(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002457
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/082 20230101AFI20221227BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20221227BHJP
C21C 7/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G06N3/08 120
C21C7/00 R
C21C7/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075169
(22)【出願日】2022-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】202110691320.6
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 438, Hebei Street, Haigang District, Qinhuangdao City, HeBei 066004 P.R. China
(71)【出願人】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 立峰
(72)【発明者】
【氏名】王 偉健
(72)【発明者】
【氏名】任 強
(72)【発明者】
【氏名】任 英
(72)【発明者】
【氏名】羅 艶
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013AA09
4K013BA08
4K013BA14
4K013CB01
4K013EA25
4K013FA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安定した制御を実現するディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法を提供する。
【解決手段】方法は、各々のチャージの生産及び操作データ情報を事前に取得してデータセットを構築するステップと、構築されたデータセットに基づいてディープニューラルネットワークをトレーニング及びテストし、予測モデルを構築するステップと、予測モデルに基づいて、実際の各々のチャージの生産及び操作データ情報を入力とし、現在のカルシウムの収得率を予測して計算するステップと、を含む。
【効果】カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率を予測することができ、鋼内のカルシウム含有量の正確な制御、カルシウム処理工程の安定した制御、カルシウム処理の効果の向上、製品の品質の向上、生産の安定性の保証に有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法であって、以下のステップS1~S6を含み、
ステップS1は、生産及び操作データ情報の中からカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率に影響を与えるパラメータを取得してデータセットを構築し、ステップS1には、具体的に以下のステップS11~S13が含まれ、
ステップS12は、各々の生産チャージの精錬工程における生産及び操作データ情報を繰り返して収集し、データセットを構築し、
ステップS13は、ステップS12で得られたデータを前処理して、欠落が有ったり、明らかに不合理なデータを取り除き、
ステップS2は、ステップS1で得られたデータセットのデータを正規化処理し、正規化処理後のデータセットを得て、
ステップS3は、ディープニューラルネットワークを構築するステップであり、ステップS2で得られたデータセットをトレーニングデータセットとテストデータセットとに分け、生産及び操作データ情報をディープニューラルネットワークの入力とし、実際のカルシウムの収得率を出力とし、計算結果と実際の結果とを比較して重み及び閾値を修正し、トレーニングデータセット内のデータを用いてディープニューラルネットワークをトレーニングし、トレーニングされたディープニューラルネットワークを得て、
ステップS4は、テストデータセットを用いて、ステップS3でトレーニングされたディープニューラルネットワークをテストし、テストデータセット内の入力データをディープニューラルネットワークの入力データとし、カルシウムの収得率の計算結果を得て、実際の収得率の結果とディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率とに生じた誤差値が最小閾値に達することを最適化の目標としてディープニューラルネットワークを最適化し、
ステップS5は、ステップS4で計算された誤差値に従って、トレーニングされたディープニューラルネットワークが要求を満たしているかを確定し、誤差値が最小閾値に達していれば、現在のディープネットワークを最終的なカルシウムの収得率の予測モデルとし、誤差値が最小閾値に達していなければ、ニューラルネットワークの隠れ層の数量、ノード数及び学習率を変更して、ステップS4を、誤差値が最小閾値に達し、ディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率が所定の要求を満たせるようになるまで繰り返し、
ステップS6は、ステップS5で得られた最終的なカルシウムの収得率の予測モデルに従って、実際のカルシウム処理操作工程におけるカルシウムの収得率を予測する、ことを特徴とするディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法。
【請求項2】
ステップS11において、前記カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率に影響を与えるパラメータは、溶鋼内のC含有量、溶鋼内のSi含有量、溶鋼内のMn含有量、溶鋼内のP含有量、溶鋼内のS含有量、溶鋼内の遊離酸素含有量、溶鋼の温度、カルシウムワイヤの種類、カルシウムワイヤの送給速度、アルゴン吹き付けの流量、溶鋼の重量、ワイヤの送給長さ、精錬工程で添加される原材料及び補助材料の種類及び数量、並びに、カルシウムワイヤ内のカルシウム含有量を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法。
【請求項3】
ステップS11での収集の際は、溶鋼成分のアッセイ用のラケット状サンプルをカルシウム処理の前後にそれぞれ取り、サンプリング工程では、サンプラーを取鍋の同じ位置に置く必要があり、
タンディッシュの溶鋼成分の検出の際は、タンディッシュの同じ位置で、半分注湯された時にラケット状サンプルを取り、
連続鋳造鋳片の成分の検出の際は、安定して注湯された連続鋳造鋳片を取り、板幅の1/4であり且つ内弧側から1/4離れた位置でサンプリングして分析する、ことを特徴とする請求項2に記載のディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法。
【請求項4】
カルシウム処理の前に、溶鋼成分が電気スパーク直読分光計法を用いて検出され、先ずサンプルを明るく磨き、次にサンプルの表面で少なくとも2つの点を励起させ、励起された点の成分を観察して成分偏差の大きい点を消去し、安定した測定結果が得られるまで続け、カルシウム処理の後は、溶鋼がステーションに入る時に酸素プローブを用いて溶鋼の温度及び溶解酸素含有量が測定され、酸素プローブが、溶鋼の同じ位置に挿入されることが保証される、ことを特徴とする請求項3に記載のディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法。
【請求項5】
ステップS3において、前記ディープニューラルネットワークをトレーニングすることは、具体的に以下のサブステップS31を含み、
サブステップS31は、小さな乱数を用いて各々の層の重み及び閾値を初期化し、設定されたネットワーク構造及び前回のイテレーションの重み及び閾値を通じて、ネットワークの最初の層から後に向かって各ニューロンの出力を計算し、次に重み及び閾値を変更し、最後の層から前に向かって各閾値及び重みによる総誤差への影響を計算し、誤差に従って重み及び閾値を調整し、両工程を、収束に達するまで交互に行い、
S2では、ニューロン間の伝達関数として、Sigmoid関数が使用され、その式は、
式において、xは、正規化後のx変数を表し、wは、ニューロン間の結合の重みを表し、θは、ニューロンノードの閾値を表す、ことを特徴とする請求項1に記載のディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼冶金における溶鋼精錬の分野に属し、具体的には、ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の製錬工程において、溶鋼内の酸素含有量を低レベルまで効果的に低下させるために、強脱酸剤として、アルミニウムが、製鋼工程で幅広く使用されている。しかし、アルミニウムの添加により、大量のアルミナ介在物が生成され、ノズル詰まりが発生し易くなり、連続鋳造工程の円滑な進行に影響を与え、製品の性能を低下させてしまう。そのため、金属カルシウムを溶鋼内に添加することによって、溶鋼内のアルミナ介在物を液態のアルミン酸カルシウムに改質し、ノズル詰まりを減少させ、連続鋳造の円滑な進行を保証し、製品の品質を向上させるようにしている。同時に、鋼中のカルシウムの存在により、鋼内のMnS介在物の形態及び数量も制御される。しかしながら、鋼内のカルシウム必要量については、合理的な範囲が存在しており、カルシウムの添加量が低いと、カルシウム処理の効果が達成されず、添加量が高すぎると、高融点のCaS系介在物が生成され易くなり、この場合も、ノズル詰まりが発生し易くなる。
【0003】
近年、コンピュータ及びビッグデータ等の技術の急速な発展のおかげで、ニューラルネットワークは、様々な業界で幅広く使用されている。ニューラルネットワークは、自己学習及び自己適応性を有しており、環境が変化すると、即ち、新しいトレーニングサンプルが与えられると、ニューラルネットワークは、相互の結合の重みを自動的に調整可能であるため、一定の入力条件下で、合理的な期待出力が得られる。さらに、ニューラルネットワークは、優れたフォールトトレランスを有しており、局所的なエラーにより、ニューラルネットワークに深刻なエラーを発生させることがない。ニューラルネットワークは、各ニューロンノード間の重みを継続的に調整することで、最終的に、実際の問題を解決する能力を備えることができる。
【0004】
アルミニウム、シリコン、マンガン等の合金に比べて、カルシウムは、融点及び沸点が低く、鋼への溶解度が低く、且つ蒸気圧が高い。そのため、カルシウム合金は、溶鋼内に添加され難く、カルシウム処理工程によって、溶鋼内のカルシウム含有量が一定範囲内に制御され難い。ほとんどの鉄鋼企業の場合、カルシウム処理工程では、カルシウムの供給が経験によって行われており、カルシウム処理工程の収得率を予測できず、結果としては、カルシウム含有量の制御が不安定になってしまう。そこで、ディープニューラルネットワーク計算に基づいてカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率に対する予測を実現することは、鋼内のカルシウム含有量の正確な制御、カルシウム処理操作の安定化、ひいては、企業の生産及び運営コストの削減、製品の品質及び合金の利用効率の向上にとって、重要な研究価値及び意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術の欠点を解決するために、本発明は、ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法を提供し、最終的にカルシウム処理操作の安定した制御を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明は、ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法であって、以下のステップS1~S6を含み、
ステップS1は、生産及び操作データ情報の中からカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率に影響を与えるパラメータを取得してデータセットを構築し、ステップS1には、具体的に以下のステップS11~S13が含まれ、
ステップS12は、各々の生産チャージの精錬工程における生産及び操作データ情報を繰り返して収集し、データセットを構築し、
ステップS13は、ステップS12で得られたデータを前処理して、欠落が有ったり、明らかに不合理なデータを取り除き、
ステップS2は、ステップS1で得られたデータセットのデータを正規化処理し、正規化処理後のデータセットを得て、
ステップS3は、ディープニューラルネットワークを構築するステップであり、ステップS2で得られたデータセットをトレーニングデータセットとテストデータセットとに分け、生産及び操作データ情報をディープニューラルネットワークの入力とし、実際のカルシウムの収得率を出力とし、計算結果と実際の結果とを比較して重み及び閾値を修正し、トレーニングデータセット内のデータを用いてディープニューラルネットワークをトレーニングし、トレーニングされたディープニューラルネットワークを得て、
ステップS4は、テストデータセットを用いて、ステップS3でトレーニングされたディープニューラルネットワークをテストし、テストデータセット内の入力データをディープニューラルネットワークの入力データとし、カルシウムの収得率の計算結果を得て、実際の収得率の結果とディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率とに生じた誤差値が最小閾値に達することを最適化の目標としてディープニューラルネットワークを最適化し、
ステップS5は、ステップS4で計算された誤差値に従って、トレーニングされたディープニューラルネットワークが要求を満たしているかを確定し、誤差値が最小閾値に達していれば、現在のディープネットワークを最終的なカルシウムの収得率の予測モデルとし、誤差値が最小閾値に達していなければ、ニューラルネットワークの隠れ層の数量、ノード数及び学習率を変更して、ステップS4を、誤差値が最小閾値に達し、ディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率が所定の要求を満たせるようになるまで繰り返し、
ステップS6は、ステップS5で得られた最終的なカルシウムの収得率の予測モデルに従って、実際のカルシウム処理操作工程におけるカルシウムの収得率を予測する、ディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法を提供している。
【0007】
好ましくは、ステップS11において、前記カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率に影響を与えるパラメータは、溶鋼内のC含有量、溶鋼内のSi含有量、溶鋼内のMn含有量、溶鋼内のP含有量、溶鋼内のS含有量、溶鋼内の遊離酸素含有量、溶鋼の温度、カルシウムワイヤの種類、カルシウムワイヤの送給速度、アルゴン吹き付けの流量、溶鋼の重量、ワイヤの送給長さ、精錬工程で添加される原材料及び補助材料の種類及び数量、並びに、カルシウムワイヤ内のカルシウム含有量を含む。
【0008】
好ましくは、ステップS11での収集の際は、溶鋼成分のアッセイ用のラケット状サンプルをカルシウム処理の前後にそれぞれ取り、サンプリング工程では、サンプラーを取鍋の同じ位置に置く必要があり、
タンディッシュの溶鋼成分の検出の際は、タンディッシュの同じ位置で、半分注湯された時にラケット状サンプルを取り、
連続鋳造鋳片の成分の検出の際は、安定して注湯された連続鋳造鋳片を取り、板幅の1/4であり且つ内弧側から1/4離れた位置でサンプリングして分析する。
【0009】
好ましくは、カルシウム処理の前に、溶鋼成分が電気スパーク直読分光計法を用いて検出され、先ずサンプルを明るく磨き、次にサンプルの表面で少なくとも2つの点を励起させ、励起された点の成分を観察して成分偏差の大きい点を消去し、安定した測定結果が得られるまで続け、カルシウム処理の後は、溶鋼がステーションに入る時に酸素プローブを用いて溶鋼の温度及び溶解酸素含有量が測定され、酸素プローブが、溶鋼の同じ位置に挿入されることが保証される。
【0010】
好ましくは、ステップS3において、前記ディープニューラルネットワークをトレーニングすることは、具体的に以下のサブステップS31を含み、
サブステップS31は、小さな乱数を用いて各々の層の重み及び閾値を初期化し、設定されたネットワーク構造及び前回のイテレーションの重み及び閾値を通じて、ネットワークの最初の層から後に向かって各ニューロンの出力を計算し、次に重み及び閾値を変更し、最後の層から前に向かって各閾値及び重みによる総誤差への影響を計算し、誤差に従って重み及び閾値を調整し、両工程を、収束に達するまで交互に行い、
S2では、ニューロン間の伝達関数として、Sigmoid関数が使用され、その式は、
式において、xは、正規化後のx変数を表し、wは、ニューロン間の結合の重みを表し、θは、ニューロンノードの閾値を表す。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
本発明に係るディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率予測方法は、各々の生産チャージの操作パラメータ情報を事前に取得してデータセットを構築し、取得されたデータセットに基づいてディープニューラルネットワークモデルを構築して予測モデルとする。各々のチャージの生産操作情報を取得して、ディープニューラルネットワークによって予測することで、現在のチャージでの合理的なカルシウムの収得率を得て、カルシウム処理操作の参照の根拠とする。本モデルを用いてカルシウムの収得率の予測計算をすれば、安定してカルシウムの収得率を制御して向上させることができる。一部の鋼種の場合は、カルシウム供給操作のパラメータを調整することで、カルシウムの収得率を10%~20%から30%以上に高めることができ、カルシウムの供給が減り、生産コストが削減される。さらに、合理的なカルシウムの供給量により、ノズル詰まり現象の発生も減少し、連続鋳造工程の円滑な進行が保証され、生産効率及び製品の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に従って実施されるディープニューラルネットワークに基づく溶鋼カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法のフロー模式図である。
【
図2】
図2は、ニューラルネットワークモデルによって計算された収得率と実際の結果とを比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る例示的な実施例、特徴及び態様を詳しく説明する。図面における同じ符号は、同じ又は類似する機能を有する部材を示す。図面には、実施例の様々な態様が示されているが、特別な説明がない限り、図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【0014】
本発明の実施例によれば、ディープニューラルネットワークに基づく溶鋼カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率予測方法が提供される。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施例によるディープニューラルネットワークに基づくカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率の予測方法は、以下のステップ1~6を含む。
【0016】
ステップ1は、事前に国内のある工場を対象として、カルシウム処理技術を使用した鋼種についての過去1年間の生産及び操作データ情報のデータを計561組取得し、当該生産及び操作データ情報には、溶鋼内のC含有量、溶鋼内のSi含有量、溶鋼内のMn含有量、溶鋼内のP含有量、溶鋼内のS含有量、溶鋼内の遊離酸素含有量、溶鋼の温度、カルシウムワイヤの種類、カルシウムワイヤの送給速度、アルゴン吹き付けの流量、溶鋼の重量、ワイヤの送給長さ、精錬工程で添加される原材料及び補助材料の種類及び数量、カルシウムワイヤ内のカルシウム含有量が含まれる。カルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率を計算し、データセットを構築する。
【0017】
具体的には、以下のステップが含まれる。
ステップS11は、各々の生産チャージの精錬工程における生産及び操作データ情報を収集し、各々のチャージのカルシウムの収得率を計算して1つのレコードユニットとし、
精錬工程におけるカルシウムの収得率の計算式は、
【0018】
ステップ2は、ステップ1で得られたデータを正規化処理し、正規化処理後のデータセットを得る。
ステップ2では、データが正規化処理され、正規化方法として、以下の式が使用される。
式において、y
min及びy
maxは、それぞれ、正規化の最小値及び最大値を表し、本実施例では、それぞれ-1及び1を取り、x
min及びx
maxは、それぞれx変数の最小値及び最大値を表す。
【0019】
ステップ3は、ステップ2で得られたデータセットに基づいてトレーニングデータセットとテストデータセットとに分け、ランダムに511組のデータをトレーニングデータセットとして選択し、50組のデータをテストデータセットとして選択し、溶鋼成分のデータ及びカルシウム供給操作の条件等のデータを入力とし、実際の収得率を出力として、ディープニューラルネットワークを構築し、トレーニングデータセット内のデータを用いてディープニューラルネットワークをトレーニングする。
【0020】
ステップ4は、テストデータセットを用いて、ステップ3でトレーニングされたディープニューラルネットワークをテストする。テストデータセット内の入力データをディープニューラルネットワークの入力データとし、カルシウムの収得率の計算結果を得て、実際の収得率の結果とディープニューラルネットワークの結果とに生じた誤差値が最小になることを最適化の目標とし、誤差値の最小最適化目標を5%に設定する。
実際の収得率の結果とニューラルネットワークの結果とに生じた誤差値の計算式は、
式において、Y
Calは、ディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率を表し、Y
Expは、実際のカルシウムの収得率を表し、nは、選択されたテストデータの数量を表す。
【0021】
ステップ5は、ステップ4で計算された誤差値に従って、トレーニングされたディープニューラルネットワークが要求を満たしているかを確定し、要求を満たしていれば、現在のディープネットワークをカルシウムの収得率の予測モデルとし、要求を満たしていなければ、ディープニューラルネットワークの構造パラメータを変更して、ステップ4を、ディープニューラルネットワークによって計算されたカルシウムの収得率が所定の要求を満たせるようになるまで繰り返す。
図2は、ディープニューラルネットワークによって予測されたカルシウムの収得率と実際のカルシウムの収得率との比較結果であり、現在の収得率の予測結果と実際の生産結果との誤差は、5%未満になっている。
ディープニューラルネットワークの構造パラメータには、隠れ層の数量、各々の隠れ層のノード数及び学習率が含まれる。
【0022】
ステップ6は、ステップ5でトレーニングされたディープニューラルネットワークモデルに従って、実際のカルシウム処理操作工程におけるカルシウムの収得率を予測する。
ステップ1において、事前にデータを取得してデータセットを構築することは、
各々の生産チャージの精錬工程における各パラメータの情報を収集して1つのレコードユニットとするステップを含み、
生産チャージの各パラメータ情報には、カルシウム処理前の溶鋼内の炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄、アルミニウム、酸素、カルシウム元素の含有量、溶鋼の温度、溶鋼の品質、精錬工程で添加された改質剤、脱硫剤、加炭剤、石灰の品質、カルシウムワイヤの送給速度、アルゴン吹き付けの流量等の情報が含まれる。
溶鋼成分のアッセイ用のラケット状サンプルをカルシウム処理の前後にそれぞれ取り、サンプリング工程については、サンプリング結果の安定性を保証するために、サンプリング工程では、サンプラーを取鍋の同じ位置に置いて、同じ位置でサンプリングされることを保証する必要があり、
カルシウム処理の前に、溶鋼成分が電気スパーク直読分光計法を用いて検出され、先ずサンプルを明るく磨き、次にサンプルの表面で少なくとも2つの点を励起させ、励起された点の成分を観察して成分偏差の大きい点を消去し、安定した測定結果が得られるまで続け、溶鋼がステーションに入る時には、酸素プローブを用いて溶鋼の温度及び溶解酸素含有量が測定され、酸素プローブが、溶鋼の同じ位置に挿入されることが保証される。
【0023】
ステップ3において、ディープニューラルネットワークをトレーニングすることは、その具体的なステップとして、
小さな乱数を用いて各々の層の重み及び閾値を初期化し、設定されたネットワーク構造及び前回のイテレーションの重み及び閾値を通じて、ネットワークの最初の層から後に向かって各ニューロンの出力を計算し、次に重み及び閾値を変更し、最後の層から前に向かって各閾値及び重みによる総誤差への影響を計算し、誤差に従って重み及び閾値を調整し、両工程を、収束に達するまで交互に行うことであり、
ニューロン間の伝達関数として、Sigmoid関数が使用され、その式は、
式において、xは、正規化後のx変数を表し、wは、ニューロン間の結合の重みを表し、θは、ニューロンノードの閾値を表す。
【0024】
構築されたディープニューラルネットワークについては、その入力層に21個のノードが含まれ、中間層に3個のノードが含まれ、各々の中間層に6個のノードが含まれ、出力層に1個のノードが含まれる。最大イテレーション回数は1500、学習率は0.2である。
【0025】
構築されたデータセットを用いてディープニューラルネットワークモデルをトレーニングして、ディープニューラルネットワークモデルの誤差が或る小さな値で安定するようになると、ディープニューラルネットワークが既に収束していることを示す。トレーニングされたディープニューラルネットワークを利用すれば、各々のチャージのカルシウム処理前の関連操作パラメータ情報を取得した場合に現在の生産条件下でのカルシウムの収得率を予測可能となる。
【0026】
本発明は、溶鋼のカルシウム処理前の操作パラメータ情報を収集するだけで、溶鋼のカルシウム処理工程におけるカルシウムの収得率を予測可能であり、更に溶鋼のカルシウム処理工程におけるカルシウム含有量をより安定して制御可能であり、カルシウム処理の効果が改善され、生産コストが削減され、生産効率及び製品の品質が向上する。
【0027】
なお、以上に記載の各実施例は、本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではなく、上記した実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者は、上記した実施例に記載の技術案を修正したり、その技術的特徴の一部又は全部を均等に置き換えたりすることができることを理解すべきであり、これらの修正又は置き換えにより、対応する技術案の趣旨は、本発明の各実施例による技術案の範囲から逸脱することがない。