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2023-2459水系顔料分散体、インク、インクセットおよび印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002459
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】水系顔料分散体、インク、インクセットおよび印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20221227BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20221227BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20221227BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20221227BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221227BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20221227BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20221227BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D11/322
C09D11/40
C09B67/46 B
C09B67/20 F
C09B67/20 K
C08F293/00
C08F220/06
C08F212/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083198
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2021102993
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 和秀
【テーマコード(参考)】
4J026
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
4J026HA11
4J026HA20
4J026HA22
4J026HA38
4J026HB11
4J026HB20
4J026HB22
4J026HB38
4J026HB45
4J026HB48
4J026HE01
4J039AD03
4J039AD09
4J039BC35
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE25
4J039CA06
4J039CA07
4J039DA02
4J039EA21
4J039EA29
4J039EA44
4J039EA46
4J100AB02P
4J100AB02Q
4J100AJ02P
4J100AJ02Q
4J100AJ02R
4J100AL08Q
4J100BC43Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA29
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA53
4J100HC39
4J100JA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、保管温度が大きく変化しても粘度安定性が損なわれにくく、インクジェットインクとしたときに体積平均粒子径の変化が生じにくい水系顔料分散体の提供を目的とする。
【解決手段】オレンジ顔料(A)、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)、3級アミノアルコール(C)、架橋剤(E)、水溶性有機溶剤(F)、ならびに水を含有する、水系顔料分散体。
樹脂(B)の芳香族基が、フェニル基である、請求項1に記載の水系顔料分散体。
樹脂(B)を構成する全モノマー単位中、フェニル基含有モノマー単位を40質量%以上含有する、請求項2に記載の水系顔料分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレンジ顔料(A)、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)、3級アミノアルコール(C)、架橋剤(E)、水溶性有機溶剤(F)、ならびに水を含有する、水系顔料分散体。
【請求項2】
樹脂(B)の芳香族基が、フェニル基である、請求項1に記載の水系顔料分散体。
【請求項3】
樹脂(B)を構成する全モノマー単位中、フェニル基を有するモノマー単位を40質量%以上含有する、請求項2に記載の水系顔料分散体。
【請求項4】
さらに3級アミノアルコール(C)以外の塩基性化合物(D)を含有する、請求項1に記載の水系顔料分散体。
【請求項5】
オレンジ顔料(A)が、アセト酢酸アニリド構造を有する、請求項1に記載の水系顔料分散体。
【請求項6】
オレンジ顔料(A)が、モノアゾ構造を有する、請求項1に記載の水系顔料分散体。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の水系顔料分散体を含む、インク。
【請求項8】
請求項7に記載のインクを含む、インクセット。
【請求項9】
基材、および請求項7に記載のインクから印刷してなる印刷部を備える、印刷物。
【請求項10】
基材、および請求項8に記載のインクセットから印刷してなる印刷部を備える、印刷物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットインク等に使用する水系顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用インクは、水性染料インクに代わり耐水性や耐光性が優れる水性顔料インクにシフトされつつある。
【0003】
特許文献1では、一次粒子径が150nm以下であるC.I.ピグメントオレンジ64(a)を含む顔料(A)と、酸価50~200mgKOH/gのラジカル重合体を含有する顔料分散樹脂(B)と、水(C)とを含有することを特徴とする水性顔料分散体が開示されている。
【0004】
また特許文献2では、一般式(1)(RO-(RO)m-R)で表される化合物を少なくとも1種含む溶剤と、体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)を含む顔料と、を含む、インクジェットインク組成物が開示されている。
【0005】
また特許文献3では、C.I.ピグメントオレンジ34(A)と、顔料分散樹脂(B)と、水(C)とを含有することを特徴とするインクジェット印刷水性インク用水性顔料分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-54896号公報
【特許文献2】特開2020-79404号公報
【特許文献3】特開2020-59691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のオレンジ顔料を用いた水系顔料分散体は、保管温度が大きく変化すると水系顔料分散体の分散状態が変化し、粘度が悪化する問題があった。また、水溶性有機溶剤を添加しインクジェットインクとすると、耐性の弱いオレンジ顔料が水溶性有機溶剤に溶解・再結晶を起こすことによる顔料一次粒子の肥大化や、顔料表面に吸着していた樹脂が水溶性有機溶剤に溶解・脱離し、顔料同士の二次凝集が発生することによる体積平均粒子径の変化が生じるという問題もあった。
【0008】
本発明は、保管温度が大きく変化しても粘度安定性が損なわれにくく、インクジェットインクとしたときに体積平均粒子径の変化が生じにくい水系顔料分散体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水系顔料分散体は、オレンジ顔料(A)、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)、3級アミノアルコール(C)、架橋剤(E)、水溶性有機溶剤(F)、ならびに水を含有する、水系顔料分散体である。
【発明の効果】
【0010】
上記の本発明によれば、保管温度が大きく変化しても分散安定性が損なわれにくく、インクジェットインクとしたときに二次凝集が発生しにくい水系顔料分散体、これを用いたインク、インクセット、および画像形成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における用語を定義する。「C.I.」は、カラーインデックス番号である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートである。モノマーは、重合前のエチレン性不飽和基含有化合物であり、単量体とも呼ばれる。モノマー単位は、重合後に樹脂に組み込まれた状態である。
【0012】
《水系顔料分散体》
本発明の水系顔料分散体は、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)、3級アミノアルコール(C)、架橋剤(E)、水溶性有機溶剤(F)、ならびに水を含有する、水系顔料分散体である。
【0013】
本発明の水系顔料分散体は、保管温度が大きく変化しても分散安定性が損なわれにくく、インクジェットインクとしたときに二次凝集が発生しにくい水系顔料分散体である。
これら効果の発現する理由として、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)がオレンジ顔料(A)を被覆し、さらに架橋剤(E)により強固な三次元架橋構造を形成することで、保管温度が大きく変化する過酷な環境下や、水溶性有機溶剤を添加しインクジェットインクとしたときでもカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)がオレンジ顔料(A)から脱離せず、安定した水系顔料分散体を得られるものと考えられる。
【0014】
<オレンジ顔料(A)>
本発明の水系分散体は、オレンジ顔料(A)を含む。
【0015】
オレンジ顔料(A)は、カラーインデックスにおいてC.I.ピグメントオレンジの名称が付与されている顔料、またはL*C*h*表色系において、C*=30以上、h*=20°~70°の範囲の色相を有する顔料を意味する。
例えば、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,3,4,5,6,7,8,9,12,13,14,15,16,17,17:1、18,19,20,20:1,21,21:1,22,23,23:1,24,25,31,32,34,36,38,39,40,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88等が挙げられる。
これらの中でも、彩度が高いオレンジ有機顔料が好ましく、このような顔料として、C.I.ピグメントオレンジ1,2,3,4,5,6,7,13,14,15,16,17,17:1,18,19,22,24,31,32,34,36,37,38,40,43,44,46,48,49,51,54,56,60,61,62,63,64,65,67,68,71,72,73,74,79,81,83,84等が挙げられる。
特に、アセト酢酸アニリド構造またはモノアゾ構造を有するオレンジ顔料であるC.I.ピグメントオレンジ1,2,3,4,5,6,7,14,15,16,17,17:1,18,19,22,24,32,36,38,44,46,54,56,60,61,62,63,64,67,72,74,79,83,84がより好ましい。
上記したオレンジ有機顔料は、アセト酢酸アニリド構造のみを有するC.I.ピグメントオレンジ14,15,16,44,63,72、モノアゾ構造のみを有するC.I.ピグメントオレンジ2,3,4,5,6,7,17,17:1,18,19,22,24,38,46,54,56,64,67,74,79,83,84、アセト酢酸アニリド構造とモノアゾ構造の両方を有するC.I.ピグメントオレンジ1,36,60,62に分類できる。
これらの中でも、アセト酢酸アニリド構造とモノアゾ構造の両方を有するオレンジ有機顔料であるC.I.ピグメントオレンジ1,36,60,62がさらに好ましい。
このようなアセト酢酸アニリド構造とモノアゾ構造とを有するオレンジ有機顔料は、アセト酢酸アニリド構造とアゾ構造を2個以上有する場合よりも、オレンジ顔料(A)の極性が高くなりすぎず、芳香族基を有する樹脂などの疎水性の高い成分との親和性が高く、保存安定性や粗大粒子個数がより良好であるために好ましい。
【0016】
また、オレンジ顔料(A)が分子構造中に芳香族基を有する場合、芳香族基を有する樹脂などの疎水性の高い成分との親和性が高い一方、水や水溶性有機溶剤(F)などの親水性の高い成分との親和性が低いことがある。この影響で、顔料分散体とした際に、保存安定性の悪化や粗大粒子発生の原因になる場合がある。
【0017】
しかし、オレンジ顔料(A)がアセト酢酸アニリド構造とモノアゾ構造を有する場合、オレンジ顔料(A)の構造中に適度な極性が付与される。この効果により、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)がオレンジ顔料(A)表面に安定的に被覆されるだけでなく、水や水溶性有機溶剤(F)との親和性も良好となるため、温度が変動する過酷な環境下においても粘度安定性が良好であり、粗大粒子個数が少ない顔料分散体が得られるために好ましい。
【0018】
オレンジ顔料(A)は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0019】
<オレンジ顔料(A)以外の顔料や染料>
また、本発明の水系顔料分散体には、色相を調整するため、オレンジ顔料(A)以外の顔料や染料を添加することができる。
例えば、C.I.ピグメントレッド 3,5,19,22,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,147,149,166,168,169,170,176,177,178,179,184,185,202,208,216,226,242,254,255,257,269,291;
C.I.ピグメントグリーン 7,26,36,50,58,59,62,63;
C.I.ピグメントブルー 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17,17:1,22,27,28,29,36,60;
C.I.ピグメントイエロー 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,128,129,137,138,139,150,153,154,155,157,166,167,168,174,180,185,193,213,234;
C.I.ピグメントバイオレット 3,19,23,29,30,37,50,88;
C.I.ピグメントブラック 7,28,26;
C.I.ピグメントホワイト 6,18,21;
C.I.ディスパースレッド 11,50,53,54,55,55:1,59,60,65,70,72,73,75,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,146,152,153,154,158,159,164,167:1,177,181,190,190:1,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356,362;
C.I.バットレッド41;
C.I.ディスパースグリーン 6:1,9;
C.I.ディスパースブルー 19,26,26:1,35,55,56,58,60,64,64:1,72、72:1,73,81,81:1,87,91,95,108,113,128,131,141,143,145,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,359,360,365,368;
C.I.ディスパースオレンジ 1,1:1,5,13,20,25,25:1,29,31:1,33,49,54,55,56,66,73,76,118,119,163;
C.I.ディスパースイエロー 3,5,7,8,23,39,42,51,54,60,64,71,79,82,83,86,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224,237;
C.I.ディスパースバイオレット 8,17,23,27,28,29,33,36,57;
C.I.ディスパースブラウン2;
C.I.ダイレクトレッド 2,4,9,23,26,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,223,224,225,226,2
27,232,233,240,241,242,243,247;
C.I.ダイレクトバイオレット 7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101;
C.I.ダイレクトイエロー 8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,86,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,132,142,144,161,163;
C.I.ダイレクトブルー 1,10,15,22,25,55,67,68,71,76,77,78,80,84,86,87,90,98,106,108,109,151,156,158,159,160,168,189,192,193,194,199,200,201,202,203,207,211,213,214,218,225,229,236,237,244,248,249,251,252,264,270,280,288,289,291;
C.I.ダイレクトブラック 9,17,19,22,32,51,56,62,69,77,80,91,94,97,108,112,113,114,117,118,121,122,125,132,146,154,166,168,173,199
C.I.アシッドレッド 35,42,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,151,154,158,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,336,337,361,396,397;
C.I.アシッドバイオレット 5,34,43,47,48,90,103,126;C.I.アシッドイエロー 17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227;
C.I.アシッドブルー 9,25,40,41,62,72,76,78,80,82,92,106,112,113,120,127:1,129,138,143,175,181,205,207,220,221,230,232,247,258,260,264,271,277,278,279,280,288,290,326
C.I.アシッドブラック 7,24,29,48,52:1,172;
C.I.リアクティブレッド 3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55;
C.I.リアクティブバイオレット 1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34;
C.I.リアクティブイエロー 2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42;
C.I.リアクティブブルー 2,3,5,8,10,13,14,15,17,18,19,21,25,26,27,28,29,38;
C.I.リアクティブブラック 4,5,8,14,21,23,26,31,32,34;
C.I.ベーシックレッド 12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46;
C.I.ベーシックバイオレット 1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48;
C.I.ベーシックイエロー 1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40;
C.I.ベーシックブルー 1,3,5,7,9,22,26,41,45,46,47,54,57,60,62,65,66,69,71;
C.I.ベーシックブラック 8;
等が挙げられる。
【0020】
水性顔料分散体が含有する顔料及び染料の合計中の、オレンジ顔料(A)の好ましい含有率としては、分散安定性及び色相の観点から、50~100質量%が好ましく、75~100質量%がより好ましく、85~100質量%がさらに好ましく、95~100質量%が最も好ましい。
【0021】
<カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)>
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)は、例えば、カルボキシ基を有するモノマー、および芳香族基を有するモノマーの重合物である。なお、4-ビニルベンゼンカルボン酸のような、カルボキシ基と芳香族基の両方を有するモノマーは、カルボキシ基を有するモノマーであり、かつ芳香族基を有するモノマーである。カルボキシ基と芳香族基の両方を有するモノマーを用いた場合は、これ以外の、カルボキシ基を有するモノマー、および芳香族基を有するモノマーを必要要件とはしない。
【0022】
[カルボキシ基を有するモノマー単位]
カルボキシ基を有するモノマー単位は、カルボキシ基を有するモノマーを重合に使用することで樹脂(B)に含有される。
【0023】
例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル等のイタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸モノn-ブチルエステル等のマレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸モノエチルエステルのフマル酸ハーフエステル、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸モノメチルエステルのテトラヒドロフタル酸ハーフエステル、クロトン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ベタイン構造を有する化合物等のカルボキシ基含有モノマー;等が挙げられる。
【0024】
カルボキシ基を有するモノマーは、COOH基の前駆体の官能基を有するモノマーを含む。COOH基の前駆体の官能基としては、無水マレイン酸等の酸無水物基が挙げられ、アルコールと反応させることにより樹脂(B)にCOOH基および/またはCOOR基が含有されることも好ましい。Rは、アルコール残基である。反応は、ジアザビシクロウンデセンなどの塩基性触媒の存在下で反応を行うなど、適切な反応条件を選択する必要がある。
【0025】
アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、デカノールおよびこれらの構造異性体、アルコールエトキシレート、アルコールプロピオキシエート、環状炭酸エステル基含有アルコール等が挙げられる。
アルコールは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0026】
環状炭酸エステル基含有アルコールは、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
カルボキシ基を有するモノマーは、樹脂(B)に導入すると、水系顔料分散体中で電荷反発によりオレンジ顔料(A)同士の凝集を防止し、分散安定性が向上するため好ましい。なお、無水マレイン酸は、水中で極めて容易に加水分解が進行し、マレイン酸となることが公知である(25℃、pH7の水中での加水分解半減期は約22秒と言われている)。
【0029】
カルボキシ基を有するモノマーは、樹脂(B)を合成する際に用いられる全モノマー100モル%中、1~99モル%が好ましく、5~80モル%がより好ましく、10~60モル%がさらに好ましい。なお、マレイン酸のように、1分子中にカルボキシ基を2個有するモノマーは、2モル分として計算する。カルボキシ基を適度に有することで、水中で電荷反発を生じ、オレンジ顔料(A)を安定的に分散させることができるため好ましい。
【0030】
[芳香族基を有するモノマー単位]
芳香族基を有するモノマー単位は、置換基を有してもよい芳香族基を有するモノマーを重合に使用することで樹脂(B)を構成する。芳香族基としては、ヘテロ原子を有してもよく、2以上の芳香環が縮合してもよい。
【0031】
例えば、スチレン、αメチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-アミノスチレン、4-ニトロスチレン、4-ビニルフェニルアセテート、4-ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、2-ビニルキノリン、1-ビニル-1H-インドール、2-ビニルナフタレン、4-ビニルビフェニル、9-ビニルアントラセン、9-ビニルフェナントレン等のビニル系モノマー;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタフロロフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、4-
[(6-(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]-4’-シアノビフェニル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;
N-フェニル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
アリルフェニルアセテート、アリルフェニルエーテル、アリルフェノキシアセテート等のアリル系モノマー;
4-ビニルベンゼンカルボン酸等の1分子中にカルボキシ基と芳香族基とを有するモノマー;
等が挙げられる。
【0032】
芳香族基を有するモノマー単位は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0033】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を合成する際に用いるモノマーの組成としては、芳香族基を有するモノマーの含有率が全モノマーに対して30~95質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
また、モル%では、全モノマー100モル%中、25~95モル%が好ましく、30~90モル%がより好ましく、40~80モル%がさらに好ましい。
芳香族基を有するモノマーの含有量を上記範囲とすることで、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)がオレンジ顔料(A)に効果的に吸着し、後述する水溶性有機溶剤を添加しインクジェットインクとした際の体積平均粒子径の変化率を低く抑えることが可能となる。
【0034】
中でも芳香族基がフェニル基の場合は、オレンジ顔料(A)に対し効果的に吸着することにより、温度変動保管下における粘度安定性も良好となるため好ましい。
【0035】
[その他モノマー単位]
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の合成に用いるその他モノマーは、前記したカルボキシ基を有するモノマーおよび芳香族基を有するモノマーと共重合可能なモノマーであればよく、限定されない。その他モノマーは、例えば、親水性基含有モノマー(但し、前記したカルボキシ基を有するモノマーを除く)、ビニルモノマー(ただし、前記した芳香族基を有するモノマーを除く)、環状炭酸エステルモノマー等が挙げられる。
親水性基含有モノマーは、水酸基、スルホ酸基、リン酸基等の親水性基を有するモノマーである。
水酸基含有モノマーは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、あるいはヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN-(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、ヒドロキシ基を有するビニルエーテル系モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-(又は3-)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-(又は3-又は4-)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいはヒドロキシ基を有するアリルエーテル系モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、2-(又は3-)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2-(又は3-又は4-)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル、さらに、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N-(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルあるいはヒドロキシアルキルアリルエーテルにアルキレンオキサイド及び/ 又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体等のヒドロキシ基含有モノマー;等が挙げられる。
【0036】
スルホン酸基含有モノマーは、例えば、ビニルスルホン酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン-1-スルホン酸カリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル-tert-ブチルスルホン酸、ベタイン構造を有するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等のスルホ基含有モノマー;
等が挙げられる。
【0037】
リン酸含有モノマーは、例えば、ビニルホスホン酸、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート;
等が挙げられる。
【0038】
ビニルモノマー単位は、例えば、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル、等のアルキレンオキシ基含有アリルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイル モルホリン等のN 置換型(メタ)アクリルアミドモノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリルモノマー;
メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(ポリ)エチレングリコールアクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;
酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマー;
等が挙げられる。
【0039】
環状炭酸エステル基含有モノマーは、例えば、以下のようなモノマーが挙げられる。
【0040】
【化2】
【0041】
【化3】
【0042】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の重合方法としては、ランダム重合、ブロック重合、リビングラジカル重合、交互共重合など、従来公知のいずれの重合方法も採用できる。
【0043】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の酸価は1~500mgKOH/gが好ましく、50~450mgKOH/gがより好ましく、100~250mgKOH/gがさらに好ましい。酸価を上記範囲とすることで、電荷反発により十分な分散安定性が得られる。
【0044】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の数平均分子量(Mn)は、1,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましく、7,000~30,000がさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した多分散度(Mw/Mn)は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.2以下が最も好ましい。
【0045】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)は、融点を有する樹脂であることが好ましい。樹脂(B)の融点は100℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは90℃以下である。より好ましくは80℃以下である。100℃以上であると、水系媒体中で分散する際に高温で分散する必要性が生じる場合があり、水の蒸発が激しく分散体を作製することが困難となる場合がある。融点の下限値は-50℃以上が好ましい。
【0046】
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の添加量は、オレンジ顔料(A)100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、10~100質量部がより好ましい。
なお、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)は、本願の課題を解決できる範囲でオレンジ顔料(A)の一部または全部を被覆することが好ましい。
【0047】
<3級アミノアルコール(C)>
3級アミノアルコールは、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の酸基を中和できる化合物である。
【0048】
例えば、ジメチルアミノメタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジブチルアミノエタノール、ジブチルアミノブタノール、2-2-ジエチルアミノエトキシエタノール等の、水酸基を有する置換基を1個有し、水酸基を有さない置換基を2個有する化合物;
N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-tert-ブチルジエタノールアミン、N-ペンチルジブタノールアミン等の、水酸基を有する置換基を2個有し、水酸基を有さない置換基を1個有する化合物;
トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等の、水酸基を有する置換基を3個有する化合物;
等が挙げられる。
【0049】
3級アミノアルコールを使用することで、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を中和するだけでなく、樹脂(B)の分子末端に水酸基などの極性が大きく異なる化合物が存在することにより、バインダー樹脂や界面活性剤などの極性が異なる添加剤との相溶性が向上し、粗大粒子が生成しにくくなるため好ましい。
【0050】
3級アミノアルコール(C)は、単独または2種以上を併用して使用できる。
3級アミノアルコール(C)の含有量は、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)のカルボキシ基のモル数に対し、3級アミノアルコール(C)のアミノ基のモル数が、カルボキシ基:アミノ基のモル比で1:0.1~1:3が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.1がさらに好ましい。
【0051】
<架橋剤(E)>
架橋剤(E)としては、従来公知のいずれの架橋剤も使用でき、例えばエポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、アンモニア、アミノ基、第四級アンモニウム塩、チオール基、アジリジニル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等を有する化合物が挙げられる。特に1分子中に2官能以上のエポキシ基を有する化合物を添加することで、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)中のカルボキシ基と反応し強固な三次元構造を形成するため好ましい。架橋剤の重量平均分子量または式量は、100~2,000が好ましく、120~1,500がより好ましく、150~1,000がさらに好ましい。
【0052】
架橋剤(E)の添加量としては、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)中の酸基モル数に対し、0.2~1.5当量が好ましく、0.5~1.2当量がより好ましい。架橋剤(E)の添加量を前記範囲とすることで、オレンジ顔料(A)の粒子表面の一部または全部が、強固な三次元構造を形成した樹脂(B)により被覆されるため好ましい。
【0053】
エポキシ基含有化合物は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、
ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトフタレート、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
オキセタニル基含有化合物は、例えば、4,4’-(3-エチルオキセタン-3-イルメチルオキシメチル)ビフェニル(OXBP)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、1,4-ビス[{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOE)、1,6-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]ヘキサン(HDB)、9,9-ビス[2-メチル-4-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[2-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0055】
イソシアネート基含有化合物は、例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー、有機ポリイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン-2,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート; それらのウレタ
ン変性体等の変性体等が挙げられる。
なお、イソシアネート基末端プレポリマーは、有機ポリイソシアネート又はその変性体と低分子量ポリオール等とを反応させることにより得ることができる。イソシアネート基含有化合物は、3つのイソシアネート基と有する化合物が好ましい。
また、ブロックイソシアネート化合物に代表される、熱処理・光処理・酸処理・塩基処理等の前処理によりイソシアネート基を生成する化合物も挙げられる。
【0056】
アミノ基、第四級アンモニウム塩含有化合物は、例えば、ヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、オキサリルジヒドラジド等の、ジアミン;
エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ラウリルプロピレンジアミン、エチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、ポリオキシプロピレンジアミン、メタントリアミン、1,2,3-プロパントリアミン、1,8-ジアミノ-4-アミノメチルオクタン、3-(2-アミノエチル)ペンタン-1,5-ジアミン、1,4,7-トリアミノシクロノナン-1,4,7-トリイド、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、2,4-ジメチル-4-エチルアミノ-2,3,5-トリアミノヘキサン、2,3-ビス(ジアミノメチル)ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、1,2-ビス(メチルアミノ)エタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、ブタン-1,1,4-トリメチルアミン、ブタン-1,1,4,4-テトラメチルアミン、1,2-ビス(ジメチルアミノ)エタン、ブタン-1,1,4-トリジメチルアミン、ブタン-1,1,4,4-テトラジメチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、バリンジヒドラジド、テトラエチレンペンタミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(4-アミノエチル)アミン、3,
3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(4-アミノエチル)アミン、1-メチルアミノ-2-ジメチルアミノエタン、直鎖ポリエチレンイミン、分岐鎖ポリエチレンイミン等の、アルキレンジアミン;
1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(TCDジアミン)、イソプロピル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、イソプロピル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、シクロヘキサン-1,3,5-トリアミン、2,3,5-トリアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン等の、脂環ジアミン;
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、2,2’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン、トリス(4-アミノフェニル)メタン、1,2,4-ベンゼントリアミン、メラミン、ベンゼン-1,2,4,5-テトラアミン、ピリミジン-2,4,5,6-テトラアミン、3,3’-ジアミノベンジジン、テトラアミノフタロシアニン、イソフタル酸ジヒドラジド等の、芳香環ジアミン;
ブタン-1,4-ビスアンモニウムクロライド等の、第四級アンモニウム塩含有化合物が挙げられる。
【0057】
チオール基含有化合物は、例えば、メタンチオール、エタンチオール、チオフェノール等が挙げられる。
【0058】
アジリジニル基含有化合物は、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0059】
カルボジイミド基含有化合物は、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、例えば、日清紡績社製のカルボジライトシリーズ等が挙げられる。
【0060】
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2~3個のオキサゾリン基が結合した化合物、2,2-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビスオキサゾリン、1,3-ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基含有化合物等が挙げられる。
【0061】
これらの中でもエポキシ基含有化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトフタレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル、
レゾルシノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルが好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。なお、架橋剤(E)は、架橋効率の面から、適度に水に溶解することが好ましい。溶解度は、架橋剤を25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が0.1~50gが好ましく、0.2~40gがさらに好ましく、0.5~30gがより好ましい。市販品としては、ナガセケムテックス社製デナコールEX321、ADEKA社製アデカグリシロールED-505等が挙げられる。
【0062】
架橋剤(E)は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0063】
<水溶性有機溶剤(F)>
水溶性有機溶剤(F)は、水と混和する水溶性有機溶剤が挙げられ、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他水溶性溶剤等が挙げられる。
【0064】
モノアルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール;
等が挙げられる。
【0065】
多価アルコール類は、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール;
等が挙げられる。
【0066】
多価アルコールアルキルエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル;
等が挙げられる。
【0067】
多価アルコールアリールエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル;
等が挙げられる。
【0068】
含窒素複素環化合物は、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミイダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン;
等が挙げられる。
【0069】
アミド類は、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド;
等が挙げられる。
【0070】
アミン類は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン;
等が挙げられる。
【0071】
含硫黄化合物類は、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、等が挙げられる。
【0072】
その他水溶性溶剤は、糖が好ましい。糖類は、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類等が挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。なお、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む。また、これらの糖類の誘導体は、糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH(CHOH)nCHOH(ただし、n=2~5の整数を表す)で表される〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸等が挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、マルチトール、ソルビットがより好ましい。
【0073】
これらの中でもグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-へプタンジオール、2-ピロリドン、3-メトキシ-3-メチルブタノールが好ましい。
【0074】
水溶性有機溶剤(F)は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0075】
水溶性有機溶剤(F)の含有率は、水系顔料分散体の全量に対し、1~60質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0076】
<水>
水は、通常の水道水でもよいが、イオン交換水、蒸留水、精製水が好ましい。水が含有する金属イオン量の総量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましく、100ppb以下がさらに好ましい。特にカルシウム、マグネシウム等の2価金属イオンは、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)中の酸基2か所と反応することで、意図しない架橋構造を形成してしまうため、可能な限り含有率を抑制することが好ましい。これにより、水系顔料分散体を使用するインクジェットインクは、温度が変動する過酷な環境下においても粘度安定性が良好となる。
【0077】
<水系顔料分散体の製造>
水系顔料分散体は、従来公知の方法を用いて製造できる。
本発明の水系顔料分散体は、オレンジ顔料(A)を含む顔料粒子の表面が、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)により少なくとも一部被覆され、分散安定性が良好となる。
水系顔料分散体の製造方法として例えば、オレンジ顔料(A)と、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)と、水溶性有機溶剤(F)と水と、3級アミノアルコール(C)とを分散し、その後架橋剤(E)を添加し、水系顔料分散体とする方法などが挙げられる。
水系顔料分散体を製造する前に、後述するソルトミリング処理等により、顔料粒子の表面をカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)により被覆する工程を備えることで、顔料粒子の表面の樹脂被覆量が多くなり、より分散安定性および粗大粒子の数を抑制することができるために好ましい。
【0078】
水系顔料分散体の製造は、以下の工程を有することが好ましい。
工程I: カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を、オレンジ顔料(A)を含む顔料粒子の表面に被覆する工程
工程II: 3級アミノアルコール(C)、水、および任意に水溶性有機溶剤(F)を加え、混合・撹拌する工程
工程III:架橋剤(E)を加え架橋する工程
工程IV:水溶性有機溶剤(F)を加える工程
【0079】
[工程I:カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を、オレンジ顔料(A)を含む顔料粒子の表面に被覆する工程]
カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を、オレンジ顔料(A)を含む顔料粒子の表面に被覆する工程としては、従来公知の製造方法を採用することができるが、中でも顔料により強固に樹脂(B)を被覆することができるソルトミリング法が好ましい。
【0080】
〔ソルトミリング法〕
ソルトミリング法は、以下の工程を有することが好ましい。
工程I-1:オレンジ顔料(A)およびカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)に、少なくとも水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を加えて摩砕混練する工程
工程I-2:水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を除去する工程
【0081】
まず、オレンジ顔料(A)、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を混練機で混合する工程(ソルトミリング処理)を行い(工程I-1)、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を洗浄して除去する工程(洗浄処理)を行うことが好ましい(工程I-2)。
【0082】
ソルトミリング処理とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、例えばニーダー、トリミックス、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、または、プラネタリー型ミキサー等のバッチ式又は連続式混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は破砕助剤として働くものであり、水溶性有機溶剤は粒子成長剤として働くものである。ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料の一次粒子が破砕される。また、顔料は水溶性有機溶剤と接触することで一次粒子が成長する。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、この破砕と成長が繰り返され、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。また、一次粒子形状も、一次粒子の全方位から均一に破砕と成長が繰り返されるため、扁平な粒子形状にはならず、真球に近い一次粒子が得られる。
【0083】
ソルトミリングの際の混練温度は、-10℃~300℃が好ましく、30℃~90℃がより好ましい。適切な温度でソルトミリングを行うことにより、オレンジ顔料(A)の一次粒子が微細化され、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)が顔料粒子を被覆することができる。
【0084】
ソルトミリングの際の混練時間は、0.1~100時間が好ましく、3~24時間がより好ましい。適切な混練時間でソルトミリングを行うことにより、顔料の一次粒子が微細化され、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)がオレンジ顔料(A)粒子を被覆することができる。混練時に掛かる負荷を表す瞬時電力は、混練機の混練速度や、オレンジ顔料(A)、水溶性無機塩、水溶性有機溶剤の混合物の粘度等を調整することで任意に設定できる。
【0085】
〔水溶性無機塩〕
水溶性無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。価格の点から塩化ナトリウム(食塩)が好ましい。水溶性無機塩(X)の使用量は、処理効率と生産効率の両面から、顔料100質量部に対し、50~2,000質量部が好ましく、300~1,000質量部がより好ましい。水溶性無機塩の粒子径は、0.001~100μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましい。なお、工業的に用いられる塩化ナトリウムは海水などの天然物から製造されることがあるため、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の不純物を0.01~30質量%程度含んでいてもよい。
【0086】
〔水溶性有機溶剤〕
水溶性有機溶剤は、上段で説明した多価アルコール類が好ましい。水溶性有機溶剤の使用量は、オレンジ顔料(A)を含む顔料100質量部に対し5~1,000質量部が好ましく、50~500質量部がより好ましい。水溶性有機溶剤の使用量を適切に選択することで、混練物をソルトミリング処理に適した粘度にすることができる。
【0087】
洗浄処理は、摩砕混練機からオレンジ顔料(A)とカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤とを含む混合物を取り出し、溶媒を投入して撹拌を行い、懸濁液を得る。加える溶媒の種類は、水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を溶解することができれば、特に限定されるものではないが、水道水、塩酸水溶液などの酸水溶液、イオン交換水が好ましい。加える溶媒の分量は、懸濁液を得るのに充分な量であればよく、特に限定されない。例えば、10~10,000倍の質量の溶媒を加えて混合撹拌する。必要に応じて加温してもよい。このときの混合撹拌条件は特に限定されないが、温度5~100℃で行うことが好ましい。続いて、ろ過等の操作によりろ液を除去することで、混練機で用いた水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去することができ、オレンジ顔料(A)およびカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を含む顔料組成物を得ることができる。
【0088】
洗浄処理後、溶媒を除去する工程を行ってもよい。好適な方法は、例えば、乾燥処理を行う方法を挙げることができる。乾燥条件は、例えば、常圧下、80~120℃の範囲で12~48時間程度の乾燥を行う方法、減圧下、25~80℃の範囲で12~60時間程度の乾燥を行う方法等が挙げられる。乾燥処理は特に限定されないが、スプレードライ装置を利用する方法も挙げられる。乾燥処理と同時もしくは乾燥処理後に粉砕処理を行ってもよい。
【0089】
オレンジ顔料(A)の平均一次粒子径としては、ソルトミリング前の顔料の平均一次粒子径は10nm~10,000nm程度が好ましく、ソルトミリング後の顔料の平均一次粒子径は5nm~200nm程度が好ましく、ソルトミリング前の顔料の平均一次粒子径>ソルトミリング後の顔料の平均一次粒子径となることが好ましい。平均一次粒子径が小さくなることで着色力や透明性が向上するため好ましい。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で撮影した複数枚の写真より抽出した顔料の一次粒子100個について、一次粒子の長径を算術平均することにより求めることができる。一次粒子の長径を短径で除したアスペクト比は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。インクジェットインクとして用いる場合、ソルトミリング後の平均一次粒子径は100nm以下、好ましくは60nm以下とすることが好ましい。
【0090】
次いで、洗浄処理後の顔料組成物に対し3級アミノアルコール(C)、水および任意に水溶性有機溶剤(F)を添加し、必要に応じ加温または冷却しながら混合する工程を行う(工程II)。混合方法は、従来公知の方法を採用できるところ、例えば、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、シルバーソンミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミ
ル又は/及びアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル、超音波発振子を具備する分散機、高圧分散機、対向衝突型分散機、斜向衝突型分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられる。これらの工程により、顔料粒子の凝集が一次粒子レベルにまで解砕され、水系顔料分散体を作製できる。
【0091】
具体的には、パウレック社製マイクロフルイダイザー(インターアクションチャンバー:Zタイプ、Yタイプ)、スギノマシン社製スターバースト(チャンバー形状:斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー、分離チャンバー、シングルノズルチャンバー、スリット式チャンバー、循環冷却式チャンバー、多液噴射反応チャンバー)、浅田鉄工社製ピコミルなどが挙げられ、求める物性に応じ適宜選定できる。
【0092】
3級アミノアルコール(C)は、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)のカルボキシ基に対し0.1~3.0当量添加することが好ましく、0.4~1.5当量添加することがより好ましい。
【0093】
工程IIIでは、前記した架橋剤(E)を添加し架橋反応を行う。カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)が架橋剤(E)と反応し得る官能基を有する場合、架橋反応により顔料粒子表面に強固な三次元構造を形成することで、温度が変動する過酷な環境下においても粘度安定性が向上し、インクジェットインクとしたときの吐出安定性が向上するため好ましい。架橋剤(E)を添加する温度は、架橋剤の反応性に応じ任意に選択することができる。例えば、架橋剤(E)とカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)との反応温度以下で架橋剤(E)を添加・撹拌してから反応温度以上に昇温する方法、架橋剤(E)とカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)との反応温度以上で架橋剤(E)を添加する方法等が挙げられる。架橋剤(E)の添加タイミングとしては、一括投入してもよいし、数回に分割して添加してもよい。添加時の添加速度は設計事項である。
【0094】
反応終了後に、pHの調整が必要であれば任意の酸または後述する塩基性化合物で目的のpHに調整することができる。酸の具体例としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。また、不揮発分を調整するため、水または水溶性有機溶剤(F)を添加してもよい。
【0095】
pH調整後の水系顔料分散体のpHは、7~10が好ましく、7.1~9.5がより好ましい。
【0096】
得られた水系顔料分散体は、ろ過、遠心分離、マグネットフィルターによる磁選、陽イオン交換樹脂・陰イオン交換樹脂・キレート剤等による不純物イオンの除去を行うことが好ましい。ろ過または遠心分離を行うことで粗大粒子を除去することができ、マグネットフィルターによる磁選により磁性異物が除去され、さらにイオン交換樹脂等によりカルシウムイオンやマグネシウムイオンを始めとする不純物イオンが除去され、インクジェットインクとしたときに吐出性が良好となる。ろ過、遠心分離、マグネットフィルターによる磁選、イオン交換樹脂等による不純物イオン除去は、従来公知のいずれの方法も採用できるが、例えばろ過ではメンブレンフィルター、デプスフィルター、限外ろ過フィルターなどを採用することができる。フィルターの目開きは、0.1μm~10μmが好ましい。遠心分離では円筒型遠心分離機、バスケット型遠心分離機などを採用することができる。マグネットフィルターでは日本マグネティックス社製高勾配磁選機CS-Xなどを採用することができる。不純物イオンの除去は、例えば特開2002-179961号公報、特開2003-277672号公報に記載の方法などを採用することができる。
【0097】
水系顔料分散体の粒子の体積平均粒子径D50は、5nm~200nmが好ましい。また、水系顔料分散体の体積平均粒子径D50と、ソルトミリング後の顔料の平均一次粒子径は、
水系顔料分散体の体積平均粒子径D50≧ソルトミリング後の顔料の平均一次粒子径であることが好ましい。上記範囲となることで、水系顔料分散体中の顔料は凝集が少なく一次粒子レベルにまで分散されており、着色力や透明性が向上するため好ましい。水系顔料分散体の体積平均粒子径D50は、大塚電子社製FPAR-1000を用いて測定した体積基準の粒子径分布から求められる。インクジェットインクとしては、体積平均粒子径D50は150nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましい。
【0098】
得られた水系顔料分散体に含まれるオレンジ顔料(A)を含む粒子の平均円形度は、0.60~1.00程度が好ましい。平均円形度の値が大きくなることで真球に近い粒子形状となり、水系顔料分散体としたときに顔料の一次粒子同士の接触が点接触になりやすく、接触面積が低下し、これにより粘度が低下するため好ましい。平均円形度は、透過型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で撮影した複数枚の写真より抽出した顔料の一次粒子100個について、一次粒子の周囲長および面積を算出し、以下の式で求めた円形度を算術平均することにより求めることができる。なお、平均円形度は顔料粒子を上から見たときの形状を表すため、顔料粒子の三次元形状を直接観測していないが、測定時に顔料粒子は様々な方向を向いており、また前記した通りソルトミリング製法は顔料粒子が全方位から均一に破砕と成長が繰り返されるため、扁平な粒子形状にはならず、真球に近い一次粒子が得られるため、顔料粒子100個の算術平均とすることで、顔料粒子の三次元形状を近似的に求めることができる。
円形度=4π×(面積)÷(周囲長)^2
【0099】
また、上記した製造方法以外にも、特開2020-143201号公報の明細書[0025]から[0029]に記載された転相乳化法、特開2018-028080号公報の明細書[0034]から[0048]に記載されたソルトミリング工程を経由しない分散処理法、特開2020-015893号公報の明細書[0119]に記載された水溶性無機塩を使用しない混練法などにより、オレンジ顔料(A)にカルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)を被覆することができる。
【0100】
<その他添加剤>
本発明の水系顔料分散体は、添加剤を含有できる。添加剤は、例えば、塩基性化合物(D)、界面活性剤、防腐防黴剤、キレート化剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、等が挙げられる。
【0101】
[塩基性化合物(D)]
塩基性化合物(D)は、カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の酸基を中和できる化合物である。塩基性化合物(D)は、水に可溶である化合物であれば特に限定されない。塩基性化合物(D)は、無機塩基、有機塩基(但し、3級アミノアルコール(C)を除く)が挙げられる。
無機塩基は、例えば、水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム,メタ珪酸ナトリウム,セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸のアルカリ金属塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸のアルカリ金属塩、炭酸二ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸二カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸のアルカリ金属塩、アンモニア;
有機塩基は、例えば、メチルアミン,ジメチルアミン,トリメチルアミン,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン等のアルキルアミン、エタノールアミン等の1級アミノアルコール;
ブチルアミノエタノール、ジエタノールアミン等の2級アミノアルコール;
メトキシポリ(オキシエチレン/ オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等のノニオ
ン性基を有するアミン;
等が挙げられる。
【0102】
塩基性化合物(D)は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0103】
3級アミノアルコール(C)および塩基性化合物(D)を併用することで、多様な電荷反発を生じ粒子の凝集が抑制され、粗大粒子が低減するため好ましい。3級アミノアルコール(C)および塩基性化合物(D)の比率は、質量比で95/5~50/50が好ましく、90/10~60/40がより好ましく、85/15~70/30がさらに好ましい。
【0104】
[バインダー樹脂]
本発明の水系顔料分散体は、バインダー樹脂を含有できる。バインダー樹脂は樹脂種でいうと、例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、またバインダー樹脂は水への溶解性の面からいうと、水溶性樹脂、水不溶性樹脂等が挙げられる。なお、水不溶性樹脂は、エマルジョンや樹脂粒子を含む。
【0105】
バインダー樹脂の含有量は、インクジェットインクの不揮発分100質量%中、2~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
【0106】
[界面活性剤]
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0107】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤は、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばNH、Na、Ca等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えばNH、Na、Ca等)、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物及びその塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸Na塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(例えばNH、Na等)、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、オレイン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤の塩における対イオンは、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0108】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤は、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0109】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコーン系等のノニオン性活性剤が挙げられる。特にアセチレングリコール系界面活性剤は、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品は、例えば、エアープロダクツ社製(米国)のサーフィノール104、82、465、485、TG、DF110D等が挙げられる。
【0110】
また、フッ素系界面活性剤も使用できる。例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれもAGC社製)、フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF-470、F1405、F-474(いずれもDIC社製)、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR(いずれもDuPont社製)、FT-110、FT-250、FT-2
51、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれもネオス社製)、PF-151N(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0111】
(両イオン性界面活性剤)
両イオン性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ヤシ油アルキルベタイン、ジメチルラウリルベタイン等が挙げられる。
【0112】
界面活性剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0113】
[防腐防黴剤]
防腐防黴剤は、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、メチルイソチアゾリノン、ベンズイソチアゾリノン等が挙げられる。
【0114】
[キレート化剤]
キレート化剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0115】
[防錆剤]
防錆剤は、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0116】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤は、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤は、例えば、フェニル-β-ナフチルアミン、α-ナフチルアミン、N,N-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチル-フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3-チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3-チオジプロピオネート、ジステアリル-β,β-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
リン系酸化防止剤は、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。
【0117】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、例えば、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
サリチレート系紫外線吸収剤は、例えば、フェニルサリチレート、p-tert-ブチルフェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、例えば、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)
アクリレート、ブチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等が挙げられる。
ニッケル錯塩系紫外線吸収剤は、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル) サルフ
ァイド、2,2-チオビス(4-tert-オクチルフェレート)-n-ブチルアミンニッケル(II)、2,2-チオビス(4-tert-オクチルフェレート)-2-エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2-チオビス(4-tert-オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)等が挙げられる。
【0118】
[色素誘導体]
本発明に用いる被覆顔料や水系顔料分散体には、必要に応じて色素誘導体を添加することができる。
【0119】
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩や、スルホンアミド基や末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えばジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、等が挙げられる。
【0120】
色素誘導体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0121】
《インク》
本発明の水系顔料分散体は、活版印刷、フレキソ印刷等に用いる凸版印刷用インク、グラビア印刷等に用いる凹版印刷用インク、オフセット印刷等に用いる平版印刷用インク、スクリーン印刷等に用いる孔版印刷用インク、インクジェット印刷、静電荷現像トナー印刷に用いるオンデマンド印刷用インク、水系塗料、筆記具用インク等の各種用途に使用できる。これらの中でも、インクジェット印刷に用いるインクジェットインクが好ましい。
【0122】
また、本発明の水系顔料分散体を主成分として含む、オレンジ色インクとして用いることが好ましい。本発明の水系顔料分散体を用いたインクは、保存安定性が良好であるため、鮮やかな画像を安定して描くことができる。
また、本発明の水系顔料分散体を、オレンジ色以外の、他色の水系顔料分散体の色相を調整する目的で使用することも好ましい。オレンジ色以外のインクも、より鮮やかな画像を描くことができるため好ましい。
【0123】
<インクジェットインク>
本発明のインクジェットインクは、水系顔料分散体を含有する。インクジェットインクは、水と混和する水溶性有機溶剤(F)として、好ましくは多価アルコールや多価アルコールアルキルエーテル等を含むことが好ましい。これらの溶剤は基材への浸透が非常に速く、コート紙、アート紙といった低吸液性基材に対しても、浸透が速い。そのため、印刷時の乾燥が速く、正確な印字を実現することができる。また、沸点が高いため、湿潤剤としての働きが十分である。
本発明のインクジェットインクは、オレンジ色インクジェットインクとして用いることが好ましい。本発明のインクジェットインクは、粗大粒子が低減されているため、インクジェットヘッドのノズル詰まりが発生しづらく、歩留まりが向上できる。
【0124】
水溶性有機溶剤(F)は、前記したものを使用できる。
【0125】
水溶性溶剤(F)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0126】
水溶性溶剤(F)の含有率は、インクジェットインク中、3~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。また、水溶性溶剤(F)と水の含有率の合計は、インクジェットインク中、10~95質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。
【0127】
本発明のインクジェットインクは、その他の添加剤として、公知の添加剤や、前記した
バインダー樹脂等を含有できる。
【0128】
インクジェットインクは、ろ過、遠心分離、マグネットフィルターによる磁選、陽イオン交換樹脂・陰イオン交換樹脂・キレート剤等による不純物イオンの除去を行うことが好ましい。これによりインクジェットプリンターからの吐出性が良好となる。ろ過、遠心分離またはマグネットフィルターは、前記したものを採用できる。
【0129】
本発明のインクジェットインクは、各種のインクジェットプリンターに好適に用いることができる。適用可能なインクジェットの方式は特に限定するものではないが、例えば、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式、商業印刷用などに用いられるシングルパス方式等が挙げられる。
【0130】
《インクセット》
本発明のインクセットは、2色以上のインクジェットインクを含む。
具体的には、本発明の水系顔料分散体から形成したオレンジ色インクジェットインクを含み、さらにオレンジ色以外の他色(シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色、ホワイト色、レッド色、グリーン色、ブルー色、オレンジ色、ピンク色、ゴールド色、シルバー色、ブロンズ色など)のインクジェットインクを含む。
【0131】
《印刷物》
本発明の印刷物は、本発明のインクまたは本発明のインクセットを、基材に印刷してなる。
例えば、本発明のインクジェットインクは、各種のインクジェットプリンターに搭載する際、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクとのセットで搭載することができる。いわゆるプロセスカラーと呼ばれる4色のインクセットと共に搭載し、各色の印刷量などを調整することで、基材(被印刷物)上に様々な色相の印刷部(画像)を形成できる。また、必要に応じ、レッドインク、グリーンインクなどプロセスカラー以外のインクを搭載することで、より色再現性の高い印刷部(画像)を形成できる。各インクの顔料濃度、粘度、動的粘弾性、表面張力、印刷順番、揮発分の蒸発速度などは設計事項であり、求める特性に応じて適宜調整することができる。
【0132】
[基材]
本発明の水系顔料分散体およびインクは、従来公知の種々の基材へ印刷できる。基材としては、普通紙、布帛、ニットなどの高吸水性基材、アート紙、コート紙、塩化ビニル、木材、コンクリート、卵殻、錠剤、食品、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの低吸水性基材、金属(アルミ、ステンレス等)などの非吸水性基材が挙げられる。基材は、平滑でもよいし、凹凸を有していてもよいし、平面でもよいし、曲面でもよい。
【実施例0133】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量部であり、「%」は質量%である。また、NVは、不揮発分(Nonvolatile content)を意味する。
【0134】
実施例中の略号や製品名は、以下を意味する。
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
MALAH:無水マレイン酸
MALB:マレイン酸n-ブチル
St:スチレン
PEMA:フェノキシエチルメタクリレート
VI:ビニルイミダゾール
MMA:メタクリル酸メチル
iPrA:アクリル酸イソプロピル
STMA:ステアリルメタクリレート
LA:ラウリルアクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
AMP-20GY:新中村化学社製フェノキシポリエチレングリコールアクリレート
3級アミノアルコールC-1:ジメチルアミノエタノール
3級アミノアルコールC-2:N-メチルジエタノールアミン
3級アミノアルコールC-3: トリエタノールアミン
3級アミノアルコールC-4:2-2-ジエチルアミノエトキシエタノール
3級アミノアルコールC-5:ジエチルアミノエタノール
3級アミノアルコールC-6:N-ブチルジエタノールアミン
塩基性化合物D-1:水酸化カリウム
塩基性化合物D-2:エタノールアミン
塩基性化合物D-3:ブチルアミノエタノール
塩基性化合物D-4:ジエタノールアミン
架橋剤1:ナガセケムテックス社製デナコールEX-321(脂肪族エポキシ)
1,2-PD:1,2-プロパンジオール
1,2-BD:1,2-ブタンジオール
1,2-HD:1,2-ヘキサンジオール
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
DEG:ジエチレングリコール
GLY:グリセリン
3-MMB:3-メトキシ-3-メチルブタノール
2-PY:2-ピロリドン
MEK:メチルエチルケトン
J-HPD96:BASFジャパン社製Joncryl HPD96(アクリル樹脂、NV34%)
J-780:BASFジャパン社製Joncryl 780(ポリアクリルエマルジョン、NV48%)
W400S:三井化学社製ケミパールW400S(オレフィンワックス、NV40%)
W-5030:三井化学社製タケラックW-5030(ポリウレタンエマルジョン、NV30%)
W-6061:三井化学社製タケラックW-6061(ポリウレタンエマルジョン、NV30%)
W-6110:三井化学社製タケラックW-6110(ポリウレタンエマルジョン、NV32%)
MD-2000:東洋紡社製バイロナールMD-2000(ポリエステルエマルジョン、NV40%)
BYK-348:ビックケミー社製シリコーン系界面活性剤
S-465:エボニックインダストリーズ社製サーフィノール465(アセチレン系界面活性剤)
S-DF110D:エボニックインダストリーズ社製サーフィノールDF110D(アセチレン系界面活性剤)
Proxel GXL:Lonza社製防腐剤(チアゾリン系防腐剤)
BC-890:住化エンバイロメンタルサイエンス社製ネオシントールBC-890(チアゾリン系防腐剤)
PO1:C.I.ピグメントオレンジ1
PO14:C.I.ピグメントオレンジ14
PO15:C.I.ピグメントオレンジ15
PO36:C.I.ピグメントオレンジ36
PO43:C.I.ピグメントオレンジ43
PO60:C.I.ピグメントオレンジ60
PO62:C.I.ピグメントオレンジ62
PO63:C.I.ピグメントオレンジ63
PO64:C.I.ピグメントオレンジ64
PO67:C.I.ピグメントオレンジ67
PO72:C.I.ピグメントオレンジ72
PO74:C.I.ピグメントオレンジ74
【0135】
物性値は、以下の方法に従って求めた。
【0136】
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))
RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8220GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はポリスチレン換算値である。
【0137】
(酸価)
モノマー組成から樹脂1g中に含まれる酸基のモル数を算出した。この酸基のモル数が、中和するために必要な水酸化カリウム(分子量56.1)のモル数と等しいとして、酸価(mgKOH/g)の理論値を算出した。なお、無水マレイン酸は、全てマレイン酸に加水分解しているものとして理論値を算出した。
【0138】
(不揮発分)
不揮発分は、測定対象0.5gを精秤し、180℃乾燥機に20分間入れたときの乾燥減量から求めた。
【0139】
(架橋値)
架橋値は、以下の式から求めた。
架橋値=架橋剤(D)中のエポキシ基のモル数/樹脂(B)中の酸基のモル数
【0140】
(中和値)
中和値は、以下の式から求めた。
中和値=塩基性化合物のモル数/樹脂(B)の酸基のモル数
【0141】
<カルボキシ基および芳香族基を有する樹脂(B)の合成>
〔A-Bブロックポリマー〕
・樹脂(B-1)の合成
(Aポリマーブロックの合成)
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計および窒素導入管を取り付けた1リッターセパラブルフラスコの反応装置に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、ジグライムという)295.68部、ヨウ素3.03部、アゾビス(メトキシジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製、商品名:V-70)7部、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTという)0.66部、BzMAを18部、PEMAを20部、AMP-20GYを66部添加して、窒素を流しながら40℃に加温し、6.5時間重合し、次いでV-70を2部、添加した。次いでその1時間後、2時間後、3時間後にそれぞれ
V-70を2部添加し、さらに反応を2時間継続した。サンプリングで重合転化率が95%以上になることを確認し反応を終了し、Aポリマーブロックを作製した。不揮発分から換算した重合転化率は95%であり、数平均分子量(Mn)は4,000であった。
【0142】
(ブロックポリマーの合成)
上記反応溶液にMAAを39部、BzAを5部、MMAを2部、V-70を0.45部の混合物を添加し、4.5時間重合させてBブロックを合成した。サンプリングして不揮発分から換算した重合率は97.6%であった。このBポリマーブロックはAポリマーブロックの構成モノマーで重合しなかった。
次に、BDGを147.8部添加し、水酸化ナトリウム1部、およびイオン交換水129.3部の混合液を添加し、50℃で2時間反応させ、ポリマー末端のヨウ素を分解し、樹脂(B-1)(数平均分子量(Mn):6,000、重量平均分子量(Mw):12,300、酸価169mgKOH/g、芳香族モノマー比率29質量%)を作製した。
【0143】
〔ランダム重合ポリマー〕
・樹脂(B-2)の合成
攪拌機、逆流コンデンサー、滴下ロート、温度計および窒素導入管を取り付けた反応容器を準備した。MAAを60部、AAを10部、Stを30部を混合し、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、MEKを20部及び2-メルカプトエタノール(連鎖移動剤)0.3部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記連鎖移動剤0.27部、MEK60部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製、商品名:V-65)2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させた。得られた生成物の溶剤を減圧濃縮して完全に除去し、樹脂(B-2)(数平均分子量(Mn):10,000、重量平均分子量(Mw):32,100、酸価469mgKOH/g、芳香族モノマー比率30質量%)を作製した。
【0144】
・樹脂(B-3)~(B-11)の合成
モノマー組成を表1に示す通りに変更した以外は樹脂(B-2)と同様にして、樹脂(B-3)~(B-11)を作製した。なお、分子量はV-65の添加量を変更し適宜調整した。
【0145】
【表1】
【0146】
<顔料組成物の製造>
[製造例1]
・顔料組成物(1)の製造
C.I.ピグメントオレンジ62を90部、樹脂(B-1)を不揮発分として10部、水溶性無機塩(X)として塩化ナトリウム450部、水溶性有機溶剤(Y)としてジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で3時間混練した。
得られた混練物を、イオン交換水2,000部に投入し、撹拌・ろ過・水洗を行い、この工程を繰り返し、塩化ナトリウムとジエチレングリコールを除去することで、C.I.ピグメントオレンジ62の粒子を樹脂(B-1)で被覆した顔料組成物(1)を含むウェットケーキを作製した。不揮発分は30質量%であった(工程I)。
【0147】
[製造例2~22]
・顔料組成物(2)~(22)の製造
顔料の種類・比率および樹脂(B)を、表2に示す通りに変更した以外は製造例1と同様にして、顔料組成物(2)~(22)を作製した。
【0148】
【表2】
【0149】
<水系顔料分散体の製造>
[実施例1]
・水系顔料分散体(1)の製造
顔料組成物(1)を固形分換算で30部、イオン交換水を40部、3級アミノアルコール(C)としてジメチルアミノエタノール(C-1)を中和値が80モル%となるよう添加し、ディスパーを用いて系内が均一になるよう撹拌し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製スターバーストラボHJP-25005、処理圧力180MPa、斜向衝突チャ
ンバー装備)を用いて3時間の循環分散を行った。分散中の液温は40~80℃となるよう調整した(工程II)。
分散後、液温を40℃となるよう調整し、撹拌しながら架橋剤(D)として架橋剤1を、架橋値が90モル%となるように適量添加し、ディスパーを用いて70℃、1時間撹拌し、架橋反応を行い、オレンジ顔料粒子表面の一部または全部を被覆した(工程III)。
撹拌後、液温を60℃に調整し、防腐剤としてProxel GXLを0.15部、さらに不揮発分が25%になるようにイオン交換水を適量添加し、円筒型遠心分離機を用いて遠心分離を行い、日本マグネティックス社製高勾配磁選機CS-Xを用いて磁選を行い、キレスト株式会社製キレート剤「キレストファイバーIRY-LC10(キレート剤が充填されたカートリッジ)」を用いて金属イオンを除去し、フィルターろ過を行った。
続いて、1,2-PDを15質量%、BDGを5質量%、J-HPD96を8.8質量%、W400Sを1.25質量%、BYK-348を1質量%、S-DF110Dを0.5質量%、架橋オレンジ顔料分が5質量%となるようイオン交換水を加え、混合・撹拌を行った(工程IV)。
撹拌後、液温を25℃に調整し、円筒型遠心分離機を用いて遠心分離を行い、日本マグネティックス社製高勾配磁選機CS-Xを用いて磁選を行い、キレスト株式会社製キレート剤「キレストファイバーIRY-LC10(キレート剤が充填されたカートリッジ)」を用いて金属イオンを除去し、フィルターろ過を行い、水系顔料分散体(1)を得た。
【0150】
[実施例2~32、比較例1]
・水系顔料分散体(2)~(33)の製造
被覆顔料、架橋剤、塩基性化合物、架橋値、中和値を表3-1~3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、水系顔料分散体(2)~(33)を作製した。なお、架橋剤の記載がない実施例については、架橋剤を添加していない。また、塩基性化合物(D)は、3級アミノアルコール(C)と同時ではなく、架橋後に添加している。
【0151】
【表3-1】
【0152】
【表3-2】
【0153】
【表3-3】
【0154】
<温度変動保管下での粘度安定性評価>
作製した水系顔料分散体の粘度を、東機産業社製コーンプレート型粘度計TV-22を用いて測定し、初期粘度Vとした。この水系顔料分散体を、20mLガラス製サンプル管に入れ、5℃で6時間、25℃で6時間、50℃で6時間、25℃で6時間保管する温度変動サイクル試験を90日間行った後、密閉容器から水系顔料分散体を取り出し、室温まで冷却して初期粘度と同様に測定し、経時粘度Vとした。経時粘度の値を初期粘度の値で除したV/Vの値を算出し、以下の基準で粘度安定性を評価した。
◎:V/Vの値が105%未満(優良)
○:V/Vの値が105%以上110%未満(良)
△:V/Vの値が110%以上115%未満(実用上問題なし)
×:V/Vの値が115%以上(不良)
【0155】
<粗大粒子個数評価>
実施例及び比較例で得られた水性顔料分散体を、イオン交換水で100倍に希釈し、サイジングシステムズ製のアキュサイザー780APS粒度分析装置で、0.5μm以上の粗大粒子の個数を求め、希釈前の1mL中の個数に換算し、以下の基準で粘度安定性を評価した。
◎:500個未満(優良)
○:500個以上1,000個未満(良)
△:1,000個以上2,000個未満(実用上問題なし)
×:2,000個以上(不良)
【0156】
<水溶性有機溶剤(F)の添加前後における体積平均粒子径の変化率評価>
実施例の工程IVで水溶性有機溶剤(F)を混合・撹拌し、ろ過、遠心分離、磁選を行った直後の水性顔料分散体を分取し、体積平均粒子径を測定し、D50(b)とした。次に、この水性顔料分散体を70℃で2週間保管し、同様に体積平均粒子径を測定し、D50(a)とした。経時保管後の体積平均粒子径の値を、初期の体積平均粒子径の値で除した体積平均粒子径の変化率D50(a)/D50(b)の値を算出し、以下の基準で粘度安定性を評価した。
◎:D50(a)/D50(b)の値が1.0以上1.1未満(優良)
○:D50(a)/D50(b)の値が1.1以上1.3未満(良)
△:D50(a)/D50(b)の値が1.3以上1.8未満(実用上問題なし)
×:D50(a)/D50(b)の値が1.8以上(不良)
【0157】
評価結果を表4に示す。
【0158】
【表4】
【0159】
表4の結果から、本発明の水系顔料分散体は、温度が変動する過酷な環境下においても粘度が良好であり、粗大粒子が少なく、水溶性有機溶剤(F)を添加しても体積平均粒子径の変化率が小さい。特に、オレンジ顔料(A)として、アセト酢酸エステル構造とモノアゾ構造を有する顔料を選定し、芳香族基の含有量が特定の範囲である樹脂(B)を用いた水系顔料分散体は、評価結果が特に良好である。
【0160】
これらの水系顔料分散体を、オレンジ色インクとして、セイコーエプソン社製PX-105(ピエゾ型インクジェットプリンタ)に搭載した。また、セイコーエプソン社製ICC69(シアンインク)、ICM69(イエローインク)、ICY69(イエローインク)を搭載し、基材としてA4サイズ普通紙に、オレンジ単色、マゼンタ+オレンジ二次色、シアン+オレンジ二次色、イエロー+オレンジ二次色、マゼンタ+シアン+オレンジ三次色、シアン+イエロー+オレンジ三次色、イエロー+マゼンタ+オレンジ三次色の計7点のベタ画像を印刷し、熱風乾燥したところ、良好な画像が得られた。
また、基材をコート紙、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔に変更したところ、同様の結果が得られた。なお、基材が紙でない場合は、A4サイズ普通紙に基材を張り付けて使用した。
【0161】
また、キヤノン社製MAXIFYMB5430(サーマル型インクジェットプリンタ)を用い、作製した水系顔料分散体を、オレンジ色インクとして充填し、キヤノン社製PGI-2300C(シアンインク)、PGI-2300M(マゼンタインク)、PGI-2300Y(イエローインク)と共に搭載した。基材としてA4サイズ普通紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔に、オレンジ単色、マゼンタ+オレンジ二次色、シアン+オレンジ二次色、イエロー+オレンジ二次色、マゼンタ+シアン+オレンジ三次色、シアン+イエロー+オレンジ三次色、イエロー+マゼンタ+オレンジ三次色の計7点のベタ画像を印刷し、熱風乾燥したところ、良好な画像が得られた。
【0162】
また、EFI社製EFI Nozomi C18000 Plus(シングルパス型インクジェットプリンタ)を用い、作製した水系顔料分散体を、オレンジ色インクとして充填し、セイコーエプソン社製ICC69(シアンインク)、ICM69(イエローインク)、ICY69(イエローインク)、ICB69(ブラックインク)と共に搭載した。基材としてA4サイズ普通紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、段ボールに、オレンジ単色、マゼンタ+オレンジ二次色、シアン+オレンジ二次色、イエロー+オレンジ二次色、マゼンタ+シアン+オレンジ三次色、シアン+イエロー+オレンジ三次色、イエロー+マゼンタ+オレンジ三次色の計7点のベタ画像を印刷し、熱風乾燥したところ、良好な画像が得られた。