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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002480
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】防火窓
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20221227BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20221227BHJP
   E06B 1/36 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E06B5/16
C03C27/12 P
E06B1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098193
(22)【出願日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021103310
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021200940
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁仁
(72)【発明者】
【氏名】長壽 研
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 元
(72)【発明者】
【氏名】川妻 幸宏
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
4G061
【Fターム(参考)】
2E011DA01
2E239CA05
2E239CA22
2E239CA23
2E239CA32
2E239CA44
4G061AA28
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD16
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】遮炎性能を高めることを可能にした防火窓を提供する。
【解決手段】防火窓11は、合わせガラス12と、合わせガラス12が取り付けられる窓枠13とを備える。窓枠13の枠本体部14は、合わせガラス12の厚さ方向に沿って向かい合うように配置される第1側壁14a及び第2側壁14bと、第1側壁14aと第2側壁14bとの間に配置され、合わせガラス12の外周端面に向かい合うように配置される内周壁14cと、内周壁14cと第1側壁14a及び第2側壁14bとに囲まれる枠内空間部14dとを有する。枠本体部14の内周壁14cは、内周壁貫通孔16を有する。枠本体部14の第1側壁14a及び第2側壁14bのうち、例えば、第1側壁14aは、火災の熱で加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した第1空間A1とを接続する第1空間接続予定部17を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の板ガラスと前記二枚の板ガラスの間に配置される樹脂層とを有する合わせガラスと、前記合わせガラスが取り付けられる窓枠と、を備える防火窓であって、
前記窓枠は、枠本体部を備え、
前記枠本体部は、前記合わせガラスの厚さ方向に沿って向かい合うように配置される第1側壁及び第2側壁と、
前記第1側壁と前記第2側壁との間に配置され、前記合わせガラスの外周端面に向かい合うように配置される内周壁と、
前記内周壁と前記第1側壁及び前記第2側壁とに囲まれる枠内空間部と、を有し、
前記枠本体部の前記内周壁は、内周壁貫通孔を有し、
前記枠本体部の前記第1側壁又は前記第2側壁が、火災の熱で加熱されることで、前記枠内空間部と前記火災が発生した空間とを接続する空間接続予定部を有する、防火窓。
【請求項2】
前記空間接続予定部は、前記第1側壁又は前記第2側壁を貫通する側壁貫通孔と、
前記側壁貫通孔を閉塞する閉塞部材と、を有し、
前記閉塞部材は、前記側壁貫通孔の内周面又は前記側壁貫通孔の周縁部に嵌合する嵌合部、及び前記側壁貫通孔の内周面又は前記側壁貫通孔の周縁部に接合する接合部の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の防火窓。
【請求項3】
前記閉塞部材の少なくとも一部の融点は、700℃以下である、請求項2に記載の防火窓。
【請求項4】
前記空間接続予定部は、前記第1側壁又は前記第2側壁を貫通する側壁貫通孔と、
前記側壁貫通孔と重なるように前記第1側壁又は前記第2側壁に沿って配置される金属プレート部材と、
前記金属プレート部材を前記第1側壁又は前記第2側壁に固定する複数の金属固定部と、を備え、
前記複数の金属固定部は、前記枠本体部の長手方向において離間して配置されるとともに、前記複数の金属固定部の間に前記側壁貫通孔が配置される、請求項1に記載の防火窓。
【請求項5】
前記金属プレート部材が配置される前記第1側壁又は前記第2側壁は、前記側壁貫通孔よりも外周側に位置する外周側壁部を有し、
前記外周側壁部は、前記金属プレート部材よりも外方に突出する、請求項4に記載の防火窓。
【請求項6】
前記空間接続予定部は、前記第1側壁が有する第1空間接続予定部と、前記第2側壁が有する第2空間接続予定部とを含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の防火窓。
【請求項7】
前記第1空間接続予定部は、前記第1側壁を貫通する第1側壁貫通孔を有し、
前記第2空間接続予定部は、前記第2側壁を貫通する第2側壁貫通孔を有し、
前記第1空間接続予定部の前記第1側壁貫通孔と、前記第2空間接続予定部の前記第2側壁貫通孔とは、前記窓枠の厚さ方向において互いに重ならない位置に配置される、請求項6に記載の防火窓。
【請求項8】
前記窓枠は、下枠と、上枠と、前記下枠の長手方向の両端部と前記上枠の長手方向の両端部とをそれぞれ接続する一対の縦枠と、を有し、
前記下枠は、前記枠本体部を備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の防火窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火窓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、合わせガラスと、合わせガラスが取り付けられる窓枠とを備える防火窓が知られている。合わせガラスは、二枚の板ガラスと、二枚の板ガラスの間に配置される樹脂層とを有している。このような防火窓の合わせガラスが火炎によって加熱されると、合わせガラスの樹脂層が溶融したり熱分解したりすることで、液状物又は揮発物が生成される。二枚の板ガラスの間に存在する液状物又は揮発物は、板ガラスに不要な外力を与えることで板ガラスを破損させるおそれがある。そこで、特許文献1の防火窓では、液状物又は揮発物を排出する排出孔を窓枠に設けることで、二枚の合わせガラスの間からの液状物又は揮発物の排出を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-029104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような合わせガラスを備える防火窓では、防火窓で区画される一方の空間で火災が発生した場合、合わせガラスの樹脂層から生成した液状物又は揮発物が二枚の板ガラスの間から合わせガラスと窓枠との間に排出される。このような液状物又は揮発物が、上記火災が発生した空間とは反対側となる非加熱側の空間に流入すると、その空間で液状物又は揮発物が燃焼し、防火性能が損なわれる場合がある。すなわち、防火窓の遮炎性能を高めるためには、上記液状物又は揮発物の非加熱側の空間への流入を抑えることが重要である。
【0005】
本発明の目的は、遮炎性能を高めることを可能にした防火窓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する防火窓の各態様について説明する。
態様1の防火窓は、二枚の板ガラスと前記二枚の板ガラスの間に配置される樹脂層とを有する合わせガラスと、前記合わせガラスが取り付けられる窓枠と、を備える防火窓であって、前記窓枠は、枠本体部を備え、前記枠本体部は、前記合わせガラスの厚さ方向に沿って向かい合うように配置される第1側壁及び第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁との間に配置され、前記合わせガラスの外周端面に向かい合うように配置される内周壁と、前記内周壁と前記第1側壁及び前記第2側壁とに囲まれる枠内空間部と、を有し、前記枠本体部の前記内周壁は、内周壁貫通孔を有し、前記枠本体部の前記第1側壁又は前記第2側壁が、火災の熱で加熱されることで、前記枠内空間部と前記火災が発生した空間とを接続する空間接続予定部を有する。
【0007】
この構成によれば、火災の熱によって防火窓の合わせガラスが加熱されると、樹脂層から液状物又は揮発物が生成される。液状物又は揮発物は、第1板ガラスと第2板ガラスとの間から、合わせガラスと窓枠との間の空間に排出される。合わせガラスと窓枠との間の空間に排出された液状物又は揮発物は、枠本体部の内周壁が有する内周壁貫通孔を通じて枠本体部の枠内空間部に排出される。また、火災の熱によって防火窓の空間接続予定部が加熱されることで、枠本体部の枠内空間部と火災が発生した加熱側の空間とを接続することができる。このため、液状物又は揮発物を枠内空間部から加熱側の空間に排出させることができる。これにより、枠内空間部内の液状物又は揮発物の量を削減することができる。すなわち、加熱側の空間に液状物又は揮発物を排出させることにより、非加熱側の空間への液状物又は揮発物の流入を抑えることができる。
【0008】
態様2の防火窓では、態様1において、前記空間接続予定部は、前記第1側壁又は前記第2側壁を貫通する側壁貫通孔と、前記側壁貫通孔を閉塞する閉塞部材と、を有し、前記閉塞部材は、前記側壁貫通孔の内周面又は前記側壁貫通孔の周縁部に嵌合する嵌合部、及び前記側壁貫通孔の内周面又は前記側壁貫通孔の周縁部に接合する接合部の少なくとも一方を有してもよい。例えば、上記のような嵌合部や接合部を枠本体部の中でも優先して溶融させる部分とすることで、火災の熱により閉塞部材を側壁貫通孔から容易に取り除くことができる。
【0009】
態様3の防火窓では、態様2において、前記閉塞部材の少なくとも一部の融点は、700℃以下であってもよい。この構成によれば、枠内空間部と火災が発生した加熱側の空間とを速やかに接続することができる。
【0010】
態様4の防火窓では、態様1において、前記空間接続予定部は、前記第1側壁又は前記第2側壁を貫通する側壁貫通孔と、前記側壁貫通孔と重なるように前記第1側壁又は前記第2側壁に沿って配置される金属プレート部材と、前記金属プレート部材を前記第1側壁又は前記第2側壁に固定する複数の金属固定部と、を備え、前記複数の金属固定部は、前記枠本体部の長手方向において離間して配置されるとともに、前記複数の金属固定部の間に前記側壁貫通孔が配置されてもよい。
【0011】
上記の金属プレート部材は、火災時の熱で熱膨張する。このとき、金属プレート部材は、上記のように複数の金属固定部によって第1側壁又は第2側壁に固定されている。このため、複数の金属固定部の間の金属プレート部材が外方(火災が発生した空間側)に凸となるように変形することで、第1側壁又は第2側壁から離間する。これにより、側壁貫通孔と金属プレート部材との間に隙間を形成することができる。一方、防火窓の通常の使用時において、側壁貫通孔は、側壁貫通孔と重なるように配置される金属プレート部材により隠蔽されている。このため、外部から側壁貫通孔が視認されず、防火窓の意匠性を確保することができる。
【0012】
態様5の防火窓では、態様4において、前記金属プレート部材が配置される前記第1側壁又は前記第2側壁は、前記側壁貫通孔よりも外周側に位置する外周側壁部を有し、前記外周側壁部は、前記金属プレート部材よりも外方に突出してもよい。この構成によれば、外周側壁部と金属プレート部材との間から液状物又は揮発物を火災が発生した空間に排出させることができる。これにより、枠内空間部から火災が発生した空間に液状物又は揮発物を排出する速度を高めることが可能となる。
【0013】
態様6の防火窓では、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、前記空間接続予定部は、前記第1側壁が有する第1空間接続予定部と、前記第2側壁が有する第2空間接続予定部とを含んでもよい。この構成によれば、防火窓で区画される両空間のいずれの空間が加熱側の空間となった場合でも、非加熱側の空間への液状物又は揮発物の流入を抑えることができる。
【0014】
態様7の防火窓では、態様6において、前記第1空間接続予定部は、前記第1側壁を貫通する第1側壁貫通孔を有し、前記第2空間接続予定部は、前記第2側壁を貫通する第2側壁貫通孔を有し、前記第1空間接続予定部の前記第1側壁貫通孔と、前記第2空間接続予定部の前記第2側壁貫通孔とは、前記窓枠の厚さ方向において互いに重ならない位置に配置されてもよい。この構成によれば、例えば、第1空間接続予定部側の空間で火災が発生し、第1空間接続予定部により加熱側の空間と枠内空間部とが接続された場合、第2空間接続予定部の第2側壁貫通孔の周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第2空間接続予定部が非加熱側の空間と接続されることを抑えることができる。また、例えば、第2空間接続予定部側の空間で火災が発生し、第2空間接続予定部により加熱側の空間と枠内空間部とが接続された場合、第1空間接続予定部の第1側壁貫通孔の周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第1空間接続予定部が非加熱側の空間と接続されることを抑えることができる。
【0015】
態様8の防火窓では、態様1から態様7のいずれか一つの態様において、前記窓枠は、下枠と、上枠と、前記下枠の長手方向の両端部と前記上枠の長手方向の両端部とをそれぞれ接続する一対の縦枠と、を有し、前記下枠は、前記枠本体部を備えてもよい。この構成によれば、下枠の枠本体部における枠内空間部内の液状物を加熱側の空間に排出させることができる。これにより、非加熱側の空間への液状物の流入を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防火窓の遮炎性能を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における防火窓の正面図である。
図2図1の2-2線に沿った断面図である。
図3】(a)及び(b)は、窓枠を示す部分断面図である。
図4図1の4-4線に沿った断面図である。
図5】火災が発生した場合の防火窓の作用を説明する部分断面図である。
図6】(a)及び(b)は、防火窓の変更例を示す部分断面図である。
図7】第2実施形態における防火窓の断面図である。
図8】防火窓の断面図である。
図9】火災が発生した場合の防火窓の作用を説明する断面図である。
図10】火災が発生した場合の防火窓の作用を説明する部分断面図である。
図11】第3実施形態における防火窓の断面図である。
図12】火災が発生した場合の防火窓の作用を説明する部分断面図である。
図13】変更例の防火窓の作用を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、防火窓の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の防火窓11は、合わせガラス12と、合わせガラス12が取り付けられる窓枠13とを備えている。
<合わせガラス12>
図2に示すように、防火窓11の合わせガラス12は、第1板ガラス12aと、第2板ガラス12bと、これら二枚の板ガラス12a,12bの間に配置される樹脂層12cとを有している。合わせガラス12は、第1板ガラス12a側となる第1主面S1と、第2板ガラス12b側となる第2主面S2とを有している。
【0020】
第1板ガラス12a及び第2板ガラス12bは、例えば、特定防火設備に要求される防火性能を満たす防火ガラスである。第1板ガラス12a及び第2板ガラス12bとしては、例えば、耐熱性結晶化ガラス、ホウケイ酸ガラス、及びソーダライムガラスが挙げられる。なお、第1板ガラス12a及び第2板ガラス12bの種類や厚さは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0021】
樹脂層12cは、第1板ガラス12aと第2板ガラス12bとの間に挟み込まれるように配置されている。樹脂層12cは、第1板ガラス12aと第2板ガラス12bとに接着されている。樹脂層12cは、第1板ガラス12a及び第2板ガラス12bの少なくとも一方が割れた場合にガラス片の飛散を抑える。樹脂層12cを構成する樹脂としては、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂層12cは、単層構造を有していてもよいし、複数種の樹脂層からなる積層構造を有していてもよい。
【0022】
本実施形態の合わせガラス12は、正面視で四角形状であるが、合わせガラス12の形状は、四辺形状以外の多角形状であってもよいし、楕円形状や円形状であってもよい。
<窓枠13>
図1に示すように、窓枠13は、合わせガラス12の外周形状に沿った全体形状を有している。本実施形態の窓枠13の全体形状は、四角枠状である。詳述すると、窓枠13は、下枠13aと、上枠13bと、下枠13aの長手方向の両端部と上枠13bの長手方向の両端部とをそれぞれ接続する一対の縦枠13cとを有している。下枠13a、上枠13b、及び縦枠13cは、一体成形品であってもよいし、各枠を接合した接合品であってもよい。
【0023】
図2に示すように、窓枠13は、合わせガラス12の外周端面に沿って配置される枠本体部14と、合わせガラス12の第2主面S2に向かい合うように配置される支持部15とを有している。
【0024】
窓枠13の枠本体部14は、合わせガラス12の厚さ方向に沿って向かい合うように配置される第1側壁14a及び第2側壁14bを有している。枠本体部14は、第1側壁14aと第2側壁14bとの間に配置される内周壁14cを有している。内周壁14cは、合わせガラス12の外周端面に向かい合うように配置されている。
【0025】
枠本体部14は、内周壁14cと、第1側壁14a及び第2側壁14bとに囲まれる枠内空間部14dを有している。本実施形態の枠本体部14は、内周壁14cと向かい合うように配置される外周壁14eを有している。
【0026】
枠本体部14の内周壁14cは、内周壁貫通孔16を有している。内周壁貫通孔16は、内周壁14cの周方向において部分的に設けてもよいし、内周壁14cの周方向にわたって延びるように設けてもよい。
【0027】
枠本体部14の第1側壁14aは、火災の熱で加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した空間である第1空間A1とを接続する第1空間接続予定部17を有している。
【0028】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1空間接続予定部17は、第1側壁14aを貫通する第1側壁貫通孔17aと、第1側壁貫通孔17aを閉塞する第1閉塞部材17bとを有している。第1閉塞部材17bは、第1側壁貫通孔17aに挿通される軸部P1と、第1側壁貫通孔17aの周縁部に嵌合する嵌合部P2とを有している。枠本体部14の中でも、第1閉塞部材17bの少なくとも一部を融点の低い材料から構成することで、火災の熱により第1閉塞部材17bを第1側壁貫通孔17aから取り除くことができる。
【0029】
第1閉塞部材17bの少なくとも一部の融点は、700℃以下であることが好ましい。この場合、枠内空間部14dと火災が発生した加熱側の空間である第1空間A1とを速やかに接続することが可能となる。第1閉塞部材17bの少なくとも一部の融点は、400℃以上であることが好ましい。この場合、例えば、第2空間A2における火災の発生時には、第1側壁貫通孔17aの閉塞状態が維持され易い。
【0030】
図2に示すように、枠本体部14の第2側壁14bは、火災の熱で加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した空間である第2空間A2とを接続する第2空間接続予定部18を有している。第2空間接続予定部18は、第2側壁14bを貫通する第2側壁貫通孔18aと、第2側壁貫通孔18aを閉塞する第2閉塞部材18bとを有している。第2閉塞部材18bは、軸部P1及び嵌合部P2を有する第1閉塞部材17bと同様に構成することができる。枠本体部14の中でも、第2閉塞部材18bの少なくとも一部を融点の低い材料から構成することで、火災の熱により第2閉塞部材18bを第2側壁貫通孔18aから取り除くことができる。
【0031】
第2閉塞部材18bの少なくとも一部の融点は、700℃以下であることが好ましい。この場合、枠内空間部14dと火災が発生した加熱側の空間である第2空間A2とを速やかに接続することができる。第2閉塞部材18bの少なくとも一部の融点は、400℃以上であることが好ましい。この場合、例えば、第1空間A1における火災の発生時には、第2側壁貫通孔18aの閉塞状態が維持され易い。
【0032】
第1閉塞部材17bの少なくとも一部及び第2閉塞部材18bの少なくとも一部は、例えば、樹脂材料、亜鉛、アルミニウム等により構成することができる。なお、枠本体部14において、第1閉塞部材17b及び第2閉塞部材18b以外の部分は、例えば、鋼、ステンレス鋼等により構成することができる。
【0033】
図4に示すように、第1空間接続予定部17の第1側壁貫通孔17aと、第2空間接続予定部18の第2側壁貫通孔18aとは、窓枠13の厚さ方向において互いに重ならない位置に配置されている。第1空間接続予定部17の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。第2空間接続予定部18の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0034】
<合わせガラス12の取付構造>
図1及び図2に示すように、防火窓11は、合わせガラス12の第1主面S1に向かい合うように配置される押縁19と、押縁19を窓枠13に取り付ける取付部材20とを備えている。押縁19は、下枠13a、上枠13bと、一対の縦枠13cとに沿って延びるように配置されている。取付部材20としては、本実施形態のように枠本体部14に螺合するねじを用いてもよいし、例えば、枠本体部14に接合されるリベットを用いてもよい。
【0035】
防火窓11は、合わせガラス12の位置決め、緩衝、封止等を目的とした各種部材を必要に応じて備えていてもよい。詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態の防火窓11は、合わせガラス12を支持するセッティングブロック21を備えている。セッティングブロック21は、例えば、合わせガラス12の下端縁を長手方向に沿って部分的に支持するように複数配置することができる。セッティングブロック21は、例えば、ゴム材料から構成することができる。
【0036】
図2に示すように、本実施形態の防火窓11は、窓枠13の支持部15と合わせガラス12との間に配置されるバックアップ材22とシーリング材23とを備えている。また、防火窓11は、押縁19と、合わせガラス12との間に配置されるバックアップ材22とシーリング材23とを備えている。シーリング材23は、合わせガラス12の正面視でバックアップ材22の内側を充填するように配置される。バックアップ材22は、例えば、樹脂発泡体等により構成される。シーリング材23としては、例えば、シリコーン系シーリング材が挙げられる。
【0037】
<防火窓11の使用状態>
図2及び図4に示すように、防火窓11は、第1空間A1と第2空間A2とを区画するように配置される。本実施形態では、第1空間A1で火災が発生した場合を一例として説明するが、第2空間A2で火災が発生した場合も同様の作用が得られる。
【0038】
まず、火災が発生した場合の合わせガラス12の状態について説明する。
図5に示すように、第1空間A1の火炎FLによって防火窓11の合わせガラス12が加熱されると、樹脂層12cから液状物24又は揮発物が生成される。液状物24又は揮発物は、第1板ガラス12aと第2板ガラス12bとの間から、合わせガラス12と窓枠13との間の空間に排出される。合わせガラス12と窓枠13との間の空間に排出された液状物又は揮発物は、枠本体部14の内周壁14cが有する内周壁貫通孔16を通じて枠本体部14の枠内空間部14dに排出される。
【0039】
例えば、液状物24は、第1板ガラス12aと第2板ガラス12bとの間から下枠13aの枠本体部14における枠内空間部14dに向けて流下することで、下枠13aの枠内空間部14dに排出される。
【0040】
枠本体部14の枠内空間部14dにおける液状物24又は揮発物の量が増大すると、液状物24又は揮発物が、合わせガラス12と枠本体部14との間の空間から合わせガラス12の外周縁を回り込むように流動する可能性が高まる。このように流動した液状物24又は揮発物は、第1空間A1と第2空間A2の両空間に排出される可能性が高い。
【0041】
次に、火災が発生した場合の防火窓11の状態について説明する。
第1空間A1の火炎FLによって防火窓11の第1空間接続予定部17が加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した第1空間A1とを接続することができる。詳述すると、図2及び図5に示すように、第1閉塞部材17bが加熱されることにより、第1閉塞部材17bが第1側壁貫通孔17aから取り除かれる。これにより、枠内空間部14dと第1空間A1とを第1側壁貫通孔17aにより接続することができる。このため、液状物24又は揮発物を枠内空間部14dから第1空間A1に排出させることができる。これにより、枠内空間部14d内の液状物24又は揮発物の量を削減することができる。すなわち、第1空間A1に液状物24又は揮発物を排出させることにより、第2空間A2への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。
【0042】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)防火窓11は、合わせガラス12と、合わせガラス12が取り付けられる窓枠13とを備えている。窓枠13の枠本体部14は、合わせガラス12の厚さ方向に沿って向かい合うように配置される第1側壁14a及び第2側壁14bを有している。枠本体部14は、第1側壁14aと第2側壁14bとの間に配置され、合わせガラス12の外周端面に向かい合うように配置される内周壁14cを有している。枠本体部14は、内周壁14cと、第1側壁14a及び第2側壁14bとに囲まれる枠内空間部14dを有している。枠本体部14の内周壁14cは、内周壁貫通孔16を有している。枠本体部14の第1側壁14a及び第2側壁14bのうち、例えば第1側壁14aは、火災の熱で加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した第1空間A1とを接続する第1空間接続予定部17を有している。
【0043】
この構成によれば、上述したように、第1空間A1の火炎FLによって防火窓11の第1空間接続予定部17が加熱されることで、枠内空間部14dと火災が発生した第1空間A1とを接続することができる。このため、液状物24又は揮発物を枠内空間部14dから第1空間A1に排出させることができる。これにより、非加熱側の空間である第2空間A2への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。従って、防火窓11の遮炎性能を高めることが可能となる。
【0044】
(1-2)防火窓11の枠本体部14は、第1側壁14aが有する第1空間接続予定部17と、第2側壁14bが有する第2空間接続予定部18とを備えている。この場合、防火窓11で区画される第1空間A1及び第2空間A2のいずれの空間が加熱側の空間となった場合でも、非加熱側の空間への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。従って、防火窓11で区画された両空間への延焼を抑えることができる。
【0045】
(1-3)防火窓11において、第1空間接続予定部17の第1側壁貫通孔17aと、第2空間接続予定部18の第2側壁貫通孔18aとは、窓枠13の厚さ方向において互いに重ならない位置に配置されている。この構成によれば、第1空間A1で火災が発生し、第1空間接続予定部17によって第1空間A1と枠内空間部14dとが接続された場合、第2空間接続予定部18の第2側壁貫通孔18aの周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第2空間接続予定部18が非加熱側の空間である第2空間A2と接続されることを抑えることができる。また、例えば、第2空間A2で火災が発生し、第2空間接続予定部18により第2空間A2と枠内空間部14dとが接続された場合、第1空間接続予定部17の第1側壁貫通孔17aの周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第1空間接続予定部17が非加熱側の空間である第1空間A1と接続されることを抑えることができる。
【0046】
(1-4)防火窓11において、例えば、第1空間接続予定部17は、第1側壁14aを貫通する第1側壁貫通孔17aと、第1側壁貫通孔17aを閉塞する第1閉塞部材17bとを有している。第1閉塞部材17bは、第1側壁貫通孔17aの周縁部に嵌合する嵌合部P2を有している。この場合、第1閉塞部材17bの嵌合部P2を枠本体部14の中でも優先して溶融させる部分とすることで、火災の熱により第1閉塞部材17bを第1側壁貫通孔17aから容易に取り除くことができる。本実施形態では、第2空間接続予定部18についても、第1空間接続予定部17と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(1-5)防火窓11において、例えば、第1閉塞部材17bの少なくとも一部の融点は、700℃以下であることが好ましい。この場合、枠内空間部14dと火災が発生した加熱側の空間である第1空間A1とを速やかに接続することができる。第2閉塞部材18bの少なくとも一部の融点についても、700℃以下であることにより、枠内空間部14dと火災が発生した加熱側の空間である第2空間A2とを速やかに接続することができる。
【0048】
(1-6)防火窓11において、窓枠13は、下枠13aと、上枠13bと、一対の縦枠13cとを有している。窓枠13の下枠13aは、枠本体部14を備えている。この場合、下枠13aの枠本体部14における枠内空間部14d内の液状物24を加熱側の空間に排出させることができる。これにより、非加熱側の空間への液状物24の流入を抑えることができる。従って、液状物24を要因とした延焼を抑えることで、防火窓11の遮炎性能を高めることが可能となる。
【0049】
<第1実施形態の変更例>
第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・窓枠13の枠本体部14において、第1空間接続予定部17の第1閉塞部材17bの嵌合部P2を省略し、軸部P1を第1側壁貫通孔17aの内周面に嵌合する嵌合部に変更してもよい。なお、第2空間接続予定部18についても、第1空間接続予定部17と同様に変更することができる。
【0051】
・窓枠13の枠本体部14において、第1空間接続予定部17の第1閉塞部材17bを、ねじによる嵌合により第1側壁貫通孔17aに取り付けることもできる。例えば、図6(a)に示すように、第1側壁貫通孔17aの内周面にねじ部を形成するとともに、第1閉塞部材17bの軸部P1をねじ軸P3に変更する。なお、第2空間接続予定部18についても、第1空間接続予定部17と同様に変更することができる。
【0052】
・窓枠13の枠本体部14において、第1空間接続予定部17の第1閉塞部材17bを、接着層、リベット接合、溶接部等の接合部によって、第1側壁貫通孔17aの内周面又は第1側壁貫通孔17a周縁部に取り付けることもできる。
【0053】
例えば、図6(b)に示すように、第1閉塞部材17bを閉塞部P4と、閉塞部P4を第1側壁貫通孔17aの周縁部に接合する接合部P5とを有する第1閉塞部材17bに変更する。この第1閉塞部材17bは、枠本体部14の第1側壁14aの内面に設けてもよいし、図6(b)に二点鎖線で示すように、第1側壁14aの外面に設けてもよい。なお、第2空間接続予定部18についても、第1空間接続予定部17と同様に変更することができる。
【0054】
・防火窓11において、第1空間接続予定部17と第2空間接続予定部18とを窓枠13の厚さ方向において互いに重なる位置に配置することもできる。
・防火窓11において、第1空間接続予定部17及び第2空間接続予定部18の一方を省略することもできる。この場合、防火窓11で区画される両空間のうち、空間接続予定部側の空間で火災が発生した場合、空間接続予定部側の空間とは反対側の空間への延焼を抑えることができる。
【0055】
(第2実施形態)
防火窓の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図7及び図8に示すように、第2実施形態では、第1実施形態の第1空間接続予定部17及び第2空間接続予定部18を以下のように変更している。
【0056】
第2実施形態の防火窓11における第1空間接続予定部27は、第1側壁14aを貫通する第1側壁貫通孔27aと、第1側壁貫通孔27aと重なるように第1側壁14aに沿って配置される第1金属プレート部材27bとを備えている。また、第1空間接続予定部27は、第1金属プレート部材27bを第1側壁14aに固定する一対の第1金属固定部27cを備えている。
【0057】
一対の第1金属固定部27cは、枠本体部14の長手方向において離間して配置されている。第1側壁貫通孔27aは、一対の第1金属固定部27cの間に配置されている。
第2実施形態の防火窓11における第2空間接続予定部28は、第2側壁14bを貫通する第2側壁貫通孔28aと、第2側壁貫通孔28aと重なるように第2側壁14bに沿って配置される第2金属プレート部材28bとを備えている。また、第2空間接続予定部28は、第2金属プレート部材28bを第2側壁14bに固定する一対の第2金属固定部28cを備えている。
【0058】
一対の第2金属固定部28cは、枠本体部14の長手方向において離間して配置されている。第2側壁貫通孔28aは、一対の第2金属固定部28cの間に配置されている。
第1金属プレート部材27b及び第2金属プレート部材28bの金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等が挙げられる。第1金属プレート部材27b及び第2金属プレート部材28bの厚さは、0.2mm以上、5mm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.5mm以上、2mmの範囲内である。
【0059】
本実施形態の第1金属固定部27c及び第2金属固定部28cは、ねじである。第1金属固定部27c及び第2金属固定部28cの金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。
【0060】
次に、第2実施形態の防火窓11の使用状態について説明する。
防火窓11の通常の使用時において、第1側壁貫通孔27aは、第1側壁貫通孔27aと重なるように配置される第1金属プレート部材27bにより隠蔽されている。このため、外部から第1側壁貫通孔27aが視認されず、防火窓11の意匠性を確保することができる。防火窓11の通常の使用時において、第2側壁貫通孔28aについても、外部から視認されず、防火窓11の意匠性を確保することができる。
【0061】
図9及び図10に示すように、第1空間A1で火災が発生した場合、第1空間接続予定部27の第1金属プレート部材27bが熱膨張する。このとき、第1金属プレート部材27bは、上記のように複数の第1金属固定部27cによって第1側壁14aに固定されている。このため、複数の第1金属固定部27cの間の第1金属プレート部材27bが外方(第1空間A1側)に凸となるように変形することで、図10に示すように、第1金属プレート部材27bが第1側壁14aから離間する。これにより、第1側壁貫通孔27aと第1金属プレート部材27bとの間に隙間を形成することができる。従って、枠内空間部14dと第1空間A1とを第1側壁貫通孔27aにより接続することができる。このため、上記第1実施形態と同様に第2空間A2への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。第2空間A2で火災が発生した場合も、第2空間接続予定部28によって同様の作用が得られる。
【0062】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)第2実施形態においても、第1実施形態の(1-1),(1-2)欄、及び(1-6)欄に記載の作用及び効果を得ることができる。
【0063】
(2-2)防火窓11において、例えば、第1空間接続予定部27は、第1側壁14aを貫通する第1側壁貫通孔27aと、第1側壁貫通孔27aと重なるように第1側壁14aに沿って配置される第1金属プレート部材27bとを備えている。また、第1空間接続予定部27は、第1金属プレート部材27bを第1側壁14aに固定する一対の第1金属固定部27cを備えている。この場合、上述したように、火災時には、例えば、第1側壁貫通孔27aと第1金属プレート部材27bとの間に隙間を形成することができる。これにより、非加熱側の空間である第2空間A2への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。また、防火窓11の通常の使用時において、例えば、第1側壁貫通孔27aは、第1側壁貫通孔27aと重なるように配置される第1金属プレート部材27bにより隠蔽されている。このため、外部から第1側壁貫通孔27aが視認されず、防火窓11の意匠性を確保することができる。
【0064】
(2-3)防火窓11において、第1空間接続予定部27の第1側壁貫通孔27aと、第2空間接続予定部28の第2側壁貫通孔28aとは、窓枠13の厚さ方向において互いに重ならない位置に配置されている。この構成によれば、第1空間A1で火災が発生し、第1空間接続予定部27の第1側壁貫通孔27aによって第1空間A1と枠内空間部14dとが接続された場合、第2空間接続予定部28の第2側壁貫通孔28aの周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第2空間接続予定部28の第2側壁貫通孔28aが非加熱側の空間である第2空間A2と接続されることを抑えることができる。また、例えば、第2空間A2で火災が発生し、第2空間接続予定部28の第2側壁貫通孔28aにより第2空間A2と枠内空間部14dとが接続された場合、第1空間接続予定部27の第1側壁貫通孔27aの周囲に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、第1空間接続予定部27の第1側壁貫通孔27aが非加熱側の空間である第1空間A1と接続されることを抑えることができる。
【0065】
(第3実施形態)
防火窓の第3実施形態について第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図11に示すように、第3実施形態の防火窓11では、第1金属プレート部材27bが配置される第1側壁14aは、第1側壁貫通孔27aよりも外周側に位置する第1外周側壁部W1を有している。第1側壁14aの第1外周側壁部W1は、第1金属プレート部材27bよりも外方に突出している。本実施形態の第1外周側壁部W1は、第1金属プレート部材27bの下端よりも下方に突出している。第1外周側壁部W1の突出長さL1は、2mm以上であることが好ましく、より好ましくは、4mm以上であり、さらに好ましくは、5mm以上である。突出長さL1の上限は、特に限定されないが、例えば、300mm以下である。
【0066】
また、第3実施形態の防火窓11では、第2金属プレート部材28bが配置される第2側壁14bは、第1側壁貫通孔27aよりも外周側に位置する第2外周側壁部W2を有している。第2側壁14bの第2外周側壁部W2は、第2金属プレート部材28bよりも外方に突出している。本実施形態の第2外周側壁部W2は、第2金属プレート部材28bの下端よりも下方に突出している。第2外周側壁部W2の突出長さL2は、2mm以上であることが好ましく、より好ましくは、4mm以上であり、さらに好ましくは、5mm以上である。突出長さL2の上限は、特に限定されないが、例えば、300mm以下である。
【0067】
枠本体部14は、内周壁14cと向かい合うように配置される外周壁14eを有している。枠本体部14の外周壁14eにおいて、内周壁14cと向かい合う内面B1は、第1外周側壁部W1の第1外周端面E1よりも、第1側壁貫通孔27aに近い位置に配置されている。枠本体部14の外周壁14eにおいて、内周壁14cと向かい合う内面B1は、第2外周側壁部W2の第2外周端面E2よりも、第2側壁貫通孔28aに近い位置に配置されている。
【0068】
次に、第3実施形態の防火窓11の使用状態について説明する。
図11及び図12に示すように、防火窓11は、窓枠取付部26に取り付けられる。図12に示すように、第1空間A1で火災が発生した場合、上記第2実施形態と同様に、第1側壁貫通孔27aと第1金属プレート部材27bとの間に隙間を形成することができる。これにより、非加熱側の空間である第2空間A2への液状物24又は揮発物の流入を抑えることができる。なお、第2空間A2で火災が発生した場合は、第2側壁貫通孔28aと第2金属プレート部材28bとの間に隙間を形成することができる。
【0069】
第3実施形態の防火窓11は、第1金属プレート部材27bよりも外方に突出する第1外周側壁部W1を備えている。このため、第1外周側壁部W1と第1金属プレート部材27bとの間から液状物24又は揮発物を第1空間A1に排出させることができる。これにより、枠内空間部14dから第1空間A1に液状物24又は揮発物を排出する速度を高めることが可能となる。第2空間A2で火災が発生した場合も、第2金属プレート部材28bよりも外方に突出する第2外周側壁部W2によって同様の作用が得られる。
【0070】
次に、第3実施形態の作用及び効果について説明する。
(3-1)第3実施形態においても、第2実施形態の(2-1)~(2-3)欄に記載の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
(3-2)防火窓11は、第1金属プレート部材27bよりも外方に突出する第1外周側壁部W1を備えている。この場合、第1空間A1で火災が発生した場合、枠内空間部14dから第1空間A1に液状物24又は揮発物を排出する速度を高めることが可能となる。従って、防火窓11の遮炎性能をより高めることが可能となる。
【0072】
(3-3)枠本体部14の外周壁14eの内面B1は、例えば、第1外周側壁部W1の第1外周端面E1よりも、第1側壁貫通孔27aに近い位置に配置されている。この場合、枠内空間部14dの内部が外周壁14eにより底上げされることで、第1側壁貫通孔27a又は第2側壁貫通孔28aからの液状物24の排出を促進することができる。
【0073】
<第2及び第3実施形態の変更例>
第2及び第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第2及び第3実施形態、並びに以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・第1空間接続予定部27において、一つの第1金属プレート部材27bを一対の第1金属固定部27cにより固定しているが、3つ以上の第1金属固定部27cにより固定することもできる。第2空間接続予定部28においても、一つの第2金属プレート部材28bを3つ以上の第2金属固定部28cにより固定することもできる。
【0075】
・第1金属固定部27c及び第2金属固定部28cは、ねじ、リベット等の締結部材で固定する構造に限定されず、例えば、溶接により構成することもできる。
・第1空間接続予定部27において、複数の第1金属固定部27cの間に配置される第1側壁貫通孔27aの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。第2空間接続予定部28についても、複数の第2金属固定部28cの間に配置される第2側壁貫通孔28aの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0076】
・防火窓11において、第1空間接続予定部27の第1側壁貫通孔27aと、第2空間接続予定部28の第2側壁貫通孔28aとを窓枠13の厚さ方向において互いに重なる位置に配置することもできる。
【0077】
・防火窓11において、第1空間接続予定部27及び第2空間接続予定部28の一方を省略することもできる。この場合、防火窓11で区画される両空間のうち、空間接続予定部側の空間で火災が発生した場合、空間接続予定部側の空間とは反対側の空間への延焼を抑えることができる。
【0078】
・枠本体部14における外周壁14eの内面B1は、第1側壁貫通孔27aよりも、第1外周側壁部W1の第1外周端面E1に近い位置に配置されていてもよい。枠本体部14における外周壁14eの内面B1は、第2側壁貫通孔28aよりも、第2外周側壁部W2の第2外周端面E2に近い位置に配置されていてもよい。
【0079】
<第1~第3実施形態に共通する変更例>
第1~第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1~第3実施形態、及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0080】
・窓枠13における枠本体部14の外周壁14eを省略することもできる。また、例えば、図13に示すように、枠本体部14の外周壁14eは、外周壁貫通孔25を有していてもよい。このような窓枠13を窓枠取付部26に取り付けることで、外周壁14eの外周壁貫通孔25が閉塞される場合がある。この場合、枠本体部14の枠内空間部14d内の液状物24又は揮発物の量が増大すると、第1空間A1と第2空間A2の両空間に排出される可能性が高まる。従って、枠内空間部14d内の液状物24又は揮発物を、例えば、第1側壁貫通孔17aから加熱側の空間である第1空間A1に排出させることで、延焼を抑えることが有効である。
【0081】
・防火窓11の上記枠本体部14は、下枠13a、上枠13b、及び縦枠13cの少なくとも一つの枠に対して適用することができる。また、防火窓11の上記枠本体部14は、一対の縦枠13cのうち、少なくとも一方の縦枠13cに対して適用することができる。上記枠本体部14を上枠13b又は縦枠13cに適用した場合、加熱側の空間に揮発物を排出することにより、非加熱側の空間への揮発物の流入を抑えることができる。
【0082】
・防火窓11の上記窓枠13は、支持部15を有しているが、この支持部15を省略し、次のように変更してもよい。すなわち、防火窓11を上記実施形態の押縁19である第1の押縁と、合わせガラス12の第2主面S2側に向かい合うように配置される第2の押縁とを備える防火窓に変更することができる。
【0083】
・上記合わせガラス12は、第1板ガラス12a、第2板ガラス12b、及び樹脂層12cの三層構造を有しているが、三枚以上の板ガラスと、二層以上の樹脂層とからなる五層以上の構造を有していてもよい。例えば、第1板ガラス、第1樹脂層、第2板ガラス、第2樹脂層、及び第3板ガラスの順に積層された五層構造を有する合わせガラスであってもよい。
【0084】
・防火窓11は、合わせガラス12の第1主面S1及び第2主面S2が鉛直方向に対して傾斜した傾斜面となる状態で使用することもできる。この場合であっても、窓枠13の下枠13aが上記枠本体部14を備えることで、上記(1-6)欄で述べた効果を得ることができる。
【0085】
・防火窓11は、合わせガラス12の第1主面S1及び第2主面S2が鉛直方向に直交する水平面となる状態で使用することもできる。
【符号の説明】
【0086】
11…防火窓
12…合わせガラス
12a…第1板ガラス
12b…第2板ガラス
12c…樹脂層
13…窓枠
13a…下枠
13b…上枠
13c…縦枠
14…枠本体部
14a…第1側壁
14b…第2側壁
14c…内周壁
14d…枠内空間部
16…内周壁貫通孔
17,27…第1空間接続予定部
17a,27a…第1側壁貫通孔
17b…第1閉塞部材
18,28…第2空間接続予定部
18a,28a…第2側壁貫通孔
18b…第2閉塞部材
27b…第1金属プレート部材
27c…第1金属固定部
28b…第2金属プレート部材
28c…第2金属固定部
A1…第1空間
A2…第2空間
P2…嵌合部
P5…接合部
W1…第1外周側壁部
W2…第2外周側壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13