(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024448
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】新規アミロイドベータオリゴマー特異的結合分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230209BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230209BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230209BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230209BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230209BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230209BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230209BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230209BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230209BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230209BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230209BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230209BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230209BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230209BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230209BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20230209BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20230209BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20230209BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/864 100Z
C07K16/18
C07K16/46
C07K19/00
A61K35/76
A61K48/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P9/10
A61P25/16
A61P25/14
A61K47/64
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022185881
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2019545233の分割
【原出願日】2017-11-07
(31)【優先権主張番号】2017731
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(71)【出願人】
【識別番号】520176614
【氏名又は名称】デーゲンエルイックス べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】サマンサ キャスリーン コブ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フォーリー
(72)【発明者】
【氏名】アウグスティヌス ペートルス ヘンリクス シェーフハルス
(72)【発明者】
【氏名】アルマント ビルブラント ヤンネス ウィヘート テッペル
(57)【要約】
【課題】本開示は、アミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子及びアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、又はゴーシェ病の治療又は予防のための治療薬としてのその使用に関する。
【解決手段】本発明によれば、X-CDR1-Y-CDR3-Z構造を含むアミノ酸配列を含むアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子であって、以下:
-1nM未満のAβオリゴマーに対する親和性; 及び
-Aβ原線維よりもAβオリゴマーに対して少なくとも50倍高い特異性、
の特徴を示すアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項2】
X-CDR1-Y-CDR3-Z構造を含むアミノ酸配列を含むアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子であって、構造中、
CDR1が、配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列(QNGWSR)又は配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び
CDR3が、配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列(LLNPRREEFWFSRRYPVV)又は配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
アミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項3】
Xが、フレームワーク領域(FW)1を表し、Yが、FW2超可変領域2(HV2)-FW3a-HV4-FW3aを表し、及びZが、FW4を表す、請求項2に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項4】
Xが、配列番号1のアミノ酸残基1~26のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
Yが、配列番号1のアミノ酸残基33~84のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又は
Zが、配列番号1のアミノ酸残基103~115のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項2又は3に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項6】
前記アミノ酸配列Xが、配列番号2のアミノ酸残基1~26のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; Yが、配列番号2のアミノ酸残基33~79のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号2のアミノ酸残基88~97のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸を含む、請求項2~5の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、ここで好ましくは、前記ベクターが、請求項7に記載の核酸分子を含むAAVウイルスベクターである、発現ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸分子又は請求項8に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子及び薬剤を含むコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1~6の何れかに記載の2つ以上のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲートを含むマルチマー。
【請求項12】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲート又は請求項11に記載のマルチマー及び許容される担体又は請求項8に記載の発現ベクターを含む医薬組成物であって、好ましくはここで、前記発現ベクターが、AAVウイルスベクターである、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子、又は請求項10に記載のコンジュゲート、又は請求項11に記載のマルチマー、又は好ましくは医薬として使用するためのAAVウイルスベクターである請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子、又は請求項10に記載のコンジュゲート、又は請求項11に記載のマルチマー、又は好ましくは神経変性疾患の治療又は予防に使用するためのAAVウイルスベクターである請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子、又は請求項10に記載のコンジュゲート、又は請求項11に記載のマルチマー、又は好ましくはアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、又はゴーシェ病の治療又は予防に使用するためのAAVウイルスベクターである請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項16】
対象においてAβオリゴマーのレベルを低減させる方法であって、前記方法が、請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲート又は請求項11に記載のマルチマー又は請求項8に記載の発現ベクターを含み、好ましくはここで、前記発現ベクターが、AAVウイルスベクターである、方法。
【請求項17】
テストサンプルにおいてAβオリゴマーレベルを測定する方法であって、前記方法が、以下:
(a)テストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、請求項1~6の何れかに記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲート又は請求項11に記載のマルチマーと接触させること; 及び
(b)前記結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を検出すること、
の工程を含む、方法。
【請求項18】
神経変性疾患に罹患している対象を診断するための請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
神経変性疾患の治療を受けている対象における疾患の進行を評価する方法であって、以下:
(a)第1の時点で採取した第1のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲート又は請求項11に記載のマルチマーと接触させること、及び結合分子又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること;
(b)第2の時点で採取した第2のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又は請求項10に記載のコンジュゲート又は請求項11に記載のマルチマーと接触させること、及び結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること; 及び
(c)第1のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを、第2のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体の前記レベルと比較すること、
の工程を含む方法。
【請求項21】
第1のテストサンプルと比較して第2のテストサンプルにおいて結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/オリゴマー複合体のレベルの増加が、前記対象における前記神経変性疾患の進行を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1のテストサンプルと比較して第2のテストサンプルにおいて結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/オリゴマー複合体のレベルの減少が、前記対象における前記神経変性疾患の治療の有効性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される、請求項20~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~6の何れか1項に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子、又は請求項10に記載のコンジュゲート、又は請求項11に記載のマルチマー、又は好ましくは、AAVウイルスベクターである、請求項8に記載の発現ベクターを含む、Aβオリゴマーの検出に適したキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の分野にあり、特に、ヒト及び非ヒト動物において、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VD)、認知症、認知症前症、認知機能障害症候群(CDS)及び認知欠損を含む、ベータアミロイド成分を有する状態に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、臨床的には認知機能の漸進的かつ、ゆるやかな低下によって特徴付けられる。神経病理学的ADは、神経原線維変化及び老人斑の顕著な発見に加えて、神経筋糸の存在、特異的ニューロンの欠損、及びシナプスの欠損によって特徴付けられる。病理学の標準的な尺度は、罹患脳領域における神経炎性アミロイド斑の密度を指す。脳実質における高い不溶性のアミロイドベータ(Aβ)ペプチドから構成される(大部分)神経炎性プラークの存在は、ADの診断に必要とされる。
【0003】
アミロイドベータ(Aβ)は、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分として、アルツハイマー病に対し決定的に関与する、通常36~43アミノ酸のペプチドを表す。ペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から生じ、これはベータセクレターゼ及びガンマセクレターゼによって切断されてAβを生じる。Aβ分子は、凝集することができ、いくつかの形態で存在し得る可溶性オリゴマーを形成する。特定のオリゴマーは、長期増強(LTP)阻害、シナプス毒性、興奮毒性、細胞傷害性、タウリン酸化、及び神経突起伸長の阻害を含む、いくつかの病理学的メカニズムを誘導し得ることが示唆されている。これらの効果の少なくとも一部は、Aβオリゴマーと細胞受容体との相互作用を通して起こると仮定される(Benilova et al. 2012. Nature Neuroscience, 15(3), 349-57)。
【0004】
脳脊髄液(CSF)中のAβオリゴマーレベルは、疾患の重症度及び進行と相関するように思われる。しかしながら、これまで、AD診断及び/又は疾患モニタリングのための有効なオリゴマーバイオマーカーアッセイは、利用可能でない。溶液中のAβオリゴマーは、原線維及びモノマーと平衡状態にあるため、オリゴマー調製物は、一般に、それぞれが病理学に寄与してもしなくてもよく、そして、測定されたアッセイシグナルに寄与してもしなくてもよい、異なる種の混合物を含む(
図1参照)。加えて、そのようなオリゴマー調製物の組成は、時間が異なり及び用いられる実験条件に依存する。CSFにおいて、アミロイドベータモノマーレベルは、アミロイドベータオリゴマーレベルよりも1,000~10,000倍高いことが報告された(~10ng/mlモノマー対1~10pg/mlオリゴマー)(Savage et al., 2014. The Journal of Neuroscience : The Official Journal of the Society for Neuroscience, 34(8):2884-97)。従って、CSFサンプル中のAβオリゴマーを選択的に測定するアッセイは、モノマーよりも、及び好ましくはまた、Aβ原線維よりも、Aβオリゴマーに対して非常に優れた選択制を有しなければならない。
【0005】
加えて、Aβオリゴマーは、ADを治療するための治療用モノクローナル抗体によって特異的に標的かされ得る(米国特許番号第7,811,563、7,780,963、及び7,731,962参照)。モノクローナル抗体は、バイオテクノロジーに革命をもたらし、今やヒトの疾患の治療における重要な治療薬となっている。それらの成功にもかかわらず、治療用モノクローナル抗体は、特定のタイプの抗原に対する制限された活性、乏しい組織浸透性、多くの状況における望ましくないエフェクター機能、製造コスト、製品の不安定性及び凝集等の特定の制限を有する。サメに天然に存在する単一ドメイン抗体は、次世代のバイオ治療薬の開発の可能性を有する。VNARは、多くの異なる治療様式に構成されることが出来る、小さい(12kDa)、安定、可溶性のモノマー抗原結合ドメインである。様々なVNARに基づく結合部分の単離が記載されている。例えば、WO2003/014161及びWO2005/118629参照。
【0006】
本発明の目的は、アミロイドベータオリゴマーに特異的なエピトープ、すなわち、立体配置エピトープに、好ましくは高い親和性で、特異的に結合し、及び好ましくは、アミロイドベータモノマー及び/又はアミロイドベータ原線維(例えば、アミロイドベータ斑に見られるようなもの)に結合しない、結合分子、好ましくは単一ドメイン結合分子を提供することである。そのような結合分子は、例えば、脳脊髄液中のアミロイドベータオリゴマーを選択的に検出するために、例えば、治療の際にADを診断するため又はAD疾患の進行を評価するために有用であり得る。そのような結合分子はまた、ヒト及び非ヒト動物において、例えば、血管性認知症(VD)、認知症、認知症前症、認知機能障害症候群(CDS)及び認知欠損を含む、ベータアミロイド成分を有するAD及び他の病状を治療するための治療分子としても有用であり得る。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、以下:
-1nM未満のAβオリゴマーに対する親和性; 及び
-Aβ原線維よりもAβオリゴマーに対して少なくとも50倍高い特異性、
の特徴を示すアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子に関する。
【0008】
さらなる態様において、本開示は、X-CDR1-Y-CDR3-Z構造を含むアミノ酸配列を含むアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子
(構造中、
CDR1が、配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列(QNGWSR)又は配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び
CDR3が、配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列(LLNPRREEFWFSRRYPVV)又は配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む)
を提供する。
【0009】
QNGWSRはまた、配列番号5とも称される。
【0010】
LLNPRREEFWFSRRYPVVはまた、配列番号6とも称される。
【0011】
一実施形態において、Xは、フレームワーク領域(FW)1を表し、Yは、FW2超可変領域2(HV2)-FW3a-HV4-FW3aを表し、及びZは、FW4を表す。
【0012】
一実施形態において、Xが、配列番号1のアミノ酸残基1~26のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; Yが、配列番号1のアミノ酸残基33~84のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号1のアミノ酸残基103~115のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
本明細書で教示される抗原結合分子は、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
一実施形態において、本明細書で教示される抗原結合分子は、最後の3つのアミノ酸残基(アラニン-アラニン-アラニン)を除いて、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本明細書で教示される抗原結合分子は、アミノ酸配列(下線を引いたCDR1及びCDR3を有する)を含む:
AWVDQTPRTATKETGESLTINCVLRDQNGWSRTGWYRTKLGSTNEQSISIGGRYVETVNKGSKSFSLRISDLRVEDSGTYKCQALLNPRREEFWFSRRYPVVKGAGTALTVK。
【0015】
従って、アミノ酸103~115を参照すると、この参照は、アミノ酸103~112(すなわち、ここで、最後の3つのアミノ酸のアラニン-アラニン-アラニンは存在しない)を指すことを意図していることを当業者は理解するだろう。一実施形態において、Xが、配列番号2のアミノ酸残基1~26のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; Yが、配列番号2のアミノ酸残基33~79のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号2のアミノ酸残基88~97のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
本開示はさらに、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子、そのような核酸分子を含む発現ベクター、及びそのような核酸分子又はそのような発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
好ましくは、本明細書で教示される発現ベクターは、AAVウイルスベクターである。従って、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子を含むAAVウイルスベクターもまた提供され、ここで、好ましくは、AAVウイルスベクターは、AAV5ベクターである。
【0018】
他の態様において、本開示は、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子及び1つ以上の薬剤を含むコンジュゲート、並びに本明細書で教示される2つ以上のAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲートを含むマルチマーを提供する。
【0019】
さらに、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー又は発現ベクター、好ましくはAAVウイルスベクター及び許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0020】
本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー又は発現ベクター、好ましくは、AAVウイルスベクターは、医薬として、特にアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、又はゴーシェ病の治療又は予防における使用等の神経変性疾患の治療又は予防における使用のために用いられ得る。
【0021】
さらに、対象におけるAβオリゴマーレベルを低減させる方法が提供され、前記方法は、前記対象にAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー又は発現ベクター、好ましくは、AAVウイルスベクターを投与する工程を含む。
【0022】
加えて、本開示は、テストサンプル中のAβオリゴマーレベルを測定する方法に関し、前記方法は、以下:
(a)テストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマーと接触させること; 及び
(b)結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を検出すること、の工程を含む。
【0023】
前記方法は、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される神経変性疾患を患っている対象を診断するためのものであり得る。
【0024】
本発明はさらに、以下の工程を含む神経変性疾患の治療を受けている対象における疾患の進行を評価する方法に関係する:
(a)第1の時点で採取した第1のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマーと接触させること、及び結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること;
(b)第2の時点で採取した第2のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマーと接触させること、及び結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること; 及び
(c)第1のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを、第2のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルと比較すること。
【0025】
一実施形態において、第1のテストサンプルにおけるレベルと比較して第2のテストサンプルにおける結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルの増加は、対象における前記神経変性疾患の進行を示す。
【0026】
一実施形態において、第1のテストサンプルにおけるレベルと比較して第2のテストサンプルにおける結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルの減少は、対象における前記神経変性疾患の治療の有効性を示す。
【0027】
一実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される。
【0028】
最後に、本開示は、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子又はコンジュゲート又はマルチマーを含む、Aβオリゴマーを検出することに適してキットを提供する。
【0029】
定義
別段の定めがない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されることと同じ意味を有する。標準的な技術が、分子生物学的方法及び生化学的方法並びに化学的方法のために用いられる。
【0030】
用語「a」又は「an」は、その実態のうちの1つ以上を指すことに留意されたい。例えば、「抗Aβ抗体(an anti-Aβ antibody)」は、Aβに特異的に結合する1つ以上の抗体を表すと理解される。そのように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0031】
本明細書を通して、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等のその変形は、記載された要素、整数若しくはステップを含むが、他の要素、整数又はステップ、又は他の要素のグループ、整数又はステップを除外するものではないと理解されるであろう。「含む(comprising)」という動詞は、「本質的にからなる(essentially consisting of)」及び「からなる(consisting of)」を含む。
【0032】
別段の定めがない限り、用語「Aβ」、「Aベータ」及び「βアミロイド」は、本明細書において互換的に用いられる。
【0033】
本明細書で用いられる場合、用語「Aβオリゴマー」は、モノマー種の会合から生じるAβモノマーのマルチマー種を指す。Aβオリゴマーは、インビトロでの合成Aβモノマーの凝集後、又はヒトの脳又は体液からのAβ種の単離/抽出後の二量体、三量体、四量体及び高次種を含み得る。そのようなAβオリゴマーは、一般に、神経毒性、可溶性、球状、及び非線維性である。
【0034】
本明細書で用いられる「Aβ原線維(Aβfibril)」は、ヒト脳組織において検出され得るAβの不溶性種を指す。アミロイド原線維は、比較的安定であり、そして分解に対して抵抗性がある。これらの種は、AD脳に見られる細胞外アミロイド斑構造の直接の前駆体であると考えられる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「Aβモノマー」は、無細胞環境又は細胞環境におけるアミロイドタンパク質前駆体(APP)上のβセクレターゼ及びγセクレターゼによる酵素的切断の直接産物を指す。βセクレターゼによるAPPの切断は、Asp1(切断後のAβペプチド配列に関しての番号付け)から始まるAβ種を生成し、一方、γセクレターゼは、主に残基40又は42の何れかでAβのC末端を遊離する。
【0036】
本明細書で用いられる用語「親和性」は、単一分子のそのリガンドへの結合の強度を指し、典型的に、2つの剤の可逆的結合に対する平衡解離定数(KD)として表される。それは、本明細書で教示される結合分子とAβオリゴマー、Aβ原線維、又はAβモノマーそれぞれの間のKoff/Konの比によって決定され、Koff及びKonは、それぞれ複合体の解離又は会合の速度を示す。KDと親和性は、反比例の関係にある。KD値は、本明細書で教示されるように結合分子の濃度に関連し、及びKD値が低いほど、結合分子の親和性は高い。
【0037】
本明細書で用いられる場合、本明細書で教示される結合分子とAβオリゴマー、Aβ原線維、又はAβモノマーそれぞれの間の相互作用を示す場合の「結合」という用語は、その相互作用が、それぞれの標的上で特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。
【0038】
本明細書で用いられる場合、用語「特異的な結合(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」は、当該技術分野において周知の用語であり、本明細書で教示される結合分子が、Aβ原線維及びAβモノマーを含む代替標的よりも長い持続時間及び/又はより高い親和性で、より頻繁に、より迅速に、Aβオリゴマーと反応又は会合する。そのような特異的な(又は優先的な)結合を決定するための方法もまた、例えば、本明細書の実施例に記載されるように、当該分野において周知である。より具体的には、本明細書で教示される結合分子は、Aβ原線維及びAβモノマーを含む他の標的に対してよりも、Aβオリゴマーに対してより高い親和性で結合する。例えば、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的結合分子は、Aβ原線維及びAβモノマーを含む他の抗原に結合するよりも高い親和性で(例えば、2倍、10倍、20倍又は40倍又は60倍又は80倍~100倍又は150倍又は200倍高い親和性)、より容易に、及び/又はより長い持続時間でAβオリゴマーに特異的に結合する。
【0039】
本明細書で用いられる場合、用語「同一性(identity)」は、配列が最大限に一致するように、すなわち、ギャップ及び挿入を考慮に入れてアライメントされている場合の、2つ以上の配列中の対応する部分における同一のヌクレオチド残基又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、それらだけに限定されないが、Computational Molecular Biology, Lesk AM ed. Oxford University Press New York, 1988; Computer Analysis of Sequence data, Part I Griffin AM and Griffin HG eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence analysis in molecular biology, von Heinje G, Academic Press, New Jersey, 1 994に記載されているものを含む既知の方法を用いて容易に計算され得る。同一性を決定するための方法は、テストした配列間の最大の一致が生じるように設計される。加えて、同一性を決定する方法は、抗的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラムの方法としては、限定されないが、GCGプログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN及びFASTAを含む。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために用いられ得る。配列同一性は、好ましくは、配列の全長にわたって決定される。
【0040】
本明細書で用いられる場合、用語「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)」は、特定の共通の性質に基づくアミノ酸の分類を指す。個々のアミノ酸間の共通の性質を定義する機能的方法は、相同生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化頻度を分析することである。そのような分析によれば、アミノ酸群は、郡内のアミノ酸をお互いで優先的に交換する場合に、及び、従って全体的なタンパク質構造に対するそれらの影響において最も類似している場合に定義され得る(Schulz GE and RH Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。このように定義されたアミノ酸残基の例は、以下を含む:
(i)Glu、Asp、Lys、Arg及びHisからなる荷電基、
(ii)Phe、Tyr及びTrpからなる芳香族基、
(iii)His及びTrpからなる窒素環基、
(iv)Met及びCys等からなる弱極性基。
【0041】
本明細書で用いられる場合、用語「プロモーター」は、例えば、発達刺激及び/又は外部刺激に応答して、又は特異的な組織において核酸の発現を改変する追加の調節要素(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)の有無にかかわらず、正確な転写開始に必要なTATA box又はイニシエーター要素を含む、ゲノム遺伝子の転写制御配列を含む。本明細書において、用語「プロモーター」はまた、それが動作可能に連結されている核酸の発現を付与する、活性化する又は増強する、組換え、合成又は融合核酸、又は誘導体を記載するために用いられる。例示的なプロモーターは、発現をさらに増強し、及び/又は前記核酸の空間的発現及び/又は時間的発現を改変するために、1つ以上の特異的調節エレメントのさらなるコピーを含み得る。
【0042】
本明細書で用いられる場合、用語「動作可能に連結された(operably linked to)」は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように、核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。
【0043】
本明細書で用いられる場合、用語「神経変性疾患(neurodegenerative disease)」は、限定されないが、一般に、アルツハイマー病、軽度の認知障害、前頭側頭型認知症、レビー小体病、パーキンソン病、ピック病、ビンスワンガー病; コンゴレッド親和性のアミロイド血管症、脳アミロイド血管症、ダウン症候群、多発脳梗塞性認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、エイズ認知症複合、うつ病、不安症、恐怖症、ベル麻痺、てんかん、脳炎、多発性硬化症: 神経筋障害、神経腫瘍学的疾患、脳腫瘍、脳卒中を含む神経血管障害、神経免疫疾患、神経耳科学的疾患、脊髄損傷を含む神経外傷、神経因性疼痛を含む疼痛、小児神経障害及び精神神経障害、睡眠障害、トゥレット症候群、軽度認知障害、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、嚢胞性繊維症、ゴーシェ病、他の運動障害及び中枢神経系(CNS)障害を含む。
【0044】
別段の定めがない限り、用語「障害(disorder)」、「疾患(disease)」及び「病気(illness)」は、本明細書において互換的に使用される。
【0045】
本明細書で用いられる場合、用語「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」は、治療的治療と予防的又は予防的手段の両方を指し、ここで、その対象は、望ましくない生理学的変化、感染、又は障害を予防又は減速(軽減)することである。有益な又は望ましい臨床結果は、限定されないが、検出可能か検出不可能化にかかわらず、対象における症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、感染性病原体の排除又は低減、疾患の進行の遅延又は減速、病状の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的の何れか)を含む。「治療」はまた、治療を受けていない場合の予想生存期間と比較して生存期間の延長を意味し得る。治療を必要とする対象は、既に感染、病状、又は障害を有する対象、並びにその病状又は障害を持ちやすい対象、又はその病状又は障害が予防されることになっている対象を含む。
【0046】
用語「治療有効量」は、単独で又は別の治療薬と組み合わせて、細胞、組織又は対象に投与した際に、病状又は疾患の進行を予防又は改善するために有効である治療薬の量を指す。
【0047】
「対象(subject)」又は「個体(individual)」又は「動物(animal)」又は「患者(patient)」又は「哺乳動物(mammal)」は、診断、予後診断、又は治療が望まれる何れかの対象、特に哺乳動物の対象を意味する。哺乳動物の対象は、ヒト、飼育動物、家畜、及びイヌ、ネコ、モルモット、ラビット、ラット、マウス、ウマ、ウシ(cattle)、乳牛(cow)、クマ等の動物園、スポーツ、又はペット動物を含む。
【0048】
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される」は、製薬及び獣医学の分野での使用に許容される、すなわち、毒学的観点又は他の観点から許容できないものではないことを意味する。医薬的に許容さえる担体は、希釈剤、賦形剤、及び同様のもの等のペプチドに基づく薬剤と共に従来から使用されているものを含む。一般的な薬物製剤に関するガイダンスは、例えば、Remington’s: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005に見出され得る。
【0049】
本明細書で用いられる用語「i-ボディ(i-bodies)」は、サメ抗体の抗原結合ドメインの形状及びそれらの重要な安定性の特徴を模倣するように設計されている分子を指す。これらの特徴は、ヒトタンパク質に設計される。ユニークな化合物として、i-ボディは、ヒト抗体及び他の次世代抗体には見られないサメのような長い結合ループを有する。この長い結合ループ及びヒトタンパク質i-ボディ骨格(scaffold)が、i-ボディを形成する。VNARが免疫グロブリンドメインのI-セットファミリー(Igs)と構造的に類似していたというStreltsovら(Protein Sci. 2005 Nov; 14(11): 2901-2909)による観察は、これらが、VNARのヒトへの等価物に改変するのに適した骨格であると提案した。この目標を達成するために、ヒト神経細胞接着分子1(NCAM)からヒト「i-ボディ」骨格は、このタンパク質に2つの結合領域(CDR1及びCDR3)を組み込むことによって設計され、故に、相補性決定様結合領域(CDR)とヒトIgドメインの先天的安定静置を組み合わせる(WO 2016/109872、参照により本明細書に組み込まれる)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、脳内並びに溶液中に存在する様々なAβ種の略図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、オリゴマーに対するCBB-VNARの特異的結合を示す。実験は、実施例1に詳細に記載されているように実施した。簡単に説明すると、異なるアミロイド由来種(モノマー、オリゴマー、原線維)をELISAプレートに固定化し、そして一般的なアミロイド認識抗体6E10又はCBB-VNARの何れかでプローブした。CBB-VNARは、高親和性でオリゴマーに結合するが、CBB-VNARは、モノマー又は原線維には結合しないようである(A)。逆に、6E10オリゴマー、モノマー及び原線維に同様の親和性で結合するように思われる(B)。
【
図3】
図3は、CBB-VNAR(「VNAR」)又は6E10でプローブしたブロットを示す。6E10ブロットにおいて、Aβオリゴマーは、高分子量でのスメア(smear)として主に明らかになる。モノマーサンプルにおいて、モノマー(4.5kDa)、ダイマー(9kDa)及びトリマー(13.5kDa)に相当する可能性が最も低い低分子量バンドのみが観察される。CBB-VNARでプローブしたブロットにおいて、高分子量オリゴマーは、約~225kDaを中心とするスメアとして検出された。対照的に、モノマーコントロールにおいて、シグナルは検出されない。
【
図4】
図4は、2つの異なるイムノアッセイフォーマットを用いたAβオリゴマーの検出を示す。最初のパネルにおいて、オリゴマーは、Alphascreen(登録商標)フォーマットで検出されるが、モノマー又は原線維で得られたシグナルは、>10倍少ない(A)。このアッセイにおいて、ドナービーズ上に存在する6E10とアクセプタービーズ上に存在するCBB-VNARが同時にオリゴマー分子に結合するとシグナルが発生する。第2のパネルにおいて、CBB-VNARをELISAプレートのウェルに固定化してオリゴマー補足分子として役立てた。次にウェルを異なる既知濃度のAβオリゴマーとインキュベートし、洗浄後、6E10抗体を用いてCBB-VNAR結合オリゴマーが、検出された。
【
図5-1】アミロイド1~42オリゴマー(ABO)の結合は、CBB-VNARのCDRにおけるトリプトファンを含む。(A)図に示されるように、異なる量のABOの存在下で記録されたCBB-VNARの蛍光発光スペクトル。(B)Aと同じであるが、ABOを結合しない12Y2コントロールVNARを用いる。(C)正規化蛍光強度は、A及びBのパネルに示されたデータから決定された。(D)12Y2コントロールタンパク質の実験的に決定されたX線構造(PDBエントリー1VES)及びSwiss PDB Viewer 4.1ソフトウェアパッケージを用いた相同性モデリングによって生成されたCBB-VNARのモデル。コントロール12Y2タンパク質及びCBB-VNARの両方に存在するVNARフレームワーク中の2つのトリプトファン残基は、ライトグレー色の球で示され、一方、CBB-VNAR CDR中に存在するさらなる2つのTrp残基は、ダークグレー色の球で表される。
【
図5-2】アミロイド1~42オリゴマー(ABO)の結合は、CBB-VNARのCDRにおけるトリプトファンを含む。(A)図に示されるように、異なる量のABOの存在下で記録されたCBB-VNARの蛍光発光スペクトル。(B)Aと同じであるが、ABOを結合しない12Y2コントロールVNARを用いる。(C)正規化蛍光強度は、A及びBのパネルに示されたデータから決定された。(D)12Y2コントロールタンパク質の実験的に決定されたX線構造(PDBエントリー1VES)及びSwiss PDB Viewer 4.1ソフトウェアパッケージを用いた相同性モデリングによって生成されたCBB-VNARのモデル。コントロール12Y2タンパク質及びCBB-VNARの両方に存在するVNARフレームワーク中の2つのトリプトファン残基は、ライトグレー色の球で示され、一方、CBB-VNAR CDR中に存在するさらなる2つのTrp残基は、ダークグレー色の球で表される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
IgNARs/vNARs - 一般
軟骨魚(サメ、エイ、スケート(skate)及びキメラ(chimaera))は、3つの異なる抗体のアイソタイプ、IgM、IgNARs(免疫グロブリン新規抗原受容体)及び原始IgWを発現する(Rumfelt LL. et al. BMC immunology 2004; 5:8; Rumfelt LL et al. Journal of immunology 2004; 173:1 129-39)。IgNARは、最初にナースサメ(nurse shark)(Ginglymostoma cirratum)の血清において同定された(Greenberg AS et al. Nature 1995; 374:168- 73)。IgNARは、軽鎖を欠く重鎖のホモダイマーである。分泌型の各鎖は、1つの可変ドメインとそれに続く5つの定常ドメインからなり、最後の4つは、IgW定常ドメインと相同である。抗原結合部位は、「vNAR」(新規抗原受容体の可変ドメイン)と称される、唯一の単一ドメインによって形成される。血清IgNARレベルは、約0.1mg/ml~1mg/mlの範囲である。
【0052】
現在までに同定された全てのIgNARは、従来のCDR1及びCDR2ループに類似した最小可変ループ領域を有すると報告されており、多様性は、従来のCDR3ループに類似した細長いループ領域に集中されている(Greenberg et al. Eur J Immunol. 1996 May;26(5):1123-9; Nuttall et al. 2001. Mol Immunol. Aug;38(4):313-26)。
【0053】
古典的な抗体(2本の鎖にわたって6本のループ)と比較して可能な抗原結合ループ(単鎖にわたって4つ)の数が少ないにもかかわらず、vNARドメインは、驚くほど高い親和性で抗原に結合する。抗原結合が、単にCDR3によって媒介される1次レパートリーでさえ、vNAR分子は、低いナノモル範囲の親和性を有する所与の抗原に対して惹起され得る。しかしながら、vNARドメインに対する最も高く記録された親和性は、ピコモルレベルの親和性を達成するE06として知られる抗アルブミン結合ドメインによる免疫後に観察された(Muller et al., MAbs 2012; 4:673-85)。
【0054】
IgNARのCDR3ループの配列レベルで見出される非常に大きな多様性、並びにvNARドメインの抗原結合部位によって形成される多数の構造トポロジーは、IgNAR又はIgNARの抗原結合部位を含む他の抗原結合分子、vNARを、従来の抗体に対する有用な代替物にする。
【0055】
vNAR又はvNARに基づく抗原結合分子は、IgGを超えるいくつかの利点を有する。
【0056】
vNARは、長い抗原結合領域を有する(通常のIgGにおいて10~12アミノ酸に対して10~20アミノ酸)。これは、抗原と抗体の接触面が、vNARにおいて有意に大きいことを意味する。さらに、抗原結合ドメインは、溶液中に突き出ているが、典型的なIgG及び他の抗体類似体の結合ドメインは、より浅い。これらの要素は、特に間隙(crevices/clefts)を有する抗原タンパク質に関して、参照IgGに関して高い親和性に翻訳される。
【0057】
vNARは、安定性が非常に高い。サメの血漿中には多くの塩及び尿素が含まれており、これは両方ともタンパク質変性剤であり、そのため、このような過酷な環境で安定したタンパク質を自然に生み出すことを強制された。
【0058】
vNARは、IgGと比較して小さい(vNARについて15kDaに対してIgGについて150kDa)。小さいサイズのvNARSは、組織浸透並びに高い腎クリアランスの増強をもたらし、これはイメージング用途に特に有用であり得る。
【0059】
vNARは、バクテリアで産生することができ、それはタンパク質工学を容易にし、そして大規模産生を可能にする。
【0060】
vNARは、ビオチン、蛍光標識、PETトレーサー標識等を含む広範囲の部分を特異的に結合するように部位特異的に修飾され得、それによって、PETイメージングを含む多くの用途を可能にする。
【0061】
Aβオリゴマー特異的結合分子
本開示は、以下の特徴を示すアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的結合分子を提供する:
-1nM未満のAβオリゴマーに対する親和性; 及び
-Aβ原線維よりもAβオリゴマーに対して少なくとも50倍高い特異性。
【0062】
親和性は、好ましくはELISAを用いて決定される。好ましくは、Aβオリゴマー(例えば、基本的にDahlgren et al., (2002. J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53)に記載されているように調製した又は好ましくは、Perkin ElmerアミロイドオリゴマーAlphaLISA抗特異性検出キット(AL334F)と共に提供される通り)、又はAβ原線維(例えば、基本的にDahlgren et al., (2002. J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53)によって記載されているように調製した)は、固体支持体上に固定化され、次に本明細書で教示されるように種々の濃度の抗原結合分子と共にインキュベートされる。Aβオリゴマー又はAβ原線維に結合した抗原結合分子は、その後、抗原結合分子に特異的に結合する適切な検出剤を用いて検出され得る。
【0063】
あるいは、Aβオリゴマー(例えば、基本的にDahlgren et al., (2002. J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53)に記載されているように調製した又は好ましくは、Perkin ElmerアミロイドオリゴマーAlphaLISA抗特異性検出キット(AL334F)と共に提供される通り)、又はAβ原線維(例えば、基本的にDahlgren et al., (2002. J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53)によって記載されているように調製した)は、抗体の結合をリアルタイムで追跡することが出来る表面プラズモン共鳴測定に適した固体支持体に固定化され得る。
【0064】
好ましくは、抗原結合分子が2つの固定化オリゴマーに同時に結合する可能性を最小にするために、オリゴマーのコーティング密度はできるだけ低く保たれるべきであり、これは、溶液中の本来の熱力学に関係しない、高い見かけ上の親和性をもたらすであろう。
【0065】
本開示はまた、X-CDR1-Y-CDR3-Z構造
(構造中、
CDR1が、配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列(QNGWSR)又は配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び
CDR3が、配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列(LLNPRREEFWFSRRYPVV)又は配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む)
を含むアミノ酸配列を含むアミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子を提供する。
【0066】
本明細書中で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、Aβ原線維、及びそれによってAβプラークの形成をもたらすAβオリゴマー媒介経路を調節するため、及び特に阻害又は防止するために用いられ得る。そのように、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、Aβオリゴマー関連又はAβオリゴマー媒介疾患及び障害の予防及び治療、並びにAβオリゴマー関連又はAβオリゴマー媒介疾患及び障害の診断、進行、及び/又は予後診断に用いられ得る。
【0067】
本明細書中で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子はまた、Aβオリゴマーと受容体等の細胞結合部分との直接的な相互作用によって媒介される経路、又はAβ原線維、及びそれによってAβプラークをもたらす経路を含む、Aβオリゴマー媒介経路を調節するため、及び特に阻害又は防止するために用いられ得る。
【0068】
本明細書中で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、他のAβ特異的抗原結合分子を超える利点を提供する。それらは、高い親和性及び高い特異性で標的に結合することが出来る。特に、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、Aβオリゴマー又はAβ原線維よりもAβオリゴマーに特異的である。一実施形態において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、ELISAアッセイを用いて決定され得るように、Aβモノマーと比較して少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍又は50倍強くAβオリゴマーに結合する。一実施形態において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、ELISAアッセイを用いて決定され得るように、Aβ原線維と比較して少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、又は200倍強くAβオリゴマーに結合する。
【0069】
一実施形態において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、10μM未満、5μM未満、1μM未満、750nM未満、500nM未満、250nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、10nM未満、5nM未満、又は1nM未満の親和性でAβオリゴマーに結合する。
【0070】
IgGでは、モノマーと比較してそのような高いオリゴマー特異性が、結合親和力によって達成されたかもしれないが(例えば、IgGの両腕は、同じAβ由来凝集体分子上の反復エピトープに同時に結合することができるが、モノマーAβは、IgG上の片方の腕にしか結合することが出来ない)、これは本発明の結合分子の場合ではない。この理由のために、IgGにおいて観察される二価の凝集体結合は、モノマーと比較して凝集体について100~1000倍強くなり得る。いくつかのエピトープ(最も顕著にはN末端)は、オリゴマー及び原線維の両方で利用可能であるので、そのような抗体は、類似の親和性で両方の抗原を認識する。
【0071】
本発明の結合分子は、モノマーであるため、結合親和力はオリゴマー特異性を説明することはできない。Aβモノマー及びAβ原線維の両方が、非常に低いレベルでのみ検出されるという観察から、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、Aβオリゴマー上の立体構造的エピトープに結合すると結論付けられ得る。
【0072】
加えて、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、サイズが小さく、非常に安定であり、これは、アミロイドベータペプチド(Aβ)関連疾患又は障害の予防又は治療に用いるために現在提案されている既知のAβ特異的抗原結合分子よりも代替投与経路及びより低い剤形、より少ない投与量、及びより少ない副作用をもたらし得る。さらに、比較的小さいサイズは、半減期の調整を可能にし、これは、特に本発明の分子が、イメージング剤として使用される際に、又は設定された期間の間に必要な用量の送達において用いる際に有利である。
【0073】
ポリペプチド又はポリヌクレオチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティ=5、及びギャップ伸長ペナルティ=0.3を用いたGAP(Needleman and Wunsch, 1970)分析(GCGプログラム)によって決定され得る。
【0074】
本開示の目的のために、配列のアライメント及び相同性スコアの計算は、タンパク質及びDNAアライメントの両方に有用なNeedleman-Wunschアライメント(すなわち、グローバルアライメント)を用いて行われる。デフォルトスコアリングマトリックスBLOSUM50及び同一性マトリックスは、それぞれタンパク質及びDNAのアライメントに用いられる。ギャップ内の最初の残基に対するペナルティは、タンパク質では-12、DNAでは-16であり、ギャップ内の追加の残基に対するペナルティは、タンパク質では-2、DNAでは-4である。アライメントは、FASTAパッケージバージョンv20u6からのものである(W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988)、「生物学的配列分析のための改良されたツール(Improved Tools for Biological Sequence Analysis)」、PNAS 85:2444-2448、及びW. R. Pearson (1990) 「FASTP及びFASTAによる迅速かつ、高感度な配列比較(Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA)」, Methods in Enzymology, 1 83:63-98)。
【0075】
本開示は、本解除の結合タンパク質の変異型を企図する。例えば、そのような変異体結合タンパク質は、本明細書に記載の配列と比較して、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの例において、結合タンパク質は、10個以下、例えば9個又は8個又は7個又は6個又は5個又は4個又は3個又は2個又は1個の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖及び/又は親水性を有するアミノ酸残基で置換されているものである。
【0076】
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、3-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含み、当該分野で定義されている。ハイドロパシー(hydropathic)指数は、例えば、Kyte and Doolittle (1982)に記載されており、親水性指数は、例えばUS4554101に記載されており、参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
本開示はまた、非保存的アミノ酸変化を企図する。例えば、特に興味深いのは、荷電アミノ酸の別の荷電アミノ酸及び中性又は正荷電アミノ酸による置換である。いくつかの実施例において、結合タンパク質は、10個以下、例えば9個又は8個又は7個又は6個又は5個又は4個又は3個又は2個又は1個の非保存的アミノ酸置換を含む。
【0078】
本開示はまた、アミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子、好ましくはX-CDR1-Y-CDR3-Z構造
(構造中、
CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基27~32のアミノ酸配列(QNGWSR)を含み及びCDR3は、配列番号1のアミノ酸残基85~102のアミノ酸配列(LLNPRREEFWFSRRYPVV)を含み、ここで、CDR1において最大で1、2又は3個のアミノ酸が置換され、好ましくは、前記置換は、保存的アミノ酸置換であり、及び/又はCDR3において最大で1、2又は3個のアミノ酸が置換され、好ましくは、前記置換は、保存的アミノ酸置換である)
を含むアミノ酸配列を提供する。好ましくは、アミロイドベータペプチド(Aβ)オリゴマー特異的抗原結合分子は、1nM未満のAβオリゴマーに対する親和性、及びAβ原線維に対するよりもAβオリゴマーに対して少なくとも50倍高い特異性を有する。好ましい実施形態において、CDR1のみが、1、2、又は3個のアミノ酸置換を含む。好ましい実施形態において、CDR3のみが、1、2、又は3個のアミノ酸置換を含む。好ましくは、1個のアミノ酸のみが、CDR1、CDR3、又はCDR1及びCDR3の両方において置換される。
【0079】
一実施形態において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、例えば、結合分子の分泌を達成するためにシグナルペプチド(シグナル配列、標的シグナル、局在シグナル、局在配列、移行ペプチド、リーダー配列又はリーダーペプチドとも称される)が先行する。一実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み得るか、又はそれからなり得る。
【0080】
適切な実施形態において、vNARに存在するものとして、Xが、フレームワーク領域(FW)1を表し、Yが、FW2超可変領域2(HV2)-FW3a-HV4-FW3aを表し、及びZが、FW4を表す。
【0081】
一実施形態において、Xが、配列番号1のアミノ酸残基1~26のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; Yが、配列番号1のアミノ酸残基33~84のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号1のアミノ酸残基103~114のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
一実施形態において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、配列番号1のアミノ酸、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
一実施形態において、本明細書で教示される抗原結合分子は、本明細書で教示されるような骨格領域及びCDR1及び/又はCDR3領域を含む(適切な骨格領域に関しては、WO2016/109872を参照のこと、参照により本明細書に組み込まれる)。適切な一実施例において、骨格領域は、配列番号2に示されるように、ヒトNCAM1(神経細胞接着分子1)に基づく。例えば、骨格領域は、配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸1~26、33~79、及び88~97に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、ここで、上記で教示されたように、配列番号2のアミノ酸残基27~32及び80~87は、それぞれCDR1及びCDR3アミノ酸残基で置換される。
【0084】
従って、一実施形態において、Xが、配列番号2のアミノ酸配列の1~26のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はYが、配列番号2のアミノ酸配列の33~79のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号2のアミノ酸配列の88~97のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0085】
他の実施形態において、本明細書で教示される抗原結合分子は、本明細書で教示されるように、i-ボディ骨格領域及びCDR1及び/又はCDR3領域を含む(適切なi-ボディ骨格領域については、WO2016/109872を参照のこと、参照により本明細書に組み込まれる)。適切な一実施例において、骨格領域は、配列番号4に示されるものである。例えば、i-ボディ骨格領域は、配列番号4のアミノ酸配列の1~26、33~79、及び81~90のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、上記で教示されたように、配列番号4のアミノ酸残基27~32及び80は、それぞれCDR1及びCDR3アミノ酸残基で置換される。
【0086】
従って、一実施敵対において、Xが、配列番号4のアミノ酸配列の1~26のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はYが、配列番号4のアミノ酸配列の33~79のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み; 及び/又はZが、配列番号4のアミノ酸配列の81~90のアミノ酸に対して少なくとも50%、例えば少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0087】
核酸分子、ベクター、及び宿主細胞
本開示はまた、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子、そのような核酸分子を含む発現ベクター、及びそのような核酸分子又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本開示はまた、例えば、医薬としての、又は疾患、好ましくは神経変性疾患の治療若しくは予防におけるそのような核酸分子又は発現ベクターの使用を提供する。
【0088】
一実施例において、本開示のポリペプチドは、例えば、本明細書に記載されているように及び/又は当該技術分野において周知であるように、タンパク質を産生するために十分な条件下で細胞株、例えば大腸菌(E. coli)細胞株を培養することによって産生される。
【0089】
本明細書で教示される組換えAβオリゴマー特異的抗原結合分子の場合、そのような分子をコードする核酸は、1つ以上の発現コンストラクト、例えば発現ベクターに入れられ、次いでそれを宿主細胞、例えば、大腸菌細胞等の細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞等に遺伝子導入される。例示的な哺乳動物細胞としては、サルCOS細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。例示的な細菌細胞は、BL21(DE3)、BL21(DE3)-pLysS、及び同様のもの等を含む。
【0090】
分子クローニング技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、Ausubel F M (1987) Current Protocols in Molecular Biology. New York. NY, John Wiley & Sons又はSambrook, Fritsch and Maniatis Molecular Cloning: a laboratory manual Cold Spring Harbor NY. Cold Spring Harbor Laboratory Press.に記載されている。多種多様なクローニング方法及びインビトロ増幅方法が、組換え核酸の構築に適している。
【0091】
細胞内での発現のための多くのベクターが、利用可能である。ベクター構成要素は、一般に、限定されないが、以下のうちの1つ以上を含む:シグナル配列、本開示のポリペプチドをコードする配列(例えば、本明細書で提供される情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。当業者は、タンパク質発現に適した配列を周知していると予想される。例えば、核酸コンストラクトの調製、突然変異誘発、細胞内へのDNAの導入並びに遺伝子発現及びタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの既知の技術及びプロトコルが、例えば、Ausubel F M (1987) Current Protocols in Molecular Biology. New York. NY, John Wiley & Sonsに記載されている。本開示のAβオリゴマー特異的抗原結合分子を発現させる際に、多種多様な宿主/発現ベクターの組み合わせが用いられ得る。
【0092】
単離された核酸分子又はそれを含む遺伝子コンストラクトを発現のために細胞に導入するための手段は、当業者に周知である。一定の細胞に用いられる技術は、既知の成功した記述に依存する。細胞に組換えDNAを導入するための手段は、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介される遺伝子導入、リポフェクタミン及び/又はセルフェクチンを用いること等のリポソームによって媒介される遺伝子導入、PEG媒介DNA取込、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入及びDNA被覆タングステン又は金粒子を用いること等のマイクロパーティクルボンバードメント、及び同様の方法を含む。
【0093】
1つ以上のポリヌクレオチドコンストラクトを含む組換え宿主細胞もまた、本明細書で提供される。本開示のAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドからの発現を含むAβオリゴマー特異的抗原結合分子の製造方法と同様に本明細書に包含される。発現は、例えば、ポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって達成され得る。
【0094】
本開示の結合分子を産生するために用いられる宿主細胞は、使用される細胞型に応じて様々な培地中で培養され得る。当業者は、所望の発現を達成するために過度の実験を行うことなく、適切なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択することが出来るだろう。
【0095】
本開示のAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、クローニングに加えて、又はクローニングではなく、組換え的に/合成的に調製され得る。ポリヌクレオチドは、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子に対する適切なコドンを用いて設計され得る。一般に、配列が発現に使用されるならば、意図される宿主に好ましいコドンが選択されるだろう。完全なポリヌクレオチドは、標準的な方法によって調製された重複するオリゴヌクレオチドから組み立てられ得、そして完全なコード配列に組み立てられ得る。
【0096】
好ましい実施例において、発現ベクターは、本明細書で教示される核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクター(組換えAAVウイルスベクターを含む)である。そのようなAAVウイルスベクターは、当業者に、そして遺伝子治療におけるその使用にも周知である(例えば、Naso et al. (2017) BioDrugs.. doi: 10.1007/s40259-017-0234-5アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのデザイン及び臨床現場での使用に関する詳細を参照)。他の例は、例えば、EP 1257656、EP 0954592、EP 0488528、EP1082444及び他の多くで提供される。
【0097】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、好ましい毒性及び免疫原性プロファイルを有し、CNS細胞に形質導入することができ、及びCNSにおける長期発現を媒介することが出来るので、CNS遺伝子李朝を含む遺伝子治療に有用であると考えられる(Kaplitt et al. (1994) Nat. Genet. 8:148-154; Bartlett et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1181-1186; 及びPassini et al. (2002) J. Neurosci. 22:6437-6446)。AAVベクターによって形質導入された細胞は、細胞内で有益な効果を媒介するために治療用導入遺伝子産物(ここでは、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子)を発現し得る。これらの細胞はまた、治療上の遺伝子産物(適切なリーダーシグナル配列を含めることによって必要に応じて)を分泌して、Aβオリゴマーへの結合等の細胞外効果を発揮し得る。細胞外導入遺伝子産物はまた、続いて遠位細胞によって取り込まれ、そこでその有益な効果を媒介し得る。この後者の方法は、クロスコレクション(cross-correction)として記載されている(Neufeld et al. (1970) Science 169:141-146)。
【0098】
一態様において、本発明はまた、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子を含むAAVウイルスベクター(組換えAAVウイルスベクターを含む)の投与により、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子をCNS、又は対象の脳に送達する方法を提供する。本明細書で教示されるAAVウイルスベクターは、例えば、本明細書で教示される病状の予防又は治療において、又は医薬として、又は医薬組成物として用いられ得る。
【0099】
当業者は、本明細書で教示されるものを含め、そのようなAAVウイルスベクターを調製、設計及び使用する方法に周知である。AAVベクターは、哺乳動物に対して非病原性である一本鎖(ss)DNAパルボウイルスに由来する(Muzyscka (1992) Curr. Top. Microb. Immunol., 158:97-129で確認される)。簡単に説明すると、組換えAAVに基づくベクターは、除去されたウイルスベノムの96%を占めるrep及びcapウイルス遺伝子を有し、ウイルスDNA複製、パッキング及び統合を開始するために用いられる2つの隣接する145塩基対(bp)逆方向末端反復配列(ITR)を残す。ヘルパーウイルスの非存在下において、野生型AAVは、染色体19q 13.3において優先的に部位特異性でヒト宿主細胞ゲノムに組み込まれるか、又はエピソーム的に維持され得る。単一のAAV粒子は、5kbまでのssDNAを収容することができ、それによって、導入遺伝子及び一般に十分である調節エレメントを残す。しかしながら、米国特許6,544,785に記載されているようなトランス-スプライシングシステムは、この制限をほぼ2倍にする可能性がある。
【0100】
本発明において、何れかの血清型のAAVが用いられ得る。本発明の特定の実施形態において用いられるAAVウイルスベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、及びAAV8からなる群から選択される(例えば、Gao et al. (2002) PNAS, 99:11854-11859; and Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003参照)。本明細書に列記したもの以外の他の血清型が用いられ得る。さらに、偽型AAVベクターもまた、本明細書に記載の方法において利用され得る。偽型AAVベクターは、第2のAAV血清型のキャプシド中に1つのAAV血清型を含むものである。例えばAAV2キャプシド及びAAV1ゲノムを含むベクター、又はAAV5キャプシド及びAAV2ゲノムを含むAAVベクター(Auricchio et al., (2001) Hum. Mol. Genet., 10(26):3075-81)。好ましくは、AAVは、AAV5である。
【0101】
抗Aβ抗体若しくはその抗原結合フラグメント、変異体、又は誘導体の結合特性を測定するための方法は、限定されないが、標準的競合結合アッセイ、T細胞若しくはB細胞による免疫グロブリン分泌をモニターするためのアッセイ、T細胞増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、ELISAアッセイ、及び同様の方法を含む。例えば、WO 93/14125; Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000); Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002); Watanabe et al., J Immunol 167:4321-4328 (2001); Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001); and Giraudon et al., J Immunol 172(2):1246-1255 (2004)に記載のアッセイ等を参照のこと。これらは全て参照に掘って本明細書に組み入れられる。
【0102】
Aβオリゴマー特異的抗原結合分子のコンジュゲート及びマルチマー
本開示はまた、本明細書に記載されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子及び1つ以上の薬剤を含むコンジュゲート(例えば、免疫コンジュゲート)を提供する。
【0103】
薬剤は、例えば、治療薬、毒素、検出可能な標識若しくはAβオリゴマー特異的抗原結合分子の半減期を延ばす薬剤、又はそれら何れかの組み合わせであり得る。一実施例において、薬剤は、ポリエチレングリコール(PEG)である。一例では、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子の半減期を延ばす薬剤は、血清タンパク質(例えば、アルブミン)又は免疫グロブリンのFc部分に結合する。あるいは又はさらに、薬剤は、オリゴマー結合複合体をマクロファージ等の特定の細胞型に向ける薬剤等の特定のエフェクター機能をコンストラクトに提供し得る。
【0104】
他の実施例において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、放射性同位元素等の標識に結合され得、コンジュゲートを得ることが出来る。
【0105】
前記コンジュゲートは、当該分野で周知の方法を用いて調製され得る。
【0106】
本開示はまた、本明細書に記載の2つ以上のAβオリゴマー特異的抗原結合分子を含むマルチマーを提供する。Aβオリゴマー特異的抗原結合分子は、同一又は異なるアミノ酸配列を含み得る。例えば、その最も単純な形態において、少なくとも2つのAβオリゴマー特異的抗原結合分子は、適切なリンカー又はスペーサーを介して直接連結される。例えば、リンカー又はスペーサーは、1~50アミノ酸であり得る。
【0107】
本開示はまた、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子(二重特異性抗原結合分子を含む)を含む多価又は多重特異性分子を提供する。一実施例において、本開示は、限定されないが、半減期を延ばすためのヒト血清アルブミンを含む、Aβオリゴマー以外の標的に対するポリペプチドに結合した本開示のAβオリゴマー特異的抗原結合分子を提供する。
【0108】
Aβオリゴマー特異的抗原結合分子又はそのようなAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む医薬組成物であって、好ましくはここで、発現ベクターは、そのようなAβオリゴマー特異的抗原結合分子コードする核酸分子を含むAAVウイルスベクターである。
【0109】
一態様において、本発明は、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0110】
医薬的に許容される担体は、希釈剤、賦形剤、及び同様のものを含み得る。担体の選択は、組成物の意図された投与方法に依存する。本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート又はマルチマーは、予防的又は治療的処置のために、非経口、限局、経口、又は局所投与、エアロゾル投与、又は経皮投与のために製剤化され得る。医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与され得る。
【0111】
本明細書で教示される、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、例えば、皮下、筋肉内、髄腔内、頭蓋内、脳室内、直接組織若しくは臓器への注射又は静脈内注射のための注入、又は注射による投与のために製剤化され得、従って、水性溶液として無菌形態で、場合により緩衝化及び/又は等張化され製剤化され得る。本明細書で教示される、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、例えば、蒸留水で、又は生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水で、又は5%デキストロース溶液で投与され得る。
【0112】
錠剤、カプセル剤、又は懸濁剤による経口投与用の組成物は、限定されないが、ラクトース、グルコース又はスクロース等の糖; コーンスターチ又はポテトスターチ等のスターチ; カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースを含むセルロース又はその誘導体; トラガカント粉; モルト; ゼラチン; タルク; ステアリン酸; ステアリン酸マグネシウム; 硫酸カルシウム; 落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、又はコーン油等の植物油; プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタール、マンニトール、又はポリエチレングリコール等のポリオール類; 寒天; アルギン酸; 水; 等張生理食塩水; 又はリン酸緩衝液等を含むアジュバントを用いて調製され得る。潤滑剤、潤滑油、安定剤、錠剤化剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤及び香味剤が、さらに存在し得る。
【0113】
例えば、経鼻送達用のエアロゾル製剤も、例えば、適切な噴射剤アジュバントと共に調製され得る。
【0114】
投与形態に関わらず、他のアジュバントはまた、組成物に添加され得、例えば、抗菌剤を添加して、長期の保存にわたり微生物の増殖を防ぐことが出来る。
【0115】
医薬組成物は、一般的に製造及び保存の条件下で無菌かつ、安定である。
【0116】
製剤化時に、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、剤形に適合する方法で、及び治療上/予防上有効であるような量で投与されるであろう。Aβオリゴマー特異的抗原結合分子コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)の適切な投与量は、特定の分子、コンジュゲート又はマルチマー、投与方法、治療される病状、及び/又は治療される対象に応じて変化し得る。当業者は、例えば、最適以下の投与量で開始し、投与量を漸増的に変更して最適又は有用な投与量を決定することによって、適切な投与量を決定することが出来る。
【0117】
本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート又はマルチマーの投与のために、投与量は、対象の体重の、約0.00001~約100mg/kg、約0.0001~約10mg/kg、又は約0.001~約1mg/kgの範囲であり得る。
【0118】
組成物は、1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月毎に1回等で投与され得る。
【0119】
本開示の医薬組成物は、他の薬剤と組み合わせて、すなわち、併用療法として投与され得る。別の薬剤と組み合わせて投与する場合、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、連続的に又は同時に投与され得る。
【0120】
医薬的に許容される担体と組み合わせられ得、単一剤形を製造し得るAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、一般に、予防的又は治療的効果を産生するAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)の量であろう。
【0121】
投与レジメンは、最適な予防的又は治療的応答を提供するように調整される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、又は数回に分けて投与してもよい。
【0122】
Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)の方法/使用。
【0123】
本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、多数のインビトロ及びインビボの診断及び治療用途を有する。例えば、前記分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、βアミロイドオリゴマーの関与を特徴とする様々な障害を治療、予防又は診断するために、例えばインビボでヒト対象に、又はインビトロで培養中の細胞に投与され得る。
【0124】
一態様において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、医薬として用いられ得るが、他の態様において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)は、診断薬として用いられ得る。
【0125】
本発明はまた、限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、認知症、軽度認知症、認知機能障害症候群、認知欠損、及びゴーシェ病を含む神経変性疾患の治療又は予防における使用のため等のβアミロイド関連疾患又は病状を治療するための本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)を提供する。
【0126】
他の態様において、本開示は、例えば、対象の脳脊髄液又は脳血漿又は血漿中において、対象のAβオリゴマーレベルを低減する方法を提供し、当該方法は、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、マルチマー又は発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)を前記対象に投与する工程を含む。
【0127】
診断方法
当業者に明らかであるように、本開示はまた、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子を用いるイメージング方法を企図する。イメージングのために、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子は、一般に、検出可能な標識にコンジュゲートされており、これは、イメージングによって検出可能であるシグナルを発することが出来る何れかの分子又は剤であり得る。しかしながら、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子に特異的に結合する二次標識化合物もまた、使用され得る。例示的な検出可能な標識は、タンパク質、放射性同位体、フルオロフォア、可視光放出フルオロフォア、赤外光放出フルオロフォア、金属、強磁性体、電磁放射物質、特定磁気共鳴(MR)分光学的特徴を有する物質、X線吸収又は反射物質、又は変音物質を含む。
【0128】
本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子(及び、使用される場合、標識された二次化合物)は、イメージング手順の前に、全身的又は局所的に、イメージ化される臓器、又は組織に投与され得る。投与は、直接であっても本明細書で教示される発現ベクター(好ましくはAAVウイルスベクターである)によるものであってもよい。一般に、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子は、組織又は臓器の所望のイメージを得るために有効な量で投与される。そのような用量は、使用される特定のAβオリゴマー特異的抗原結合分子、イメージ化される病状、イメージング手順に供される組織又は臓器、用いられるイメージング装置等に依存して大きく変化し得る。
【0129】
一実施形態において、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子は、限定されないが、脳のイメージング、臓器の断層イメージング、臓器機能のモニタリング、冠動脈造影、蛍光内視鏡検査、レーザー誘導手術、光音響及び音響蛍光法を含む様々な生物医学的用途において組織及び臓器のインビボ光学イメージング剤として用いられる。
【0130】
イメージングの方法の例は、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴分光法、X線撮影法、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波、平面ガンマカメライメージング、単一光子放射断層撮影(SPECT)、ポジトロン断層撮影(PET)、その他の核医学に基づくイメージング、可視光を用いた光学イメージング、ルシフェラーゼを用いた光学イメージング、フルオロフォアを用いた光学イメージング、他の光学イメージング、近赤外光を用いたイメージング、又は赤外光を用いたイメージングを含む。
【0131】
例えば、アミロイド斑のPETイメージングは、AD(CSF中のアミロイドベータと共に)を検出するための方法の1つである。Aβオリゴマー特異的PETは、脳内の全アミロイドではなく、AβオリゴマーがImmuno-PETを用いて検出され得るので、(臨床的)診断的有用性があり得る。
【0132】
一実施形態において、イメージング剤は、ヒトで用いる前にインビボ又はインビボアッセイを使用して試験される。
【0133】
さらに他の態様において、本開示は、テストサンプル中のAβオリゴマーレベルを測定する方法を教示し、当該方法は、以下:
(a)テストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、又はマルチマーと接触させること; 及び
(b)前記結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を検出すること、
の工程を含む。
【0134】
当業者は、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体の検出がまた、質量分析法を用いてなされ得るように、複合体から放出されるAβオリゴマー、又は複合体から放出される結合分子又はコンジュゲート又はマルチマーを介して起こり得ることを容易に理解する。
【0135】
本開示の方法が、インビボに基づくスクリーニングとしてではなく、単離された組織サンプルに対してインビトロで行われる限りにおいて、「サンプル」への言及は、限定されないが、体液(例えば、脳脊髄液、又は脳血漿、又は血漿)、細胞材料、組織生検標本(例えば、脳生検標本、又は摘出標本)等の対象からの何れかの生物学的物質のサンプルへの減給と理解されるべきである。
【0136】
本開示の方法に用いられるサンプルは、直接使用されてもよく、又は使用前に何れかの形態の処理を必要としてもよい。例えば、生検又は摘出サンプルは、使用前に均質化又は他の形態の細胞分散を必要とし得る。さらに、生物学的サンプルは、液体形態ではない限り、(そのような形態が必要又は望ましい場合)それは、サンプルを動員するために、緩衝液等の試薬の添加を必要とし得る。
【0137】
前述の説明から明らかになるように、そのアッセイは、例えば定量化のために、適切なコントロール、例えば、正常な固体若しくは健康な固体、又は典型的な集団を必要とし得る。
【0138】
「健康な対象」は、Aβオリゴマー関連の疾患又は障害に罹患していると診断されていない、及び/又はそのような疾患又は障害を発生するリスクがないものである。
【0139】
あるいは、又はさらに、適切なコントロールは、病状を患っていないことが知られている対象の典型的な集団についてアッセイされているマーカーの測定値を含むコンロトールデータセットである。
【0140】
一実施例において、参照サンプルは、アッセイに含まれていない。代わりに、適切な参照サンプルは、典型的な集団から以前に生成された確立されたデータセットから得られる。テストサンプルの処理、分析及び/又はアッセイから得られたデータは、次いで、サンプル集団について得られたデータと比較される。
【0141】
従って、一実施形態において、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルが決定される。結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体の前記レベルは、健康な対象に由来するサンプル中で検出された結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベル、又は例えば健康な対象の集団等の集団に由来する参照値と比較され得る。
【0142】
当該方法は、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される等の神経変性疾患に罹患している対象を診断することを目的とし得る。
【0143】
結合アッセイ、直接又は間接サンドイッチアッセイ、及び不均一層又は均一層の何れかで行われる免疫沈降アッセイ等の当該技術分野において公知の様々な診断アッセイ技術が用いられ得る(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147- 158)。診断アッセイに用いられる結合分子は、検出可能部分で認識され得る。検出可能部分は、直接的又は間接的に検出可能シグナルを生成する。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S、又は1251等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、シアニン、フォトシアニン、ローダミン、若しくはルシフェリン等の蛍光若しくは化学発光化合物、又はアルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ若しくはホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素であり得る。抗体を検出可能部分にコンジュゲートするための当該技術分野において公知の何れかの方法が用いられ得、それらは、Hunter et al., Nature, 144:945 (1962); David et al., Biochemistry, 13:1014 (1974); Pain et al., J. Immunol. Meth., 40:219 (1981 ); 及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)によって記載された方法を含む。
【0144】
本発明はさらに、以下の工程を含む神経変性疾患の治療を受けている対象における疾患の進行を評価する方法を提供する:
(a)第1の時点で採取した第1のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート、又はマルチマーと接触させること、及び結合分子又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること;
(b)第2の時点で採取した第2のテストサンプルを、結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体を形成するために十分な条件下で、Aβオリゴマー特異的抗原結合分子、コンジュゲート又はマルチマーと接触させること、及び結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを検出すること; 及び
(c)第1のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルを、第2のテストサンプルの結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体の前記レベルと比較すること。
【0145】
一実施形態において、第1のテストサンプルにおけるレベルと比較して、第2のテストサンプルにおける結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルの増加は、好ましくは、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される前記神経変性疾患の対象における進行を示す。
【0146】
一実施形態において、第1のテストサンプルにおけるレベルと比較して、第2のテストサンプルにおける結合分子又はコンジュゲート又はマルチマー/Aβオリゴマー複合体のレベルの低減は、好ましくは、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、脳アミロイド血管症、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性繊維症、及びゴーシェ病からなる群から選択される前記神経変性疾患の治療の対象における有効性を示す。
【0147】
キット
一態様において、本開示は、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、本明細書で教示されるコンジュゲート、本明細書で教示されるマルチマー又は本明細書で教示される発現ベクター(好ましくは、AAVウイルスベクターである)を含む、Aβオリゴマーを検出することに適したキット又は医薬パッケージを提供する。
【0148】
一実施形態において、前記キットは、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、本明細書で教示されるコンジュゲート、又は本明細書で教示されるマルチマー、又は本明細書で教示される発現ベクター(好ましくは、AAVウイルスベクターである)の投与を意図する。
【0149】
医薬パッケージ及びキットは、医薬製剤中に賦形剤、担体、緩衝材、保存剤、又は安定化剤をさらに含み得る。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入され得、様々な容器の全てを単一のパッケージ内に包含され得る。本明細書で教示されるキットは、室温又は冷蔵用に設計され得る。あるいは、調製物は、キットの貯蔵寿命を延ばすために安定剤を含むことができ、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)又は他の既知の従来の安定剤を含み得る。本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、本明細書で教示されるコンジュゲート、又は本明細書で教示されるマルチマーを含む組成物が、凍結乾燥される場合、キットは、調製物を再構成するための溶液のさらなる調製物を含み得る。許容される溶液は、当該分野において周知であり、例えば、医薬的に許容されるリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。
【0150】
本明細書で提供される医薬パッケージ又はキットは、例えば、本明細書で教示される神経変性疾患を同時に治療するために用いられ得る他の薬剤等の他の成分を含み得る。
【0151】
本発明の医薬パッケージ及びキットは、例えば、ELISAアッセイ等の本明細書で提供されるアッセイのための構成要素をさらに含み得る。あるいは、キット調製物は、患者の組織生検切片をテストするための免疫組織化学等のイムノアッセイにおいて使用され得る。
【0152】
本発明の医薬パッケージ及びキットは、例えば、製品の説明、投与方法及び治療の支持を特定するラベルをさらに含み得る。本明細書で提供される医薬パッケージは、本明細書に記載の組成物の何れかを含み得る。医薬パッケージはさらに、本明細書に記載の何れかの疾患の兆候を予防する、そのリスクを低減する、又は治療するためのラベルを含み得る。
【0153】
本開示のキットは、本発明の何れかの方法においてキット構成要素を用いるためのラベル又は説明書をさらに含み得る。キットは、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、本明細書で教示されるコンジュゲート、本明細書で教示されるマルチマー又は本明細書でパックとして教示される発現ベクター(好ましくは、AAVウイルスベクターである)、又は本明細書で教示される方法において、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子、本明細書で教示されるコンジュゲート、又は本明細書で教示されるマルチマーを投与するための説明書と一緒のディスペンサーを含む。説明書は、治療方法、検出方法、モニタリング方法又は診断方法を含む、本明細書に記載の方法の何れかを実施するための説明書を含み得る。説明書はさらに、十分な臨床エンドポイント又は起こり得る何れかの有害な症状、又はヒト対象での使用のために食品医薬品局等の規制局によって必要とされる追加の情報を含み得る。
【0154】
本開示の広く一般的な範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変形及び/又は修正がなされ得ることは当業者に理解されるである。従って、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本開示は、以下の非限定的な例を含む。
【実施例0155】
実施例1:ELISAを用いて決定された場合の結合選択性及び異なるアミロイドベータ由来種に対する親和性。
異なるアミロイドベータ種及び凝集状態に対するCBB-VNARの結合親和性を調べるために、ELISAアッセイを実施した。比較抗体として、よく特徴付けられている6E10抗体を使用した。6E10抗体は、アミロイドベータのN末端アミノ酸残基3~8(EFRHDS)を認識し、これは、物理的形態又は凝集状態に関わらず、アミロイドベータ1~42由来の抗原中に存在しかつ、利用可能なエピトープである(Crisostomo et al., 2015. Data Brief. 2015 Aug 6;4:650-8.; Frenzel et al., 2014. PLoS One. 2014 Mar 3;9(3):e89490))。アミロイドベータ凝集体は、本質的には、Dahlgren et al. (2002. J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53)によって記載されるように、F-12培地(オリゴマー用)の何れか中でモノマー合成アミロイドベータ1~42モノマーをインキュベートすることにより調製された。アミロイドベータ由来の抗原(オリゴマー、モノマー、原線維、全て5μg/ml)をNunc Amino Immobilizerに固定し、製造元の説明書に従ってエタノールアミンでブロッキングした。洗浄後、プレートを異なる濃度のFLAGタグ付きCBB-VNAR抗体又はビオチン化6E10抗体で1時間プローブした(並行して同じプレート上)。次に結合した抗体を抗FLAG-M2-HRP(CBB-VNAR用)又はストレプトアビジン-HRP(6E10-ビオチン用)を用いて検出した。文献のデータに従って(Pettersson et al. BMC Neurosci. 2010 Oct 5;11:124. doi: 10.1186/1471-2202-11-124)、6E10-ビオチン親和性は、アミロイドベータペプチドの物理的形態に依存しないことが観察された(平均EC50 31±7 ng/ml)。対照的に、CBB-VNARについては、それが高親和性(EC50 4±1 ng/ml)でオリゴマーに結合するのに対して、CBB-VNARはモノマー又は原線維に結合するように見えない(
図2A)。従って、この実験において、CBB-VNARのオリゴマーアミロイドベータ1~42への見かけの結合は、アミロイドベータモノマー又は原線維への結合よりも少なくとも500倍強く、好ましい。4±1ng/mlのオリゴマーに対するCBB-VNARの親和性は、0.3nM(Mw CBB-VNAR=15kDa)に等しい。CBB-VNARと同一のアミノ酸配列を有するが異なる標的に対して選択されたCDR1及びCDR3について異なる配列を有するコントロールFLAGタグ付きVNAR、12Y2(Plasmodium falciparum由来のAMA-1)は、これら実験において検出可能なシグナルを全く提供せず、それによって、CDRループの同一性が、オリゴマー認識に対して重要であることを示している。
【0156】
実施例2:ウェスタンブロットによる結合選択性及び親和性
アミロイドベータ1~42オリゴマー及び1~42モノマーを、Novex NuPAGE 4-12%BIS-TRISゲルに流し、Millipore Immobilon FL PVDF膜に移し、6E10-ビオチン又はCBB-VNARの何れかでプローブした後、fluorescent readoutを用いて、LICORストレプトアビジンIRDyeコンジュゲート800CW(6E10ブロット用)又はビオチン化シグマ抗FLAG-M2、続いてIRDyeコンジュゲート800CW(CBB-VNARブロット用)の何れかによる結合抗体を検出した。6E10ブロットにおいて、Aβオリゴマーは、高分子量でのスメアとして主に明らかになる。モノマーサンプルにおいて、モノマー(4.5kDa)、ダイマー(9kDa)及びトリマー(13.5kDa)に相当する可能性が最も低い低分子量バンドのみが観察され得る。CBB-VNARでプローブしたブロットにおいて、高分子量オリゴマーは、約~225kDaを中心とするスメアとして検出された。対照的に、モノマーコントロールでは、シグナルは検出されない(
図3、右側のグラフ)。
【0157】
実施例3:溶液中のアミロイドベータ1~42オリゴマーの検出
オリゴマーアミロイドベータ1~42の選択的検出は、ビーズに基づく近接アッセイを用いるイムノアッセイにおいて実証された(Alphascreen(登録商標)、Perkinelmer)。一般的なアミロイドベータ結合抗体6E10は、ストレプトアビジンAlphascreen(登録商標)ドナービーズに固定化され、FLAGタグ付きCBB-VNARは、抗FLAGAlphascreen(登録商標)ビーズに固定化された。これらのビーズを異なる濃度のアミロイドベータ1~42由来抗原(オリゴマー、モノマー、原線維、全て実施例1に記載のように調製した)と共にインキュベートした。このフォーマットにおいて、ドナー/6E10及びアクセプター/CBB-VNARビーズが、同じ分子上の異なるエピトープに同時に結合すると特異的シグナルが生成される。典型的なアッセイにおいて、5μlのアミロイドベータ又はコントロール溶液は、5μlの6nM 6E10ビオチン(Covance)及び5μlの0.13μM FLAGタグ付きCBB-VNAR(140nM NaCl及び0.01% Tween20を含む10mM TRIS pH7.2)中でインキュベートされた。暗所で20分間インキュベートした後、アッセイ緩衝液で希釈したストレプトアビジンドナービーズ+抗FLAGアクセプタービーズ(両方とも40μg/ml)5μlを添加し、プレートを暗所で1時間インキュベートした。次に、384ウェルの工場のプリセット測定プロトコルを用いて、Perkinelmer Enspire(登録商標)プレートリーダーを用いて、プレートを読み取った。アミロイドベータ1~42オリゴマーは、0.1μg/mlのみかけのEC50で検出されたが、一方、アミロイドベータモノマー又は原線維を用いて得られたバックグラウンド補正シグナルは、>10倍少なかった。モノマー及び原線維サンプルで観察された残留シグナルが、例えば、実験中のモノマー会合又は原線維解離によって形成された少量のオリゴマーアミロイドベータ種の存在に起因することを排除することは出来なかった。Alphascreen(登録商標)アッセイフォーマットは、シグナルの読み出しに影響するいくつかの結合平衡を含んでいるため、Alphascreen(登録商標)アッセイの検出感度は、オリゴマーに対するCBB-VNARの絶対親和性について報告していない。安定なクロスベータオリゴマー(Perkin ElmerアミロイドオリゴマーAlphaLISA高特異性検出キット(AL334F))もまた、オリゴマー補足分子として役立つように、CBB-VNARをNuncアミノイモビライザープレート(2μg/mlコーティング、1時間rT)に固定化したELISAサンドイッチイムノアッセイフォーマットを用いて検出した。CBB-VNAR被覆ウェルを異なる量の安定オリゴマーと1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄し、実施例1に記載したように6E10ビオチン及びストレプトアビジンHRPとの連続インキュベーションにて結合オリゴマーを検出した。Aβオリゴマーは、検出され得たが、CBB-VNARで被覆されていない又はオリゴマーを含まないウェルでは、バックグラウンドを超えるシグナルは観察されなかった(
図4)。
【0158】
実施例4
固有蛍光の消光
アミノ酸残基トリプトファン(Trp又はW)は、280~295nmの範囲で励起すると本質的に蛍光を発する。発光強度(すなわち、量子収率)及び発光波長は、Trp残基の局所的環境に対して敏感に反応する。局所環境は、例えば、Trp残基が立体構造変化又はリガンド結合に関与する際に変化する可能性がある。従って、Trp発光は、タンパク質及びそれらと他のタンパク質又は小分子との相互作用を研究するために広く用いられている。wobbegong sharksから単離されたVNARの不変コア構造は、2つのTrp残基(下記の配列を参照、Trpは黒で示される)を有し、一方はタンパク質内に埋め込まれ、他方は溶媒に曝される(
図5D参照)。CBB-VNARは、CDR領域に2つの追加のTrp残基を有する(CDR1に1つ、CDR3に1つ)。12Y2コントロールタンパク質のCDR領域には、Trp残基は存在しない。CDR配列とは別に、このコントロール12Y2タンパク質は、CBB-VNARのものと同一のアミノ酸配列を有する。CBB-VNARのTrp残基がアミロイドベータオリゴマー抗原の結合に関与するか否かを評価するために、蛍光滴定試験を行った。この実験のために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液、pH7.2中の既知の量のアミロイドベータオリゴマー(ABO)を用いて、0.5μMのCBB-VNAR又は12Y2コントロールVNARを滴定した。緩衝液は、0.5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で補足し、何れかの金属誘発衝突消光を防止した。各ABO添加後、Trp蛍光強度が安定するまでサンプルを平衡化し、280nm励起を用いて320~450nmの間でTrp発光スペクトルを記録した。CBB-VNARは、CDR領域に2つのTrp残基を含むが、コントロール12Y2タンパク質は含まないので、天然CBB-VNARの発光強度は、ABOの非存在下での12Y2コントロールタンパク質の発光強度よりも高い。ABOを加えると、CBB-VNARの発光強度は、用量依存的及び飽和様式で減少し、ここで強度は、天然タンパク質について測定された強度の約70%まで減少する(
図5A及びC)。この強度変化は、天然タンパク質の345nmからABO結合型の約335nmへのみかけの最大発光のシフトを伴う。対照的に、12Y2コントロールタンパク質のTrp発光は、採用した濃度を用いたABOの添加に対して敏感に反応しない(
図5B及びC)。この結果は、CBB-VNARについて観察されたABO誘導消光が、VNARフレームワークコア配列において2つのTrp残基に関連する変化に由来せず、従って、CBB-VNARへのABO抗原の結合が、CDR配列中のTrpを含むことを示す。
【0159】
実施例5
AAV5のクローニング及び配列
小さい(4.8kb)ssDNA AAVゲノムは、2つの145塩基の逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する2つのオープンリーディングフレーム、Rep及びCapからなる。これらITRは、相補的DNA鎖の合成を可能にするために塩基対を形成する。Rep及びCapは、翻訳されて複数の異なるタンパク質を産生する(Rep78、Rep68、Rep52、Rep40 -AAVライフサイクルに必要; VP1、VP2、VP3 - キャプシドタンパク質)。AAVトランスファープラスミドを構築する際、導入遺伝子(ここでは、本明細書で教示されるAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸)を2つのITRの間に置き、そして、Rep及びCapを翻訳で供給する。Rep及びCapに加えて、AAVは、アデノウイルス由来の遺伝子を含むヘルパープラスミドを必要とする。これらの遺伝子(E4、E2a及びVA)は、AAV複製を媒介する。トランスファープラスミド、Rep/Cap、及びヘルパープラスミドを、アデノウイルス遺伝子E1+を含む、HEK293細胞にトランスフェクトして、感染性AAV粒子を産生する。Rep/Cap及びアデノウイルスヘルパー遺伝子もまた、単一のプラスミドに組み合わせられ得る。
請求項1又は2に記載のAβオリゴマー特異的抗原結合分子をコードする核酸分子を含む発現ベクターであって、好ましくは、前記ベクターはAAVウイルスベクターである、上記発現ベクター。