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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024637
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】情報出力装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/20 20200101AFI20230209BHJP
   B62J 45/421 20200101ALI20230209BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20230209BHJP
【FI】
B62J45/20
B62J45/421
B62J50/22
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205075
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2021208400の分割
【原出願日】2015-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】三岡 信夫
(72)【発明者】
【氏名】児玉 泰輝
(57)【要約】
【課題】ペダルに加えられている荷重位置を出力することができる情報出力装置を提供する。
【解決手段】ひずみゲージ369が、自転車1のクランク105の内面119に設けられ、クランク105に生じるひずみを検出して、サイクルコンピュータ表示部201が、第1ひずみゲージ369a~第6ひずみゲージ369fの出力値に基づいて算出された、接線力Tと、ねじれトルクKと、に基づいて、クランク105に連結されたペダル103に加えられた荷重中心位置を示す画像を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出するひずみ検出手段と、
前記ひずみ検出手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、を表示する出力手段と、を備え、
前記出力手段は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示する、
ことを特徴とする情報出力装置。
【請求項2】
前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクに基づいて表示されることを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、前記クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、に基づいて表示されることを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記ペダルの中心に対する前記荷重の中心位置のずれを表示する、ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項5】
前記基準としての荷重の中心位置は、荷重をかけるべき位置として推奨される位置であることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項6】
前記基準としての荷重の中心位置は、前記人力機械の形状、前記クランクの形状又は運転者の体格に基づいて、変更可能であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項7】
前記基準としての荷重の中心位置は、前記ペダルの中心位置であることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項8】
表示される前記基準としての荷重の中心位置及び前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、足型形状であることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項9】
表示される前記基準としての荷重の中心位置及び前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、互いに重ね合わせて表示可能であることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項10】
前記互いに比較可能な態様は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置が、前記基準としての荷重の中心位置からずれている方向を判断可能な態様であることを特徴とする請求項1から9のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【請求項11】
人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出するひずみ検出手段を備える情報出力装置のコンピュータに実行させる情報出力プログラムであって、
前記クランクに設けられた前記ひずみ検出手段から情報を受信する工程と、
前記ひずみ検出手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置とを出力手段を介して表示する工程と、
を前記コンピュータに実行させ、
前記表示する工程は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示することをさらに前記コンピュータに実行させる、
ことを特徴とする情報出力プログラム。
【請求項12】
前記表示する工程は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクに基づいて、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置を表示することを特徴とする請求項11に記載の情報出力プログラム。
【請求項13】
前記表示する工程は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、前記クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、に基づいて前記ペダルに加えられた荷重の中心位置を表示することを特徴とする請求項11に記載の情報出力プログラム。
【請求項14】
前記表示する工程は、前記ペダルの中心に対する前記荷重の中心位置のずれを表示する、ことを特徴とする請求項11から13のうちいずれか一項に記載の情報出力プログラム。
【請求項15】
人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出する手段と、
前記ひずみを検出する手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、を表示する手段と、を備え、
前記表示する手段は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示する、
ことを特徴とする情報出力装置。
【請求項16】
前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクに応じて前記表示する手段によって表示されることを特徴とする請求項15に記載の情報出力装置。
【請求項17】
前記ペダルに加えられた荷重の中心位置は、前記クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、前記クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、に応じて前記表示する手段によって表示されることを特徴とする請求項15に記載の情報出力装置。
【請求項18】
前記ペダルの中心に対する前記荷重の中心位置のずれを表示する、ことを特徴とする請求項15から17のうちいずれか一項に記載の情報出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクを備えた人力機械に加わっている力等に関する情報を出力する情報出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車に装着され、自転車の走行に関する情報や運転者の運動に関する情報等を算出し表示する装置がある。この種の装置は、自転車に設けられたセンサからデータを受信することによって、所定の情報を算出し表示する。表示する情報としては、運転者がペダルに加える力(トルク等)が挙げられる。そして、この種の力の測定方法としては、例えば、特許文献1には、クランク軸のひずみを測定し、クランクにかかるトルクを検知する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、クランク内部に圧電センサを埋め込み、クランクのひずみにより発生する電圧によってトルクを測定する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献1は、定置式自転車型健康機(自転車エルゴメータ、フィットネスバイクとも称される)においても適用できることが記載されている。
【0005】
このように、クランクを備えた人力機械において、クランクにかかるひずみを検出することにより、トルクを測定して、運動量等を算出することが既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-35567号公報
【特許文献2】特開2009-6991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献には、クランクに加えられた力等を数値等で表示することは開示されている。しかしながら、これらの力等は人力機械の乗車姿勢(フォーム)によって変化することが知られている。例えば、クランクに連結されているペダルに加える荷重位置が適切でないと体に負担がかかったり、効率のよいペダリングを行うことができない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、例えば、ペダルに加えられている荷重位置を出力することができる情報出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出するひずみ検出手段と、前記ひずみ検出手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、を表示する出力手段と、を備え、前記出力手段は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項11に記載された発明は、人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出するひずみ検出手段を備える情報出力装置のコンピュータに実行させる情報出力プログラムであって、前記クランクに設けられた前記ひずみ検出手段から情報を受信する工程と、前記ひずみ検出手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置とを出力手段を介して表示する工程と、を前記コンピュータに実行させ、前記表示する工程は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示することをさらに前記コンピュータに実行させる、ことを特徴とする。
【0011】
請求項15に記載された発明は、人力機械のクランクに設けられ、前記クランクに生じるひずみを検出する手段と、前記ひずみを検出する手段の出力値に基づいて、前記クランクに連結されたペダルに加えられた荷重と、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、を表示する手段と、を備え、前記表示する手段は、前記ペダルに加えられた荷重の中心位置と、基準としての荷重の中心位置と、を互いに比較可能な態様で表示する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例にかかる情報出力装置が設置される自転車の全体構成を示す説明図である。
図2図1に示されたサイクルコンピュータ、測定モジュール及びケイデンスセンサの位置関係を示した説明図である。
図3図1に示されたサイクルコンピュータ、測定モジュール及びケイデンスセンサのブロック構成図である。
図4図3に示されたひずみゲージのクランクへの配置の説明図である。
図5図3に示された測定モジュールひずみ検出回路の回路図である。
図6】右側クランクに加わる力と変形の説明図である。
図7】第1ひずみゲージと第2ひずみゲージが曲げ変形xにより変形する場合の説明図である。
図8】第1状態の説明図である。
図9】第2状態の説明図である。
図10】第3状態の説明図である。
図11図1に示されたサイクルコンピュータ表示部への表示例の説明図である。
図12図3に示されたケイデンスセンサの処理のフローチャートである。
図13図3に示された測定モジュール及びサイクルコンピュータの処理のフローチャートである。
図14】本発明の第2の実施例にかかる情報出力装置のひずみゲージのクランクへの配置の説明図である。
図15】他の実施例にかかるサイクルコンピュータ、測定モジュール及びケイデンスセンサのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる情報出力装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる情報出力装置は、ひずみ検出手段が、人力機械のクランクの側面に設けられ、クランクに生じるひずみを検出して、出力手段が、ひずみ検出手段の出力値に基づいて算出された、クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、に基づいて、クランクに連結されたペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報を出力する。このようにすることにより、クランクに設けられたひずみ検出手段の検出結果からペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報を算出して出力することができるため、この情報に基づいて効率のよいペダリング等を行うことが可能となる。
【0014】
また、ひずみ検出手段は、人力機械が左右一対に備えるクランクの側面にそれぞれ設けられ、出力手段は、左右それぞれのクランクに連結されたペダルに加える荷重の中心位置に関する情報を並べて表示されるように出力してもよい。このようにすることにより、ユーザ等は左右のペダリングバランス等を比較して確認することができ、ペダリングフォーム等の改善に役立てることができる。
【0015】
また、出力手段は、ひずみ検出手段が検出したペダルに加えられた荷重の中心位置に予め基準として設定された荷重の中心位置を比較可能な態様で出力してもよい。このようにすることにより、例えばユーザ等が、自身のペダリングにおける荷重中心と適切なペダリングにおける荷重中心とを比較することができ、ペダリングフォーム等の改善に役立てることができる。
【0016】
また、ひずみ検出手段は、クランクに生じる接線方向へ変形するひずみを検出する第1ひずみゲージ部と、クランクに生じる当該クランクのねじれ方向へ変形するひずみを検出する第2ひずみゲージ部と、を含む複数のひずみゲージ部を有している。そして、複数のひずみゲージ部は、それぞれのひずみゲージ部がひずみを検出する方向へのクランクの変形量に応じた電圧値を出力するようにしてもよい。このようにすることにより、複数のひずみゲージ部の出力電圧値によって、クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力とクランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクとを算出することができる。
【0017】
また、クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力及びクランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクは、複数のひずみゲージ部が出力する電圧値を所定の多項式に代入することにより算出されてもよい。このようにすることにより、例えば、CPU等を用いた演算により算出することができる。
【0018】
また、所定の多項式の各項の係数は、クランクの中心軸から第1距離だけ離れたペダル上の位置に予め定めた荷重を加えた第1状態において、クランクに加わる第1基準ねじれトルクと、クランクの中心軸から第1距離とは異なる第2距離だけ離れたペダル上の位置に予め定めた荷重を加えた第2状態において、クランクに加わる第2基準ねじれトルクと、第1状態および第2状態のそれぞれにおいて複数のひずみゲージ部が出力する電圧値と、に基づいて予め設定されていてもよい。このようにすることにより、既知の数値で算出可能な第1基準ねじれトルク、第2基準ねじれトルク及び第1基準ねじれトルク、第2基準ねじれトルク算出時のひずみゲージ部の出力電圧値に基づいて予め係数を算出することができる。従って、ひずみゲージ部で実測された値を多項式に代入するだけでクランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力及びクランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクを算出することができる。また、クランクに合わせて係数を変更することができるため、クランク合わせて精度良くクランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力及びクランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクを算出することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態にかかる情報出力方法は、算出工程で、ランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、をひずみ検出手段の出力値に基づいて算出して、出力工程で、算出工程で算出されたクランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力と、クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルクと、に基づいて、クランクに連結されたペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報を出力する。このようにすることにより、クランクに設けられたひずみ検出手段の検出結果からペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報を算出して出力することができるため、この情報に基づいて効率のよいペダリング等を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかる情報出力プログラムは、上述した情報出力方法を、コンピュータにより実行させる。このようにすることにより、コンピュータを用いて、クランクに設けられたひずみ検出手段の検出結果からペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報を算出して出力することができるため、この情報に基づいて効率のよいペダリング等を行うことが可能となる。
【0021】
また、上述した情報出力プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0022】
本発明の第1の実施例にかかる情報出力装置としてのサイクルコンピュータ201及び測定モジュール301を備えた自転車1を図1乃至図9を参照して説明する。自転車1は図1に示すように、フレーム3と、フロント車輪5と、リア車輪7と、ハンドル9と、サドル11と、フロントフォーク13と、駆動機構101と、を有している。
【0023】
フレーム3は、2つのトラス構造から構成されている。フレーム3は、後方の先端部分において、リア車輪7と回転自在に接続されている。また、フレーム3は、フレーム3の前方において、フロントフォーク13が回転自在に接続されている。
【0024】
フロントフォーク13は、ハンドル9と接続されている。フロントフォーク13の下方向の先端位置において、フロントフォーク13とフロント車輪5とは回転自在に接続されている。
【0025】
フロント車輪5は、ハブ部、スポーク部及びタイヤ部を有している。ハブ部はフロントフォーク13と回転自在に接続されている。そして、このハブ部とタイヤ部はスポーク部によって接続されている。
【0026】
リア車輪7は、ハブ部、スポーク部及びタイヤ部を有している。ハブ部はフレーム3と回転自在に接続されている。そして、このハブ部とタイヤ部はスポーク部によって接続されている。リア車輪7のハブ部は、後述するスプロケット113と接続されている。
【0027】
自転車1は、ユーザ(運転者)の足による踏み込み力を自転車1の駆動力に変換する駆動機構101を有している。駆動機構101は、ペダル103、クランク機構104、チェーンリング109、チェーン111、スプロケット113と、を有している。
【0028】
ペダル103は、ユーザが踏み込むための足と接する部分である。ペダル103は、クランク機構104のペダルクランク軸115によって回転自在となるように支持されている。
【0029】
クランク機構104は、クランク105とクランク軸107及びペダルクランク軸115(図2および図6参照)から構成されている。
【0030】
クランク軸107はフレーム3を左右方向に(自転車側面の一方から他方に)貫通している。クランク軸107は、フレーム3によって回転自在に支持されている。
【0031】
クランク105は、クランク軸107と直角に設けられている。クランク105は、一端部において、クランク軸107と接続されている。
【0032】
ペダルクランク軸115は、クランク105と直角に設けられている。ペダルクランク軸115の軸方向は、クランク軸107と同一方向となっている。ペダルクランク軸115は、クランク105の他端部においてクランク105と接続されている。
【0033】
クランク機構104は、このような構造を自転車1の側面の反対側にも有している。つまり、クランク機構104は、2個のクランク105及び、2個のペダルクランク軸115を有している。したがって、ペダル103も自転車1の両側面にそれぞれ有している。
【0034】
これらが自転車1の右側にあるか左側にあるかを区別する場合には、それぞれ右側クランク105R、左側クランク105L、右側ペダルクランク軸115R、左側ペダルクランク軸115L、右側ペダル103R、左側ペダル103Lと記載する。
【0035】
また右側クランク105Rと左側クランク105Lは、クランク軸107を中心として反対方向に延びるように接続されている。右側ペダルクランク軸115R、クランク軸107および左側ペダルクランク軸115Lは、平行かつ同一平面に形成されている。右側クランク105R及び左側クランク105Lは、平行かつ同一平面上に形成されている。
【0036】
チェーンリング109は、クランク軸107に接続されている。チェーンリング109は、ギア比を変化させることができる可変ギアで構成されると好適である。また、チェーンリング109にはチェーン111が係合されている。
【0037】
チェーン111はチェーンリング109及びスプロケット113に係合している。スプロケット113は、リア車輪7と接続されている。スプロケット113は、可変ギアで構成されると好適である。
【0038】
自転車1は、このような駆動機構101によってユーザの踏み込み力をリア車輪の回転力に変換している。
【0039】
自転車1は、サイクルコンピュータ201と、測定モジュール301と、ケイデンスセンサ501と、を有している。
【0040】
サイクルコンピュータ201は、ハンドル9に配置されている。サイクルコンピュータ201は、図2に示すように、各種情報を表示するサイクルコンピュータ表示部203およびユーザの操作を受けるサイクルコンピュータ操作部205を有している。
【0041】
サイクルコンピュータ表示部203に表示される各種情報とは、自転車1の速度、位置情報、目的地までの距離、目的地までの予測到達時間、出発してからの移動距離、出発してからの経過時間、推進力、損失力及びペダル103に加えられている荷重中心位置等である。
【0042】
ここで、推進力とはクランク105の回転方向に加わる力、即ち、クランク105の回転運動により定義される円の接線方向に働く力の大きさである。一方、損失力とは、クランク105の回転方向とは別の方向に加わる力の大きさである。この回転方向とは別の方向に加わる力は、何ら自転車1の駆動に寄与しない無駄な力である。したがって、ユーザは、推進力をできるだけ増加させ、損失力をできるだけ減少させることによって、より効率的に自転車1を駆動させることが可能となる。
【0043】
サイクルコンピュータ操作部205は、図2では押しボタンで示されているが、それに限らず、タッチパネルなど各種入力手段や複数の入力手段を組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、サイクルコンピュータ201は、サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207及びサイクルコンピュータ無線受信部209を有している。サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207及びサイクルコンピュータ無線受信部209は、配線を介してサイクルコンピュータ201の本体部分と接続されている。なお、サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207及びサイクルコンピュータ無線受信部209は、受信のみの機能を有する必要はない。例えば、送信部としての機能を有していても良い。以下、送信部又は受信部と記載した装置も、受信機能及び送信機能の両方を有していても良い。
【0045】
ケイデンスセンサ501は、クランク105に設けられた磁石503の接近を検出する磁気センサ505を有している(図3参照)。磁気センサ505は、接近する磁石503によってONになることで、磁石503の位置を検出する。つまり、磁気センサ505がONになるということは、磁気センサ505が存在する位置にクランク105も存在することとなる。このケイデンスセンサ501から、サイクルコンピュータ201は、ケイデンス[rpm]を得ることができる。
【0046】
測定モジュール301は、クランク105の内面に設けられ、複数のひずみゲージ素子から構成されるひずみゲージ369(図3及び図4参照)を用いて、ペダル103にユーザが加えている人力を検出する。具体的には、クランク105の回転力であって自転車1の駆動力となる推進力と、回転方向とは別の方向に加わる力である損失力と、ペダル103に加えられている荷重中心位置等を算出する。
【0047】
図3は、サイクルコンピュータ201、測定モジュール301及びケイデンスセンサ501のブロック図である。
【0048】
まず、ケイデンスセンサ501のブロック構成を説明する。ケイデンスセンサ501は、磁気センサ505、ケイデンスセンサ無線送信部507、ケイデンスセンサ制御部551、ケイデンスセンサ記憶部553、ケイデンスセンサタイマ561を有している。
【0049】
磁気センサ505は、磁石503が接近することによってON/OFFが切り替わる。そして、磁気センサ505がONとなると、磁気センサ505はその旨の情報信号をケイデンスセンサ制御部551に出力する。
【0050】
ケイデンスセンサ無線送信部507は、ケイデンスセンサ記憶部553に記憶されているケイデンス情報を、サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207に送信している。このケイデンスセンサ無線送信部507による送信は、ケイデンスセンサタイマ561によって命令されることによって例えば1秒ごとに行われている。または、ケイデンスセンサタイマ561の値に基づいた判断がケイデンスセンサ制御部551によって行われ、その判断に基づいて、このケイデンスセンサ無線送信部507による送信がケイデンスセンサ制御部551の命令によって行われても良い。
【0051】
ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサ501を包括的に制御している。ケイデンスセンサ制御部551は、磁気センサ505がONとなった旨の情報信号の出力を受けると、以下の動作を行う。ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサタイマ561にタイマ値情報の出力を命令する。そして、ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサタイマ561からタイマ値情報を受けると、そのタイマ値情報からケイデンスを算出する。具体的には、タイマ値情報のカウント数(C)と1度のカウント間隔(T0)を掛け合わせることによって、磁気センサ505がONとなる時間(周期)[秒]を算出する。そして、60をこの周期で割ることによって、ケイデンス[rpm]を算出する。
【0052】
さらに、ケイデンスセンサ制御部551は、このケイデンス情報をケイデンスセンサ記憶部553のケイデンスセンサRAM555(後述する)に記憶させる。また、ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサタイマ561にカウンタ値のリセット命令を出力する。ケイデンスセンサ制御部551は、例えば1秒間の間隔で、ケイデンスセンサ無線送信部507にケイデンスセンサ記憶部553に記憶されているケイデンス情報を送信させても良い。
【0053】
ケイデンスセンサ記憶部553には、各種情報が記憶される。各種情報とは、例えば、ケイデンスセンサ制御部551の制御プログラム、ケイデンスセンサ制御部551が制御する際に必要とされる一時的な情報である。特に本実施形態では、磁気センサ505がONとなる間隔であるケイデンスセンサタイマ561のタイマ値を記憶している。なお、ケイデンスセンサ記憶部553は、ケイデンスセンサRAM555及びケイデンスセンサROM557から構成されている。ケイデンスセンサRAM555にはタイマ値等が記憶され、ケイデンスセンサROM557には制御プログラム等が記憶される。
【0054】
ケイデンスセンサタイマ561は、タイマカウンタであり所定周期を有するクロックを常時カウントしている。ケイデンスセンサタイマ561は、ケイデンスセンサ制御部551の値出力命令を受けると、タイマ値情報をケイデンスセンサ制御部551に出力する。また、ケイデンスセンサタイマ561は、ケイデンスセンサ制御部551のリセット命令を受けると、タイマカウンタの値を初期値にリセットする。さらに、ケイデンスセンサタイマ561は、ケイデンスセンサ無線送信部507に、送信のタイミングを命令する役割をも有している。具体的には、例えば1秒ごとに、ケイデンスセンサ無線送信部507に送信タイミングを指令している。
【0055】
次に、測定モジュール301のブロック構成を説明する。測定モジュール301は、図3に示したように、測定モジュール無線送信部309、測定モジュールタイマ361、測定モジュール制御部351、測定モジュール記憶部353、測定モジュールA/D363、測定モジュールひずみ検出回路365及びひずみゲージ369を有している。
【0056】
測定モジュール無線送信部309は、測定モジュール制御部351がひずみ情報から算出した推進力、損失力及びペダル103に加えられている荷重中心位置等を、サイクルコンピュータ無線受信部209に送信している。この測定モジュール無線送信部309による送信は、測定モジュールタイマ361によって命令されることによって例えば1秒ごとに行われている。または、測定モジュールタイマ361の値に基づいて測定モジュール制御部351が命令を出力することによって送信しても良い。
【0057】
測定モジュールタイマ361は、タイマカウンタであり所定周期を有するクロックを常時カウントしている。さらに、測定モジュールタイマ361は、測定モジュール無線送信部309に、送信のタイミングを命令する役割をも有している。具体的には、例えば、1秒ごとに、測定モジュール無線送信部309に送信タイミングを指令している。
【0058】
測定モジュール制御部351は、測定モジュール301を包括的に制御している。測定モジュール制御部351は、ひずみ情報から推進力、損失力及びペダル103に加えられている荷重中心位置等を算出する。算出方法は後述する。
【0059】
測定モジュール記憶部353には、各種情報が記憶される。各種情報とは、例えば、測定モジュール制御部351の制御プログラム、及び、測定モジュール制御部351が制御を行う際に必要とされる一時的な情報である。特に本実施例では、ひずみ情報を記憶している。なお、測定モジュール記憶部353は、測定モジュールRAM355及び測定モジュールROM357から構成されている。測定モジュールRAM355にはひずみ情報等が記憶される。測定モジュールROM357には制御プログラム、及び、ひずみ情報から推進力、損失力及びペダル103に加えられている荷重中心位置を算出するための各種のパラメータ、定数、等が記憶される。
【0060】
ひずみゲージ369は、クランク105に接着されて、一体化される。ひずみゲージ369は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369d、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fから構成されている。そして、ひずみゲージ369のそれぞれの端子は、測定モジュールひずみ検出回路365に接続されている。なお、ひずみゲージ369は、左右のクランク105に設けるに限らず、片側のクランク105だけに設けてもよい。
【0061】
図4に、本実施例におけるひずみゲージ369のクランク105への配置を示す。ひずみゲージ369は、クランク105の内面119に接着されている。クランク105の内面とは、クランク軸107が突設されている(接続されている)面であり、クランク105の回転運動により定義される円を含む平面と平行な面(側面)である。また、図4には図示しないが、クランク105の外面120は、内面119と対向しペダルクランク軸115が突設されている(接続されている)面である。つまり、ペダル103が回転自在に設けられている面である。クランク105の上面117は、内面119および外面120と同じ方向に長手方向が延在し、かつ内面119および外面120と直交する面の一方である。クランク105の下面118は、上面117と対向する面である。これら、内面119、外面120、上面117、下面118は、クランク105の側面を構成する。
【0062】
第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bは、互いに直交かつ重ねられて(重層して)配置されている。また、第1ひずみゲージ369aの検出方向と第2ひずみゲージ369bの検出方向との間の中間方向が、クランク105の長手方向になるように配置されている。つまり、第1ひずみゲージ369aの検出方向とクランク105の長手方向とは45度の角度を有する。第2ひずみゲージ369bの検出方向とクランク105の長手方向とは45度の角度を有する。また、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bが重ねられた交点部分が内面119の中心軸C1上となるように配置されている。つまり、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bは、中心軸C1を中心として対称となるように配置されている。
【0063】
第3ひずみゲージ369cは、クランク105の長手方向に対して検出方向が平行、つまり、内面119の中心軸C1に対して平行かつ、中心軸C1上に設けられている。第4ひずみゲージ369dは、クランク105の長手方向に対して検出方向が垂直、つまり、内面119の中心軸C1に対して垂直かつ、中心軸C1上に設けられている。
【0064】
第5ひずみゲージ369eと第6ひずみゲージ369fは、クランク105の長手方向に対して検出方向が平行、つまり、内面119の中心軸C1に対して平行かつ、内面119の中心軸C1に対して対称になるように設けられている。
【0065】
即ち、クランク105の長手方向に延在する軸である中心軸C1と平行な方向(図4の縦方向)、つまり、クランク105の長手方向と平行な方向が、第3ひずみゲージ369c、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fの検出方向となり、中心軸C1と垂直な方向(図4の横方向)、つまり、クランク105の長手方向と垂直な方向が、第4ひずみゲージ369dの検出方向となる。したがって、第3ひずみゲージ369c、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fと第4ひずみゲージ369dは検出方向が互いに直交している。即ち、ひずみゲージ369は、クランク105に生じるひずみを検出するひずみ検出手段として機能する。
【0066】
なお、第1ひずみゲージ369a乃至第6ひずみゲージ369fの配置は図4に限らない。つまり、第3ひずみゲージ369c乃至第6ひずみゲージ369fは、中心軸C1と平行又は垂直の関係が維持されていればよく、第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bは、中心軸C1を挟んで互いに向き合うように傾斜していれば45度の角度でなくてもよいし重ねられていなくてもよい。更には、クランク105の内面119に配置してなくてもよく、少なくとも推進力と後述するねじれトルクとが算出できるような配置であればよい。
【0067】
また、図4では、クランク105を単純な直方体として説明しているが、デザイン等により、角が丸められていたり、一部の面が曲面で構成されていてもよい。そのような場合でも、上述した配置を極力維持するようにひずみゲージ369を配置することで、後述する各変形を検出することができる。但し、上記した中心軸C1との関係と、第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bが互いに直交する関係にあることがずれるにしたがって検出精度が低下する。
【0068】
測定モジュールひずみ検出回路365は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369d、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fが接続されて、ひずみゲージ369のひずみ量が電圧値として出力される。測定モジュールひずみ検出回路365の出力は、測定モジュールA/D363によって、アナログ情報からデジタル情報であるひずみ情報に変換される。そして、ひずみ情報信号は測定モジュール記憶部353に出力される。測定モジュール記憶部353に入力されたひずみ情報信号は、測定モジュールRAM355にひずみ情報として記憶される。
【0069】
測定モジュールひずみ検出回路365を図5に示す。測定モジュールひずみ検出回路365は、第1検出回路373aと第2検出回路373bと第3検出回路373cとで構成されている。第1検出回路373aは、電源VccとグランドGNDとの間に、第5ひずみゲージ369eと第6ひずみゲージ369fとが直列に接続されている。即ち、電源Vcc、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369f、グランドGNDの順に接続されている。そして、第5ひずみゲージ369eと第6ひずみゲージ369fとの接続点が第1検出回路373aの出力(以下、t出力という)となる。
【0070】
第2検出回路373bは、電源VccとグランドGNDとの間に、第3ひずみゲージ369cと第4ひずみゲージ369dとが直列に接続されている。即ち、電源Vcc、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369d、グランドGNDの順に接続されている。そして、第3ひずみゲージ369cと第4ひずみゲージ369dとの接続点が第2検出回路373bの出力(以下、r出力という)となる。
【0071】
第3検出回路373cは、電源VccとグランドGNDとの間に、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bとが直列に接続されている。即ち、電源Vcc、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、グランドGNDの順に接続されている。そして、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bとの接続点が第3検出回路373cの出力(以下、k出力という)となる。
【0072】
ここで、第1ひずみゲージ369a~第6ひずみゲージ369fは同じ抵抗値を有しているとする。
【0073】
ひずみゲージ369の抵抗値は、公知のように圧縮されている場合には抵抗値が下がり、伸長されている場合には抵抗値が上がる。この抵抗値の変化は、変化量がわずかな場合には比例している。また、ひずみゲージ369の検出方向は、配線が伸びている方向であり、上述したように第3ひずみゲージ369c、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fが、中心軸C1と平行な方向、第4ひずみゲージ369dが、中心軸C1と垂直な方向となる。第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bが、45度の方向となる。この検出方向以外において圧縮又は伸長が生じた場合には、ひずみゲージ369に抵抗値の変化は生じない。
【0074】
このような特性を持つひずみゲージ369を使用した第1検出回路373aは、第5ひずみゲージ369eと第6ひずみゲージ369fの検出方向で圧縮または伸長されていない場合は、t出力は、電源Vccの電圧を第5ひずみゲージ369eと抵抗値と第6ひずみゲージ369fとで分圧した値である電源Vccの電圧の1/2の電圧値(1/2Vcc)となる。
【0075】
第5ひずみゲージ369eが圧縮され、第6ひずみゲージ369fが伸張された場合は、第5ひずみゲージ369eの抵抗値が減少して第6ひずみゲージ369fの抵抗値が増加するために、t出力は上がる(電圧値が1/2Vccよりも大きくなる)。第5ひずみゲージ369eが伸張され、第6ひずみゲージ369fが圧縮された場合は、第5ひずみゲージ369eの抵抗値が増加して第6ひずみゲージ369fの抵抗値が減少するために、t出力は下がる(電圧値が1/2Vccよりも小さくなる)。
【0076】
第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fともに圧縮された場合は、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fともに抵抗値が減少するために、t出力は変化しない(電圧値が1/2Vccのままとなる)。第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fともに伸張された場合は、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fともに抵抗値が増加するために、t出力は変化しない。
【0077】
第2検出回路373bも第1検出回路373aと同様の動作となる。つまり、第3ひずみゲージ369cが圧縮され、第4ひずみゲージ369dが伸張された場合は、r出力は上がり、第3ひずみゲージ369cが伸張され、第4ひずみゲージ369dが圧縮された場合は、r出力は下がる。第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dともに圧縮された場合と、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dともに伸張された場合は、r出力は変化しない。
【0078】
第3検出回路373cも第1検出回路373aと同様の動作となる。つまり、第1ひずみゲージ369aが圧縮され、第2ひずみゲージ369bが伸張された場合は、k出力は上がり、第1ひずみゲージ369aが伸張され、第2ひずみゲージ369bが圧縮された場合は、k出力は下がる。第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに圧縮された場合と、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張された場合は、k出力は変化しない。
【0079】
第1検出回路373aのt出力と、第2検出回路373bのr出力と、第3検出回路373cのk出力と、は複数のひずみゲージ部が出力する電圧値となる。
【0080】
図6は、ユーザにより力(踏力)が加えられた際の右側クランク105Rの変形状態を示している。(a)は右クランク105Rの内面119から見た平面図、(b)は右側クランク105Rの上面117から見た平面図、(c)は右側クランク105Rのクランク軸107側の端部から見た平面図である。なお、以降の説明では右側クランク105Rで説明するが、左側クランク105Lでも同様である。
【0081】
ユーザの足からペダル103を介して踏力が加えられると、その踏力はクランク105の回転力となる、クランク105の回転運動により定義される円の接線方向に働く力である接線力T(推進力)と、クランク105の回転運動により定義される円の法線方向に働く力である法線力R(損失力)とに分けられる。このとき、右側クランク105Rには、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzの各変形状態が生じる。
【0082】
曲げ変形xは、図6(a)に示したように、右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって、或いは下面118から上面117に向かって曲がるように変形することであり、接線力Tによって生じる変形である。即ち、クランク105の回転方向に発生する変形によるひずみ(クランク105の回転方向に生じているひずみ)を検出することとなり、曲げ変形xの検出によってクランク105に生じている回転方向ひずみが検出できる。
【0083】
曲げ変形yは、図6(b)に示したように、右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって、或いは内面119から外面120に向かって曲がるように変形することであり、法線力Rによって生じる変形である。即ち、クランク105の外面120から内面119、または内面119から外面120に向かって発生する変形によるひずみ(右側クランク105Rの回転運動により定義される円と同一平面と垂直な方向に生じているひずみ)を検出することとなり、曲げ変形yの検出によってクランク105に生じている内外方向ひずみが検出できる。
【0084】
引張変形zは、右側クランク105Rが長手方向に伸張または圧縮されるように変形することであり、法線力Rによって生じる変形である。即ち、クランク105が長手方向に引っ張られるまたは押される方向に発生する変形によるひずみ(長手方向と平行な方向に生じているひずみ)を検出することとなり、引張変形zの検出によってクランク105に生じている引張方向ひずみが検出できる。
【0085】
ねじれ変形rzは、右側クランク105Rが、ねじれるように変形することであり、接線力Tによって生じる変形である。即ち、クランク105がねじれる方向に発生する変形によるひずみを検出することとなり、ねじれ変形rzの検出によってクランク105に生じているねじり方向ひずみが検出できる。なお、図6は、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzの変形方向を矢印で示したが、上述したように、この矢印と逆方向に各変形が発生する場合もある。
【0086】
したがって、接線力Tを測定するためには、曲げ変形xまたはねじれ変形rzのいずれか、法線力Rを測定するためには、曲げ変形yまたは引張変形zのいずれかを定量的に検出すればよい。
【0087】
ここで、図4のように配置され、図5のように第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dが接続された測定モジュールひずみ検出回路365によって、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzを検出(測定)する方法を説明する。
【0088】
曲げ変形xは、右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって、或いはその逆方向に変形する。この場合、第1検出回路373aは、第5ひずみゲージ369eは圧縮されて抵抗値が減少し、第6ひずみゲージ369fは伸長されて抵抗値が増加してt出力が上がる、又は第5ひずみゲージ369eは伸長されて抵抗値が増加し、第6ひずみゲージ369fは圧縮されて抵抗値が減少してt出力は下がる、のいずれかとなる(変形の方向により定まる)。第2検出回路373bは、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dとも曲がるだけであり圧縮も伸長もさせず抵抗値は変化しないためr出力は変化しない。第3検出回路373cは、図7に示したように、第1ひずみゲージ369aの一端は伸張されるが、他端は圧縮される。その結果、第1ひずみゲージ369a内部で伸長及び圧縮の両方が生じ第1ひずみゲージ369aの抵抗値は変化しない。第2ひずみゲージ369bも同様である。そのため、k出力は変化しない。
【0089】
曲げ変形yは、右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって、或いはその逆方向に変形する。この場合、第1検出回路373aは、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fの両方とも伸長して両方とも抵抗値が増加するか、両方とも圧縮して両方とも抵抗値が減少するかのいずれかであるので、t出力は変化しない。第2検出回路373bは、第3ひずみゲージ369cは伸長されて抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは圧縮されて抵抗値が減少してr出力が下がる、又は第3ひずみゲージ369cは圧縮されて抵抗値が減少し、第4ひずみゲージ369dは伸長されて抵抗値が増加してr出力は上がる、のいずれかとなる。第3検出回路373cは、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bの両方とも伸長して両方とも抵抗値が増加するか、両方とも圧縮して両方とも抵抗値が減少するかのいずれかであるので、k出力は変化しない。
【0090】
引張変形zは、右側クランク105Rが長手方向に伸張または圧縮されるように変形する。この場合、第1検出回路373aは、第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fの両方とも伸長して両方とも抵抗値が増加するか、両方とも圧縮して両方とも抵抗値が減少するかのいずれかであるので、t出力は変化しない。第2検出回路373bは、第3ひずみゲージ369cは伸長されて抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは圧縮されて抵抗値が減少してr出力が下がる、又は第3ひずみゲージ369cは圧縮されて抵抗値が減少し、第4ひずみゲージ369dは伸長されて抵抗値が増加してr出力は上がる、のいずれかとなる。第3検出回路373cは、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bの両方とも伸長して両方とも抵抗値が増加するか、両方とも圧縮して両方とも抵抗値が減少するかのいずれかであるので、k出力は変化しない。
【0091】
ねじれ変形rzは、右側クランク105Rが、ねじれるように変形する。この場合、第1検出回路373aは、第5ひずみゲージ369eは伸長されて抵抗値が増加するが、第6ひずみゲージ369fは圧縮も伸長もしないため抵抗値は変化しないので、t出力は下がる。第2検出回路373bは、第3ひずみゲージ369cは伸長されて抵抗値が増加するが、第4ひずみゲージ369dは圧縮も伸長もしないため抵抗値は変化しないので、r出力は下がる。第3検出回路373cは、第1ひずみゲージ369aは圧縮されて抵抗値が減少し、第2ひずみゲージ369bは伸長されて抵抗値が増加してk出力が上がる、又は第1ひずみゲージ369aは伸長されて抵抗値が増加し、第2ひずみゲージ369bは圧縮されて抵抗値が減少してk出力は下がる、のいずれかとなる。
【0092】
以上のように、第1検出回路373aのt出力の変化を検出することで曲げ変形xを検出することができ、第2検出回路373bのr出力の変化を検出することで曲げ変形y及び引張変形zを検出することができる。更に、第3検出回路373cのk出力の変化を検出することでねじれ変形rzを検出することができる。即ち、第1検出回路373aを構成する第5ひずみゲージ369e及び第6ひずみゲージ369fが第1ひずみゲージ部、第3検出回路373cを構成する第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bが第2ひずみゲージ部となる。そして、第1検出回路373aのt出力及び第3検出回路373cのk出力がひずみ検出手段が出力値を表す。
【0093】
次に、第1検出回路373aのt出力、第2検出回路373bのr出力、第3検出回路373cのk出力から、測定モジュール制御部351で接線力T、法線力R及びねじれトルクKを算出する方法を説明する。ねじれトルクとは、クランク105にねじれ変形rzが発生した際のトルク、即ち、クランク105にねじれを生じさせる方向に働くトルクである。まず、以下の(1)式のように行列Aを仮定する。
【数1】
【0094】
(1)式のtはt出力、rはr出力、kはk出力の実測値(電圧値)をそれぞれ示す。また、Tは接線力T,Rは法線力R、KはねじれトルクKを示す。
【0095】
次に、図8に示したように、クランク105を水平前向きとし、クランク105の中心軸C1から距離L1だけ離れたペダル103上の位置に、既知の荷重Wを加えた状態(第1状態)におけるt出力、r出力、k出力をそれぞれtp、rp、kpとすると、(1)式は、(2)式のように表される。ここで、図8(a)はクランク105の上面117から見た図、図8(b)はクランクの外面120から見た図である。
【数2】
【0096】
Pは、クランク105に加わる第1基準ねじれトルクであり、P=W・L1(N・m)で表される。
【0097】
次に、図9に示したように、クランク105を水平前向きとし、クランク105の中心軸C1から距離L1とは異なる距離L2だけ離れたペダル103上の位置に、既知の荷重Wを加えた状態(第2状態)におけるt出力、r出力、k出力をそれぞれtq、rq、kqとすると、(1)式は、(3)式のように表される。ここで、図9(a)はクランク105の上面117から見た図、図9(b)はクランクの外面120から見た図である。
【数3】
【0098】
Qは、クランク105に加わる第2基準ねじれトルクであり、Q=W・L2(N・m)で表される。
【0099】
次に、図10に示したように、クランク105を垂直下向きとし、クランク105の中心軸C1の延長上の位置(又は、クランク105の中心軸に極力近い位置)に既知の荷重Wを加えた状態(第3状態)のt出力、r出力、k出力をそれぞれt0、r0、k0とすると、(1)式は、(4)式のように表される。図10(a)はクランク105の上面117から見た図、図10(b)はクランクの外面120から見た図である。
【数4】
【0100】
次に、(2)~(4)式より行列Aの成分a~iを算出する。(2)、(3)式より成分c、a、f、d、i、gは次の(5)~(10)式のようになる。また、(4)式より、成分b、e、hは次に(11)~(13)式のようになる。ここで、(6)、(8)、(10)式は成分が残っているが、これは算出された当該成分を代入すればよい。例えば(6)式の成分cは(5)式の算出結果を代入する。或いは算出結果でなく式を代入してもよい。このようにして、図8図10の状態のときのt出力、r出力、k出力の値と、既知の荷重W及び既知の距離L1、L2により行列Aの成分a~iが算出される。
【数5】
【数6】
【0101】
そして、算出された行列Aの逆行列A-1を算出し、以下の(14)式により、接線力T、法線力R、ねじれトルクKを算出する。従って、予め逆行列A-1を算出しておくことにより、t出力、r出力、k出力の値から接線力T、法線力R、ねじれトルクKをリアルタイムで算出することができる。
【数7】
【0102】
(14)式は逆行列A-1の成分を係数とする多項式で表すことができるため、接線力T及びねじれトルクKは、第1検出回路373a~第3検出回路373cが出力するt出力、r出力、k出力を所定の多項式に代入することにより算出される。
【0103】
そして、算出された接線力TとねじれトルクKとからクランク105の中心軸から運転者がペダル103に加えている荷重の中心まで距離Lを算出する。ここで、荷重の中心とは、ペダル103の各部に働く荷重をただ一つの力で代表させるとき、それが作用する点を意味する。クランク105の中心軸から運転者がペダル103に加えている荷重の中心まで距離Lは、L(m)=K/Tにより算出できる。本実施例では、この算出された距離Lを、ペダル103に加えられている荷重中心位置としている。
【0104】
次に、サイクルコンピュータ201のブロック構成を説明する。サイクルコンピュータ201は、図3に示したように、サイクルコンピュータ表示部203、サイクルコンピュータ操作部205、サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207、サイクルコンピュータ無線受信部209、サイクルコンピュータタイマ261、サイクルコンピュータ記憶部253及びサイクルコンピュータ制御部251を有している。
【0105】
サイクルコンピュータ表示部203は、ユーザの指示等に基づいて、各種の情報を表示する。本実施例においては、推進力(接線力T)及び損失力(法線力R)を視覚化して表示する。なお、視覚化の方法はどのような方法であっても良い。サイクルコンピュータ表示部203における、視覚化の方法は、例えば、ベクトル表示、グラフ表示、色分け表示、記号の表示、3次元表示等がありえ、どのような方法であってもよい。また、それらの組み合わせ等であってよい。
【0106】
また、サイクルコンピュータ表示部203は、測定モジュール制御部351が算出したペダル103に加えられている荷重中心位置を視覚化して表示する。図11に表示例を示す。
【0107】
図11は、画面に左右のペダル103について検出した荷重中心位置を並べて表示するものである。図11において、右側ペダル103Rで検出された荷重中心位置は実測値LMR、左側ペダル103Lで検出された荷重中心位置は実測値LMLとして表示する。また、予め基準として設定された荷重中心位置を基準値LRR(右側)、基準値LRL(左側)として実測値LMR、LMLに重畳して表示している。この基準値LRR、LRLは、例えば推奨されるペダル踏み位置(荷重をかけるべき位置)として示される。即ち、実測値LMR、LMLと基準値LRR、LRLとを比較可能な態様で表示(出力)している。なお、図11では、基準値LRR、LRLはペダル103の略中央としているが、それに限らない。例えば、自転車1やクランク105の形状等或いは運転者の体格等に基づいて変更してもよい。
【0108】
図11では、実測値LMR、LMLを楕円の塗りつぶし、基準値LRR、LRLを楕円(破線)で表示することで、重畳して表示した際に視認し易くしている。なお、実測値LMR、LML、基準値LRR、LRLは、図11の形状に限らず、点、円、直線や足型等であってもよい。また、実測値LMR、LMLと基準値LRR、LRLとは、塗りつぶしと破線に限らず、互いが識別できる表示態様であればよい。
【0109】
なお、図11に示した例では、実測値や基準値を画像で示したが、それに限らず、数値等他の形式で示してもよい。また、任意の期間の実測値を記憶しておき、位置の移動の遷移が分かるように表示してもよい。
【0110】
サイクルコンピュータ操作部205は、ユーザの指示(入力)を受ける。例えば、サイクルコンピュータ操作部205は、ユーザから、サイクルコンピュータ表示部203に表示内容の指示を受ける。
【0111】
サイクルコンピュータケイデンス無線受信部207は、ケイデンスセンサ501から送信されるケイデンス情報を受信する。
【0112】
サイクルコンピュータ無線受信部209は、測定モジュール301から送信される推進力、損失及びペダル103に加えられている荷重中位置等を受信する。
【0113】
サイクルコンピュータタイマ261は、タイマカウンタでありタイマをカウントしている。サイクルコンピュータタイマ261によって生成されるこのタイマ値情報はサイクルコンピュータ制御部251等が様々に利用している。
【0114】
サイクルコンピュータ記憶部253には、各種情報が記憶される。各種情報とは、例えば、サイクルコンピュータ制御部251の制御プログラム、及び、サイクルコンピュータ制御部251が制御を行う際に必要とされる一時的な情報である。なお、サイクルコンピュータ記憶部253は、サイクルコンピュータRAM255及びサイクルコンピュータROM257から構成されている。サイクルコンピュータROM257には制御プログラム、推進力や損失力或いは荷重中心位置をサイクルコンピュータ表示部203に視覚的に表示するデータに変換するための各種のパラメータ、定数、等が記憶されている。
【0115】
サイクルコンピュータ制御部251は、サイクルコンピュータ201を包括的に制御している。さらに、ケイデンスセンサ501及び測定モジュール301をも包括的に制御していても良い。サイクルコンピュータ制御部251は、推進力や損失力或いは荷重中心位置をサイクルコンピュータ表示部203に視覚的に表示するデータに変換する。
【0116】
次に、ケイデンスセンサ501の処理と、測定モジュール301およびサイクルコンピュータ201の処理を、図12及び図13を参照して説明する。
【0117】
まず、ケイデンスセンサ501の処理を説明する。ステップST51において、ケイデンスセンサ501のケイデンスセンサ制御部551は、磁気センサ505のONへの変化を検出する。そして、ケイデンスセンサ制御部551は、磁気センサ505の変化を検出すると処理の割り込みを行い、ステップST53以下の処理を開始する。割り込みとは、それまでの処理を中断して、指定された処理を実行することをいう。
【0118】
次に、ステップST53において、ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンス値を算出する。ケイデンスセンサ制御部551は、タイマ値情報のカウント数(C)と1度のカウント間隔(T)をかけあわせることによって、磁気センサ505がONとなる時間(周期)[秒]を算出する。そして、ケイデンスセンサ制御部551は、60をこの時間(周期)で割ることによって、ケイデンス[rpm]を算出する。さらに、ケイデンスセンサ制御部551は、このケイデンス情報をケイデンスセンサ記憶部553のケイデンスセンサRAM555に記憶させる。
【0119】
次に、ステップST55において、ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサタイマ561にカウンタ値のリセット命令を出力する。これで、ケイデンスセンサ制御部551の制御のメインフローは終了する。そして、次に磁気センサ505がONになると割り込みを再び行い、ステップST51から処理を再開する。
【0120】
一方、ステップST57においては、ケイデンスセンサ制御部551は、ケイデンスセンサ記憶部553に記憶されているケイデンス情報を、ケイデンスセンサ無線送信部507を用いて、サイクルコンピュータ201に送信する。なお、ケイデンスセンサ制御部551を介さずに、ケイデンスセンサ無線送信部507のみによって送信を行っても良い。
【0121】
次に、ステップST59において、ケイデンスセンサ制御部551は、1秒間ウェイトしている。なお、ウェイトの時間は可変である。
【0122】
次に、測定モジュール301等の処理を説明する。ステップST11において、測定モジュールA/D363は、測定モジュールひずみ検出回路365からの出力(t出力、r出力、k出力)を、アナログ値からデジタル値にA/D変換する。
【0123】
次に、ステップST13において、測定モジュールA/D363が検出(変換)したひずみ情報を測定モジュール記憶部353の測定モジュールRAM355に記憶する。
【0124】
次に、ステップST15において、処理は、1/N秒間ウェイトする。ここで、Nの値は、一秒間に測定するデータポイントの数である。つまり、Nの値が大きいほど、ひずみ情報の数が多く、秒単位の分解能が高いことを意味する。N値は大きいほどよいが、N値をあまり大きくすると測定モジュールRAM355が大きな容量のものでなければならず、コストの増加になる。したがって、N値をどの程度とするかは、コスト、必要とされる時間分解能及び測定モジュールA/D363がA/D変換するのに必要とされる時間等によって決定され得る。ステップST15の処理が終了すると、ステップST11の処理に再び戻る。つまり、1秒間にN回のステップST11~ステップST15の処理を繰り返し行う。
【0125】
また、測定モジュール制御部351は、図9(b)の処理を行う。ステップST31において、測定モジュール制御部351は、ひずみ情報のデータ退避を行う。その理由を説明する。まず、測定モジュール記憶部353の測定モジュールRAM355の容量には限りがある。ここで、測定モジュールRAM355の容量を大きくすればひずみ情報のデータ退避は必要なくなるが、あまり余裕を持たせて設計するとコストの増加をもたらし適切ではない。また、ひずみ情報は連続的に次々書き込まれるため、データ退避を行わないと、後述するステップST33での処理によって接線力T、法線力R、距離Lを計算する前に、新たな情報が上書きされてしまうおそれがあるからである。
【0126】
次に、ステップST33において、測定モジュール制御部351は接線力T、法線力R、距離Lを算出する。具体的には、測定モジュール制御部351は、上述した(14)式及びL=K/Tとの式により接線力T、法線力R、距離Lを算出する。即ち、本ステップが算出工程として機能する。さらに、測定モジュール制御部351は、この接線力T、法線力R、距離LをN個算出しその平均を算出してもよい。つまり、測定モジュール制御部351は、1秒間の接線力T、法線力Rの平均(平均接線(推進)力及び平均法線(損失)力)を算出してもよい。なお、第1状態~第3状態の測定や成分の算出等は、上述したように、本フローチャート実行前に予め行う。
【0127】
次に、ステップST35において、測定モジュール制御部351は、測定モジュール無線送信部309を介して、算出された接線力T及び法線力R又は平均接線力及び平均法線力と、距離Lと、を送信する。送信された接線力T及び法線力R等と距離Lとは、サイクルコンピュータ201のサイクルコンピュータ無線受信部209によって受信される。即ち、ひずみゲージ369の出力値に基づいて算出された接線力Tと、ねじれトルクKと、に基づいてクランク105に連結されたペダル103に加えられた荷重の中心位置に関する情報を出力している。
【0128】
次に、ステップST37において、1秒ウェイトする。なお、1秒は一例であり必要に応じて可変である。ステップST37の処理が終了すると、ステップST31の処理に再び戻る。つまり、1秒間に1回のステップST31~ステップST35の処理を繰り返し行う。
【0129】
また、サイクルコンピュータ201のサイクルコンピュータ制御部251は、図9(c)の処理を行う。ステップST71において、サイクルコンピュータ制御部251は、推進力(接線力T)、損失力(法線力R)、荷重中心位置(距離L)及びケイデンス情報を受信すると割り込みが行われる。つまり、サイクルコンピュータ無線受信部209が推進力、損失力、荷重中心位置及びケイデンス情報を受信したことをサイクルコンピュータ制御部251が検出した時には、サイクルコンピュータ制御部251は、それまでの処理を中断(割り込み)し、ステップST73以下の処理を開始する。
【0130】
次に、ステップST73において、サイクルコンピュータ制御部251は、サイクルコンピュータ表示部203に推進力、損失力、荷重中心位置及びケイデンス情報を表示させる。即ち、本ステップが出力工程として機能する。サイクルコンピュータ表示部203は、これらの情報を数値として表示、又は、その他の視覚化・聴覚化・触覚化した方法によってユーザに伝達する。なお、これらの情報は、同時に表示しなくてもよく、ユーザ等の切り換え操作により個別に表示するようにしてもよい。
【0131】
次に、ステップST75において、サイクルコンピュータ制御部251は、サイクルコンピュータ表示部203に推進力、損失力、荷重中心位置及びケイデンス情報をサイクルコンピュータ記憶部253のサイクルコンピュータRAM255に記憶する。その後、サイクルコンピュータ制御部251は、再びステップST51の割り込みが行われるまで他の処理を行う。
【0132】
上述した説明では、荷重中心位置(距離L)は、測定モジュール301で算出していたが、荷重中心位置(距離L)に代えてねじれトルクKをサイクルコンピュータ201に送信するようにし、サイクルコンピュータ201で荷重中心位置(距離L)を算出するようにしてもよい。
【0133】
本実施例によれば、ひずみゲージ369が、自転車1のクランク105の内面119に設けられ、クランク105に生じるひずみを検出する。そして、サイクルコンピュータ表示部203が、第1ひずみゲージ369a~第6ひずみゲージ369fの出力値に基づいて算出された、接線力Tと、ねじれトルクKと、に基づいて、クランク105に連結されたペダル103に加えられた荷重中心位置を示す画像を表示する。このようにすることにより、ペダル103に加えられた荷重中心位置を示す画像を算出して出力することができるため、この情報に基づいて効率のよいペダリング等を行うことが可能となる。
【0134】
また、ひずみゲージ369は、自転車1が左右一対に備えるクランク105の内面119にそれぞれ設けられ、サイクルコンピュータ表示部203は、左右それぞれのクランク105に連結されたペダル103に加える荷重の中心位置を示す画像を並べて表示している。このようにすることにより、ユーザ等は左右のペダリングバランス等を比較して確認することができ、ペダリングフォーム等の改善に役立てることができる。
【0135】
また、サイクルコンピュータ表示部203は、ひずみゲージ369が検出した実測値LMR、LMLに予め基準値LRR、LRLを重畳した画像を表示している。このようにすることにより、例えばユーザ等が、自身のペダリングにおける荷重中心と適切なペダリングにおける荷重中心とを比較することができ、ペダリングフォーム等の改善に役立てることができる。
【0136】
また、ひずみゲージ369は、クランク105に生じる曲げ変形xを検出する第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bと、クランク105に生じるねじれ変形rzを検出する第5ひずみゲージ369e、第6ひずみゲージ369fと、を含む複数のひずみゲージを有する。また、ひずみゲージ369は、第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bと、第5ひずみゲージ369e及び第6ひずみゲージ369fと、がひずみを検出する方向へのクランク105の変形量に応じた電圧値を出力している。このようにすることにより、複数のひずみゲージ369の出力電圧値によって、クランク105の接線力TとねじれトルクKとを算出することができる。
【0137】
また、クランク105の接線力T及びねじれトルクKは、第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bにより構成される第3検出回路373cと、第5ひずみゲージ369e及び第6ひずみゲージ369fにより構成される第1検出回路373aと、が出力する電圧値(t出力、k出力)を所定の多項式に代入することにより算出される。このようにすることにより、例えば、CPU等を用いた演算により算出することができる。
【0138】
また、所定の多項式の各項の係数は、クランク105の中心軸から第1距離L1だけ離れたペダル103上の位置に予め定めた荷重Wを加えた第1状態において、クランク105に加わる第1基準ねじれトルクPと、クランク105の中心軸から第2距離L2だけ離れたペダル103上の位置に予め定めた荷重Wを加えた第2状態において、クランク105に加わる第2基準ねじれトルクQと、第1状態および第2状態のそれぞれにおけるt出力及びk出力と、に基づいて予め設定されている。このようにすることにより、既知の数値で算出可能な第1基準ねじれトルクP、第2基準ねじれトルクQ、出力電圧値(tp、kp、tq、kq)に基づいて予め係数を算出することができる。従って、第1検出回路373a、第3検出回路373cで実測された値を多項式に代入するだけでクランク105の接線力T及びクランク105のねじれトルクKを算出することができる。また、クランクに合わせて係数を変更することができるため、クランクごとに精度よく算出することができる。
【実施例0139】
本実施例の第2の実施例にかかる情報出力装置について、図14を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0140】
第1の実施例では、ひずみゲージを6つ用いていたが、法線力R(損失力)を算出しない場合は、ひずみゲージの数を減らし、係数の算出や接線力T及ぶねじれトルクKの算出にかかる演算量を減少させることができる。図14に、本実施例におけるひずみゲージ369のクランク105への配置を示す。本実施例においては、図4に示した第3ひずみゲージ369cと第4ひずみゲージ369dとが削除されている点が第1の実施例と異なる。従って、本実施例の測定モジュールひずみ検出回路365は、第2検出回路373bを有しない。
【0141】
第2検出回路373bのr出力は、第1の実施例で説明したように、曲げ変形y及び引張変形zを検出する。これらは、法線力Rにより生じる変形であり、法線力Rを算出しない場合は検出しなくてもよい。そして、第1の実施例で示した(1)式は以下の(15)式に、(2)式は以下の(16)式に、(3)式は以下の(17)式に、そして(14)式は以下の(18)式にそれぞれ変更となる。本実施例では、(15)式~(17)式から明らかなように、行列Aの成分は、第1基準ねじれトルクPと第2基準ねじれトルクQと第1状態と第2状態のそれぞれにおけるt出力、k出力とに基づいて算出することができる。
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0142】
本実施例では、算出するのは接線力TとねじれトルクKであるので、行列Aは2行2列となり成分の数が減少する。算出された接線力TとねじれトルクKからクランク105の中心軸から運転者がペダル103に加えている荷重の中心まで距離Lは、第1の実施例と同様にL(m)=K/Tにより算出する。
【0143】
本実施例によれば、接線力TとねじれトルクKのみを算出しているのでひずみゲージの数を減らすことができる。また、接線力TとねじれトルクKを算出する際の多項式の項が減少するため演算量を減少させることができる。
【0144】
なお、上述した2つの実施例では、サイクルコンピュータ表示部203を出力手段として説明したが、出力手段は、表示あるいは音声等で運転者に伝達する手段に限らない。例えば、図15に示したように、サイクルコンピュータ201にサイクルコンピュータ外部通信部271を加えて、クランク105の中心軸から運転者がペダル103に加えている荷重の中心まで距離L等の情報をサイクルコンピュータ外部通信部271からインターネット等の公衆回線Nを介して接続されたサーバSに出力するようにしてもよい。この場合、出力手段はサイクルコンピュータ外部通信部271となる。また、測定モジュール301から直接公衆回線Nを介して接続されたサーバSに出力するようにしてもよい。
【0145】
また、上述した2つの実施例では、ひずみゲージ369がクランク105の中央近傍に設けられているように記載しているが、ペダル103寄りやクランク軸107寄りに設けてもよい。ペダル103寄りに設けるとクランク105のひずみ量が小さいためにひずみゲージ369の寿命を延ばすことができる。クランク軸107寄りに設けるとてこの原理によりひずみゲージ369の出力が大きくなりノイズの影響を小さくすることができる。
【0146】
また、上述した2つの実施例では、情報出力装置は、サイクルコンピュータ201と測定モジュール301とで構成されていたが、本発明における情報出力装置とは、サイクルコンピュータ201や測定モジュール301の一部であってもよいし、他の独立した装置であっても良い。さらに、物理的に別れた複数の装置の集合体であっても良い。場合によっては、ひずみゲージ369(測定モジュールひずみ検出回路365)以外は通信を介することとし全く別の場所にある装置であってもよい。
【0147】
本発明おける人力機械とは、自転車1、フィットネスバイク等のクランク105を備えた人力で駆動される機械をいう。つまり、クランク105を備えた人力で駆動(必ずしも場所的な移動をする必要はない)される機械であれば、人力機械はどの様なものであっても良い。
【0148】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の情報出力装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0149】
1 自転車(人力機械)
103 ペダル
105 クランク
119 内面(側面)
203 サイクルコンピュータ表示部(出力手段)
271 サイクルコンピュータ外部通信部(出力手段)
369a 第1ひずみゲージ(ひずみ検出手段、第2ひずみゲージ部)
369b 第2ひずみゲージ(ひずみ検出手段、第2ひずみゲージ部)
369c 第3ひずみゲージ
369d 第4ひずみゲージ
369e 第5ひずみゲージ(ひずみ検出手段、第1ひずみゲージ部)
369f 第6ひずみゲージ(ひずみ検出手段、第1ひずみゲージ部)
373a 第1検出回路
373b 第2検出回路
373c 第3検出回路
C1 中心軸
K ねじれトルク(クランクにねじれを生じさせる方向に働くトルク)
L ペダルに加えている荷重の中心まで距離(ペダルに加えられた荷重の中心位置に関する情報)
P 第1基準ねじれトルク
Q 第2基準ねじれトルク
T 接線力(クランクの回転運動により定義される円の接線方向に働く力)
ST33 接線力、荷重中心位置までの距離算出(算出工程)
ST73 データの表示(出力工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15