(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002470
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】成形品取出機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/42 20060101AFI20221227BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097300
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2021103343
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】喜田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】池田 光示
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AP02
4F202AP10
4F202AR11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CM11
4F202CM14
4F202CM90
(57)【要約】
【課題】オペレータが真空吸着装置の吸引動作開始時期を自分で試行錯誤して決定する必要が無い成形品取出機を提供する。
【解決手段】制御装置7が、圧力検出器35の出力に基づいて時間間隔の計数を行う時間間隔計数部73を備えている。時間間隔計数部73は、圧力検出器35の出力に基づいて配管32内の圧力が所定圧力に達した後、該所定圧力が維持されて吸着ノズル31が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔の計数を行う。制御装置7の吸引開始時期決定部75は、移動機構5の移動制御と並行して、安定時間間隔が、バイアス時間間隔よりも長くなるように吸引動作開始時期を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を吸着する吸着部材と、配管を介して前記吸着部材と接続され、前記吸着部材に真空圧を作用させる真空発生装置と、前記真空発生装置と前記吸着部材との間の配管に設けられ、前記真空発生装置と前記吸着部材との連通又は連通の遮断を行なう圧力弁と、前記圧力弁と前記吸着部材との間の前記配管内の圧力を検出する圧力検出器とを備えた真空吸着装置と、
成形機の成形型からエジェクタピンにより押し出される前記成形品を前記吸着部材により吸着して取り出し、開放位置まで搬送するために前記吸着部材を移動させる移動機構と、
前記真空発生装置及び前記圧力弁の作動制御と前記移動機構の移動制御とを実行する制御装置を備え、
前記制御装置が、前記移動機構の移動制御と並行して、前記吸着部材により前記成形品を吸着する前に前記配管内の圧力が所定圧力に到達した後、前記吸着部材による前記成形品の吸着動作を開始する成形品取出機において、
前記制御装置は、前記圧力検出器の出力に基づいて、前記配管内の圧力が前記所定圧力に達した後、該所定圧力が維持されて前記吸着部材が前記成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔の計数を行う時間間隔計数部を備えており、
前記制御装置は、前記移動機構の移動制御と並行して、前記吸着部材により前記成形品を吸着する前に、前記安定時間間隔がバイアス時間間隔よりも長くなるように吸引動作開始時期を決定することを特徴とする成形品取出機。
【請求項2】
前記バイアス時間間隔は、前記圧力検出器の出力から前記配管内の圧力が所定圧力に到達したことを検知するのに必要な時間間隔以上に定められている請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に近づける動作を行っていく過程で、前記安定時間間隔を前記時間間隔計数部が計数すると、前記安定時間間隔が前記バイアス時間間隔よりも長いか否かを判定する安定時間間隔判定部と、
前記安定時間間隔判定部で、前記安定時間間隔が前記バイアス時間間隔よりも長いことを判定すると、そのときの吸引動作開始時期を許容可能な吸引動作開始時期であると決定する吸引動作開始時期決定部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に近づける動作を行っていく過程で、前記安定時間間隔を前記時間間隔計数部が計数すると、前記安定時間間隔が前記バイアス時間間隔よりも長いか否かを判定する安定時間間隔判定部と、
前記安定時間間隔判定部で、前記安定時間間隔が前記バイアス時間間隔よりも長いことを判定すると、そのときの吸引動作開始時期を許容可能な吸引動作開始時期であると決定する吸引動作開始時期決定部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の成形品取出機。
【請求項5】
前記制御装置は、
1回目の取出サイクルでは、
前記時間間隔計数部から、予め定めた当初吸引開始位置を前記吸着部材が通過する時刻を0として、前記当初吸引開始位置で前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出した時刻から前記吸着部材が前記成形品を吸着したことを示す前記吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔として取得し、
2回目以降の取出サイクルでは、
前記初期安定時間間隔と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるように定められる前記時刻0からの遅れ時間間隔を、前記時間間隔計数部が計数すると、前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出してから前記吸着動作開始圧力を検出するまでの前記安定時間間隔を前記時間間隔計数部から取得し、
前記遅れ時間間隔を段階的に変更して、前記2回目以降の取出サイクルを継続し、前記安定時間間隔が、前記バイアス時間間隔よりも長くなる前記遅れ時間間隔を許容可能な遅れ時間間隔として決定し、
以後時刻0から前記許容可能な遅れ時間間隔を経過したときを前記許容可能な吸引動作開始時期として決定することを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項6】
前記制御装置は、
1回目の取出サイクルからn(nは2以上の整数)回目の取出しサイクルでは、
前記時間間隔計数部から、予め定めた当初吸引開始位置を前記吸着部材が通過する時刻を0として、前記当初吸引開始位置で前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出した時刻から前記吸着部材が前記成形品を吸着する動作を開始したことを示す前記吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔として取得し、取得したn個の初期安定時間間隔のデータ分析値を以後使用する初期安定時間間隔と定め、
n+1回目以降の取出サイクルでは、
前記初期安定時間間隔と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるように定められる前記時刻0からの遅れ時間間隔を、前記時間間隔計数部が計数すると、前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出してから前記吸着動作開始圧力を検出するまでの前記安定時間間隔を前記時間間隔計数部から取得し、
前記遅れ時間間隔を段階的に変更して、前記n+1回目以降の取出サイクルを継続し、前記安定時間間隔が、前記バイアス時間間隔よりも長くなる前記遅れ時間間隔を許容可能な遅れ時間間隔として決定し、
以後時刻0から前記許容可能な遅れ時間間隔を経過したときを前記許容可能な吸引動作開始時期として決定することを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項7】
前記データ分析値は、最小値、最大値、中央値、平均値または分散のうち1つ以上の統計値である請求項6に記載の成形品取出機。
【請求項8】
前記制御装置は、
1回目の取出サイクルからn回目の取出しサイクルでは、
前記時間間隔計数部から、予め定めた当初吸引開始位置を前記吸着部材が通過する時刻を0として、前記当初吸引開始位置で前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出した時刻から前記吸着部材が前記成形品を吸着する動作を開始したことを示す前記吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔として取得し、取得したn個の初期安定時間間隔のデータ分析値を以後使用する初期安定時間間隔と定め、
n+1回目以降の取出サイクルでは、
前記初期安定時間間隔と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるように定められる前記時刻0からの遅れ時間間隔を、前記時間間隔計数部が計数すると、前記圧力弁を開いて前記真空発生装置による吸引動作を開始し、前記移動機構により前記吸着部材を前記成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、前記圧力検出器が前記所定圧力を検出してから前記吸着動作開始圧力を検出するまでの前記安定時間間隔を前記時間間隔計数部から取得し、
前記遅れ時間間隔を段階的に変更して、前記n+1回目以降の取出サイクルを継続し、前記安定時間間隔が、前記バイアス時間間隔よりも長くなる前記遅れ時間間隔を許容可能な遅れ時間間隔として決定し、
以後時刻0から前記許容可能な遅れ時間間隔を経過したときを前記許容可能な吸引動作開始時期として決定することを特徴とする請求項2に記載の成形品取出機。
【請求項9】
前記データ分析値は、最小値、最大値、中央値、平均値または分散のうち1つ以上の統計値である請求項8に記載の成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ミスの発生を抑制できる成形品取出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2001-145946号公報(特許文献1)には、成型機の型を開いた後に、成形品を真空吸着装置で吸着して取出す成形品取出機において、真空吸着装置における真空到達時間を事前に把握し、真空吸着装置の動作開始を最適な時点で行うことにより、真空発生装置の動作時間を短縮することを提案する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、成形品を型から押し出すエジェクタピンの突き出し完了時間が取出サイクルごとにバラツクため、吸着タイミングが一定にはならないことや、圧力検出器が確実に所定圧力を検出するまでにある程度の測定時間間隔を必要とすることを考慮していない。そのため実際上は、真空吸着装置の吸引動作開始時期をオペレータが適切に設定することが難しく、成形品の吸着ミスの発生を防止することに限界があった。
【0005】
本発明の目的は、オペレータが真空吸着装置の吸引動作開始時期を自分で試行錯誤して決定する必要が無い成形品取出機を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、真空発生装置の動作時間を短縮したとしても、吸着部材による成形品の取出しを確実に行える成形品取出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、真空吸着装置と、移動機構と、制御装置とを備えている。真空吸着装置は、成形品を吸着する吸着部材と、配管を介して前記吸着部材と接続され、前記吸着部材に真空圧を作用させる真空発生装置と、真空発生装置と吸着部材との間の配管に設けられ、真空発生装置と吸着部材との連通又は連通の遮断を行なう圧力弁と、圧力弁と吸着部材との間の配管内の圧力を検出する圧力検出器とを備えている。移動機構は、成形機の成形型からエジェクタピンにより押し出される成形品を吸着部材により吸着して取り出し、開放位置まで搬送するために吸着部材を移動させる。制御装置は、真空発生装置及び圧力弁の作動制御と移動機構の移動制御とを実行する。そして制御装置は、移動機構の移動制御と並行して、吸着部材により成形品を吸着する前に配管内の圧力が所定圧力に到達した後に、吸着部材による成形品の吸着を実行する成形品取出機を対象とする。
【0008】
本発明においては、制御装置が、圧力検出器の出力に基づいて時間間隔の計数を行う時間間隔計数部を備えており、この時間間隔計数部は、圧力検出器の出力に基づいて配管内の圧力が所定圧力に達した後、該所定圧力が維持されて吸着部材が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔の計数を行う。そして制御装置は、移動機構の移動制御と並行して、安定時間間隔が、バイアス時間間隔よりも長くなるように吸引動作開始時期を決定する。
【0009】
ここでバイアス時間間隔は、配管内の圧力が所定圧力に到達したことを検知するのに必要な時間間隔である。
【0010】
本発明によれば、安定時間間隔が、配管内の圧力が所定圧力に到達したことを検知するのに必要な時間間隔であるバイス時間間隔よりも長くなるので、オペレータは圧力検出器が問題無く動作して吸着ミスを防止できる吸引動作開始時期(遅延時間)を自分で試行錯誤して決定する必要が無い。また、本発明によれば、吸引動作開始時期を遅くして(吸引動作開始までの遅延時間を長くして)、真空吸着装置のエアー消費量を少なくする場合でも、制御装置が圧力検出器が問題無く動作して吸着ミスを防止できる吸引動作開始時期を決定するので、エアー消費量の低減と取出しの安定性を実現することができる。
【0011】
制御装置は、安定時間間隔判定部と、吸引動作開始時期決定部を備えていてもよい。安定時間間隔判定部は、圧力弁を開いて真空発生装置による吸引動作を開始し、移動機構により吸着部材を成形品に近づける動作を行っていく過程で、安定時間間隔がバイアス時間間隔よりも長いか否かを判定する。そして吸引動作開始時期決定部は、安定時間間隔T3がバイアス時間間隔よりも長いことを安定時間間隔判定部が判定すると、そのときの吸引動作開始時期を許容可能な吸引動作開始時期であると決定する。許容可能な吸引動作開始時期ではないと決定された場合には、コントローラの画面表示や音で、アラームを出せばよい。この場合、オペレータはコントローラから吸引動作開始時期にかかわるパラメータを、吸引動作開始時期を早めるように変更すればよい。またコントローラが自動で吸引開始動作を早めるようにしてもよい。許容可能な吸引動作開始時期であれば、オペレータは特に何もしなくてもよい。
【0012】
制御装置は、真空吸着装置の動作時間を短縮するためには、吸引動作開始時期を以下のように決定することができる。
【0013】
制御装置は、まず1回目の取出サイクルでは、時間間隔計数部から、予め定めた当初吸引開始位置を吸着部材が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置で圧力弁を開いて真空発生装置による吸引動作を開始し、移動機構により吸着部材を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器が所定圧力を検出した時刻から吸着部材が成形品を吸着したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔T3(0)として取得する。制御装置は、2回目以降の取出サイクルでは、初期安定時間間隔と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるように定められる時刻0からの遅れ時間間隔Δtiを、時間間隔計数部が計数すると、圧力弁を開いて真空発生装置による吸引動作を開始し、移動機構により吸着部材を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器が所定圧力を検出してから吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔T3(i)を時間間隔計数から取得する。そして制御装置は、遅れ時間間隔Δtiを段階的に変更して、2回目以降の取出サイクルを継続し、安定時間間隔が、バイアス時間間隔よりも長くなる遅れ時間間隔Δtiを許容可能な遅れ時間間隔Δti´として決定し、以後時刻0から許容可能な遅れ時間間隔Δti´を経過したときを許容可能な吸引動作開始時期として決定する。このようにすると、段階的に吸引動作開始時期を遅くしても、適切な吸引動作開始時期を自動的に決定できる。
【0014】
真空発生装置の動作時間を短縮するためには、吸引動作開始時期を以下のように決定してもよい。制御装置は、1回目の取出サイクルからn(nは2以上の整数)回目の取出しサイクルでは、時間間隔計数部から、予め定めた当初吸引開始位置を吸着部材が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置で圧力弁を開いて真空発生装置による吸引動作を開始し、移動機構により吸着部材を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器が所定圧力を検出した時刻から吸着部材が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔として取得し、取得したn個の初期安定時間間隔T3(n)の最小値または平均値を以後で使用する初期安定時間間隔と定める。制御装置は、次に、n+1回目以降の取出サイクルでは、初期安定時間間隔と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるように定められる遅れ時間間隔Δtiを、当初吸引開始位置P0を吸着部材が通過する時刻を0として時間間隔計数部が計数すると、圧力弁を開いて真空発生装置による吸引動作を開始し、移動機構により吸着部材を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器が所定圧力を検出してから吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔T3を時間間隔計数部から取得する。そして時刻0からの遅れ時間間隔Δtiを段階的に変更して、n+1回目以降の取出サイクルを継続し、安定時間間隔が、バイアス時間間隔Tbよりも長くなる遅れ時間間隔Δtiを許容可能な遅れ時間間隔Δti´として決定し、以後時刻0から許容可能な遅れ時間間隔Δti´を経過したときを許容可能な吸引動作開始時期として決定する。このようにすると安定時間間隔の決定精度が高くなり、段階的に吸引動作開始時期を遅くしても、適切な吸引動作開始時期を自動的に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態の成形品取出機の構成の主要部をブロックで示すブロック図である。
【
図2】移動機構による取出ヘッドの移動経路を説明するために用いる図である。
【
図3】エジェクタピンによる押し出し動作を説明するために用いる図である。
【
図4】吸引動作と吸着動作を説明するために用いる時間と吸着圧の関係を示す図である。
【
図5】実施の形態の吸引動作と吸着動作を説明するために用いる時間と吸着圧の関係を示す図である。
【
図6】従来の成形品取出機の吸引動作と吸着動作を説明するために用いる時間と吸着圧の関係を示す図である。
【
図7】エアー消費量を低減する実施の形態の吸引動作と吸着動作を説明するために用いる時間と吸着圧の関係を示す図である。
【
図8】実施の形態の動作フローチャートを示す図である。
【
図9】初期安定時間間隔のデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の成形品取出機の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、樹脂成形機11から樹脂成形品を取り出す本発明の本実施の形態の成形品取出機1の構成の主要部をブロックで示すブロック図である。成形品取出機1は、真空吸着装置3と、移動機構5と、制御装置7とを備えている。
【0017】
真空吸着装置3は、成形品を吸着する吸着部材としての吸着ノズル31と、配管32を介して吸着ノズル31と接続され、吸着ノズル31に真空圧を作用させる真空発生装置33と、真空発生装置33と吸着ノズル31との間の配管32に設けられ、真空発生装置33と吸着ノズル31との連通又は連通の遮断を行なう圧力弁34と、圧力弁34と吸着ノズル31との間の配管32内の圧力を検出する圧力検出器35とを備えている。なお吸着ノズル31は、移動機構5によって移動させられる取出ヘッド8に装着されている。
【0018】
移動機構5が周知の三軸移動機構すなわちXYZ型の移動機構である場合には、
図2に示すように成形品を取り出す取出操作をする際には、Z軸及びY軸に沿って移動して吸着ノズル31を備えた取出ヘッド8を、待機位置(下降開始位置)→下降位置→取出位置→引抜位置→上昇位置の順路で移動させる。そして
図3に示すように、移動機構5は取出位置において、成形機11の成形型12からエジェクタピン13の突出動作により押し出される成形品MPを吸着ノズル31により吸着して取り出す。その後上昇位置から図示しない開放位置まで、移動機構5は吸着ノズル31を装着した取出ヘッド8を移動させる。開放位置では、吸着ノズル31による吸着が解除されて、成形品MPは開放位置で開放される。
【0019】
制御装置7は、真空発生装置33及び圧力弁34の作動制御と移動機構5の移動制御とを実行する。
図1に示すように、本実施の形態では、制御装置7は、移動機構5を制御する移動機構制御部71と、真空発生装置33を制御する真空発生装置制御部72と、圧力検出器35の出力に基づいて時間間隔の計数を行う時間間隔計数部73と、安定時間間隔判定部74と、吸引動作開始時期決定部75を備えている。安定時間間隔判定部74は、は、例えば、複数回の取出サイクルを実行する毎に、圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始してから、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に近づける取出動作を行っていく調整過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出するまでの時間間隔Ttr1と、圧力検出器35が所定圧力を検出してから吸着ノズル31が成形品MPを吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔T3を時間間隔計数部73の出力から計数する。安定時間間隔判定部74は、圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着部材を成形品に近づける動作を行っていく過程で、安定時間間隔T3がバイアス時間間隔Tbよりも長いか否かを判定する。そして吸引動作開始時期決定部75は、安定時間間隔T3がバイアス時間間隔TBよりも長いことを安定時間間隔判定部74が判定すると、そのときの吸引動作開始時期を許容可能な吸引動作開始時期であると決定する。許容可能な吸引動作開始時期ではないと決定された場合には、コントローラの画面表示や音で、アラームを出せばよい。この場合、オペレータはコントローラから吸引動作開始時期にかかわるパラメータを、吸引動作開始時期を早めるように変更すればよい。またコントローラが自動で吸引開始動作を早めるようにしてもよい。許容可能な吸引動作開始時期であれば、オペレータは特に何もしなくてもよい。
【0020】
吸引動作開始時期決定部75は、合計時間間隔T1=Ttr1+T3により吸引動作開始時期を決定する。なお後述する
図7で見れば、理論的な考え方としては、予め定めた当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置P0で圧力弁を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出した時刻から吸着ノズル31が成形品MPを吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔T0として取得する。この初期安定時間間隔T0から合計時間間隔T1を引いた時間間隔を遅れ時間間隔Δtとし、この遅れ時間間隔Δtから吸引動作開始時期を決定できる。
【0021】
この所定圧力は、圧力検出器35の出力から配管32内の圧力がわずかな変化幅(Δp)に入っている時間間隔(バイアス時間間隔Tbに相当)を経過すれば、所定の圧力に到達したと認識され、且つ安定圧力に到達したと認識される。
図4の状態では、安定圧力が安定時間間隔T3の間続いていることを意味している。
【0022】
この安定時間間隔T3は、
図4に示すように、少なくともエジェクタピン13の動作時間にバラツキがあるため、取出サイクル毎に変動する。そのため合計時間間隔T1=Ttr1+T3も変動することになる。圧力検出器35の出力は、微妙に変動しているため、配管32内の圧力が所定圧力に到達した後バイアス時間間隔Tb(この時間間隔においても圧力検出器35の出力は微妙に変動している)を経過して初めて吸着動作開始圧力を正しく検知できる安定圧力になったと判断する。
【0023】
真空吸着装置3によるエアーの消費量を少なくするために、前述の吸引動作開始時期を遅くして合計時間間隔T1=Ttr1+T3が短くなると、安定時間間隔の判定ができないまま成形品と接触したり、吸着の安定性を確保できない状態になる可能性がある。
【0024】
そこで本実施の形態では、安定時間間隔T3がバイアス時間間隔Tbよりも長くなるように、吸引動作開始時期決定部75が吸引動作開始時期を決定するので、吸引動作開始時期決定部75が決定した吸引動作開始時期を用いて取出動作を行えば、吸着ミスが生じるおそれがなくなる。
【0025】
またこのようにするとエジェクタピンの動作のバラツキの存在も、安定時間間隔T3の確保によって吸収されることになるので、エジェクタピンの動作のバラツキによって吸着ミスが発生することを防止できる。
【0026】
図5に示すように、吸着ノズル31を移動させる際の早い段階(吸着ノズルの下降開始位置)から吸引動作を開始して、十分に安定した吸引圧力になった後に(バイアス時間間隔Tbよりも長い安定時間間隔T3を十分に確保した上で)、吸着動作を開始すれば吸着ミスが生じるおそれがなくなる。しかしながらこのようにすると必要以上に真空発生装置33の作動時間が長くなって(エアーの消費量が増えて)、電気代が増える問題が発生する。
【0027】
図6に示すように、特許文献1に記載の発明では、吸着前の真空発生装置の作動時間を最大限短くするために、安定時間間隔を作ることなく、吸着動作を開始するので、吸着動作開始圧力を正しく検出できないだけでなく、前述のエジェクタピンの動作のバラツキの影響を回避することは難しい。
【0028】
本実施の形態では、制御装置7の吸引動作開始時期決定部75が、圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品MPに近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出してから吸着ノズル31が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔T3が、バイアス時間間隔Tbよりも長くなるように吸引動作開始時期を決定している。
【0029】
例えば、具体的なバイアス時間間隔Tbは、圧力検出器35のサンプリング周期のほぼ4周期分の長さに定めている。より具体的には、70ms~90msの間の時間間隔をバイアス時間間隔Tbとして採用するのが好ましい。
【0030】
図7に示すように、具体的に吸引時のエアーの消費量を少なくするためには、取出サイクル毎に遅れ時間間隔Δti(下降開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として吸引動作を開始するまでの時間間隔)を増加させることにより合計時間間隔Ttr1+T3を減少させて、安定時間間隔T3をバイアス時間間隔Tbに近付ける動作(吸引動作開始時期を0→t1→t2のように変える動作)を制御装置7の吸引動作開始時期決定部75が自動で行う。
【0031】
但し、この動作は、安定時間間隔T3がバイアス時間間隔Tbよりも長くなるという条件の下で行う必要がある。安定時間間隔T3が、バイアス時間間隔Tbよりも長くなるように吸引動作開始時期を制御装置7の吸引動作開始時期決定部75が決定すると、オペレータは圧力検出器35が問題無く動作して吸着ミスを防止できる吸引動作開始時期(遅れ時間間隔Δtiに相当する)を自分で試行錯誤して決定する必要が無くなる。
【0032】
また、吸引動作開始時期を遅くして(吸引動作開始までの遅れ時間間隔Δti(を長くして)、真空吸着装置3のエアー消費量を少なくする場合でも、制御装置7は圧力検出器35が問題無く動作して吸着ミスの発生を防止できる吸引動作開始時期を許容可能な吸引動作開始時期であると決定する。そのため本実施の形態によれば、エアー消費量の低減と取出しの安定性を自動で実現することができる。
【0033】
なお安定時間間隔T3がバイアス時間間隔Tbよりも長くなるという条件が満たされる限り、エアーの消費量の削減の程度は必要に応じて定めればよく、何も削減しない場合の1/2、1/3、1/4等にすることはユーザの選択事項である。
【0034】
制御装置7によって、許容可能な吸引動作開始時期ではないと決定された場合には、制御装置7に付随する図示しないコントローラの画面表示や音で、アラームを出せばよい。またこの場合、オペレータは、コントローラを介して吸引動作開始時期にかかわるパラメータを、吸引動作開始時期を早めるように変更すればよい。
【0035】
吸引動作開始時期決定部75の一例では、吸引動作開始時期を決定するために、
図7に示すタイムチャートを、
図8に示すフローチャートに従って実現することができる。まずステップST1では、初期安定時間間隔T3(0)を試運転により取得する。そのために1回目の取出サイクルでは、時間間隔計数部73から、予め定めた当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置P0で圧力弁を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出した時刻から吸着ノズル31が成形品MPを吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔T3(0)として取得し、また初期の遅れ時間間隔Δt(1)[ステップST2]を決定する。
【0036】
実機動作となる2回目以降の取出サイクルでは、初期安定時間間隔T3(0)と取出サイクル数に基づいて該取出サイクル数が増えるほど長くなるようにステップST4で定められる遅れ時間間隔Δt(i)を、当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として時間間隔計数部73が計数すると、圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始する。
【0037】
移動機構5により吸着ノズル31を成形品MPに向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出するまでの時間間隔Ttr1を時間間隔計数部73が計数してから吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間間隔T3を時間間隔計数部73から取得する[ステップST5]。
【0038】
取出サイクルを増加させるごとに、遅れ時間間隔Δt(i)を増加させる方法は、任意であり、例えば、予め定めた一定時間間隔ずつ次の遅れ時間間隔を増加させてもよく、また取出サイクルの増加に逆比例の関係で遅れ時間間隔Δt(i)の増加分を増やすようにしてもよい。
【0039】
そして安定時間間隔T3がバイアス時間間隔Tbに近い値になるまで2回目以降の取出サイクルを継続し[ステップST6からステップST6乃至9]、安定時間間隔T3(i)が、バイアス時間間隔Tbになるかまたは該バイアス時間間隔Tbに近付いたときを吸引動作開始時期決定のステップST8で決定すると、そのときの遅れ時間間隔Δtiを最終の許容可能な遅れ時間間隔Δti´として決定される。
【0040】
なおステップST8での決定は、例えば、予め許容差分Δαを定めて、[安定時間間隔T3(i)-バイアス時間間隔Tb)≦Δα]の条件で実行する。そして以後の実機動作では、時刻0から最終の遅れ時間間隔ti´を経過したときを吸引動作開始時期として動作を継続する。なおステップST7で、T3(i)>Tbになったときには、ステップST10へと進み、前回の遅れ時間間隔を採用することとする。
【0041】
図8のフローチャートでは、ステップST1で試運転になる1回目の取出サイクルにおいて、初期安定時間間隔T3(0)を決定したが、試運転において複数回の取出サイクルを実行して、複数回の取出サイクルで得た複数のデータの分析値から初期安定時間間隔T3(0)を定めるようにしてもよい。この場合には、ステップST1を次のように構成する。すなわち1回目の取出サイクルからn回目の取出しサイクルでは、時間間隔計数部73から、予め定めた当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置で圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出した時刻から吸着ノズル31が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間間隔を初期安定時間間隔T3(n)として取得する。
【0042】
そして取得したn個の初期安定時間間隔T3(n)の最小値、最大値、中央値、平均値または分散のうち少なくとも1つ以上の統計値をデータ分析値として使用して初期安定時間間隔T3(0)と定める。
【0043】
図9は、試運転において、初期安定時間間隔T3(n)の最小値を使用して初期安定時間間隔T3(0)を定める場合の例である。以後の動作は、前述の
図8のフローチャートにおける2回目の取出サイクルがn+1回目の取出サイクルとなるだけで、同じである。このようにすると初期安定時間間隔T3(0)の決定精度が高くなり、段階的に吸引動作開始時期を遅くしても、適切な吸引動作開始時期を自動的に決定できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、安定時間間隔が、バイアス時間間隔よりも長くなるように吸引動作開始時期を制御装置が決定するので、オペレータは圧力検出器が問題無く動作して吸着ミスを防止できる吸引動作開始時期(遅延時間)を自分で試行錯誤して決定する必要が無い。また、本発明によれば、吸引動作開始時期を遅くして、真空吸着装置のエアー消費量を少なくする場合でも、制御装置が圧力検出器が問題無く動作して吸着ミスを防止できる吸引動作開始時期を決定するので、エアー消費量の低減と取出しの安定性を実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 成形品取出機
3 真空吸着装置
5 移動機構
7 制御装置
8 取出ヘッド
11 成形機
12 成型型
14 エジェクタピン移動機構
31 吸着ノズル
32 配管
33 真空発生装置
34 圧力弁
35 圧力検出器
71 移動機構制御部
72 真空発生装置制御部
73 時間間隔計数部
74 安定時間間隔判定部
75 吸引動作開始時期決定部