(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024502
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】作業情報管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230209BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01B69/00 303Q
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194581
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2019218092の分割
【原出願日】2019-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】宮内 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 拓海
(57)【要約】
【課題】実際に農作業が行われた作業領域の面積を精度よく把握することができる作業情報管理装置を提供する。
【解決手段】管理サーバのサーバ制御部は、作業車両によって行われた農作業についての、作業種別、走行領域および作業時刻を含む処理対象情報を取得する。サーバ制御部では、処理対象情報内の作業種別と同じ作業種別と、処理対象情報内の走行領域に近接する作業領域または処理対象情報内の走行領域と少なくとも一部が重複する作業領域と、処理対象情報内の作業時刻から遡って所定の期間内の作業時刻とを含むという結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブルに存在するか否かが判定される。結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブルに存在する場合には、処理対象情報内の走行領域と結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業についての作業種別、作業領域および作業時刻を含む情報を作業情報として作業情報記憶部に記憶して管理する作業情報管理装置であって、
作業車両によって行われた農作業についての、作業種別、走行領域および作業時刻を含む処理対象情報を取得する処理対象情報取得部と、
前記処理対象情報内の作業種別と同じ作業種別と、前記処理対象情報内の走行領域に近接する作業領域または前記処理対象情報内の走行領域と少なくとも一部が重複する作業領域と、前記処理対象情報内の作業時刻から遡って所定の期間内の作業時刻とを含むという結合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されているか否かを判定する判定部と、
前記結合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されていると前記判定部が判定した場合には、前記処理対象情報内の走行領域と前記結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する作業領域結合部とを含む、作業情報管理装置。
【請求項2】
前記走行領域は、前記作業車両の時間毎の位置に基づいて、各位置を包含するポリゴンであることを特徴とする請求項1に記載の作業情報管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業情報管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、収穫作業の開始時刻から終了時刻までの収穫作業期間における収穫機の位置情報を地図上にプロットし、凸包等の手法を用いて、地図上にプロットされた位置情報から収穫作業の作業領域を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、収穫作業を複数回に分けて行う場合には、前回の収穫作業が終了した位置から収穫作業が再開される。そして、収穫作業の開始から終了までを一単位として作業領域が特定される。
収穫作業を複数回に分けて行う場合において再開位置に向かう際、既に収穫が行われた既収穫領域を収穫機が通過することが想定される。そのような場合には、再開位置に向かう際に走行した既収穫領域が、今回の収穫作業の作業領域に含まれてしまう。そのため、単位面積当たりの収穫量が少なく評価され、作業実績が正確に把握できないおそれがある。
【0005】
そこで、この発明の一つの目的は、実際に農作業が行われた作業領域の面積を精度よく把握することができる作業情報管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、農作業についての作業種別、作業領域および作業時刻を含む情報を作業情報として作業情報記憶部に記憶して管理する作業情報管理装置を提供する。
前記作業情報管理装置は、作業車両によって行われた農作業についての、作業種別、走行領域および作業時刻を含む処理対象情報を取得する処理対象情報取得部と、前記処理対象情報内の作業種別と同じ作業種別と、前記処理対象情報内の走行領域に接近する作業領域または前記処理対象情報内の走行領域と少なくとも一部が重複する重複領域と、前記処理対象情報内の作業時刻から遡って所定の期間内の作業時刻とを含むという結合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されているか否かを判定する判定部と、前記統合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されていると前記判定部が判定した場合には、前記処理対象情報内の走行領域と前記結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する作業領域結合部とを含む。
【0007】
この装置によれば、結合条件を満たす作業情報が作業情報記憶部に記憶されている場合には、処理対象情報の走行領域と作業領域とを結合する。そのため、作業車両が通過した走行領域と作業領域とを単一の作業領域として管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業情報管理装置が適用された作業情報管理システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、前記作業情報管理システムに備えられる作業車両の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、前記作業情報管理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、前記作業情報管理装置に記憶される作業情報管理テーブルの内容例を示している。
【
図5】
図5は、前記作業情報管理装置による作業領域特定処理および作業領域結合処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【
図6】
図6は、処理対象情報内の走行領域と作業情報記憶部に記憶されている作業情報内の作業領域とが重複している状態を説明するための模式図である。
【
図7A】
図7Aは、作業領域特定部によって特定された作業領域と作業情報記憶部に記憶されている作業情報内の作業領域とが近接している状態を説明するための模式図である。
【
図7B】
図7Bは、作業領域特定部によって特定された作業領域と作業情報記憶部に記憶されている作業情報内の作業領域とが近接している状態を説明するための模式図である。
【
図7C】
図7Cは、作業領域特定部によって特定された作業領域と作業情報記憶部に記憶されている作業情報内の作業領域との少なくとも一部が重複している状態を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、前記作業情報管理装置によって作業領域特定処理のみが行われる場合のフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る前記作業情報管理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る作業情報管理装置による作業領域結合処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業情報管理システム1の構成を示す模式図である。
図1を参照して、作業情報管理システム1は、圃場内で作業車両が行う農作業に関連する情報(作業情報)を管理するシステムである。
【0010】
作業情報管理システム1は、圃場内を走行しながら農作業を実行可能な作業車両2と、圃場内において作業車両2が行った農作業についての作業情報を管理する管理サーバ4とを含む。管理サーバ4は、作業情報管理装置の一例である。
作業車両2は、通信網6を介して、管理サーバ4と無線通信可能である。管理サーバ4は、管理サーバ4を運営する管理事業者の管理センタ5内に配置されている。管理サーバ4は、管理センタ5内のオペレータによって操作される。
【0011】
この明細書において、作業車両2には、走行機と、走行機に牽引される作業機とからなる作業車両や、走行機と作業機とが一体になっている作業車両が含まれる。
走行機と作業機とが一体となっている作業車両としては、たとえば、田植機やコンバイン等が挙げられる。コンバインとしては、普通型コンバインや自脱型コンバイン等が挙げられる。
【0012】
走行機が作業機を牽引する構成における走行機は、たとえば、トラクタである。トラクタに牽引される作業機としては、たとえば、肥料散布機(施肥機)、薬剤散布機、ロールベーラ、耕耘機、プラウ、レベラー、草刈機、播種機、収穫機等が挙げられる。
作業車両2は、測位衛星8を利用して作業車両2の位置を測位する機能を備えている。作業車両2は、作業車両IDと、時刻毎の位置情報と時刻毎の稼働情報とを含む作業車両側情報を管理サーバ4に送信する。作業車両IDは、作業車両2を識別するための情報である。
【0013】
作業車両2がコンバインや田植機である場合、作業車両IDは、作業車両2の型式および機番から構成されている。作業車両2がトラクタおよび作業機を含む場合、作業車両IDとして、走行機IDのみが管理サーバ4に送信されてもよいし、走行機IDおよび作業機IDの両方が管理サーバ4に送信されてもよい。
図2は、作業車両2の電気的構成を示すブロック図である。
図2を参照して、作業車両2は、制御部(以下、「作業車両制御部40」)を含む。作業車両制御部40は、CPUおよびメモリ41(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータを含む。作業車両制御部40は、作業車両2の動作(前進、後進、停止、旋回等の動作)を制御する。
【0014】
作業車両制御部40には、複数のコントローラ(コントローラ群42)、複数のセンサ(センサ群43)、位置情報算出部44、無線通信部45、表示部46、操作部47、および記憶部48が電気的に接続されている。
複数のコントローラは、作業車両2の各部を制御する。作業車両2がコンバインである場合、複数のコントローラには、エンジンの回転数等を制御するエンジンコントローラ、作物を刈り取るための刈取刃の昇降を制御する昇降コントローラ、作業車両2に備えられた一対のクローラを個別に駆動することで作業車両2の走行を制御する走行コントローラ等が含まれる。
【0015】
作業車両2が田植機である場合、複数のコントローラには、エンジンコントローラ、作業車両2の車速を制御する車速コントローラ、作業車両2の前輪の転舵角を制御する操向コントローラ、PTO軸の回転を制御するPTO軸コントローラ等が含まれる。作業車両2の走行機がトラクタである場合においても、複数のコントローラには、エンジンコントローラ、車速コントローラ、操向コントローラ、PTO軸コントローラ等が含まれる。
【0016】
複数のセンサには、作業車両2の姿勢を特定するための角速度センサや作業車両2の加速度を特定するための加速度センサが含まれる。作業車両2がコンバインである場合、複数のセンサには、作業車両2が収穫した作物の収穫量を算出するための信号を出力する収穫センサがさらに含まれる。収穫センサは、たとえば、歪みゲージや圧電素子等である。
位置情報算出部44には、衛星信号受信用アンテナ49が電気的に接続されている。衛星信号受信用アンテナ49は、衛星測位システムを構成する測位衛星8(
図1参照)からの信号を受信するものである。衛星測位システムは、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)である。位置情報算出部44は、衛星信号受信用アンテナ49で受信された測位信号に基づいて、作業車両2(厳密には、衛星信号受信用アンテナ49)の位置を算出する。具体的には、位置情報算出部44は、時刻情報と位置情報とを含む測位情報を生成する。位置情報は、例えば、緯度情報と経度情報とからなる。
【0017】
無線通信部45は、作業車両制御部40が通信網6を介して管理サーバ4と通信するための通信インタフェースである。表示部46は、たとえば、液晶表示器からなる。操作部47には、複数のレバーやスイッチ等が設けられている。
記憶部48は、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。記憶部48には、位置情報記憶部51、稼働情報記憶部52等が設けられている。
【0018】
作業車両制御部40は、情報取得処理部50を含んでいる。情報取得処理部50は、位置情報算出部44によって所定時間毎に算出される位置情報を取得して位置情報記憶部51に記憶する。また、情報取得処理部50は、作業車両制御部40から所定時間毎に与えられる稼働情報を取得して稼働情報記憶部52に記憶する。
稼働情報には、車速、エンジンのオンオフ情報(以下では、「エンジンオンオフ情報」という。)、エンジン回転数、エンジン負荷率等が含まれる。エンジン負荷率は、たとえば、最大燃料噴射量および無負荷燃料噴射量間の偏差に対する、実際の燃料噴射量および無負荷燃料噴射量間の偏差の比率である。
【0019】
作業車両2がコンバインである場合、稼働情報には、収穫センサから得られた収穫量情報がさらに含まれる。作業車両2が田植機である場合、稼働情報には、PTOクラッチのオンオフ情報(以下では、「クラッチオンオフ情報」という。)、PTOクラッチの回転数(以下では、「PTO軸回転数」という。)等がさらに含まれる。作業車両2の走行機がトラクタである場合にも、同様に、稼働情報には、クラッチオンオフ情報、PTO軸回転数等がさらに含まれる。
【0020】
そして、情報取得処理部50は、位置情報記憶部51に記憶された時刻毎の位置情報および稼働情報記憶部52に記憶された時刻毎の稼働情報を、作業車両IDとともに、所定のタイミング(たとえば、電源キーがオフ操作されたタイミング)で管理サーバ4に送信する。
図3は、管理サーバ4の電気的構成を示すブロック図である。
図3を参照して、管理サーバ4は、管理サーバ4を制御する制御部(以下では、「サーバ制御部60」という。)を含む。サーバ制御部60は、CPUおよびメモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)61を備えたマイクロコンピュータを含む。サーバ制御部60には、無線通信部62、操作表示部63、操作部64および記憶部65が電気的に接続されている。
【0021】
無線通信部62は、サーバ制御部60が通信網6を介して作業車両制御部40と通信するための通信インタフェースである。操作表示部63は、たとえば、タッチパネル式ディスプレイからなる。操作部64は、たとえば、キーボード、マウス等を含む。記憶部65は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。
記憶部65には、時系列情報記憶部66、作業情報管理テーブル67、処理条件記憶部68等が設けられている。
【0022】
時系列情報記憶部66には、サーバ制御部60によって受信された作業車両側情報が、作業車両IDと関連付けられて、ひとまとまりの時系列情報(以下では、単に「時系列情報」という。)として、記憶される。時系列情報には、電源キーがオン操作されてからオフ操作されるまでの間の作業車両側情報が含まれている。
作業情報管理テーブル67には、過去に行われた農作業についての作業情報が記憶されている。作業情報管理テーブル67は、作業情報記憶部の一例である。
図4は、作業情報管理テーブル67の内容例を示している。
【0023】
図4の例では、作業情報は、作業領域ID、作業期間(作業時刻)、作業距離、作業領域の位置情報(以下では、「作業領域位置情報」という。)、作業領域の面積(以下では、「作業領域面積」という。)、作業種別、作業実績等を含む。作業情報は、時系列情報に基づいて算出される。作業領域位置情報には、地図上において作業領域の形状および位置を特定するために必要な位置情報が含まれている。
【0024】
作業実績とは、農作業を行った結果を表す情報である。たとえば、作業車両2がコンバインである場合、作業実績は、作業領域における収穫量の総量(総収穫量)である。また、作業車両2が田植機である場合、作業実績は、作業領域において植えられた苗の総量(総植付量)である。また、作業車両2の走行機がトラクタであり、作業機が施肥機である場合、作業実績は、作業領域において散布された肥料の総量(総施肥量)である。
【0025】
処理条件記憶部68には、後述する作業領域特定処理および作業領域結合処理(
図5を参照)において用いられる処理条件(第1条件、第2条件)が記憶される。
サーバ制御部60は、受信した時系列情報をメモリ61に保存する。サーバ制御部60は、受信した時系列情報に含まれる作業車両2の位置情報に基づいて作業車両2が走行した領域(走行領域)を特定する走行領域特定部70と、受信した時系列情報に基づいて農作業の作業種別を特定する作業種別特定部71とを含む。
【0026】
走行領域特定部70は、処理対象情報に含まれる作業車両2の位置情報に基づいて走行領域を特定する。走行領域特定部70は、たとえば、作業車両2の時間毎の位置情報に基づいて、ポリゴン(多角形)を生成する。ポリゴンは、たとえば、凸包である。凸包とは、与えられた点を全て包含する最小の凸多角形をいう。走行領域のポリゴンは、時系列情報に含まれる作業車両2の全ての位置情報を包含する最小の凸多角形である。
【0027】
作業種別特定部71は、たとえば、作業車両IDに基づいて、作業車両2の機種を判別し、作業車両2の機種に基づいて作業種別を特定する。
作業車両2の走行機がトラクタであり、作業車両IDとして走行機IDのみが管理サーバ4に送信される構成の場合、作業種別特定部71は、作業車両IDのみからでは作業種別を特定することができない。そのような場合には、作業種別特定部71は、時系列情報に含まれる作業車両ID以外の情報に基づいて作業種別を特定してもよい。
【0028】
具体的には、作業種別特定部71は、作業期間を複数の単位期間に分割し、単位期間毎に当該単位期間で行われた農作業の作業種別を推定し、作業期間内の単位期間(たとえば、5分)毎の作業種別のうち、最も多い作業種別を、作業期間の作業種別として特定してもよい。この場合、作業種別特定部71は、機械学習手法(機械学習モデル)を用いて、単位期間毎の作業種別を推定してもよい。機械学習手法には、たとえば、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ロジスティック回帰、トポロジカルデータアナリシス等が含まれる。
【0029】
機械学習モデルには、入力情報として、時系列情報に含まれる情報が入力される。機械学習モデルに入力される情報としては、単位期間におけるトラクタの移動軌跡のパターン、単位期間におけるトラクタの車速、単位期間におけるエンジン回転数、単位期間におけるPTO軸回転数、単位期間におけるエンジン負荷率等が挙げられる。
走行領域特定部70によって特定された走行領域と、作業種別特定部71によって特定された作業種別とは、時系列情報とともにメモリ61に保存される。
【0030】
サーバ制御部60は、メモリ61に保存された時系列情報、走行領域、および作業種別を処理対象情報として、作業領域特定処理および作業領域結合処理を実行する。サーバ制御部60は、処理対象情報取得部の一例である。サーバ制御部60は、作業領域特定処理および作業領域結合処理と関連して、第1判定部72、作業領域特定部73、第2判定部74および作業領域結合部75を含む。
【0031】
図5は、作業領域特定処理および作業領域結合処理を説明するためのフローチャートの一例である。
第1判定部72および作業領域特定部73によって作業領域特定処理(ステップS1~S3)が実行され、第2判定部74および作業領域結合部75によって作業領域結合処理(ステップS4およびS5)が実行される。
【0032】
具体的には、第1判定部72は、第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在するか否かを判定する(ステップS1)。
第1条件には、処理対象情報内の作業種別と同じ作業種別を含む作業情報であり、作業種別が収穫作業または植付作業であることが含まれる。
さらに、第1条件には、処理対象情報内の走行領域と重複する重複領域を有する作業領域を含む作業情報であることが含まれる。
図6には、処理対象情報内の走行領域100と作業情報内の作業領域101とが重複している状態が示されている。走行領域100と作業領域101とが重複する部分が重複領域102である。
【0033】
さらに、第1条件には、処理対象情報内の作業時刻から遡って所定の第1期間内の作業時刻を含む作業情報であることが含まれる。第1期間は、たとえば、1か月である。
第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すると第1判定部72が判定した場合には(ステップS1:YES)、作業領域特定部73は、処理対象情報内の走行領域100から重複領域102を除去した領域を作業領域103として特定する(ステップS2)。
【0034】
第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しないと第1判定部72が判定した場合には(ステップS1:NO)、作業領域特定部73は、処理対象情報に含まれる走行領域100を作業領域104として特定する(ステップS3)。
なお、
図6とは異なり第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に複数存在する場合には、ステップS3において、作業領域特定部73は、処理対象情報内の走行領域から複数の重複領域を除去した領域を作業領域として特定する。
【0035】
ステップS2の後、第2判定部74は、第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在するか否かを判定する(ステップS4)。
第2条件には、第1条件と同様に、処理対象情報に含まれる作業種別と同じ作業種別を含む作業情報であることが含まれているが、第1条件とは異なり、作業種別が収穫作業または植付作業であることは含まれない。
【0036】
さらに、第2条件には、作業領域特定部73によって特定された作業領域に近接する作業領域を含む作業情報であること、または、作業領域特定部73によって特定された作業領域と少なくとも一部が重複する作業領域を含む作業情報であることが含まれる。
作業情報管理テーブル67に存在する作業情報の作業領域が作業領域特定部73によって特定された作業領域に近接するとは、作業領域特定部73によって特定された作業領域の周縁から所定の距離(たとえば、5m)よりも近い位置に、作業情報管理テーブル67に存在する作業情報の作業領域の周縁の少なくとも一部が位置していることをいう。
【0037】
図7Aには、作業領域特定部73によって特定された作業領域103と、作業情報管理テーブル67に存在する作業情報内の作業領域101とが近接している状態が示されている。ステップS3において、作業領域特定部73が、重複領域102(
図6を参照)を除去することによって作業領域103を特定した場合、作業領域103は、走行領域100(
図6を参照)と重複していた作業領域101と近接することになる。
【0038】
図7Bには、作業領域特定部73によって特定された作業領域104と、作業情報管理テーブル67に存在する作業情報内の作業領域101とが近接している状態が示されている。ステップS3において、作業領域特定部73が、走行領域100を作業領域104として特定した場合であっても、作業領域104と作業領域101とが畦等の通路を隔てて近接することがある。
【0039】
図7Cには、作業領域特定部73によって特定された作業領域104が、作業情報管理テーブル67に存在する作業情報内の作業領域101の一部と重複している状態が示されている。走行領域100と重複する作業領域101を含む作業情報が作業情報管理テーブル67に存在する場合であっても、作業領域101を含む作業情報が第1条件を満たしていない場合(たとえば、作業種別が施肥作業である場合)には、作業領域104は、作業領域101と重複することになる。
【0040】
さらに、第2条件には、処理対象情報に含まれる作業時刻から遡って所定の第2期間内の作業時刻を含む作業情報であることが含まれる。第2期間は、たとえば、1日であり、第1期間よりも短い期間である。
第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すると第2判定部74が判定した場合には(ステップS4:YES)、作業領域結合部75は、作業領域特定部73によって特定された作業領域と、第2条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する(ステップS5)。第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すれば、作業種別にかかわらず、作業領域の結合が実行される。
【0041】
具体的には、作業領域結合部75は、作業情報管理テーブル67において第2条件を満たす作業情報の作業領域IDに対応する各項目(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)に、作業領域特定部73によって特定された作業領域内で行われた農作業についての情報(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)を合算する。ステップS5の後、作業領域結合部75は、作業領域結合処理を終了する。
【0042】
逆に、第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しないと第2判定部74が判定した場合には(ステップS4:NO)、作業領域結合部75は、作業領域特定部73によって特定された作業領域を他の作業領域と結合することなく作業領域結合処理を終了する。
具体的には、作業領域結合部75は、作業領域特定部73によって特定された作業領域に新たに作業領域IDを付し、当該作業領域IDに対応する各項目(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)を追記する。
【0043】
なお、
図7A~
図7Cとは異なり第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に複数存在する場合には、作業領域結合部75は、作業領域特定部73によって特定された作業領域を、第2条件を満たす複数の作業情報内の作業領域と結合する。
図5に示す作業領域特定処理および作業領域結合処理では、第1条件および第2条件の両方を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在する場合には、重複領域の除去および作業領域の結合の両方が実行される。
【0044】
第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在するが第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しない場合には、重複領域の除去のみが実行される。たとえば、作業種別が処理対象情報内の作業種別と同じ収穫作業であり、重複領域が存在し、作業時刻が、処理対象情報内の作業時刻から遡って第1期間内であるが第2期間外である作業情報が作業情報管理テーブル67に存在する場合には、重複領域の除去は実行されるが作業領域の結合は実行されない。ただし、第1条件および第2条件を満たす作業情報がこの他に作業情報管理テーブル67に存在しない場合に限る。
【0045】
第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しないが第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在する場合には、作業領域の結合のみが実行される。たとえば、作業種別が処理対象情報内の作業種別と同じ施肥作業であり、作業領域が走行領域に重複または近接し、作業時刻が、処理対象情報内の作業時刻から遡って第2期間内である作業情報が作業情報管理テーブル67に存在する場合には、重複領域の除去は実行されないが作業領域の結合は実行される。ただし、第1条件および第2条件を満たす作業情報がこの他に作業情報管理テーブル67に存在しない場合に限る。
【0046】
第1条件および第2条件の両方を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しない場合には、重複領域の除去および作業領域の結合は、ともに実行されない。
第1実施形態によれば、作業領域特定処理が実行される。作業領域特定処理において、第1条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すると第1判定部72が判定した場合には、処理対象情報の走行領域100から重複領域102が除去された領域が作業領域103として特定される。そのため、既に農作業が行われた領域内を作業車両2が農作業を行わずに通過した場合には、実際に農作業が行われた領域のみが作業領域103として特定される。したがって、実際に農作業が行われた領域の面積を精度よく把握することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、第1条件には、作業種別が収穫作業または植付作業であることが含まれる。
収穫作業および植付作業以外の農作業(耕耘作業、農薬散布作業、施肥作業等)は、同一領域に対して第1期間(たとえば、1か月)内に複数回実行されることがある。そのため、たとえば、既に農作業が行われた領域であっても、作業車両2が耕耘作業を行いながら通過することが多い。したがって、作業種別が収穫作業および植付作業以外の農作業である場合には、処理対象情報内の走行領域100に重複領域102が存在する場合であっても、重複領域102を除去する必要がない可能性が高い。
【0048】
一方、収穫作業や植付作業が同一領域に対して第1期間内に複数回実行されることは殆どない。そのため、農作業が収穫作業または植付作業である場合には、作業車両2は、農作業を行わずに重複領域102を通過し、実際には収穫作業や植付作業を行なっていない可能性が高い。
そこで、作業種別が収穫作業または植付作業であることが第1条件に含まれていれば、作業種別に応じて適切に作業領域103の特定できる。その結果、作業種別にかかわらず、実際に農作業が行われた面積を精度よく把握できる。なお、第1実施形態とは異なり、作業種別が収穫作業または植付作業であることが第1条件に含まれていない構成もあり得る。その場合、作業種別にかかわらず、重複領域の除去が行われる。
【0049】
また、第1実施形態によれば、作業領域結合処理が実行される。農作業の中断前後の作業領域を単一の作業領域として管理したい場合や、複数の作業車両2で手分けして農作業を行った場合に複数の作業領域を単一の作業領域として管理したい場合がある。
第1実施形態では、第2条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在している場合に、作業領域特定部73によって特定された作業領域と、第2条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合するように構成されている。そのため、作業領域特定部73によって特定された作業領域と、作業情報管理テーブル67に存在している作業領域とを、単一の作業領域として管理することができる。
【0050】
第1実施形態とは異なり、
図8に示すように、作業領域結合処理が省略されてもよい。すなわち、ステップS2およびステップS3のいずれの後においても、作業領域特定部73は、作業領域特定処理を終了する。具体的には、ステップS2およびステップS3のいずれの後においても、作業領域特定部73は、特定した作業領域に新たに作業領域IDを付し、当該作業領域IDに対応する各項目(作業期間、作業距離、作業領域位置、作業領域面積および作業実績)を追記する。
【0051】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係る管理サーバ4の電気的構成を示すブロック図である。
図9において、前述の
図1~
図8に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する(後述する
図10においても同様)。
第2実施形態に係る管理サーバ4のサーバ制御部60には、第1判定部72および作業領域特定部73が設けられておらず、第2判定部74の代わりに判定部76が設けられている。そのため、第2実施形態に係る管理サーバ4は、作業領域特定処理を実行せずに、作業領域結合処理のみを実行する。
【0052】
図10は、第2実施形態に係る管理サーバ4による作業領域結合処理を説明するためのフローチャートの一例である。
判定部76は、結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在するか否かを判定する(ステップS11)。
結合条件は、処理条件記憶部68に記憶されている。結合条件には、作業種別が処理対象情報に含まれる作業種別と同じであることが含まれる。結合条件には、作業種別が収穫作業または植付作業であることは含まれない。さらに、結合条件には、処理対象情報に含まれる走行領域に近接する作業領域または処理対象情報に含まれる走行領域と少なくとも一部が重複する作業領域を含む作業情報であることが含まれる(
図7A~
図7Cを参照)。さらに、結合条件には、処理対象情報に含まれる作業時刻から遡って所定の結合期間内の作業時刻を含む作業情報であることが含まれる。結合期間は、たとえば、1日である。
【0053】
結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すると判定部76が判定した場合には(ステップS11:YES)、作業領域結合部75は、処理対象情報に含まれる走行領域と、結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する(ステップS12)。結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在すれば、作業種別にかかわらず、作業領域の結合が実行される。
【0054】
具体的には、作業領域結合部75は、作業情報管理テーブル67において結合条件を満たす作業情報の作業領域IDに対応する各項目(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)に、処理対象情報に含まれる走行領域内で行われた農作業についての情報(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)を加算する。ステップS12の後、作業領域結合部75は、作業領域結合処理を終了する。
【0055】
逆に、結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在しないと判定部76が判定した場合には(ステップS11:NO)、作業領域結合部75は、処理対象情報に含まれる走行領域を、他の作業領域と結合することなく、作業領域結合処理を終了する。
具体的には、作業領域結合部75は、処理対象情報内の走行領域に新たに作業領域IDを付し、当該作業領域IDに対応する各項目(作業期間、作業距離、作業領域位置情報、作業領域面積および作業実績)を追記する。
【0056】
第2実施形態によれば、結合条件を満たす作業情報が作業情報管理テーブル67に存在している場合に、処理対象情報内の走行領域と、結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合するように構成されている。そのため、処理対象情報内の走行領域と、作業情報管理テーブル67に存在している作業領域とを、単一の作業領域として管理することができる。
【0057】
第2実施形態の記載からは、以下の特徴を抽出することができる。
A1.農作業についての作業種別、作業領域および作業時刻を含む情報を作業情報として作業情報記憶部に記憶して管理する作業情報管理装置であって、
作業車両によって行われた農作業についての、作業種別、走行領域および作業時刻を含む処理対象情報を取得する処理対象情報取得部と、
前記処理対象情報内の作業種別と同じ作業種別と、前記処理対象情報内の走行領域に近接する作業領域または前記処理対象情報内の走行領域と少なくとも一部が重複する作業領域と、前記処理対象情報内の作業時刻から遡って所定の結合期間内の作業時刻とを含むという結合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されているか否かを判定する判定部と、
前記結合条件を満たす作業情報が前記作業情報記憶部に記憶されていると前記判定部が判定した場合には、前記処理対象情報内の走行領域と前記結合条件を満たす作業情報内の作業領域とを結合する作業領域結合部とを含む、作業情報管理装置。
【0058】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、管理サーバ4に事前に圃場の位置情報が登録されている場合には、第1実施形態において、第2条件には、作業領域特定部73によって特定された作業領域と同一の登録圃場内に位置する作業領域を含む作業情報であることを追加してもよい。同様に、第2実施形態において、結合条件には、処理対象情報内の走行領域と同一の登録圃場内に位置する作業領域を含む作業情報であることを追加してもよい。
【0059】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
2 :作業車両
4 :管理サーバ(作業情報管理装置)
60 :サーバ制御部(処理対象情報取得部)
67 :作業情報管理テーブル(作業情報記憶部)
72 :第1判定部
73 :作業領域特定部
74 :第2判定部
75 :作業領域結合部
100 :走行領域
101 :作業情報記憶部に記憶されている作業情報内の作業領域
102 :重複領域
103 :作業領域特定部によって特定された作業領域
104 :作業領域特定部によって特定された作業領域