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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024625
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】検体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/31 20060101AFI20230209BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204593
(22)【出願日】2022-12-21
(62)【分割の表示】P 2019118770の分割
【原出願日】2019-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】生田 純也
(72)【発明者】
【氏名】芝田 正治
(72)【発明者】
【氏名】中西 利志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 充生
(72)【発明者】
【氏名】高野 裕士
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(57)【要約】
【課題】染色液の消費量を低減する。
【解決手段】複数の動作モードで動作する塗抹標本作製装置100は、検体をスライド10に塗抹して塗抹スライド11を作製する塗抹部30と、複数の塗抹スライド11を収容可能であり、収容された塗抹スライド11上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部40と、染色部40に染色液の供給を行う流体回路部50と、複数の動作モードのうち、選択された動作モードに応じて、染色部40への染色液の供給を制御する制御部20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作モードで動作する検体処理装置であって、
検体の処理を行う検体処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の動作モードの選択を提示する第1提示ステップを実行し、
提示した前記複数の動作モードの中から第1動作モードが選択された場合、前記第1動作モードに関連する複数の動作モードの選択を提示する第2提示ステップを実行し、
提示した前記複数の動作モードの中から第2動作モードが選択された場合、前記第1動作モードに関連する複数の動作モードの少なくとも一つの動作モードの選択を禁止して提示する第3提示ステップを実行する、検体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、起動時に、前記第1提示ステップを実行するように構成されている、請求項1に記載の検体処理装置。
【請求項3】
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1提示ステップにおいて、ユーザによる所定の操作を受け付けるための操作画面を表示するように前記表示部を制御し、
前記操作画面を介して、前記複数の動作モードの選択を提示するように構成されている、請求項2に記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記検体処理部は、検体をスライドに塗抹して塗抹スライドを作製する塗抹部と、複数の前記塗抹スライドを収容可能であり、収容された前記塗抹スライド上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部と、前記染色部に染色液の供給を行う流体回路部と、を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項5】
前記第1動作モードは、前記染色液を供給する動作モードであり、
前記第2動作モードは、前記染色液を供給しない動作モードであり、
前記制御部は、前記第1提示ステップにおいて、前記染色液を供給する動作モードと前記染色液を供給しない動作モードの選択を提示し、
前記染色液を供給する動作モードが選択された場合、前記第2提示ステップにおいて、前記塗抹スライドを作製して前記塗抹スライドに対する染色処理を行う塗抹染色モードおよび作製された前記塗抹スライドに対する染色処理を行う染色モードの少なくとも一方の動作モードの選択を提示し、
前記染色液を供給しない動作モードが選択された場合、前記第3提示ステップにおいて、前記塗抹染色モードおよび前記染色モードの動作モードの選択を禁止して提示する、請求項4に記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記染色液を供給しない動作モードが選択された場合、前記第3提示ステップにおいて、前記塗抹スライドを作製する塗抹モードおよび前記検体の情報を印字する印字モードの少なくとも一方の動作モードの選択を提示する、請求項5に記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の動作モードのうち、所定の動作モードが選択された場合、前記染色部に前記染色液を供給しない、請求項4~6のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記複数の動作モードは、前記染色液を供給する動作モードと、前記染色液を供給しない動作モードと、を含み、
前記制御部は、
前記染色液を供給する動作モードが選択された場合、前記染色部に染色液を供給するように前記流体回路部を制御し、
前記染色液を供給しない動作モードが選択された場合、前記染色部に前記染色液を供給しない、請求項4~7のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記染色液を供給する動作モードが選択された場合、前記第2提示ステップを実行して、前記塗抹スライドを作製して前記塗抹スライドに対する染色処理を行う塗抹染色モードおよび作製された前記塗抹スライドに対する染色処理を行う染色モードの少なくとも一方をさらに選択できるように構成されている、請求項8に記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記染色液を供給する動作モードが選択された場合、前記第2提示ステップを実行して、前記塗抹スライドを作製する塗抹モードおよび前記検体の情報を印字する印字モードの少なくとも一方をさらに選択できるように構成されている、請求項9に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記染色液を供給しない動作モードが選択された場合、前記第3提示ステップを実行して、前記塗抹スライドを作製して前記塗抹スライドに対する染色処理を行う塗抹染色モードおよび作製された前記塗抹スライドに対する染色処理を行う染色モードの選択を禁止するように構成されている、請求項9または10に記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記染色液を供給しない動作モードが選択された場合、前記第3提示ステップを実行して、前記塗抹スライドを作製する塗抹モードおよび前記検体の情報を印字する印字モードの少なくとも一方をさらに選択できるように構成されている、請求項11に記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記塗抹スライドを保持して移送するための移送部をさらに備え、
前記移送部は、前記染色部に対して前記塗抹スライドを1枚ずつ出し入れするように構成され、
前記制御部は、前記染色部に対して前記塗抹スライドを順次移送し、染色時間が経過した前記塗抹スライドから順番に前記染色部から取り出すように、前記移送部を制御する、請求項4~12のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項14】
前記検体の情報を印字するための印字部をさらに備え、
前記制御部は、前記スライドの所定領域に前記検体の情報を印字するように前記印字部を制御する、請求項4~13のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項15】
前記染色部に対する染色液の供給は、染色液の充填と、染色液が充填された前記染色部に対する染色液の補充と、を含む、請求項4~14のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項16】
前記流体回路部は、前記染色部に洗浄液を供給可能に構成され、
前記制御部は、前記染色部に染色液を供給しなかった場合、前記染色部に洗浄液を供給しない、請求項4~15のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図25に示すように、特許文献1には、検体をスライド911に塗抹して塗抹スライド912を作製する塗抹部901と、複数の塗抹スライド912を収容可能であり、収容された塗抹スライド912上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部902と、染色部902への染色液の供給を行う流体回路部903と、を備える塗抹標本作製装置900が開示されている。この特許文献1の塗抹標本作製装置900は、染色処理を行う動作モードと、染色処理を行わない動作モードとを選択可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/038323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、このような塗抹標本作製装置においては、ユーザによる操作性を向上させることが望まれている。
【0005】
この発明の一つの局面では、ユーザによる操作性を向上させることに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の局面による複数の動作モードで動作する検体処理装置は、検体の処理を行う検体処理部と、制御部と、を備え、制御部は、複数の動作モードの選択を提示する第1提示ステップを実行し、提示した複数の動作モードの中から第1動作モードが選択された場合、第1動作モードに関連する複数の動作モードの選択を提示する第2提示ステップを実行し、提示した複数の動作モードの中から第2動作モードが選択された場合、第1動作モードに関連する複数の動作モードの少なくとも一つの動作モードの選択を禁止して提示する第3提示ステップを実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの局面によれば、ユーザによる操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による塗抹標本作製装置の概要を示した模式図である。
図2】一実施形態による塗抹標本作製方法の概要を示した図である。
図3】一実施形態による塗抹標本作製装置の概略を示した平面図である。
図4】一実施形態による塗抹標本作製装置の制御的な構成を示したブロック図である。
図5】一実施形態による塗抹標本作製装置の染色部を説明するための斜視図である。
図6】一実施形態による塗抹標本作製装置におけるスライドの搬送経路を示した図である。
図7】一実施形態による塗抹標本作製装置の流体回路図の概要を示した図である。
図8】一実施形態による塗抹標本作製装置のメインフローを説明するためのフローチャートである。
図9】一実施形態による塗抹標本作製装置の塗抹染色モードの処理を説明するためのフローチャートである。
図10】一実施形態による塗抹標本作製装置の染色モードの処理を説明するためのフローチャートである。
図11】一実施形態による塗抹標本作製装置の塗抹モードの処理を説明するためのフローチャートである。
図12】一実施形態による塗抹標本作製装置の印字モードの処理を説明するためのフローチャートである。
図13】一実施形態による塗抹標本作製装置のシャットダウン処理を説明するためのフローチャートである。
図14】一実施形態による塗抹標本作製装置のモード選択時の選択画面の第1例を示した図である。
図15】一実施形態による塗抹標本作製装置のモード選択時の選択画面の第2例を示した図である。
図16】一実施形態による塗抹標本作製装置のモード選択時の選択画面の第3例を示した図である。
図17】一実施形態による塗抹標本作製装置のモード選択時の選択画面の第4例を示した図である。
図18】一実施形態の変形例による検体処理装置の処理を説明するためのフローチャートである。
図19】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第5例を示した図である。
図20】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第6例を示した図である。
図21】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第7例を示した図である。
図22】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第8例を示した図である。
図23】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第9例を示した図である。
図24】一実施形態の変形例による検体処理装置のモード選択時の選択画面の第10例を示した図である。
図25】従来の塗抹標本作製装置の概要を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(塗抹標本作製装置の概要)
図1を参照して、本実施形態による複数の動作モードで動作する塗抹標本作製装置100の概要について説明する。
【0011】
塗抹標本作製装置100は、スライド10に対して検体を塗抹して塗抹スライド11を作製する塗抹処理と、検体が塗抹された塗抹スライド11に対して染色処理を施し、塗抹標本12の作製を自動的に行うための装置である。検体は、たとえば血液である。
【0012】
図1に示すように、塗抹標本作製装置100は、制御部20と、塗抹部30と、染色部40と、流体回路部50とを備える。
【0013】
制御部20は、塗抹標本作製装置100の各部を制御する。制御部20は、流体回路部50による染色部40への染色液の供給を制御する。
【0014】
塗抹部30は、スライド10に検体を塗抹し塗抹スライド11を作製する塗抹処理を行う。
【0015】
染色部40は、塗抹処理済みの塗抹スライド11の検体に対して染色処理を行う。染色部40は、複数の塗抹スライド11を収容可能であり、収容された塗抹スライド11上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う。
【0016】
ここで、制御部20は、複数の動作モードのうち、選択された動作モードに応じて、染色部40への染色液の供給を制御する。具体的には、制御部20は、ユーザによる所定の操作を介して、染色部40により染色処理を行わない動作モードが選択された場合、染色部40への染色液の供給を行わないように流体回路部50を制御する。一方、制御部20は、ユーザによる所定の操作を介して、染色部40により染色処理を行う動作モードが選択された場合、染色部40への染色液の供給を行うように流体回路部50を制御する。
【0017】
以上の構成のように、ユーザによる所定の操作を介して、選択された動作モードに応じて、染色部40への染色液の供給を行う動作モードと、染色部40への染色液の供給を行わない動作モードと、を選択的に実行可能な制御部20を設ける。これにより、染色処理を行わない動作モードの際に、染色部40に供給する染色液の使用量および廃棄量を削減することができるので、染色液の使用量および廃棄量を低減することができる。
【0018】
(塗抹標本作製方法)
次に、本実施形態の塗抹標本作製方法について説明する。本実施形態の塗抹標本作製方法は、検体をスライド10に塗抹して塗抹スライド11を作製する塗抹部30と、複数の塗抹スライド11を収容可能であり、収容された塗抹スライド11上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部40と、染色部40に染色液の供給を行う流体回路部50と、を備える塗抹標本作製装置100を用いて、塗抹標本12を作製する方法である。
【0019】
本実施形態の塗抹標本作製装置の制御方法は、検体をスライド10に塗抹して塗抹スライド11を作製する工程と、複数の動作モードのうち、少なくとも一つの動作モードを選択する工程と、選択した動作モードユーザの操作に応じて、複数の塗抹スライド11を収容可能であり収容された塗抹スライド11上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部40への染色液の供給を制御する工程と、染色部40への染色液の供給を制御する工程に応じて、染色部に染色液を供給する工程と、染色部に供給された染色液により染色処理を行う工程と、を含んでいる。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の塗抹標本作製方法は、少なくとも、次のステップS1~S3のステップを含む。(S1)選択した動作モードに応じて染色部40への染色液の供給を制御する。(S2)染色部40により染色処理を行う動作モードの場合、染色部40に染色液を供給する。(S3)染色部40により染色処理を行わない動作モードの場合、染色部40に染色液を供給しない。
【0021】
以上のように、本実施形態の塗抹標本作製装置の制御方法では、選択した動作モードに応じて、染色部40に染色液を供給しない動作モードと、染色部40に染色液を供給する動作モードと、選択的に実行可能である。これにより、染色処理を行わない動作モードの際に、染色部40に供給する染色液の使用量および廃棄量を削減することができるので、染色液の使用量および廃棄量を低減することができる。
【0022】
(塗抹標本作製装置の詳細な構成)
以下、図3以降を参照して、図1に示した塗抹標本作製装置100の好ましい実施形態の構成について具体的に説明する。塗抹標本作製装置100は、スライド10に対して検体を塗抹する塗抹処理を行い、検体が塗抹された塗抹スライド11に対して、検体の染色処理を施すための装置である。検体は、たとえば血液である。
【0023】
塗抹標本作製装置100は、図3に示すように、スライド供給部110と、移送機構120と、付着物除去部130と、印字部140と、塗抹部30と、第1乾燥部150と、スライド搬送部160と、を備える。また、塗抹標本作製装置100は、染色部40と、流体回路部50(図7参照)と、スライド設置部170と、移送部180と、第2乾燥部190と、スライド収納部200と、を備える。また、塗抹標本作製装置100は、制御部20と、操作部21と、表示部22と、記憶部23(図4参照)と、通信部24(図4参照)と、を備える。また、塗抹標本作製装置100は、検体搬送部210と、吸引部220と、を備える。
【0024】
以下では、塗抹標本作製装置100の設置面に平行な面内(すなわち、水平面内)で直交する2方向をそれぞれX方向、Y方向とする。図3の例では、塗抹標本作製装置100が、平面視でX方向およびY方向にそれぞれ沿う四角形状の外形形状を有する。X方向を塗抹標本作製装置100の左右方向とし、Y方向を塗抹標本作製装置100の奥行き方向とする。Y1方向側が装置の手前側であり、Y2方向側が装置の奥側である。また、水平面と直交する上下方向をZ方向とする。
【0025】
検体搬送部210は、検体を収容する複数の検体容器211が検体搬送部210に設置され、設置された検体容器211を所定の取込位置に搬送する。検体容器211は、検体搬送部210は、たとえば検体容器211を複数保持したラック212を搬送する。吸引部220は、検体搬送部210により取込位置に搬送された検体容器211から血液、尿等の液体の検体を吸引する。吸引部220は、吸引した検体を塗抹部30へ供給する。
【0026】
図3の構成例では、スライド供給部110は、第1供給部111と、第2供給部112とを含む。スライド供給部110は、1つまたは3つ以上の供給部を含んでいてもよい。スライド供給部110は、第1供給部111および第2供給部112の各々に、検体の塗抹前の未使用状態のスライド10を多数収納できる。スライド10は、第1供給部111および第2供給部112の内部に、塗抹面が上方を向くように平置きで収納される。
【0027】
第1供給部111および第2供給部112は、実質的に同一構成を有する。第1供給部111および第2供給部112は、X方向に並んで配置されている。第1供給部111および第2供給部112の各々は、内部に収容された塗抹前のスライド10を、Y2方向に移動させて、スライド10を1枚ずつ供給できる。
【0028】
移送機構120は、たとえば、1枚のスライド10を上面に保持して搬送できる。移送機構120は、第1供給部111からスライド10を受け取れる。また、移送機構120は、第2供給部112からスライド10を受け取れる。また、移送機構120は、水平方向(XY方向)に移動可能である。また、移送機構120は、保持したスライド10を上下方向(Z方向)に移動させることができる。移送機構120は、保持したスライド10を付着物除去部130、印字部140および塗抹部30の各々の処理位置に搬送できる。移送機構120は、スライド供給部110から受け取ったスライド10を付着物除去部130、印字部140および塗抹部30の順に搬送する。移送機構120が複数枚のスライド10を保持可能であってもよい。移送機構120がXY方向に移動可能でZ方向には移動できなくてもよい。
【0029】
付着物除去部130は、スライド10の表面に付着した付着物を除去する機能を有する。付着物除去部130は、移送機構120の上面に保持された状態のスライド10に対して付着物の除去処理を行う。たとえば、付着物除去部130は、エアを吐出することによりスライド10の塗抹領域13および印字領域14の付着物を吹き飛ばすことができる。付着物は、たとえば、ガラス粉末やほこりなどの小さい異物である。
【0030】
図3の構成例では、印字部140は、スライド10の印字領域14に、検体情報などの各種情報を印刷できる。また、印字部140は、移送機構120の上面に保持された状態のスライド10に対して印刷を行う。
【0031】
図3の構成例では、塗抹部30は、検体をスライド10に塗抹して塗抹スライド11を作製する。塗抹部30は、スライド10の塗抹領域13に検体を塗抹できる。また、塗抹部30は、移送機構120の上面に保持された状態のスライド10に対して検体の塗抹を行う。
【0032】
第1乾燥部150は、検体が塗抹された塗抹スライド11を塗抹部30から受け取り、塗抹スライド11の塗抹領域13に送風する機能を有する。第1乾燥部150は、送風により、塗抹スライド11に塗抹された検体を乾燥させることができる。
【0033】
スライド搬送部160は、第1乾燥部150および染色部40のY1方向側に配置され、X方向に延びるように設けられている。スライド搬送部160は、第1乾燥部150から、染色部40とスライド設置部170との間の取出位置162へ、X1方向に塗抹スライド11を搬送するように構成されている。スライド搬送部160は、塗抹スライド11を収容する収容部161を有し、収容部161をX方向に移動できる。スライド搬送部160は、設置面と略平行に寝かせた状態の塗抹スライド11を収容部161内に受け入れ、設置面に対して略垂直に立てた状態にして、取出位置162へ搬送する。このため、取出位置162では、塗抹スライド11は、塗抹面が上下方向(Z方向)に沿うように立てられた状態で保持される。取出位置162に搬送された塗抹スライド11は、染色部40またはスライド設置部170に搬送される。
【0034】
染色部40は、塗抹スライド11に塗抹された検体を染色するように構成されている。染色部40は、第1乾燥部150に対してX1方向側に並んで配置され、第1乾燥部150から搬送される塗抹スライド11を受け取るように構成されている。
【0035】
染色部40は、染色液を溜める染色槽41、42、43、45および46(図5参照)と、洗浄液を溜める洗浄槽44および47(図5参照)と、を備える。染色部40では、塗抹済みの塗抹スライド11に対して、染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47と、において染色処理および洗浄処理が実施される。染色槽41、42、43、45および46は、各々複数の塗抹スライド11を収容可能である。
【0036】
スライド設置部170は、染色部40のY1方向側に配置され、塗抹スライド11を出し入れ可能に保持するように構成されている。つまり、スライド設置部170は、検体が塗抹され染色処理が行われていない塗抹スライド11を複数保持することが可能である。また、スライド設置部170は、印字部140によりスライド10に情報が印字され塗抹処理が行われていない状態のスライド10を保持することが可能である。
【0037】
移送部180は、染色部40、スライド設置部170および取出位置162の間で塗抹スライド11を搬送することができる。移送部180は、たとえば、染色部40、スライド設置部170および取出位置162よりも上方の高さ位置において、X方向、Y方向およびZ方向の各方向に移動できる。これにより、移送部180は、染色部40、スライド設置部170および取出位置162の各々に配置された塗抹スライド11を把持して取り出したり、染色部40、スライド設置部170および取出位置162の各々に塗抹スライド11を搬送できる。また、移送部180は、1枚の塗抹スライド11を保持して移送する。つまり、移送部180は、染色部40に対して塗抹スライド11を1枚ずつ出し入れする。また、制御部20は、染色部40に対して塗抹スライド11を順次移送し、染色処理を行う染色時間が経過した塗抹スライド11から順番に染色部40から取り出すように、移送部180を制御する。これにより、染色処理の度に染色液を入れ替えるバッチ処理の場合と比べて、染色部40に染色液を溜めた状態で染色処理を行うことができるので、染色部40に供給する染色液を少なくすることができる。これによっても、染色液の消費量を低減することができる。
【0038】
また、塗抹標本作製装置100は、ユーザが手動でスライド設置部170に設置した検体塗抹済みの塗抹スライド11を、スライド設置部170から染色部40に搬送できる。これにより、印字処理、塗抹処理および染色処理を行う通常モードでの動作の他に、印字部140および塗抹部30において印字処理および塗抹処理を行った塗抹スライド11を、染色処理を行うことなくスライド設置部170に送り出す塗抹モードでの動作や、ユーザが手動でスライド設置部170に設置した検体塗抹済みの塗抹スライド11に、染色部40による染色処理を行い、スライド収納部200に送り出す染色モードでの動作ができるようになる。
【0039】
図3の構成例では、第2乾燥部190は、染色部40に対してY2方向側に並んで配置されている。第2乾燥部190は、染色部40に染色処理が行われた塗抹スライド11である塗抹標本12を受け取る。第2乾燥部190は、たとえば、送風により、染色部40による染色済みの塗抹標本12を乾燥させる機能を有する。第2乾燥部190は、乾燥した塗抹標本12をスライド収納部200に受け渡す。
【0040】
スライド収納部200は、処理が終了した塗抹標本12を受け取り、収納する機能を有する。図3の構成例では、スライド収納部200は、第2乾燥部190に対してX1方向側に並んで配置され、第2乾燥部190から搬送されるスライド10を受け取る。
【0041】
制御部20は、塗抹標本作製装置100の各部の動作を制御する。制御部20は、CPUなどのプロセッサと、揮発性および/または不揮発性のメモリとを備えたコンピュータである。コンピュータは、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより、塗抹標本作製装置100の制御部として機能する。プロセッサは、制御部20の機能を果たすよう設計されたFPGA(field-programmable gate array)などであってもよい。
【0042】
操作部21は、塗抹標本作製装置100への操作の入力を受け付ける。操作部21は、たとえば、キーボード、マウス、表示部22に設けられたタッチパネルなどである。
【0043】
表示部22は、塗抹標本作製装置100の状態や、操作のための情報を表示する。表示部22は、たとえば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどである。
【0044】
このような構成によって、塗抹標本作製装置100は、スライド10への印字処理、検体の塗抹処理、染色処理の各処理を実施して塗抹標本12を自動作製できる。
【0045】
(制御ブロック)
図4に示すように、制御部20は、操作部21、表示部22、記憶部23および通信部24と電気的に接続されている。制御部20は、記憶部23に記憶されたプログラムおよび設定情報に基づいて、通信部24を介して塗抹標本作製装置100が備える各機構の制御を行う。
【0046】
通信部24は、制御部20と、塗抹標本作製装置100が備える各機構との信号の入出力を行うI/Oインターフェースを含む。制御部20は、通信部24を介して、印字部140、塗抹部30、スライド収納部200、スライド供給部110、移送機構120、流体回路部50、移送部180、検体搬送部210、第1乾燥部150、第2乾燥部190、および、吸引部220などの各機構と接続されている。また、制御部20は、通信部24を介して、流体回路部50による染色液および洗浄液の供給動作および排出動作を制御する。制御部20は、通信部24を介して、移送部180による塗抹スライド11の移送動作を制御する。
【0047】
ここで、制御部20は、選択された動作モードに応じて、染色部40に染色液を供給しない動作モードと、染色部40に染色液を供給する動作モードと、を選択的に実行可能なように構成されている。
【0048】
具体的には、制御部20は、移送部180が塗抹スライド11を染色部40に移送する動作モードと、移送部180が塗抹スライド11を染色部40に移送しない動作モードとで、染色部40への染色液の供給を制御する。なお、移送部180が塗抹スライド11を染色部40に移送する動作モードは、塗抹スライド11に対して染色処理を実行する動作モードであり、移送部180が塗抹スライド11を染色部40に移送しない動作モードは、塗抹スライド11に対する染色処理を実行しない動作モードである。また、動作モードは、スライド10に検体を塗抹して塗抹スライド11を作製し、作製した塗抹スライド11に対する染色処理を行わない動作モードと、スライド10に検体を塗抹して塗抹スライド11を作製し、作製した塗抹スライド11に対する染色処理を行う動作モードと、を含む。
【0049】
また、制御部20は、染色処理を実行しない動作モードが選択されている場合は、染色部40への染色液の充填または補充を行わないように制御する。これにより、染色処理を行わない動作モードの際に、染色部40に染色液を供給しないので、染色液の使用量および廃棄量を効果的に低減することができる。制御部20は、染色処理を実行しない動作モードが選択されている場合は、染色処理を実行する動作モードが選択されている場合よりも染色部40への染色液の充填または補充を制限するように流体回路部50を制御してもよい。染色部40への染色液の充填の場合は、塗抹スライド11を染色可能な量の染色液が染色部40に供給される。染色部40への染色液の補充の場合は、所定の枚数の塗抹スライド11を染色毎、または、所定時間ごとに染色液が染色部40に補充される。
【0050】
制御部20は、染色処理を実行しない動作モードが選択されている状態から、染色処理を実行する動作モードに選択が変更された場合は、染色部40に染色液を供給するように流体回路部50を制御する。これにより、染色処理を実行する動作モードに変更されるまで、染色部40に供給する染色液の使用量および廃棄量を抑制することができるので、染色液の使用量および廃棄量を効果的に低減することができる。また、制御部20は、染色処理を実行する動作モードが選択されている状態から、染色処理を実行しない動作モードに選択が変更された場合は、染色部40から染色液を排出するように流体回路部50を制御する。
【0051】
制御部20は、染色部40に染色液を供給しなかった場合、染色部40に供給される洗浄液量を、染色部40に染色液を供給した場合よりも少なくするように流体回路部50を制御する。これにより、染色部40を洗浄するための洗浄液の消費量を低減することができる。たとえば、制御部20は、染色部40に染色液を供給しなかった場合、染色部40に洗浄液を供給しないように制御する。これにより、染色部40を洗浄するための洗浄液の使用量および廃棄量を効果的に低減することができる。
【0052】
制御部20は、表示部22に、動作モードを選択するための操作画面を表示する制御を行う。これにより、表示部22に表示された操作画面に基づいて、ユーザが動作モードを容易に選択することができる。たとえば、制御部20は、起動時に、表示部22に、動作モードを設定するための操作画面を表示する制御を行う。これにより、起動時において、染色部40に染色液を貯めるか否かをユーザが選択することができる。ここで、起動とは、汎用電源から供給される交流電力を直流電力に変換して、制御部20のI/Oインターフェースに電力が供給され、制御部20のI/Oインターフェースに起動信号が送信された結果、制御部20が表示部22に操作画面を表示させることである。なお、起動としては、制御部20のI/Oインターフェースに電力が供給され、制御部20のI/Oインターフェースに起動信号が送信された結果、制御部20が表示部22に操作画面を表示させずに、例えば、複数の動作モードを選択することが可能なスイッチやボタンなどをユーザに報知する形態でもよい。
【0053】
また、制御部20は、表示部22に、染色部40により染色処理を行うか否かの選択をするための操作画面を表示する制御を行う。これにより、塗抹スライド11に対して染色処理を行うか否かをユーザが選択することができる。また、制御部20は、染色部40により染色処理を行わない選択操作がされた場合に、染色処理を行う動作モードを選択できない操作画面を、表示部22に表示する制御を行う。これにより、染色部40に染色液を溜めない状態において、処理可能な動作モードをユーザが容易に選択することができる。
【0054】
たとえば、制御部20は、染色処理を行う選択操作がされた場合に、図17に示すように、塗抹染色モード、塗抹モード、印字モード、染色モードを選択可能な操作画面を表示部22に表示する制御を行う。また、制御部20は、染色処理を行わない選択操作がされた場合に、図15に示すように、塗抹染色モード、染色モードは、選択できずに、印字モード、塗抹モードを選択可能な操作画面を表示部22に表示する制御を行う。
【0055】
また、制御部20は、染色部40により染色処理を行うか否かの選択をするための操作画面を表示せずに、直接動作モードを選択する操作画面を表示してもよい。この場合、染色部40により染色処理を行う、塗抹染色モード、染色モードが選択された場合に、染色部40に染色液を供給し、染色部40により染色処理を行わない、印字モード、塗抹モードが選択された場合に、染色部40に染色液を供給しないようにしてもよい。
【0056】
また、制御部20は、塗抹染色モード、塗抹モード、印字モード、染色モードを選択可能な操作画面を表示部22に表示した後に、染色部40により染色処理を行うか否かの選択をするための操作画面を表示してもよい。この場合、塗抹染色モード、染色モードが選択され、染色処理を行う選択操作がされた場合に、染色部40に染色液を供給し、印字モード、塗抹モードが選択され、染色処理を行わない選択操作がされた場合に、染色部40に染色液を供給しないようにしてもよい。
【0057】
また、制御部20は、染色処理を行う選択操作がされた場合に、塗抹染色モード、塗抹モードを選択可能な操作画面を表示部22に表示してもよい。また、制御部20は、染色処理を行わない選択操作がされた場合に、塗抹染色モード、染色モード、印字モードは、選択できずに、塗抹モードを選択可能な操作画面を表示部22に表示してもよい。
【0058】
(染色部および移送部の詳細な構成)
図5を参照して、染色部40および移送部180の構成を説明する。なお、以下の説明では、上下方向をZ方向という。
【0059】
染色部40は、染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47とを備える。塗抹標本作製装置100は、染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47とのそれぞれに対して染色液および洗浄液を供給し、また排出するための流体回路部50を備える。
【0060】
染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47とのそれぞれは、上側が開放された容器状をなしており、内部に染色液および洗浄液を溜めることができる。染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47とのそれぞれは、幅方向がX方向、厚さ方向がY方向の塗抹スライド11を挿入可能である。
【0061】
染色部40では、染色槽41、染色槽42、染色槽43、洗浄槽44、染色槽45、染色槽46、および洗浄槽47がY2方向に順番に並んでいる。
【0062】
染色槽41、42、43、45および46の内部には、板状の複数の保持部が、等間隔にY方向に並んでいる。保持部間の空間に、1枚の塗抹スライド11が挿入される。挿入された塗抹スライド11は、保持部によって幅方向の両端部分が支持され、立たせた状態を維持する。洗浄槽44および47も、塗抹スライド11を立たせた状態で保持可能である。
【0063】
塗抹スライド11は、染色槽41から順に各槽に搬送され、所定の設定時間の間、それぞれの槽に溜められた染色液または洗浄液に漬けられて処理される。
【0064】
移送部180は、染色部40およびスライド設置部170(図3参照)の上方(Z1方向)に配置される。移送部180は、第1移送部730および第2移送部740を含むことが好ましい。第1移送部730とは別に第2移送部740を設けることで、取出位置162(図3参照)から染色部40への塗抹スライド11の搬送と、染色部40からスライド収納部200(図3参照)への塗抹標本12の搬送とを別々に行うことができ、搬送効率が向上する。第1移送部730および第2移送部740のそれぞれは、移動機構181によって水平方向(即ち、X方向並びにY方向)に移動できる。
【0065】
移動機構181は、Y方向に延びたY軸レール751およびY軸スライダ752と、X方向に延びたX軸レール753およびX軸スライダ754と、Y軸モータ755およびX軸モータ756とを備える。Y軸モータ755およびX軸モータ756には、たとえば、ステッピングモータまたはサーボモータを採用できる。
【0066】
Y軸レール751は、支持部材757の下面に固定される。支持部材757は、塗抹標本作製装置100の筐体の天井部または支持用の梁部材等である。Y軸スライダ752は、Y軸レール751の下面側(Z2方向側)に取り付けられ、Y軸レール751に沿って移動できる。Y軸モータ755は、伝達機構を介してY軸スライダ752をY方向に移動させる。伝達機構には、たとえば、ベルトープーリ機構またはラックーピニオン機構等を採用できる。
【0067】
X軸レール753は、Y軸スライダ752の下面に固定される。X軸スライダ754は、X軸レール753の下面側(Z2方向側)に取り付けられ、X軸レール753に沿って移動できる。X軸モータ756は、伝達機構を介してX軸スライダ754をX方向に移動させる。
【0068】
Y軸スライダ752、X軸レール753、X軸スライダ754、X軸モータ756、およびY軸モータ755は、それぞれ一対設けられている。一方のX軸スライダ754の下面側に第1移送部730が取り付けられ、他方のX軸スライダ754の下面側に第2移送部740が取り付けられる。これにより、第1移送部730および第2移送部740は、個別のX軸レール753に沿って互いに独立してX方向に移動できる。また、第1移送部730および第2移送部740は、共通のY軸レール751に沿って互いに独立してY方向に移動できる。
【0069】
第1移送部730および第2移送部740の構成は共通である。第1移送部730および第2移送部740のそれぞれは、ハンド182と、ハンド182を昇降させるためのZ軸モータ761と、伝達機構762とを備える。Z軸モータ761は、伝達機構762を介してハンド182を昇降させる。伝達機構762には、たとえば、ベルトープーリ機構またはラックーピニオン機構等を採用できる。
【0070】
ハンド182は、1枚の塗抹スライド11を把持できる。図5では、一対の把持板763によって塗抹スライド11を厚さ方向に挟んで把持する構成の例を示している。一対の把持板763は、塗抹スライド11の表面と裏面とにそれぞれ接触して、塗抹スライド11を挟む。一対の把持板763は、塗抹スライド11の厚さ方向(Y方向)に相対的に移動できる。把持板763の移動は、たとえば、エアシリンダ、モータ、ソレノイドなどのアクチュエータを用いて実現できる。なお、ハンド182は、塗抹スライド11を幅方向に挟む構成であってもよい。
【0071】
第1移送部730は、染色槽41、染色槽42、染色槽43、および、洗浄槽44の各上方位置に移動できる。したがって、第1移送部730は、染色槽41、染色槽42、染色槽43、および、洗浄槽44のそれぞれに対して、塗抹スライド11を1枚ずつ挿入および抜き出しできる。
【0072】
また、第1移送部730は、取出位置162、および、スライド設置部170の各上方位置にも移動できる。したがって、第1移送部730は、取出位置162(図3参照)から塗抹スライド11を1枚抜き出しでき、また、スライド設置部170(図3参照)の塗抹スライド11を1枚ずつ挿入および抜き出しできる。
【0073】
第2移送部740は、洗浄槽44、染色槽45、染色槽46、および、洗浄槽47の各上方位置に移動できる。したがって、第2移送部740は、洗浄槽44、染色槽45、染色槽46、および、洗浄槽47のそれぞれに対して、塗抹スライド11を1枚ずつ挿入および抜き出しできる。
【0074】
また、第2移送部740は、第2乾燥部190、およびスライド収納部200(図3参照)の各上方位置にも移動できる。したがって、第2移送部740は、第2乾燥部190に対して、塗抹標本12を1枚ずつ挿入および抜き出しでき、また、スライド収納部200(図3参照)に塗抹標本12を1枚ずつ挿入できる。
【0075】
第1移送部730および第2移送部740のそれぞれは、並行して別々の塗抹スライド11または塗抹標本12を搬送できる。第1移送部730と第2移送部740とは、洗浄槽44において動作範囲が重複しており、洗浄槽44において塗抹スライド11の受け渡しが行われる。受け渡しの位置は、洗浄槽44以外でもよい。
【0076】
第2乾燥部190は、収容部771と、送風部772とを備える。収容部771は、上部が開口した容器であり、複数の塗抹標本12を立たせた状態で収容できる。送風部772は、収容部771の内部に送風することが可能である。送風部772が送風することで、収容部771に収容された染色済みの塗抹標本12が乾燥される。
【0077】
(スライドの搬送経路)
図6に示すように、スライド供給部110からスライド収納部200に至るスライド10、塗抹スライド11、塗抹標本12の搬送経路は、Y2方向の経路501、X1方向の経路502、Y1方向の経路503、X1方向の経路504、Y2方向の経路505、X1方向の経路506に沿う。染色処理が行われない場合、スライド供給部110からスライド設置部170までの搬送経路は、経路504の後で、Y1方向の経路507に沿う経路となる。スライド10、塗抹スライド11、塗抹標本12の搬送は、逆戻りすることなく、順方向のみにより完了する。
【0078】
(流体回路部)
図7に、染色部40の各染色槽41、42、43、45、46、洗浄槽44および47に染色液または洗浄液を供給する流体回路部50の概略を示す。
【0079】
流体回路部50は、メタノールチャンバ810と、第1染色液チャンバ820と、緩衝液チャンバ830と、第2染色液チャンバ840と、RO水チャンバ850と、第1希釈チャンバ860と、第2希釈チャンバ870と、を備える。また、流体回路部50は、ポンプ811、821、822、831、841、851を備える。また、流体回路部50は、バルブ812、813、814、823、824、825、832、833、834、835、836、842、852、853、854、861、862、863、864、871、872、873、874、875、876を備える。
【0080】
染色液は、ダイヤフラムポンプやシリンジポンプなどの定量型のポンプ811、821、822、841により定量されて染色槽41、42、43、45、46に供給される。染色液は、希釈染色液として供給される場合、第1希釈チャンバ860または第2希釈チャンバ870において染色液の原液と希釈液とが希釈チャンバに供給され、所定の濃度に希釈される。洗浄液は、定量型のポンプ831、851により定量されて洗浄槽44、47に供給される。
【0081】
流体回路部50は、メタノールチャンバ810に貯留されたメタノールを、バルブ812、813の開閉およびポンプ811の動作により、染色槽41に供給する。流体回路部50は、第1染色液チャンバ820に貯留された第1染色液の原液を、バルブ823、824の開閉およびポンプ821の動作により、染色槽42に供給する。第1染色液は、たとえば、メイグリュンワルド液またはライト液から選択される。流体回路部50は、第1染色液チャンバ820に貯留された第1染色液の原液と、緩衝液チャンバ830に貯留された緩衝液とを、それぞれバルブ826、832、861の開閉およびポンプ822の動作により、第1希釈チャンバ860に供給する。第1希釈チャンバ860において、第1染色液の希釈染色液が、定量される。流体回路部50は、バルブ862の切り替えにより陽圧源から第1希釈チャンバ860に陽圧を供給し、バルブ863を開閉することにより、第1希釈チャンバ860に貯留された第1染色液の希釈染色液を染色槽43に供給する。流体回路部50は、緩衝液チャンバ830に貯留された緩衝液を、バルブ834、835の開閉およびポンプ831の動作により、洗浄槽44に供給する。緩衝液(リン酸バッファ)は、染色液の希釈液としても、洗浄液としても用いられる。
【0082】
流体回路部50は、第2染色液チャンバ840に貯留された第2染色液の原液と、緩衝液チャンバ830に貯留された緩衝液とを、それぞれバルブ833、842、871の開閉およびポンプ841の動作により、第2希釈チャンバ870に供給する。第2染色液は、ギムザ液またはライト液から選択される。第2希釈チャンバ870において、第2染色液の希釈染色液が、定量される。流体回路部50は、バルブ872の切り替えにより陽圧源から第2希釈チャンバ870に陽圧を供給し、バルブ873、874を開閉することにより、第2希釈チャンバ870に貯留された第2染色液の希釈染色液を、染色槽45、または染色槽45および46の両方に供給する。流体回路部50は、RO水チャンバ850に貯留されたRO水(純水)を、バルブ852、853の開閉およびポンプ851の動作により、洗浄槽47に供給する。
【0083】
流体回路部50は、バルブ814の開閉により、染色槽41に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ825の開閉により、染色槽42に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ864の開閉により、染色槽43に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ836の開閉により、洗浄槽44に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ875の開閉により、染色槽45に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ876の開閉により、染色槽46に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。流体回路部50は、バルブ854の開閉により、洗浄槽47に貯留された液体を、廃液チャンバ880に排出させる。
【0084】
なお、流体回路部50は、染色部40の複数の染色槽41、42、43、45、46の各々へ、槽洗浄用の洗浄液を供給可能に構成されている。流体回路部50は、塗抹標本作製装置100のシャットダウン時等に、槽洗浄用の洗浄液を、染色槽41、42、43、45、46、洗浄槽44および47の各々に個別に供給できる。槽洗浄用の洗浄液としては、たとえば次亜塩素酸水溶液などが採用できる。また、洗浄液は、メタノールや希釈緩衝液などを採用してもよい。
【0085】
(メインフロー)
図8を参照して塗抹標本作製装置100の制御部20によるメインフローの処理を説明する。ユーザが塗抹標本作製装置100を起動すると、制御部20が図8に示したメインフローの処理を実行する。
【0086】
ステップS11において、制御部20は、起動時のモード選択を受け付けるスタンバイ状態に移行するように表示部22を制御する。すなわち、制御部20は、図14および図16に示す起動時のモード選択画面を表示部22に表示させる。起動時のモード選択画面では、染色槽ONと、染色槽OFFとを選択可能である。染色槽ONでは、染色部40により染色処理を行うことが可能である。一方、染色槽OFFでは、染色部40により染色処理を行うことはできない。ステップS12において、制御部20は、染色槽ONであるか否かを判断する。染色槽ONであれば、ステップS13に進み、染色槽OFFであれば、ステップS16に進む。ここで、ユーザによる染色槽ONの選択に応じて、染色処理を実行する動作モードが設定される。また、ユーザによる染色槽OFFの選択に応じて、染色処理を行わない動作モードが設定される。
【0087】
ステップS13において、制御部20は、染色部40の染色槽41、42、43、45、46に染色液を供給する染色液充填処理を行うように、流体回路部50を制御する。染色液充填処理により、染色槽41、42、43、45、46にそれぞれ染色液が供給される。なお、染色液を充填する処理は、ステップS14およびS15の処理と並行して行ってもよいし、ステップS15の後に行ってもよい。また、染色液を充填している際に、染色部40を使用しない、塗抹処理や印字処理を並行して行うことが可能であってもよい。
【0088】
染色液充填処理が完了すると、塗抹標本作製装置100は、ユーザのモード選択を受け付けるスタンバイ状態に移行する。すなわち、ステップS14において、制御部20は、図17に示すモード選択画面を表示部22に表示させる。染色槽ONの場合、モード選択画面は、塗抹染色モード、塗抹モード、印字モード、染色モードを選択可能である。ユーザが操作部21によりいずれかのモード選択を入力してOKを入力することにより、モード選択が受け付けられる。キャンセルが入力されるとモード選択画面の表示がキャンセルされ、メインメニュー画面に遷移する。図8のステップS15において、制御部20は、モード選択画面におけるユーザのモード選択操作を受け付ける。塗抹染色モードが選択されると、ステップS18に進み、染色モードが選択されると、ステップS19に進み、塗抹モードが選択されると、ステップS20に進み、印字モードが選択されるとステップS21に進む。
【0089】
ステップS16において、制御部20は、図15に示すモード選択画面を表示部22に表示させる。染色槽OFFの場合、モード選択画面は、塗抹モード、印字モードを選択可能である。ユーザが操作部21によりいずれかのモード選択を入力してOKを入力することにより、モード選択が受け付けられる。キャンセルが入力されるとモード選択画面の表示がキャンセルされ、メインメニュー画面に遷移する。図8のステップS17において、制御部20は、モード選択画面におけるユーザのモード選択操作を受け付ける。塗抹モードが選択されると、ステップS20に進み、印字モードが選択されるとステップS21に進む。
【0090】
ステップS18において、制御部20は、塗抹染色モードの動作制御を開始する。ステップS19において、制御部20は、染色モードの動作制御を開始する。ステップS20において、制御部20は、塗抹モードの動作制御を開始する。ステップS21において、制御部20は、印字モードの動作制御を開始する。
【0091】
実行したモードの動作が終了した後、シャットダウンボタンが入力されると、制御部20は、ステップS22において、シャットダウン処理を行い、処理を終了する。
【0092】
(塗抹染色モード)
図9を参照し、図8のステップS18に示した塗抹染色モードを説明する。
【0093】
塗抹染色モードが開始すると、ユーザは、塗抹標本作製装置100の所定位置に設けられたスタートボタンを押下することで、塗抹染色モードにおける動作の開始指示を塗抹標本作製装置100に与えることができる。ユーザは、検体容器を収容した検体ラックを検体搬送部210に設置し、スタートボタンを押下して塗抹染色モードの開始を指示する。制御部20は、塗抹染色モードの開始指示を受け付け、塗抹染色モードの動作を開始する。なお、動作開始指示の受け付けは、塗抹染色モード以外の、染色モード、塗抹モードおよび印字モードの各動作モードでも同様である。
【0094】
ステップS31において、制御部20は、ユーザが検体搬送部210に設置した検体容器から検体を吸引するように、検体搬送部210および吸引部220を制御する。
【0095】
制御部20は、検体搬送部210上の検体ラックに保持された1つの検体容器が取り込み位置に位置付けられるように、検体搬送部210を制御する。制御部20は、取り込み位置に搬送された検体容器中の検体を吸引するように、吸引部220を制御する。吸引部220により吸引された検体が、塗抹部30へ送られる。
【0096】
ステップS31と並行して、制御部20は、ステップS32~S35の処理を実行する。ステップS32において、制御部20は、未使用のスライド10をスライド供給部110から移送機構120上に送り出すように、スライド供給部110を制御する。そして、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、付着物除去部130まで移動するよう制御する。
【0097】
ステップS33において、制御部20は、付着物除去部130を動作させ、スライド10の表面の付着物を除去させる。ステップS34において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、印字部140まで移動するよう制御する。ステップS35において、制御部20は、スライド10の印字領域14に、検体情報を印字する印字処理を実行するよう印字部140を制御する。
【0098】
次に、ステップS36において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、塗抹部30まで移動するよう制御する。ステップS37において、制御部20は、スライド10の塗抹領域13に、検体を塗抹する塗抹処理を実行するよう塗抹部30を制御する。これにより、塗抹スライド11が作製される。
【0099】
次に、ステップS38において、制御部20は、印字および塗抹済みの塗抹スライド11を、塗抹部30から第1乾燥部150まで搬送するよう制御する。ステップS39において、制御部20は、塗抹スライド11の塗抹領域13に対して送風し、検体を乾燥させる処理を実行するよう第1乾燥部150を制御する。
【0100】
次に、ステップS40において、制御部20は、印字処理、塗抹処理および乾燥処理が行われた塗抹スライド11を、染色部40まで搬送させる制御を行う。具体的には、制御部20は、乾燥処理後の塗抹スライド11を、第1乾燥部150からスライド搬送部160に受け渡すように制御する。制御部20は、取出位置162へ塗抹スライド11を搬送するようスライド搬送部160を制御する。取出位置162に塗抹スライド11が到達すると、制御部20は、取出位置162の塗抹スライド11を把持してスライド搬送部160から取り出して、染色部40へ移送するように、移送部180の第1移送部730を制御する。これにより、塗抹スライド11が染色部40まで移送される。
【0101】
ステップS41において、制御部20は、染色部40による染色処理を実施するように、移送部180および流体回路部50を制御する。これにより、塗抹標本12が作製される。
【0102】
ステップS42において、制御部20は、染色処理後の塗抹スライド11である塗抹標本12を染色部40から第2乾燥部190へ移送するように、移送部180の第2移送部740を制御する。ステップS43において、制御部20は、塗抹標本12に対して送風し、塗抹標本12を乾燥させる処理を実行するよう第2乾燥部190を制御する。
【0103】
ステップS44において、制御部20は、乾燥済みの塗抹標本12を第2乾燥部190からスライド収納部200へ移送するように、第2移送部740およびスライド収納部200を制御する。
【0104】
以上により、未使用のスライド10に対して、印字処理、塗抹処理、染色処理が順次施され、作製された塗抹標本12(処理済みのスライド10)がスライド収納部200に収納される。また、制御部20は、順次吸引された検体を用いて未使用のスライド10に対する印字処理、塗抹処理、染色処理が順次実行されるように、上記の塗抹染色モードの処理を繰り返す。このため、染色部40における染色処理は、塗抹標本作製装置100の動作サイクルに応じた所定時間間隔で、移送部180により移送される各塗抹スライド11に対して1枚ずつ順番に実施される。
【0105】
(染色モード)
図10を参照し、図8のステップS19に示した染色モードを説明する。
【0106】
染色モードでは、ユーザは、塗抹済みの塗抹スライド11を収納したスライド収納容器をスライド設置部170に設置して、染色モードの動作開始の指示を入力する。染色モードが開始すると、制御部20は、ステップS51において、第1移送部730がスライド設置部170から搬送対象の塗抹スライド11を1枚ずつ取り出して染色部40へ移送するように、第1移送部730を制御する。
【0107】
ステップS52において、制御部20は、染色部40において、第1移送部730によって移送された塗抹スライド11に対して染色処理を施すように、第1移送部730および流体回路部50を制御する。これにより、塗抹標本12が作製される。
【0108】
ステップS53において、制御部20は、染色処理後の塗抹スライド11である塗抹標本12を染色部40から第2乾燥部190へ移送するように、移送部180の第2移送部740を制御する。ステップS54において、制御部20は、塗抹標本12に対して送風し、塗抹標本12を乾燥させる処理を実行するよう第2乾燥部190を制御する。
【0109】
ステップS55において、制御部20は、乾燥済みの塗抹標本12を第2乾燥部190からスライド収納部200へ移送するように、第2移送部740およびスライド収納部200を制御する。
【0110】
(塗抹モード)
図11を参照し、図8のステップS20に示した塗抹モードを説明する。
【0111】
塗抹モードでは、ユーザは、検体容器を収容した検体ラックを検体搬送部210に設置し、塗抹モードの動作開始の指示を入力する。塗抹モードが開始すると、ステップS61において、制御部20は、ユーザが検体搬送部210に設置した検体容器から検体を吸引するように、検体搬送部210および吸引部220を制御する。
【0112】
制御部20は、検体搬送部210上の検体ラックに保持された1つの検体容器が取り込み位置に位置付けられるように、検体搬送部210を制御する。制御部20は、取り込み位置に搬送された検体容器中の検体を吸引するように、吸引部220を制御する。吸引部220により吸引された検体が、塗抹部30へ送られる。
【0113】
ステップS61と並行して、制御部20は、ステップS62~S65の処理を実行する。ステップS62において、制御部20は、未使用のスライド10をスライド供給部110から移送機構120上に送り出すように、スライド供給部110を制御する。そして、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、付着物除去部130まで移動するよう制御する。
【0114】
ステップS63において、制御部20は、付着物除去部130を動作させ、スライド10の表面の付着物を除去させる。ステップS64において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、印字部140まで移動するよう制御する。ステップS65において、制御部20は、スライド10の印字領域14に、検体情報を印字する印字処理を実行するよう印字部140を制御する。
【0115】
次に、ステップS66において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、塗抹部30まで移動するよう制御する。ステップS67において、制御部20は、スライド10の塗抹領域13に、検体を塗抹する塗抹処理を実行するよう塗抹部30を制御する。これにより、塗抹スライド11が作製される。
【0116】
次に、ステップS68において、制御部20は、印字および塗抹済みの塗抹スライド11を、塗抹部30から第1乾燥部150まで搬送するよう制御する。ステップS69において、制御部20は、塗抹スライド11の塗抹領域13に対して送風し、検体を乾燥させる処理を実行するよう第1乾燥部150を制御する。
【0117】
次に、ステップS70において、制御部20は、印字処理、塗抹処理および乾燥処理が行われた塗抹スライド11を、スライド収納部200まで搬送させる制御を行う。具体的には、制御部20は、乾燥処理後の塗抹スライド11を、第1乾燥部150からスライド搬送部160に受け渡すように制御する。制御部20は、取出位置162へ塗抹スライド11を搬送するようスライド搬送部160を制御する。取出位置162に塗抹スライド11が到達すると、制御部20は、取出位置162の塗抹スライド11を把持してスライド搬送部160から取り出して、スライド収納部200へ移送するように、移送部180の第1移送部730を制御する。
【0118】
(印字モード)
図12を参照し、図8のステップS21に示した印字モードを説明する。
【0119】
印字モードでは、ユーザは、印字モードの動作開始の指示を入力する。印字モードが開始すると、制御部20は、ステップS71において、未使用のスライド10をスライド供給部110から移送機構120上に送り出すように、スライド供給部110を制御する。そして、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、付着物除去部130まで移動するよう制御する。
【0120】
ステップS72において、制御部20は、付着物除去部130を動作させ、スライド10の表面の付着物を除去させる。ステップS73において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、印字部140まで移動するよう制御する。ステップS74において、制御部20は、スライド10の印字領域14に、検体情報を印字する印字処理を実行するよう印字部140を制御する。
【0121】
次に、ステップS75において、制御部20は、スライド10を保持する移送機構120を、塗抹部30まで移動するよう制御する。なお、この場合、塗抹部30では、塗抹処理は行われない。ステップS76において、制御部20は、印字済みのスライド10を、塗抹部30から第1乾燥部150まで搬送するよう制御する。なお、この場合、第1乾燥部150では、乾燥処理は行われない。
【0122】
次に、ステップS77において、制御部20は、印字処理が行われたスライド10を、スライド収納部200まで移送させるように第2移送部740を制御する。具体的には、制御部20は、スライド10を、第1乾燥部150からスライド搬送部160に受け渡すように制御する。制御部20は、取出位置162へスライド10を搬送するようスライド搬送部160を制御する。取出位置162にスライド10が到達すると、制御部20は、取出位置162のスライド10を把持してスライド搬送部160から取り出して、スライド収納部200へ移送するように、移送部180の第1移送部730を制御する。
【0123】
(シャットダウン処理)
次に、図13を参照して、図8のステップS22に示したシャットダウン処理における、洗浄動作の制御処理について説明する。
【0124】
ステップS81において、制御部20は、染色部40を使用したか否かを判断する。つまり、制御部20は、染色部40に染色液を貯めたか否かを判断する。染色部40を使用していれば、ステップS82に進み、染色部40を使用していなければ、洗浄動作の制御処理が終了される。
【0125】
ステップS82において、制御部20は、染色部40の全ての槽の液体を排出させるように、流体回路部50を制御する。制御部20は、染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47との各々と、廃液チャンバ880との間のバルブ814、825、864、836、875、876、854を開放させて、槽内の液体を廃液チャンバ880に排出させる。
【0126】
ステップS83において、制御部20は、染色処理に使用する染色槽を特定する。つまり、制御部20は、塗抹標本作製装置100がシャットダウン処理を実行するまでに、複数の染色槽41、42、43、45および46のうちで、染色処理に使用された染色槽と、染色処理に使用されなかった染色槽とを特定する。
【0127】
ステップS84において、制御部20は、複数の染色槽41、42、43、45および46のうち、染色処理に使用された染色槽に対して、槽洗浄用の洗浄液を供給するように、流体回路部50を制御する。一方、制御部20は、複数の染色槽41、42、43、45および46のうち、染色処理に使用しない染色槽に対しては洗浄液を供給しない。
【0128】
その後、ステップS85において、制御部20は、供給した洗浄液を、染色部40の各槽から排出させるように、流体回路部50を制御する。制御部20は、染色槽41、42、43、45および46と、洗浄槽44および47との各々と、廃液チャンバ880との間のバルブ814、825、864、836、875、876、854を開放させて、槽内の洗浄液を廃液チャンバ880に排出させる。その後、シャットダウン処理における洗浄動作の制御処理が終了する。
【0129】
(付記事項)
以下、動作モードの選択受付について変形例を含めて説明する。
【0130】
本実施形態に係る複数の動作モードで動作する検体処理装置は、検体の処理を行う検体処理部と、制御部とを備える。
【0131】
図18を参照して検体処理装置の制御部によるメインフローの処理を説明する。ユーザが検体処理装置を起動すると、制御部が図18に示したメインフローの処理を実行する。
【0132】
ステップS91において、制御部は、図19に示す起動時のモード選択画面を表示するように表示部を制御している。起動時のモード選択画面は、塗抹染色モード、塗抹モード、印字モード、染色モードの複数の動作モードのうち、いずれかの動作モードを選択可能な状態を示している。なお、ステップS91は、図8のステップS11に対応している。
【0133】
ステップS92において、制御部は、選択画面を介して、複数の動作モードの選択受付を実行するように構成されている。選択受付が実行されると、ステップS93において、制御部は、塗抹染色モード、塗抹モード、印字モード、染色モードの複数の動作モードのうち、いずれかの動作モードの選択をユーザから受け付ける。なお、ステップS93は、図8のステップS12に対応している。
【0134】
塗抹モード、印字モードの動作モードが選択された場合は、ステップS94に進み、塗抹染色モード、染色モードの動作モードが選択された場合は、ステップS95に進む。なお、ステップS94は図8のステップS14に対応しており、ステップS95は図8のステップS16に対応している。
【0135】
ステップS94において、制御部は、図20に示すモード選択画面を表示するように表示部を制御している。ステップS94において表示されたモード選択画面では、染色槽ON、染色槽OFFの動作モードのうち、どちらかの選択をユーザから受け付けることが可能である。
【0136】
ステップS95において、制御部は、図21に示すモード選択画面を表示するように表示部を制御する。ステップS95において表示されたモード選択画面では、染色槽ONの動作モードのみの選択をユーザから受け付けることが可能であり、染色槽OFFの動作モードの選択ができないようにグレーアウトしてユーザからの選択を禁止している。
【0137】
以上により、制御部は、複数の動作モードの選択を提示する第1提示ステップを実行し、提示した複数の動作モードの中から第1動作モードが選択された場合、第1動作モードに関連する複数の動作モードの選択を提示する第2提示ステップを実行し、提示した複数の動作モードの中から第2動作モードが選択された場合、第1動作モードに関連する複数の動作モードの少なくとも一つの動作モードの選択を禁止して提示する第3提示ステップを実行するように構成されている。
【0138】
ここで、「提示」とは、制御部が検体処理装置の各部の動作を制御する際に実行されるプログラムが実行する処理であり、その一例が上述した表示部にモード選択画面を表示する処理である。なお、「提示」は、表示部に表示させるモード選択画面のような画面表示処理に限られず、音声による通知などの報知処理であってもよい。
【0139】
また、「禁止」とは、制御部が検体処理装置の各部の動作を制御する際に実行されるプログラムが実行する処理であり、その一例が上述した染色OFFの動作モードが選択できないようにグレーアウトしてユーザからの選択を禁止する処理である。なお、「禁止」は、グレーアウトしてユーザからの選択を禁止する処理に限られず、動作モードの選択肢を表示部に表示させない処理であってもよい。
【0140】
このような構成とすることにより、選択された動作モードに応じて、適切な動作モードの選択ができるので、ユーザによる操作性を向上させることができる。
【0141】
なお、本実施形態の説明に際しては、検体処理装置の検体処理部としては、検体をスライドに塗抹して塗抹スライドを作製する塗抹部と、複数の塗抹スライドを収容可能であり、収容された塗抹スライド上の検体を染色する染色液を溜めて染色処理を行う染色部と、染色部に染色液の供給を行う流体回路部と、を備えている。
【0142】
本実施形態の変形例である免疫測定装置の場合、図14および図16に示した染色槽ONの動作モードである第1動作モードと染色槽OFFの動作モードである第2動作モードの代わりに、化学発光酵素免疫測定法と免疫複合体転移法を組み合わせた免疫複合体転移-化学発光酵素免疫測定法(ICT-CLEIA(Immune Complex Transfer Chemiluminescent Enzyme Immunoassay)法)測定を行うICT-CLEIA測定モードである第1動作モードと化学発光酵素免疫測定法(CLEIA(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay)法)によって測定を行うCLEIA測定モードである第2動作モードのどちらか一方の動作モードの選択を提示する第1提示ステップを実行するように構成されている。具体的には、制御部は、図22に示すモード選択画面を表示するように表示部を制御している。このモード選択画面では、ICT-CLEIA測定モードである第1動作モードとCLEIA測定モードである第2動作モードとの動作モードのうち、どちらかの選択をユーザから受け付けることが可能である。
【0143】
制御部は、ICT-CLEIA測定モードである第1動作モードが選択された場合、CLEIA測定モードである第1動作モードに関連する測定項目が選択できる動作モードの選択を提示する第2提示ステップを実行するように構成されている。具体的には、制御部は、図23に示すモード選択画面を表示するように表示部を制御している。この選択画面では、A項目、B項目、C項目、D項目の測定項目が選択できる動作モードのうち、いずれかの選択をユーザから受け付けることが可能である。ここで、測定項目は、たとえば、HIV抗体、HA抗体、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体、梅毒抗体などの測定項目を含む。
【0144】
制御部は、CLEIA測定モードである第2動作モードが選択された場合、ICT-CLEIA測定モードである第1動作モードで選択できるA項目、B項目の測定項目の選択を禁止して提示する第3提示ステップを実行するように構成されている。第3提示ステップでは、A項目、B項目の測定項目の選択を禁止して提示するが、C項目、D項目の測定項目の選択を提示するように構成されている。具体的には、制御部は、図24に示すモード選択画面を表示するように表示部を制御している。図24に示すモード選択画面では、C項目、D項目の測定項目のみの選択をユーザから受け付けることが可能であり、A項目、B項目の測定項目の選択ができないようにグレーアウトしてユーザからの選択を禁止している。
【0145】
このような構成とすることにより、選択された動作モードに応じて、適切な動作モードの選択ができるので、ユーザによる操作性を向上させることができる。
【0146】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0147】
10:スライド、11:塗抹スライド、20:制御部、30:塗抹部、40:染色部、50:流体回路部、100:塗抹標本作製装置、180:移送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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