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  • 特開-情報処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024750
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208335
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2018047580の分割
【原出願日】2018-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 卓也
(57)【要約】
【課題】初期データを有効利用することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】記憶部2に記憶されたセンサ実測値と、新たな補正値と、に基づいて変位量情報を生成することで、過去に得られたセンサ実測値と、最新の補正値と、に基づいて変位量情報を生成することができる。最新の補正値は更新がなされており、精度の高い変位量情報を生成可能なものである。従って、過去のセンサ実測値と、そのときの補正値と、に基づいて変位量情報を生成する方法と比較して、精度の高い変位量情報を生成することができる。従って、初期データである過去のセンサ実測値を有効利用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位量を測定するためのセンサが設けられた移動体から情報を取得する情報処理装置において、
前記センサのセンサ実測値が記憶されている記憶部と、
前記センサ実測値を補正する補正値を取得する取得部と、
前記移動体から、新たな補正値を取得した場合に、前記センサ実測値と前記新たな補正値に基づいて、前記移動体の変位量情報を生成する生成部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両(移動体)の走行軌跡に基づいて地図データを更新する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された地図データの更新方法では、マップマッチングが不可能であった場合の走行軌跡を、新たな道路として地図データベースに更新している。このとき、速度センサやジャイロセンサ等を用いて推測航法により走行軌跡を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-145159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように推測航法により走行軌跡を算出する際、センサは、ジャイロ電圧や車速パルス等を実測値として出力し、この実測値に対して所定の係数等(補正値)を乗じることにより、方位変位量や移動量等の変位量が算出される。しかしながら、センサには個体差があるため、補正値が最適化されていないと変位量が誤差を含む場合があった。
【0005】
そこで、推測航法により生成した走行軌跡の終点と、自己位置推定により得られた緯度経度情報と、に基づいて補正値を更新することにより、算出される変位量の精度を向上させる方法が考えられる。しかしながら、補正値の更新を繰り返せば得られる変位量の信頼度は高くなるものの、更新前に得られた変位量は誤差を含む可能性があり、測定初期に得られたデータを有効利用しにくい。また、一般的に補正値は更新が繰り返されるほど誤差は小さくなっていく。
【0006】
したがって、本発明の課題は、初期データを有効利用することができる情報処理装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の情報処理装置は、変位量を測定するためのセンサが設けられた移動体から情報を取得する情報処理装置において、前記センサのセンサ実測値が記憶されている記憶部と、前記センサ実測値を補正する補正値を取得する取得部と、前記移動体から、新たな補正値を取得した場合に、前記センサ実測値と前記新たな補正値に基づいて、前記移動体の変位量情報を生成する生成部と、を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る情報処理装置の概略を示すブロック図である。
図2】前記情報処理装置によって走行軌跡を生成する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る情報処理装置は、変位量を測定するためのセンサが設けられた移動体から情報を取得する情報処理装置において、
センサのセンサ実測値が記憶されている記憶部と、センサ実測値を補正する補正値を取得する取得部と、移動体から、新たな補正値を取得した場合に、センサ実測値と新たな補正値に基づいて、移動体の変位量情報を生成する生成部と、を備える。
【0010】
新たな補正値を取得した場合に、記憶部に記憶されたセンサ実測値と、新たな補正値と、に基づいて変位量情報を生成することで、過去に得られたセンサ実測値と、最新の補正値と、に基づいて変位量情報を生成することができる。最新の補正値は更新がなされており、精度の高い変位量情報を生成可能なものである。従って、過去のセンサ実測値と、過去の補正値と、に基づいて変位量情報を生成する方法と比較して、精度の高い変位量情報を生成することができる。従って、初期データである過去のセンサ実測値を有効利用することができる。
【0011】
センサ実測値は、移動体の速度パルス数と、ジャイロ電圧と、加速度センサ電圧と、のうち少なくとも1つを含むものであればよい。
【0012】
情報処理装置は、変位量情報に基づいて、移動体の走行軌跡情報を生成する軌跡生成部をさらに備えることが好ましい。これにより、過去のセンサ実測値により得られた変位量情報を、走行軌跡情報の生成のために有効利用することができる。
【0013】
一方、本実施形態に係る情報処理システムは、変位量を測定するためのセンサが設けられた移動体から情報を取得する情報処理システムにおいて、センサのセンサ実測値が記憶されている記憶部と、センサ実測値を補正する補正値を取得する取得部と、移動体から、新たな補正値を取得した場合に、センサ実測値と新たな補正値に基づいて、移動体の変位量情報を生成する生成部と、を備える。
【0014】
また、本実施形態に係る情報処理方法は、変位量を測定するためのセンサが設けられた移動体から情報を取得する情報処理方法において、センサのセンサ実測値を記憶する記憶工程と、センサ実測値を補正する補正値を取得する取得工程と、移動体から、新たな補正値を取得した場合に、センサ実測値と新たな補正値に基づいて、移動体の変位量情報を生成する生成工程と、を含む。
【0015】
本実施形態の情報処理システム及び情報処理方法によれば、上記の情報処理装置と同様に、新たな補正値を取得した場合に、記憶部に記憶されたセンサ実測値と、新たな補正値と、に基づいて変位量情報を生成することで、初期データである過去のセンサ実測値を有効利用することができる。
【実施例0016】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例の情報処理装置(情報処理システム)1は、図1に示すように、移動体としての車両10から情報を取得する外部サーバであって、記憶部2と、サーバ側制御部3と、通信部4と、を備える。車両10は、位置推定部11と、センサ12と、車両側記憶部13と、車両側制御部14と、通信部15と、を備える。尚、車両10は、一般車両であってもよいし、地図データを生成することを目的とした計測車両であってもよい。また、車両10には例えば識別番号が付与されており、情報処理装置1では、複数の車両について個別に情報を記憶及び処理するようになっている。
【0017】
記憶部2は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、地図データが記憶され、制御部3からの制御により読み書きがなされる。また、記憶部2には、後述するように、センサ12のセンサ実測値と、センサ実測値を補正する補正値と、が記憶される。
【0018】
サーバ側制御部3は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、情報処理
装置1の全体制御を司り、後述するように、車両10から取得した情報を記憶部2に記憶させたり、所定の処理を行ったりする。
【0019】
通信部4は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、車両10と通信して情報を送受信する。
【0020】
位置推定部11は、車両10の現在位置(絶対位置)を推定するものであって、例えば複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信するGPS
受信部であればよい。位置推定部11は、車両10の現在位置として、緯度経度情報を取得する。
【0021】
センサ12は、車両10の変位量を測定するためのものであって、例えば、車両10の車速パルスを取得する車速パルス取得部と、車両10の方位変位量を測定するためのジャイロセンサと、車両10の加速度を取得するための加速度センサと、によって構成されている。また、センサ12は、センサ実測値として例えば、車速パルス数と、ジャイロ電圧と、加速度センサ電圧と、を出力する。
【0022】
車両側記憶部13は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、地図データが記憶されている。
【0023】
車両側制御部14は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成される。
【0024】
通信部15は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、情報処理装置1と通信して情報を送受信する。尚、通信部15は情報処理装置1に対して情報の送信のみを行うものであってもよい。
【0025】
以上のような情報処理装置1において、サーバ側制御部3が情報を処理し記憶させる方法の詳細について説明する。車両10において、車両側制御部14が、位置推定部11が推定した絶対位置(緯度経度情報)と、車両側記憶部13に記憶された既存経路情報と、に基づいてマップマッチングを行う。情報処理装置1のサーバ側制御部3は、車両10からマップマッチング結果を取得する。
【0026】
車両10から取得したマップマッチング結果が示す走行軌跡は、例えば車両10が右左折した領域においては、滑らかな曲線状にならない場合がある。図2に示す例では、車両10が右折した際のマップマッチング結果に基づく走行軌跡(実線)は、不連続な部分を有する。そこで、サーバ側制御部3は、走行軌跡のうち右左折した領域について、センサ12の測定結果を用いて補正する。サーバ側制御部3は、センサ12からセンサ実測値を取得し、センサ実測値に補正値を乗じることによって変位量を算出する。即ち、車速パルス数に対し、1パルスあたりの移動量を補正値として乗じることにより、変位量としての移動量を算出し、ジャイロ電圧の変化量に対し、所定の係数を補正値として乗じることにより、変位量として方位変位量を算出し、加速度センサ電圧の変化量に対し、所定の係数を補正値として乗じることにより、変位量として加速度を算出する。
【0027】
マップマッチング結果が示す走行軌跡のうち、例えば右左折開始位置を起点として変位量を積算していくことにより、新たな軌跡を生成することができる。即ち、マップマッチングに基づく走行軌跡のうち滑らかな曲線状とならない部分を、変位量に基づく走行軌跡
に置換することができる。
【0028】
変位量を算出するための補正値は、センサ12に応じた値であるものの、センサ12には個体差があるため、得られる変位量には誤差が生じる。上記のように変位量を積算していくと誤差が累積する。例えば図2示すように、右折開始位置を起点P1として変位量を積算して得られる走行軌跡(二点鎖線)の終点(右折完了位置)P2は、右折後のレーンから外れてしまうことがある。
【0029】
マップマッチング結果が示す走行軌跡のうち、右左折の終了位置については、絶対位置(緯度経度)の推定精度は比較的高い。従って、マップマッチングに基づく終了位置の緯度経度と、変位量の積算に基づく終了位置の緯度経度と、が一致するように補正値を更新することができる。図2に示す例では、マップマッチングに基づく終点P3は、右折後のレーン上に位置する。マップマッチングに基づく終点P3と、変位量の積算に基づく終点P2と、が一致するように補正値を更新し、新たな補正値を用いて変位量を算出及び積算すると、一点鎖線で示すような新たな軌跡が得られる。
【0030】
サーバ側制御部3は、車両10から情報を取得した際、そのときのマップマッチング結果と、センサ12のセンサ実測値と、を記憶部2に記憶させる(記憶工程)とともに、上記のように補正値を更新する。即ち、サーバ側制御部3は、補正値を取得し(取得工程)、取得部として機能する。センサ実測値は走行経路の各位置において固有のものであることから、各位置について個別にセンサ実測値が記憶される。一方、補正値はセンサ12に固有のものであることから、車両10が走行することで更新されて上書きされる。
【0031】
上記のように補正値の更新を繰り返すことにより、得られる変化量の誤差が低下していき、精度が向上する。一方、更新が充分に繰り返されていない初期の補正値と、そのときに得られたセンサ実測値と、に基づく変位量は誤差が大きく、この変位量に基づく走行軌跡は精度が低い。そこで、サーバ側制御部3は、最新の補正値と、過去に得られた(記憶部2に記憶された)センサ実測値と、に基づいて変位量を再算出し、再算出した変位量に基づいて走行軌跡を再び生成する。即ち、サーバ側制御部3は、新たな補正値を取得した場合に、センサ実測値と新たな補正値に基づいて、車両10の変位量情報を生成し(生成工程)、生成部として機能する。また、サーバ側制御部3は、変位量情報に基づいて車両10の走行軌跡情報を生成し、軌跡生成部として機能する。
【0032】
以上に説明したように、情報処理装置1のサーバ側制御部3は、マップマッチング結果が示す走行軌跡を、変位量の積算によって補正する。補正後の走行軌跡のうち適宜な位置を特徴点(ノード)として記憶部2に記憶させればよい。
【0033】
上記の構成により、記憶部2に記憶されたセンサ実測値と、新たな補正値と、に基づいて変位量情報を生成することで、過去に得られたセンサ実測値と、最新の補正値と、に基づいて変位量情報を生成することができる。最新の補正値は更新がなされており、精度の高い変位量情報を生成可能なものである。従って、過去のセンサ実測値と、そのときの補正値と、に基づいて変位量情報を生成する方法と比較して、精度の高い変位量情報を生成することができる。従って、初期データである過去のセンサ実測値を有効利用することができる。特に、マップマッチングを行うことができない新規道路などにおいて、車両の軌跡情報を用いて道路情報を生成する場合には、正確な軌跡情報が必要となるため有用である。
【0034】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0035】
例えば、前記実施例では、センサ12が、車速パルス取得部とジャイロセンサと加速度センサとによって構成され、センサ実測値として、車速パルス数とジャイロ電圧と加速度センサ電圧とを出力するものとしたが、センサは、移動体の変位量を測定するためのものであればよい。例えば、センサは、車速パルス取得部とジャイロセンサと加速度センサとのうち少なくとも1つを有して構成されていればよく、センサ実測値として、車速パルス数とジャイロ電圧と加速度センサ電圧とのうち少なくとも1つを出力すればよい。
【0036】
また、前記実施例では、記憶部2に記憶されたセンサ実測値と、新たな補正値と、に基づく変位量情報によって走行軌跡情報を生成するものとしたが、変位量情報に基づいて他の情報を生成してもよい。
【0037】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 情報処理装置
2 記憶部
3 サーバ側制御部(取得部、生成部)
10 車両(移動体)
12 センサ
図1
図2