(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024405
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】生分解性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20230209BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230209BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230209BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230209BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230209BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230209BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230209BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230209BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230209BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230209BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/64
A61K47/62
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K9/70
A61K9/14
A61K9/48
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/08
A61K47/10
A61P25/00
A61K45/00
A61K47/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125804
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2022533171の分割
【原出願日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/943,824
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】518286264
【氏名又は名称】ビー.ジー.ネゲブ テクノロジーズ アンド アプリケーションズ リミテッド, アット ベン‐グリオン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】シントフ,アムノン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA53
4C076AA71
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC41
4C076DD38
4C076DD38F
4C076DD45
4C076DD45F
4C076DD46
4C076DD46F
4C076DD59
4C076DD59F
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE53
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA05
4C084NA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C085AA21
4C085EE01
4C085EE05
(57)【要約】
【課題】本発明は、生分解性ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】本明細書では、芳香族ジアルデヒドと化学的に架橋した多糖類組成物を開示する。組成物は、様々な用途のためにポリマーシートの形態をしていてもよい。芳香族ジアルデヒドと化学的に架橋した多糖類を含むナノサイズ粒子についても開示する。ナノサイズ粒子は、さらに脂質および界面活性剤を含み得る。ナノサイズ粒子による鼻腔内送達は、生物活性剤の脳への送達に有効である。ナノサイズ粒子による局所および経皮送達は、全身または皮膚疾患の治療のための生物活性剤の送達に有効である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアルデヒドと化学的に架橋された多糖類と、生物活性物質とを含む組成物であって、前記生物活性物質が抗体薬物複合体またはペプチド薬物複合体である組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジアルデヒドが、ジバニリン、ジシンナムアルデヒド、ジコニフェリルアルデヒド、ジクマラルデヒドまたはジシナピルアルデヒドからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖類が、デンプン、アルギン酸またはヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記多糖類がデンプンであり、前記芳香族ジアルデヒドがジバニリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーシート、ポリマー粒子またはカプセルの形態をしている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
薬学的に許容可能な配合である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ナノサイズ粒子の形態をしている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
脂質、および/または界面活性剤、および/または共溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂質、および/または前記界面活性剤、および/または前記共溶媒が、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、プロピレンカーボネート、テトラグリコール、オレイン酸グリセリルおよびジオレイン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、およびココアバターからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
この20年間で、人間の健康および環境への悪影響の両方に対するリスクと大きな損害について理解が深まったため、日常生活のほとんどの分野で環境に優しい材料に対する世界的な需要は大幅に増加した。
【0003】
従来の石油系プラスチックポリマーに代わって生分解性材料の使用が増加しており、機械的に安定で堅牢な代替材料を発見するための研究が広く行われている。現在、最も一般的に利用されている生分解性材料は、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリヒドロキシ3-ブチレート(PHB)、でんぷんブレンド、セルロースベースの材料である。生分解性材料の使用を促進するために、さまざまな組み合わせや化学プロセスが長年にわたって開発され、例えば、ナイロン袋の代替や食品の包装材料として、産業界に取り入れられてきた。
【0004】
生分解性材料はまた、生物医学装置、組織工学、および他の用途、例えば、縫合糸、外科用固定具、薬物送達において幅広い使用が見出された。今日まで、高分子材料は、生物学的に適合性があり、その機械的特性およびその分解速度を、好ましい用途に応じて調整および最適化できるため、薬物送達システムで広く使用されている。例えば、市販されている材料の1つは、ポリ乳酸(PLA)である。乳酸は、通常、デンプン源から抽出されたブドウ糖の発酵によって生成されるため、乳酸モノマーからPLAを合成する前に他のいくつかの工程を必要とする。
【0005】
生分解性ポリマーの別の重要な特性および有利な特徴は、医薬品の送達システムとしても機能するという事実であって、例えば、生理学的条件への曝露を防ぐことによって薬物を保護することによって、または難溶性または不溶性の薬物の溶解度を改善することによって、つまり、頻繁に、薬物のバイオアベイラビリティを高めることである。上述したこれらの有利な性質は、安全で改善された医療と患者のコンプライアンスを促進するため、製薬業界で求められている。
【0006】
この点について、修飾された多糖類、例えば、デンプンおよびアルギン酸塩は、魅力的な選択肢である。例えば、特許文献1(米国特許第5846530号)は、化学的に架橋可能なアルギン酸塩を開示する。さらなる特許文献2(米国特許第6313105号)は、天然デンプンと「ジアルデヒドスターチ」、すなわち、アルデヒド基に酸化されたデンプンとの熱可塑性混合物を開示する。特許文献3(米国特許第6790840号)は、アルギン酸塩のような可逆的に架橋されたヒドロゲルを開示する。また、ジアルデヒドスターチによるデンプンの熱機械的ゲル化によって得られる特許文献4(米国特許第7255732号)の組成物である。加えて、非特許文献1(Suk Fin Chin et al, International Journal of Polymer Science, Vol.2014,Article ID:34021(デジタルオブジェクト識別子(doi):10.1155/2014/340121))において、クルクミン活性剤を含むナノ粒子の作成について、天然のデンプンが報告された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5846530号
【特許文献2】米国特許第6313105号
【特許文献3】米国特許第6790840号
【特許文献4】米国特許第7255732号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Suk Fin Chin et al, International Journal of Polymer Science, Vol.2014,Article ID:34021,デジタルオブジェクト識別子(doi):10.1155/2014/340121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当技術分野では、上述したシステムで機能する適合した性質を有する生分解性材料を得るために、時間と資源の両方の効率的な方法論を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で提供されるのは、芳香族ジアルデヒドにより化学的に架橋された多糖類を含む物質の組成物である。その芳香族ジアルデヒドは、通常、ジバニリン、ジシンナムアルデヒド、ジコニフェリルアルデヒド、ジクマラルデヒド、およびジシナピルアルデヒドからなる群から選択され得る。好ましくは、その多糖類は、デンプン、アルギン酸、またはヒドロキシプロピルセルロースである。現在好ましい実施態様では、その多糖類がデンプンであり、その芳香族ジアルデヒドがジバニリンである。組成物は、ポリマーシート、ポリマー粒子またはカプセルの形態を存在し得る。
【0011】
さらなる態様では、芳香族ジアルデヒドにより化学的に架橋された多糖類の組成物を含む薬学上許容される配合を提供した。好ましくは、この配合は、ナノ粒子の形態をしている。配合は、通常、生物活性物質を含む。その生物活性物質は、自然由来の物質、抗生物質、または中枢神経系作用薬であり、例えば、クルクミン、カンナビジオールなどのカンナビノイド、グラニセトロンなどの制吐剤、またはインスリンもしくは糖タンパク質などのペプチドもしくはポリペプチド、オリゴヌクレオチド、抗体薬物複合体、またはペプチド薬物複合体である。
【0012】
組成物、特にナノサイズの粒子は、例えば、ナノ粒子の作成に使用され得るものである、脂質および/または界面活性剤および/または共溶媒をさらに含み得る。好ましくは、脂質および/または界面活性剤および/または共溶媒が、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、プロピレンカーボネート、テトラグリコール、オレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、およびココアバターからなる群から選択される。
【0013】
本明細書で提供されるさらなる態様は、ポリマー組成物の製造工程である。本工程は、水媒体中で多糖類と芳香族ジアルデヒドを結合させることを含む。その芳香族ジアルデヒドをその多糖類と結合することは、最終的に、その多糖類がその芳香族ジアルデヒドにより化学的に架橋されることになり得る。本工程には、i)その多糖類およびその芳香族ジアルデヒドを含む溶液またはエマルジョンから溶媒を蒸発させること、ii)その多糖類およびその芳香族ジアルデヒドを含む水溶液またはエマルジョンを噴霧乾燥させること、iii)その多糖類およびその芳香族ジアルデヒドを含むナノサイズ粒子を生成すること(ナノ沈殿法によるナノ粒子生成)、iv)その多糖類およびその芳香族ジアルデヒドを含むナノサイズ粒子に塩を加えて分離すること(塩析法)、または、v)その多糖類および/またはその芳香族ジアルデヒドを含むマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを提供することを、さらに含み得る。芳香族ジアルデヒドは、溶媒が水、水性緩衝液、酢酸溶液、または水素化有機溶液のいずれかの溶液中で分散され得る。芳香族ジアルデヒドは、上述のように選択され得、すなわち、ジバニリン、ジシンナムアルデヒド、ジコニフェリルアルデヒド、ジクマラルデヒド、およびジシナピルアルデヒドからなる群から選択され得る。多糖類も、上述のように、すなわち、デンプン、アルギン酸、またはヒドロキシプロピルセルロースであり得る。本工程は、さらに好ましくは、酸または塩基をその多糖類および/またはその芳香族ジアルデヒドに結合することを含む。本工程は、さらに好ましくは、その混合物と生活活性物質を結合することを含む。その生物活性物質は、芳香族ジアルデヒド存在下でも安定していることが望ましい。生物活性物質は、好ましくは、上述のように、自然由来の物質であり、クルクミン、インスリン、カンナビジオールなどのカンナビノイド、グラニセトロンなどの制吐剤、および抗生物質からなる群から選択的に選択される。現在の好ましい実施形態において、本工程内における、多糖類がデンプンであり、芳香族ジアルデヒドがジバニリンであり、および生物活性物質がクルクミン、グラニセトロン、カンナビジオール、またはインスリンである。
【0014】
本工程には、脂質および界面活性剤、および選択的に共溶媒を、任意でマイクロエマルジョンの形態で、上記多糖類および/または上記芳香族ジアルデヒドに結合させることが、さらに含まれる。本工程は、任意に溶媒蒸発によって、ポリマー組成物をナノ粒子の形態で沈殿させること、および/または分離させることを、さらに含む。好ましくは、その脂質、界面活性剤および共溶媒は、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、プロピレンカーボネート、テトラグリコール、オレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、およびココアバターからなる群から選択される。現在の好ましい実施形態では、脂質がココアバターと、オレイン酸グリセリルおよびジオレイン酸グリセリルの混合物を含み、界面活性剤がポリオキシル-40水素化ヒマシ油を含み、および、共溶媒がテトラグリコールである。
【0015】
さらなる態様において、治療を必要とする対象の治療方法は、本明細書に記載された組成物をその対象に投与することを含み、その組成物は治療上有効量の生物活性剤を含む。好ましくは、その生物活性剤は、中枢神経系に作用する薬剤である。現在の好ましい実施態様において、その投与は鼻腔内投与である。好ましくは、試験用非ヒト哺乳動物へのその組成物の投与後、その試験用非ヒト哺乳動物の脳内濃度が、基準試験用非ヒト哺乳動物への静脈内または皮下投与後に得られた脳内濃度より少なくとも150%高い。また、その投与は、経皮投与または経口投与、舌下投与、子宮内投与、インプラント装置、または非経口投与であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、芳香族ジアルデヒドに架橋された多糖類、好ましくはデンプンを含む生分解性組成物を提供する。一般に、非架橋デンプンは、低い機械的特性と高い吸水性により、細菌の増殖しやすいデンプンを作成する場合など、工業用途が限定されている。しかしながら、驚くべきことに、芳香族ジアルデヒドと架橋したデンプンは、機械的強度が増し、かつ、そのデンプンの耐水性が増すことを発見した。本発明の原理によると、その架橋度に依存する、上述の水媒体におけるデンプン-塩基組成物の安定度は、少なくとも1週間である。したがって、芳香族ジアルデヒドによって化学的に架橋された多糖類を含む物質の組成物は、本発明の第1の態様を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1の(a)および(b)は、それぞれ棒グラフおよび応力-ひずみ曲線として、未硬化の200ミクロン厚のデンプンフィルムの引張強度および伸び率に対するジバニリン濃度の効果を示している。
【
図2】
図2の(a)および(b)は、それぞれ棒グラフおよび応力-ひずみ曲線として、硬化後(硬化は、150℃で5分間フィルムを温めることにより実施した)の厚み200ミクロンのスターチフィルムの引張強度および伸び率をそれぞれ棒グラフと応力-ひずみ曲線として、ジバニリンの濃度効果を示している。
【
図3】
図3は、未硬化の厚み200ミクロンのスターチフィルムの引張強度および伸び率に対する可塑剤(グリセロール)の効果を示している。
【
図4】
図4は、硬化後(硬化は、150℃で5分間フィルムを温めることにより実施した)の厚み200ミクロンのスターチフィルムの引張強度および伸び率に対する可塑剤(グリセロール)の効果を示している。
【
図5】
図5は、クルクミン6.5μgの鼻腔内投与1時間後のラットの脳におけるクルクミン蓄積量を示している。縦軸のタイトル「脳内クルクミン量(μg)」は、脳内で検出されたクルクミン量を意味し、マイクログラムで表される。横軸のラベル「非架橋ナノ粒子」、「7.5%架橋剤」、および「30%架橋剤」は、それぞれ、ポリマーの重量で、架橋剤を含まないナノ粒子、7.5%の架橋剤を含むポリマーナノ粒子、および30%の架橋剤を含むポリマーナノ粒子を意味する。
【
図6】
図6は、クルクミン適用後6時間後のラットの皮膚へのクルクミンの浸透を示している。縦軸のタイトル「クルクミン皮膚蓄積量(μg/cm
2)」は、皮膚で検出されたクルクミンの量を意味し、平方センチメートル当たりのマイクログラムで表される。横軸のラベル「水アルコール溶液」、「非架橋ナノ粒子」、「75%架橋剤」、および「20%架橋剤」は、それぞれ、ポリマーの重量による、水アルコール溶液、架橋剤を含まないナノ粒子、ポリマーに架橋剤を75%含むナノ粒子、および、ポリマーに架橋剤を20%含むナノ粒子を意味する。
【
図7】
図7の(a)は、ラットのアミロ脂質ナノ小胞(ALNs)の鼻腔内投与後の脳内クルクミン濃度を示している。縦軸のタイトル「脳内(ng/g)または血漿内(ng/ml)クルクミン濃度」は、脳内で検出されたクルクミン濃度を意味し、組織1グラム当たりのクルクミンをナノグラムで表され、血漿内クルクミン濃度は、血漿1ミリリットル当たりのクルクミンをナノグラムで表される。横軸のラベル「アミロ脂質ナノ粒子」、「非架橋アミロ脂質ナノ粒子」、「脂質ナノ粒子」、および「静脈投与」は、それぞれ、架橋ポリマーおよび脂質成分、非架橋ポリマーおよび脂質成分、脂質成分のみ、および静脈投与を含むナノ粒子の試料を意味している。左画の棒は脳内の蓄積量(ラベル「脳内蓄積量」)、右側の棒は血漿内の濃度(ラベル「血漿内濃度」)を意味する。
図7の(b)は、脳内クルクミン濃度とALNsの架橋度の相関を示している。縦軸のタイトル「ラット脳内のクルクミン量(ng/g)」はラットの脳内で検出されたクルクミン濃度を意味し、組織1グラム当たりのクルクミンをナノグラムで表される。横軸ラベル「デンプン重量当たりの架橋度(%)」は、ポリマーの重量に対する架橋剤の重量比で表される架橋度を意味する。
【
図8】
図8は、ラットの皮膚を介したクルクミンの透過を示している。縦軸「クルクミンの皮膚透過量(ng/cm
2)」は、ラットの皮膚を透過したクルクミンの蓄積量を意味し、皮膚1平方センチメートル当たりのクルクミンをナノグラムで表される。横軸のラベル「時間(h)」は実験開始時からの経過時間を意味し、単位は時間である。曲線のラベル「脂質ナノ粒子(ポリマーなし)」、「非架橋脂質ポリマーナノ粒子」、および「脂質-ポリマーナノ粒子」は、それぞれ、本発明によるポリマーを含まない脂質ナノ粒子(8時間経過時点で最低値)、本発明によるポリマーと脂質が架橋されていないナノ粒子(8時間経過時点で中間の値)、および本発明による脂質ナノ粒子と架橋されたポリマー(8時間経過時点で最高値)の試料から得られた濃度を意味する。
【
図9】
図9は、投与1時間後の脳内および血漿内のグラニセトロンの分布を示している。縦軸のタイトル「脳内(ng/g)または血漿内(ng/ml)グラニセトロン濃度」は、脳内で検出されたグラニセトロン濃度を意味し、組織1グラム当たりのグラニセトロンをナノグラムで表され、および、血漿内のグラニセトロン濃度は、1ミリリットル当たりのナノグラムで表される。横軸のラベル「脳内濃度」および「血漿内濃度」は、それぞれ脳内および血漿内の濃度を意味する。左側の棒は脳内蓄積量(「グラニセトロンALNsの鼻腔内投与」ラベル)、右側の棒は血漿濃度(「グラニセトロンHClの静脈投与」ラベル)を意味する。数値ラベルは、得られた平均濃度を意味し、「未検出」ラベルは、何の薬剤も検出されなかったことを意味する。
【
図10】
図10はグラニセトロンを含む粒子のDLS測定値を意味する。
【
図11-1】
図11-1の(a)は、グルコースでジバニリンを分散させた反応混合物のクロマトグラムを示しており、
図11-1の(b)は12aの主ピークの重量スペクトルを示している。
【
図11-2】
図11-2の(c)は、示唆されたジバニリン-グルコース付加物の構造を示している。
【
図12】
図12は、カンナビジオール(CBD)を含むALNsによる鼻腔内および静脈投与1時間後のカンナビジオールの分布(脳内および血漿内)を示している。縦軸のタイトル「脳内(ng/g)または血漿内(ng/ml)カンナビジオール濃度」は、それぞれ、脳内で検出されたカンナビジオール濃度を意味し、組織1グラム当たりのCBDをナノグラムで表され、および血漿内のCBD濃度は、1ミリリットル当たりのナノグラムで表される。横軸のラベル「脳内濃度」および「血漿内濃度」は、それぞれ脳内および血漿内の濃度を意味する。左側の棒は、脳内の蓄積量(ラベル「カンナビジオール-ALNsの鼻腔内投与」)、右側の棒は血漿内濃度(ラベル「カンナビジオールの静脈投与」)を意味する。数値ラベルは、得られた平均濃度を意味し、「未検出」は、何の薬剤も検出されなかったことを意味する。
【
図13】
図13は、インスリンを含むALNsの鼻腔内および静脈投与1時間後のインスリンの分布(脳内および血漿内)を示している。縦軸名「脳内(ng/g)または血漿内(ng/ml)インスリン濃度」は、それぞれ、脳内で検出されたインスリンの濃度を意味し、組織1グラム当たりのナノグラムで表され、および血漿内のインスリン濃度は、1ミリリットル当たりのナノグラムで表される。横軸のラベル「静脈投与」、「皮下注射」および「ALNs鼻腔内投与」は、それぞれ、インスリンの静脈投与後および皮下投与後、および本発明によるインスリンが充填されたナノ粒子の鼻腔内投与後の、脳内濃度(左側の棒「脳内インスリン(B)」)および血漿内濃度(右側の棒「血漿内インスリン(P)」)である。数値ラベルは、脳内濃度-血漿内濃度の比を意味し、四角く囲まれた値は、本発明によるナノ粒子に関係した投与に相当するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~4において、
図1の(a)および(b)、
図3および
図4の左縦軸のタイトル「最大応力(mPa)」は、検査された試料の最大応力を意味し、ミリパスカルによって表される。
図1の(a)および(b)、
図3および
図4の右縦軸のタイトル「最大ひずみ(%伸び)」は、その試料の最大ひずみ量を意味し、原寸からの伸び率で表される。
図1の(a)および(b)、
図3および
図4内の棒グラフの凡例である、「応力(mPa)」は左軸の測定値を指し、
図1の(a)および(b)、
図3および
図4内の凡例である、「%伸び」は、実線で表され、右軸の測定値を参照する。
図1の(a)と
図2の(a)の下軸ラベル、および
図1の(b)と
図2の(b)内の凡例である、「2%架橋」、「5%架橋」、「10%架橋」、「15%架橋」「20%架橋」は、ポリマーに対し、それぞれ質量で、2%、5%、10%、15%、または20%の架橋剤を含む試料を意味する。
図3,
図4内の下軸の凡例である、「1:1 可塑剤/デンプン」、「1:2 可塑剤/デンプン」、および「1:3 可塑剤/デンプン」は、それぞれ、可塑剤とデンプンの比率が、1:1、1:2、および1:3となるように含んだ組成物であることを表している。
【0019】
いくつかの実施形態において、多糖類は、芳香族ジアルデヒドによって架橋される。多糖類は、通常、水溶性のポリマーである。多糖類は、通常、コーンスターチ、キトサン、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸塩、およびセルロースまたはセルロース誘導体から選択され得る。セルロース誘導体を使用する場合、それらは、好ましくは、水溶性である。水溶性のセルロース誘導体は、メチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む。いくつかの好ましい実施形態では、多糖類は、デンプンである。デンプンは、α-グリコシド結合により結合されたグルコース分子からなる高分子炭化水素であり、その原材料に応じて、直鎖状または枝分かれ状の構造を持つ(それぞれ、「アミロース」および「アミロペクチン」という)。一般的に、どの原材料のデンプンでも、本発明で利用するために適合させ得る。好ましいデンプンの原料は、トウモロコシ(メイズ)およびジャガイモである。
【0020】
芳香族ジアルデヒドは、通常、生物由来の、無毒のジアルデヒドである。好ましくは、芳香族ジアルデヒドは、ジバニリン、ジシンナムアルデヒド、ジコニフェリルアルデヒド(コニフェリルアルデヒドは、シナモンから単離されるフラボノイドである)、ジクマラルデヒド、またはジシナピルアルデヒド(シナピルアルデヒドは、コニフェリルアルデヒドから酵素的に生成される)である。ジバニリンは、3-(5-ホルミル-2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒドであり、CAS番号は2092-49-1である。ジシンナムアルデヒドは、シンナムアルデヒド((2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール、CAS番号14371-10-9)から生成される。ジコニフェリルアルデヒドは、コフェリルアルデヒド((E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エナール、CAS番号458-36-6)から生成される。ジクマラルデヒドは、クマラルデヒド((E)-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エナール、CAS番号20711-53-9)から生成される。ジシナピルアルデヒドは、シナピルアルデヒド((E)-3-(4-ヒドロキシ-3、5-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エナール、CAS番号4206-58-0)から生成される。
【0021】
現在の好ましい実施形態では、多糖類(例えばデンプン)の架橋に利用される芳香物ジアルデヒドは、ジバニリンである。他の好ましい多糖類は、アルギン酸およびその塩、およびセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。
【0022】
本発明の生分解性組成物は、いくつかの異なる工程によって製造されることができ、最終製品の形状、機械的強度および他の特性は、使用目的に応じて調整され得る。
【0023】
ある態様において、本発明の生分解性組成物は、ポリマーシートの形態をしている。これらのポリマーシートは、例えば、架橋組成物の溶媒キャスティングにより、フィルムとして製造され得る。本発明の原理によると、本発明による生分解性シートは、それらの最終的な用途によって決定される任意の適した厚さを有し得る。約15ミクロン~約5mmの間のどれかの厚さで製造され、好ましくは100~1500ミクロンである。
【0024】
さらなる態様において、本発明の生分解性組成物は、ナノサイズ粒子の形態をしている。それらの組成および他の構成成分に応じて、ナノサイズ粒子は、その粒子を形成する、本発明のポリマー生分解性組成物の均質な相を有していてもよい。その粒子は、主にその粒子の表面上にポリマー生分解性組成物の均質な相を有していてもよく、これらの場合には、「ナノカプセル」などの用語が使用され得る。
【0025】
多糖類がデンプンである場合、ナノサイズ粒子は、脂質も含むことができ、以下に詳細を説明するように、この場合のナノサイズ粒子は、アミロ脂質ナノ小胞(Amylo-Lipid Nanovesicles)(または頭文字からALN)と称される。
【0026】
ポリマーの量に対する芳香族ジアルデヒドの量、例えば架橋度は、その組成物に必要とされる最終的な特性によって変動し得る。硬い材料が必要な場合、架橋度が高くなり得る。一般に、架橋度は、多糖類の重量の約0.5%wtから、多糖類の重量の約80%wtまでの間で変動し得る。好ましい架橋度は、特に組成物がポリマーフィルムの形態をしている場合は(例えばシート)、0.5%wt~20%wtの間である。好ましい架橋度は、特にポリマーシートの場合は約1%~約10%である。組成物がナノサイズ粒子の形態をしている場合、特にナノサイズ粒子が脂質高分子粒子の場合、架橋度は、後述するように、約0.5%wt~約20%wt、例えば約1%wt~約3%wtの間である。ナノサイズ粒子はまた、架橋度の高い多糖類を含み得、例えば約6%wt~約10%wtの間、特に前記粒子が脂質なしにナノ沈殿によって生産された場合である。適切な架橋度は、特定の配合および用途の必要性に応じて適合させることができる。
【0027】
「ナノ粒子(nanoparticle)」の用語は、文脈上他に明示されない限り、本明細書では、ナノ粒子が芳香族ジアルデヒドに架橋された多糖類を含む、様々な内部構造と成分分布を有する任意のナノサイズの粒子および小胞について用いられる。ナノサイズ粒子は、例えば10~950nm、ナノメートルの範囲での5粒子分の長さを有する。好ましくは、ナノサイズ粒子は、50~250nmの大きさを有する。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ナノ粒子の形態をしている物質の組成物を提供する。その組成物は、薬学的に許容される配合、例えば薬物送達システムに配合されてもよい。その薬物送達システムは、芳香族ジアルデヒドによって架橋された多糖類を含む生分解性ナノ粒子を含んでいてもよく、生物学的活性な成分を含んでいてもよい。さらなる実施形態において、本発明は、カプセル、好ましくはナノサイズのカプセル、すなわちコア-シェル様の構造を有する粒子の形態をしている生分解性組成物を提供する。これらの構造において、シェル、すなわちカプセルの最も外側の部分は、本発明の生分解性組成物を含み、コア、すなわちカプセルの内側は、分離相を含む。通常、カプセルの分離相は、親油性相である。あるいは、ナノサイズカプセルは、本発明の生分解性組成物が脂質相液滴の分布するマトリックスを伴う、多相構造を有していてもよい。ナノサイズ粒子および/またはカプセルは、通常、後述するように、生物学的活性剤をさらに含んでいる。体内に薬物送達システムが注入されると、細胞間と細胞内体液により、並びにそれぞれのシステムの組成物および投与形式に固有の速度および範囲で特異または非特異酵素により、生物学的活性剤は、本発明のナノ粒子および分解されたナノ粒子から放出される。以下の実施例の項目で説明するように、その組成物は、例えば架橋比などの方法を介して、鼻腔内投与後のナノ粒子の脳内浸透の程度を制御するために、または局所投与後の皮膚浸透および透過を制御するために、適合させ得る。
【0029】
したがって、本発明の原理によれば、生分解性ナノ粒子および/またはカプセルは局所送達、全身投与、経口投与、舌下投与、または鼻腔内投与用に配合することができる。したがって、別の態様では、本発明は、本発明の生分解性の担体を薬物送達システムとして使用することを提供する。その送達システムは、芳香族ジアルデヒドに架橋された多糖類、好ましくはデンプンであり、および生物学的活性剤を含み、その生物学的活性剤に対する芳香性ジアルデヒドの相当の化学反応性がないものが考えられる。本発明の薬物送達システムは、同じ投与量および条件で、本発明の薬物送達システムなしに与えられる同じ生物学的活性剤と比較して、対象のその生物学的活性剤のバイオアベイラビリティを増強し、安定性および有効性を高め得る。特に、その送達システムがナノサイズ粒子を含み、鼻腔内送達として(すなわち、鼻へのスプレーとして)投与される場合、その送達システムは、生物学的活性物質の脳への送達を可能にすることができ、提供される脳内濃度は、他の投与経路で得られた脳内濃度よりも少なくとも150パーセント高い。脳内濃度は、当技術分野において知られているように、非ヒト哺乳動物による試験で測定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、生物学的活性剤をさらに含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「生物学的活性」の語は、「生物活性物質」などの語と交換可能であり、自然または合成起源の、栄養素濃度のバランス調整、および/または、例えば本発明のように病気や欠乏症を予防することなどの、少なくとも一部のヒトの生物学的システムに正の影響を与える物質を指す。いくつかの好ましい生物学的活性成分の例は、クルクミン、カンナビジオール、グラニセトロン、およびインスリンを含む。
【0031】
本発明で使用するその生物学的活性剤は、多糖類の架橋に用いられる芳香族ジアルデヒドの存在下で実質的に安定である。これは、分散した多糖類、例えば、溶解した多糖類の存在下で、薬物総投与量の10%以下が芳香族アルデヒドと化学的に反応し、好ましくは5%未満、さらに好ましくは1%未満、および0.5%未満である。
【0032】
生物学的活性剤のさらなる例は、栄養補助食品、抗生物質、カンナビジオール以外のカンナビノイド、鎮痛剤を含み、また、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、向精神剤、抗精神病薬、神経活性剤、抗パーキンソン病または抗-アミロイド剤、コリン作動薬またはアドレナリン作用薬、抗がん剤、制吐剤、循環器機能に影響を与える薬物(例えば、抗高血圧薬)、ホルモン、ビタミン、眼または耳の薬、皮膚用の薬、化粧料、ポリペプチド、タンパク質ベースの薬、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、性ホルモン、コルチコステロイド、抗てんかん薬、鎮痙薬、鎮静剤、抗うつ剤、セロトニン拮抗薬、例えばグルカゴン様ペプチド、胃抑制ポリペプチド、アミリン、レプチン、メラノコルチン4作用薬、膵臓ポリペプチド、オキシントモジュリンまたはコレシストキニンなどの食欲抑制剤、アミノ酸、アミノ糖、食欲抑制薬、抗アレルギー薬、抗コリン薬、副交感神経刺激薬、抗高血圧剤、抗狭心症薬、麻薬、麻薬拮抗剤、気管支拡張薬、血液因子、骨代謝剤、プロテアーゼ阻害剤、染料、診断薬、またはその任意の組み合わせである。
【0033】
生物学的活性剤は、ナノ粒子の表面またはコア、例えば、ナノスフェア、ナノカプセル、マイクロまたはサブマイクロ粒子、またはナノエマルジョンの内部液滴に存在し得る。以下の実施例の項目に示されているように、生物活性剤の分子量は、特定のグループの化合物に限定されない。本発明の実施において、低分子、中分子または高分子の薬剤または生物学的活性剤を使用することができる。
【0034】
生物学的活性化合物の濃度は、それらが組み込まれる担体、例えば剤形に応じて、約0.001%(10μg/g)から約20%(すなわち、200mg/g)で変動してもよく、好ましくは、重量で0.1~10%である。その担体は、薬学的におよび/または化粧品として許容される担体であり、例えば、液体、クリーム、ゲル、スプレー、エアロゾル、フォーム、ディスク、フィルム、ペレット、またはパッチなどであってもよい。生物学的活性物質は、芳香族ジアルデヒドで架橋された多糖類の組成物を含む剤形中に溶解、分散または凝集させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の送達システムに組み込まれる生物学的活性剤は、栄養補助食品、抗生物質、カンナビノイド、鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、精神活性剤、抗精神病剤、神経活性剤、抗パーキンソン病薬または抗アミロイド薬、コリン作動薬またはアドレナリン作用薬、抗がん剤、制吐薬、循環器機能に影響を与える薬(例えば、抗高血圧薬)、ホルモン、ビタミン、眼または耳の薬、皮膚用の薬、化粧料、ポリペプチド、タンパク質ベースの薬、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、性ホルモン、コルチコステロイド、抗てんかん薬、鎮痙薬、鎮静剤、抗うつ剤、セロトニン拮抗薬、アミノ酸、アミノ糖、食欲抑制薬、抗アレルギー薬、抗コリン薬、副交感神経刺激薬、抗高血圧剤、抗狭心症薬、麻薬、麻薬拮抗剤、気管支拡張薬、血液因子、骨代謝剤、プロテアーゼ阻害剤、染料、診断薬、またはそのいずれかの組み合わせである。より具体的には、生物学的活性剤は、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、酸性型カンナビノイド、カンナビノール、カンナビゲロール、大麻のアントラージュ成分、カンナビノイドの組み合わせ、または大麻抽出物などのカンナビノイドであってもよい。また、生物学的活性剤は、インスリン、グルカゴン、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン[ACTH]、オキシトシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン[TRH]、黄体形成ホルモン放出ホルモン[ロイプロリドなどのLHRH作用薬]、および他の類似体、副甲状腺ホルモン、インターフェロン(例えば、アルファ-2a、b-インターフェロン、ベータ-インターフェロン)などの抗がん剤および抗ウイルス剤、抗腫瘍剤(例えば、カルムスチン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ブスルファン、カルボプラチン、ロイプロリド、メゲストロール、ロムスチン、レバミゾール、フルタミド、エトポシド、シタラビン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル、アクチノマイシン、タモキシフェン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、チオテパ、クロラムブシルなど)、性ホルモン(例えば、プロゲステロン、17-β-エストラジオール、テストステロン、ノルエチンドロン、レボノルゲストレル、エチニルエストラジオール、FSH、黄体形成ホルモン[LH]など)、副腎皮質ホルモン(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、ブデソニドなど)、局所麻酔薬(リドカイン、プリロカイン、ベンゾカイン、テトラカインなど)、抗てんかん/抗痙攣薬(例えば、ジアゼパム、クロナゼパム、ロラゼパムなどのベンゾジアゼピン)、および鎮静剤/精神安定剤(例えば、ミルタザピン、トラゾドン、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、アルプラゾラム、クロナゼパム、ジアゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、トリアゾラム、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、カノコソウ(valerian)、カバカバ(kava-kava)、抱水クロラール、ジエチルエーテル、エスゾピクロン、グルテチミド、メプロバメート、ゾルピデム、ラメルテオン、メチプリロンなど)を含む神経系に有効な薬物、抗うつ薬(例えば、イミプラミン、アモキサピン、ブトリプチリン、フルオキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、シタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラム、デュロキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ドスレピン、イソカルボキサジド、ニアラミド、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ハルマリン、イプロクロジド、イプロニアジド、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドチエピン、ドキセピン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミンなど)、制吐剤(例えば、ドーパミン拮抗薬-メトクロプラミド、クロルプロマジン、プロメタジン、ドンペリドンなど、セロトニン拮抗薬-グラニセトロン、オンダンセトロンなど、抗ヒスタミン剤-シクリジン、プロメタジン、メクリジン、ヒドロキシジンなど、カンナビノイド-マリノール、カンナビスなど、その他-トリメトベンズアミド、エメトロル(商標)など)、アミノ酸、アミノ糖(例えば、グルコサミンなど)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ペニシリン誘導体、ストレプトマイシン、アミノグリコシド、セファロスポリン、エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)、抗炎症薬(ステロイド性-ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、クロベタゾン、クロベタゾール、ブデソニド、アムシノニド、コルチゾン、デソニド、フルシノニド、フルシノロン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、チキソコルトール、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、ハロメタゾン、ハルシノニド、フルコルトロン、デスオキシメタゾンなど、非ステロイド性-アセチルサリチル酸、サルサレート、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、メフェナム酸、ナブメトン、エトドラク、ケトロラック、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブなど)、食欲抑制剤(例えば、ベンズフェタミン、ジエチルプロプリオン、テパニルフェンフルラミン、マジンドール、フェンジメトラジン、フェンテルミンなど)、抗アレルギー薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ヒスタミン、クロモグリケート、メクリジン、マレイン酸ジメチンデンなどの抗ヒスタミン剤)、抗コリン作動薬(例えば、スコポラミン、アトロピン)、副交感神経刺激薬(例えば、カルバコール、ベタネコール、ニコチン、メタコリン、ピロカルピン、ドネペジル、エドロホニウム、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、タクリン、エコチオフェート、イソフルロフェート、シサプリド、メトクロプラミド、シルデナフィルなど)、抗高血圧薬(例えば、プラゾシン、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、ピンドロール、ラベタロール、グアネチジン、レセルピン、メチルドパ、グアナベンズ、クロニジン、ニフェジピン、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベラパミル、ジルチアゼム、チアジド、フロセミド、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシドなど)、抗狭心症薬(例えば、ニカルジピン、ナドロール、ジルチアゼム、一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビド、メトプロロール、ニトログリセリン、アムロジピン、ニフェジピン、アテノロールなど)、麻薬性鎮痛薬(例、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、メサドンなど)、麻薬拮抗薬(例えば、ナロキソン、ナルトレキソンなど)、抗喘息/気管支拡張薬(例えば、アルブテロール/サルブタモール、エフェドリン、メタプロテレノール、テルブタリン、エピネフリン、テオフィリン、イプラトロピウム、サルメテロール、フルチカゾン、ホルモテロール、ベクロメタゾン、フルチカゾンなど)、第VII因子、第VIII因子および第IX因子などの血液因子、カルシトリオール(ビタミンD3)やアレンドロネートなどの骨代謝剤、プロスタグランジン(例えば、アルプロスタジル、ジノプロスト、ラタノプロスト、ミソプロストールなど)、アプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤、抗パーキンソン病剤(例えば、レボドパ、カルビドパ、アマンタジン、セレギリン、エンタカポン、ビペリデン、ベンセラジド、アポモルヒネなど)、さまざまな造影剤と診断薬、およびそのような薬剤の組み合わせなどの、ポリペプチドまたはタンパク質ベースの薬またはホルモンであってもよい。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、生物学的活性剤はクルクミンである。クルクミン(CUR、ジフェルロイルメタン)は、アーユルヴェーダのハーブ療法で使用されるスパイスであるウコンの根(クルクマロンガ、ショウガ科)から抽出される主要な黄色色素である。CURは、さまざまな薬理作用を持つ可能性を持つ有望な活性剤である。CURは、治療薬として大きな可能性を秘めているが、次の3つの欠点がある。(a)生理溶液内で加水分解および自己酸化により、薬理学的に不活性な化合物へ急速に分解し、CURの総分解生成物および主要な自己酸化生成物である単離したビシクロペンタジオンが、MC38大腸がん細胞における抗増殖性とアポトーシスを減少させ、および、マクロファージ細胞におけるLPS誘発性炎症に対する反応とNF-kBシグナル伝達を著しく抑制するなど、親剤と比較して、生物学的効果を劇的に減少させることが示された。CURの分解が(酸化還元活性のある抗酸化剤によって)抑制されると、CURの生物学的活性が増強されることが示されており、これは、酸化分解生成物がCUR効果の媒体として機能できないことを意味する。(b)CURは、水溶性が低いため、バイオアベイラビリティが非常に低く、体内にわずかにしか吸収されず、(c)体内に吸収された分は、急速に代謝され、排出される(t1/2=28.2および44.5分、それぞれラットにおけるクルクミンの静脈投与および経口投与)。その急速な代謝的変換により、観測された薬理学的効果は、CUR自体によって引き起こされるのではなく、その代謝物によるものと仮定されている。
【0037】
他のいくつかの好ましい実施形態において、生物学的活性剤はグラニセトロンである。選択的5-HT3受容体拮抗薬であるグラニセトロン(GR)は、催吐性のがん化学療法に関連した遅発性の吐き気および嘔吐の予防のために治療的に使用されてきた。グラニセトロンの活性は、中枢神経系および消化管に存在する5-HT3受容体への競合的結合にある。GRは、経口錠剤(2mg/日または1mgを1日2回)、静脈内注射(1~3mgまたは10~40μg/kg体重)、徐放性の皮下(SC)注射および経皮パッチ(パッチサイズ52cm2、薬剤34.3mg)として市販されている。グラニセトロンは肝臓で広範に代謝されるため、特に経口投与後、血漿内濃度は通常低い(ng/ml)。平均Cmax(経口投与量1mg)は3.63ng/mlであり、t1/2は6.23hであり、Vd(分布容積)は3.94L/kgであり、タンパク質結合率は65%であり、クリアランス(CL)は0.41L/h/kgである。静脈投与は、不便かつ(短時間の点滴でも)注射部位に痛みを伴うが、一方、GR錠剤を服用している患者は、バイオアベイラビリティのばらつきおよびノンコンプラアンスに悩まされ得る。制吐効果は、GRの血漿中濃度と明確な相関はなく、それは中枢神経系における利用率が変動することを意味し得る。GRの皮下投与および経皮パッチは、より予測可能な血漿内濃度と、血漿内濃度の急激な上昇による毒性を低減する、より優れた代替手段を提供するものである。グラニセトロンの全身投与による最も頻度の高い副作用は、下痢や便秘などの胃腸障害とQT間隔の延長であるが、投与量を減らし、胃腸管や全身血液循環を避けながら脳へ直接到達させることで回避できる可能性がある。
【0038】
いくつかの他の好ましい実施形態において、生物学的活性剤は、カンナビジオールなどのカンナビノイドである。カンナビジオール(CBD)は、工業用大麻(Cannabis sativa)から得られる、天然の、向精神作用がなく、興奮作用がない物質である。その生物学的活性には、複数のサイトカイン産生を抑制することを含み、そのため、免疫調節の治療薬と推定されている。抗炎症作用に加え、CBDは、精神病、てんかん、不安、慢性疼痛、睡眠、多発性硬化症、線維筋痛症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経疾患への幅広い治療的な性質が期待されている。また、CBDはがん細胞の成長を抑制し、がん細胞の死を促進する。しかしながら、一般的な投与方法であるオイル中のCBDの経口バイオアベイラビリティは、ヒトではわずか約6%であり、薬物が安定した治療効果を得るために通常必要とされる20~30%よりもはるかに低い。これは、水溶性の低さだけでなく、腸粘膜を通過できないことによる吸収性の低さによるものである。したがって、CBDの親油性は、BBBの通過を可能にするが、経口投与は、ほとんどの場合効率を欠き、脳内における治療用量に到達することができない。
【0039】
いくつかの他の好ましい実施形態において、上記生物学的活性剤は、インスリンである。脳インスリンは、アルツハイマー病患者に対して治療上の有益性、すなわち、脳インスリンシグナルを増加させることによって認知力を高め得ることが示唆されている。また、脳内インスリンは、食事量や体重のコントロールにも有効であると考えられている。肥満、高インスリン血症Zuckerラットは、BBBインスリン受容体の数の減少を示しており、これは、肥満時のCSFのインスリン取り込みの減少を説明し得る。
【0040】
上述の生物学的活性物質の送達システムは、架橋された多糖類、例えば、ジバニリンで架橋されたデンプンを含むナノ粒子を含んでいてもよい。
【0041】
この送達システムは、希釈剤をさらに含んでいてもよい。希釈剤は、天然デンプン、カチオン化グアーガム、セルロース誘導体、アクリルポリマー、多糖類、単糖類または二糖類、オリゴ糖類、またはタンパク質からなるポリマーのリストから選択され得る。上述の送達システムは、ポリアルキレングリコール、脂肪酸のポリグリセリル(例えば、プルロールオレイック)、ポロキサマー、および、ジまたはトリエチレングリコールエチルエーテル、アルコール、およびソルビトールからなるリストから選択された、ポリまたはオリゴヒドロキシ化合物をさらに含み得る。この送達システムがナノ粒子の懸濁液である場合、好ましい希釈剤はソルビトールである。
【0042】
いくつかの実施形態において、この送達システム中の希釈剤の濃度は、約0.01%~約80%の間である。
【0043】
この送達システムは、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポロキサマー、ソルビトール、デキストラン、マンニトール、アルコール、ジまたはトリエチレングリコールエチルエーテル、および脂肪酸のポリグリセリルから選択され得る。好ましい可塑剤には、グリセロールまたはプロピレングリコールが含まれる。いくつかの実施形態において、前記送達システム中の可塑剤の濃度は、約0.01%~約20%の間である。時に、送達システムがナノ粒子の分散液である場合、特に以下に説明するように、マイクロエマルジョンテンプレートから製造される場合、マイクロエマルジョンの成分がポリマーの可塑剤として機能し得ることもある。
【0044】
上述の送達システムは、界面活性剤をさらに含んでいてもよく、その界面活性剤は、胆汁塩、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリンなどのリン脂質、オレイン酸およびその誘導体、フシジン酸およびその誘導体、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、様々なTweenなどのポリオキシエチレンソルビタン誘導体、セスキオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタンおよびモノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸ソルビタンエステル、Sisternaショ糖エステルなどのショ糖および植物性脂肪酸に基づいた糖エステル、カプリロイルカプロイルマクロゴール-8-グリセリド(Labrasol)、ゼラチン、アルブミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セトステアリルアルコール、脂肪酸グリセリルモノエステル(例えば、モノステアリン酸グリセリン、オレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル)、ポリグリセリル6-ジオレアート(プルロールオレイック)、脂肪酸ポリオキシエチレングリコールの誘導体(例えば、Myrj45、49、51、52、52S、53、59など)、ポリオキシエチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン(23)ドデシルエーテルまたはBrij35など)、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される。各選択肢は、本発明の別の実施形態を表している。いくつかの実施形態において、その送達システム中の界面活性剤の濃度は、約0.1%~約50%の間であり、好ましくは1%~35%の間である。
【0045】
上記の送達システムは、共溶媒をさらに含んでいてもよく、その共溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン、プロピレンカーボネート、テトラグリコール(グリコフロール、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、ポロキサマー、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール、エチルエーテル、シリコーン、およびソルビトールである。また、送達システムは、例えば、ポリマーが水溶液中に存続するのを補助する、またはポリマー溶解速度を加速する材料などの、ポリマー可溶化剤を含み得る。そのような薬剤の一例は、尿素であり、ポリマーの溶解を補助するために塩基、例えば、水酸化ナトリウムが使用され得る。いくつかの実施形態において、その送達システム中の共溶媒の濃度は、約0.1%~約50%の間であり、好ましくは5%~25%の間である。
【0046】
上記の送達システムは、防腐剤をさらに含んでいてもよい。防腐剤は、パラベン、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、および安息香酸から選択され得る。いくつかの実施形態において、その送達システム中の防腐剤の濃度は、約0.001%~約1%の間である。
【0047】
上記の送達システムは、抗酸化剤をさらに含んでいてもよく、その抗酸化剤は、カルノシン、カロテノイド、リポ酸、尿酸、ウロカニン酸、クエン酸、乳酸、グルタチオン、システイン、チオレドキシン、スルホキサミン化合物、セレン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ユビキノン、ユビキノールおよび他のキニン、ビタミンC、アスコルビル誘導体、ビタミンE、トコフェロールおよびトコフェロール誘導体、レチノイド、ケルセチンなどのフラボノイド、ビタミンAおよびその誘導体、本発明の別の実施形態における各選択肢からなるリストから選択される。いくつかの実施形態において、前記送達システム中の抗酸化剤の濃度は、約0.01%~約10%の間である。
【0048】
上記の送達システムは、生理食塩水または緩衝液をさらに含んでいてもよく、前記緩衝液は、酸および次の酸の塩からなるリストから選択される。すなわち、リン酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸、安息香、グルコン酸、乳酸、グリセリン酸、アコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタル酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。次の塩基も同様である。すなわち、トリエタノールアミン、トロメタミン(TRIS)、グリシン、ジエタノールアミン、アンモニアである。いくつかの実施形態において、その送達システム中の緩衝液の濃度は、約1%~約99%の間である。
【0049】
この送達システムは、特にナノ粒子の分散液として配合した場合、脂質、および/または界面活性剤、および/または共溶媒をさらに含んでいてもよい。その送達システムの特に好ましい成分は、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドなどの界面活性剤、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、プロピレンカーボネート、テトラグリコール、およびN-メチルピロリドンなどの共溶媒、並びに、オレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、セチルおよび/またはステアリルアルコール、三酢酸グリセリル、カルナウバワックス、またはココアバターなどの脂質が含まれる。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、本発明の組成物を作成するための方法を提供する。この方法は、適切な温度で、上述の芳香族ジアルデヒドと、同じく上述の多糖類とを混合させることを含む。混合された多糖類と芳香族ジアルデヒドは、長期間、例えば、少なくとも30分、または1時間一緒に保たれて、芳香族ジアルデヒドによって化学的に架橋された多糖類を生成し得る。驚くべきことに、例えば水中のスラリーなどの芳香性ジアルデヒドの不溶性形態でさえ、例えばデンプンなどの溶解した多糖類を効率的に架橋することができることが、見出された。反応は、通常、高温、例えば30℃以上、より好ましくは35℃~45℃、または時としてさらに高い温度、例えば、75~90℃で起こる。理論に縛られることなく、溶解した芳香族ジアルデヒド分子は、溶解した多糖類と反応し、それによって芳香族ジアルデヒドをより溶解させる方向に平衡を移動させると推定される。反応速度は、反応そのものだけでなく、ジアルデヒドの溶解にも左右されるため、その工程は自然に多くの時間を要する。
【0051】
その多糖類とその芳香族ジアルデヒドは、媒体、例えば、水性媒体、または水相を含むマイクロエマルジョン中にともに混合される。媒体は、通常、少なくとも特定の条件で、多糖類を溶解し得る。例えば、デンプンは、アルファ化されなければ純水に溶け得ないが、水中のデンプンのスラリーを約80℃に加熱すると、最終的に溶液を得ることができる。したがって、媒体は水でもよい。デンプンは、尿素または水酸化ナトリウム溶液などの強塩基性媒体、あるいは尿素と塩基の組み合わせにより、均一に可溶化することもできる。水性媒体はまた、水有機混合物、すなわち、最大20%の有機溶媒を含む水であってもよい。本明細書に記載した用途に適する有機溶媒には、エチルアルコール、テトラグリコール、N-メチルピロリドンなどが含まれる。前記媒体は、多糖類と芳香族ジアルデヒドとの架橋反応用の触媒として作用し得る希酸を含んでいてもよい。
【0052】
一般に、上記組成物は、様々な工程によって製造され得る。例えば、組成物は、水性媒体中またはエマルジョン中で多糖類を架橋し、その後、溶液またはエマルジョンから溶媒を蒸発させることによって製造され得る。このようにして、ポリマーフィルムは、例えばキャスティングナイフまたはスリットダイ装置を用いた溶液キャスティング、任意に部分的に乾燥した溶液またはエマルジョン混合物の湿式押出、または乾燥した組成物の溶融押出を含む、当技術分野で知られている様々な技術によって得ることができる。
【0053】
加えて、この組成物は、当技術分野で知られているような噴霧乾燥技術を使用して得てもよい。一般に、この工程は、上記多糖類および上記芳香族ジアルデヒドを含む溶液またはエマルジョンを噴霧乾燥することを含み得る。噴霧乾燥は、効率的な溶媒除去を確実にするための適切な温度で、そして所望の大きさの粒子を得るために調整された溶液供給速度および噴霧圧力で実施することができる。
【0054】
また、上記工程は、特にナノサイズの粒子を得るために、当技術分野で知られているナノ沈殿技術を使用して実施してもよい。一般に、この工程は、貧溶媒を加えることにより、その後、上記多糖類および上記芳香族ジアルデヒドを含むナノサイズ粒子を形成することを含み得る。例えば、その多糖類を含む水性媒体が、その後、生物学的活性物質および芳香族ジアルデヒドを含む有機溶液を制御された速度で加えられ得る。あるいは、その水性媒体は、その中に溶解された多糖類と、分散または溶解された形態の芳香族ジアルデヒドの両方を含み得る。有機相は通常激しく混合され、ナノ沈殿を確実にするために、水相は、通常、希釈溶液となる。
【0055】
上記工程は、特にナノサイズの粒子を得るために、当技術分野で知られている塩析技術を使用して実施することもできる。この工程は、塩を加えることによって、その後、上記多糖類および上記芳香族ジアルデヒドを含むナノサイズの粒子を分離することを含み得る。一般に、塩を加えると、塩よりも溶解度の低い溶質が沈殿する。したがって、芳香族ジアルデヒドによって化学的に架橋された多糖類のナノ粒子は、濃縮された塩溶液を加えることによって作成(および分離)され得る。
【0056】
加えて、上記工程は、エマルジョンテンプレート技術を使用して実施することもできる。この工程は、その後、上記多糖類および/または上記芳香族ジアルデヒドを含むマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを加えることを含み得る。その多糖類およびその芳香族ジアルデヒドは、マイクロエマルジョン前駆物質、例えば、脂質および界面活性剤、および選択的に共溶媒の混合物に加えてもよい。多糖類の架橋が、その後マイクロエマルジョン液滴の内部で起こり、それによってナノサイズの粒子が形成され得る。
【0057】
ナノ粒子は、また、非架橋形態、特に脂質ポリマーのナノ粒子として得ることもできる。この場合、ナノ粒子自体が、芳香族ジアルデヒドと架橋され得る。この変形例では、この工程は、非架橋の脂質ポリマーナノ粒子を芳香族ジアルデヒドと結合させることを含み得る。芳香族ジアルデヒドと結合されたナノ粒子は、多糖類の架橋に必要な時間、例えば1時間の間、ともに保持され得る。
【0058】
これらの工程のいずれかによって得られたナノ粒子は、様々な工程によって、それらが形成される溶液/エマルジョンから分離および精製され得る。ある工程は、、例えば3000超の高いG値による、既定の時間間隔での遠心分離である。ナノ粒子は、その後、ペレットとして回収され、適切な媒体に再分散され得る。また、ナノ粒子は、例えば300~700Gの、低いGの遠心分離によって精製されてもよく、例えば、大きな凝集体または未反応の物質を除去し、この場合、ナノ粒子は、上清から収集され得る。また、ナノ粒子は、当技術分野で知られているように、イオン交換クロマトグラフィーによって精製されてもよい。
【0059】
最終的なナノ粒子は、適切な希釈剤、例えば、マンニトールの存在下で凍結乾燥させることができ、または適切な媒体で希釈して、必要に応じて使用することができる。
【0060】
例示的な実施形態において、上記工程は、以下のように実施されてもよい。コーンスターチは、精製水中において、均質なスラリーが形成されるまで約80℃で加熱され混合される。あるいは、多糖類、例えばデンプンは、水酸化ナトリウム単独または尿素と組み合わせた溶液に溶解されてもよい。芳香族ジアルデヒド(例えば、ジバニリン)は、例えば超音波装置を用いて水中によく分散させるか、あるいは、エチルアルコールまたはN-メチル-2-ピロリドン(Pharmasolve(商標))に溶解させるかまたは部分的に溶解させる。ジアルデヒド分散液または溶液は、次に、80℃のデンプンスラリーと合わせられ、酸触媒(酢酸または希塩酸)および可塑剤の存在下または非存在下で混合することができる。その後、混合物は、80℃で1時間の一定の攪拌下で、とどまらせることができ得る。その後、フィルムを形成するために、混合物をペトリ皿に流し込み、フィルムが形成されるまで、室温で一晩乾燥させるか、または、加熱された、例えば100℃の換気型オーブンに入れてもよい。
【0061】
さらなる態様では、本発明は、芳香族ジアルデヒドで架橋された多糖類を含む、本発明の生分解性ナノサイズ粒子の作成方法を提供する。好ましい多糖類はデンプンである。他の好ましい多糖類には、アルギン酸およびその塩、およびセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。
【0062】
以下の説明において、クルクミンが活性剤として指定される場合、それは例示的な活性剤として解釈されるべきであり、これは、他の任意の生物活性材料、特に好ましい生物活性材料に置換され得る。また、ジバニリンが架橋性芳香族ジアルデヒドと呼ばれる場合、それは、他のいかなる芳香族ジアルデヒド、特に好ましい芳香族ジアルデヒドを示すために使用され得る。いくつかの例示的な実施形態において、デンプンナノ粒子製造のためにナノ沈殿法が使用され得る。配合は、溶解した多糖類と芳香族ジアルデヒドを結合させることにより、以下に記載されるいずれかの方法でも実施することができる。活性剤(例えば、クルクミン)、芳香族ジアルデヒド(例えば、ジバニリン)および酸の有機溶液(例えば、エチルアルコールまたはN-メチルピロリドン)は、上述のとおり、水酸化ナトリウム/尿素中のデンプン溶液または水中のスラリーのいずれかに(例えば、制御された速度で作動するシリンジポンプを介して)移送される。あるいは、上述の水酸化ナトリウム/尿素中のデンプン溶液または水中のスラリーを、シリンジポンプを使用して、活性剤(例えば、クルクミン)、芳香族ジアルデヒド(例えば、ジバニリン)および酸のアルコール溶液に移すこともできる。デンプンナノ粒子は、このように、溶媒交換によって沈殿される。さらに別の方法として、水中の芳香族ジアルデヒド分散液を、デンプンの水性混合物または溶液と組み合わせることも可能であり好ましく、得られた混合物を活性剤および選択的に酸の有機溶液と混合してもよい。アルコールの存在下では、架橋されたデンプンは、沈殿する。反応物は、十分に遠心分離され、上清は捨てられ、ペレットは生理食塩水に再懸濁され得る。必要に応じて、特に大きな粒子が形成される場合、混合物は、軽く遠心分離し(例えば、500Gで5分間)、大きな粒子、例えば未反応のジバニリン余剰物および/または未反応の多糖類を含むペレットを廃棄し、その後、アルコールを蒸発させることによって精製され得る。あるいは、0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過して大きな粒子を除去してもよい。
【0063】
いくつかのさらなる実施形態では、ナノ粒子は、後述するように、マイクロエマルジョン内で芳香族ジアルデヒドと多糖類溶液とを混合させることにより、マイクロエマルジョンテンプレート法によって作成され得る。例えば、ポリマー溶液(デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)またはデンプンスラリーを作成し、あらかじめ作成した界面活性剤混合物(S-mix)に加え、透明なマイクロエマルジョンを得ることができる。界面活性剤混合物は、脂質および/または界面活性剤および/または共溶媒を含んでいてもよい。その脂質および/または界面活性剤および/または共溶媒は、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、炭酸プロピレン、テトラグリコール、オレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、およびココアバターからなる群から選択され得る。好ましくは、その界面活性剤プレミックスは、ココアバター、オレイン酸グリセリルおよびジオレイン酸グリセリル混合物、テトラグリコール、およびポリオキシル-40水素化ヒマシ油を含む。別に、同じS-mixの成分中にジバニリンを含むマイクロエマルジョンもまた作成する。両方のマイクロエマルジョンを合わせ、例えば、クルクミン、グラニセトロン、カンナビジオール、またはインスリン等の活性剤、および選択的に酸を加え、雰囲気または高温、例えば約35℃~約45℃の間で、0.5~1時間、温められる。形成されたナノ粒子は、相分離によって単離することができ、イオン交換クロマトグラフィーによって行ってもよい。あるいは、芳香族ジアルデヒドを水によく分散させ、S-mixに加え、透明なマイクロエマルジョンを得てもよい。並行して、水中にポリマー溶液(例えば、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム)またはスラリーを作成し、ジバニリンを含むマイクロエマルジョンに添加してもよい。その後、活性化合物および選択的に酸を加え、マイクロエマルジョン(ME)を室温または40~50℃で1時間の条件下で、静置することができる。MEを遠心分離し、ペレットを再分散してナノ粒子を得ることも、そのままの状態を保つこともできる。いずれの方法でも、その芳香族ジアルデヒド(この場合はジバニリン)は、必ずしもマイクロエマルジョンの水相内に分子的に溶解した状態で存在するわけではないが、このようにして架橋された多糖類(デンプン)が形成される。
【0064】
加えて、本発明は、本発明の生分解性粒子またはカプセルの作成方法を提供する。簡潔に述べると、界面活性剤、共溶媒および脂質を、好ましくは高温で溶解することによって、マイクロエマルジョンプレミックスを作成し得る。マイクロエマルジョンプレミックスは、その後、芳香族ジアルデヒド水性分散液および薬物と、そして最終的に多糖類溶液と混合され得る。得られたマイクロエマルジョンは、30分~2時間の間、例えば1時間、高温で攪拌したままにされ得る。得られた溶液は、例えばナノカプセルの形態をしている脂質ナノ粒子を含む。あるいは、形成された非架橋ナノカプセルにジアルデヒドを加え、高温で、例えば約35℃~約45℃の間で、0.5時間~3時間の間の時間間隔で攪拌したままにされ得る。
【0065】
以下の添付の実施例に示されるように、本発明のナノサイズ粒子は、鼻腔内投与後、生物学的活性物質が脳に浸透することを促進する。したがって、さらなる態様として、本明細書が提供するのは、治療有効量の生物学的活性物質を含むナノサイズカプセルの量を対象に投与することによる治療を必要とする対象の治療方法であり、すなわち、ナノサイズカプセルは、生物学的活性物質に応答する疾患の治療のために用いることができる。投与は、好ましくは、鼻腔内経路、すなわち、鼻の中である。投与は、従来のスプレー、またはスポイトによって行うことができる。鼻腔内投与では、生物学的活性剤は、通常、脳内で活性を発揮するように選択される。脳内濃度と血漿内濃度の比率は、通常、同じ生物学的活性物質を静脈内または皮下投与した場合よりも高くなる。試験用非ヒト哺乳動物の脳内から見出されたその量は、通常、他の投与経路、すなわち従来の投与経路によって得られる量よりも少なくとも150%高い。予想外なことに、本発明によるナノサイズ粒子、特に脂質ポリマーナノ粒子の鼻腔内投与によって、インスリンであっても試験用非ヒト哺乳動物の脳内にうまく送達され得ることがわかった。従来の送達によって脳内で同等の濃度に達するには、非常に深刻な病的低血糖を引き起こす量のインスリンが必要となる。上記治療に適合する、すなわち特定の生物学的活性物質の脳内濃度上昇に反応する疾患または障害としては、精神病、てんかん、不安症、慢性疼痛、片頭痛、不眠症、多発性硬化症、線維筋痛症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血性脳卒中、およびがんが含まれる。
【0066】
さらに投与可能な経路として、ナノサイズカプセルの局所塗布による皮膚からの投与、経口投与、皮下埋め込み式リザーバー、舌下投与、または静脈内投与であってもよい。
【実施例0067】
実施例1-ポリマーシート
【0068】
【0069】
グリセロールを化学ビーカーで秤量し、その後水を加え、マグネチックミキサーで混合した。天然コーンスターチ(Hopkin & Williams Ltd,Chadwell Heath,Essex,England)をゆっくりと加え、80℃で30分間、マグネチックミキサーを用いて溶解させた。別途、ジバニリンをバイアル瓶内のエチルアルコールに分散させ、得られた溶液に加えた。この混合物を30分間攪拌した。
【0070】
得られた混合物を、キャスト量が0.6~1ml/cm2になるように、正方形のペトリ皿に流し入れた。その皿を開けたままにして、溶媒を雰囲気で一晩蒸発させた。得られたフィルムについて、得られたもの、または150℃で5分間硬化させたもので試験した。
【0071】
得られたフィルムを基板から分離して、試験に適した形状に切断した。
【0072】
厚み測定をミツトヨ厚み計を用いてフィルムあたり3点で行った。得られた平均厚さは、約200μmだった。
【0073】
【0074】
同様に、配合1.2~1.12を作成した。1.1と類似のフィルムを得た。
【0075】
実施例2-マイクロエマルジョンに支持された架橋
【0076】
【0077】
同様に、配合2.1~2.5を作成した。S-mixを別途準備し、必要な量のジバニリンを溶解させた。実施例1と同様に、混合物をデンプン溶液に加えた。得られた架橋デンプンフィルムは、実施例1で得られたものと類似していた。
【0078】
実施例3
架橋剤と可塑剤を最適化するために、さらなる配合を作成した。
【0079】
【0080】
テトラグリコールは、グリコフロールまたはテトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル(CAS番号31692-85-0)としても知られている。
【0081】
機械試験のために、フィルムを15×50mmの長方形に切断し、試験前に相対湿度50%、20~22℃で24時間放置した。LRX Plus Materials Test Machine(Lloyd Instruments Ltd.,Fareham Hants,UK)を用いて、最大10Nのロードセルおよび0.1mm/sの駆動速度で機械試験を実施した。ヤング率は、伸長応力(MPa)に対して、ひずみ率をプロットすることにより求めた。
【0082】
以下の配合を、比較のため、有効な架橋剤を入れずに作成した。
【0083】
【0084】
その結果を
図1~4に示す。架橋率の増加とともに最大応力はやや増加し、伸びは著しく減少していることがわかる。また、硬化後のフィルムは、相互に、より類似していることがわかる。また,最大ひずみ(伸び率)の低下から示されるように,フィルムはより脆くなった。
【0085】
実施例6-酸触媒
【0086】
【0087】
実施例1の一般的な手順に従い、フィルムを作成した。酸溶液をジバニリンに添加する前に、水に加えた。加えて、架橋機能のないアルデヒドであるバニリンによるフィルムも使用した。
【0088】
得られたフィルムは、実施例1で得られたものと類似していた。非架橋の配合4.3(バニリンを含有するもの)のフィルムは、著しく脆く、水への溶解が速かった。
【0089】
実施例5-酸触媒によるポリマーフィルム
【0090】
実施例1の一般的な手順に従い、追加の配合を作成した。
【0091】
【0092】
さらなる配合には、以下が含まれた。
【0093】
【0094】
得られたフィルムは、実施例1で得られたフィルムの性質に類似していた。
【0095】
フィルム5.4および5.6を、環境的生分解をシミュレーションするために32日間、泥を含んだ水にさらした。両フィルムとも分解が観測され、フィルム5.4(15%架橋)は、5%架橋フィルム(フィルム5.6)よりも比較的安定であったものの、フィルムのほとんどが、分解され、消滅した。
【0096】
実施例6-活性剤存在下のポリマーナノ沈殿によるナノ粒子の生成
【0097】
【0098】
ジバニリンを超音波浴を用いてエチルアルコールに溶解した。得られた溶液にクルクミンを加え、溶解するまで混合した。別に、1グラムのデンプンを50mlの水に溶解することによって、2%デンプン溶液を作成した。必要な量のデンプン溶液をクルクミン/ジバニリンエタノール溶液に加え、得られた混合物を換気フード内で一晩、乾燥するまで蒸発させた。
【0099】
得られた混合物を、陽イオン交換樹脂Purolite S930を充填したイオン交換クロマトグラフィーカラムを用いて、約30mlの水で溶出することにより精製した。得られた溶出液を0.5N塩酸により、発色指示薬で約pH4に酸性化した。次に、マンニトールを、その得られた量に対して0.1重量%の量で加え、得られた混合物が乾燥するまで凍結乾燥させた。
【0100】
さらなる配合として、以下の表に記載するSNP-02を作成した。ナノ粒子は、配合SNP-01と同様に作成した。得られた粗ナノ粒子混合物を水に再分散させ、0.45μmフィルター膜で濾過した。そのろ液にマンニトールを加え、凍結乾燥させた。
【0101】
【0102】
【0103】
上記の表に従い、溶液を上述の実施例の方法で作成した。連続攪拌下、シリンジ内容物を移送するために制御速度9ml/分で作動するシリンジポンプを使用し、ジバニリンとデンプン溶液の混合物をクルクミン溶液に注入した。添加完了後、混合物を4600Gで15分間遠心分離し、上清を廃棄した。ナノ粒子ペレットを生理食塩水に再懸濁し、4~8℃で密閉保存した。
【0104】
【0105】
溶液を、上記の表に従って、上述の実施例の方法で作成した。酸中のデンプン水溶液を、ジバニリンおよびクルクミンの有機溶液に、連続攪拌下、室温かつ0.05ml/minの速度で滴下して加えた。有機溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、得られたナノ粒子懸濁液を、ろ液を回収するために0.45μmメンブレンフィルター(ナイロン)でろ過した。最終的に濃度が0.1%w/vとなるように、ろ液にマンニトールを加え、凍結乾燥させた。
【0106】
【0107】
SNP/C01と同様の方法を用いて、架橋剤を入れずにナノ粒子を作成した。生成物の平均ナノ粒子径は、167nmであり、広く分布していた。
【0108】
【0109】
同様に、配合SNP/Blank2およびBlank3を作成した。
【0110】
【0111】
架橋デンプンナノ粒子のさらなる配合を作成した。
【0112】
【0113】
【0114】
溶液を、上記の表に従い、上述の実施例の方法で作成した。連続攪拌下、シリンジ内容物を移送するために制御速度0.05ml/minで作動するシリンジポンプを用いて、NMP中のジバニリン溶液とデンプン溶液の混合物をクルクミン溶液に注入した。添加完了後、混合物を4600Gで15分間遠心分離し、上清を廃棄した。ナノ粒子ペレットを生理食塩水に再懸濁し、4~8℃で密閉保存した。平均ナノ粒子径は、73nmで分布が狭く(SNP/C-03)、64nmで分布が狭かった(SNP/C-04)。
【0115】
さらなる配合を作成した。
【0116】
【0117】
【0118】
溶液を、上記表に従い、本明細書に記載の実施例の方法で作成した。約35~40℃で連続的に攪拌および加熱しながら、シリンジ内容物を移送するために制御速度0.05ml/分で作動するシリンジポンプを用いて、有機溶液をデンプン溶液に注入した。添加完了後、混合物を500Gで5分間遠心分離し、ペレットを廃棄した。上清を乾燥するまで蒸発させ、得られた粒子を生理食塩水に再懸濁して4~8℃で密閉保存した。平均粒子径は、144nmで分布が狭く(SNP/C-05)、143nmで分布が狭かった(SNP/Blank4)。
【0119】
いくつかの得られたナノ粒子を、後述するようにインビボでテストした。
【0120】
実施例7-マイクロエマルジョンテンプレートを使用したデンプン-塩基ナノ粒子生成物
【0121】
これらの配合では、界面活性剤混合物S-mixBを使用して、以下のように作成した。
【0122】
【0123】
【0124】
デンプン水溶液を上記と同様に作成した。表記のアリコートをS-mixBに混合し、そこにクルクミンを加え、溶解するまで攪拌した。ジバニリンを記載量のS-mixBに溶解し、次いで精製水を加えた。両成分を合わせ、30分間混合した。その後、塩化ナトリウム溶液は、ナノ粒子を分離するために加えられた。
【0125】
ナノ粒子を、Purolite A380陰イオン交換樹脂を用い、水酸化ナトリウム水溶液で溶出しながら精製した。その溶出液を酸性化し、マンニトールを加えた後、凍結乾燥させた。
【0126】
同様に、以下の表に従って、配合CNP/S-02およびBlankのナノ粒子を作成した。
【0127】
同様に、以下の表に従って、さらに配合CNP/S-03を作成した。ジバニリンとクルクミンをマイクロエマルジョン前駆体に溶解し、そこにデンプン水溶液を滴下によって加えた。この混合物を4℃で一晩放置した後、ナノ粒子を塩化ナトリウム水溶液を用いて分離し、イオン交換クロマトグラフィーにより精製し、マンニトールを加えて凍結乾燥させた。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
実施例8-脂質ポリマーナノ粒子
【0132】
以下の配合において、界面活性剤混合物(S-mixC)をマイクロエマルジョン前駆物質として使用した。
【0133】
【0134】
この成分を50℃に加熱し、均一な液体が得られるまで攪拌した。その後、混合物を雰囲気下で冷却し、必要に応じて使用した。
【0135】
以下の配合を作成した。
【0136】
【0137】
デンプンを水酸化ナトリウム溶液の存在下、80℃の水に溶解した。別に、ジバニリンを水に十分に分散させ、表記の分量をS-mixCに混合し、80℃に加熱し、50℃に冷却し、溶解するまで混合した。そこにクルクミンを加え、溶解するまで攪拌し、その後、表記の分量のデンプン溶液を加え、次いで酢酸を加えた。ナノ粒子が得られた。
【0138】
同様に、配合SNP/LS-01、SNP/LS-02およびSNP/LS-03を作成した。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
マイクロエマルジョン前駆物質用の界面活性剤混合物(S-mixC1)を、4分の1の濃度のココアバターを含有する、次の配合SNP/LS-04に使用した。S-mixC1については、S-mixと同様に製造した。
【0143】
【0144】
【0145】
以下のいくつかの配合において、マイクロエマルジョン前駆物質の界面活性剤混合物(S-mixC2)(半分の濃度のココアバター)を用いた。S-mixC2については、S-mixCと同様に製造した。
【0146】
【0147】
デンプンを80℃の水に溶解した。別に、ジバニリンを水に十分に分散させ、表記の分量をS-mixC2と混合し、溶解するまで混合した。そこにクルクミンを加え、溶解するまで混合し、次に、表記の分量のデンプン溶液を加え、さらに酢酸を混合した。得られた35%の水を含むマイクロエマルジョンを40℃で1時間保温し、その後、最終的な水の濃度が44.4%になるまで希釈した。ナノ粒子が得られた。同様にして、ブランク脂質ナノ粒子、および、天然高分子ナノ粒子を作成した(それぞれ、SNP/LS-05、SNP/LS-06-Blank、およびSNP/LS-07-Blank)。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
実施例9-開始物質となるさらなる多糖類
【0152】
次のいくつかの配合において、さらなる界面活性剤混合物(S-mixA)をマイクロエマルジョン前駆物質として使用した。
【0153】
【0154】
PEG化水素化ヒマシ油を60℃でテトラグリコールと混合し、溶解するまで攪拌した。別に、イソプロピルパルミテートをオレイン酸グリセリルと混合し、さらにテトラグリコールとPEG化水素化ヒマシ油の溶液と混合し、均一な液体が得られるまで混合した。
【0155】
【0156】
さらに、SNP/P-02を作成した。
【0157】
【0158】
HPCの水溶液を、上記の表に従ってS-mixAのアリコートに混合した。次に、ジバニリンを、S-mixAのアリコートに溶解し、その後、水および酢酸を加えた。この2つの溶液を合わせて混合した後、そこにクルクミンを加えた。この混合物を、透明な液体が得られるまで攪拌し続けた。その後、精製水を加えて相分離を行い、ナノ粒子を含む下相が回収され、保持された。
【0159】
次のいくつかの配合において、上記の界面活性剤混合物S-mixCをマイクロエマルジョン前駆物質として使用した。
【0160】
配合SNP/CC-01を、次のように作成した。アルギン酸ナトリウム水溶液を水中に作成し、以下の表に記載のその分量をS-mixCに混合し、透明な溶液が得られるまで混合した。次に、クルクミン、ジバニリン、および酢酸を、得られた混合物に加えた。その後、ナノ粒子を形成するために、得られたマイクロエマルジョンに精製水を加えた。
【0161】
【0162】
ナノ粒子を6250Gで10分間遠心分離により分離し、上清を静かに取り除き、ペレットを生理食塩水に戻した。封入効率は、7.4%であった。
【0163】
【0164】
以下の例外を除き、配合SNP/CC-02を、配合CC-01に準じて作成した。ジバニリンを酢酸を含むNMPに溶解し、架橋剤を入れずに最初のナノ粒子を作成した。すなわち、水を加えて均一に混合した後、マイクロエマルジョンを6250Gで10分間遠心分離により分離し、ペレットを水に再懸濁し、そこにジバニリン溶液を加え、1時間攪拌した。封入効率は、57%だった。
【0165】
【0166】
同様にして、アルギン酸ナトリウム溶液のアリコートを、S-mixC、クルクミンおよび酢酸、次いで精製水と、均質な液体が得られるまで混合した。上記と同様に、ナノ粒子を遠心分離によって分離した。別に、ジバニリンを水に分散させた(30ml中1.2mg)。ナノ粒子のペレットを、1.5mlの水で希釈した1.5mlのジバニリン分散液の混合液に再懸濁し、さらに雰囲気下で1時間攪拌した。その結果、封入効率は、31.2%と測定された。ペレットの再懸濁を3mlのジバニリン分散液で行ったこと以外は同様にして、配合SNP/CC-04を製造した。
【0167】
【0168】
同様に、配合CC-05を、以下の表に従って製造した。
【0169】
【0170】
ポリマーとしてのヒドロキシプロピルセルロース(LP-02,LP-03,LP-04)を含む配合を、以下の表に記載された分量と手順に従い、上述の方法により、作成した。
【0171】
【0172】
簡潔に述べると、ヒドロキシプロピルセルロースを室温で水に溶解し、超音波浴によりジバニリンをさらなる量の水に分散させた。このジバニリン分散液のアリコートに、秤量したS-mixCを加え、さらにクルクミン、HPC溶液、酢酸を加えた。得られた35%(S-mixCの量によっては45%)油中水型マイクロエマルジョンを常温で1時間攪拌し、ナノ粒子を得た。このマイクロエマルジョンを精製水で希釈し、マイクロエマルジョンの転相を行った。
【0173】
【0174】
【0175】
実施例10-本発明のナノ粒子による鼻腔内投与後のラットの脳内のクルクミン蓄積量
脳へのクルクミン輸送ナノ粒子の鼻腔内投与
【0176】
すべての動物実験は、イスラエル法Human Care and Use of Laboratory Animalsを遵守するネゲヴ・ベン=グリオン大学のInstitutional & Use Committeeによって審査・承認されたプロトコルに従って実施した。Sprague-Dawleyラット(雄、体重250~350g、ハーラン、エルサレム)が、この試験で使用された。すべての動物は、ポリカーボネート製のケージに入れられ、温度および湿度制御条件下で、12/12時間の明/暗サイクルが維持された。ラットは、餌と水を自由に入手できた。鼻腔内経路(IN)または尾静脈を介した静脈(IV)経由で、動物にランダムに投与した。INルートの場合、使用量が鼻孔あたり15μlであるのに対し、IVルート(尾静脈)の場合、使用量が0.2mlであった。動物は、INまたはIV投与の直前にイソフルラン蒸気を用いて鎮静させた。投与から通常60分後、ケタミン(80mg/kg、腹腔内投与(i.p.))とキシラジン(10mg/kg、i.p.)を用いて、動物に深く麻酔をかけた。その後、右心房から0.5ml採血し、PBS 1Xで経心腔的潅流を行い、心臓が停止するまで各臓器の残血を取り除いた。その後、脳を取り出し、PBSで置き洗いし、-80℃で凍結し、完全に乾燥するまで凍結乾燥させた(~12h)。最後に、組織を粉砕し、2mlのメタノールで抽出し、遠心分離して上清を1.5mlのアンバーバイアルに取り、HPLCで分析するまで-80℃で保存した。
【0177】
実施例6の配合SNP/Blank4、架橋率7.5%(15mgジバニリン)であるSNP/C-05、架橋率30%(60mgジバニリン)であるSNP/C-05を上記と同様に動物に投与した。その結果を
図5に示す。さらに、実施例8の配合LP-04を上述と同様に投与した。その結果を次の表に示す。
【0178】
【0179】
実施例10a-さらなるクルクミンナノ粒子配合と鼻腔内投与後の脳内蓄積量
【0180】
クルクミンが導入されたナノ粒子(アミロ脂質ナノ小胞(ALNs))を、マイクロエマルジョン前駆物質として作成した。マイクロエマルジョンは、上記のS-mixC2のように、ポリオキシル-40水素化ヒマシ油、ココアバター(テオブロマオイル)、テトラグリコールおよびオレイン酸グリセリルからなる。コーンスターチ(4%w/v)を80℃の水で分散しゲル化した後、40℃で冷却した。継続的な攪拌下、ジバニリン、クルクミン、およびゲル化したデンプンスラリーを、40℃の水浴内のマイクロエマルジョンに加えた。酢酸によりpH4に調整し、溶液を1時間攪拌した後、1N NaOH溶液によりpH5~6に調整した。適切な量の水で希釈した後、最終的なALN分散液は、1ml当たり1.9mgのクルクミンを含んでいた。
【0181】
ジバニリンの量を変更した次の配合を作成した。
【0182】
【0183】
配合の粒径分布は、架橋剤なしの粒子では最大132.3±43.9であり、2%ジバニリンによって架橋されたALNsでは147.8±62.2であり、6%ジバニリンによって架橋されたALNsでは144.6±51.7であり、ポリマーなしの脂質ナノ粒子では128.1±58.3であった。
【0184】
インビボ試験では、動物を少なくとも3匹ずつのグループに無作為に分けた。鼻腔内投与のために、各動物に使用された投与量は、クルクミン160μg/kg体重であり、約1012ナノ粒子/kg体重以下が送達された。適用量は、86~87μl/kg体重(30~34μl、約15μl/鼻孔)であった。静脈内投与のために、200μg/mlのクルクミンを3:7のエタノール-生理食塩水(滅菌)溶液に溶解して、注射用水アルコール溶液を作成した。この溶液から280~320μlのアリコートを、鎮静状態の動物の尾静脈に注射した(投与量160μg/kg体重)。
【0185】
投与直前にイソフルラン蒸気を用いて、動物を鎮静化した。投与から60分後、CO2吸引により安楽死させた。その後、心臓穿刺によりヘパリンチューブに血液を採取した。ヘパリンチューブ内の血液を10000Gで10分間遠心分離し、分離した血漿をバイアルに移し、HPLCで分析するまで-20℃で保存した。脳を慎重に摘出し、生理食塩水で洗浄後、-80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。
【0186】
血漿内のクルクミンの定量については、血漿サンプル1mlとエタノール2mlを混合し、ボルテックスミキサーによる攪拌後、10000Gで10分間遠心分離することにより行った。凍結乾燥させた脳をテフロン(登録商標)ペストルを用いて粉砕した後、2mlのエチルアルコールを加え、ボルテックス撹拌および10000Gで10分間の遠心分離した。血漿および脳抽出物の上清を、直ちにHPLCで分析した。
【0187】
各サンプルから20μLのアリコートを、充填済みカラム(250×4.6mm、5μm、Thermo Scientific(商標)Betasil C18)を備えたHPLCシステムに注入した。HPLCシステム(島津製作所VPシリーズ)は、オートインジェクターとダイオードアレイ検出器から構成されている。クルクミンの定量は、425nmで行った。アセトニトリル-0.2%酢酸溶液(75:25)からなるアイソクラティック移動相を用い、流速1ml/分でクロマトグラフを行った。エタノールに溶解した標準溶液を用い、検量線(ピーク面積-薬物濃度)を作成し、一連のクロマトグラフ用サンプルを分析した。定量下限値は0.01μg/mlだった。
【0188】
ラットにナノ粒子を鼻腔内投与した1時間後に血漿内および脳内に見つかったクルクミン量を、クルクミン用量が160μg/kgの水アルコール溶液を静脈投与した1時間後のクルクミン量と比較した結果を、以下の表(および
図7)にまとめた。
【0189】
【0190】
上記の表において、「IN-ALN」はクルクミンを含むアミロ脂質ナノ小胞の鼻腔内投与を、「IN-無修飾ALN」は非架橋デンプンを用いたアミロ脂質ナノ小胞の鼻腔内投与を、「IN-脂質NPs」はデンプンを介さずALNとして製造した固体ナノ粒子の鼻腔内投与を、「IV溶液」はクルクミンの水アルコール溶液の静脈投与を、意味する。
【0191】
ナノ粒子の性質は、架橋度を利用して容易に最適化でき、すなわち、特に水性媒体中で粒子の弾性を適合させて、脳への薬物の最適化された送達を提供することがすぐにわかる。
【0192】
実施例11-試験管内での皮膚透過研究
【0193】
動物の皮膚を通過するクルクミンの透過性は、フランツ型拡散セルシステム(Permegear,Inc.,Bethlehem,PA)を用いて、in vitroで測定された。拡散面積は1.767cm2(直径15mmのオリフィス)であり、受容体区画容積は12ml以上だった。ウォータージャケットセル内の溶液を37℃に保温し、外部駆動のテフロンコーティングされたマグネットバーで攪拌した。各セットの実験を、それぞれ異なる動物の皮膚を入れた、少なくとも4つの拡散セル(n≧4)を用いて行った。すべての動物実験を、イスラエル法Human Care and Use of Laboratory Animalsを遵守するネゲヴ・ベン=グリオン大学のInstitutional & Use Committeeによって審査・承認されたプロトコルに従って実施した。Sprague-Dawleyラット(雄、350~400g、EnvigoRMS、Jerusalem、Israel)をCO2吸引により安楽死させた。動物の新鮮な死体から腹部の毛を慎重に刈り取り、次に全層皮膚の切片を切除して、直ちに使用した。すべての皮膚切片について、拡散セルに乗せる前に経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定し、または使用するまで低温で保存した。TEWL検査は、Dermalab(商標)Cortex Technology instrument(Hadsund,Denemark)を用いて皮膚片で実施し、TEWLレベルが15g/m2/h未満の皮膚片のみを試験に用いた。角層が上になるようにレシーバーチャンバーに皮膚を置き、ドナーチャンバーをクランプで固定した。余分な皮膚を切り落とし,真皮側をレシーバーチャンバーとし,α-トコフェロール(0.01%)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)で満たした。37℃で15分間皮膚洗浄した後、セルから緩衝液を除去し、レシーバーチャンバーを新しいリン酸緩衝液で再充填した。0.2mlのナノ粒子懸濁液またはアルコール溶液のアリコートを皮膚に塗布し、この時間を0とした。サンプルは、所定の時間ごとにレシーバー溶液から取り出した。6時間の実験後、角質層上に吸着したクルクミンの残留物を除去するために、クルクミンにさらされた各皮膚組織を蒸留水で注意深く洗浄し、拭き取り、テープストリップ(×10)した。その後、その皮膚組織を小片に切断し、20mlのバイアルに入れた。各バイアル内の皮膚片を、2mlのメタノールによって抽出した。バイアルを4℃で一晩振盪(750rpm)した後、抽出は完了した。レシーバーサンプルと皮膚抽出物を20mlのバイアルに入れ、HPLCで分析するまで-80℃で保存した。
【0194】
実施例6のSNP/Blank1を非架橋NP、SNP/C-03を20%架橋、SNP/C-04を75%架橋として、CUR濃度0.5mg/mlで各配合1mlをラット皮膚に塗布した。CUR[0.5mg/ml]の水アルコール(50:50)溶液は、そのまま使用した。皮膚におけるクルクミン蓄積量を
図6に示す。
【0195】
さらに、実施例7の配合SNP/LS-06blank、SNP/LS-07blank、およびSNP/LS-05を、上記と同様に皮膚に塗布した。その結果を
図8に示す。
【0196】
実施例12-グラニセトロン配合および本発明のナノ粒子による鼻腔内投与後のラット脳内のグラニセトロン蓄積量
【0197】
本発明と併せて記載した組成物およびプロセスの汎用性を示すために、グラニセトロンを架橋デンプンシェルを有する脂質ナノカプセル、すなわち脂質ポリマーナノ粒子に組み込み、そのラットの脳への透過性を次のように評価した。
【0198】
グラニセトロン配合を次のように作成した。
【0199】
【0200】
【0201】
図11に示されたように、粒径(1200倍に希釈後、DLS測定)は、170nm(94%ピーク重量)であった。薬物濃度は、GS-03では1.4mg/ml、または3倍希釈後では14μg/30μl、GB-01では1.2mg/ml、または3倍希釈後では12μg/30μlであった。
【0202】
各動物の鼻腔内投与量は、32μgGR/kg体重とした。適用量は、1回あたり約15μLであった。静脈内投与では、滅菌生理食塩水に溶解してGR塩酸水溶液を作成した。その約0.3mlを鎮静させた動物の尾静脈に注射した(GR塩酸投与量=36μg/kg体重)。動物は、投与直前にイソフルラン蒸気を用いて鎮静化させた。投与60分後、CO2吸引により動物を安楽死させた。その後、血液を心臓穿刺によりヘパリンチューブに採取した。ヘパリンチューブ内の血液を10000Gで10分間遠心分離し、分離した血漿をバイアルに移し、HPLCで分析するまで-20℃で保存した。脳を慎重に摘出し、生理食塩水で洗浄後、-80℃で凍結保存した。
【0203】
血漿内GRの定量を、血漿サンプル1mlにメタノール2mlを加え、ボルテックス攪拌後、10000Gで10分間遠心分離することにより実施した。脳を2mlのメタノール/0.5N HCI溶液(1:1)で均質化した後、10000Gで10分間遠心分離した。血漿および脳抽出物の上清を、直ちにHPLCで分析した。各サンプルから20μlのアリコートを、あらかじめ充填されたCNカラムを備えたHPLCシステムへ挿入した。GRの定量は301nmで行なわれた。pH5のアセトニトリル-酢酸緩衝液(45:55)を含むアイソクラティック移動相を用い、1ml/minの流速でサンプルのクロマトグラフを行った。
【0204】
上記と同様に、配合を経鼻投与した。鼻腔内投与および静脈投与(投与量32μg/kg)1時間後のグラニセトロンの濃度を、以下の表にまとめた。
【0205】
【0206】
本発明に基づく特定の配合は、鼻腔経路から良好に吸収され、投与1時間後の血漿内濃度と比較して、高い濃度で脳をターゲッティングすることが示された。ラットの鼻孔への投与量は12μgであり、これは32μg/kg体重として計算される。これは臨床で5分間の点滴静注により投与される量(10~40μg/kg)の範囲内であった。GR-HCIの36μg/kgを静脈内投与したところ,ラット脳内平均濃度は59.7ng/gであったが,血漿中には薬物が検出されず,ヒトと比較して非常に高い代謝速度であることが示唆された。この脳内濃度および1時間後に検出された薬物がなかったことは,静脈内投与後、投与量のごく一部(約0.64%)が脳に到達したが、大部分の薬物は、体組織に広がって代謝されたことを示している。一方、本発明のナノ粒子を静脈内投与した場合、脳内に非常に高いGRの蓄積量(550.2ng/細胞g、投与量の7.8%、配合GB-01)が検出され、平均血漿内濃度は22.2ng/mlであり、これは、肝代謝を回避したことを意味する。このことから、このアミロ脂質ナノ粒子配合のIN投与後、薬剤は鼻腔血管から体内に一部分布するが、脳を直接ターゲッティングし、非常に高い脳内濃度に到達することが明らかとなった。このアミロ脂質ナノ粒子IN投与後のGRの脳内の高い蓄積は、投与量を10分の1(例えば1~4μg/kg)に下げても、非常に低い全身曝露で、治療上最適な脳内濃度に達する可能性を示している。
【0207】
実施例13-カンナビジオール配合および本発明のナノ粒子による鼻腔内投与後のラット脳内のカンナビジオール蓄積量
【0208】
脂質ポリマーナノ粒子のさらなる汎用性を示すために、カンナビジオールを組み込んだ。
【0209】
簡潔に述べると、表中の分量に従って、デンプン溶液およびジバニリン分散液を、上記と同様に作成した。マイクロエマルジョンプレミックスのS-mixC2に、ジバニリン分散液の計量した分量を加え、次いでカンナビジオール、ポリマー溶液の計量した分量および酢酸を加えた。得られたマイクロエマルジョンを40℃で1時間攪拌した後、表に示すように希釈し、水44.4%の水中油型エマルジョンとした。最終的な薬物濃度は、10mg/ml、または3倍希釈後の100μg/30μlであり、これはラットへの投与量である。
【0210】
配合は、次のとおりである。
【0211】
【0212】
各動物で使用された鼻腔内投与量は、CBD220μg/kg体重であった。適用量は約15μl/鼻孔であった。静脈内投与では、CBDを少量のエタノールに溶解し、1.5%Tween80および0.1%アスコルビン酸を含む滅菌生理食塩水(pH7.4)と混合し、注射用溶液を作成した。エタノールの最終濃度は、5%だった。この溶液の0.1mlの容量(CBDlmg/ml)を鎮静させた動物の尾静脈に注射した。動物を投与直前にイソフルラン蒸気で鎮静させた。投与から60分後、CO2吸引により動物を安楽死させた。その後、心臓穿刺によりヘパリンチューブに血液が採取した。ヘパリンチューブ内の血液を10000Gで10分間遠心分離し、分離した血漿をバイアルに移し、HPLCで分析するまで-20℃に保存した。脳を慎重に摘出し、生理食塩水で洗浄後、-80℃で凍結し、凍結乾燥させた。
【0213】
血漿内CBDの定量は、血漿サンプル1mlとメタノール2mlを混合し、ボルテックス攪拌し、10000Gで10分間遠心分離することにより行った。乾燥させた脳を粉砕し、2mlのメタノールで抽出した後、10000Gで10分間遠心分離した。血漿および脳抽出物の上清を直ちにHPLCで分析した。各サンプルから20μlのアリコートを、プレパックC18カラムを備えたHPLCシステムに注入した。CBDの定量は、220nmで実施された。サンプルをアセトニトリル-0.1%酢酸溶液(75:25)を含むアイソクラティック移動相を用いて、1ml/minの流速でクロマトグラフ処理した。
【0214】
その結果を以下の表に示す。CBD含有ナノ粒子のIN投与1時間後に得られた脳内濃度は、15.6ng/gであったのに対し、同用量の静脈内投与では検出可能な濃度は認められなかった。IN投与後のCBDの血漿濃度もIV投与後より高く、(1)全身吸収、および(2)肝代謝の回避を意味する。
【0215】
【0216】
実施例14-インスリン配合および本発明のナノ粒子による鼻腔内投与後のラット脳内のインスリン蓄積量
【0217】
以下の例は、ジバニリン架橋デンプンでコーティングされた脂質ナノ粒子が、鼻腔内経路でインスリンを効率的に脳に送達できることを示している。
【0218】
以下のように、インスリン配合を作成した。デンプン溶液を上記と同様に、80℃で作成し、さらに使用する前に冷却した。インスリンをこの溶液に加え、十分に混合した。別途、上記と同様に、ジバニリンを5分間超音波処理により水に分散させ、その分散液のアリコートを、事前に計量した量のS-mixC2に溶解させた。インスリン-デンプン混合物のアリコートをマイクロエマルジョンに加え、次いで酢酸を加えた。得られた混合物を、40℃で1時間攪拌し、ナノ粒子を生成させた。その後、温めておいた水酸化ナトリウム溶液を加え、生成物のpHを中和した。最終的な薬物濃度は0.3mg/ml、または生理食塩水で希釈後、ラットへの投与に適した7.1μg/30μlの用量となった。
【0219】
【0220】
配合INS-01を鼻腔内投与に使用した。投与量は、インスリン28μg/kg体重とした。適用量は、約15μL/鼻孔であった。静脈内投与(IV)および皮下投与(SC)用に、濃度が90μg/mlになるようにヒトインスリンを滅菌生理食塩液に溶解し、注射用インスリン溶液を作成した。この溶液の0.1ml(9μg投与、すなわち36μg/kg)を鎮静した動物の尾静脈、または頸部上の緩皮下に注射した。動物は、投与直前にイソフルラン蒸気で鎮静させた。投与から60分後、CO2吸引により安楽死させた。その後、血液を心臓穿刺によりヘパリンチューブに採取した。ヘパリンチューブ内の血液を10000Gで10分間遠心分離し、分離した血漿をバイアルに移し、ELISA法で分析するまで-20℃で保存した。脳を慎重に摘出し、生理食塩水で洗浄後、-80℃で凍結させた。
【0221】
血漿内インスリンの定量は、血漿サンプル1mlとメタノール1mlを混合し、ボルテックス攪拌し、その後10000Gで10分間遠心分離することにより実施した。脳は2mlの水で均質化した後、10000Gで10分間遠心分離を行った。血漿および脳抽出物の上清を、サンドイッチ原理を利用したヒトインスリンELISAキット(WuhanFineBiotechco.,Wuhan,Hubei,China;CatalogueNo.EH0374)を用いて、ELISA法により分析した。
【0222】
以下に示すように、インスリン含有ナノ粒子の鼻腔内投与1時間後に得られた脳内濃度は、2.56ng/gであり、これは同用量の静脈内投与(1.87ng/g)およびsc投与(3.52ng/g)後に認められた平均濃度と同程度であった。脳内濃度とは異なり、鼻腔内投与後のインスリンの血漿濃度は、IVおよびSC投与後よりも有意に低く、(a)有意な全身の曝露がなく、(b)本発明によるナノ粒子の鼻腔内投与により、インスリンがBBBを迂回できることを示すものである。この発見は、インスリンの鼻腔内投与が、普通なら避けられない低血糖の副作用なく、糖尿病患者以外にも投与可能であることを意味するため、非常に重要である。
【0223】
【0224】
実施例15-さらなる芳香族ジアルデヒドとの架橋
【0225】
ジバニリンに加えて、他の天然由来のジアルデヒドは、薬物送達およびフィルム作成の両方における生分解性組成物のためのデンプンおよび他の多糖類の修飾に使用され得る。すなわち、ジシンナムアルデヒド、ジコニフェリルアルデヒド(ジフェルリックアルデヒドとも呼ばれ、コニフェリルアルデヒドはシナモンから分離されるフラボノイド)、ジクマラルデヒドおよびジシナピルアルデヒド(シナピルアルデヒドはコニフェリルアルデヒドから酵素で生成される)である。
【0226】
【0227】
【0228】
上記に従い、溶液を調整し、フィルムを作成した。適用可能なフィルムを作成した。
【0229】
実施例16-糖類と分散された芳香族ジアルデヒドであるジバニリンの反応の証明
【0230】
手順:2mgのジバニリン(DV)を4mlの水に480秒間超音波処理して分散させた。この分散液に24mgのグルコースを溶解し、酢酸(50ml)を加えた。反応混合物を90℃の水浴に入れ、攪拌下で1時間反応させた。
【0231】
HPLC-UV分析:反応混合物0.5mlを0.5mlの水で希釈し、20mlのアリコートを、予め充填されたC18カラム(5mm,250×4.6mm)を備えたHPLCシステム(島津VPシリーズ)に注入した。アセトニトリル-0.1%酢酸溶液(70:30)からなるアイソクラティック移動相を用い、1ml/minの流速でクロマトグラフィーを行った。検出は、234nmで行われた。
【0232】
MS分析:ピーク3.6が検出され、TurboIonSprayイオン源を備えたSciexAPI2000トリプル四重極質量分析計(MDXSCIEX、Concord、Ontario、Canada)に注入され、Analystソフトウェアで制御された。そのピーク3.6の未知物質は、ポジティブモードの電子衝撃イオン化を用いた質量分析法によって検出された。装置の設定は、declustering potentialが130V、focusing potentialが350V、Entrance potentialが10V、ion spray potentialが5500V、カーテンガスが10psi、イオン源ガスが25psiであった。次のプロダクトイオン(m/z)が検出され、1552,1508、1464、1420、すべて44ダルトンの間隔で検出された。低分子量(m/zが100~700)の分析種をスキャンしても、同じ現象が観測された(
図11-1の(b)参照)。44ダルトンの断片は、グルコース環の炭素5と6の残基(>CH-CH2-OH)に由来すると考えられる。得られた親水性ポリマーには、膨大な数のグルコース分子が含まれており、4つのグルコース部分が2つのアセタール基によってジバニリン構造のビフェニル骨格に結合している(以下にポリマー構造の例を示す)。ポリマーは、高分子量を有しているため、各グルコース部分から44ダルトンの残基を失ったフラグメントを生成する可能性が高い。
【0233】
上記のクロマトグラムを
図11-1の(a)に示す。それぞれバニリンとジバニリンの4.8分と7分の2つのピークに加えて、新たなピークが3.6分に出現している。その主ピークの質量スペクトルを
図11-1の(b)に示す。ジバニリンのピークが大きく減少しており、バニリンよりも前駆物質としての活性が高いことを意味する。
図11-2の(c)に、上記付加生成物の推定構造を示す。