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特開2023-2469抗ウイルス及び抗がんワクチンに用いる新規なmRNA組成物及びその製造方法
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  • 特開-抗ウイルス及び抗がんワクチンに用いる新規なmRNA組成物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002469
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】抗ウイルス及び抗がんワクチンに用いる新規なmRNA組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221227BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20221227BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/11 Z
A61K31/7105
A61P31/12
A61P37/04
A61K48/00
A61P35/00
A61K9/127
A61K47/18
A61K39/12
C12N7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095318
(22)【出願日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】63/222,666
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/209,969
(32)【優先日】2021-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/210,988
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/213,258
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/489,357
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508324396
【氏名又は名称】美洛生物科技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】505008028
【氏名又は名称】中央研究院
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Academia Road,Section 2,Nankang Taipei,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 希龍
(72)【発明者】
【氏名】沈 家寧
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲イ▼秀
(72)【発明者】
【氏名】陳 守坤
(72)【発明者】
【氏名】呉 堂熙
(72)【発明者】
【氏名】王 梅榮
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗ウイルス及び抗がんワクチンの製造・開発に用いるmRNA組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】mRNA組成物及びその製造方法であって、少なくとも5’-ヘアピンメッセンジャーRNA(5hmRNA)及び/又はメッセンジャーヘアピンメッセンジャーRNA(mhmRNA)、或いはその両者を含み、前記5hmRNAは、少なくとも所望のmRNAの5’-UTR領域においてステムループRNA構造を含み、前記mhmRNAは、少なくとも、両側に2つの同じ又は異なる目的のmRNA配列を有するステムループRNA構造を含み、前記5hmRNA及びmhmRNAは、少なくとも付加的なヘリカーゼ活性を有する新規なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)・in vitro転写(IVT)反応と改良された緩衝系によって生成される、組成物及び方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス及び抗がんワクチンの製造・開発に用いる新規なmRNA組成物及びその製造方法であって、
少なくとも5’-ヘアピンメッセンジャーRNA(5hmRNA)及び/又はメッセンジャーヘアピンメッセンジャーRNA(mhmRNA)、或いはその両者を含み、前記5hmRNAは、少なくとも所望のmRNAの5’-UTR領域においてステムループRNA構造を含み、前記mhmRNAは、少なくとも、両側に2つの同じ又は異なる目的のmRNA配列を有するステムループRNA構造を含み、前記5hmRNA及びmhmRNAは、少なくとも付加的なヘリカーゼ活性を有する新規なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)・in vitro転写(IVT)反応と改良された緩衝系によって生成される、組成物及び方法。
【請求項2】
前記5hmRNAは、主として5’-ステムループRNA及び3’-mRNAの2つの部分から構成される、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項3】
前記5’-ステムループRNAは、少なくとも、好ましくは約10~800ヌクレオチドの長さを有する、完全又は不完全に一致した単一又は複数のヘアピン構造と、好ましくは約1~500ヌクレオチド離れて存在し、前記ステムループ構造と次の3’-mRNAの開始コドンの間に位置する短い配列とを有す、請求項2に記載の組成物及び方法。
【請求項4】
前記5’-ステムループRNA内の前記複数のヘアピン構造は、各2つのヘアピンRNA構造間に、好ましくは約2~500ヌクレオチド離れて存在するスペーサー配列をさらに有す、請求項3に記載の組成物及び方法。
【請求項5】
前記3’-mRNAは、少なくとも1つの所望のタンパク質又はペプチドをエンコードし、且つその3’末端に配列番号1又は配列番号2のいずれかを有す、請求項2に記載の組成物及び方法。
【請求項6】
前記5’-ステムループRNA構造は、さらに3’-mRNAの翻訳を開始・強化する為の人工的リボソーム内部侵入部位(IRES)模倣物として機能し得る、請求項2に記載の組成物及び方法。
【請求項7】
前記mhmRNAは、5hmRNAの5’末端にさらなるmRNA(5’-mRNA)配列を付加することによって形成され、前記mhmRNAの前記ステムループRNA構造は最初の5’-mRNAと次の3’-mRNAの個々の翻訳を、それぞれ同じ又は異なるタンパク質/ペプチドに分離する中間セパレーターとして機能する、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項8】
前記ステムループRNA構造は、さらに3’-mRNAの翻訳を開始・強化する為の人工的リボソーム内部侵入部位(IRES)模倣物として機能し得る、請求項7に記載の組成物及び方法。
【請求項9】
前記mhmRNAの最初の5’-mRNAは、トランスフェクト細胞において第2の3’-mRNA配列を増幅するためのウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のようなRNAレプリカーゼをエンコードし、トランスフェクト細胞におけるmRNA自己増幅機構を得る、請求項7に記載の組成物及び方法。
【請求項10】
5hmRNA及びmhmRNAの前記ステムループRNA構造は、少なくとも配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及びこれらの組み合わせから選ばれる配列を含み得る、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項11】
標的細胞にトランスフェクトされた後、5hmRNAとmhmRNAの両者は、少なくとも所望のタンパク質/ペプチドにさらに翻訳され、予め設計された所望の生物学的効果又は細胞機能を誘発することができ、前記生物学的効果又は細胞機能は、特異的免疫反応の誘発、ウイルス感染の予防、ウイルス複製/構築の抑制、及び/又は腫瘍/がん細胞の増殖の阻害、並びにがん細胞死の誘導を含むが、それらに限定されない、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項12】
前記5hmRNA及びmhmRNAは、トランスフェクト細胞においてさらに処理され、少なくとも特異的標的遺伝子を不活性化するのに有用なshRNA及び/又はpiRNAを少なくとも生成し得る、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項13】
前記特異的標的遺伝子は、ウイルス及び/又はがん関連遺伝子などの様々な疾患関連細胞及び病原性遺伝子を含む、請求項12に記載の組成物及び方法。
【請求項14】
前記ヘリカーゼ活性は、DNA及びRNAの両者の二次構造をほどくことができる、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項15】
前記5hmRNA及びmhmRNAの設計は、新規な薬学上及び治療上の応用、例えば、抗ウイルス及び/又は抗がん治療に用いるワクチン及び/又は医薬品の開発に有用である、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項16】
前記5hmRNA又はmhmRNA、或いはその両者は、抗ウイルスワクチンの成分として使用される、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項17】
前記5hmRNA又はmhmRNA、或いはその両者は、抗がん剤の成分として使用される、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項18】
前記5hmRNA又はmhmRNA、或いはその両者は、少なくともin vitro、ex vivo及び/又はin vivoでの細胞トランスフェクションのための送達剤とさらに混合される、請求項1に記載の組成物及び方法。
【請求項19】
前記送達剤は、グリシルグリセリン、リポソーム、ナノ粒子、リポソームナノ粒子、共役系分子、輸液製剤、遺伝子銃材料、エレクトロポレーション粒子、トランスポゾン、及びそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の組成物及び方法。
【請求項20】
前記改良された緩衝系は、0.001~10mMのベタイン(トリメチルグリシン、TMG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び/又は3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、及び/又はそれらの組み合わせを添加した1×転写緩衝液を含む、請求項1に記載の組成物及び方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、RNAベースの抗ウイルス及び/又は抗がんワクチンや医薬品の開発・製造に有用である、新規なmRNA組成物及びその製造方法に関する。こうして得られたmRNAは、予防用ワクチン及び/又は医薬品のみならず治療用ワクチン及び/又は医薬品の製造に使用することができる。本発明は、「5’-ヘアピンメッセンジャーRNA(5’-hairpin messenger RNA,5hmRNA)」及び「メッセンジャーヘアピンメッセンジャーRNA(messenger-hairpin-messenger RNA,mhmRNA)」の2種類の関連mRNA構築物を含む。簡潔に言えば、5hmRNAとmhmRNAの両者は、少なくともヘアピン様ステムループ構造を含む(即ち、完全又は不完全に一致した単一又は複数のヘアピンRNA)。5hmRNAは、少なくともタンパク質/ペプチドコーディングmRNAの5’-非翻訳領域(5’-UTR)においてステムループRNA構造を含み、mhmRNAは、両側に2つのタンパク質/ペプチドコーディングmRNA配列を有する中間ステムループRNA構造を含む。mhmRNAにおいて、最初の5’-mRNAは、好ましくは、トランスフェクト細胞において第2の3’-mRNAを増幅するためのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のようなRNAレプリカーゼをエンコードする。標的細胞にトランスフェクトされた後、5hmRNAとmhmRNAの両者は、少なくとも予め設計された所望の生物学的効果又は細胞機能を誘導する為の所望のタンパク質/ペプチドにさらに翻訳され、、これらの生物学的効果又は細胞機能は、特異的免疫反応の誘発、ウイルス感染の予防、ウイルス複製の抑制、ウイルス構築の阻害、及び/又は腫瘍/がん細胞の増殖の阻害、並びにがん細胞死の誘導を含むが、それらに限定されない。高度に構造化された5hmRNA及びmhmRNAを製造するために、新規なPCR-IVT方法が開発され、特別に設計されたRNAポリメラーゼとヘリカーゼの混合物の活性と合わせて使用されている。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応・in vitro転写(PCR-IVT)方法は、センスメッセンジャーRNA(mRNA)及びアンチセンスRNA(aRNA)の製造に20年以上にわたって広く使用されてきた(図1)。しかしながら、ヘアピン様ステムループ構造は原核生物RNAポリメラーゼの内因性転写終結シグナルであるため、IVT反応はヘアピン様RNAの製造にはまだ有用ではない(McDowellら,Science 266:822-825,1994)。その結果、原核生物関連RNAポリメラーゼを使用した従来のPCR-IVT方法では、ヘアピン様RNAの生成効率が低いという問題を解決できない。
【0003】
PCRとIVTとを組み合わせたPCR-IVT方法を使用して、mRNA及び/又はRNA-DNAハイブリッドを製造することは、Lin氏らによって最初に報告された(Lin氏の米国特許第7,662,791号、第8,080,652号、第8,372,969号、及び第8,609,831号)。図1に示すように、Lin氏の方法では、まず、PCR及び/又は逆転写(RT)を用いて、得られたPCR産物に特異的RNAプロモーター・プライマーを組み込むことにより、IVTのためのプロモーター駆動型DNAテンプレートを生成する。次に、IVT反応を行って、DNAテンプレートから所望のRNA分子を生成し、増幅する(Lin氏ら,Methods Mol Biol.221:93-101,2003)。続いて、任意のRT反応を行って、DNA部分が所望のRNA(即ち、mRNA)を分解から保護するRNA-DNAハイブリッドを生成してもよい。DNAの保護の下、RNA-DNAハイブリッドに対して、所望のRNA/mRNAへの5’-キャップ及び/又は3’-ポリ(A)尾部の付加など、さらなるmRNA修飾を行うことができる(Lin SL,Methods Mol Biol,221:289-293,2003)。その後、RNaseのないDNase消化を行うことによってDNA部分を除去し、修飾後のRNA/mRNAを送達剤と配合し、標的細胞に導入(トランスフェクション)して所望のタンパク質/ペプチドを生成することができる。或いは、所望のRNAを細胞に導入して、piwi相互作用(PIWI-interacting)RNA(piRNA)を生成して特異的標的遺伝子を不活性化(サイレンシング)してもよい(Lin氏の米国特許第8,372,969号及び第8,609,831号)。しかしながら、Lin氏の方法によれば、少なくとも特異的な生物学的及び細胞学的効果を誘発するためのmRNA及びpiRNAを生成することができるが、これらのmRNA及びpiRNAは、ヘアピン様又はヘアピン含有RNAではない。そのため、従来のLin氏のPCR-IVT方法は、in vitroでのヘアピン様RNAの生成効率が低いという問題を解決するための効果的な方法を開示していなかった。
【0004】
従来のmRNAの製造方法は、Lin氏のPCR-IVTの概念と方法の一部又は全部に大きく基づくものである(Lin氏の米国特許第7,662,791号、第8,080,652号、第8,372,969号及び第8,609,831号)。明らかに、当業者は、Lin氏の方法を使用して、mRNA及び/又はmRNA-cDNAハイブリッド配列の一部又は全体をin vitroで生成することを容易に推知することができる。特に、商業用の半自動又は全自動IVT装置にはLin氏の概念及び方法に基づいて設計及び開発されたものもある。しかしながら、これらの従来のmRNAの製造方法及び装置は、ヘアピン様RNAの製造において存在する問題を解決するための有効な解決手段をまだ提供していなかった。この問題を解決するために、Linらは、原核生物(即ち、細菌)でのプラスミド駆動RNA発現を使用する別の方法を開発した(Lin氏の米国特許第9,637,747号及び第9,783,811号)。これらの原核生物により生成したmRNAは、多数のヘアピン様ステムループ構造を含み得る。当該方法において、ヘアピンRNAに起因する内因性転写終結の問題を解決するために、原核細胞を培養する培地に化学的転写誘導剤を添加することで、ヘアピン様RNAの生産率を顕著に増加させる(McDowellら,Science 266:822-825,1994)。ただし、当該プラスミド駆動RNA発現方法は原核細胞を必要とし、原核生物に限定される。
【0005】
ヘアピン様RNA構造がmRNAの転写を阻害するだけでなく、5’-キャッピングや修飾などの特定のmRNAプロセシングをも阻害することが広く知られているため、ワクチン/医薬品の製造のためのヘアピン様又はヘアピン含有mRNAをin vitroで生成することを当業者が推知することは合理的でない。従来の概念では、mRNAにおいてヘアピン様構造が存在すれば、mRNAからのタンパク質への翻訳さえも阻害されかねない。従って、高度に構造化されたRNAの生成効率の低さがmRNAワクチンや医薬品の開発を大きく妨げている。
【0006】
本発明の重要な新規性のうちの1つは、5’末端又は中間ヘアピン/ステムループ含有mRNA構築物を生成し、使用することにより、ワクチン/医薬品の設計・開発を図ることにある。これに対して、従来のPCR-IVT方法は、いずれもヘアピン様RNAの生成効率が低いという問題を解決できない。従って、高度に構造化されたRNAの生成効率を高めるための改良されたPCR-IVT方法は、非常に望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の原理は、新規な酵素PCR-IVT系を使用した「5’-ヘアピンメッセンジャーRNA(5hmRNA)」及び/又は「メッセンジャーヘアピンメッセンジャーRNA(mhmRNA)」(図2)の製造と、薬学上及び治療上の適用、例えば抗ウイルス及び/又は抗がん治療に有効なワクチンや医薬品の設計及び開発のための5hmRNA又はmhmRNA或いはその両者の使用に基づく。この目的を達成するために、高効率なPCR-IVT方法が重要である。これは、5hmRNAとmhmRNAの両者が高度に構造化されたmRNAであり、従来のPCR-IVT方法では高度に構造化されたRNAを有効に製造できないためである。明らかに、5hmRNA/mhmRNAを効率的に製造できるだけでなく、且つそのコストを削減し、より安価で有効なmRNAワクチン/医薬品を開発して公用化するために、高度に構造化されたRNAを製造するための新規な方法が必要であると考えられる。
【0008】
従来、5’-UTRにヘアピンRNA構造が存在すると、mRNAの転写を阻害するだけでなく、mRNAからのタンパク質への翻訳も阻害することが広く知られているため、ワクチン/医薬品の製造のためのヘアピン様又はヘアピン含有mRNAをin vitroで生成することを当業者が推知することは合理的でない。この問題を解決するために、本発明は、RNAポリメラーゼとヘリカーゼの混合物の活性を合わせた新規なIVTシステムを採用した。IVTにヘリカーゼ活性を付加することで、DNAテンプレートとmRNA産物の二次構造を著しく減少させ、高度に構造化されたmRNAをより効率的に製造することが可能となる。従って、IVTにおけるRNAポリメラーゼとヘリカーゼの混合物の活性の効率を維持し、向上させるための改良された緩衝系も必要となる。興味深いことに、ヘリカーゼが原核生物の転写終結に関与している可能性があることを報告した先行研究が存在するが、本発明は、IVT中のmRNA製造においてヘリカーゼの全体的に異なった機能を示している。或いは、付加のヘリカーゼ活性を有するコロナウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のような特定のウイルスレプリカーゼを使用して、同様に高度に構造化されたmRNAを製造できることを最近見出した。
【0009】
天然のリボソーム内部侵入部位(internal ribosome entrysite,IRES)を使用して、mRNAワクチンを開発することを提案した先行研究も存在する(Schlakeら,RNA biology 9:1319-1330,2012; Koら,J. Micobiol. Biotechnol. 29:127-140,2019)。しかしながら、これらの天然IRESは高度に構造化されたRNAモチーフであるため、生産率が低く、その開発を大きく妨げている。この問題を解決するために、本明細書において、高度に構造化されたmRNAの生産率を顕著に増加さるだけでなく、その製造コストを低減させるのに有用である、新しいRNAポリメラーゼとヘリカーゼの混合物の活性を合わせた新規なPCR-IVT方法を提供する。これにより、本発明を使用して、従来のIRES含有mRNAワクチン開発における生産率が低いという問題を解決することが可能となる。
【0010】
本発明により製造された5hmRNA及びmhmRNAの構造において、5’-ヘアピン様ステムループRNA構造を特別に設計することにより、細胞内RNAプロセシング酵素を刺激してヘアピンを除去し、それに続く全てのmRNA配列に5’-キャップを付加することがでるだけでなく、少なくともsiRNAや前駆体マイクロRNA(pre-miRNA)に類似した小さいヘアピンRNA(shRNA)を同時に生成することができ、この小さいヘアピンRNAは、少なくとも細胞性遺伝子、ウイルス性遺伝子、及び/又はがん関連遺伝子などの特異的標的遺伝子を不活性化するという機能をさらに発揮することができる。なお、RNAプロセシング酵素は、全ての種類の5’-ヘアピン様ステムループRNA構造を処理できるわけではなく、特定の特別に設計された5’-ヘアピン様ステムループRNA構造のみを処理できる。さらに調査を進めた結果、いくつかの特別に設計されたステムループRNAは、人工的リボソーム内部侵入部位(IRES)として、次のキャップ構造の有無に関わらず、mRNAの翻訳を開始・促進し得ることが示唆された。その結果、処理後と未処理のいずれの条件においても、これらの特別に設計されたステムループRNA構造は、次のmRNAからのタンパク質/ペプチド合成を容易に行うことができる。
【0011】
とある好ましい実施形態(図2)において、5hmRNAは、主に5’-ステムループRNA及び3’-mRNAの2つの部分から構成される。原則として、5’-ステムループRNAは、少なくとも、好ましくは約10~800ヌクレオチドの長さを有する、完全又は不完全に一致した単一又は複数のヘアピン構造と、好ましくは約1~500ヌクレオチド離れて存在する、ステムループ構造と次の3’-mRNAの開始コドンの間に位置する短い配列とを有す。5’-ステムループRNAにおいて複数のヘアピン構造が存在する場合、ヘアピンRNA構造2つ毎の間にスペーサー配列を配置する必要があり、当該スペーサー配列の長さは、約2~500ヌクレオチド離れていることが好ましい。例えば、配列番号3~配列番号15に記載されるように、ヘアピン構造とスペーサーは、それぞれ同様な又は異なる配列を有してもよい。また、5’-ステムループRNAは、3’-mRNAの翻訳を開始・促進するための人工的IRES模倣物として機能することができる。一方、3’-mRNAは、所望のタンパク質又はペプチドを少なくとも1つエンコードし、且つその3’末端に5’-AAUAAA-3’(配列番号1)又は5’-AAUUAAA-3’(配列番号2)配列のいずれかを含む。mRNA翻訳後に得られるタンパク質/ペプチドにより、少なくとも生物学的機能又は目的の効果を得ることができ、これらの生物学的機能又は目的の効果は、特異的免疫反応の誘発、ウイルス感染の予防、ウイルス構築の抑制、ウイルス複製の抑制及び/又は腫瘍/がん細胞の増殖の阻害、並びにがん細胞死の誘導を含むが、それらに限定されない。
【0012】
別の好ましい実施形態(図2)において、mhmRNAは、5hmRNAの5’末端にさらなるmRNA(5’-mRNA)配列を付加することによって形成される。その結果、ステムループRNAは、最初の5’-mRNAと次の3’-mRNAの個々の翻訳を、それぞれ同様な又は異なるタンパク質/ペプチドに分離する中間セパレーターとして機能するようになる。さらに、5hmRNAと同様に、ステムループRNA構造は、細胞内RNAプロセシング酵素を刺激してヘアピンを除去し、3’-mRNAに5’-キャップを付加し、且つ少なくともshRNA及び/又はpiRNAを生成して、少なくとも特異的標的遺伝子を不活性化(サイレンシング)してもよい。これらの標的遺伝子は、様々な疾患関連細胞及び/又は病原性遺伝子、例えば、細胞性、ウイルス性及び/又はがん関連遺伝子を含んでもよい。或いは、人工的IRES様5’-ステムループRNA構造は、5’-mRNA又は3’-mRNA、或いは両者のいずれかの5’-UTRに位置し、それぞれ5’-mRNA及び/又は3’-mRNAの翻訳を開始・促進することで、複数の所望のタンパク質/ペプチドの製造を可能にすることができる。
【0013】
第3の好ましい実施形態において、mhmRNAの最初の5’-mRNAは、トランスフェクト細胞において第2の3’-mRNAを増幅するためのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のようなRNAレプリカーゼをエンコードする。このようなRNAレプリカーゼ/RdRp発現mRNAは、トランスフェクト細胞内で自己増幅することができるため、自己増幅mRNA(samRNA)とも呼ばれる。標的細胞に導入された後、5hmRNAとmhmRNAの両者をさらに処理し、少なくとも所望のタンパク質/ペプチドに翻訳して、予め設計された所望の生物学的効果又は機能を誘発することができる。これらの生物学的効果又は細胞機能は、特異的免疫反応の誘導、ウイルス感染の予防、ウイルス複製/構築の抑制、及び/又は腫瘍/がん細胞の増殖の阻害、並びにがん細胞死の誘導を含むが、それらに限定されない。また、従来の米国特許第8,372,969号及び第8,609,831号(Lin氏)に記載されるように、RdRpにpiRNAを生成するためのテンプレートとしてmRNAを用いて、少なくとも特異的な遺伝子サイレンシング効果を得ることができる。例えば、得られたmRNAが標的ウイルス遺伝子をエンコードする場合、こうして得られたpiRNAは、ウイルス遺伝子を不活性化し、ウイルス感染を防止するワクチンの開発に有用であると考えられる。
【0014】
5hmRNA及びmhmRNAのステムループRNA構造は、以下に記載される単一又は複数のヘアピン様配列のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0015】
(1)5’-GCUCCCUUCA ACUUUAACAU GGAAGUGCUU UCUGUGACUU UAAAAGUAAG UGCUUCCAUG UUUUAGUAGG AGU-3’ (73-nt)(配列番号3)
(2)5’-CCUUUGCUUU AACAUGGGGG UACCUGCUGU GUGAAACAAA AGUAAGUGCU UCCAUGUUUC AGUGGAGG-3’ (68-nt)(配列番号4)
(3)5’-CCACCACUUA AACGUGGAUG UACUUGCUUU GAAACUAAAG AAGUAAGUGC UUCCAUGUUU UGGUGAUGG-3’ (69-nt)(配列番号5)
(4)5’-CCUCUACUUU AACAUGGAGG CACUUGCUGU GACAUGACAA AAAUAAGUGC UUCCAUGUUU GAGUGUGG-3’ (68-nt)(配列番号6)
(5)5’-CUGUGUGGCU GUCACUCGGC UGCAUGCUUA GUGCACUCAC GCAG-3’(44-nt)(配列番号7)
(6)5’-CUGUGUGGCU GUCACUCGGC UGCAUGCUUA GUGCACUCAC GCAGUAUAAU UAAUAACUAA UUACU-3’ (65-nt)(配列番号8)
(7)5’-GUCGUUGACA GGACACGAGU AACUCGUCUA UCUUCUGCAG GCUGCUUACG GUUUCGUCCG UGUUGCAGCC GAUCAUCAGC ACAUCUAGGU UUCGUCCGGG UGUGACCGAA AGGUAAGAUG GAGAGCCUUG UCCCUGGUUU CAACGAG-3’ (147-nt)(配列番号9)
(8)5’-AAUUAUAAAU UACCAGAUGA UUUUACAGGC UGCGUUAUAG CUUGGAAUUC UAACAAUCUU GAUUCUAAGG UUGGUGGUAA UUAUAAUU-3’ (88-nt)(配列番号10)
(9)5’-CACAAAUAUU ACCAGAUCCA UCAAAACCAA GCAAGAGGUC AUUUAUUGAA GAUCUACUUU UCAACAAAGU GACACUUGCA GAUGCUGGCU UCAUCAAACA AUAUGGUGAU UGCCUUGGUG AUAUUGCUG-3’ (129-nt)(配列番号11)
(10)5’-GCAAAAAUGU GAUCUUGCUU GUAAAUACAA UUUUGAGAGG UUAAUAAAUU ACAAGUAGUG CUAUUUUUGU AUUUAGGUUA GCUAUUUAGC UUUACGUUCC AGGAUGCCUA GUGGCAGCCC CACAAUAUCC AGGAAGCCCU CUCUGCGGUU UUUCAGAUUC GUUAGUCGAA AAACCUAAGA AAUUUAAUG-3’ (189-nt)(配列番号12)
(11)5’-CACUCCCCUG UGAGGACUAC UGUCUUCACG CAGAAAGCGU CUAGCCAUGG CGUUAGUAUG AGUGUCGUGC AGCCUCCAGG ACCCCCCCUC CCGGGAGAGC CAUAGUGGUC UGCGGAACCG GUGAGUACAC CGGAAUUGCC AGGACGACCG GGUCCUUUCU UGGAUCAACC CGCUCAAUGC CUGGAGAUUU GGGCGUGCCC CCGCGAGACU GCUAGCCGAG UAGUGUUGGG UCGCGAAAGG CCUUGUGGUA CUGCCUGAUG GGUGCUUGCG AGUGCCCCGG GAGGUCUCGU AGAC-3’ (294-nt)(配列番号13)
(12)5’-GGACACGAGU AACUCGUCUA UCUUCUGCAG GCUGCUUACG GUUUCGUCCG UGUUG-3’ (55-nt)(配列番号14)
(13)5’-CAGCCGAUCA UCAGCACAUC UAGGUUUUGU CCGGGUGUGA CCGAAAGGUA AG-3’ (52-nt)(配列番号15)
in vitro、ex vivo及び/又はin vivoでの所望の標的細胞への5hmRNA又はmhmRNA、或いはその両者の送達を容易にするために、5hmRNA及びmhmRNAは、グリシルグリセリン、リポソーム、ナノ粒子、リポソームナノ粒子、共役系分子、輸液製剤、遺伝子銃材料、電気穿孔粒子、トランスポゾン及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも1つの送達剤と混合、結合(コンジュゲート)、カプセル化及び/又は配合することができる。
【0016】
5hmRNA及び/又はmhmRNAをワクチンや医薬品として使用する利点としては、(1)in vitroで5’-キャップを付加する必要がなく、コストを削減し、汚染を減らすこと、(2)ステムループRNA構造によって十分に保護されているより安定したmRNA産物を得られること、(3)細胞内RNAプロセシング酵素によってステムループ構造を除去した後にトランスフェクト細胞内で100%キャップされたmRNAを形成すること、(4)mRNAからのタンパク質/ペプチド合成を開始・促進するための人工的IRES様モチーフ/模倣物をさらに処理してもよいこと、(5)エンコードされた複製/RdRp活性を有する自己増幅mRNAを形成すること、(6)自己増幅mRNAに由来するタンパク質/ペプチドの高収量をもたらすこと、(7)少なくともウイルス及び/又はがん関連遺伝子などの対象とする特異的標的遺伝子を不活性化するのに有用なshRNA及び/又はpiRNAを少なくとも共発現させることが挙げられる。その結果、これらの新規な5hmRNA及びmhmRNA組成物は、新規な薬学上及び治療上の適用、例えば、抗ウイルス及び/又は抗がん治療に用いるワクチンや医薬品の設計及び開発に有用であると考えられる。
【0017】
A.定義
本発明を理解しやすくするために、いくつかの用語は以下のように定義される:
【0018】
核酸(Nucleic Acid):デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)の一本鎖又は二本鎖のポリマーである。
【0019】
ヌクレオチド(Nucleotide):糖部分(ペントース(pentose))、リン酸塩(phosphate)、及び窒素含有複素環塩基(nitrogenous heterocyclic base)から構成されたデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)のモノマー単位である。当該塩基は、グリコシド炭素(glycosidic carbon、当該ペントースの1’の炭素)を介して、当該糖部分に結合されており、当該塩基と糖の組み合わせはヌクレオシド(nucleoside)である。当該ペントースの3’位又は5’位に結合された少なくとも1つのリン酸を有するヌクレオシドは、ヌクレオチド(nucleotide)である。デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)はそれぞれ、異なるタイプのヌクレオチド単位、即ち、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドからなる。
【0020】
オリゴヌクレオチド(Oligonucleotide):2個以上、好ましくは3個より多く、そして通常は10個以上のデオキシリボ核酸(DNA)及び/又はリボ核酸(RNA)のモノマー単位からなる分子である。13個以上のヌクレオチドモノマーを含むオリゴヌクレオチドは通常ポリヌクレオチド(polynucleotide)とも呼ばれる。オリゴヌクレオチドの正確な長さは種々の要素に依存するが、当該オリゴヌクレオチドの最も好適な機能又は用途に依存する。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、RNA転写、逆転写、又はそれらの組み合わせを含むあらゆる方法で生成できる。
【0021】
ヌクレオチド類似体(Nucleotide Analog):A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)又はU(ウラシル)ヌクレオチドとは構造的に異なっているが、核酸分子内の通常のヌクレオチドを置換可能な程度に十分に類似しているプリン(purine)又はピリミジン(pyrimidine)ヌクレオチドである。
【0022】
核酸組成物(Nucleic Acid Composition):核酸組成物(Nucleic Acid Composition)とはオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり、例えば、一本鎖又は二本鎖分子構造を有するDNA又はRNA配列、又はDNA/RNA配列の混合物である。
【0023】
遺伝子(Gene):そのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの配列がRNA及び/又はポリペプチド(タンパク質)をコードする核酸組成物である。遺伝子は、RNA又はDNAであってもよい。遺伝子は、ノンコーディングRNA、例えば小ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、rRNA、tRNA、snoRNA、snRNA、及びそれらのRNA前駆体と誘導体をエンコードし得る。或いは、遺伝子は、タンパク質/ペプチドの合成に必須のタンパク質コーディングRNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)及びその前駆体と誘導体をエンコードし得る。場合によっては、遺伝子は、少なくともmicroRNA又はshRNA配列も含むタンパク質コーディングRNAをコードし得る。
【0024】
一次RNA転写産物(Primary RNA Transcript):いかなるRNAプロセッシング又は修飾も無しに、遺伝子から直接転写されるRNA配列である。
【0025】
前駆体メッセンジャーRNA(Precursor messenger RNA,pre-mRNA):タンパク質コーディング遺伝子の一次RNA転写物であり、転写と呼ばれる細胞機構を介して真核生物における真核RNAポリメラーゼII(Pol-II)メカニズムにより生成される。前駆体メッセンジャーRNAの配列は、5’末端非翻訳領域(5’-UTR)、3’末端非翻訳領域(3’-UTR)、エキソン(exon)及びイントロン(intron)を含んでいる。
【0026】
イントロン(Intron):非タンパク質リーディングフレームをエンコードする遺伝子転写産物配列の一部又は複数の部分であり、例えば、インフレームイントロン(in-frame intron)、5’末端非翻訳領域(5’-UTR)及び3’末端非翻訳領域(3’-UTR)が挙げられる。
【0027】
エキソン(Exon):タンパク質リーディングフレーム(cDNA)をエンコードする遺伝子転写産物配列の一部又は複数の部分であり、例えば、細胞遺伝子、成長因子、インスリン、抗体及びそれらの類似物/ホモログ並びに誘導体に用いる相補的デオキシリボ核酸(cDNA)が挙げられる。
【0028】
メッセンジャーRNA(Messenger RNA,mRNA):前駆体メッセンジャーRNAのエキソンのアセンブリであり、メッセンジャーRNAは、細胞内のRNAスプライシング機構(例えばスプライセオソーム)によるイントロンの除去の後に形成され、ペプチド/タンパク質合成のためのタンパク質コーディングRNAとして使用される。当該メッセンジャーRNAによりエンコードされるペプチド/タンパク質は、酵素、成長因子、インスリン、抗体及びそれらの類似物/ホモログと誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0029】
相補的デオキシリボ核酸(Complementary DNA,cDNA):一本鎖又は二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)であり、mRNA配列に相補的な配列を含み、イントロン配列をまったく含んでいない。
【0030】
センス(Sense):配列順序及び組成は相同mRNAと同じである核酸分子である。センスの構造形態は、「+」、「s」又は「sense」の符号で示される。
【0031】
アンチセンス(Antisense):各mRNA分子に相補的な核酸分子である。アンチセンスの構造形態は、「-」符号、或いは、DNA又はRNAの前に「a」又は「antisense」を付けて示され、例えば、「aDNA」又は「aRNA」が挙げられる。
【0032】
塩基対(Base Pair,bp):二本鎖DNA分子に存在するアデニン(A)とチミン(T)との対関係(partnership)、又はシトシン(C)とグアニン(G)との対関係である。RNAにおいて、ウラシル(U)がチミン(T)を置換する。一般に、当該対関係は、水素結合によりなされている。例えば、センスヌクレオチド配列「5’-A-T-C-G-U-3’」は、そのアンチセンス配列「5’-A-C-G-A-T-3’」と完全塩基対関係を形成できる。
【0033】
5’末端(5’-end):1つのヌクレオチドの5’-水酸基がホスホジエステル結合により、次のヌクレオチドの3’-水酸基に結合された連続したヌクレオチドの5’位においてヌクレオチドが欠けている末端である。1つ以上のリン酸塩のような他の官能基が当該末端に存在し得る。
【0034】
3’末端(3’-end):1つのヌクレオチドの5’-水酸基がホスホジエステル結合により、次のヌクレオチドの3’-水酸基に結合された連続したヌクレオチドの3’位においてヌクレオチドが欠けている末端である。当該末端に他の官能基、最も多くの場合は水酸基が存在し得る。
【0035】
テンプレート(Template):核酸ポリメラーゼにより複製された核酸分子である。テンプレートは、ポリメラーゼによって、一本鎖、二本鎖又は部分的な二本鎖のRNA又はDNAのいずれであってもよい。合成されたコピーは、当該テンプレート、当該二本鎖テンプレート又は部分的な二本鎖のテンプレートの少なくとも一方の鎖に相補的である。RNAとDNAの両者は、5’末端から3’末端の方向に合成される。核酸二本鎖体(duplex)の2本の鎖は、これらの2本の鎖の5’末端が当該二本鎖体のと相対する末端となるように常に整列されている(また必然的に、これらの2本の鎖の3’末端も同様である)。
【0036】
核酸テンプレート(Nucleic Acid Template):二本鎖DNA分子、二本鎖RNA分子、ハイブリッド分子(例えば、DNA-RNA又はRNA-DNAハイブリッド)、或いは、一本鎖DNA又はRNA分子である。
【0037】
保存(Conserved):ヌクレオチド配列と予め選択された(参照)配列の正確な相補物(complement)とが非ランダムにハイブリダイズする場合、当該ヌクレオチド配列は当該予め選択された配列に対して保存されている。
【0038】
相同(Homologous)又は相同性(Homology):ポリヌクレオチドと遺伝子又はmRNA配列との間の類似性を示す用語である。核酸配列は、例えば、所定の遺伝子又はmRNA配列に対して部分的に又は完全に相同性を有し得る。相同性は、類似するヌクレオチド数がヌクレオチド総数に占める割合で示されてもよい。
【0039】
相補的(Complementary)又は相補性(Complementarity or Complementation):上記「塩基対(bp)」の規則に準じて関連付けられる2つのポリヌクレオチド(即ち、mRNA及びcDNAの配列)の間のマッチング塩基対関係に基づいて使用される用語である。例えば、配列「5’-A-G-T-3’」は、配列「5’-A-C-T-3’」のみならず、「5’-A-C-U-3’」に対しても相補的である。相補性は、2つのDNAの鎖の間、或いは、1つのDNAの鎖と1つのRNAの鎖との間、或いは、2つのRNAの鎖の間のいずれにもあり得る。相補性は、「部分的」、「完全」又は「全体」であってもよい。部分的相補性又は相補は、一部の核酸塩基のみがこれらの塩基対規則に従って対合するときにのみ現れる。完全又は全体的な相補性又は相補は、塩基がこれらの核酸の鎖の間で完全に又は完璧に対合するときに現れる。核酸の鎖の間の相補性の度合いは、核酸の鎖の間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著に影響する。これは、増幅反応、及び核酸の間の結合に依存する検知方法において、特に重要である。相補率(percent complementarity又はcomplementation)は、当該核酸の一本の鎖のうち全塩基数に対するミスマッチ塩基数を指す。従って、50%の相補率は、塩基の半分がミスマッチであり、半分が一致していることを意味する。核酸の2本の鎖の塩基数が違っている場合でも、核酸の2本の鎖が相補的となり得る。この場合に、相補性は、一部の長い鎖と短い鎖の間に起こり、そのうち、当該長い鎖の当該一部の塩基と短い鎖の塩基が対をなす。
【0040】
相補的塩基(Complemetary Bases):DNA又はRNAが二本鎖構造を採用するとき、通常は対になっているヌクレオチドである。
【0041】
相補的ヌクレオチド配列(Complemetary Nucleotide Sequence):DNA又はRNAの一本鎖分子におけるヌクレオチド配列であり、2つの鎖の間で引き続く水素結合により特異的にハイブリダイズするもう1つの一本鎖に十分に相補的である配列である。
【0042】
ハイブリダイズ(Hybridize)及びハイブリダイゼション(Hybridization):塩基対により複合体を形成するのに十分相補的なヌクレオチド配列間の、二本鎖の形成である。プライマー(又はスプライステンプレート)が標的(テンプレート)と「ハイブリダイズ」する場合、ハイブリダイズで形成された複合体(又はハイブリッド)が十分に安定であり、DNA合成を開始するために、DNAポリメラーゼにより必要とされるプライミング機能を提供する。競合的に阻害できる(competitively inhibited)二つの相補的ポリヌクレオチドの間には、特異的な(即ち、非ランダム的な)相互作用が存在する。
【0043】
転写後の遺伝子サイレンシング(Posttranscriptional Gene Silencing):mRNA分解又は翻訳抑制(translational inhibition)レベルでの標的遺伝子のノックアウト(knockout)効果又はノックダウン(knockdown)効果であり、通常、外来/ウイルスDNA、又はRNA導入遺伝子、又は低分子抑制性RNAのいずれかにより引き起こされる。
【0044】
RNA干渉(RNA interference,RNAi):真核細胞における転写後の遺伝子サイレンシングのメカニズムであり、低分子抑制性RNA分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)及び低分子干渉RNA(siRNA)により引き起こされ得る。これらの低分子RNA分子は通常、遺伝子サイレンサーとして機能し、これらの低分子RNAに対して完全に又は部分的に相補的である細胞内遺伝子の発現を干渉する。
【0045】
遺伝子サイレンシング効果(Gene silencing effect):遺伝子機能が抑制された後の細胞反応であり、細胞周期の減衰(cell cycle attenuation)、G0/G1チェックポイント停止(G0/G1-checkpoint arrest)、腫瘍抑制、抗腫瘍生成、がん細胞アポトーシス、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0046】
ノンコーディングRNA(Non-coding RNA):細胞内翻訳メカニズムによるペプチド又はタンパク質の合成に用いることができないRNA転写産物である。ノンコーディングRNAは、長い及び短い調節性RNA分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及び二本鎖RNA(dsRNA)を含む。これらの調節性RNA分子は通常、遺伝子サイレンサーとして機能し、細胞内における、これらのノンコーディングRNAに完全に又は部分的に相補的な遺伝子の発現を干渉する。
【0047】
マイクロRNA(MicroRNA,miRNA):当該マイクロRNA(miRNA)に対して部分的に相補的である標的遺伝子の転写産物に結合可能な一本鎖RNAである。miRNAは通常、長さが約17~27個のオリゴヌクレオチドであり、当該miRNAとその標的mRNAとの間の相補性に従い、細胞内mRNA標的物を直接分解するか、或いはその標的mRNAのタンパク質翻訳を直接抑制するかのいずれかを行うことができる。天然のmiRNAは、殆ど全ての真核細胞内から発見され、抗ウイルス感染の防御機能を有するとともに、動植物の発育期間における遺伝子発現の制御を可能にする。
【0048】
前駆体マイクロRNA(Pre-miRNA):標的遺伝子、又は配列が当該(これらの)マイクロRNAの配列に相補的な遺伝子を不活性化(サイレンシング)することができる1つ又は複数のマイクロRNA(miRNA)を生成するために細胞内RNAエンドリボヌクレアーゼRNaseIIIと相互作用するための、ステムアーム(stem-arm)及びステムループ(stem-loop)領域を含んでいるヘアピン様一本鎖RNAである。前駆体マイクロRNAのステムアームは、完全に(100%)又は部分的に(ミスマッチ)ハイブリダイズされた二本鎖体のいずれかを形成する一方、ステムループはサイクル又はヘアピンループ構造形態を形成すべくステムアーム二本鎖体の一方の端部に連結されている。しかしながら、本発明において、前駆体マイクロRNAは一次マイクロRNA(pri-miRNA)を含んでもよい。
【0049】
低分子干渉RNA(Small interfering RNA,siRNA):サイズが約18~27個の完全な塩基対のリボヌクレオチド二本鎖体であり、かつ殆ど完全に相補的である標的遺伝子の転写産物を分解することができる短い二本鎖RNAである。
【0050】
小ヘアピン又は短鎖ヘアピンRNA(Small hairpin or short hairpin RNA,shRNA):ヘアピン様構造を形成するために、一致していない(unmatched)ループ又はバブルオリゴヌクレオチドで分割された、一対の部分的に又は完全に一致したステムアームヌクレオチド配列の対を含む一本鎖RNAである。多くの天然miRNAは、小さいヘアピン様RNA前駆体、即ち、前駆体マイクロRNA(pre-miRNA)に由来する。
【0051】
ベクター(Vector):異なる遺伝子環境に移動又は滞在できる組換え型DNA(recombinant DNA,rDNA)のような組換え型核酸組成物である。一般的に、別の核酸が有効にそれに連結されている。当該ベクターは細胞において自己複製することが可能であり、この場合には、当該ベクター及び付接されるセグメントが複製される。一種の好ましいベクターはエピソーム(episome)であり、即ち、染色体外(extrachromosomal)での複製が可能な核酸分子である。好ましいベクターは、自己複製、並びに核酸の発現が可能なものである。一つ以上のポリペプチドをエンコードする遺伝子及び/又はノンコーディングRNA遺伝子の発現を誘導できるベクターは、ここでは「発現ベクター(expression vector)」又は「発現コンピテントベクター(expression-competent vector)」と呼ばれる。特に重要なベクターは、逆転写酵素(reverse transcriptase)を使用して、得られたmRNAからcDNAのクローニングを可能にする。ベクターの成分は、ウイルスプロモーター又はII型(type-II)のRNAポリメラーゼ(Pol-II又はpol-2)プロモーター、又はその両者、Kozakコンセンサス翻訳開始位(Kozak consensus translation initiation site)、ポリアデニル化シグナル(polyadenylation signals)、複数の制限/クローニング部位(restriction/cloning site)、pUC複製開始点(pUC origin of replication)、複製可能な(replication-competent)原核細胞内の少なくとも1つの抗生物質耐性遺伝子を発現するためのSV40初期プロモーター(SV40 early promoter)、哺乳類細胞内の複製のための選択性SV40複製開始点(SV40 origin)、及び/又はテトラサイクリン応答因子を含んでもよい。ベクターの構造は、プラスミド、ウイルスベクター、トランスポゾン、レトロトランスポゾン、DNA導入遺伝子、ジャンピング遺伝子、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、直鎖状、或いは環形の一本鎖又は二本鎖DNAであってもよい。
【0052】
プロモーター(Promoter):ポリメラーゼ分子により識別され、又はそれに結合され、RNA転写を開始させる核酸である。本発明の目的に応じて、プロモーターは、既知のポリメラーゼ結合位置、エンハンサーとその類似物、及び所望のポリメラーゼを使用してRNA転写産物の合成を開始可能な任意の配列であってもよい。
【0053】
制限部位(Restriction Site):制限酵素切断のためのDNAモチーフである。これらの制限部位は、AatII、AccI、AflII/III、AgeI、ApaI/LI、AseI、Asp718I、BamHI、BbeI、BclI/II、BglII、BsmI、Bsp120I、BspHI/LU11I/120I、BsrI/BI/GI、BssHII/SI、BstBI/U1/XI、ClaI、Csp6I、DpnI、DraI/II、EagI、Ecl136II、EcoRI/RII/47III/RV、EheI、FspI、HaeIII、HhaI、HinPI、HindIII、HinfI、HpaI/II、KasI、KpnI、MaeII/III、MfeI、MluI、MscI、MseI、NaeI、NarI、NcoI、NdeI、NgoMI、NotI、NruI、NsiI、PmlI、Ppu10I、PstI、PvuI/II、RsaI、SacI/II、SalI、Sau3AI、SmaI、SnaBI、SphI、SspI、StuI、TaiI、TaqI、XbaI、XhoI、XmaIの切断位置を含むが、それらに限定されない。
【0054】
シストロン(Cistron):アミノ酸残基の配列をコードするDNA分子内のヌクレオチド配列であり、上流及び下流DNA発現制御要素を含む。
【0055】
RNAプロセシング(RNA processing):RNAの成熟、修飾、及び分解に関与する細胞メカニズムであり、RNAスプライシング、イントロン切除、エキソソーム消化(exosome digestion)、ナンセンス変異依存分解(nonsense-mediated decay,NMD)、RNAエディティング、RNAプロセシング、5’キャッピング、3’-ポリ(A)テーリング、及びそれらの組み合わせを含む。
【0056】
遺伝子送達(Gene Delivery):ポリソーム(polysomal)トランスフェクション、リポソームトランスフェクション、化学(ナノ粒子)トランスフェクション、電気穿孔法、ウイルス感染、DNA組換え、トランスポゾン挿入、ジャンピング遺伝子挿入、マイクロインジェクション、遺伝子銃による浸透、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる遺伝子工学方法である。
【0057】
遺伝子工学(Genetic Engineering):DNA制限及び接合、相同性遺伝子の組換え、トランスジーンの組み込み、トランスポゾン挿入、ジャンピング遺伝子の組み込み、レトロウイルス感染、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれるDNA組換え方法である。
【0058】
腫瘍抑制(Tumor Suppression):細胞周期の減衰、G0/G1チェックポイント停止、腫瘍抑制、抗腫瘍発生、がん細胞アポトーシス、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない細胞の抗腫瘍及び抗がんメカニズムである。
【0059】
標的細胞(Targeted Cell):体細胞、組織、幹細胞、生殖細胞、奇形腫細胞、腫瘍細胞、がん細胞、ウイルスに感染した細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる単一又は複数のヒト細胞である。
【0060】
癌組織(Cancerous Tissue):皮膚癌、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、肺癌、脳腫瘍/癌、リンパ腫、血液癌、及びそれらの組み合わせからなる群に由来する腫瘍組織である。
【0061】
抗体(Antibody):予め選択されたリガンドに結合可能な受容体をコードする予め選択された保存ドメイン構造を有するペプチド又はタンパク質分子である。
【0062】
薬学上及び/又は治療上の適用(Pharmaceutical and/or therapeutic Application):幹細胞の生成、幹細胞の研究及び/又は療法の開発、癌治療、疾患処理、傷口治癒処理と組織再生処理、薬物収量と食物供給の向上、及びそれらの組み合わせに適用する生物医学的利用及び/又は装置である。
【0063】
原核生物又は原核細胞(Prokaryote or Prokaryotic Cell):細菌のような、明らかな膜結合(membrane-bound)の細胞核が欠如しており、且つDNAの連続鎖(continuous strand)としてその遺伝物質を有する単細胞生物である。
【0064】
真核生物又は真核細胞(Eukaryote or Eukaryotic Cell):酵母菌、植物、動物といった、その細胞が膜結合の細胞核及びその他の構造(細胞小器官)を含有する単細胞又は多細胞生物である。
【0065】
転写誘導剤(Transcription Inducer):原核細胞におけるpol-2又はPol-2類プロモーターからの真核RNA及び/又は遺伝子転写を誘導及び/又は促進し得る化学剤である。例えば、転写誘導剤は、3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(MOPS)、エタノール及び/又はグリセリン、並びにその機能類似体、例えばマンニトール、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、又はそれらの混合物に類似する化学構造を含むが、それらに限定されない。
【0066】
B.組成物及び適用
抗ウイルス及び抗がんワクチンの製造・開発に用いる新規なmRNA組成物及びその製造方法であって、少なくとも5’-ヘアピンメッセンジャーRNA(5hmRNA)及び/又はメッセンジャーヘアピンメッセンジャーRNA(mhmRNA)、或いはその両者を含み、上記5hmRNAは、少なくともタンパク質/ペプチドコーディングmRNAの5’-UTR領域においてステムループRNA構造を含み、上記mhmRNAは、両側に2つの同じ又は異なるmRNA配列を有する中間ステムループRNA構造を含む。
【0067】
ヘアピン様RNAの生成効率が低さを克服するために、5hmRNA及びmhmRNAは、新しく発明されたRNAポリメラーゼとヘリカーゼの混合物の活性を合わせた新規なPCR-IVT方法と改良されたIVT緩衝系を用いて製造される。また、標的細胞への5hmRNA又はmhmRNA、或いはその両者の送達を容易にするために、5hmRNA及びmhmRNAは、少なくともグリシルグリセリン、リポソーム、ナノ粒子、リポソームナノ粒子、共役系分子、輸液製剤、遺伝子銃材料、トランスポゾン、電気穿孔粒子、及びこれらの組み合わせから選ばれる送達剤とさらに混合、結合(コンジュゲート)、カプセル化及び/又は配合することができる。
【0068】
とある好ましい実施形態において、5hmRNAは、主として5’-ステムループRNA及び3’-mRNAの2つの部分から構成される(図2)。構造上、5’-ステムループRNAは、少なくとも、好ましくは約10~800ヌクレオチドの長さを有する、完全又は不完全に一致した単一又は複数のヘアピン構造と、好ましくは約1~500ヌクレオチド離れて存在し、ステムループ構造と次の3’-mRNAの開始コドンとの間に位置する短い配列とを含む。5’-ステムループRNAにおいて複数のヘアピン構造が存在する場合、ヘアピンRNA構造2つ毎の間にスペーサー配列を配置する必要があり、当該スペーサー配列の長さは、約2~500ヌクレオチド離れれていることが好ましい。ヘアピン構造とスペーサーは、それぞれ同じ配列を有してもよいし、異なる配列を有してもよい。また、5’-ステムループRNAは、さらに3’-mRNAの翻訳を開始・促進するための人工的IRES様模倣物として機能し、所望のタンパク質・ペプチド製造を可能にする。他方、3’-mRNAは、少なくとも1つの所望のタンパク質又はペプチドをコードし、且つその3’末端の近傍に細胞内ポリ(A)テーリング機構を誘導するための5’-AAUAAA-3’(配列番号1)又は5’-AAUUAAA-3’(配列番号2)配列のいずれかを含む。
【0069】
別の好ましい実施形態において、mhmRNAは、5hmRNAの5’末端にさらなるmRNA(5’-mRNA)配列を付加することによって形成される。その結果、ステムループRNAは、最初の5’-mRNAと次の3’-mRNAの個々の翻訳を、それぞれ同じ又は異なるタンパク質/ペプチドに分離する中間セパレーターとして機能するようになる。さらに、5hmRNAと同様に、ステムループRNA構造は、細胞内RNAプロセシング酵素を刺激して3’-mRNAに5’-キャップを付加するだけでなく、少なくともshRNA及び/又はpiRNAを生成して、少なくとも特異的標的遺伝子を不活性化し得る。これらの特異的標的遺伝子は、様々な疾患関連細胞及び/又は病原性遺伝子、例えばウイルス及び/又はがん関連遺伝子を含んでもよい。或いは、付加のIRES様5’-ステムループRNA構造は、5’-mRNA又は3’-mRNA、或いはその両者のいずれかの5’-UTRに位置し、5’-mRNA及び/又は3’-mRNAの翻訳を開始・促進することで、複数の所望のタンパク質/ペプチドの製造を可能にする。
【0070】
第3の好ましい実施形態(図2)において、mhmRNAの最初の5’-mRNAは、トランスフェクト細胞において第2の3’-mRNAを増幅するためのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のようなRNAレプリカーゼをエンコードする。このようなRNAレプリカーゼ/RdRp発現mhmRNAは、トランスフェクト細胞内で自己増幅可能である。標的細胞にトランスフェクトされた後、5hmRNAとmhmRNAの両者をさらに処理し、少なくとも所望のタンパク質/ペプチドに翻訳して、予め設計された所望の生物学的効果又は細胞機能を誘発することができ、これらの生物学的効果又は細胞機能は、特異的免疫反応の誘導、ウイルス感染の予防、ウイルス複製/構築の抑制、及び/又は腫瘍/がん細胞の増殖の阻害、並びにがん細胞死の誘導を含むが、それらに限定されない。その結果、このような新規な5hmRNA及びmhmRNA組成物は、新規な薬学上及び治療上への適用、例えば、抗ウイルス及び/又は抗がん治療に用いるワクチン及び/又は医薬品を設計・開発するのに非常に有用であると考えられる。
【0071】
5hmRNA及びmhmRNAのステムループRNA構造は、少なくとも配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、...、配列番号15及び/又はそれらの組み合わせから選ばれる配列を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
明確に言うと、以下で説明される図面は本発明を例示・説明するためのものであり、制限的する為のものではない。
【0073】
図1】PCR-IVT方法の段階的な手順を示す図である。mRNAの製造において、当該PCR-IVT方法の一部又は全体の手順に従って、所望のmRNA産物の単一又は複数のサイクルの増幅を行うことができる。
図2】5hmRNA及びmhmRNAの設計構造を示す図である。
図3】設計された赤色蛍光RGFPをコードする5hmRNAの構造例を示す図である。図示するように、当該RGFPをコードする5hmRNAのステムループRNA構造は、コードされたRGFP mRNAの5’-UTRに位置する配列番号14/15と、配列番号3と、配列番号4と、配列番号5との組み合わせを含む。ここでは、あくまでも一例として挙げられ、本発明を限定するものではないが、ステムループRNA構造は、任意のヘアピン様RNA、shRNA、前駆体マイクロRNA及び/又はIRES様RNA構造で置き換えられ、in vitro、ex vivo、in vivoで所望の生物学的効果又は細胞機能を誘導できることが理解される。同様に、エンコードされたRGFP mRNAはまた、得られるタンパク質/ペプチドの機能に応じて、他の任意の所望のタンパク質/ペプチドコーディングmRNAで置き換えられ、少なくともin vitro、ex vivo、in vivoで所望の生物学的効果又は細胞機能を誘発し得る。
図4】新規なヘリカーゼ活性を用いた本発明のPCR-IVT方法によって作製したプロモーター組み込み型PCR産物とその誘導体5hmRNAを示す図である。PCR産物の開始量が増加するについて、増幅される5hmRNAの分子がそれに比例して、用量依存的に増加する。従って、30~2000倍の最適な生成速度に達することができ、1mLのIVT反応(0.6~0.9 mg/mLのmRNA)あたり最大0.6~0.9mgのmRNAを製造することが可能となる。
図5】in vitroでDrosha様RNaseIII酵素活性(Ambion RNase III,ThermoFisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック),マサチューセッツ州,米国)によって処理された後に、PCR-IVT方法によって作製した5hmRNA(即ち、RGFPをコードする5hmRNA)配列のヘアピン様/IRES様ステムループRNA構造を示す図である。この例に示すように、Droshaで処理されたヘアピン様RNA構造は、設計されたIRES様ステムループRNAと、miR-302b、miR-302c及びmiR-302aの前駆体とを含む。miR-302a、miR-302b及びmiR-302cは、抗がん治療に有用な腫瘍抑制因子マイクロRNAであることが知られている。
図6】本発明のPCR-IVT方法によって作製した5hmRNA(図3から)でトランスフェクトされたA549細胞におけるRGFPタンパク質(赤色蛍光色)の産生を示す図であり、トランスフェクト細胞において5mRNAから所望のタンパク質/ペプチドを産生して、設計された生物学的効果及び/又は細胞効果をもたらすことができることを示す。エンコードされたRGFP mRNAは、5hmRNA及びmhmRNA内の他の任意のタンパク質/ペプチドコーディングmRNA配列で置き換えられ、目的とする異なる生物学的効果又は細胞機能をもたらすことができると考えられる。
図7】抗ウイルス(COVID-19)5hmRNAのノーザンブロット分析結果を示す図である。
図8】抗ウイルスmhmRNAのノーザンブロット分析結果を示す図である。
図9】抗ウイルス5hmRNA(図7から)でトランスフェクトされた後にBEAS-2B細胞において産生されたコロナウイルス(例えば、COVID-19)S 2タンパク質の免疫染色結果を示す図であり、抗ウイルス5hmRNAをBEAS-2B肺上皮細胞株に送達することにより、細胞内でのコロナウイルスS 2タンパク質の産生を誘導が可能となり、in vivoでの抗ウイルス免疫反応を誘発するのに役立つことを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0074】
1.ヒト細胞培養及びIn VitroにおけるRNAトランスフェクション
角化細胞の培養において、皮膚組織から角化細胞を分離し、適切な抗生物質の存在下において、37℃で5%の二酸化炭素の条件で、ヒト角化細胞増殖添加剤(HKGS,Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)が添加されたEpiLife無血清(serum-free)の細胞培養液において培養した。細胞をトリプシン/EDTA溶液に1分間曝露して、フェノールレッドのないDMEM培養液(Invitrogen)で一回リンスすることにより、細胞増殖が50%~60%の密集度(confluency)に達し、更に、た後、HKGS添加剤を含む新鮮なEpiLife培養液において、これらの分離された細胞を1:10で希釈した状態で再播種した。ヒト癌及び正常細胞株MCF7、HepG2、A549及びBEAS-2Bをアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC,ロックビル,メリーランド州)又は発明者の共同研究者らから取得し、製造者の指示した条件で培養した。RNAトランスフェクションにおいて、0.5~500μgの分離されたmRNA(即ち、5hmRNA又はmhmRNA)を0.5mlの新鮮なEpiLife培養液に溶解させ、1~50μlのIn-VivoJetPEIトランスフェクション試薬と混合した。10~30分間の培養を経て、当該混合液を50%~60%の密集度に達した細胞培養液に添加した。細胞の種類に応じて、培地を12~48時間ごとに再洗浄した。トランスフェクションの効率を向上させるために、このトランスフェクションの手順を繰り返してもよい。トランスフェクションの結果を、それぞれ図6及び図9に示した。
【0075】
2.新規なPCR-IVTプロトコル
製造者が指示に従って、約0.01ng~10マイクログラム(μg)の分離されたmRNAを20~50μLのRT反応(SuperScript III RTキット,ThermoFisher Scientific,マサチューセッツ州,米国)に加えることにより、所望のmRNAの逆転写(RT)を行った。mRNAの量に応じて、RT反応混合物の1×RT緩衝液中には、mRNA、約0.01~20nmoleのRTプライマー、及び適量のdNTPと逆転写酵素が含まれる。次に、所望のmRNAの構造や長さに応じて、RT反応を46~65℃で1~3時間インキュベートし、少なくともPCRの以降のステップのための相補的なDNA(cDNA)テンプレートを作製した。RTプライマーの設計において、一例として、それぞれ所望のCOVID-19ウイルスmRNA配列のRTの5’-CAGTTCCAAT TGTGAAGATT CTC-3’(配列番号16)と、目的とする別の抗がんマイクロRNA(miRNA)ステムループ含有赤色蛍光タンパク質(RGFP)をコードするmRNA(即ち、RGFPをコードする5hmRNA)のRTの別の5’-CTGATGACG TTCTCAGTGC-3’(配列番号17)(図3)を用いるが、この例に限定されない。
【0076】
次に、製造者が指示に基づき、約0.01pg~10μgのRTに由来するcDNAを50μLのPCR混合物(High-Fidelity PCR Enzymeキット,ThermoFisher Scientific,マサチューセッツ州,米国)に添加することにより、ポリメラーゼチェーン反応(PCR)を行った。そして、所望のDNAとプライマーの構造や長さに応じて、PCR混合物を最初に94℃で5~20サイクルの変性で1分間インキュベートし、30~55℃で30秒~1分間アニーリングし、そして72℃で1~3分間伸長させた。続いて、得られたPCR産物の構造や長さに応じて、変性(94℃で1分間)、アニーリング(50~55℃で30秒間)、及び伸長(72℃で1~3分間)という一連のステップによって、さらに10~20サイクルのPCRを行った。最後に、得られたPCR産物をIVTのテンプレートとして使用した。一例として、ウイルスプロモーター含有DNAテンプレートを増幅するために、5’-GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAG GTATGTACT TGGTAGTT-3’(配列番号18)と配列番号16(約12.5kヌクレオチド(nt)のCOVID-19 RdRp/ヘリカーゼ/Sタンパク質コーディングmhmRNAを増幅するために用いられる(結果を図8に示す))からなる1対のプライマー、並びに5’-GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAGAC TAGTGATGTT CTTGTTAACA ACT-3’(配列番号19)と配列番号16(約2.8k-ntのCOVID-19 S 2タンパク質コーディング5hmRNAを増幅するために用いられる(結果を図7に示す))からなる別の対のペアプライマーを含む2組のPCRプライマーを設計したが、この例に限定されない。また、プロモーター含有フォワードプライマー5’-GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAG GTATGTACT TGGTAGTT-3’(配列番号20)と配列番号17(結果を図4、5に示す)とを含む別の対のPCRプライマーを使用して、抗がんmiRNAステムループ含有RGFPをコードするDNAテンプレート(即ち、RGFPをコードする5hmRNA)を増幅した。主たる設計において、全ての設計されたフォワードPCRプライマーは、少なくともIVTの保存プロモーター配列(T7、T3、及び/又はSP6プロモーター配列が挙げられるが、これらに限定されない)、特に5’-TCTAATACGA CTCACTATAG GGAGA-3’(配列番号21)をエンコードした。さらに、フォワードプロモーター・プライマーの3’末端には、PCR産物に少なくともヘアピン様ステムループ構造又は少なくともIRES様ステムループ構造のいずれかを挿入するための制限部位が少なくとも存在してもよい。
【0077】
mRNAの製造において、得られたPCR産物にプロモーター・プライマーが組み込まれているため、当該PCR産物をテンプレートとし、改良されたIVT反応を行って、所望のmRNA配列を増幅することができる。IVT反応混合物の1×転写緩衝液中に、0.01 ng~10 μgのPCR産物、0.1~10 Uのヘリカーゼ(Creative Enzymes,NY)、及び適量のNTPとRNAポリメラーゼ(即ち、T7、T3、又はSP6)を含む。製造者の指示に基づき、使用したRNAポリメラーゼに応じて、1×転写緩衝液の内容物を調整することができる。さらに、当該1×転写緩衝液中に、0.001~10 mMのベタイン(トリメチルグリシン、TMG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び/又は3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)及び/又はそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。これにより、ヘアピンやIRESなどの高度に構造化されたRNA/DNA配列の変性を容易にすることができる。次に、使用したRNAポリメラーゼの安定性や活性に応じて、IVT反応を37℃で1~6時間インキュベートした。当該改良された新規なIVT反応では、ヘアピン様及びIRES様ステムループ構造のようなRNA/DNA二次構造の巻き戻しを容易にし、in vitroでのヘアピン様RNAの生成効率が低いという問題を解決するために、少なくともさらなるヘリカーゼ酵素を添加した。なお、ヘリカーゼ酵素は、DNA鎖とRNA鎖の両者の二次構造を巻き戻すことができる。
【0078】
3.RNA精製、ノーザンブロット分析及びRNA配列決定
製造者の指示に従って、mirVana(登録商標)RNA分離キット(Ambion,テキサス州オースティン)により所望のmRNA(10μg)を分離した。そして、15%のTBE-尿素ポリアクリルアミドゲル又は3.5%の低融点アガロースゲル電気泳動でさらに当該mRNAを精製する。ノーザンブロット分析では、当該ゲル分画されたRNAをナイロン膜にエレクトロブロッティングした。そして、mRNAの所望の標的配列に相補的な[LNA]-DNAプローブにより、ラベル(標識)化することで、mRNA及びそのIVTテンプレート(PCR産物)を検知した。当該プローブは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製され、かつ、色素標識ヌクレオチド類似体又は[32P]-dATP(>3000Ci/mM,Amersham International,イリノイ州アーリントンハイツ)の存在下で、ターミナルトランスフェラーゼ(terminal transferase,20 units)で20分間テール標識(tail-labeled)された。mRNA/miRNA配列決定において、設計された配列番号21と、配列番号16又は配列番号17のいずれかをプライマーとして用いて、それぞれmRNA/miRNA配列の5’末端及び3’末端からRNA配列を別々に決定した。
【0079】
4.タンパク質抽出とウエスタンブロット分析
製造者の指示に従い、プロテアーゼ抑制剤、ロイペプチン、TLCK、TAME及びPMSFが補充されたCelLytic-M溶解/抽出試薬(CelLytic-M lysis/extraction reagent,Sigma)により細胞(1,000,000個)を溶解させた。そして、12,000rpm、4℃で当該溶解液を20分間遠心分離し、遠心分離された上澄液が得られた。改良されたSOFTmaxタンパク質測定パッケージにより、E-maxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,CA)上でタンパク質濃度を測定した。還元(+50mM DTT)及び非還元(DTTなし)の条件で、30μgの細胞溶解産物をSDS-PAGEサンプル緩衝液にそれぞれ添加し、6%~8%のポリアクリルアミドゲルに入れる前に、3分間沸騰させた。そして、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)でタンパク質を解析し、その後、タンパク質をニトロセルロース膜にエレクトロブロッティングし、当該膜をオデッセーブッロキング試薬(Odyssey blocking reagent,Li-Cor Biosciences,ネブラスカ州リンカーン)において培養し、室温で2時間保管した。次に、当該試薬に一次抗体を添加し、当該混合物を4℃で保管し作用させた。一晩の培養を経た後、TBS-Tで当該膜を三回リンスし、そして、Alexa Fluor 680反応性染料(1:2,000,Invitrogen-Molecular Probes)を結合したヒツジ抗マウスIgG(goat anti-mouse IgG)二次抗体に、室温で1時間曝露した。TBS-Tで三回追加リンスした後、Li-Corオデッセー赤外線映像装置及びオデッセーソフトウェアv.10(Li-Cor)を使用して、免疫ブロットの蛍光スキャン及び映像分析を実施した。
【0080】
5.免疫染色分析
細胞/組織サンプルを100%メタノール中で4℃で30分間固定し、次に4%パラホルムアルデヒド(1×PBS,pH 7.4)中で20℃で10分間固定した。その後、0.1~0.25%のTriton X-100を含む1×PBSで当該サンプルを10分間培養し、1×PBSで3回、5分間洗浄した。免疫染色において、一次抗体は、抗DsRed/RGFP(Clontech,Palo Alto,カリフォルニア州)及び抗COVID-19 S(Invitrogen)モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。染料で標識されたヒツジ抗ウサギ(goat anti-rabbit)又はウマ抗マウス(horse anti-mouse)抗体を二次抗体(Invitrogen-Molecular Probes,カールズバッド,カリフォルニア州)として使用した。Metamorph映像処理プログラム(Nikon)を用いた蛍光80i顕微鏡定量分析システムの下、100×又は200×の拡大倍率で結果を検証及び分析した。陽性の結果を図6及び図9に示した。
【0081】
6.In Vivoにおける形質導入アッセイ
製造者の指示に従って、実施例2及び3で得られた分離したmRNA又はmiRNAを、In-VivoJetPEIトランスフェクション試薬などの適量の送達剤とよく混合して、目的に応じて動物の血脈又は筋肉に注射した。当該送達剤を所望の5hmRNA又はmhmRNAと混合、結合(コンジュゲート)、カプセル化又は配合することにより、5hmRNA又はmhmRNAを分解から保護し、且つin vitro、ex vivo及び/又はin vivoでの目的とする特異的標的細胞への5hmRNA又はmhmRNAの送達を容易にした。
【0082】
7.統計分析
免疫染色、ウエスタンブロット及びノーザンブロットの分析について、75%よりも大きいシグナル強度変化をいずれも陽性結果とみなし、これらの結果は、分析後、平均値±標準差(mean±SE)で表す。データの統計分析は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)で行われた。主たる効果が有意である場合、ダネットの多重比較検定(Dunnett’s post-hoc test)は対照群と顕著な差異がある群(グループ)を識別するのに用いられる。2つの処理群の間を一対ごとに比較するために、両側スチューデントT検定(two-tailed student t test)を使用した。2つ以上の治療群を含む実験については、ANOVAの後に、多重範囲検定(post-hocmultiple range test)を実施した。p<0.05の確率値は統計学的に有意であると考えた。全てのp値は両側試験にて決定した。
【0083】
[参考文献]
1.Lin Shi-Lungらによる米国特許第7,662,791号
2.Lin Shi-Lungらによる米国特許第8,080,652号
3.Ying SY及びLin Shi-Lungによる米国特許第8,372,969号
4.Lin Shi-Lung及びYing SYによる米国特許第8,609,831号
5.Lin Shi-Lungらによる米国特許第9,637,747号
6.Lin Shi-Lungらによる米国特許第9,783,811号
7.Lin Shi-Lungによる米国仮特許出願第60/222,479号
8.Lin Shi-Lungによる米国仮特許出願第60/290,902号
9.Lin Shi-Lung及びJi H;Replicase cycling reaction amplification.WO2002/092774
10.Lin Shi-Lung;Peptide library construction from RNA-PCR-derived RNAs. Methods Mol Biol. 221:289-293,2003.
11.Lin Shi-Lung and Ji H; cDNA library construction using in-vitro transcriptional amplification. Methods Mol Biol. 221:93-101,2003.
12.McDowellら.; Determination of intrinsic transcription termination efficiency by RNA polymerase elongation rate. Science 266:822-825,1994.
13.Schlakeら.; Developing mRNA-Vaccine Technologies. RNA biology 9:1319-1330,2012.
14.Koら.; Development of an RNA Expression Platform Controlled by Viral Internal Ribosome Entry Sites. J. Micobiol. Biotechnol. 29:127-140,2019.
[配列表]
(1)一般情報:
(iii)配列の総数:21

(2)配列番号1についての情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:6塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」
(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:1:
AAUAAA 6

(2)配列番号2についての情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:7塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:2:
AAUUAAA 7

(2)配列番号3についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:73塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ヘアピン

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号3:
GCUCCCUUCA ACUUUAACAU GGAAGUGCUU UCUGUGACUU UAAAAGUAAG UGCUUCCAUG UUUUAGUAGG AGU 73

(2)配列番号4についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:68塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ヘアピン

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号4:
CCUUUGCUUU AACAUGGGGG UACCUGCUGU GUGAAACAAA AGUAAGUGCU UCCAUGUUUC AGUGGAGG 68

(2)配列番号5についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:69塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ヘアピン

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:5:
CCACCACUUA AACGUGGAUG UACUUGCUUU GAAACUAAAG AAGUAAGUGC UUCCAUGUUU UGGUGAUGG 69

(2)配列番号6についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:68塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ヘアピン

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:6:
CCUCUACUUU AACAUGGAGG CACUUGCUGU GACAUGACAA AAAUAAGUGC UUCCAUGUUU GAGUGUGG 68

(2)配列番号7についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:44塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:7:
CUGUGUGGCU GUCACUCGGC UGCAUGCUUA GUGCACUCAC GCAG 44

(2)配列番号8についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:65塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:8:
CUGUGUGGCU GUCACUCGGC UGCAUGCUUA GUGCACUCAC GCAGUAUAAU UAAUAACUAA UUACU 65

(2)配列番号9についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:147塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:9:
GUCGUUGACA GGACACGAGU AACUCGUCUA UCUUCUGCAG GCUGCUUACG GUUUCGUCCG UGUUGCAGCC GAUCAUCAGC ACAUCUAGGU UUCGUCCGGG UGUGACCGAA AGGUAAGAUG GAGAGCCUUG UCCCUGGUUU CAACGAG 147

(2)配列番号10についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:88塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:10:
AAUUAUAAAU UACCAGAUGA UUUUACAGGC UGCGUUAUAG CUUGGAAUUC UAACAAUCUU GAUUCUAAGG UUGGUGGUAA UUAUAAUU 88

(2)配列番号11についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:129塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:複数のステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:11:
CACAAAUAUU ACCAGAUCCA UCAAAACCAA GCAAGAGGUC AUUUAUUGAA GAUCUACUUU UCAACAAAGU GACACUUGCA GAUGCUGGCU UCAUCAAACA AUAUGGUGAU UGCCUUGGUG AUAUUGCUG 129

(2)配列番号12についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:189塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:複数のステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:12:
GCAAAAAUGU GAUCUUGCUU GUAAAUACAA UUUUGAGAGG UUAAUAAAUU ACAAGUAGUG CUAUUUUUGU AUUUAGGUUA GCUAUUUAGC UUUACGUUCC AGGAUGCCUA GUGGCAGCCC CACAAUAUCC AGGAAGCCCU CUCUGCGGUU UUUCAGAUUC GUUAGUCGAA AAACCUAAGA AAUUUAAUG 189

(2)配列番号13についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:294塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:複数のステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:13:
CACUCCCCUG UGAGGACUAC UGUCUUCACG CAGAAAGCGU CUAGCCAUGG CGUUAGUAUG AGUGUCGUGC AGCCUCCAGG ACCCCCCCUC CCGGGAGAGC CAUAGUGGUC UGCGGAACCG GUGAGUACAC CGGAAUUGCC AGGACGACCG GGUCCUUUCU UGGAUCAACC CGCUCAAUGC CUGGAGAUUU GGGCGUGCCC CCGCGAGACU GCUAGCCGAG UAGUGUUGGG UCGCGAAAGG CCUUGUGGUA CUGCCUGAUG GGUGCUUGCG AGUGCCCCGG GAGGUCUCGU AGAC 294

(2)配列番号14についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:55塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:14:
GGACACGAGU AACUCGUCUA UCUUCUGCAG GCUGCUUACG GUUUCGUCCG UGUUG 55

(2)配列番号15についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:52塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:ステムループ

(ii)配列の種類:RNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:15:
CAGCCGAUCA UCAGCACAUC UAGGUUUUGU CCGGGUGUGA CCGAAAGGUA AG 52

(2)配列番号16についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:23塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:YES

(xi)配列の記載:配列番号:16:
CAGTTCCAAT TGTGAAGATT CTC 23

(2)配列番号17についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:20塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:YES

(xi)配列の記載:配列番号:17:
CTTGATGACG TTCTCAGTGC 20

(2)配列番号18についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:48塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:18:
GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAGAG GTATGGTACT TGGTAGTT 48

(2)配列番号19についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:53塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:19:
GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAGAC TAGTGATGTT CTTGTTAACA ACT 53

(2)配列番号20についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:48塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:20:
GATATCTAAT ACGACTCACT ATAGGGAGAG GTATGGTACT TGGTAGTT 48

(2)配列番号21についての情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:25塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖型:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状

(ii)配列の種類:DNA
(A)記載:/desc=「synthetic」

(iii)ハイポセティイカル:NO

(iv)アンチセンス:NO

(xi)配列の記載:配列番号:21:
TCTAATACGA CTCACTATAG GGAGA 25
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【外国語明細書】