(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024491
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】拡張可能なシース、およびそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/06 552
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022192131
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2019570958の分割
【原出願日】2018-06-20
(31)【優先権主張番号】62/522,986
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/010,744
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タン・フイ・レ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン・ティー・レ
(72)【発明者】
【氏名】ソヴァンフェープ・マク
(72)【発明者】
【氏名】アルパナ・キラン・ゴウダール
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ディー・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】サニー・トラン
(57)【要約】
【課題】心臓弁および他のプロテーゼデバイスを植込むために用いられる血管内システムのためのインロトデューサシースにおけるさらなる改善を目的とする。
【解決手段】拡張可能なインロトデューサシースおよびそれを作製および使用する方法が本明細書中に開示されている。シースは、シースの一部の一時的な拡張が、移植物のための送達システムの通過に適合させ、次いでデバイスの通過後に非拡張状態へ戻ることを可能にすることによって、患者の血管構造への外傷を最小にする。シースは、シース内腔を折り目が付けられた直径へ拡張するのを助けるその遠位先端に切り取られたフラップ構造を有する折りたたみ可能な内側部材と、それを通じての押圧力および取り出し力を減少させるエラストマー遠位端とを備える。シースは、その近位端に止血シールを含むことができ、それによってシースから外への血液漏出を防ぐとともに、シースの外側層のバルーン拡大を防ぐ。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例のうちのいずれか1つに、または添付された図面のうちのいずれか1つに関して上記のように実質的に説明された拡張可能なシース又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月21日に出願した米国仮出願第62/522,986号の利益を主張するものであり、これは、全ての目的について全体として参照により組み込まれる。
【0002】
本出願は、心臓弁または他の移植物などのプロテーゼデバイスを患者の血管構造に導入するためのカテーテルベースの技術と共に用いるためのシースの実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
血管内送達カテーテル組立体は、外科手術によって容易にアクセスできないまたは侵襲
性手術でないアクセスが望ましい身体内部の位置に人工心臓弁などのプロテーゼデバイスを植込むために用いられる。例えば、大動脈、僧帽弁、三尖弁、および/または肺人工弁は、経カテーテル送達法を含む低侵襲手術技法を用いて治療部位へ送達され得る。
【0004】
インロトデューサシースは、送達装置を患者の血管構造(例えば、大腿動脈)に安全に導入するために使用され得る。インロトデューサシースは、一般に、血管構造に挿入される細長いスリーブと、最小の失血で送達装置が血管構造との流体連通に置かれることを可能にする1つまたは複数のシール弁を含むハウジングとを有する。典型的には、従来のインロトデューサシースは、バルーンカテーテルに取り付けられた心臓弁などの人工移植物のためにハウジングを通ると共に遮られていない経路を用意するためにシールを通じてハウジングに挿入される管状ローダーを必要とする。従来のローダーは、インロトデューサシースの近位端から延び、したがってシースを通じて体内に挿入され得る送達装置の利用可能な作動長さを減少させる。
【0005】
送達システムを導入する前に大腿動脈などの血管にアクセスする従来の方法は、次第に直径が増加する複数の拡張器またはシースを用いて血管を広げることを含む。この繰り返しの挿入および血管拡張は、手術にかかる時間を増加させ得るとともに、血管に損傷を与えるリスクを増加させ得る。
【0006】
半径方向に拡張する血管内シースは、血管に損傷を与えるリスクを減少させるためにシースの外形全体を低く抑える。そのようなシースは、シースの元の直径よりも大きい直径を有するデバイスが導入されると、シャフトまたはシースを拡張形態に維持するラチェット機構などの複雑な機構を有する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第14/880,109号
【特許文献2】米国特許出願第14/880,111号
【特許文献3】米国特許出願第62/449,454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プロテーゼデバイスおよび他の器具の患者への送達および/または患者からの除去は、患者にリスクをもたらす。さらに、血管へのアクセスは、送達システムの外形が比較的大きく、これにより挿入中の血管の長手方向および半径方向の引裂きが引き起こされ得ることから依然として課題である。送達システムは、血管内の石灰化プラークをさらに取り外す可能性があり、取り外されたプラークによって引き起こされる血餅のさらなるリスクをもたらす。半径方向に拡張する特性の追加により、シースが屈曲または捻じれを起こさないので、シースを押す開業医の能力も妨げ得る。したがって、心臓弁および他のプロテーゼデバイスを植込むために用いられる血管内システムのためのインロトデューサシースにおけるさらなる改善の必要がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
拡張可能なインロトデューサシースおよびそれを作製および使用する方法が本明細書中に開示されている。本明細書中に開示された拡張可能なインロトデューサシースは、プロテーゼデバイスを患者の血管構造を通じて体内の手術部位へ送達するために用いられる。シースは、送達システムの外形を最小にするようにシースの壁厚も最小にしつつ、円周方向に大いに拡張可能および折り畳み可能であるように構成されている。さらに、本明細書中に開示されたシースは、先端の層を減少させるために折りたたみ形態の代わりにフラップを使用することから利益を得る一方、同時に、移植物を通すために拡張直径を30%以上
拡大することを可能にする遠位先端組立体を含む。遠位先端におけるフラップ組立体は、バルーンおよび移植物の取出しのために拡張し易さを高めることもできる。さらに、外側エラストマー層と内側折りたたみ層の間の血液漏出をとりなすための近位に位置するシールが、本明細書中に開示されている。このシールの近位位置は、先端における層、隆起、および非対称性を減少させ、好ましくは、シールは、バルーン拡大または漏れをとりなすために、患者の血管構造の中への入り口の部位にまたはその近くに配置するためにマークされる。また、シール組立体は、シール位置の視認性を高めるとともにシールに隣接したバルーン拡大を防止する外側ジャケットを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態は、細長い内側部材と、エラストマー外側部材とを有する拡張可能なシースを含む。細長い内側部材は、中央内腔と、第1および第2の円周部分とを定める。第1の円周部分は、第1および第2の長手方向縁を含む。第2の円周部分は、第1の長手方向縁と第2の長手方向縁の間で延びる。細長い内側部材は、第1および第2の長手方向縁で折り目を付けて折りたたまれた形態にするように構成されている。折りたたまれた形態における第2の円周部分は、重なり合っている縁間に少なくとも部分的に配置される。外側エラストマー部材は、細長い内側部材の周囲に延び、細長い内側部材を折りたたまれた形態に付勢するように構成されている。細長い内側部材は、遠位先端も備える。遠位先端は、細長い内側部材の開放(または少なくとも部分的に広げられた)構成に第1の長手方向縁から少なくとも第2の長手方向縁まで延びるフラップを備える。
【0011】
他の実施形態では、フラップは、細長い部材が弾性部材によって折りたたまれた形態に付勢されるとき、第1の円周部分の外面の上で周方向に摺動するように構成されている。第2の円周部分は、少なくともフラップの近位縁まで長手方向に延びる遠位縁を有することができる。フラップの近位縁は、第2の円周部分の外面の上へ第2の円周部分の遠位縁を覆って延びることができる。
【0012】
別の実施形態におけるフラップは、第2の長手方向縁に沿って切断された第2の円周部分の長手方向セクションを含むことができる。長手方向セクションは、第2の円周部分の遠位端から円周方向にやはり切断されてもよい。
【0013】
他の実施形態では、拡張可能なシースは、重なり合い延長部を備えることもできる。例えば、重なり合い延長部は、長手方向セクションから円周方向に延びることができる。また、重なり合い延長部は、長手方向セクションから近位に延びることができる。
【0014】
他の実施形態では、遠位先端は、細長い内側部材の遠位端から延びるエラストマー端をさらに備えることができる。エラストマー端は、遠位方向に先細りの形状を含むことができる。また、遠位先端は、内側部材内など内部に埋め込まれたマーカーを備えることができる。
【0015】
拡張可能なシースの遠位先端を作製する方法も開示されている。この方法は、細長い内側部材の第1の長手方向縁および第2の長手方向縁に沿って折り目を形成することによって細長い内側部材に折りたたまれた形態を形成するステップを含む。第1の円周部分は、折りたたまれた形態にて長手方向縁間に少なくとも部分的に配置される。また、この方法は、フラップが内側部材の第1の長手方向縁から少なくとも内側部材の第2の長手方向縁まで延びるように内側部材の遠位先端にフラップを形成するステップを含む。さらに、上記方法は、細長い内側部材をエラストマー外側部材で覆うステップを含むことができる。
【0016】
上記方法は、フラップを形成するときに、第1の円周部分の外面を覆って円周方向にフラップを延ばすことなどの他の実施形態を含むことができる。フラップを形成するステップは、遠位縁を覆ってかつ第2の円周部分の外面の上へ延びるフラップの近位縁を形成す
るステップを含むこともできる。フラップは、長手方向セクションを第2の円周部分から切断することによって少なくとも部分的に形成されてもよい。そして、フラップは、重なり合い延長部を長手方向セクションに取り付けることによって少なくとも部分的に形成されてもよい。
【0017】
上記方法は、エラストマー端を細長い内側部材の遠位端に取り付けるステップも含むことができる。そして、この方法は、先細り形状をエラストマー端に形成するステップを含むことができる。
【0018】
他の実施形態では、心臓弁などのプロテーゼデバイスを送達する方法が開示されている。この方法は、患者の血管系内に拡張可能なシースを配置するステップを含むことができる。そして、この方法は、プロテーゼデバイスが半径方向外向きの力を拡張可能なシースの内側部材の内面に及ぼし、内側部材を拡張形態に局所的に広げるように、プロテーゼデバイスを拡張可能なシースの内腔を通じて導入するステップを含む。この方法は、プロテーゼデバイスを内腔をさらに通じて拡張可能なシースの遠位先端へ前進させ、プロテーゼデバイスの通過によって及ぼされる半径方向圧力に応じて遠位先端のフラップの自由端を拡張可能なシースの第1の円周部分の外面の上で円周方向に摺動させて内腔を局所的に拡大するステップも含む。別の態様において、内側部材は、プロテーゼデバイスが内腔から外に通過した後に、遠位先端にて折りたたまれ得る。
【0019】
他の実施形態では、上記方法は、内腔の遠位端の周囲に延びるエラストマー端を通じてプロテーゼデバイスを前進させて、プロテーゼデバイスがそれを通過した後にエラストマー端を拡張するとともにエラストマー端を少なくとも部分的に折りたたむステップを含むことができる。
【0020】
他の実施形態では、上記方法は、遠位先端のフラップの自由端を第1の円周部分の外面の上で円周方向に摺動させて内腔の直径を局所的に減少させることによって、内側部材を少なくとも部分的に折りたたむステップを含むことができる。
【0021】
別の実施形態は、近位シールを備えた拡張可能なシースを含む。例えば、拡張可能なシースは、細長い内側部材と、エラストマー外側部材と、近位シールとを備えることができる。細長い内側部材は、少なくとも1つの折りたたみ可能な軸部分を含む。外側エラストマー部材は、内側部材を少なくとも部分的に覆って延び、少なくとも1つの折りたたみ可能な軸部分を折りたたまれた形態に付勢するように圧縮力を内側部材へ及ぼすように構成されている。近位シールは、内側部材の外面から外側エラストマー部材の内面へ延びる中間部材を含む。有利には、シールは、拡張可能なシースの遠位自由端から拡張可能なシースの近位端への流体の近位移動を防止するように構成されている。
【0022】
他の実施形態では、内側部材および外側エラストマー部材は、近位シールの遠位の接続されていない長さを有することができる。例えば、接続されていない長さは、近位シールから拡張可能なシースの自由遠位端へ遠位に延びることができる。そして、したがって、上記シールは、遠位自由端から始まるとともに接続されていない長さに沿って近位に延びる経路を遮断することによって漏れを阻止している。
【0023】
さらに他の実施形態では、拡張可能なシースは、近位シールの位置にて外側エラストマー部材を覆って延びる外側ジャケットを含むことができる。そして、外側エラストマー部材は、シールにて内側部材に融合され得る。外側エラストマー部材は、内側部材と共に近位シールにて折りたたみ可能とすることもできる。シールの遠位で、内側部材は、外側エラストマー部材から独立してやはり折りたたみ可能であり得る。細長い内側部材は、いずれかまたは両方の例において、移植物の通過のために開放構成を少なくとも部分的に広げ
るようにやはり構成され得る。
【0024】
他の実施形態では、細長い内側部材は、中央内腔と、第1および第2の長手方向縁を含む第1の円周部分と、第1の長手方向縁と第2の長手方向縁の間に延びる第2の円周部分とを定める。そして、細長い内側部材は、第1および第2の長手方向縁で折り目を付けて折りたたまれた形態にするように構成されてもよく、第2の円周部分は、重なり合っている長手方向縁間に少なくとも部分的に配置される。
【0025】
他の実施形態では、細長い内側部材は、遠位先端を含むことができ、この遠位先端は、細長い内側部材の開放構成に第1の長手方向縁から少なくとも第2の長手方向縁まで延びるフラップを備える。
【0026】
他の実施形態では、拡張可能なシースは、近位に配置されたストレインリリーフ部を備えることができる。そして、近位シールは、ストレインリリーフ部の遠位端に隣接した近位端を有する。ストレインリリーフ部は、例えば、少なくとも9.5cmの長さである長さを有することができる。
【0027】
他の実施形態では、近位弁を有する拡張可能なシースを作製する方法またはプロセスが開示されている。この方法は、細長い内側部材に折りたたまれた形態を形成するステップを含む。例えば、細長い内側部材の第1の長手方向縁および第2の長手方向縁に沿って折り目を形成し、折りたたまれた形態にて第1の円周部分が長手方向縁間に少なくとも部分的に配置されるようにする。次いで、エラストマー外側部材で細長い部材を覆うステップがある。また、上記方法は、中間部材を内側部材の外面からエラストマー外側部材の内面へ延ばすことによって拡張可能なシースの遠位自由端の近位に近位シールを形成するステップを含んでもよい。
【0028】
上記方法は、漏れを遮断するように近位シールを用いて、遠位自由端から延びるとともに内側部材と外側部材の間に延びる経路を遮断するステップをさらに含むことができる。そして、上記方法は、シールにてエラストマー外側部材を内側部材に融合させるステップをさらに含むことができる。
【0029】
例えば、融合は、近位シールにて外側エラストマー部材を覆う外側ジャケットを延ばすステップを含むことができる。そして、上記方法は、融合前に、心棒を覆っている内側部材およびエラストマー外側部材を開放構成の中に伸ばすステップを含むことができる。
【0030】
他の実施形態は、プロテーゼデバイスを送達する方法を含む。この方法は、患者の血管系内に拡張可能なシースを拡張可能なシース上の近位シールまで配置するステップを含む。そして、さらに、プロテーゼデバイスを拡張可能なシースの内腔に導入するステップを含む。上記方法は、拡張可能なシースの遠位自由端から始まる漏れ経路を近位シールで遮断するステップを含むこともできる。この方法は、プロテーゼデバイスが半径方向外向きの力を拡張可能なシースの内側部材の内面に及ぼし、内側部材を拡張形態に局所的に広げるように、プロテーゼデバイスを拡張可能なシースの内腔を通じて前進させるステップも含む。次いで、送達する方法は、プロテーゼデバイスが拡張可能なシースの内腔から外に通過した後に、遠位先端にて内側部材を少なくとも部分的に折りたたむステップを含む。
【0031】
他の実施形態では、方法は、内側部材と外側エラストマー部材の間に延びる中間層を用いる近位シールで経路を少なくとも部分的に遮断するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】シースを通じて展開するための送達装置の側面図である。
【
図1B】シースを通じて展開するための送達装置の側面図である。
【
図1C】拡張可能なインロトデューサシースの側面図である。
【
図2】拡張可能なインロトデューサシースの斜視図である。
【
図3】拡張可能なインロトデューサシースの遠位先端の断面図である。
【
図4】フラップを切断することを含むインロトデューサシース(拡張形態に示されたシース)の製造プロセスにおけるステップを示す図である。
【
図5】シースを折りたたまれた形態に折りたたみ、間隙をシースの先端に切断することを含むインロトデューサシースの製造プロセスの別のステップを示す図である。
【
図6】フラップの延長部を取り付けることを含むインロトデューサシース(折りたたまれた形態に示されたシース)の製造プロセスの別のステップを示す図である。
【
図7】
図4に示された切断フラップなどの切断フラップに取り付けるための延長された重なり部を示す図である。
【
図8】二層ストリップの折りたたみ可能な内側部材への取付けを含む製造プロセスの別のステップを示す図である。
【
図9】拡張可能なインロトデューサシースの先端および外側部材を一緒にシールすることを含む製造プロセスの別のステップを示す図である。
【
図10】エラストマー自由端が取り付けられていない拡張可能なインロトデューサシースの重なり合っている内側部材およびフラップ部分の端面図である。
【
図11】外側部材のないかつエラストマー自由端の接合前のシース遠位先端の斜視図である。
【
図12】心棒上の折りたたまれた形態における拡張可能なインロトデューサシースの遠位先端の外形の側面図である。
【
図14】近位に配置されたシールを有する拡張可能なインロトデューサシースの概略図である。
【
図15】折りたたみ可能な薄い壁部分を有する押し出し成形された内側部材の断面図である。
【
図16】折りたたまれた形態における
図15の内側部材の断面図である。
【
図17】折りたたみ可能な内側部材およびエラストマー外側部材を有する拡張可能なインロトデューサシースの断面図である。
【
図18】心棒上の広げられたまたは拡張されたインロトデューサシースの断面図である。
【
図19】内側部材および外側部材が一緒に接合されている、広げられたまたは拡張されたインロトデューサシースの断面図である。
【
図20】折りたたまれた形態における
図19のインロトデューサシースの断面図である。
【
図21】外側ジャケットを含む
図20のインロトデューサシースの断面図である。
【
図22A】近位弁が患者から引き抜かれた状態の拡張可能なインロトデューサシースの概略図である。
【
図22B】近位弁が患者から引き抜かれた状態の拡張可能なインロトデューサシースの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明概念のいくつかの例の下記説明は、特許請求の範囲を限定するために用いられるべきではない。他の例、特徴、態様、実施形態、および利点は、以下の説明から当業者に明らかになろう。理解されるように、デバイスおよび/または方法は、本発明概念の趣旨を逸脱することなく全ての他の異なるかつ明らかな態様が可能である。しがたって、図面および説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされたい。
【0034】
本説明のために、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規な特徴が、本明細書中に説明されている。説明された方法、システム、および装置は、決して限定とし
て解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、および互いに様々な組み合わせおよびサブコンビネーションで様々な開示された実施形態の全ての新規および自明でない特徴および態様に向けられている。開示された方法、システム、および装置は、任意の特定の態様、特徴、またはそれらの組み合わせに限定されず、開示された方法、システム、および装置は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在することも、または課題が解決されることも必要としない。
【0035】
本発明の具体的な態様、実施形態または例に関連して、特徴、整数、特質、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書中で説明した任意の他の態様、実施形態または例に、適合不能でない限り、適用可能であることを理解されたい。(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの全ては、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相容れない組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及び、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0036】
全体または一部で、参照により本明細書に組み込まれると言われている任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、組み込まれる資料が既存の定義、陳述、または本開示に記載された他の開示資料と相反しない範囲まで本明細書に組み込まれるのに過ぎないことを理解されたい。したがって、必要な限りにおいて、本明細書中に明示的に記載された本開示は、参照により本明細書に組み込まれる何らかの相反資料に取って代わる。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書中に記載された既存の定義、陳述、または他の開示資料と相反する任意の材料またはその部分は、組み込まれた資料と既存の開示資料の間で相反が生じない程度まで組み込まれるのに過ぎない。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段明確に指示されていない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、「およそ」ある特定の値から、および/または「およそ」別の特定の値までとして本明細書中に表され得る。そのような範囲が表されるとき、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって概算として表されるとき、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。各範囲の端点は、他方の端点に関連してと他方の端点から独立してとの両方で重要であることがさらに理解されよう。
【0038】
「適宜の」または「適宜」は、続いて説明される事象または状況が起きてもよく、または起きなくてもよいことを意味し、説明は、上記事象または状況が起きる例と、それが起きない例とを含む。
【0039】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通じて、「備える、含む(comprise)」という語、ならびに「備える、含む(comprising)」および「備える、含む(comprises)」などのこの語の変形は、「備える(含む)が、それに限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数、またはステップを除外することは意図されていない。「例示的(Exemplary)」は、好ましいまたは理想的な態様「の一例」であり、好ましいまたは理想的な態様の表示を伝えることを意図されていない。「などの(Such as)」は、限定的な意味で使用されず、例示のために使用される。
【0040】
本明細書中に使用されるとき、用語「近位」および「遠位」は、シース、カテーテル、
または送達組立体の領域を指す。「近位」は、デバイスのハンドルに最も近い領域を意味し、一方、「遠位」は、デバイスのハンドルから最も遠く離れている領域を意味する。
【0041】
本明細書中に使用されるとき、用語「管」または「管状」は、形状を円形断面に限定する意味はない。代わりに、管または管状は、閉断面と内部を通じて軸方向に延びる内腔とを有する任意の細長い構造を指し得る。管は、いくつかの選択的に設けられたスロットまたは開口を内部に有することもできるが、それでもなお、管は、内腔内に他の構成要素を収容する閉構造を十分与える。
【0042】
本明細書中に開示された拡張可能なインロトデューサシースは、プロテーゼデバイスを患者の血管構造を通じておよび体内の手術部位まで患者の身体中に送達するために使用される。シースは、送達システムの外形を最小にするようにシースの壁厚も最小にしつつ、円周方向に大いに拡張可能および折り畳み可能であるように構成されている。さらに、本明細書中に開示されたシースは、先端の層を2つまたは3つに減少させるために折りたたみ形態の代わりにフラップを使用することから利益を得る一方、同時に、移植物を通すために拡張直径を30%以上拡大することを可能にする遠位先端組立体を含む。遠位先端におけるフラップ組立体は、拡張可能なシースを通じたバルーンおよび移植物の取り戻しのために拡張し易さを高めることもできる。さらに、遠位先端において外側エラストマー層と内側折りたたみ層の間の血液(フラップの自由縁により層間にある血液)の漏出をとりなすための近位に位置するシールが、本明細書中に開示されている。このシールの近位位置は、シースの遠位先端における層、隆起、および非対称性を減少させ、好ましくは、シールは、バルーン拡大または漏れをとりなすために、患者の血管構造の中への入り口にまたはその近くに配置するためにマークされる。また、シール組立体は、シール位置の視認性を高めるとともにシールに隣接したバルーン拡大を防止する外側ジャケットを含むことができる。
【0043】
図1A~
図1Cは、本開示による拡張可能なシース10と、人工心臓弁などの人工移植物を患者に送達するための典型的な送達装置110とを示す。本明細書中に説明された送達装置110は例示に過ぎず、他の同様の送達システムが拡張可能なシース10と共に使用されてもよいと理解されたい。本明細書中に示される送達装置110は、概して、操縦可能なガイドカテーテル114と、このガイドカテーテル114を通じて延びるバルーンカテーテル116とを備える。
【0044】
以下詳細に説明されるように、
図1A~
図1Bに示されるガイドカテーテル114およびバルーンカテーテル116は、互いに対して長手方向に摺動するようになされており、それによって患者の身体内の移植部位における人工心臓弁の送達および配置を容易にする。ガイドカテーテル114は、ハンドル部分120と、このハンドル部分120から延びる細長いガイド管、またはシャフト122とを備える(
図1B)。
【0045】
図1Cは、送達装置110およびプロテーゼデバイスを患者の体内に導入するために使用される拡張可能なシース10を示す。拡張可能なシース10は、人工心臓弁のための送達システムの通過をガイドする中央内腔を定めるほぼ管状構成を有する。近位端において、拡張可能なシース10は、加圧された血液の漏出を防ぐ止血弁を備える。一般に、使用中、シース10の遠位端は、患者の皮膚を通過させられ、シース10は、大腿動脈などの血管に挿入される。次いで、送達装置110(と共にその移植物)は、止血弁を通じてシース10に挿入され、患者内の移植物が送達および植込まれる場所に患者の血管構造を通じて前進させられる。
【0046】
一実施形態では、
図2に示されるように、シース10は、共通の中心長手方向軸に沿って延びる細長い内側部材20と、外側エラストマー部材50とを備える。
図3は、拡張可能なシース10の遠位先端の断面図を示し、
図4は、製造ステップ中に円周方向に拡張された状態
でその遠位先端の側面図を示す。
図4に示されるように、細長い内側部材20は、一対の折りたたんだ部分または折り目22によって第2の円周部分26から区別された第1の円周部分24を備える。折り目22は、細長部材を折りたたまれた形態に折りたたむのを容易にする。一実施形態では、フラップ30は、下記の手順によって内側部材20の第2の円周部分26から切断することができる。(第2の円周部分26の縁38に対応する)折り目22は、フラップ30の自由縁46を作り出すように軸方向に切断される。第2の切断は、フラップ30の近位縁44を形成するように(円周方向の)自由縁46にほぼ垂直に適用される。この第2の切断は、第2の円周部分26の遠位縁58を同時に形成する。この時点で、フラップ30は、遠位縁42、近位縁44、および自由縁46を含む第2の円周部分26の切断部分を備える。
【0047】
遠位先端28の構造およびそのフラップ30は、組み立てられた先端を有する先行技術のデバイスよりも外形を低く抑えることを可能にする。しかし、また、フラップ30は、フラップ30が第1の円周部分24の外側に沿って自由に摺動するので拡張性を高めることができる。いくつかの実施形態では、フラップ30は、フラップ30の範囲に延びる延長された重なり部分60を用いて近位方向および円周方向に延ばされ、第1の円周部分24に対してそれがより大きく移動することを可能にする。そのような延長された重なり部分は、
図7に単独で示されており、
図6および
図8においてシース10に取り付けられ、以下詳細に説明される。別の実施形態では、フラップ30は、放射線不透過性マーカーバンド52を備えることができ、この放射線不透過性マーカーバンド52は、放射線透視法を用いて患者の身体内部にシース10の遠位先端を設置するために、フラップ30に適用され、埋め込まれ、または他の方法で結合される。
【0048】
本発明の遠位先端構造および近位シールの実施形態は、内側折りたたみ部材および弾性外側部材を備えたシースの一部として示されているが、他のタイプの拡張可能なインロトデューサシースが、そのような改善から利益を受けてもよい。例えば、共通に譲渡された米国特許出願第14/880,109号(拡張可能なシースと題された'109の出願)、第14/880,111号(エラストマー断面部分を有する拡張可能なシースと題された'111の出願)、および第62/449,454号(拡張可能なシースと題された'454の出願)は、本明細書によって全体として参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施形態から利益を受け得る拡張可能なインロトデューサシースを開示する。
【0049】
開示された実施形態では、シース10は、拡張可能なシース10の長さの少なくとも一部を入れる外側エラストマー部材50を備えることができる。外側エラストマー部材50の一例は、
図1Cおよび
図2に示されている。外側エラストマー部材50は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、および炭素繊維またはガラス繊維によって補強された複合材料などの様々なエラストマー材料から形成され得る。好ましくは、外側エラストマー部材50は、生体適合性の抗凝材料で形成される。
【0050】
シース10の外側の周囲に延びるとき、外側エラストマー部材50は、拡張可能なシース10の様々な層間の長手方向の滑りを防ぐ固定機構として働く内側に向けられた半径方向力を与える。外側エラストマー部材50によって与えられる圧縮力は、通過するプロテーゼデバイスによって拡張した後に、シース10の中心長手方向軸に向かって戻るシース24、26の円周部分の移動も容易にすることができる。したがって、シース10は、移植物が存在しつつシース10の局所的な拡張を可能にし、次いで、移植物が通過した後に、シース10がそのより小さい非拡張直径に戻るように構成されている。最後に、外側エラストマー部材50は、シース10が配置されているときに、およびシース10を通じての送達システムおよび移植物の挿入中に、血管系に損傷を与えるのを最小にすることができる滑面をもたらす。通過するプロテーゼデバイスがシース10によって損傷を受けるのを防ぎ、その通過中のシース10とデバイスの間の摩擦を減少させるために、シース10の中央内腔を通じて延びる類似の内
側エラストマー部材(図示せず)が含まれてもよいと考えられる。
【0051】
本発明の実施形態は、本明細書中に示された特定のエラストマー部材に限定されない。例えば、参照により本明細書に組み込まれる'109、'111、および'454の出願は、外側エラストマー部材50についての他の構造、材料、および構成を開示する。また、外側エラストマー部材50の示された実施形態は、円形断面形状を有するが、移植物送達デバイスが延ばされ得る内腔のある全体または部分を定める楕円、正方形、および混合または不規則の形状などの他の形状が可能である。さらに、本明細書中で使用されるとき用語「円周方向」または「周囲」、あるいは「管」または「管状」は、円形断面に限定されず、代わりに他の層または移植物の通過のための完全なまたは部分的な内腔を定める形状の完全なまたは部分的な外周に及ぶ。
【0052】
図15は、第1および第2の円周部分24、26を含む内側部材20の円形断面を示す拡張形態における内側部材20の断面を示す。
図16は、一対の折りたたみ線または折り目22によって互いに分離された円周部分24、26を示す折りたたまれた形態における内側部材20の断面を与える。(
図4に示されるとともに上述されたように)折り目22は、内側部材20の長さの大部分に沿って長手方向に延びる。例えば、第1の円周部分24は、折り目または折りたたみ線22によって形成され、またはそれに沿って延びる第1の長手方向縁36および第2の長手方向縁38を備える。第2の円周部分26は、少なくとも示された実施形態において、それが内側部材20の外周を完成するので、その折りたたみ線22によって形成されたそれ自体の長手方向縁40を有する。
【0053】
折りたたみ線22は、内側部材20の長さに沿った直線または連続である必要はない。折りたたみ線22は、例えば、シース10の近位端にてハブに接続するための拡張されたストレインリリーフ部においてまたはその近くで末端をなし得る。また、遠位先端構造は、そのような折りたたみ線の除去または修正を含み得る。折りたたみ線22は、示された実施形態では、第1および第2の円周部分24、26の間の壁厚の減少によって形成されている。折りたたみ線22は、拡大する移植物の通過の前後に、
図16に示されるように、内側部材20を圧縮された折りたたまれた形態に圧縮するのを容易にするために、刻み目形成、コンディショニング、組成変更などによって形成することもできる。
【0054】
一実施形態では、第1の円周部分24は、内側部材20の円弧または外周のずっとより多くの割合を占める。例えば、
図15に示されるように、第1の円周部分は、内側部材20の円形断面の4分の3(270度)よりも大きい。反対に、第2の円周部分26は、内側部材20の残りの外周である約4分の1以下を占める。第1および第2の円周部分24、26の割合は、内側部材20および残りのシース10の外形の所望の減少量に適合するように変更されてもよい。しかしながら、一般に、示された割合は、ステントに取り付けられた心臓弁および他の人工移植物を送達するために、シース10を押す強さにとって十分なより厚い第1の円周部分24とより薄い第2の円周部分26によってもたらされる外形減少の量とのバランスをとるためによく働く。
【0055】
図16および
図17に示されるように、内側部材20は、折りたたまれた形態を有し、第1の円周部分24の第1の長手方向縁36は、第2の長手方向縁38に重なり合う。詳細には、折り目22は、例えば、外側エラストマー部材50のエラストマーの特徴の促しにより、細長い内側部材20を重なり合っている構成に折りたたむのを容易にする。重なり合っている構成では、第1の円周部分24の(折り目22に沿った)長手方向縁36、38は、一緒になり、重なり合っている配置に互いに通過する。この配置は、拡張可能なインロトデューサシース10の外形を低く抑えるように第1の円周部分24の重なり合っている縁間で第2の円周部分26の一部または全部をやはりトラップするまたは折りたたむ。
【0056】
好ましくは、内側部材20は、高密度ポリエチレン(HDPE)または均等なポリマーのような剛直性ポリマーなどの(外側エラストマー部材50と比べて)比較的堅い材料の管で構成される。壁部分の一体押し出しなどの一体構成は、拡張性を促進するためにシース内で割れ目を用いる先行技術のシースの漏出を防ぐのに有利である。また、図に示された外側エラストマー部材50の実施形態は、円形断面形状を有するが、移植物送達デバイスが通過できる内腔のある種の形態が形成される限り、楕円、正方形、および混合または不規則の形状などの他の形状が可能である。参照により本明細書に組み込まれる'109、'111、および'454の出願は、本明細書中に開示された拡張可能なシースと共に使用できる細長い内側部材20のための他の構造、材料、および構成を開示している。
【0057】
図3~
図6、
図9、および
図11に示されるように、一実施形態における拡張可能なシースの遠位先端28は、拡張可能なシース10の遠位端に沿って短い長さに延びるとともに、エラストマー自由端54において終わるフラップ30を含む。
図4は、製造ステップ中に拡張された状態で内側部材20を示す。示されたフラップ30は、概して、第1の円周部分24の第1の長手方向縁36に隣接して位置するその接続された縁48において始まる。例えば、
図4に示されるように、フラップ30は、第2の長手方向縁38の向きに円周方向に延びる。
図5に示されるように、シースが折りたたまれたとき、フラップ30は、第2の長手方向縁38を覆って延び、第1の円周部分24の外面上へ戻る。概して、長手方向縁38を越える重なり合いの量は、移植物および送達システムの最大外形によって決定される。
【0058】
フラップ30は、遠位縁42と、近位縁44と、遠位および近位縁42、44の間に延びる自由縁46とを備える。上部または接続された縁48は、第1の円周部分24へフラップが移り変わるまたはこれに取り付けられる場所に形成される。これらの4つの縁は、ほぼ直線であり、フラップ30のためにほぼ長方形形状を形成するように直角に接続されている(いくつかの実施形態では、隅について一部が丸くなっている)。概して、フラップ30は、フラップ30が第1の円周部分24の外面に沿って自由に摺動するので、遠位先端28の拡張性を高める。
図10~
図11に示されるように、遠位縁42、近位縁44、および自由縁46は、内側部材20の拡張および圧縮(折りたたみ)を用いて自由に摺動または移動する。
【0059】
遠位先端28の構成は、従来の先端構造に使用された複数の層を築き上げる必要を防ぐのに有利である。例えば、遠位先端28のフラップ領域には3つの層だけが含まれており、エラストマー外側エラストマー部材50、フラップ30、および内側部材20の第1または第2の円周部分24、26の下地の一方が含まれている。一実施形態では、フラップ30は、自由縁46に沿った軸方向長さ約23+5mmと、遠位縁および近位縁42、44における円周方向長さ約12+2mmとを有する。
【0060】
本発明のフラップ30は、少なくとも圧縮状態において第1の円周部分24と重なり合うあるレベルを実現するようにフラップ30の一部が軸方向および/または円周方向に十分遠く延びる限り、正方形、半円形、または他の不規則な形状などの形状および寸法を変化させていてもよい。フラップ30は、移植物の通過を可能にするために一時的な拡張を可能にする他の閉じた外周形状の切断部分などの多くの形態をとり得る。または、上述したように、フラップ30は、所与の異なる程度の延長または重なり合いに組み立てられる材料の組み合わせを含むことができ、改善された拡張性を有する遠位先端28を与えるが、拡張されていないまたは圧縮された形態を取り戻すときにキャッチングを防止するようになっている。流体漏れを防止するために本明細書中に開示された折りたたみ式シースおよび本明細書中に開示された弁組立体と組み合わされるときに特に有利であるが、フラップ30は、折りたたみ式シースとだけ関連付けられる必要はない。
【0061】
好ましくは、拡張可能なシース10の遠位端28のエラストマー自由端54は、
図9に示されるように、第1の円周部分24の遠位端に取り付けられ、これから遠位に延びる環状または
管状を有し、遠位方向に先細りである。自由に摺動するフラップ30とは異なり、自由端54は、移植物を通過させるのに十分に大きい内腔を作り出すために延びる十分なエラストマー特性を有する。その環状形状により、自由端54は、内側部材20の残りに対してのフラップ30の自由な拡張を幾分制限する。したがって、自由端54の環状形状は、フラップ30があまり遠く変位し、外側エラストマー部材50単独でその戻りを達成できなくなるのを防ぐことができる。エラストマー自由端54は、シース10の広げられた直径への拡張および戻りを管理するのに十分な高い弾性および耐疲労性を有する任意のエラストマー材料で構成され得る。そのような材料の一例は、NEUSoft(商標)熱可塑性ポリウレタンである。
図9に示されるように、エラストマー自由端54は、NEUSoft(商標)の環状に構成された二層に接合されるともにその遠位端において先細りに成形された外側エラストマー部材50の一部も含み得る。
【0062】
図3~
図9に示されるように、拡張可能なインロトデューサシース10は、内側部材20を切断し、上述したようにフラップ30のための構造を形成し、次いで様々な層を一緒に接合して遠位先端28を形成するプロセスを用いて構成され得る。放射線不透過性マーカーバンド52は、その遠位端の近くで内側部材20の上へ貼付、接着、または鋲留めされ得る。さらに、
図9および
図11に示されるように、層64、66から形成された二層ストリップ62は、エラストマー自由端54の一部を形成するように内側部材20の遠位縁へ鋲留めされ得る。二層ストリップ62は、第1の円周部分24の円周方向長さと同一である円周方向長さを有する。したがって、二層ストリップ62は、(
図11に示されるように)拡張形態において完全な管状層を形成しない。二層ストリップ62の一対の長手方向に延びる自由縁82は、折りたたまれた形態に一緒にもたらされ、(
図9に示されるように)ほぼ環状のエラストマー自由端54を形成するように外側エラストマー部材50の遠位端と互いに接合される。次いで、自由縁82は、遠位方向にわずかに延びて広がる間隙84を作り出すように取り除かれる。
【0063】
図8は、二層ストリップ62が外側に配置されるとともに内側層66を過ぎて遠位に延びる外側層64を有する断面を示す。両層64、66は、二層ストリップ62の近位縁において互いに同一平面上に配置される。二層ストリップ62の近位縁は、内側部材20およびフラップ30の遠位端上へ熱鋲留めされる。外側層64は、より薄くできるが、内側層66よりも軸方向に長い。例えば、外側層64は、厚さ0.007インチおよび長さ6mmとすることができる。例えば、内側層66は、厚さ0.012インチおよび長さ3mmとすることができる。一緒に積み重ねられると、二層ストリップ62の合計厚さは、(厚さ0.012インチの)第1の円周部分24、および厚さ0.005インチの重なり合っているフラップ30の遠位端よりも(0.002インチだけ)わずかに大きい。内側層66の内面および第1の円周部分24は、滑らかな内側内腔のために互いに同一平面上にあることが好ましい。
【0064】
さらなる改善として、
図7に示されたもののような延長された重なり部分60が、切断フラップ30に取り付けられてもよい。延長された重なり部60は、高密度ポリエチレン(HDPE)などの内側部材20と同一または類似の材料で形成された長方形本体68と、小さいタブ70と、大きいタブ72とを有する。一実施形態では、長方形本体68は、約11mm×23mmであり、近位で丸い隅74を備える。小さいタブ70は、長方形本体から円周方向に延び、近位で丸い隅74を含む。小さいタブ70は、長方形形状を有し、長方形本体68の円周方向縁から円周方向に3mm延びるとともに、長手方向に5mm延びる。大きいタブ72も、長方形本体68から円周方向に延びる。大きいタブ72は、長方形形状を有し、円周方向に12mm延び、7mmの軸方向長さを有する。次いで、全体として、延長された重なり部60は、長いアーム(大きいタブ72)および短いアーム(小さいタブ70)を備えたU状形を有し、長いアーム(大きいタブ72)および短いアーム(小さいタブ70)は、第2の円周部分26から切断されたフラップ30の長方形の外側縁に係合しおよびそれを延ばすように構成されている。
【0065】
図6に示されるように、延長された重なり部60は、(例えば、熱鋲留めによって)第2の円
周部分26から切断されたフラップ30に取り付けられて、複合フラップ30を形成するようになっている。大きいタブ72および長方形本体68は、切断フラップ30の遠位部分の上に層にされ、放射線不透過性マーカーバンド52を覆い、それによってフラップ30の遠位縁42を形成する。小さいタブ70および長方形本体68は、縁を当接し、重ね合わせないことよって、切断フラップの近位縁を延ばしてフラップ30の近位縁44を形成する。本体68の長手方向に延びる縁は、フラップ30の自由縁46を形成する。
【0066】
有利には、延長された重なり部60は、円周方向により大きい拡張をもたらし、フラップ30が第1の円周部分24の(折り目22によって形成された)第2の長手方向縁36を覆って延び、したがって、第2の円周部分26からフラップを切断することによって形成される間隙を覆う。
図6に示されるように、これは、フラップ30の範囲に延び、内側部材20の拡張中に第1の円周部分24に対してより大きい移動を可能にする。また、フラップ30は、第2の円周部分26の遠位切断縁58の上に近位、軸方向に延ばされる。
【0067】
さらなる二層タブ80は、切断フラップ30の近位縁におよび小さいタブ70の自由端に円周方向に隣接して鋲留めされ得る。
図6では、例えば、二層タブ80は、小さいタブ70の上部または自由縁に接合され、そこから離れるように円周方向に延びる軸方向に延びる縁81を有する。二層タブ80は、切断タブ30の近位縁に接合された遠位縁83も有する。二層タブ80は、下地の第1の円周部分24の外面にも少なくとも一部接合される。二層タブ80は、それがより堅い第1の円周部分24およびフラップ30およびフラップ延長部60に接合されおよびそれらに接続するので、隣接した第1および第2の円周部分24、26における切断フラップと内側部材20の間の滑らかな移行を助けるエラストマー組成物を有する。二層タブ80は、2mm×5mmの長方形、および0.007インチおよび0.012インチの層厚などの長方形形状を有することができる。他の形状、サイズ、および厚さは、フラップと隣接した内側部材の間の移行を管理するようになされ得るが、厚さの整合およびエラストマー材料の使用は、滑らかさおよび弾力性の改善に利点を有する。
【0068】
再び
図8および
図9を参照すると、断面は、(厚さ0.005インチを有する)延長された重なり部60の大きいタブ72が、マーカーバンド52を支持する下地の(厚さ0.012インチを有する)第1の円周部分24の上面へ取り付けられることを示す。そして、上述したように、二層ストリップ62の近位縁は、築かれた複合フラップ30の遠位縁に鋲留めされる。有利には、上述の構造は、延長された重なり部60を有するフラップ30と内側部材20の間の滑らかな移行を助ける。
【0069】
図9に示されるように、次いで、外側エラストマー部材50は、心棒86上に配置される内側部材20および遠位先端28の構造の上に載せられる。(より広い直径の近位ストレインリリーフ端を含むシース10の近位部分の形成は、参照により本明細書に組み込まれる'109、'111、および'454の出願に示されている)。シース10の壁厚の先細りを助けるために、外側エラストマー部材50は、二層ストリップ62の遠位縁へ延びない。
【0070】
心棒86上で、外側エラストマー部材50は、二層ストリップ62に接合され、二層ストリップ62は、内側部材20の遠位縁に完全に融合され、それによってエラストマー自由端54の環状構造を形成する。好ましくは、心棒86は、二層ストリップ62の自由縁82間の重なり合う間隙84の閉鎖、および接合中の(
図2に示された)シースの遠位先端の滑らかに先細りする円錐台状形状の形成を容易にするように先細りしている。
【0071】
追加の約0.5mmから1mmなどの二層ストリップ62のより薄い外側層64の一部分は、外側エラストマー部材50の遠位端を越えて軸方向に延びることができる。外側層64のこの追加の部分は、自由端54の壁厚のよりいっそう進歩的な先細りのために、熱および下地の心棒86によって成形される。さらに、二層ストリップ62を接合した後、プロセスは、エラストマ
ー自由端54において二層および外側エラストマー部材50を通じて切断することを含むことができる。自由端壁を通じて切断することによって、間隙84に類似する間隙を作り出す。次いで、自由端54は、心棒86を用いてリバウンドされ得る。有利には、切断および再接合プロセスは、エラストマー自由端54を選択的に弱めて、移植物の通過中により容易に開くようになる。これは、先端を通じてのより容易な展開および/または取出しを助ける。
【0072】
有利には、先端および折りたたみ構造は、シース10の拡大直径と非拡大直径の間の大きい差を可能にする。例えば、シース10の結果として得られる最終的な外径は、19+1フレンチほどの大きさであり得、一方、広げられた内径は、選択された材料の壁厚に応じて14フレンチである。遠位先端28の構造によってもたらされる他の利点は、より規則的な形状、減じられた先端外形、および滑らかな先端移行を含む。また、より少ない層およびエラストマー自由端54は、先端を通じての押圧力を減少させるのに役立つ。フラップ30の形成および拡張は、内側部材20を開き、先端を内側部材の近位端よりも大きい直径、例えば、折りたたんだ直径よりも30%以上の拡張に開くのを容易にする。これによって、力を小さくし、バルーン、弁、および他の移植物の取出しの確実性を改善する。
【0073】
図12は、シース10の最遠位縁の最終的な直径へ、安定して減少する直径で、遠位先端28が滑らかに移行することを示す。
図13は、シース10の遠位端から心棒86への比較的小さいステップダウンも示す。したがって、遠位先端28は、ステップ高さ、テーパの角度、または外側直径の実質的な増加なしで、シース10の端においてずっとより大きい拡張能力を与えることができる。
【0074】
遠位先端28の様々な実施形態は、シースの割れ目の排除、折りたたみ縁の持ち上げ、および先端を薄い層にすることなどの様々な利点を含む。また。遠位先端28は、送達システムの取出しのためにより大きい収縮させられたバルーン形をより良く受け取ることができる。さらに、遠位先端28は、回復中に改善された先端外形、回復能力、および循環性を与えることができる。遠位先端28の実施形態によれば、先端移行の滑らかさは改善されるとともに、押圧力は減少し、より一貫したものになされる。
【0075】
別の実施形態では、
図14、
図22A、および
図22Bに示されるように、拡張可能なインロトデューサシース10は、近位止血シール組立体88を含むことができる。(拡張可能なシース10の遠位先端から離れた)シール組立体88の近位の配置により、遠位先端のサイズは減少し、遠位先端の外形が滑らかになり、それがシールされた場合よりもフラップ30がより自由に摺動することが可能になる。フラップ組立体の構造がシース10の層間で患者から流体の侵入を可能にし得るので、近位シール組立体88は、フラップ組立体30と共に使用されるときに特に有利である。
【0076】
例えば、近位シール組立体88は、外側エラストマー部材50の内面92から内側部材20の外面94へ延びる中間部材90を備えることができる。
図14に概略的に示されるように、中間部材90は、鋲留めまたは接合などによって外側エラストマー部材50の内面92に接続されている外面を備えた拡張された開放遠位端96を有する。中間部材90は、内側細長部材20の外面94への環状取付け部まで近位方向に先細りする。
【0077】
近位シール組立体88の開放遠位端96は、シース10の内側部材20に接続されず、
図17に示されるように、部材20、50の間の漏れ経路98から流体を受け取ることができる。したがって、漏れ経路98は、外側弾性部材50の内面92と内側部材20の外面94の間で延びる。漏れ経路98は、中間部材90と内側部材20の近位取付けに至るまで、第1の円周部分24の重なり合っている縁36、38間に空間を備えることができる。
図22Aに示されるように、漏れ経路98は、互いに接続されていない内側部材20およびエラストマー部材50の自由縁から閉鎖近位端104における中間部材90と内側部材の取付けの近位に延びる。
【0078】
別の言い方をすれば、未接続または未取付けの長さは、内側部材20との中間部材90の取付け部の遠位に、互いに取り付けられていない内側部材20、外側エラストマー部材50、および任意の他の層または部材の未取付けの自由縁へ延び、それによって漏れ経路における流体の完全なまたは部分的な侵入を可能にする。
図22Bに示されるように、漏れ経路98は、それにより血圧が外側エラストマー部材50に到達することを可能にするので、(血圧をオフセットするように身体の流体圧の力を相殺することなく)ある種のバルーン拡大効果を体外の外側弾性部材50の部分へ引き起こすことができる。完全に有害というわけではないが、バルーン拡大は、漏れの機会を最小にするように抑制または防止されるべきである。
【0079】
示された漏れ経路98は、上記の特徴を有するが、シール組立体88は、漏れ経路なしで用いられてもよく、または漏れ経路は、2つの部材20、50間とは異なっていてもよいことに留意されたい。漏れは、動脈血圧下で形成する引裂きまたはピンホールにより、エラストマー部材50に生じる可能性もあり、近位シール組立体によって管理される。概して、中間部材90は、中間において先細りの円錐形領域によって接続された遠位円筒部分および近位円筒部分を有する管状部材として示される。しかしながら、シール組立体88は、ある範囲の材料、層、および部材で構成され、漏れの近位移動をとりなす端を実現することに留意されたい。例えば、漏れ経路を遮断するように内面92と外面94の間で延びる円盤状プラグが用いられてもよい。さもなければ、プラグと組み合わせていくつかの中間部材を用いる複数の層が用いられてもよい。さもなければ、別の例として、カモノハシスタイルの弁が、部材20、50の間で軸方向の可動性をいくらか維持するために用いられてもよい。
【0080】
近位シール組立体88の近位の配置は、フラップ30を含む遠位先端28よりも概してより近位にある。示された実施形態では、
図14に示されるように、近位シール組立体88は、シースのストレインリリーフ部100に隣接してまたはこれにわずかに遠位にある。いずれの場合でも、概して、
図22Bに示されるように、シールによる隆起、不規則、または厚い部分が、短い挿入長さの場合にのみ存在する(
図22A)、または完全に体外にあるので、近位シール組立体88の配置が近位になるほど、拡張可能なインロトデューサシース10を操作するのはより容易になる。しかし、同時に、近位シール組立体88の配置が遠位になるほど、
図22Aに示されるように、それは、体内の経皮開口200にまたはそのちょうど内部に配置するのにより良く適する。そのような配置の場合、弾性外側エラストマー部材50に拡張力を及ぼす漏れ経路98内の血圧から生じる得る任意のバルーン拡大(
図22B)は、減少させられ、最小になり、またはなくなり得る。大動脈弁への大腿アクセスに用いられる実施形態では、近位シール組立体88は、デバイスの近位端においておよびストレインリリーフ部100の端あたりでハウジングから9.5cm以上に位置し得る。
【0081】
図14に示されるように、拡張可能なシース10は、融合部分105を含むこともできる。詳細には、融合部分105は、エラストマー部材50が内側部材20に融合されたまたは取り付けられた場所である。融合部分105は、シールの閉鎖近位端104で始まり、そこから近位に延びる。
図20に示されるように、この融合は、外側エラストマー部材50が内側部材20と共に折りたたまれた形態に折りたたまれることを可能にし、部材20、50の間の漏出をさらに遮断する。シール組立体88は、管状形状を有する外側ジャケット102を備えることもでき、シールの中間部材90に重なり合うシース10の軸部分に沿って延びる。好ましくは、外側ジャケット102は、エラストマー材料であり、内側部材20および外側エラストマー部材50の融合部分を折りたたまれた形態に促すとともに、開放遠位端96における部材間の血出しを促すために使用される。さらに、外側ジャケット102は、バルーン拡大を最小にするまたはなくすようにユーザがシース10を前進させることができる深さを示すマーカーを含むことができる。
【0082】
概して、
図15~
図21は、近位シールの製造プロセスを示す。
図15では、第1および第2の円周部分24、26を備える内側部材20は、押し出し成形されるまたは他の方法で用意される。
図16では、内側部材20は、折りたたみの繰り返しによって折りたたみ形態または圧縮形態に仕込まれる。
図17では、エラストマー外側層50は、内側部材20の外面を覆って折りたたまれた形態にスリーブ接続される。
図18では、内側部材20は、内側部材の内腔に心棒86を挿入することによって折りたたまれていない形態に開かれる。外側エラストマー部材50も、そのエラストマー付勢に対して拡張された折りたたまれていない形態に拡張される(伸ばされる)。
【0083】
図19では、外側エラストマー部材50は、(少なくとも近位シール組立体88の位置において)内側部材20の外面に融合されている。
図20は、折りたたまれた形態に折りたたまれている(外側エラストマー部材50を含む)融合組立体を示しており、エラストマー外側ジャケット102の追加を含む。
図21は、拡張形態における融合組立体を示す。特に、シール88の閉鎖近位端104は、中間部材90を内側部材20に癒合して閉鎖近位端104を形成するとともに、中間部材90を外側エラストマー部材50に融合して開放遠位端96を形成することによって形成することもできる。いずれの場合でも、漏れ経路98は、流体の近位移動に対して少なとも部分的にシールされる。
【0084】
漏れ経路のまわりで漏出を防止するためにおよび/または外側エラストマー部材50のバルーン拡大に対するさらなる抑制を行うために、弁組立体88が患者の近くまたは中に前進させられたときに、外側ジャケット102は、視覚的インジケーターを与えるように構成され得る。例えば、外側ジャケット102は、NEUSoftのバンドで構成されてもよく、次いで、これは、患者の体内でシース10が前進させられる深さを示すようにペンまたはコールドレーザでマークされる。例えば、外側ジャケットの軸方向長さは1~1/8インチであってもよく、シール長さは5/8インチである。外側ジャケット102の遠位部分は、シール組立体88の遠位端よりも遠く、例えば、1/8インチ延ばすことができ、一方、さらなる3/8インチが、いくらかの安全マージンのためにシール組立体88の近位端に存在する。
【0085】
上述したように、拡張可能なシース10は、プロテーゼデバイスを送達、除去、修理、および/または交換するために使用され得る。一例では、上記のシース10は、人工心臓弁を患者に送達するために使用され得る。例えば、シース10が体内にかつ患者の血管構造の中に挿入された後、細長い送達カテーテルの遠位端部分に取り付けられた(圧着または圧縮された状態に)心臓弁が、シースに挿入される。次に、送達カテーテルおよび心臓弁は、シースを通じてかつ患者の血管構造を通じて弁が植込まれる治療部位まで前進させられ得る。
【0086】
詳細には、シース10が移植物を送達するのに使用されるときに、遠位先端28のフラップ30は、バルーンおよび移植物の展開および取出しを簡単にするために、細長い内側部材20をちょうど広げるのよりもずっと大きい直径へ拡張される。移植物が遠位先端28を通過されるとき、フラップ30の自由縁46は、(外側エラストマー部材50によって)外面に乗り上がって先端の空間を拡張する。エラストマー自由端54は、移植物を収容するようにやはり拡張する。収縮させられたバルーンまたは取り出された移植物を容易に受け取るために近位、遠位、および自由縁42、44、および46において再び自由に摺動すると、遠位先端28は、フラップ30を用いて送達デバイスまたは取り出された移植物の取出し中に再び拡張することができる。
【0087】
さらに、拡張可能なシース10が患者の動脈の高圧の中で前進させられている間、血液は、漏れ経路98の中に及び、シール組立体88によって遮断される。
図22Aおよび
図22Bに示されるように、シース10は、外側ジャケット102が患者の身体の内側に当接またはその中に及ぶまで、前進させられる。これは、血液または他の体液の圧力により外側エラストマー
部材50のバルーン拡大を減少させるまたはなくす。
【0088】
経カテーテル心臓弁の他に、拡張可能なシース10は、被験者の血管の中に装置を導入する必要がある任意の手術などの他のタイプの低侵襲手術に役立ち得る。例えば、拡張可能なシース10は、様々なタイプの管腔内デバイス(例えば、ステント、ステントグラフト、血管形成術手術のためのバルーンカテーテルなど)を多くのタイプの血管および非血管身体内腔(例えば、静脈、動脈、食道、胆管の管、腸、尿道、卵管、他の内分泌管または外分泌管など)に配置するために、他のタイプの送達装置を導入するのに使用され得る。
【0089】
本開示の前述の実施形態を、明確にするためおよび理解するために、例示および例によっていくらか詳細に説明してきたが、ある種の変更および修正が本開示の趣旨および範囲の内で行われてもよいことは当業者に明らかであろう。本明細書中に開示された本発明の範囲は、特定に開示された上記実施形態によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の公正な読み込みによってのみ決定されるべきであることが意図される。
【0090】
本願には、下記の発明も提示されている。
[項1]
拡張可能なシースであって、
少なくとも1つの折りたたみ可能な軸部分を含む細長い内側部材と、
前記内側部材を少なくとも部分的に覆って延び、前記少なくとも1つの折りたたみ可能な軸部分を折りたたまれた形態に付勢するように圧縮力を前記内側部材へ及ぼすように構成された外側エラストマー部材と、
前記内側部材の外面から前記外側エラストマー部材の内面へ延びる中間部材を含み、前記拡張可能なシースの遠位自由端から前記拡張可能なシースの近位端への流体の近位移動を防止するように構成された近位シールと
を備えた拡張可能なシース。
[項2]
前記内側部材および外側エラストマー部材は、前記近位シールの遠位の接続されていない長さを有する、項1に記載の拡張可能なシース。
[項3]
前記接続されていない長さは、前記近位シールから前記拡張可能なシースの前記遠位自由端へ遠位に延びる、項2に記載の拡張可能なシース。
[項4]
前記近位シールは、前記遠位自由端から始まるとともに前記近位シールへ近位に延びる経路を遮断するように構成されている、項2または3に記載の拡張可能なシース。
[項5]
前記近位シールにて前記外側エラストマー部材を覆って延びる外側ジャケットをさらに備える、項1から4のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項6]
前記外側エラストマー部材は、前記近位シールにて前記内側部材に融合されている、項1から4のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項7]
前記外側エラストマー部材は、前記内側部材と共に前記近位シールにて折りたたみ可能である、項1から6のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項8]
前記内側部材は、前記近位シールの遠位の前記外側エラストマー部材から独立して折りたたみ可能である、項1から7のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項9]
前記細長い内側部材は、移植物の通過のために開放構成を少なくとも部分的に広げるように構成されている、項1から8のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項10]
前記拡張可能なシースの前記近位端から遠位に延びるストレインリリーフ部をさらに備え、前記近位シールは、前記ストレインリリーフ部の遠位端に隣接した近位端を有する、項1から9のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項11]
前記細長い内側部材は、中央内腔と、第1および第2の長手方向縁を含む第1の円周部分と、前記第1の長手方向縁と第2の長手方向縁の間に延びる第2の円周部分とを定める、項1から10のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項12]
前記細長い内側部材は、前記第1および第2の長手方向縁で折り目を付けて前記折りたたまれた形態にするように構成されており、前記第2の円周部分は、重なり合っている前記長手方向縁間に少なくとも部分的に配置される、項11に記載の拡張可能なシース。
[項13]
前記細長い内側部材は、遠位先端をさらに備え、前記遠位先端は、前記細長い内側部材の開放構成に前記第1の長手方向縁から少なくとも前記第2の長手方向縁まで延びるフラッ
プを備える、項11または12に記載の拡張可能なシース。
[項14]
拡張可能なシースを作製する方法であって、
細長い内側部材の第1の長手方向縁および第2の長手方向縁に沿って折り目を形成することによって前記細長い内側部材に折りたたまれた形態を形成し、前記折りたたまれた形態にて第1の円周部分が前記長手方向縁間に少なくとも部分的に配置されるようにするステップと、
エラストマー外側部材で前記細長い部材を覆うステップと、
中間部材を前記内側部材の外面から前記エラストマー外側部材の内面へ延ばすことによって前記拡張可能なシースの遠位自由端の近位に近位シールを形成するステップと
を含む方法。
[項15]
前記近位シールを用いて前記内側部材と外側部材の間に延びる経路を遮断するステップをさらに含む、項14に記載の方法。
[項16]
前記近位シールにて前記エラストマー外側部材を前記内側部材に融合させるステップをさらに含む、項14または15に記載の方法。
[項17]
前記近位シールにて前記エラストマー外側部材を覆う外側ジャケットを延ばすステップをさらに含む、項14から16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
心棒を覆っている前記内側部材およびエラストマー外側部材を融合のために開放構成に伸ばすステップをさらに含む、項16または17に記載の方法。
[項19]
プロテーゼデバイスを送達する方法であって、
患者の血管系内に拡張可能なシースを前記拡張可能なシース上の近位シールまで配置するステップと、
プロテーゼデバイスを前記拡張可能なシースの内腔に導入するステップと、
前記拡張可能なシースの遠位自由端から始まり、前記近位シールへ近位に延びる経路を遮断することによって前記拡張可能なシースの内側部材と外側エラストマー部材の間の血液の近位移動を少なくとも一部遮断するステップと、
前記プロテーゼデバイスが前記拡張可能なシースの前記内側部材の内面に半径方向外向きに局所的な力を及ぼし、前記内側部材を拡張形態に局所的に広げるようにするように、前記プロテーゼデバイスを前記拡張可能なシースの前記内腔を通じて前進させるステップと、
前記プロテーゼデバイスが前記拡張可能なシースの前記内腔から外に通過した後に、前記外側エラストマー部材を用いて前記遠位先端にて前記内側部材を少なくとも部分的に折りたたむステップと
を含む方法。
[項20]
前記内側部材と外側エラストマー部材の間に延びる中間層を用いる前記近位シールで前記経路を少なくとも部分的に遮断するステップをさらに含む、項19に記載の方法。
[項21]
中央内腔、第1および第2の長手方向縁を含む第1の円周部分、ならびに前記第1の長手方向縁と第2の長手方向縁の間に延びる第2の円周部分を定める細長い内側部材を備え、
前記細長い内側部材は、前記第1および第2の長手方向縁で折り目を付けて折りたたまれた形態にするように構成されており、前記第2の円周部分は、重なり合っている前記長手方向縁間に少なくとも部分的に配置されており、
前記細長い内側部材の周囲に延び、前記細長い内側部材を前記折りたたまれた形態に付勢するように構成されている外側エラストマー部材をさらに備え、
前記細長い内側部材は、遠位先端をさらに備え、前記遠位先端は、前記細長い内側部材の開放構成に前記第1の長手方向縁から少なくとも前記第2の長手方向縁まで延びるフラップを備える、
拡張可能なシース。
[項22]
前記フラップは、前記細長い内側部材が前記外側エラストマー部材によって前記折りたたまれた形態に付勢されるとき、前記第1の円周部分の外面の上で周方向に摺動するように構成されている、項21記載の拡張可能なシース。
[項23]
前記第2の円周部分は、少なくとも前記フラップの近位縁まで長手方向に延びる遠位縁を有する、項21または22に記載の拡張可能なシース。
[項24]
前記フラップの前記近位縁は、前記第2の円周部分の外面上へ前記第2の円周部分の前記遠位縁を覆って延びる、項23に記載の拡張可能なシース。
[項25]
前記フラップは、前記第2の長手方向縁に沿って切断された前記第2の円周部分の長手方向セクションを含む、項21から24のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項26]
前記長手方向セクションは、前記第2の円周部分の前記遠位端から円周方向にやはり切断される、項25に記載の拡張可能なシース。
[項27]
前記フラップは、前記長手方向セクションから円周方向に延びる重なり合い延長部をさらに備える、項25または26に記載の拡張可能なシース。
[項28]
前記重なり合い延長部は、前記長手方向セクションから近位に延びる、項27に記載の拡張可能なシース。
[項29]
前記遠位先端は、前記細長い内側部材の遠位端から延びるエラストマー端をさらに備える、項21から28のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項30]
前記エラストマー端は、遠位方向に先細りの形状を有する、項29に記載の拡張可能なシース。
[項31]
前記細長い内側部材の前記遠位先端内に埋め込まれたマーカーをさらに備える、項21から30のいずれか一項に記載の拡張可能なシース。
[項32]
拡張可能なシースを作製する方法であって、
細長い内側部材の第1の長手方向縁および第2の長手方向縁に沿って折り目を形成することによって前記細長い内側部材に折りたたまれた形態を形成し、前記折りたたまれた形態にて第1の円周部分が前記長手方向縁間に少なくとも部分的に配置されるようにするステップと、
内側部材の遠位先端にフラップを形成するステップであって、前記フラップが前記内側部材の第1の長手方向縁から少なくとも前記内側部材の第2の長手方向縁まで延びるように、フラップを形成するステップと、
前記細長い内側部材をエラストマー外側部材で覆うステップと
を含む方法。
[項33]
前記フラップを形成するステップは、前記第1の円周部分の外面を覆って円周方向に前記フラップを延ばすステップを含む、項32に記載の方法。
[項34]
前記フラップを形成するステップは、遠位縁を覆ってかつ第2の円周部分の外面の上へ延びる前記フラップの近位縁を形成するステップを含む、項32または33に記載の方法。
[項35]
前記フラップは、長手方向セクションを前記第2の円周部分から切断することによって少なくとも部分的に形成される、項34に記載の方法。
[項36]
前記フラップは、重なり合い延長部を前記長手方向セクションに取り付けることによって少なくとも部分的に形成される、項35に記載の方法。
[項37]
エラストマー端を前記細長い内側部材の遠位端に取り付けるステップをさらに含む、項32から36のいずれか一項に記載の方法。
[項38]
先細り形状を前記エラストマー端に形成するステップをさらに含む、項37に記載の方法。
[項39]
プロテーゼデバイスを送達する方法であって、
患者の血管系内に拡張可能なシースを配置するステップと、
プロテーゼデバイスを前記拡張可能なシースの内腔に導入するステップと、
前記プロテーゼデバイスが半径方向外向きの力を前記拡張可能なシースの内側部材の内面に及ぼし、前記内側部材を拡張形態に局所的に広げるように、前記プロテーゼデバイスを前記拡張可能なシースの前記内腔を通じて前進させるステップと、
前記プロテーゼデバイスを前記内腔をさらに通じて前記拡張可能なシースの遠位先端へ前進させ、前記プロテーゼデバイスの通過によって及ぼされる半径方向圧力に応じて前記遠位先端のフラップの自由端を前記拡張可能なシースの第1の円周部分の外面の上で円周方向に摺動させて前記内腔を局所的に拡大するステップと、
前記プロテーゼデバイスが前記拡張可能なシースの前記内腔から外に通過した後に、前記遠位先端にて前記内側部材を少なくとも部分的に折りたたむステップと
を含む方法。
[項40]
前記内腔の遠位端の周囲に延びるエラストマー端を通じて前記プロテーゼデバイスを前進させて、前記プロテーゼデバイスがそれを通過した後に前記エラストマー端を拡張するとともに前記エラストマー端を少なくとも部分的に折りたたむステップをさらに含む、項39に記載の方法。
[項41]
前記内側部材を少なくとも部分的に折りたたむステップは、前記遠位先端の前記フラップの前記自由端を前記第1の円周部分の前記外面の上で円周方向に摺動させて前記内腔を局所的に減少させるステップを含む、項39または40に記載の方法。
【符号の説明】
【0091】
10 拡張可能なシース、シース、拡張可能なインロトデューサシース
20 細長い内側部材、内側部材、内側細長部材、部材
22 折りたたんだ部分または折り目、折り目、折り目または折りたたみ線、折りたたみ線
24 第1の円周部分、シースの円周部分、円周部分
26 第2の円周部分、シースの円周部分、円周部分
28 遠位先端、遠位端
30 フラップ、重なり合っているフラップ、フラップ組立体、切断タブ
36 第1の長手方向縁、重なり合っている縁、第2の長手方向縁
38 縁、第2の長手方向縁、長手方向縁、重なり合っている縁
40 長手方向縁
42 遠位縁
44 近位縁
46 自由縁
48 接続された縁
50 外側エラストマー部材、エラストマー外側エラストマー部材、部材、外側弾性部材、エラストマー部材、エラストマー外側層
52 放射線不透過性マーカーバンド、マーカーバンド
54 エラストマー自由端、自由端
58 遠位縁
60 延長された重なり部分、延長された重なり部、フラップ延長部
62 二層ストリップ
64 層、外側層
66 層、内側層
68 長方形本体
70 小さいタブ
72 大きいタブ
74 近位で丸い隅
80 二層タブ
81 軸方向に延びる縁
82 自由縁
83 遠位縁
84 間隙
86 心棒
88 近位止血シール組立体、シール組立体、シール、弁組立体、近位シール組立体
90 中間部材
92 内面
94 外面、外面
96 開放遠位端
98 漏れ経路
100 ストレインリリーフ部、ストレインリリーフ部
102 外側ジャケット
104 閉鎖近位端
105 融合部分
110 送達装置
114 操縦可能なガイドカテーテル、ガイドカテーテル
116 バルーンカテーテル
120 ハンドル部分
122 細長いガイド管、またはシャフト
200 経皮開口
【外国語明細書】