(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024675
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】経路生成装置
(51)【国際特許分類】
B63B 49/00 20060101AFI20230209BHJP
B63H 25/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B63B49/00 Z
B63H25/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205802
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2018221041の分割
【原出願日】2018-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】原 直裕
(72)【発明者】
【氏名】福川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】嵩 裕一郎
(57)【要約】
【課題】船舶を精度良く自動着岸させる経路を生成することができる経路生成装置を提供する。
【解決手段】経路コントローラは、船舶95を接岸施設に着岸させる経路56を生成する。経路56は、第1位置P1と、第2位置P2と、を含む。第1位置P1は、接岸施設における船舶95の着岸点B1(第2位置P2)から接岸施設の向きに垂直な方向で所定距離オフセットした経由点(選択図の例では経由点A7)である。第2位置P2は、接岸施設における船舶95の着岸点B1である。第1位置P1は、船舶95が実現すべき順番として、第2位置P2の直前である。船舶95が、第1位置P1から第2位置P2まで、接岸施設に沿った方向に船舶95の方位を保ちながら移動するように経路56が生成される。第1位置P1及び第2位置P2と、当該位置のそれぞれにおいて船舶95が実現すべき向きと、を図形で表示するための表示データ75が生成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を接岸施設に着岸させる経路を生成する経路生成装置であって、
前記経路は、
前記接岸施設における前記船舶の着岸位置から当該接岸施設の向きに垂直な方向で所定距離オフセットした位置である第1位置と、
前記接岸施設における前記船舶の着岸位置である第2位置と、
を含み、
前記船舶が、前記第1位置から前記第2位置まで、前記接岸施設に沿った方向に当該船舶の方位を保ちながら移動するように前記経路が生成され、
前記第1位置及び前記第2位置と、前記第1位置及び前記第2位置のそれぞれにおいて当該船舶が実現すべき向きと、を図形によって表示するための表示データを生成する表示データ生成部を備えることを特徴とする経路生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路生成装置であって、
前記経路は、複数の位置を繋ぐように生成され、
前記第1位置は、前記経路において前記船舶が実現すべき順番として、前記第2位置の直前であることを特徴とする経路生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の経路生成装置であって、
前記経路は、1又は複数の中間位置を含み、
前記中間位置は、前記船舶が実現すべき順番として、前記第1位置の前であり、
方位設定モードを切り換えながら前記経路を生成可能であり、
前記方位設定モードは、
前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、次の位置で船舶が実現すべき方位に当該船舶の方位を合わせるように当該中間位置でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の位置へ移動する、その場旋回後平行移動モードと、
前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、当該中間位置から次の位置へ移動するのと同時に、次の位置で船舶が実現すべき方位に当該船舶の方位を合わせるように旋回する移動中旋回モードと、
を含むことを特徴とする経路生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の経路生成装置であって、
前記方位設定モードは、前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、次の位置を向く方位に当該船舶の方位を合わせるように当該中間位置でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の位置へ移動する、その場旋回後前進モードを含むことを特徴とする経路生成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の経路生成装置であって、
前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置と前記第2位置との間の直線距離、又は、前記中間位置と前記第1位置との間の直線距離に基づいて切り換えられることを特徴とする経路生成装置。
【請求項6】
請求項3から5までの何れか一項に記載の経路生成装置であって、
前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置と前記第2位置との間の前記経路上の距離、又は、前記中間位置と前記第1位置との間の前記経路上の距離に基づいて切り換えられることを特徴とする経路生成装置。
【請求項7】
請求項3から6までの何れか一項に記載の経路生成装置であって、
前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置において前記経路の向きが変化する大きさに基づいて切り換えられることを特徴とする経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の経路を生成する経路生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶の自動着岸に用いる操船装置が知られている。特許文献1は、この種の操船装置を備える小型船舶を開示する。
【0003】
特許文献1の小型船舶は、コントローラを備える。コントローラは、着岸場所に沿う位置のうち、現在の船首方向の最近傍位置を第1目標位置として設定する。また、コントローラは、着岸場所の縁に対して垂直な方向に、第1目標位置からオフセット量、離れた位置を第2目標位置として決定する。
【0004】
そして、コントローラは、第2目標位置に到達させるように推進装置を制御する。その後、コントローラは、小型船舶を第1目標位置に到達させるように推進装置を制御する。
【0005】
この小型船舶は、現在位置から第1目標位置までの距離が所定の閾値以下でないときには、アプローチ制御によって制御される。その一方で、小型船舶は、現在位置から第1目標位置までの距離が所定の閾値以下であるときには、アジャスト制御によって制御される。
【0006】
アプローチ制御では、コントローラは、第1目標速度(船体の前後方向における目標速度)と目標角速度(船体の目標角速度)に基づいて、推進装置の目標推進力と目標舵角とを決定する。アジャスト制御では、第1目標速度と第2目標速度(船体の左右方向における目標速度)と目標角速度とに基づいて、推進装置の目標推進力と目標舵角とを決定する。
【0007】
コントローラは、船体の現在位置が第1目標位置に近づくと目標速度を減少させる。コントローラは、船体の現在位置と第1目標位置との間の距離が0を含む所定範囲になると、目標速度を0とする。また、コントローラは、船体の現在方位が目標方位(着岸場所での船体の方位)に近づくと目標角速度を減少させる。コントローラは、船体の現在方位と目標方位との差が0を含む所定範囲となると、目標角速度を0とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の構成は、船舶を第1目標位置に近づけながら、船舶の方位を目標方位(即ち、第1目標位置での船舶の方位)に一致させる制御を行うので、自動着岸時に、例えば角速度の影響で、船舶の実際の移動軌跡が膨らむ可能性がある。そのため、船舶を精度良く自動着岸させることができない場合があり、この点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、船舶を精度良く自動着岸させる経路を生成することができる経路生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の経路生成装置が提供される。即ち、この経路生成装置は、船舶を接岸施設に着岸させる経路を生成する。前記経路は、第1位置と、第2位置と、を含む。前記第1位置は、前記接岸施設における前記船舶の着岸位置から当該接岸施設の向きに垂直な方向で所定距離オフセットした位置である。前記第2位置は、前記接岸施設における前記船舶の着岸位置である。前記船舶が、前記第1位置から前記第2位置まで、前記接岸施設に沿った方向に当該船舶の方位を保ちながら移動するように前記経路が生成される。経路生成装置は、前記第1位置及び前記第2位置と、前記第1位置及び前記第2位置のそれぞれにおいて当該船舶が実現すべき向きと、を図形によって表示するための表示データを生成する表示データ生成部を備える。
【0013】
これにより、船舶は、当該船舶の方位を接岸施設に沿った方向に一致させながら、第1位置から第2位置へ、接岸施設の向きに垂直に近づく。従って、接岸施設との衝突の可能性を低減しながら、船舶を精度良く自動着岸させることができる。ユーザは、表示を確認することで、自動着岸に伴う船舶の挙動を容易に把握することができる。
【0014】
前記の経路生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記経路は、複数の位置を繋ぐように生成される。前記第1位置は、前記経路において前記船舶が実現すべき順番として、前記第2位置の直前である。
【0015】
これにより、自動着岸のための簡素な経路を実現することができる。
【0016】
前記の経路生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記経路は、1又は複数の中間位置を含む。前記中間位置は、前記船舶が実現すべき順番として、前記第1位置の前である。前記経路生成装置は、方位設定モードを切り換えながら前記経路を生成可能である。前記方位設定モードは、その場旋回後平行移動モードと、移動中旋回モードと、を含む。前記その場旋回後平行移動モードは、前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、次の位置で船舶が実現すべき方位に当該船舶の方位を合わせるように当該中間位置でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の位置へ移動する。前記移動中旋回モードは、前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、当該中間位置から次の位置へ移動するのと同時に、次の位置で船舶が実現すべき方位に当該船舶の方位を合わせるように旋回する。
【0017】
これにより、旋回を先に完了してからの平行移動と、旋回しながらの移動と、を状況に応じて切り換えながら、船舶を自動着岸させる経路を生成することができる。
【0018】
前記の経路生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記方位設定モードは、その場旋回後前進モードを含む。前記その場旋回後前進モードでは、前記中間位置に前記船舶が到達した場合に、次の位置を向く方位に当該船舶の方位を合わせるように当該中間位置でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の位置へ移動する。
【0019】
これにより、旋回を先に完了してからの前進移動を状況に応じて行いながら、船舶を自動着岸させる経路を生成することができる。
【0020】
前記の経路生成装置においては、前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置と前記第2位置との間の直線距離、又は、前記中間位置と前記第1位置との間の直線距離に基づいて切り換えられるようにすることができる。
【0021】
また、前記の経路生成装置においては、前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置と前記第2位置との間の前記経路上の距離、又は、前記中間位置と前記第1位置との間の前記経路上の距離に基づいて切り換えられるようにすることもできる。
【0022】
これにより、船舶の方位を高精度で制御することが必要な自動着岸の終盤段階と、その前とで、船舶の方位をどのように定めるかを変更することができる。
【0023】
前記の経路生成装置においては、前記方位設定モードは、少なくとも、前記中間位置において前記経路の向きが変化する大きさに基づいて切り換えられることが好ましい。
【0024】
これにより、中間位置において経路が鋭く曲がる場合でも、船舶の移動軌跡が経路から大きく外れないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る操船制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
【
図2】ローカル地図生成部が生成する環境地図と、着岸点設定部が検出した直線と、の一例を示す図。
【
図3】経路を生成するために経路生成部が行う処理を示すフローチャート。
【
図4】経由点の目標方位を定めるサブルーチンを示すフローチャート。
【
図5】船舶が、経路の経由点を辿りながら方位を変化させる様子を示す模式図。
【
図6】表示データに基づくディスプレイの表示内容の例を示す図。
【
図7】自動着岸させる際の船舶の動きの例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る操船制御装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示す操船制御装置1は、船舶95に搭載して使用される。操船制御装置1は、船舶95を自動航行させることができる。自動航行には、船舶95を自動着岸させることが含まれる。
【0028】
本明細書でいう「着岸」には、船舶95を接岸施設に着ける場合が含まれる。「接岸施設」は、船舶を着けることが可能な場所を意味し、自然物、人工物を問わない。接岸施設には、岸壁、物揚場、桟橋及び浮桟橋等が含まれる。
【0029】
操船制御装置1が適用される船舶95の構成は特に限定されず、例えば、プレジャーボート、漁船、ウォータジェット船、電気推進船、ハイブリッド船等とすることができる。
【0030】
船舶95は、推進装置5を備える。
【0031】
推進装置5は、1対のスクリュー6L,6Rを備える。スクリュー6L,6Rは、船舶95の船尾の左右両側に配置されている。推進装置5は、駆動源(エンジンや電動モータ)の駆動力によりスクリュー6L,6Rを回転させることができる。それぞれのスクリュー6L,6Rの回転軸の向きは、上下方向の軸を中心として変更可能である。各スクリュー6L,6Rの回転軸の向き、停止/正転/逆転、及び回転速度は、互いに独立して変更することができる。それぞれのスクリュー6L,6Rを制御することによって、船舶95の横方向の平行移動、その場旋回等を含めた様々な操船を実現することができる。
【0032】
このスクリュー6L,6Rは、スターンドライブ又は船外機のスクリューとして構成することができる。スクリュー6L,6Rに代えて、水を噴出する向き及び速度を互いに独立して変更可能な左右1対のウォータジェットを配置しても良い。
【0033】
操船制御装置1は、経路コントローラ(経路生成装置)2と、制御コントローラ3と、を備える。
【0034】
経路コントローラ2は、船舶95を自動航行させるための経路を生成することができる。経路コントローラ2は、環境情報入力部21と、位置方位情報入力部22と、地図生成部31と、着岸点設定部41と、経路生成部51と、表示データ生成部71と、インタフェース部81と、を備える。
【0035】
具体的には、経路コントローラ2は、CPU、ROM及びRAMを備えるコンピュータとして構成されている。ROMには、経路コントローラ2を動作させるためのプログラムが記憶される。上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、経路コントローラ2を、環境情報入力部21、位置方位情報入力部22、地図生成部31、着岸点設定部41、経路生成部51、表示データ生成部71及びインタフェース部81として機能させることができる。
【0036】
環境情報入力部21には、船舶95が備えるLiDAR11が取得した周囲の環境データが入力される。LiDAR11は、例えば船首の近くに設置することができる。
【0037】
LiDAR11は、パルス光を照射することで、周囲の物体の有無を反射光により検出する。物体がある場合は、LiDAR11は、反射光を受光したときのパルス光の向きと、受光までの時間と、に基づいて、当該物体の方位と距離を検出する。LiDAR11は、この検出結果に基づいて、周囲に存在する物体を表す点群データを取得する。
【0038】
位置方位情報入力部22には、船舶95が備えるGNSS装置12が取得した船舶95の位置データが入力される。また、位置方位情報入力部22には、船舶95が備える方位センサ13が取得した船舶95の方位データが入力される。
【0039】
GNSS装置12は、衛星からGNSS電波を受信し、公知の測位計算を行うことによって、船舶95の現在の位置を取得する。GNSS測位は単独測位でも良いが、公知のDGNSS測位やRTK(リアルタイムキネマティック)測位を用いると、船舶95の位置を高精度で取得できる点で好ましい。
【0040】
方位センサ13は、船舶95の船首の向きを取得する。方位センサ13は、例えば磁気方位センサ又はサテライトコンパス等とすることができる。
【0041】
地図生成部31は、環境地図を生成する。環境地図は、経路の立案に利用する地図である。地図生成部31は、ローカル地図生成部32と、広域地図生成部33と、を備える。
【0042】
ローカル地図生成部32は、着岸位置が含まれている局所的な範囲の環境地図を生成する。言い換えれば、ローカル地図生成部32は、接岸施設近傍の環境地図を生成する。以下の説明では、ローカル地図生成部32が生成する環境地図をローカル地図と呼ぶことがある。
【0043】
図2には、ローカル地
図36の例が示されている。
図2には、説明の便宜のために、現在の船舶95の位置及び向きが併せて描かれている。
【0044】
図2に示すように、ローカル地
図36には、LiDAR11により物体が検知されず、船舶95が航行することができると判断された領域(つまり、フリースペース37)が含まれている。また、ローカル地
図36には、LiDAR11により検知された物体を示す点群が含まれる。船舶95から見て、LiDAR11により検知された物体の向こう側の領域は、物体の有無が不明であるオクルージョン領域38となる。
【0045】
広域地図生成部33は、ローカル地
図36の範囲外も含まれる環境地図を生成する。以下の説明では、広域地図生成部33が生成する環境地図を広域地図と呼ぶことがある。
【0046】
広域地図は図示しないが、当該広域地図には、ローカル地
図36と同様に、LiDAR11により物体が検知されず、船舶95が航行することができると判断された領域が含まれている。
【0047】
図1の着岸点設定部41は、ローカル地
図36から、船舶95を自動着岸させる候補となる位置を検出する。
図2に示すように、ローカル地
図36には、接岸施設を示していると考えられる点群が、オクルージョン領域38の手前側で一方向に並ぶように現れている。そこで、着岸点設定部41は、適宜の計算アルゴリズムを利用して、当該点群に沿った直線39を検出する。この直線39は、接岸施設の方向を表している。
【0048】
ユーザは、後述するインタフェース部81を介して、着岸点設定部41が検出した直線39の近傍の位置に、船舶95を実際に自動着岸させる目標となる点(以下の説明では、着岸点B1と呼ぶことがある)を設定することができる。ユーザは、船舶95の全長を考慮して、着岸可能と考えられる接岸施設(具体的には、直線39)の近くに着岸点B1を設定する。
図5には、
図2の例とは違う地形であるが、着岸点B1の例が示されている。船舶95は、接岸施設の向き(直線39の向き)に沿う向きで着岸する。ユーザは、着岸するときに船首を何れに向けるか、言い換えれば、左舷を接岸するか右舷を接岸するかを選択する。
【0049】
着岸点B1には、着岸位置での船舶95の目標位置及び目標方位に関する情報が与えられる。従って、着岸点B1は、実質的に、船舶95の着岸位置に対応する。
【0050】
ここで、目標位置は、自動航行する船舶95が目標とする位置である。目標方位は、自動航行する船舶95が目標とする方位である。目標とは、最終的な目標(着岸点B1)だけでなく、その手前の中間的な目標も含む。
【0051】
経路生成部51は、適宜の経路探索アルゴリズムに基づいて、着岸点B1までの船舶95の経路を計算する。この経路の計算には、ローカル地図生成部32が生成したローカル地
図36と、広域地図生成部33が生成した広域地図と、の両方が利用される。経路の計算が完了すると、経路生成部51は、
図5に示すように、経路56を定義する経由点A1,A2,・・・を複数生成する。また、経路生成部51は、それぞれの経由点A1,A2,・・・について、目標位置と、目標方位と、に関する情報を定める。
【0052】
以下の説明では、経由点A1,A2,・・・及び着岸点B1等、当該点における目標位置及び目標方位を実現するように船舶95が制御される点を、制御点と呼ぶことがある。経由点A1,A2,・・・は中間的な制御点であり、着岸点B1は最終の制御点である。経路56は、複数の制御点の目標位置を順番に結ぶように折れ線状に定められる。
【0053】
それぞれの制御点は、目標位置と、目標方位と、に関する情報を含む。自動着岸にあたっては、経路56における制御点の順番に従って、各制御点における目標位置及び目標方位を船舶95が順次実現するように制御が行われる。
【0054】
次に、経路生成部51の処理について詳細に説明する。
図3は、経路56を生成するために経路生成部51が行う処理を示すフローチャートである。
図4は、経由点A1,A2,・・・の目標方位を定めるサブルーチンを示すフローチャートである。
【0055】
着岸点B1が設定され、且つ、ユーザが、インタフェース部81を介して自動着岸に関する指示を行った場合、経路生成部51は、
図3の処理を開始する。
【0056】
経路生成部51は、
図5に示すように、接岸施設への着岸点B1(第2位置P2)から当該接岸施設の向きに垂直な方向に所定距離だけ離れた位置(第1位置P1)に、経由点A7の目標位置を生成する(
図3のステップS101)。
【0057】
この経由点A7は、最終的に制御点がN個定められ、着岸点B1をN番目の制御点と考えた場合、N-1番目の制御点である。即ち、ステップS101で定められる経由点A7(第1位置P1)は、船舶95が実現すべき順番として、着岸点B1(第2位置P2)の直前である。ただし、ステップS101の時点では経路56が求められていないため、制御点の数(言い換えれば、経由点A1,A2,・・・の数)は確定していない。
【0058】
次に、経路生成部51は、ステップS101で生成した経由点A7までの船舶95の経路を、適宜の経路探索アルゴリズムに基づいて計算する。この経路の計算には、広域地図生成部33が生成した広域地図が利用される。経路探索アルゴリズムは任意のものを使用して良いが、本実施形態では、Aスターアルゴリズムが用いられている。広域地図は2次元であるので、経路探索は2次元的に行われる。
【0059】
この経路探索では、予め設定された船舶95の全長が考慮される。これにより、船舶の現実の大きさを考慮した探索を行うことができる。考慮する方法は様々であるが、例えば、前述のフリースペース37の領域を当該全長分だけ内側にオフセットし、オフセット後の領域に基づいて経路探索を行うことが考えられる。
【0060】
ステップS102で、経路生成部51は、経路探索結果を折れ線で表すように、船舶95の経由点A1,A2,・・・の目標位置を1又は複数生成する。ただし、
図5では、始端側の2つの経由点A1,A2は省略されている。ステップS102で目標位置が定められる経由点A1,A2,・・・,A6は、船舶95の現在位置に近い側から数えて、1番目からN-2番目までの制御点に相当する。第1位置P1の経由点A7を除いた経由点A1,A2,・・・,A6は、中間位置に相当する。
【0061】
ステップS102で、全ての制御点(経由点A1,A2,・・・及び着岸点B1)の目標位置が確定し、これらの制御点を結ぶように経路56が定められる。ただし、ステップS102の段階では、それぞれの経由点A1,A2,・・・における目標位置が定められるだけで、目標方位は定められていない。
【0062】
次に、経路生成部51は、それぞれの経由点A1,A2,・・・に対して目標方位を定める(ステップS103)。本実施形態では、経路生成部51は、後述の方位設定モードを適宜に切り換えながら、複数の経由点A1,A2,・・・について1つずつ目標方位を定めていく。
【0063】
ステップS103の処理の詳細が、
図4にサブルーチンとして示されている。この処理が開始すると、経路生成部51は、着岸点B1の直前に実現すべき経由点A7について、その目標方位を、着岸点B1での目標方位と同じとなるように定める(ステップS201)。
【0064】
次に、直前回に目標方位を定めた経由点Anの1つ前の経由点An-1(ただし、nは整数)について、目標方位を定める規則に関する方位設定モードを決定する(ステップS202)。
【0065】
方位設定モードは、以下の4つから状況に応じて選択される。以下、それぞれの方位設定モードについて詳細に説明する。
【0066】
(1)第1の方位設定モードは、その場旋回後平行移動モードである。このモードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、船舶95はいったん停止し、次の経由点Anでの目標方位に当該船舶95の方位を合わせるようにその場で旋回する。船舶95は、停止状態での旋回が完了した後に、その旋回後の方位を維持しながら次の経由点Anへ移動する。その場旋回後平行移動モードは、自動着岸の終盤で船舶95が着岸点B1に十分に近づいている場合に行われることが想定されている。
【0067】
(2)第2の方位設定モードは、その場旋回後前進モードである。このモードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、船舶95はいったん停止し、次の経由点Anを向く方位に当該船舶95の方位を合わせるようにその場で旋回する。船舶95は、停止状態での旋回が完了した後に、その旋回後の方位を維持しながら次の経由点Anへ移動する。この移動時には、船舶95は実質的に前進することになる。その場旋回後前進モードは、自動着岸の序盤から中盤に掛けて行われることが想定されている。
【0068】
(3)第3の方位設定モードは、平行移動維持モードである。このモードでは、ある経由点An-1に船舶95が(その場旋回後平行移動モード又は平行移動維持モードで)到達した場合に、その時点での当該船舶95の方位をそのまま維持しながら、次の経由点Anへ移動する。平行移動維持モードは、その場旋回後平行移動モードと同様に、自動着岸の終盤で行われることが想定されている。
【0069】
(4)第4の方位設定モードは、移動中旋回モードである。このモードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、次の経由点Anに向かって移動する。この移動の途中で、当該次の経由点Anでの目標方位に船舶95の方位を合わせるように船舶95が旋回する。移動中旋回モードでは船舶95の移動と旋回を同時に行うため、その場旋回後平行移動モード及びその場旋回後前進モードと比較して、素早く行うことができる。移動中旋回モードは、自動着岸の序盤から中盤に掛けて行われることが想定されている。
【0070】
4つの方位設定モードのうち何れが選択されるかは、経由点An-1の位置、及び、当該経由点An-1で経路がどれほど鋭く曲がるか等を考慮して決定される。
【0071】
例えば、判断対象の経由点An-1と着岸点B1との間の直線距離又は経路上の距離が所定距離未満である場合は、平行移動維持モードが選択される。あるいは、判断対象の経由点An-1と、ステップS202で目標方位が定められた経由点A7と、の間の直線距離又は経路上の距離が所定距離未満である場合に、平行移動維持モードが選択されても良い。
【0072】
着岸点B1から経路を辿っていくときに、上記の距離が所定距離以上となる初めての経由点A5では、その場旋回後平行移動モードが選択される。
【0073】
判断対象の経由点An-1が着岸点B1から見て更に遠くなる場合、当該経由点An-1において経路56の向きが大きく変化しているか否かが判定される。経路56の向きが所定角度以上変化する場合は、当該経由点An-1では、その場旋回後前進モードが選択される。そうでない場合、当該経由点An-1では、移動中旋回モードが選択される。
【0074】
次に、経路生成部51は、選択された方位設定モードに従って、対象の経由点An-1の目標方位を求める(ステップS203)。具体的には、以下のとおりである。
【0075】
(1)その場旋回後平行移動モードでは、対象の経由点An-1の目標方位は、その直前の経由点An-2から対象の経由点An-1を向く方位と一致するように定められる。ただし、経路生成部51は、対象の経由点An-1の直後に実現すべき制御点(以下、遷移点と呼ぶことがある)を、経路56に挿入する。この遷移点の目標位置は、対象の経由点An-1の目標位置と同一である。遷移点の目標方位は、直後の経由点Anでの目標方位と一致するように定められる。
【0076】
(2)その場旋回後前進モードでは、対象の経由点An-1の目標方位は、その場旋回後平行移動モードと同様に、その直前の経由点An-2から対象の経由点An-1を向く方位と一致するように定められる。ただし、経路生成部51は、対象の経由点An-1の直後に実現すべき制御点(遷移点)を、経路56に挿入する。この遷移点の目標位置は、対象の経由点An-1の目標位置と同一である。遷移点の目標方位は、対象の経由点An-1から直後の経由点Anを向く方位と一致するように定められる。
【0077】
(3)平行移動維持モードでは、対象の経由点An-1の目標方位は、その直後の経由点Anでの目標方位と一致するように定められる。
【0078】
(4)移動中旋回モードでは、対象の経由点An-1の目標方位は、その直前の経由点An-2から対象の経由点An-1を向く方位と一致するように定められる。
【0079】
経路生成部51は、1つの経由点An-1の目標方位を上記のように定めた後、全ての経由点A1,A2,・・・,A7について目標方位を定めたか否かを判定する(ステップS204)。目標方位を定めていない経由点A1,A2,・・・,A7が残っている場合は、処理はステップS202に戻る。
【0080】
その場旋回後平行移動モード及び平行移動維持モードでは、対象の経由点An-1の目標方位が、その直後の経由点Anにおける目標方位に依存する。このことから、
図4のフローチャートでは、経由点A1,A2,・・・,A7の目標方位を、着岸点B1に近い側から順番に(言い換えれば、船舶95が辿る順番とは逆順で)求めている。
【0081】
ステップS204の判断で、全ての経由点A1,A2,・・・,A7について目標方位を定めた場合は、サブルーチンを抜けて
図3のメインルーチンに戻る。その後、メインルーチンの処理が終了する。
【0082】
上記の処理により生成された経路56の例が、
図5に示されている。この例で示すように、全体の経路56のうちで着岸位置に近い位置では(経由点A5から着岸点B1までは)、接岸施設に沿う方向に船舶95の方位を維持したまま、船舶95が平行移動する。
【0083】
移動中旋回モードとなった区間56aでは、船舶95は移動しながら旋回する。従って、素早い移動に適している。ただし、当該区間56aでは船舶95が移動と旋回を同時に行うため、実際の船舶95の移動軌跡は、
図5の経路56に示すような直線状ではなく、破線のように膨らむ可能性が高い。
【0084】
一方、その場旋回後前進モードとなった経由点A4では、当該経由点A4で船舶95をいったん停止して、次の経由点A5に向くように旋回させて船舶95の方位を調整してから、当該次の経由点A5に船舶95を移動させる。そのため、区間56bでは、船舶95の移動軌跡の膨らみを抑制することができる。その場旋回後前進モードは、入り組んだ場所での航行に適している。
【0085】
図1の表示データ生成部71は、船舶95の現在位置、環境地図、着岸位置等を表示するための表示データを生成することができる。
図6には、表示データによる後述のディスプレイの表示例が示されている。表示データは、例えば、現在位置の船舶95をシンボル図形で示し、経路56を折れ線で示すとともに、各経由点A1,A2,・・・及び着岸点B1(第1位置P1及び第2位置P2を含む)において船舶が実現すべき位置及び向きを図形で示すためのデータとすることができる。これにより、ユーザは、ディスプレイの画像を見て、船舶95の自動着岸時の挙動を事前に容易に把握することができる。
【0086】
図1のインタフェース部81は、操船制御装置1に対するユーザインタフェース機能を有している。インタフェース部81は、例えば、ディスプレイと、入力装置と、を備える構成とすることができる。この場合、ユーザは、ディスプレイの表示内容を参照し、入力装置を操作することによって、指示を入力することができる。入力装置は、キーボード、マウス、又はタッチパネル等とすることができる。
【0087】
制御コントローラ3は、CPU、ROM及びRAMを備えるコンピュータである。ROMには、推進装置5の動作(本実施形態では、左右それぞれのスクリュー6L,6Rの動作)を制御するためのプログラムが記憶される。制御コントローラ3は、このプログラムに従って、推進装置5を制御する。
【0088】
船舶95は、当該船舶95を操作するための操作装置91を備える。ユーザが操作装置91を操作した場合、当該操作装置91への操作内容が、制御コントローラ3に出力される。制御コントローラ3は、入力された操作内容に応じて推進装置5の動作を制御する。従って、ユーザは、操作装置91を操作することによって、船舶95を手動航行させることができる。操作装置91は、例えば、ハンドル、コントロールレバー、ジョイスティック等とすることができる。
【0089】
経路コントローラ2が経路56を生成した場合、制御コントローラ3は、制御点(即ち、経由点A1,A2,・・・、着岸点B1、及び遷移点)についてそれぞれ定められた目標位置及び目標方位を利用して、船舶95を自動航行させることができる。制御コントローラ3が自動航行を行うとき、経由点A1,A2,・・・と遷移点は、全く同等に取り扱われる。
【0090】
自動航行(自動着岸)は、以下のようにして行われる。即ち、制御コントローラ3は、経路56の最も始端側に位置する制御点を、注目制御点として設定する。制御コントローラ3は、船舶95の現在位置と、注目制御点の目標位置と、の差をなくすために必要な船舶95の推力を算出する。また、制御コントローラ3は、船舶95の現在方位と、注目制御点の目標方位と、の差をなくすために必要な船舶95の回頭モーメントを算出する。そして、制御コントローラ3は、求めた推力及び回頭モーメントを実現する指示を推進装置5に与える。船舶95の現在位置が注目制御点の目標位置と一致し、かつ、船舶95の現在方位が注目制御点の目標方位と一致した場合、制御コントローラ3は、注目制御点を、経路56において当該制御点の次に実現すべき制御点に変更する。以上の処理を繰り返すことにより、船舶95の方位を適切に制御しながら、当該船舶95を経路56に従って着岸点B1まで自動航行させることができる。
【0091】
なお、制御コントローラ3は、船舶95の位置の変化から船舶95の速度及び角速度を算出し、算出したデータを利用した速度制御を行っても良い。船舶95の位置の変化は、例えば、GNSS装置12が短い時間間隔で取得する船舶95の位置データから求められる。
【0092】
図7を参照して、自動着岸の一例について説明する。
図7は、自動着岸させる際の船舶95の動きの一例を示す図である。
【0093】
図7に示す例では、接岸施設である桟橋の近傍に、着岸点B1(第2位置P2)が設定されている。また、着岸点B1から桟橋の向きに垂直な方向で適宜の距離オフセットした位置に、着岸点B1の直前に実現すべき経由点A3(第1位置P1)が設定されている。当該経由点A3での目標方位は、着岸点B1の目標方位と同一である。経由点A3よりも手前側には、複数の経由点A1,A2が定められている。
【0094】
この例で、自動着岸が指示された船舶95は、1つ目の経由点A1に到達した後、旋回しながら移動して、次の経由点A2に到達する。この経由点A2で船舶95はいったん停止して、次の経由点A3の目標方位と同一の方位となるように、その場で旋回する。その後、船舶95は、経由点A2から次の経由点A3に向かって平行移動する。次に、船舶95は、現在の方位を保ったまま、経由点A3から着岸点B1に向かって平行移動する。
【0095】
このように、本実施形態では、経由点A2、経由点A3、着岸点B1の順に船舶95が移動する際に、船舶95は、旋回と平行移動を同時に行わず、平行移動のみを行う。従って、旋回と平行移動を同時に行う場合に発生する横流体力(クロスフローと呼ばれる)の影響を防止することができる。また、仮に旋回と平行移動を同時に行う場合は、推進装置5が発生させる推力は旋回のための推力と平行移動のための推力とに分けて把握することができるが、旋回の制御遅れによって実際の船舶95の方位が意図したものと異なるため、船舶95が平行移動のために発生させる推力の実際の向きも意図した方位からズレてしまう。この点、本実施形態では船舶95の平行移動のみを行うため、そのようなズレの影響を抑制できるので、船舶95の軌道が膨らむことを抑制することができる。この結果、経路56から船舶95があまり外れないように自動着岸を精度良く行うことができる。
【0096】
図7の状況で自動着岸する場合には、実線で示す船舶95をそのまま前進させて着岸点B1に到達させる経路も考えられる。しかしながら、この場合、船舶95は桟橋と近接しながら航行するため、右舷に桟橋が衝突する可能性がある。この点、本実施形態では、着岸点B1から桟橋の向きに垂直な方向で所定距離オフセットした経由点A3を通過するように、経路56が形成される。このような迂回的な経路56に従って自動着岸制御が行われることで、桟橋との衝突の可能性を減らすことができる。
【0097】
以上に説明したように、本実施形態の経路コントローラ2は、船舶95を接岸施設に着岸させる経路56を生成する。経路56は、第1位置P1と、第2位置P2と、を含む。第1位置P1は、接岸施設における船舶95の着岸点B1(第2位置P2)から接岸施設の向きに垂直な方向で所定距離オフセットした経由点(
図5の例では経由点A7、
図6の例では経由点A5、
図7の例では経由点A3)である。第2位置P2は、接岸施設における船舶95の着岸点B1である。船舶95が、第1位置P1から第2位置P2まで、接岸施設に沿った方向に船舶95の方位を保ちながら移動するように経路56が生成される。
【0098】
これにより、船舶95は、当該船舶95の方位を接岸施設に沿った方向に一致させながら、第1位置P1から第2位置P2へ、接岸施設の向きに垂直に近づく。従って、接岸施設との衝突の可能性を低減しながら、船舶95を精度良く自動着岸させることができる。
【0099】
また、例えば
図5の例で、経路56は、複数の位置を繋ぐように生成される。第1位置P1は、船舶95が実現すべき順番として、第2位置P2の直前である。
【0100】
これにより、自動着岸のための簡素な経路56を実現することができる。
【0101】
また、例えば
図5の例で、経路56は、1又は複数の経由点A1,A2,・・・,A6を含む。これらの経由点A1,A2,・・・,A6は、船舶95が実現すべき順番として、経由点A7(第1位置P1)の前である。経路コントローラ2は、方位設定モードを切り換えながら経路56を生成可能である。方位設定モードは、その場旋回後平行移動モードと、移動中旋回モードと、を含む。その場旋回後平行移動モードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、次の経由点Anで船舶95が実現すべき方位に船舶95の方位を合わせるように当該経由点An-1でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の経由点Anへ移動する。移動中旋回モードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、当該経由点An-1から次の経由点Anへ移動するのと同時に、次の経由点Anで船舶95が実現すべき方位に船舶95の方位を合わせるように旋回する。
【0102】
これにより、旋回を先に完了してからの平行移動と、旋回しながらの移動と、を状況に応じて切り換えながら、船舶95を自動着岸させる経路56を生成することができる。
【0103】
また、本実施形態の経路コントローラ2において、方位設定モードは、その場旋回後前進モードを含む。その場旋回後前進モードでは、ある経由点An-1に船舶95が到達した場合に、次の経由点Anを向く方位に船舶95の方位を合わせるように経由点An-1でその場旋回し、旋回後の方位を保ちながら次の経由点Anへ移動する。
【0104】
これにより、旋回を先に完了してからの前進移動を状況に応じて行いながら、船舶95を自動着岸させる経路56を生成することができる。
【0105】
また、本実施形態の経路コントローラ2において、方位設定モードは、経由点An-1と第2位置P2との間の直線距離、又は、経由点An-1と第1位置P1との間の直線距離に基づいて切り換えられる。
【0106】
ただし、方位設定モードは、経由点An-1と第2位置P2との間の経路56上の距離、又は、経由点An-1と第1位置P1との間の経路56上の距離に基づいて切り換えられても良い。
【0107】
これにより、船舶95の方位を高精度で制御することが必要な自動着岸の終盤段階と、その前とで、船舶95の方位制御を変更することができる。
【0108】
本実施形態の経路コントローラ2において、方位設定モードは、少なくとも、経由点An-1において経路56の向きが変化する大きさに基づいて切り換えられる。
【0109】
これにより、経由点An-1において経路56が鋭く曲がる場合でも、船舶95の移動軌跡が当該経路56から大きく外れないようにすることができる。
【0110】
また、本実施形態の経路コントローラ2は、表示データ生成部71を備える。表示データ生成部71は、第1位置P1及び第2位置P2と、第1位置P1及び第2位置P2のそれぞれにおいて船舶95が実現すべき向きと、を図形によって表示するための表示データ75を生成する。
【0111】
これにより、ユーザは、表示を確認することで、自動着岸に伴う船舶95の挙動を容易に把握することができる。
【0112】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0113】
始端から終端(着岸点B1)までの経路56の全体を通じて船舶95が平行移動するように、経路生成部51が経路56を生成しても良い。
【0114】
方位設定モードの選択は、経路56の周囲にフリースペース37が広く確保されているか否かを考慮して行われても良い。
【0115】
操船制御装置1は、例えば、船舶95に適宜に設置されるIMUから姿勢データを取得し、当該姿勢データを利用して船舶95の動作を制御しても良い。
【0116】
位置方位情報入力部22には、GNSS装置12及びIMUから求められる船舶95の現在方位に関するデータが入力されても良い。
【0117】
広域地図生成部33は、ローカル地
図36を取得し、当該ローカル地
図36のデータを利用して、広域地図を生成しても良い。また、広域地図は、ローカル地
図36を利用して、適宜に更新しても良い。
【0118】
地図生成部31は、適宜の手法に基づいて座標変換した環境地図を生成しても良い。例えば、ローカル地図生成部32は、LiDAR11の設置位置と方位情報を利用して、LiDAR座標系からGNSS座標系に座標変換したローカル地
図36を生成しても良い。また、ローカル地図生成部32は、GNSSの緯度及び経度のデータを利用して、GNSS座標系からNEU直交座標系に座標変換したローカル地
図36を生成しても良い。
【0119】
上記の実施形態では、スクリュー6L,6Rの回転軸の向きをそれぞれ独立して変更可能に構成されている。しかしながら、推進装置5の方式としては船舶95の横方向の平行移動及びその場旋回等を実質的に実現できれば良く、他の方式に変更することができる。例えば、推進装置5を、回転軸の向きを変更不能な左右1対のスクリューと、舵と、船首側に設けたサイドスラスタと、により構成することが考えられる。また、推進装置5を、回転軸の向きを変更不能な1つのスクリューと、舵と、船首側及び船尾側のそれぞれに設けたサイドスラスタと、により構成することもできる。
【符号の説明】
【0120】
1 操船制御装置
2 経路コントローラ(経路生成装置)
P1 第1位置
P2 第2位置