(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024545
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】流体管の切除方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20230209BHJP
F16L 41/04 20060101ALI20230209BHJP
E03B 7/02 20060101ALI20230209BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/04
E03B7/02
E03F7/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197894
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2021100615の分割
【原出願日】2017-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】前田 芳則
(57)【要約】
【課題】流体管の管路部及び分岐部を筐体によって密封状に囲繞し、この筐体内にて流体管を切除することができる流体管の切除方法を提供する。
【解決手段】流体管1の一部を不断流状態で切除する流体管1の切除方法であって、少なくとも筐体5によって、流体管1の管路部2a及び該管路部2から分岐する分岐部2bを、管路部2aからの離脱を防止するとともに、分岐部2bからの離脱を防止する状態で密封状に囲繞する工程と、筐体5内部にてカッタ72により流体管1の管路部2aと分岐部2bとにかけて切除する工程と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の一部を不断流状態で切除する流体管の切除方法であって、
少なくとも筐体によって、流体管の管路部及び該管路部から分岐する分岐部を、前記管路部からの離脱を防止するとともに、前記分岐部からの離脱を防止する状態で密封状に囲繞する工程と、
前記筐体内部にてカッタにより前記流体管の前記管路部と前記分岐部とにかけて切除する工程と、を有することを特徴とする流体管の切除方法。
【請求項2】
前記囲繞する工程は、平面視で略T字状に形成された前記筐体と、該筐体の開口にそれぞれ取付けられる離脱防止具と、を用いることを特徴とする請求項1に記載の流体管の切除方法。
【請求項3】
前記離脱防止具は、前記管路部若しくは該管路部に接続された直管を密封するシールと、前記管路部若しくは前記直管の外周面を係止する係止部材と、該係止部材を内蔵する本体と、前記分岐部に接続された分岐直管を密封するシールと、前記分岐直管の外周面を係止する係止部材と、該係止部材を内蔵する本体と、から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体管の切除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管を密封する筐体内に制流体が不断流状態で設置された制流装置及び制流装置の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を構成する管路構成部材の一部に漏洩等の故障が発生した場合、この故障した部材の周辺の配管に必要に応じて、プラグ装置(制流体)を不断流状態で設置するとともに、当該プラグ装置の下流側を止水し、配水支管や下流側の支管の修繕を行ったり、或いは、切換バルブ(制流体)を不断流状態で設置するとともに、当該切換バルブを介し流路を迂回するバイパス路を仮設し、当該故障した部材を挟む近傍の流路を最小限の断水範囲として、当該部材を修繕ないし交換する等の施工がされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、切換バルブは、内部に設けられる弁体により本管路及びバイパス路に向かう流体の流れを制御し、流路全体を遮断することなく不断流状態での施工を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-7232号公報(第4頁、第3図)
【特許文献2】特開2005-240892号公報(第3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2にあっては、本管路(管路部)から分岐する分岐管路を構成する管路自体、弁、継手、異形管などの部材に漏洩等の故障が発生した場合、当該故障した部材が本管路の分岐箇所の近くに配置されていると、分岐管路における故障した部材の近傍に制流体の設置スペースを確保できないことから、当該故障した部材の周辺の流体の流れを遮断するために、本管路の分岐箇所を挟んで上流側及び下流側にいずれも制流体を設置するとともに、分岐管路における故障した部材の下流側に制流体を設置することで、当該故障した部材の近傍の流れを遮断し、更に本管路側と分岐管路側に迂回するバイパス路を個別に仮設する必要があった。そのため、流路に仮設されるバイパス路の数が多くなり、また断水の範囲が広くなり施工が煩雑なものとなるという問題があった。この際、当該制流体を切換バルブとすることで、これらの切換バルブを介してバイパス路を設置することも可能だが、やはり流路に仮設されるバイパス路の数が多くなり、施工が煩雑なものとなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流路に仮設されるバイパス路の数を低減し、断水範囲を狭くすることができる制流装置及び制流装置の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の制流装置は、
流体管の管路部及び該管路部から分岐する分岐部を密封状に外嵌する筐体と、前記筐体内にて前記管路部と前記分岐部とにかけて切除された箇所に設置され、前記流体管内の流路を制御する制流体とを備え、
前記筐体は、前記管路部と前記分岐部とにかけて切除可能なカッタが挿入される開口部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の管路部及び分岐部を密封した筐体内にて、これら管路部と分岐部とを開口部から挿入されるカッタにより一緒に切除し、筐体内の当該切除箇所に制流体を不断流状態で設置することで、管路方向及び分岐方向に向かう流体を同時に制御できるため、流路に仮設されるバイパス路の数を低減し、断水範囲を狭くすることができる。
【0008】
前記筐体は、前記カッタにより前記管路部を略C字形状に切除可能な前記開口部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、開口部から挿入されるカッタにより、流体管の分岐部と一緒に管路部を略C字形状に切除することで、流体管の切除範囲を小さくすることができるため、制流装置を取付けるための各種装置を小型化することができる。
【0009】
前記流体管は前記分岐部に接続される分岐管を備え、前記筐体は、前記分岐部と前記分岐管との接続部を密封状に外嵌することを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の管路部及び分岐部と分岐管との接続部を密封した筐体内にて、これら管路部及び分岐部と分岐管との接続部を開口部から挿入されるカッタにより一緒に切除することができる。
【0010】
前記筐体は、互いに接合される複数の分割体からなり、それぞれの前記分割体は前記管路部の管路方向に延設されるとともに前記分岐部の分岐方向に延設されることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の管路部の管路方向及び分岐部の分岐方向に延設された各分割体を溶接やボルト・ナット接合等によって接合し筐体を構成することで、当該筐体内で管路部及び分岐部を切除しても、密閉状に外嵌される筐体によって流体管の剛性を保持することができる。
【0011】
前記筐体は、前記制流体が密封状に設置される座部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、制流体を筐体内の座部に設置することで、この制流体と筐体との間の流体の漏洩を防止し、筐体内に設置された制流体により初期の流路制御を行うことができる。
【0012】
前記制流装置を前記流体管に不断流状態で取り付ける取付方法であって、
前記筐体によって前記流体管の前記管路部及び前記分岐部を密封状に囲繞する工程と、
前記開口部から前記カッタを挿入し前記流体管の前記管路部と前記分岐部とにかけて切除する工程と、
前記開口部から前記制流体を挿入し前記筐体内を密封状に閉塞する工程と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の管路部及び分岐部を密封した筐体内にて、これら管路部と分岐部とを開口部から挿入されるカッタにより一緒に切除し、筐体内の当該切除箇所に制流体を不断流状態で設置することで、管路方向及び分岐方向に向かう流体を同時に制御できるため、流路に仮設されるバイパス路の数を低減して施工を簡便にし、断水範囲を狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例における流体管に取付けられた制流装置の筐体を示す正面断面図である。
【
図2】流体管に取付けられた筐体を示す上面図である。
【
図3】筐体の開口部に作業弁を介して設置された切断機を示す側面図である。
【
図4】流体管を切断するカッタを示す部分拡大側断面図である。
【
図5】カッタにより切断された筐体の内部を示す上面図である。
【
図6】筐体の開口部に作業弁を介して設置された設置機を示す側面図である。
【
図7】設置機により筐体内に設置された制流体を示す側面図である。
【
図8】筐体内に設置された制流体を示す部分正面断面図である。
【
図9】制流装置を設置して分岐直管に設けられる故障したバルブの修理・交換を行う際の施工例を示す上面図である。
【
図10】変形例1における径調整部材及び嵌挿部材を示す部分拡大側断面図である。
【
図11】変形例2における流体管に取付けられた筐体を示す上面図である。
【
図12】変形例3における流体管に取付けられた筐体を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る制流装置及び制流装置の取付方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例においては、制流装置及びその取付方法として、管路構成部材を構成する既設の流体管1の所定箇所を筐体5内にて切除し、その切除箇所に制流体10を不断流状態で設置するまでの一連の流れを
図1から
図8を参照して説明する。尚、流体管1内の流体は、本実施例では上水であるが、例えば、工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0016】
本実施例の流体管1は、ダクタイル鋳鉄管であって、
図1,2に示されるように、管路部2aと該管路部2aから分岐する小径の分岐部2bとを有する異形管であるT字管2と、T字管2の管路部2aの両端にそれぞれ接続され管路方向に延びる一対の直管3,3と、T字管2の分岐部2bに接続され分岐方向に延びる分岐直管4(分岐管,
図3参照)とから構成され、断面視略円形状に形成されている。本実施例では、流体管1の管路方向及び分岐方向は略水平方向に延びており、よってT字管2は平面視でT字状を成すように配設されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0017】
ここで本発明の流体管とは、本実施例のように少なくとも異形管を含み互いに接続された複数の管で構成されてもよいし、また例えば鋼製の溶接品などのように単一の異形管であってもよい。ここで異形管とは、例えば曲管部や、分岐部(分岐管)、十字部(十字管)、異径部、継ぎ輪部、短管部、排水部等の様々な異形部を少なくとも一部に有する管を総称するものである。
【0018】
先ず、
図1に示されるように、流体管1に対して制流装置を構成する筐体5を密封状に外嵌する。筐体5は、複数分割構造であり、本実施例では、上部側を構成する第1分割体51(分割体)と、下部側を構成する第2分割体52(分割体)とから構成される筐体本体50と、上下方向に2分割される一対の継手カバー53,53と、から主に構成されている。尚、筐体5の分割構造は、本実施例に限らず例えば、水平方向に分割されてもよいし、また、分割数も3分割以上の所定数に分割されてもよい。また、分割筐体同士の接合は、本実施例では、溶接接合であるが、これに限らず例えば、パッキンを介しボルト・ナット等の締結部材により接合されても構わない。
【0019】
図2に示されるように、筐体本体50は、T字管2の管路部2aに沿って管路方向に延設される管路筐体部50aと、T字管2の分岐部2bに接続される分岐直管4に沿って分岐方向に延設される分岐筐体部50bと、管路筐体部50aと分岐筐体部50bとの間で上下方向に延び上方に開口する開口部50cを有する有底略円筒状の制流筐体部50d(
図3参照)とから上面視略T字状に形成されている。
【0020】
管路筐体部50aには、T字管2の管路部2aの両端と一対の直管3,3との接続部30,30を囲う一対の継手カバー53,53が取付フランジ50e,50eに対してそれぞれ一体に接合されている。また、直管3,3の接続端部まで延びる継手カバー53,53の開口には、上下2分割され離脱防止を図る一対の第1押輪54,54が密封状に取付けられる。ここで密封位置はT字管2上でもよい。また筐体5の設置前に接続部30,30を変形例2で後述する離脱防止金具で補強してもよい。
【0021】
分岐筐体部50bは、T字管2の分岐部2bに接続される分岐直管4の接続端部まで延び、分岐筐体部50bの開口には、上下2分割され離脱防止を図る第2押輪55が密封状に取付けられる。尚、第1押輪54及び第2押輪55の分割方向及び分割数は、本実施例に限らない。
【0022】
制流筐体部50dの開口部50cは、径方向の中心がT字管2の分岐部2b上に位置し、かつT字管2の管路部2aと分岐部2bとにかけた分岐箇所の上方に形成されている。また、本実施例の開口部50cは、T字管2の分岐部2bと分岐直管4との接続部40を含むように形成されている。また筐体5の設置前に接続部40を変形例2で後述する離脱防止金具で補強してもよい。
【0023】
次いで、
図3に示されるように、筐体5の制流筐体部50dの取付フランジ50fに開口部50cを閉塞可能な作業弁6を取付けるとともに、該作業弁6の上方に切断機7を設置する。
【0024】
切断機7は、取付フランジ筒71と、流体管1を切断するためのカッタ72と、取付フランジ筒71内においてカッタ72を回転させ、かつカッタ72を上下方向に進行・退避させるための駆動機構73と、から主に構成されている。カッタ72は、先端に周方向に沿って切断刃を備えたホールソー72aと、該ホールソー72aの回転軸と同軸に配設され切断刃よりも先方に突出したセンタードリル72bとから構成されている。尚、カッタ72のホールソー72aは、
図2において鎖線Aにより示されるように、筐体5の制流筐体部50dの開口部50cと同心円状に構成され、開口部50cから筐体5の制流筐体部50d内に挿入され、制流筐体部50dの底部近傍の位置まで進行可能となっている。
【0025】
切断機7による具体的な流体管1の切断工程としては、先ず、作業弁6内部の図示しない弁体を退避させて筐体5の開口部50cを開放した後、
図4に示されるように、切断機7のカッタ72を回転させながら下方に進行させ流体管1を不断流状態で切断する。尚、本実施例においては、カッタ72を構成するホールソー72aにより流体管1を構成するT字管2の管路部2aにおける分岐部2b側の一部(
図2参照)、分岐部2bの全部、及びT字管2の分岐部2bに接続される分岐直管4における分岐部2b側の一部が、ホールソー72aの進行によって一度に切断される。この際、センタードリル72bの位置は分岐部2bの接続部40のシール材が入った部分を避けた位置、あるいは分岐直管4上に位置することが好ましい。
【0026】
また、
図5に示されるように、筐体5の開口部50cの平面視内側には、上面視でT字管2の管路部2a側における平面視略略C字形状の切断口及び、及び分岐直管4の切断口を臨むことができる。
【0027】
また、制流筐体部50dの底部には、流体を外部に排出可能なドレン56(
図2及び
図3参照)が開閉可能な弁とともに取付けられているため、カッタ72により流体管1を切断する際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出できる。このドレン56は、制流体操作時の充水のためのバイパスとしても用いることができる。
【0028】
また、図示しないが、カッタ72により流体管1が切断されると、流体管1から分断された切片がホールソー72a内に保持された状態となる。そして、カッタ72を切片とともに取付フランジ筒71の内部に引き上げ、作業弁6内部の図示しない弁体により筐体5の開口部50cを閉塞することで、流体管1の切除作業が完了する。また、カッタ72による流体管1の切除後に筐体5内に残されるT字管2の管路部2aと分岐直管4とは、互いに分断されるものの、筐体5の管路筐体部50a及び分岐筐体部50bにより囲繞された状態で一体状に保持される。尚、特に図示しないが、作業弁6内部の図示しない弁体により筐体5の開口部50cを閉塞した状態で、切断機7の撤去作業を行う。
【0029】
次いで、
図6に示されるように、筐体5の制流筐体部50dの取付フランジ50fに開口部50cを閉塞可能な作業弁6が取付けられているため、該作業弁6の上方に設置機8を設置できる。
【0030】
設置機8は、取付フランジ筒81と、制流体10を吊支するための弁吊金具82と、取付フランジ筒81内において弁吊金具82を上下方向に進行・退避させるための駆動機構83と、から主に構成されている。本実施例の制流体10は、仕切壁11と、上蓋部12と、から主に構成されるいわゆるプラグであり、仕切壁11には、下端部から両側部に亘って第1シール部材S1が取付けられ、上蓋部12には、外周部に亘って環状の第2シール部材S2が取付けられている。尚、第1シール部材S1及び第2シール部材S2は、NBR、SBR、CRを含むゴム、エラストマー、樹脂等の弾性部材から構成されている。
【0031】
設置機8による具体的な制流体10の設置工程としては、先ず、作業弁6内部の図示しない弁体を退避させて筐体5の開口部50cを開放した後、
図7に示されるように、設置機8の弁吊金具82により吊支される制流体10を下方に進行させ、筐体5の制流筐体部50d内の所定位置に制流体10を挿入する。
【0032】
図8に示されるように、筐体5の制流筐体部50dの側部内壁面には、他の部位よりも筐体5の内側に突出する上面視略コ字状の側壁段部50g,50g(座部)が互いに対向するように形成されている。そのため、制流体10が筐体5の制流筐体部50d内に挿入される際には、制流体10の仕切壁11の両側部が側壁段部50g,50gによりガイドされることにより、制流体10の挿入位置のずれが防止される。
【0033】
また、筐体5の制流筐体部50dの底部内壁面には、側壁段部50g,50gと連続する底壁段部50h(座部)が形成されている(
図5参照)。そのため、制流体10が筐体5の制流筐体部50d内に所定の深度挿入されることにより、制流体10の仕切壁11の下端部から両側部に亘って取付けられる第1シール部材S1が制流筐体部50dに形成される底壁段部50h及び側壁段部50g,50gに密封状に圧入されるとともに、制流体10の上蓋部12の外周部に亘って取付けられる環状の第2シール部材S2は、筐体5の制流筐体部50dの開口部50c側における側部内壁面に圧接される。
【0034】
このように制流体10が、筐体5の制流筐体部50d内に、T字管2の管路部2aと分岐部2bとの間を仕切るように設置されることにより、制流体10と筐体5との間の流体の漏洩が防止される。
【0035】
次に、筐体5の開口部50cの周方向に複数設けられた径方向に進退自在な押えネジNを開口部50cの内径方向に進行させる(
図2及び
図8参照)。これにより、押えネジNが制流体10の上蓋部12を上方から押さえるように係止して、制流体10が筐体5の開口部50cから抜け出すことが防止される。
【0036】
このように、押えネジNが制流体10の上蓋部12を上方から押さえることにより、設置機8及び作業弁6を筐体5から取外すことができるようになる。
【0037】
次いで、筐体5の制流筐体部50dの取付フランジ50fに対して、上面視環状の蓋部材57を固定する。このとき、蓋部材57は、制流体10の上蓋部12の上面を上方から押圧するため、押えネジNとともに制流体10が筐体5の開口部50cから抜け出すことを防止する。これにより、制流体10の筐体5内への設置が完了する。また、不断流状態での切断や弁設置などの際に全ての窓部や貫通部、作業孔などには蓋を密封状に取付けるのは言うまでもない。
【0038】
以上、説明したように、本実施例の制流装置は、流体管1を構成するT字管2の管路部2a及び該管路部2aから分岐する分岐部2bに密封状に外嵌される筐体5内にて、これら管路部2aと分岐部2bとを開口部50cから挿入される切断機7のカッタ72のホールソー72aにより一緒に切除し、筐体5内の当該切除箇所に制流体10を設置することで、T字管2の管路部2aの管路方向及び分岐部2bの分岐方向に向かう流体を同時に制御できるため、流路に仮設されるバイパス路の数を低減し、断水範囲を狭くすることができる。
【0039】
具体的には、
図9に示されるように、例えば、故障したバルブV1が流体管1の分岐箇所の近くに配置され、分岐直管4における故障したバルブV1の上流側にインサーティングバルブV2の設置スペースを確保できない場合であっても、流体管1の分岐領域を構成するT字管2の管路部2aと分岐部2b(
図2参照)とに筐体5を密封状に外嵌し、筐体5内にて、これら管路部2aと分岐部2bとを切断機7のカッタ72のホールソー72aにより一緒に切除し、筐体5内の当該切除箇所に制流体10を設置することで、管路方向の流体の不断流状態を維持しながら、T字管2の管路部2aから分岐部2bへの流体の流れを遮断することができる。そのため、従来のように、T字管2の管路部2aにおける管路方向の流体の不断流状態を維持するために、流体管1の分岐箇所を挟んで上流側と下流側にそれぞれバルブ(制流体)を設け分岐箇所から管路方向に迂回するバイパス路を仮設する必要がなく、1つの制流体10を設置することによりT字管2の管路部2aの管路方向及び分岐部2bの分岐方向に向かう流体を同時に制御でき、施工を簡便にすることができる。また、分岐直管4における故障したバルブV1の下流側にインサーティングバルブV2を新設することにより、図示しないバイパス路を仮設し分岐方向の流体の不断流状態を維持することができ、流体管1における断水範囲をできるだけ狭く構成できる。尚、インサーティングバルブV2は、新設されるものに限らず、既設のものを利用してもよい。
【0040】
また、筐体5の開口部50cから挿入されるカッタ72により、T字管2の分岐部2bと一緒に管路部2aを略C字形状に切除することで、流体管1の切除範囲を小さくすることができるため、制流装置を取付けるための作業弁6、切断機7及び設置機8等の各種装置を小型化することができる。
【0041】
また、筐体5の開口部50cの内側には、上面視でT字管2の管路部2a側におけるC形の切断口及び、及びT字管2の分岐部2b側における分岐直管4の切断口を臨むことができるため、開口部50cから挿入されるカッタ72を筐体5内に進入させることで、T字管2の管路部2a及び分岐直管4に容易にアプローチできる。
【0042】
また、カッタ72は、ホールソー72aを有しているため、ホールソー72aを回転駆動することにより、T字管2の管路部2a及び分岐部2bを一緒に切除することができ、切除が簡便である。
【0043】
また、筐体5は、互いに接合される上下2分割される筐体本体50を備え、それぞれの筐体本体50は、T字管2の管路部2aに沿って管路方向に延設される管路筐体部50aと、T字管2の分岐部2bに接続される分岐直管4に沿って分岐方向に延設される分岐筐体部50bと、から主に構成され、T字管2の管路部2aの管路方向及びT字管2の分岐部2bの分岐方向に延設された各筐体本体50を溶接等によって接合して筐体5を構成することで、この筐体5内でT字管2の管路部2a及び分岐部2bを切除しても、密閉状に外嵌される筐体5によって流体管1の剛性を保持することができる。
【0044】
また、筐体5の制流筐体部50dは、制流体10を制流筐体部50d内の側壁段部50g,50g及び底壁段部50hに対して密閉状に設置することで、この制流体10と筐体5(制流筐体部50d)との間の流体の漏洩を防止し、筐体5の制流筐体部50d内に設置された制流体10により初期の流路制御を行うことができる。
【0045】
また、前記実施例では、切断機7のカッタ72を回転させながら下方に進行させ流体管1を直接切除する形態を例示したが、本発明の変形例1として
図10に示されるように、筐体5内において、分岐直管4の上方にT字管2の管路部2aと分岐直管4(T字管2の分岐部2b)とを略同径に調整する径調整部材100(調整部)が設けられていてもよい。この場合、切断機7のカッタ72を回転させながら下方に進行させていくことにより、径の大きいT字管2の管路部2aの外周面と、径の小さい分岐直管4の外周面上端に設けられた径調整部材100(調整部)の上面とに、カッタ72のホールソー72aが略同時に接触する、言い換えれば、カッタ72のホールソー72aがT字管2の管路部2aの外周面に片当たりすることがなくなり、ホールソー72aに対する切断時の抵抗が略均一に作用することでカッタ72の傾きが抑えられるため、T字管2の管路部2a及び分岐部2b(分岐直管4)をカッタ72により一緒に切除し易くなる。尚、径調整部材100(調整部)の材料は、例えば鋳鉄材や鋼材等、切除対象となるT字管2の管路部2aや分岐直管4と同等の剛性を有する材料を選定することが好ましく、このようにすることで、切断機7により管路部2a、分岐直管4及び径調整部材100(調整部)に負荷される切断抵抗を均等にでき、より一層切除がしやすい。
【0046】
また、T字管2の分岐部2bの外周面には、カッタ72のセンタードリル72bが嵌挿される円筒状の嵌挿部材101(嵌挿部)が設けられることにより、嵌挿部材101内にセンタードリル72bを嵌挿させることで、センタードリル72bと同軸に配設されるホールソー72aの回転軸を位置決めできるため、T字管2の管路部2a及び分岐部2b(分岐直管4)にかけて芯ずれすることなく一緒に切除できる。尚、径調整部材100及び嵌挿部材101の流体管1(T字管2及び分岐直管4)に対する固定は、溶接若しくはバンド等により固定されていても構わない。さらに尚、径調整部材100及び嵌挿部材101の設置位置や寸法・形状等は、制流体10が設置される流体管1に応じて自由に構成されてよい。また、径調整部材100又は嵌挿部材101のいずれかのみを設置してもよい。
【0047】
また、前記実施例では、筐体5の制流筐体部50dは、径方向の中心がT字管2の分岐部2b上に位置し、開口部50cがT字管2の管路部2aと分岐部2bとを跨ぐように形成され、カッタ72により流体管1を構成するT字管2の管路部2aの一部及び分岐部2b全体と、T字管2の分岐部2bに接続される分岐直管4の一部を切断する形態を例示したが、本発明の変形例2として
図11に示されるように、筐体105の制流筐体部150dは、径方向の中心がT字管2の管路部2aの上に位置し、開口部150cがT字管2の管路部2aと分岐部2bとを跨ぐように形成され、鎖線Bに示されるように、カッタ72によりT字管2の管路部2a及び分岐部2bの一部を一緒に切除するように構成されていてもよい。特にこの際には、筐体5の設置前に、前記した離脱防止金具を、接続部30、30及び接続部40に設置することで、切断の際の管路部2aの移動を防ぎ、且つ切断後のT字管2の残置した部材を固定することが好ましい。詳述すると、接続部30、30及び接続部40には、これらの接続部を密封するシールが押輪で設置されている。ここに、周方向で分割した本体を有し、直管3、分岐直管4、あるいは管路部2a外周面に食い込んで係止する図示しない係止部材を本体に内蔵した、
図11の点線で示される離脱防止押輪を、押輪と受口を連結するボルト・ナットを一本ずつ交換して、離脱防止押輪を介して連結し、係止部材を食い込ませることで離脱防止金具が設置される。また、離脱防止金具は、周方向に分割した本体に係止部材を有し、押輪を跨いで、受口と嵌合させる金具としてもよい。
【0048】
また、前記実施例では、主に管路部2aと分岐部2bとにより分岐領域を形成するT字管2の一部を切除する形態を例示したが、本発明の変形例3として
図12に示されるように、筐体205の制流筐体部250dは、継ぎ輪202と接続される直管3上に位置し、開口部250cが継ぎ輪202と直管3との接続部230を跨ぐように形成され、鎖線Cに示されるように、カッタ72により接続部230と一緒に継ぎ輪202若しくは直管3の底面側に設けられる図示しないドレンやバイパス等により構成される分岐領域を一緒に切除するように構成されていてもよい。尚、カッタ72により切除される流体管は、ドレンやバイパス等がないものであっても構わない。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0050】
例えば、前記実施例では、制流体10としてプラグを用いる形態を例示したが、流体管1の流体を制御するものであれば、本発明はこれに限られず、例えば、制流体は、仕切弁、バタフライ弁、若しくは切換弁等であってもよい。
【0051】
また、前記実施例では、流体管1を構成するT字管2の管路部2aよりも分岐部2bが小径に構成される形態を例示したが、T字管の管路部と分岐部は略同径であってもよい。
【0052】
また、カッタ72により切断される流体管1は、T字管に限らず、曲り管、レジューサ、十字管等の他の異形管であってもよい。