とは反対の方向にしたことを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項7に係る発明は、請求項1,2,3,4,5又は6に係る発明において、前記バッテリ保持部への前記バッテリの着脱方向側にあるボックス角部に、外側に向かって開くように傾斜部を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項8に係る発明は、請求項1,2,3,4,5,6又は7に係る発明において、当該溶接機の電源スイッチを、前記他方の側面部の表面から突出しないように設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項9に係る発明は、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に係る発明において、前記バッテリ保持部に装着後のバッテリの周囲に、前記一方の側面部からの高さが、前記バッテリより高い保護部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に係る発明においては、制御回路基板を内蔵するボックスの一方の側面部に電源用のバッテリを着脱自在に保持するバッテリ保持部を複数設けたので、溶接作業中にいづれかのバッテリが充電切れになっても、そのバッテリを取り替えるだけで、作業の継続が可能になる。また、前記各バッテリ保持部のバッテリと対向する位置と、前記一方の側面部の、前記バッテリ保持部に隣接する位置とに吸気口を設け、前記他方の側面部に排気口を設け、前記各吸気口から前記排気口に向けて空気を流す電動ファンを設け
、前記各吸気口から前記排気口に流れる冷却空気により前記制御回路基板に取り付けられた発熱部品を冷却するようにしたので、各吸気口から吸い込む空気でバッテリを冷却しながら、その空気で制御回路基板の冷却を行え、効率的な冷却が可能になる。
【0018】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1に係る背負式バッテリ溶接機において、前記バッテリ保持部の内側に、該バッテリ保持部の前記バッテリと対向する位置に設けられた前記吸気口から外部の空気を吸い込んで、前記制御回路基板に向けて冷却空気を送る第1の電動ファンを設け、前記制御回路基板を冷却した後の冷却空気を、前記第1の電動ファンがある側とは反対側に送り、前記他方の側面部に設けた前記排気口から、前記冷却空気の一部を排出させる第2の電動ファンを設け、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に排気口を設け、該排気口の内側に、前記ボックス内の残りの冷却空気を外部に排出させる第3の電動ファンを設けたので、制御回路基板を冷却して高温になった空気は、素早くボックス内から排出され、残りの冷却空気は、作業者に当たらない方向に排出できる。
【0019】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1に係る背負式バッテリ溶接機において、前記他方の側面部に複数の排気口を設け、それぞれの排気口にボックス内の空気を排出する電動ファンを設け、さらに、前記ボックスの、前記背板と対向する側の下部に吸気口を設け、該吸気口の内側に、外部の空気を吸い込むための電動ファンを設けたので、冷却空気をボックスの下部から上部に向けて一方向に流すことができ、冷却空気を滞留させることなくスムーズに流すことができる。
【0020】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1,2又は3に係る背負式バッテリ溶接機において、前記バッテリ保持部を、前記一方の側面から突出しないように配置したので、バッテリ未装着の状態で、ボックスに何かが衝突してもバッテリ保持部が破損しなくなる。
【0021】
また、請求項5に係る発明においては、請求項1,2,3又は4に係る背負式バッテリ溶接機において、前記制御回路基板の発熱部品を冷却フィンに取り付け、該冷却フィンに前記冷却空気を当てるようにしたので、発熱部品を効率よく冷却できる。
【0022】
また、請求項6に係る発明においては、請求項1,2,3,4又は5に係る背負式バッテリ溶接機において、前記バッテリ保持部へのバッテリの着脱方向を前記背板とは反対の方向にしたので、作業者が溶接機を背負ったままの状態でも、他の者がバッテリを作業者がいない方向に引き出して何の支障もなく交換がすることができる。
【0023】
また、請求項7に係る発明においては、請求項1,2,3,4,5又は6に係る背負式バッテリ溶接機において、前記バッテリ保持部への前記バッテリの着脱方向側にあるボックス角部に、外側に向かって開くように傾斜部を設けたので、バッテリをバッテリ保持部から取り外す際に、手が奥まで入り、操作がしやすくなる。
【0024】
また、請求項8に係る発明においては、請求項1,2,3,4,5,6又は7に係る背負式バッテリ溶接機において、当該溶接機の電源スイッチを、前記他方の側面部の表面から突出しないように設けたので、ボックスを床において作業する際に、ボックスの転倒等があっても、誤って電源スイッチが押されることがなくなる。
【0025】
また、請求項9に係る発明においては、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に係る背負式バッテリ溶接機において、前記バッテリ保持部に装着後のバッテリの周囲に、前記一方の側面部からの高さが、前記バッテリより高い保護部材を設けたので、本背負式バッテリ溶接機で溶接作業を行う際、誤ってバッテリ部分に何かを当ててしまったりしても
、バッテリを衝撃から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施例に係る背負式バッテリ溶接機のボックスを示す図である。
【
図2】作業者が背負式バッテリ溶接機を背負った状態を示す図である。
【
図4】第1実施例の背板のボックスへの取付方法を示す図である。
【
図5】第1実施例のバッテリ保持部の取付構造を示す図である。
【
図6】第1実施例のボックスの内部を示す図である。
【
図7】第1実施例のボックスにバッテリを装着した状態を示す図である。
【
図8】第1実施例のボックス内における制御回路基板を通る冷却風の流れを示す図である。
【
図9】第1実施例のボックス内全体の冷却風の流れを示す図である。
【
図10】第1実施例のバッテリ保護部材を示す図である。
【
図11】第2実施例の背負式バッテリ溶接機を示す図である。
【
図12】第3実施例に係る背負式バッテリ溶接機の斜視図である。
【
図13】第3実施例のバッテリの着脱を説明するための図である。
【
図15】第3実施例のバッテリ保持部の取付構造を示す図である。
【
図16】第3実施例のボックスの内部を示す図である。
【
図17】第3実施例のボックス内全体の冷却風の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0028】
図1は、本発明の一実施例に係る背負式バッテリ溶接機のボックスを示す図である。
図1において、符号1はボックス、2はバッテリ保持部、3は溶接出力端子、4は側面吸気口、5はバッテリ保持部吸気口、6は側面排気口、7は前面排気口、8はクランパ、9は電源スイッチ、10は表示板、11は電流調整ダイヤル、12は表示ランプ、13は取手、14はゴム脚である。
【0029】
ボックス1は、軽量化のため樹脂製とし、安全性を考慮して角部に丸みを持たせている。そして、前面板1aは、中央部が手前側に凸になるような円弧状に形成されており、下端部中央に前面排気口7が設けられている。その前面板1aと対向する背板1bには、ボックス1を
図2に示すように背負えるようにするために、ショルダーストラップ15と腰ベルト16がリベット止めにより取り付けられる。
【0030】
そして、ボックス1の左側面板1cには、本溶接機の電源となるバッテリを装着するためのバッテリ保持部2が縦方向に3個設けられ、それらの横部には縦方向に、冷却空気をボックス1内に取り込むための側面吸気口4が設けられている。また、各バッテリ保持部2にも冷却空気を取り込むためのバッテリ保持部吸気口5が設けられている。
【0031】
ボックス1の右側面板1dには、下部に溶接出力端子3,3、ボックス1内から冷却空気を排出するための側面排気口6、移動時等にじゃまにならないように、溶接ケーブル(図示せず)を束ねて保持するのに用いられるクランパ8が設けられており、さらに、操作部として、溶接出力をオンオフさせる押ボタン式の電源スイッチ9、表示板10、電流調整ダイヤル11、及びLEDランプ12が設けられている。なお、電源スイッチ9は、ボックス1を床において作業する際に、ボックス1の転倒等により、誤って押されることがないように、右側面板1dの中に埋め込まれた形で、側面から突出しないように設ける。
また、天板1eには、溶接機を手でも持ち運べるように取手13が設けられており、底板1fの四隅には、ゴム脚14,14,14,14が設けられている。
【0032】
図3は、ボックスの斜視図である。
図3において、符号6~8は、
図1のものに対応しており、1gは、バッテリ保持部2を取り付けるためのバッテリ保持部取付開口、1hは、その固定用ネジを通すためのネジ孔、1iは、溶接出力端子3,3を取り付けるための溶接出力端子取付孔で、1jは、電源スイッチ9を取り付けるための電源スイッチ取付孔である。そして、表示板10、電流調整ダイヤル11、LEDランプ12,12は、基板に一体的に取り付けられるが、それらが取り付けられた基板は、右側板1dの内側に取り付けられ、表示板10は、表示板取付孔1kから、電流調整ダイヤル11は、電流調整ダイヤル取付孔1lから、LEDランプ12,12は、LEDランプ取付孔1m,1mを通して外部に露出される。また、1nは、取手13を取り付けるための取手取付ネジ孔である。
【0033】
1oは、背板挿入溝であるが、ここで、ボックス1への背板1bの取付方法を説明する。背板1bは、
図4に示すように、ボックス1へ下側から挿入して取り付けるが、その際、背板1bの両側縁部を背板挿入溝1oに差し込んでスライドさせ、背板1b下端部の受部1sがボックス1の当接部1pに当たるまで挿入する。そして、ビス孔1q,1qから皿タッピングネジをねじ込み、さらに、背板1b下端部から皿タッピングネジを通して、ビス受部1rにねじ込んで、背板1bを固定する。このようにすると、背板1bに取り付けたショルダーストラップ15と腰ベルト16でボックス1を背負ったとき、ボックス1の荷重が背板1bの受部1sでも受け止められるようになって、安定的に保持できる。なお、ボックス1の内面には、高強度を保持しながら軽量化を図るためハニカム構造のリブ1tを設けている。
【0034】
図5は、バッテリ保持部の取付構造を示す図である。
図5において、符号5は、
図1のものに対応し、符号1c、1g、1hは、
図3のものに対応している。バッテリ保持部2のハウジングは、第1コネクタハウジング2aと第2コネクタハウジング2bとよりなる分割型とし、それぞれにバッテリ保持部吸気口5を設ける。そして、第1コネクタハウジング2aと第2コネクタハウジング2bとでコネクタ2cを挟み込み、両者をネジ(図示せず)で固定する。なお。2dは、ハウジングを左側面板1cに固定するためのネジを通すネジ孔である。また、コネクタ2cには、このバッテリ保持部2に装着するバッテリの電極に合うように電極が配置されるが、ここでは具体的な電極配置の図示は省略している。
【0035】
2eはファンブラケット、2jは吸気ファンであるが、ファンブラケット2eと吸気ファン2jのネジ孔2h,2kにファン固定ネジ2iを通して、ファンブラケット2eに吸気ファン2jを取り付け、それを、第1コネクタハウジング2aと第2コネクタハウジング2bと重ね合わせる。そして、ボックス1の左側面板1cに形成されているバッテリ保持部取付開口1gに、内側から、第1コネクタハウジング2aと第2コネクタハウジング2bとを嵌め込んで、ボックス1の外側から、ネジ孔1h,2d,2gに皿小ネジでファンブラケット2eと共締めする。なお、ファンブラケット2eに設けている配線用切欠2fは、バッテリ保持部2のコネクタ2cに接続されたコードを通すためのものである。
【0036】
図6は、ボックスの内部を示す図である。符号1~14は、
図1のものに対応しており、17は排気ファン、18は制御回路基板、19はリアクタである。ボックス1の内部には、溶接電流を制御するための回路部品を配設した制御回路基板18が設けられているが、回路部品は発熱して高温になるので、側面吸気口4とバッテリ保持部吸気口5から取り込まれた冷却空気により冷却される。特に、回路部品の内、発熱部品は、制御回路基板18の内側に配置する冷却フィンに取り付けて、効率的に冷却を行うようにしている。
【0037】
図7は、ボックスにバッテリを装着した状態を示す図である。符号1~18は、
図6のものに対応しており、20はバッテリ、21はバッテリ吸気口である。バッテリ20,20,20は、前面側からスライドさせるようにして各バッテリ保持部2,2,2に装着する。そのバッテリ20には、端面部にバッテリ吸気口21が設けられていて、バッテリ保持部2に設けられているバッテリ保持部吸気口5に対向する位置に排気口(図示せず)が設けられている。そして、バッテリ吸気口21から空気が取り入れられ、バッテリ内部を冷却してバッテリ本体の排気口(図示せず)から排出される。
【0038】
図8は、ボックス内における制御回路基板を通る冷却風の流れを示す図であり、
図9は、ボックス内全体の冷却風の流れを示す図である。符号は、
図1,
図6,
図7のものに対応しており、22は冷却フィン、23はフィン冷却ファンである。冷却風の流れは一点鎖線で示している。吸気ファン2jにより、バッテリ20のバッテリ吸気口21から外気が冷却空気として取り込まれ、バッテリ20内部,バッテリ保持部吸気口5を通ることにより、バッテリ20の本体が冷却されるとともに、その冷却風は、制御回路基板18,冷却フィン22に送られて、それらに取り付けられている回路部品,発熱部品等を冷却する。
【0039】
さらに、発熱部品が取り付けられている冷却フィン22の冷却のため、フィン冷却ファン23を、冷却フィン22の出口側に、側面排気口6と対向させて設けている。そして、そのフィン冷却ファン23により、側面吸気口4から外気を取り込み、冷却風として冷却フィン22に通して冷却を行い、側面排気口6から外部に排出するようにしている。その際、側面吸気口4から取り込まれる空気は、側面吸気口4に入る前にバッテリ20の側部を通過しながらバッテリ20の冷却も行うことになる。このようにして、バッテリ20の冷却と、制御回路基板18の冷却が効率的に行われる。
【0040】
また、
図9に示すように、各バッテリ保持部2,2,2に設けられた吸気ファン2j,2j,2jで吸い込んだ冷却空気は、対向する制御回路基板18を冷却した後、フィン冷却ファン23により側面排気口6から排出される冷却風と、ボックス1下部の排気ファン17により、前面排気口7から外部に排出される冷却風とに分かれて、ボックス1内を冷却する。そのようにして、各部を冷却して高温になった空気は、側面排気口6と前面排気口7から、作業者に当たることなく外部に排出される。
【0041】
ところで、このような背負式バッテリ溶接機は、背負った状態での溶接作業中には、姿勢を変える際等に、ボックス1を何かにぶつけたり、ボックス1を床において作業する際には、ボックス1が倒れたりして、バッテリ20,20,20に損傷を与えるおそれがある。そこで、バッテリ20,20,20を衝撃から保護するため、装着されたバッテリ20,20,20の周囲に、バッテリ20より高さが高い保護部材を設けてもよい。保護部材としては、
図10に示すように、バッテリ20,20,20が装着される箇所の上下位置に門型保護部材24を設けたり、周囲に枠型保護部材25を設けたりすることができる。門型保護部材24,枠型保護部材25の材質は、軽量化のため樹脂製とすることが望ましい。なお、枠型保護部材25を適用する場合は、バッテリ保持部2へのバッテリ20の着脱に支障がないように、着脱方向であるボックス1の前面方向は開けておく必要がある。
【0042】
このような門型保護部材24や枠型保護部材25を設ければ、本背負式バッテリ溶接機で溶接作業を行う際、誤ってバッテリ20部分に何かを当ててしまったりしたときに、バッテリ20を衝撃から保護することができる。