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特開2023-24411ホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材及びホウ素含有地下水の遮蔽材
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  • 特開-ホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材及びホウ素含有地下水の遮蔽材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024411
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材及びホウ素含有地下水の遮蔽材
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/02 20060101AFI20230209BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20230209BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230209BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230209BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20230209BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20230209BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C09K17/02 P
B01J20/04 C
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 E
C09K17/10 P
C09K17/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126138
(22)【出願日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2021129924
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515104512
【氏名又は名称】株式会社エージェック
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良
(72)【発明者】
【氏名】粟田 敬二
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4H026
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB14
4D624BA12
4D624BB01
4G066AA16B
4G066AA17C
4G066AA43C
4G066AA73C
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA26
4G066CA45
4G066DA07
4G066DA20
4G066FA22
4G066FA34
4H026CA01
4H026CA02
4H026CB03
4H026CB05
4H026CC02
4H026CC04
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】 ホウ素含有土壌のホウ素を高率で不溶化できる固化材及びホウ素含有地下水中のホウ素を高率で遮蔽できる遮蔽材を提供する。
【解決手段】 平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とセメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%との混合物からなるホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
上記ホウ素の不溶化能を有する固化材には、中和材5~50%を含有させてもよい。
酸化マグネシウムは、マグネサイトを700~800℃に急加熱・分解して製造されたもの、あるいは水酸化マグネシウム(Mg(OH))を400~500℃で熱分解して製造されたものであることを好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とセメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%との混合物からなるホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
【請求項2】
平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とセメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%と中和材5~50%との混合物からなるホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
【請求項3】
酸化マグネシウムが、マグネサイトを700~800℃に急加熱・分解して製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
【請求項4】
酸化マグネシウムが、水酸化マグネシウム(Mg(OH))を400~500℃で熱分解して製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のホウ素含有土壌の固化材がホウ素含有地下水の遮蔽材として使用されることを特徴とするホウ素含有地下水の遮蔽材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材及びホウ素含有地下水の遮蔽材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水は飲料水や温泉水として利用されているが、人体に有害な砒素やホウ素あるいはフッ素等を含有している場合がある。
これら有害物を溶解している地下水は、地下水が有害物質を含む地下土壌層と接触又は浸透し溶出した場合に生成し、また、石炭フライアッシュなどを浸透した雨水などが地下水に流入しした場合に生成することが多い。
そのような地下水が拡散しないようにするためには、有害物を含む土壌にあらかじめ不溶化材を添加し不溶化して有害物を含まない地下水とすること、又は、例えばセメントを用いたコンクリートで地下水が漏れないように遮蔽施工をしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014―227457公報
【特許文献2】特開2010―69422公報
【特許文献3】特開2003―1212公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、不溶化材は、pH値の変動による影響があり、環境への負荷を考慮した中性域では効果が発揮されない。
また遮蔽施工には下記の問題点があった。
(1)施工後に、掘り起こす際にバックホーンなどで簡単に撤去することができない。
(2)瓦礫が発生し、廃棄物の処理が必要となる。
(3)何かの要因で亀裂が入ると、浸透し有機物を含む地下水が拡散する場合がある。
また、土壌の重金属不溶化材としてマグネシア系固化材があるが、ホウ素の吸着や不溶化には性能が発揮できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究の結果、上記課題をpH値の変動による影響を受けることなく、下記発明によって解決した。
〔1〕平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とセメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%との混合物からなるホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
〔2〕平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とセメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%と中和材5~50%との混合物からなるホウ素含有土壌のホウ素の不溶化能を有する固化材。
〔3〕酸化マグネシウムが、マグネサイトを700℃~800℃に急加熱・分解して製造されたものであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のホウ素含有土壌のホウ素含有土壌のホウ素不溶化能を有する固化材。
〔4〕酸化マグネシウムが、水酸化マグネシウム(Mg(OH))を400~500℃で熱分解して製造されたものであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のホウ素不溶化能を有する固化材。
〔5〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のホウ素含有土壌の固化材がホウ素含有地下水の遮蔽材として使用されること特徴とするホウ素含有地下水の遮蔽材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ホウ素含有土壌のホウ素を高率で不溶化できる固化材を提供でき、またホウ素含有地下水中のホウ素を高率で遮蔽できる遮蔽材を提供することができる。
そして、pH値の変動による影響を受けることなしに上記の処理ができる。
そして本発明の材料は環境にも安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明実施例の試験装置の構成説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明で提案されるホウ素吸着性の酸化マグネシウムは、a.平均粒子径3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%と、b.平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%の組合せであり、前記a,b2種類の比表面積の物が前記所定割合量存在することで達成される。
すなわち、BET比表面積が大きいa材のみではホウ素不溶化は不十分である。
これは、特許文献4において、BET比表面積が80m/g以下の酸化マグネシウムでは、ホウ素吸着性が劣ると記載されていることからも明かである。
[特許文献4]特開2005-1949公報
そして、粒平均粒子径とBET比表面積が上記範囲を外れると、ホウ素含有物質中のホウ素不溶化が非常に悪くなる。
例えば平均粒子径50μm、BET比表面積9.7m/gの場合は、本発明範囲の酸化マグネシウムの15%以下減のホウ素不溶化率となり、平均粒子径3μm未満、BET比表面積23m/gの酸化マグネシウム26%以上の配合では、吸着性の効果に上昇はなく、配合する際に嵩比重が小さいために混合が難しくなりまた均一性を確保することが困難となる。
(2)また本発明で提案されるホウ素の不溶化能を有する固化材は、
a.平均粒子径が3~15μmで、BET比表面積が20~35m/gの酸化マグネシウム5~25%とb.平均粒子径が15~35μmで、BET比表面積が5~15m/gの酸化マグネシウム10~50%とc.セメント系、石灰系又はマグネシア系の固化材10~80%との混合物からなるものであるが、この数値範囲から外れるとホウ素の不溶化能、すなわち溶存ホウ素の濾出率が増大してしまう。
本発明では、aグループの酸化マグネシウムとbグループの酸化マグネシウムと、cグループの固化材の混合物となすことで、溶存ホウ素の補足・固化能力を極大化することができる。
(3)また、前記(2)のものに中和材(例えばアルミニウム、マグネシウム、鉄の硫酸塩)を添加したものは、遮水性が良く、ホウ素の濾出も減少することができる。
(4)上記の酸化マグネシウムの製造は、マグネサイト(MgCO)を700~800℃に急加熱・分解して得られたもの、あるいは海水から得られた水酸化マグネシウム(Mg(OH))を400~500℃で熱分解して得られたものであることが好ましい。
そして、上記ホウ素の不溶化能を有する固化材は、ホウ素含有地下水の遮水材として好適に使用される。
【実施例0009】
以下に本発明の実施例について説明する。
ホウ素含有水を試験体として用意し、すなわち溶出性ホウ素1.7mg/Lと溶出性砒素0.018mg/L含有水を用意した。
一方、本発明に係る固化材と比較例のものを、表1に記載のごとく用意した。
【表1】
【0010】
まず、図1に示す構成図の試験装置を用意した。
すなわち、フラスコ型の濾過びん1の上方に濾過ロートである適合濾紙直径150mmのブフナロート2を取り付けた。
【0011】
次に、上記試験装置のブフナロート2に表1に示す各種固化材(不溶化材)を含む試験体土壌を軽く転圧しながら厚さ40mmに充填し、その後1時間放置して養生し遮水層3となした。
なお、試験体土壌(遮水層3)は、土壌(嵩比重1.18)に各種固化材3.5%と水12%を添加し、混合した後1時間放置し養生したものである。
【0012】
そこで、上記試験装置に各種固化材を含む遮水層3を形成し、ホウ素と砒素を含む試験体水4を注水して、濾過した。
その結果は表1に示す通りであった。
次に遮蔽材としての強度への影響効果を見るために、土壌に本発明材製品を40kg/m混合し強度試験を行った。
なお、本試験は、環境への負荷が少ない中性域での固化試験を行った。
この結果より本発明品は、強度においても固化への効果が確認されるとともに遮水層にホウ素が吸着されていることも確認でき、地下水遮蔽材としてもより効果があることが確認された。
表2に結果を示す。
【表2】
【0013】
さらにホウ素の不溶化の確認するために、ホウ素溶出量2.9mg/Lの石炭フライアッシュのホウ素不溶化を確認した。
不溶化材としては、本発明の配合量とフライアッシュと混合しやすくするため細砂を用いた。
不溶化方法は、試料のフライアッシュに対して25%の水を加え、本発明不溶化材を50kg/m混合した。
24時間熟成後、平成3年環境庁告示第46号付表に定める方法により、溶出試験を行った。
結果を表3に示す。
【表3】
【0014】
この結果より、本発明のa材b材が所定割合配合されていれば環境に安全な材料で、ホウ素、砒素等の不溶化が可能であり、特に難しいとされているホウ素も容易に不溶化可能となることが理解される。実施例結果のメカニズムは、BET比表面積の大きい酸化マグネシウムによりホウ素が吸着しやすい層状複水酸化物生成による効果であると推定される。
図1