(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002447
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】クロスフローファン
(51)【国際特許分類】
F04D 17/04 20060101AFI20221227BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F04D17/04 A
F04D29/66 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017996
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021102855
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514132497
【氏名又は名称】MEi株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】大石 均
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕太
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB54
3H130AC11
3H130BA13C
3H130BA95C
3H130CB11
3H130EA01C
3H130EB01C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】 羽根の支持板に対する取付構造を工夫することにより、振動や騒音の低減を図ることができるクロスフローファンを提供すること。
【解決手段】 間隔を存した状態で同軸上に配置され外周部に複数個のスリットを備えた複数枚の支持板と、上記複数枚の支持板のスリットに挿入され軸方向に延長された複数枚の羽根と、を具備し、上記スリットの内部であって上記羽根の表側又は裏側が配置される側には係合突起が設けられていて、上記羽根には上記係合突起に係合する係合部が設けられていて、上記羽根を上記スリット内に挿入していくと上記係合突起又は上記係合部が弾性変形することにより退避され、上記羽根を上記スリット内にさらに挿入していくと上記係合突起又は上記係合部の弾性変形による退避が解放され、上記係合突起に上記係合部が係合することにより上記羽根が上記複数枚の支持板に取り付けられたもの。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を存した状態で同軸上に配置され外周部に複数個のスリットを備えた複数枚の支持板と、
上記複数枚の支持板のスリットに挿入され軸方向に延長された複数枚の羽根と、
を具備し、
上記スリットの内部であって上記羽根の表側又は裏側が配置される側には係合突起が設けられていて、
上記羽根には上記係合突起に係合する係合部が設けられていて、
上記羽根を上記スリット内に挿入していくと上記係合突起又は上記係合部が弾性変形することにより退避され、
上記羽根を上記スリット内にさらに挿入していくと上記係合突起又は上記係合部の弾性変形による退避が解放され、
上記係合突起に上記係合部が係合することにより上記羽根が上記複数枚の支持板に取り付けられることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項2】
請求項1記載のクロスフローファンにおいて、
上記スリット内には弾性変形アームが突設されていて、
上記係合突起は上記弾性変形アームの先端に設けられていて、
上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される貫通孔であり、
上記羽根が上記スリットに挿し込まれる際、上記弾性変形アームが弾性変形することにより上記係合突起が退避されることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項3】
請求項1記載のクロスフローファンにおいて、
上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される係合凸部であり、
上記羽根が上記スリット内に挿入される際、上記羽根の係合凸部が弾性変形して退避されることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記羽根のクロスフローファン中心側の端部には上記支持板と係合される係合凹部が形成されていることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記スリットは放射方向に直線的に設けられていて、
上記羽根はその横断面形状が略円弧形状をなしているとともに上記スリットに挿入される部分は直線的に設けられていることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記クロスフローファンの両端側には上記支持板から外側に突出された上記羽根の両端を覆うカバーが設置されていることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記羽根の表面には複数個のディンプルが形成されていることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記羽根は樹脂製であることを特徴とするクロスフローファン。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、
上記支持板は樹脂製であることを特徴とするクロスフローファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機の室内機に使用されるクロスフローファンに係り、特に、羽根の支持板に対する取付構造を工夫することにより、振動や騒音の発生を抑制できるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機に使用されるクロスフローファンとしては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されたものが知られている。
まず、特許文献1に記載されたクロスフローファンは、概略、次のような構成になっている。まず、短尺の羽根車があり、この羽根車は円板部材とリング状部材を備えていて、これら円板部材とリング状部材の間であって外周部には複数枚の羽根が周方向等間隔に配置されている。上記クロスフローファンはこのような構成の羽根車を軸方向に複数連結した構成になっている。
又、特許文献2に記載されたクロスフローファンは、一つの支持板に複数枚の翼を樹脂の射出成形で一体成形したものが軸方向に複数連結されている。
又、特許文献3に記載されたクロスフローファンは、複数枚の支持板を設け、それら複数枚の支持板の外周部に複数個のスリットを周方向等間隔に設け、一方、軸方向に延長された複数枚の羽根を設け、それら複数枚の羽根を上記複数枚の支持板のスリット内に挿入して固定している。その際、スリット入口にかしめ用突起を突設しておき、羽根に設けられた貫通孔に上記かしめ用突起を挿し込んでかしめることにより固定している。
尚、特許文献3は本件特許出願人によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-141049号公報
【特許文献2】特開2010-236540号公報
【特許文献3】特開2015-224576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、特許文献1に記載されたクロスフローファンは、短尺の羽根車を複数個成形しそれらを軸方向に連結して構成されている。その際、軸芯が真っ直ぐになるように連結されているとは限らず、軸芯が真っ直ぐになっていない場合には、回転時に振動や騒音が発生してしまうという問題があった。
次に、特許文献2に記載されたクロスフローファンも一つの支持板に複数枚の翼を樹脂の射出成形で一体成形したものが複数連結されているので、特許文献1に記載された発明の場合と同様に、軸芯が真っ直ぐになるように連結されているとは限らず、真っ直ぐになっていない場合には、回転時に振動や騒音が発生してしまうという問題があった。
又、特許文献2に記載されたクロスフローファンでは、支持板と翼を樹脂の射出成形によって一体成形する関係で、翼に金型から抜くための抜き勾配が設けられている。その為、翼の厚みは均一ではなく、回転させた際に空気抵抗の差から上記翼に不均一な力が作用する。それによっても振動や騒音が発生してしまうという問題があった。
又、一つの支持板に翼を樹脂の射出成形によって一体成形したものを超音波溶着で連結しているため、超音波溶着時の圧力によって溶着部分が変形してしまうことがあり、これによっても振動や騒音が発生してしまうという問題もあった。
尚、特許文献3に記載された発明は、特許文献1、特許文献2に記載された発明の課題を解決するものとして提案されたが、支持板のスリットにおける羽根の取付状態が安定せず、振動や騒音の発生に対する懸念を払拭するには至らなかった。
又、羽根を複数枚の支持板のスリット内に挿し込んでかしめ用突起をかしめる作業が必要であり面倒であった。
【0005】
本発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、羽根の支持板に対する取付構造を工夫することにより、振動や騒音の発生を抑制することができるクロスフローファンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるクロスフローファンは、間隔を存した状態で同軸上に配置され外周部に複数個のスリットを備えた複数枚の支持板と、上記複数枚の支持板のスリットに挿入され軸方向に延長された複数枚の羽根と、を具備し、上記スリットの内部であって上記羽根の表側又は裏側が配置される側には係合突起が設けられていて、上記羽根には上記係合突起に係合する係合部が設けられていて、上記羽根を上記スリット内に挿入していくと上記係合突起又は上記係合部が弾性変形することにより退避され、上記羽根を上記スリット内にさらに挿入していくと上記係合突起又は上記係合部の弾性変形による退避が解放され、上記係合突起に上記係合部が係合することにより上記羽根が上記複数枚の支持板に取り付けられることを特徴とするものである。
又、請求項2によるクロスフローファンは、請求項1記載のクロスフローファンにおいて、上記スリット内には弾性変形アームが突設されていて、上記係合突起は上記弾性変形アームの先端に設けられていて、上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される貫通孔であり、上記羽根が上記スリットに挿し込まれる際、上記弾性変形アームが弾性変形することにより上記係合突起が退避されることを特徴とするものである。
又、請求項3によるクロスフローファンは、請求項1記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される係合凸部であり、上記羽根が上記スリット内に挿入される際、上記羽根の係合凸部が弾性変形して退避されることを特徴とするものである。
又、請求項4によるクロスフローファンは、請求項1~請求項3の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根のクロスフローファン中心側の端部には上記支持板と係合される係合凹部が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5によるクロスフローファンは、請求項1~請求項4の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記スリットは放射方向に直線的に設けられていて、上記羽根はその横断面形状が略円弧形状をなしているとともに上記スリットに挿入される部分は直線的に設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6によるクロスフローファンは、請求項1~請求項5の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記クロスフローファンの両端側には上記支持板から外側に突出された上記羽根の両端を覆うカバーが設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項7によるクロスフローファンは、請求項1~請求項6の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根の表面には複数個のディンプルが形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項8によるクロスフローファンは、請求項1~請求項7の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根は樹脂製であることを特徴とするものである。
又、請求項9によるクロスフローファンは、請求項1~請求項8の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記支持板は樹脂製であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように本発明の請求項1によるクロスフローファンによると、間隔を存した状態で同軸上に配置され外周部に複数個のスリットを備えた複数枚の支持板と、上記複数枚の支持板のスリットに挿入され軸方向に延長された複数枚の羽根と、を具備し、上記スリットの内部であって上記羽根の表側又は裏側が配置される側には係合突起が設けられていて、上記羽根には上記係合突起に係合する係合部が設けられていて、上記羽根を上記スリット内に挿入していくと上記係合突起又は上記係合部が弾性変形することにより退避され、上記羽根を上記スリット内にさらに挿入していくと上記係合突起又は上記係合部の弾性変形による退避が解放され、上記係合突起に上記係合部が係合することにより上記羽根が上記複数枚の支持板に取り付けられる構成になっているので、振動や騒音を低減させることができる。又、煩雑なかしめ作業が不要になるなど、組立作業の容易化を図ることができる。
又、請求項2によるクロスフローファンによると、請求項1記載のクロスフローファンにおいて、上記スリット内には弾性変形アームが突設されていて、上記係合突起は上記弾性変形アームの先端に設けられていて、上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される貫通孔であり、上記羽根が上記スリットに挿し込まれる際、上記弾性変形アームが弾性変形することにより上記係合突起が退避される構成になっているので、比較的簡単な構成により上記効果を確実に得ることができる。
又、請求項3によるクロスフローファンによると、請求項1記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根の係合部は上記係合突起に係合される係合凸部であり、上記羽根が上記スリット内に挿入される際、上記羽根の係合凸部が弾性変形して退避される構成になっているので、さらに簡単な構成により上記効果を確実に得ることができる。
又、請求項4によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項3の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根のクロスフローファン中心側の端部には上記支持板と係合される係合凹部が形成されているので、上記羽根を上記支持板に確実に固定でき、上記羽根の軸方向のズレを防止し、強度を向上できる。
又、請求項5によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項4の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記スリットは放射方向に直線的に設けられていて、上記羽根はその横断面形状が略円弧形状をなしているとともに上記スリットに挿入される部分は直線的に設けられているので、スリットを設ける作業、羽根のスリットへの取付作業の容易化を図ることができる。
又、請求項6によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項5の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記クロスフローファンの両端側には上記支持板から外側に突出された上記羽根の両端を覆うカバーが設置されているので、羽根の軸方向長さにバラツキがあってもそれを吸収することができる。
又、請求項7によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項6の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根の表面には複数個のディンプルが形成されているので、渦の発生を抑制して振動や騒音を低減できるなど、性能の向上を図ることができる。
又、請求項8によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項7の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記羽根は樹脂製であるので、軽量化、製造の容易化を図ることができる。又、請求項9によるクロスフローファンによると、請求項1~請求項8の何れかに記載のクロスフローファンにおいて、上記支持板は樹脂製であるので、軽量化、製造の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、クロスフローファンの斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、クロスフローファンの正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図3(a)は支持板を示す正面図、
図3(b)は支持板を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図3(b)のIV部の拡大図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、羽根の平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、支持板のスリットに羽根が挿入された状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のVII―VII断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のVIII部の拡大図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図9(a)はクロスフローファンの端部の支持板とカバーを示す斜視図、
図9(b)は
図2のIX部の拡大図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、羽根を支持板のスリットに挿入する前の状態を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、羽根を支持板のスリットに挿入している状態を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、羽根を支持板のスリットに挿入した状態を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態を示す図で、クロスフローファンの一部を示す断面図で、係合突起に係合凸片が係合した状態を示す図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、羽根の一部を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態を示す図で、羽根を支持板のスリットに挿入している状態であり、係合突起が係合凸片に当接する前の状態を示す図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態を示す図で、羽根を支持板のスリットに挿入している状態であり、係合突起により係合凸片が押圧されて変形されている状態を示す図である。
【
図17】本発明の第3の実施の形態を示す図で、クロスフローファンの支持板と羽根の係合部分の斜視図である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態を示す図で、
図18(a)は支持板と羽根の係合部分の断面図、
図18(b)は
図18(a)のXVIIIb-XVIIIb断面図である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態を示す図で、
図19(a)は支持板の斜視図、
図19(b)は
図19(a)のXIXb部分拡大図である。
【
図20】本発明の第3の実施の形態を示す図で、
図20(a)は羽根の表面側から視た斜視図、
図20(b)は羽根の裏面側から視た斜視図、
図20(c)は羽根の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1乃至
図12を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1、
図2に示すように、クロスフローファン1には複数枚の支持板3があり、この支持板3は、例えば、樹脂製で射出成形やプレス成形で製造される。その他アルミの押出成形等により製造される。
【0010】
図3(a)に示すように、上記支持板3は薄い円板状の部材でその厚さ(t
1)は、例えば、1~3mm程度に設定されている。
尚、
図3(a)では外径(R
1)に対する厚み(t
1)の比率を実際よりも大きくしている。
又、上記支持板3には、
図3(b)に示すように、中央に図示しないシャフトが通る貫通孔5が形成されている。上記貫通孔5の
図3(b)中上側には第1キー溝6aが形成されていて、上記貫通孔5の
図3(b)中下側には第2キー溝6bが形成されていて、上記貫通孔5の
図3(b)中右側には第3キー溝6cが形成されていて、上記貫通孔5の
図3(b)中左側には、第4キー溝6dが形成されている。
尚、クロスフローファンとして機能する場合には図示しないシャフトに設けられたキーが上記第1キー溝6aに係合されることで事足りるが、製造上の理由から第2キー溝6b、第3キー溝6c、第4キー溝6dを設けている。
【0011】
又、上記支持板3の外周部には円弧状のスリット7が略放射方向に沿って周方向に等間隔に複数個(この第1の実施の形態では40個)形成されている。
図4に示すように、上記スリット7の外周端(
図4中左側)は開口部9となっている。又、各上記スリット7の周方向一方側(
図4中上側)には弾性変形アーム11が形成されていて、この弾性変形アーム11の先端には係合突起13がスリット7側(
図4中下側)に突設されている。
【0012】
上記弾性変形アーム11の周方向一方側(
図4中上側)には弾性変形アーム用クリアランス15があり、上記スリット7に後述する羽根21が挿入された際に、上記弾性変形アーム11が上記弾性変形アーム用クリアランス15側に弾性変形され、上記係合突起13が上記弾性変形アーム用クリアランス15側に退避される。
【0013】
又、上記スリット7内には羽根21が挿入・固定されている。上記羽根21は樹脂製であり、射出成形によって成形される。上記羽根21は、
図5に示すように、細長い略板状の部材であり、
図6及び
図7に示すように、その横断面形状は略円弧状を成している。上記羽根21の厚み(t
2)と上記スリット9の幅(w
1)は略同じ大きさに設定されている。上記羽根21の厚み(t
2)は、例えば、1mm~2mm程度である。
【0014】
又、
図5~
図8に示すように、上記羽根21の幅方向一端側(
図7中右側、
図8中上側)には、長さ方向(
図5中左右方向)に所定の間隔(L
1)で、複数個(この第1の実施の形態の場合は6個)の溝23が形成されている。この溝23は上記支持板3のスリット7の最奥端部(
図6中右側端部)に係合される。
図8に示すように、上記溝23は開口側に向かって拡開されている。
【0015】
又、上記羽根21の幅方向他端側(
図5中下側、
図7中左側)から所定長さだけ幅方向一端側に寄った位置には、上記溝23に対応するように、長さ方向(
図5中左右方向)に所定の間隔(L
1)で、複数個(この第1の実施の形態の場合は6個)の係合部としての貫通孔25が形成されている。
図6に示すように、この貫通孔25に上記羽根21の係合突起13が係合される。
【0016】
上記溝23をスリット7の奥端部に係合させるとともにこの貫通孔25に係合突起13を係合させることにより、上記羽根21を上記支持板3に位置決めして強固に固定する。上記複数枚の支持板3によって、複数枚(この第1の実施の形態では40枚)の羽根21が固定され、それによって、略筒形状のクロスフローファン1が構成される。
【0017】
上記スリット7の最奥端から係合突起13の先端までの距離(L
2、図4に示す)に対して、上記羽根21の溝23の最奥端から貫通孔25の端までの距離(L
3、図8に示す)は同じか或いは僅かに大きく設定されている。その為、上記羽根21を上記スリット7内に挿入する際若干無理した状態で押し込むことになり、上記係合突起13と貫通孔25との係合が隙間のないものとなり、それによって、上記羽根21は上記スリット7に強固に固定される。
【0018】
又、上記羽根21の両面には、
図8に示すように、渦抑制用の複数個のディンプル27が形成されている。
尚、図ではその一部のみ示している。
【0019】
又、
図1、
図2、
図9に示すように、上記クロスフローファン1の両端の支持板3、3にはカバー31、31が設置されている。上記複数枚の羽根21の両端は両端の支持板3から外側に僅かに突出する。この突出した部分を上記カバー31、31によって覆う。上記カバー31には、上記支持板3と同様に、第1キー33a、第2キー33b、第3キー33c、第4キー33dが形成されている。
【0020】
図10乃至
図12に示すように、上記複数枚の羽根21を上記複数枚の支持板3の各スリット7内に挿入する。このとき、
図11に示すように、上記支持板3の弾性変形アーム11が係合突起13を介して弾性変形アーム用クリアランス15側に変形され、上記係合突起13が退避される。上記羽根21が完全に挿入されると、
図12に示すように、上記係合突起13が挿入された上記羽根21の貫通孔25に係合され、上記羽根21が上記支持板3に位置決めされて固定される。
【0021】
又、上記羽根21の上記支持板3と係合される箇所には図示しない接着剤が塗布される。上記接着剤は上記弾性変形アーム用クリアランス15、上記スリット7と上記羽根21との間の微細な隙間、上記支持板3と上記羽根21の溝23との間の隙間に充填される。
【0022】
次に、この第1の実施の形態による効果について説明する。
クロスフローファン1は複数枚の軸方向に延長された羽根21が複数の支持板3のスリット7に挿入されて固定される構成になっているので、基本的に全長にわたって軸芯は真っ直ぐであり、短尺の羽根車を軸方向に連結したものに比べて振動や騒音の発生は抑制される。
又、上記羽根21を上記スリット7内に挿入することにより、上記羽根21の貫通孔25に係合突起13が自動的に係合され、かしめ用突起をかしめるといった作業は不要であるので、上記羽根21の各支持板3に対する位置決めと固定作業も容易である。
【0023】
又、上記係合突起13はスリット7の入口ではなく内部に設けられているので、羽根21を幅方向の中間位置から先端側に若干寄った位置で固定することになり、羽根21を安定した状態で強固に固定することができる。
又、上記スリット7の最奥端から係合突起13の先端までの距離(L2)に対して、上記羽根21の溝23の最奥端から貫通孔25の端までの距離(L3)は僅かに大きく設定されているので、上記係合突起13の上記貫通孔25に対する係合を隙間のないものとすることができ、それによって、羽根21のスリット7に対する取付をより強固なものとすることができる。
【0024】
又、上記係合突起13は弾性変形アーム11の先端に設けられているため、上記弾性変形アーム11の弾性力によっても上記羽根21が上記支持板3に強固に固定することができる。
又、上記羽根21の溝23には拡開部23aが設けられているため、上記羽根21の上記スリット7内への挿入も容易である。
【0025】
又、上記羽根21の両面には複数個のディンプル27が形成されているため、渦の発生を抑制することができ、それによって、振動や騒音を抑制することができ、性能の向上を図ることができる。
又、上記羽根21と支持板3は共に樹脂製であるので、軽量化、製造の容易化を図ることができる。
【0026】
次に、
図13乃至
図16を参照しながら、本発明の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態によるクロスフローファンは、前記第1の実施によるクロスフローファン1と略同様の構成であるが、
図13及び
図14に示すような羽根101と支持板103を用いている。
【0027】
図13に示すように、上記支持板103にはスリット121が形成されていて、上記スリット121の
図13中上側の内面には係合突起123が設けられている。上記羽根101は、前記第1の実施の形態における羽根21と略同様の構成であるが、上面側に突出され下側に弾性変形可能な係合凸部111が形成されている。又、上記スリット121の幅(W
2)は上記羽根101の厚み(t
2)よりも大きく設定されている。又、羽根の溝23の最奥端から係合凸部111の先端までの距離(L
3、
図15に示す)はスリット121の最奥端から係合突起123の先端迄の距離(L
4、
図15に示す)に対して同じ或いは僅かに大きく設定されている。それによって、係合凸部111が係合突起123に対して隙間なく係合することになる。
【0028】
この第2の実施の形態では、上記羽根101が上記スリット121に挿入されると、
図15に示すように、上記羽根101は上記係合突起123の下側を通過していき、上記係合突起123に上記係合凸部111が当接されると、
図16に示すように、上記係合凸部111が
図16中下側に弾性変形される。上記羽根101が更に上記スリット121の奥に溝23が当接されるまで挿入される。上記スリット121の奥に溝23が当接して上記係合凸部111が上記係合突起123を通過すると上記係合凸部111が弾性復帰して元の形状に戻り、上記係合凸部111と上記係合突起123が係合される。それによって、上記羽根101が上記スリット121の奥まで挿入された状態で固定される。
【0029】
又、この第2の実施の形態の場合も、上記羽根101の上記支持板103と係合される箇所に図示しない接着剤が塗布され、上記羽根101が上記スリット121に挿入されて固定されると、上記羽根101と上記スリット121の隙間が上記図示しない接着剤によって埋められる。
【0030】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができ、且つ、より簡単な構成とすることができる。
【0031】
次に、
図17乃至
図20を参照しながら、本発明の第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態によるクロスフローファン201は、前記第1の実施によるクロスフローファン1と略同様の構成であるが、
図17に示すような支持板203と羽根205を用いている。
【0032】
図18及び
図19に示すように、上記支持板203は、前記第1の実施の形態における支持板3と略同様の構成であるが、外周部には直線状のスリット207が略放射方向に沿って周方向に複数個(この第3の実施の形態では40個)形成されている。また、前記第1の実施の形態における支持板3と同様に各上記スリット207の周方向一方側(
図18(a)中上側)には弾性変形アーム211が形成されていて、この弾性変形アーム211の先端には係合突起213がスリット207側(
図18(a)中下側)に突出された状態で形成されている。
【0033】
また、前記第1の実施の形態における支持板3と同様に各上記弾性変形アーム211の周方向一方側(
図18(a)中上側)には弾性変形アーム用クリアランス215がある。
【0034】
又、上記スリット207内には羽根205が挿入・固定されている。
図18及び
図20に示すように、上記羽根205には、長さ方向に複数の支持板係合部221が設けられている。上記支持板係合部221には、既に説明した直線状のスリット207に対応するべく、表側(
図18(b)中上側)には直線状に延長された係合凹部223が形成され、裏側(
図18(b)中下側)にも直線状に延長された係合凸部224が形成されている。すなわち、上記係合凹部223の底面225及び上記係合凸部224の
図18(b)中下側の面は平面状であって羽根205の幅方向に直線状に延長されている。上記羽根205の表面や裏面の上記支持板係合部221以外の部分は前記第1の実施の形態の場合と同様に曲面形状となっている。上記係合凹部223の底面225には貫通孔25が形成されている。
図18(b)に示すように、上記係合凹部223の側面227、227は、外側(
図18(b)中上側)に向かうほど互いに離間するように傾斜されている。また、上記係合凹部223の
図20(c)中上側には溝23が形成されている。
【0035】
上記羽根205の支持板係合部221が上記スリット207に挿入されると、上記弾性変形アーム211が上記弾性変形アーム用クリアランス215側に弾性変形され、上記係合突起213が上記弾性変形アーム用クリアランス215側に退避される。上記溝23と上記スリット207の最奥部(
図18(a)中右端)に係合されるまで上記羽根205が挿入されると、上記係合突起213が上記貫通孔25に係合される。
【0036】
又、この第3の実施の形態の場合も、上記羽根205の上記支持板203と係合される箇所に図示しない接着剤が塗布され、上記羽根205が上記スリット207に挿入されて固定されると、上記羽根205と上記スリット207の隙間が上記図示しない接着剤によって埋められる。
なお、前記した第1の実施の形態と共通する構成要素は同じ符号を付し、説明を省略する。
【0037】
この第3の実施の形態の場合も、前記第1の実施の形態の場合と同様の作用
と効果を奏する。
【0038】
本発明は前記第1の実施の形態乃至第3の実施の形態に限定されない。
例えば、羽根や支持板のスリット及び支持板の数や設置する間隔、羽根の横断面形状等については、様々な場合が考えられる。
又、前記第1の実施の形態において、羽根の係合部の構成としては、貫通孔の代わりに凹部にしてもよい。
又、羽根や支持板の材質も樹脂に限定されるものではなく、ステンレス、アルミニウム、等様々な材料が考えられる。
その他、本願発明は図示した構成に限定されるものではなく、様々な変形が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば、空気調和機の室内機に使用されるクロスフローファンに係り、特に、羽根の支持板に対する取付構造を工夫することにより、振動や騒音の発生を抑制することができるように工夫したものに関し、例えば、家庭用の空気調和機の室内機に使用されるクロスフローファンに好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 クロスフローファン
3 支持板
7 スリット
11 弾性変形アーム
13 係合突起
21 羽根
23 溝(係合凹部)
25 貫通孔(係合部)
27 ディンプル
101 羽根
103 支持板
121 スリット
201 クロスフローファン
203 支持板
205 羽根
207 スリット
211 弾性変形アーム
213 係合突起