IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミクロンメタル株式会社の特許一覧

特開2023-24841積層ガラス剥離装置、および、それを利用した積層ガラスのリサイクル処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024841
(43)【公開日】2023-02-17
(54)【発明の名称】積層ガラス剥離装置、および、それを利用した積層ガラスのリサイクル処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20230210BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230210BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B09B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130394
(22)【出願日】2021-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】312012184
【氏名又は名称】ミクロンメタル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寒 河 江 満
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA18
4D004AA23
4D004AC04
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA09
4D004CB04
4D004CB13
4D004CB45
4D004CC02
4D004CC11
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】太陽電池モジュールから、カバーガラスのみをより経済的且つ効率的に分離、除去可能とする上、破砕、分離、回収されたガラスや樹脂、金属などの混在物中から、カレット状のガラスをより効率的に選別、分離できる新たな積層ガラス剥離技術を提供する。
【解決手段】積層ガラスを収容するブラスト室2が設けられ、ブラスト室2の外に投射材の加圧タンク、および、投射ノズルがブラスト室2内に配されたブラスト機構が設けられ、ブラスト室2の底部20に、ガラス・投射材混在物を回収する底部回収機構6を有し、最上層に異物選別室、中上層に大ガラス粒選別室、中下層に投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室SRが配された振動篩70を備えた選別機構7が設けられ、当該投射材選別室と加圧タンクとを繋ぐ投射材循環回路が設けられてなる、積層ガラス剥離装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層とガラス層とが積層状に貼り合わせられた積層ガラスを、ブラスト処理可能に収容するブラスト室が設けられ、該ブラスト室の外にあって投射材を収容する加圧タンク、および、投射ノズルが該ブラスト室内に引き込まれ、同投射ノズルの基端がわより、圧縮空気供給源からの圧縮空気に伴い、該加圧タンクから供給される投射材を投射するブラストホースを有するブラスト機構が設けられ、該ブラスト室の底部に、ブラスト処理に伴い落下した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を自動的に回収する底部回収機構を有し、該底部回収機構が回収したガラス・投射材混在物を受け、上方から下方に向け各スクリーンの目が次第に細かくなる如く、最上層に異物スクリーンを有する異物選別室、中上層に大ガラス粒スクリーンを有する大ガラス粒選別室、中下層に投射材スクリーンを有する投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室が積層状に配され、それら各選別室の夫々に遠心方向に延伸された送出路を有した振動篩を備えた選別機構が設けられ、当該投射材選別室と加圧タンクとを繋ぐ投射材循環回路が設けられてなることを特徴とする積層ガラス剥離装置。
【請求項2】
樹脂層とガラス層とが積層状に貼り合わせられた積層ガラスを、ブラスト処理可能に収容するブラスト室が設けられ、該ブラスト室の外にあって投射材を収容する加圧タンク、および、投射ノズルが該ブラスト室内に引き込まれ、同投射ノズルの基端がわより、圧縮空気供給源からの圧縮空気に伴い、該加圧タンクから供給される投射材を投射するブラストホースを有するブラスト機構が設けられ、該ブラスト室の底部に、ブラスト処理に伴い落下した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を自動的に回収する底部回収機構を有し、該底部回収機構が回収したガラス・投射材混在物を受け、上方から下方に向け各スクリーンの目が次第に細かくなる如く、最上層に異物スクリーンを有する異物選別室、中上層に大ガラス粒スクリーンを有する大ガラス粒選別室、中下層に投射材スクリーンを有する投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室が積層状に配され、それら各選別室の夫々に遠心方向に延伸された送出路を有した振動篩を備えた選別機構が設けられ、当該投射材選別室と加圧タンクとを繋ぎ、該選別機構の振動篩の投射材選別室に残された投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒を含む混合投射材を、当該ブラスト機構の加圧タンクに循環供給する投射材循環回路が設けられ、該投射材循環回路を通して当該ブラスト機構の加圧タンクに供給された混合投射材が、同ブラスト機構のブラストホースを通じて当該積層ガラスに投射されるものとなり、また、当該選別機構の振動篩の異物選別室、大ガラス粒選別室、および、小ガラス粒・投射材破砕粒選別室の夫々に残された素材が、夫々の粒度のガラス素材と投射材素材と、樹脂などの異物とに分別され、夫々に再生利用可能となるものとされたことを特徴とする積層ガラス剥離装置。
【請求項3】
底部回収機構が、ブラスト室の底部に水平状に縦貫し、同ブラスト室の背壁がわへ送出するスクリューコンベア、および、該ブラスト室の内周壁から該スクリューコンベアに向け傾斜された漏斗状の収集壁を有し、該ブラスト室の背壁の外がわには、該底部回収機構が収集したガラス・投射材混在物を下端に受け、上端まで上昇するバケットエレベーター、および、該バケットエレベーターがその上端まで搬送したガラス・投射材混在物を選別機構に供給するセパネーターを有する縦搬送機構が設けられた、前記請求項1または2何れか一方記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項4】
ブラスト室が、その左右壁の少なくとも何れか一方に、積層ガラスを収容可能とする開閉扉が設けられ、同ブラスト室の前壁に、両手用のグローブを有した左右一対の作業孔、および、それら作業孔の上方に覗き窓が設けられ、各作業孔の上方となる該ブラスト室の天壁から同ブラスト室内にブラストホースの投射ノズルが垂下され、該ブラスト室内の各作業孔の下方であって同ブラスト室内の底部回収機構よりも上方となる同ブラスト室内には、積層ガラスを水平姿勢に載置可能とされ、該ブラスト室の背壁がわから同前壁がわに向けて送り可能なベルトコンベア、および該ベルトコンベアを駆動する駆動部を有するワーク保持機構が設けられ、該ブラスト室の前壁の左右一対の作業孔の外がわ下方に、ブラスト機構の投射・停止操作用ペダル、および、当該ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作用ペダルを有したペダルスイッチが設けられてなる、前記請求項1ないし3何れか一記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項5】
ブラスト室が、その左右壁の少なくとも何れか一方に、積層ガラスを収容可能とする開閉扉が設けられ、該ブラスト室内に、自動作業機が設置され、該自動作業機には該ブラスト室外から同ブラスト室内に引き込まれたブラストホースの投射ノズルが設けられ、該ブラスト室内の自動作業機よりも下方であって同ブラスト室内の底部回収機構よりも上方となる同ブラスト室内には、積層ガラスを水平姿勢に載置可能とされ、該ブラスト室の背壁がわから同前壁がわに向けて送り可能なベルトコンベア、および該ベルトコンベアを駆動する駆動部を有するワーク保持機構が設けられ、当該自動作業機の制御、ブラスト機構の投射・停止操作、および、当該ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作を自動制御する統合制御装置が設けられた、前記請求項1ないし4何れか一記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項6】
ブラスト室内・外の少なくとも何れか一方に、統合制御装置に接続されたカメラが設けられ、ワーク保持機構上の積層ガラスのガラス層の剥離状態を撮影し、該統合制御装置が、該カメラからの画像情報に基づき、投射ノズルへの圧縮空気および投射材の投射・停止操作、自動作業機の動作、および、ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作を自動的にフィードバック制御するものとされた、前記請求項5記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項7】
投射材が、直径0.8ないし1.2mmとされ、選別機構が、その振動篩の異物選別室の異物選別スクリーンを5メッシュ、同振動篩の大ガラス粒選別室の大ガラス粒選別スクリーンを12メッシュ、同振動篩の投射材選別室の投射材選別スクリーンを20メッシュとされた、前記請求項1ないし6何れか一記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項8】
投射材が磁性素材製のものとされ、選別機構の振動篩の最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室より延伸された送出路の送出端に、小ガラス粒と投射材破砕粒とに分離するマグネットセパレーターを有する小ガラス粒選別機構が設けられた、前記請求項1ないし7何れか一記載の積層ガラス剥離装置。
【請求項9】
ブラスト室内に設置した積層ガラスに対し、ブラスト機構から圧縮空気を伴った投射材を投射し、ガラスのみを粉砕しながら剥がし、回収したガラス粒を、最上層に異物選別室、中上層に大ガラス粒選別室、中下層に投射材選別室、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室を有する選別機構としての振動篩の、最上層の異物選別室より投入し、該最上層の異物選別室、中上層の大ガラス粒選別室、および、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室の夫々に留まった樹脂粒、金属粒および破砕ガラス粒を含む回収物は、夫々の用途にリサイクルし、該中下層の投射材選別室に留まった投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材を、当該ブラスト機構に循環供給し、投射材として利用するようにした、請求項1ないし請求項7何れか一記載の積層ガラス剥離装置を利用した積層ガラスのリサイクル処理方法。
【請求項10】
ブラスト室内に設置した積層ガラスに対し、ブラスト機構から圧縮空気を伴った投射材を投射し、ガラスのみを粉砕しながら剥がし、回収したガラス粒を、最上層に異物選別室、中上層に大ガラス粒選別室、中下層に投射材選別室、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室を有する選別機構としての振動篩の、最上層の異物選別室より投入し、該最上層の異物選別室、および、中上層の大ガラス粒選別室の夫々に留まった樹脂粒、金属粒および破砕ガラス粒を含む回収物は、夫々の用途にリサイクルし、該中下層の投射材選別室に留まった投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材を、当該ブラスト機構に循環供給し、投射材として利用するようにし、該最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室に留まった小ガラス粒と投射材破砕粒との混合物を、小ガラス粒選別機構のマグネットセパレーターに投入し、小ガラス粒と投射材破砕粒とに分離し、夫々の用途にリサイクルするようにした、請求項8記載の積層ガラス剥離装置を利用した積層ガラスのリサイクル処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池パネル、防犯ガラス、自動車用合わせガラスなどの積層ガラスから板ガラス部分のみをより簡単に分離、除去し、その後のリサイクルの効率を格段に高めるリサイクル処理技術に関連するものであり、特に、投射材を利用したブラスト処理をより経済的に実施可能とする積層ガラス剥離装置を製造、提供する分野を初め、その分野には属していないが、そこでの技術的思想の創作内容を取り入れたと同定されるような類いのものを製造、提供する分野についてまでをも含むのは勿論のこと、それらの分野に係って行う輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
太陽光発電技術の発展に伴い様々な場所に設置され、長年に亘って使用されてきた太陽電池モジュールは、次第にその耐用年数を終えて撤去されることとなり、撤去された太陽電池モジュールは、再生処理工場に輸送され、端子箱および金属フレームが取り外された後、樹脂製のバックシートとカバーガラス(板ガラス)との間に太陽電池セル、配線材および封止材層が挟み込まれ積層状に強固に一体化された太陽電池パネルから、該カバーガラスを分離することとなるが、比較的柔軟な太陽電池セル、配線材、封止材層およびバックシートから硬質なカバーガラスを効率的に分離するのが技術的に難しく、迅速に分離、回収してリサイクル処理するようにした手段が進まないままになっていた。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、回収した自動車用廃ガラスの品種を判定する品種判定工程と、前記判定された自動車用廃ガラス上の付着物を除去する付着物除去工程と、前記付着物が除去された自動車用廃ガラスを前記判定された品種に基づいて分別する分別工程と、前記分別された自動車用廃ガラスをカレット状に破砕する破砕工程とを有し、回収した板状の自動車用廃ガラスの品種を判定し、判定された自動車用廃ガラス上の付着物を除去し、付着物が除去された自動車用廃ガラスを判定された品種に基づいて分別し、分別された自動車用廃ガラスをカレット状に破砕するので、薬液処理を行うことなく、自動車用廃ガラスをカレットとして回収する際に不純物が付着したカレットの混入を防ぎ、自動車用廃ガラスの再利用率を向上させることができる自動車用廃ガラスのリサイクル処理方法が知られている。
【0004】
また、同特許文献1(2)に見られるような、半導体素子製造用に供された使用済シリコン単結晶基板を太陽電池用シリコン単結晶基板として再利用するための再生方法であって、使用済シリコン単結晶基板の上に形成された皮膜に物理的衝撃を加えて皮膜を微細に破壊する破壊ステップと、該破壊ステップにて破壊された皮膜を除去する除去ステップと、該除去ステップ後の基板表面皮膜を所定の化学薬品に晒して皮膜査を溶解除去し、併せてシリコン単結晶基板表面近傍の加工歪み層を除去し、各種皮膜形成前のシリコン単結晶基板面とする化学処理ステップとを有し、本来廃却されるべき、単結晶シリコン基板を用いて太陽電池を製造するのであるから、太陽電池のコストダウン、地球環境保全に大きく寄与することとなり、再利用の対象となる単結晶シリコン基板の範囲が拡大され、再生処理そのものも単純、容易となるので、一層コストダウン、リサイクルによる地球環境保全が達成されることとなる使用済シリコン単結晶基板の再製方法などが開発済みとされている。
【0005】
さらに、下記の特許文献1(3)に提案されているように、ガラス基板とバックシートとの間に太陽電池セルおよびこれらの配線材を含む電気部材を、封止材を用いて介装してなる太陽電池モジュールの当該電気部材を回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置であって、上記太陽電池モジュールから予めガラス基板の略全部が除去され、バックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材から当該電気部材を可能な限り回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置において、上記シート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給する供給部と、該供給部から供給されたシート状部材をその電気部材を下にして支承し回転させられて下流に向けて搬送するとともに該シート状部材のバックシートから電気部材を掻き落すブラシローラと、該ブラシローラに対して上記シート状部材を相対的に押圧する押圧手段とを備え、電気部材回収装置において、供給部がシート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給すると、シート状部材は、ブラシローラに支承されるとともに押圧手段によりブラシローラに押圧されながらブラシローラによって搬送され、この搬送過程で、押さえプレートの摺動抵抗があるので、シート状部材は徐々に搬送されながら、ブラシローラにより繰り返し擦られるから、シート状部材から電気部材が封止材を含んで細粉片として掻き落とされるため、薬液を用いなくてもシート状部材から電気部材を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図り、回収効率を向上し、掻き落さとされた細粉片は集約され、これから銀などの高価な有用金属を抽出することができるものとされた、太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステムが既に開発されている。
【0006】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような自動車用廃ガラスのリサイクル処理方法は、研磨材に鉄粒を使用するサンドブラスト装置を用いて自動車用廃ガラス上の付着物(マスキング、銀プリント等)を除去した後、ガラスの色と明暗の程度に基づき、品種毎に判定、分別した上、分別されたガラス毎にカレット状に破砕するものとされており、積層ガラスLから分離されたときに、既にカレット状に破砕され、そのままガラスの原材料として利用できるものとはならず、リサイクル処理の工数が嵩むものであったし、 また、特許文献1(2)の使用済シリコン単結晶基板の再製方法は、最初にサンドブラスト等の物理的衝撃で被膜層を破砕し、破砕した被膜を除去後弗酸と硝酸の混合液に晒して被膜の残滓と単結晶シリコン表面の加工歪層とを除去しようとするものであり、該サンドブラスト等の物理的衝撃で被膜層を破砕する工程では、単結晶シリコン基板の上部表面に皮膜の残滓および応力歪が残された状態とするよう、同単結晶シリコン基板の上部からSiO製絶縁用皮膜およびその中に配されたゲート電極を除去するようにしたものとなっており、太陽電池モジュールの太陽電池パネルから、太陽電池セル、配線材およびバックシートを残すよう、カバーガラスのみを分離するものとはなっておらず、この技術をそのまま太陽電池モジュールからカバーガラスを分離、粉砕するリサイクル処理に利用することができないものであった。
【0007】
そして、特許文献1(3)に示した、太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステムは、そのガラス基板破砕分離装置が、太陽電池パネルの搬送方向に沿って、外周面に先端が尖った破砕歯を行列状に設けられた一対の破砕ローラを有し、さらに、同搬送方向の後方に押さえローラと掻落しローラとが対をなした複数組が連なるよう配され、それらのローラ間を通過された太陽電池パネルは、そのカバーガラスが破砕され、バックシートから分離したガラスのガラス片を含む破砕物、および、該カバーガラスの略全部が除去され、バックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材に分離されるが、各破砕ローラ、押さえローラおよび掻落しローラは、回転動作中に硬質なガラスに接触するから、摩耗し易く、それらのローラ類のメンテナンスに経費が嵩んでしまうことが懸念されるものであった。
【特許文献1】(1)特開2005-75052号公報 (2)特開2005-123541号公報 (3)特開2020-131165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案されているブラスト処理によってガラス上の付着物を除去したり、単結晶シリコン基板の表面の被膜層や電極などを破砕、除去したりする技術などは、投射材の選択や、分離、除去後のリサイクル処理などにおいて、太陽電池パネルのカバーガラスを除去する技術にそのまま利用するには不十分なものであり、また、カバーガラスを、破砕ローラを用いて破砕、分離する技術などは、硬質なガラスを特殊形状の破砕ローラで破砕するため、破砕ローラを含む各部のガラスに強く接触する部品類の早期の摩耗が懸念されると共に、それら摩耗部品類の発生により、ランニングコストが高騰してしまう虞があるなど、既存の積層ガラス類のリサイクル処理技術を鑑み、より経済的且つ効率的に板状ガラス層を除去できる新技術の開発の必要性を痛感するに至ったものである。
【0009】
(発明の目的)
そこで、この発明は、太陽電池モジュールの太陽電池パネルから、カバーガラスだけをより経済的且つ効率的に分離、除去可能とする上、破砕、回収されたガラスや樹脂、金属などの混在物中から、カレット状のガラスをより効率的に選別することができる新たな積層ガラス剥離技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に亘って試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の積層ガラス剥離装置および、それを利用した積層ガラスの新規なリサイクル処理方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の積層ガラス剥離装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、樹脂層とガラス層とが積層状に貼り合わせられた積層ガラスを、ブラスト処理可能に収容するブラスト室が設けられ、該ブラスト室の外にあって投射材を収容する加圧タンクおよび投射ノズルが該ブラスト室内に引き込まれ、同投射ノズルの基端がわより、圧縮空気供給源からの圧縮空気に伴い、該加圧タンクから供給される投射材を投射するブラストホースを有するブラスト機構が設けられ、該ブラスト室の底部に、ブラスト処理に伴い落下した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を自動的に回収する底部回収機構を有し、該底部回収機構が回収したガラス・投射材混在物を受け、上方から下方に向け各スクリーンの目が次第に細かくなる如く、最上層に異物スクリーンを有する異物選別室、中上層に大ガラス粒スクリーンを有する大ガラス粒選別室、中下層に投射材スクリーンを有する投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室が積層状に配され、それら各選別室の夫々に遠心方向に延伸された送出路を有した振動篩を備えた選別機構が設けられ、当該投射材選別室と加圧タンクとを繋ぐ投射材循環回路が設けられてなる構成を要旨とする積層ガラス剥離装置である。
【0011】
この基本的な構成からなる積層ガラス剥離装置は、その表現を変えて示すならば、樹脂層とガラス層とが積層状に貼り合わせられた積層ガラスを、ブラスト処理可能に収容するブラスト室が設けられ、該ブラスト室の外にあって投射材を収容する加圧タンクおよび投射ノズルが該ブラスト室内に引き込まれ、同投射ノズルの基端がわより、圧縮空気供給源からの圧縮空気に伴い、該加圧タンクから供給される投射材を投射するブラストホースを有するブラスト機構が設けられ、該ブラスト室の底部に、ブラスト処理に伴い落下した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を自動的に回収する底部回収機構を有し、該底部回収機構が回収したガラス・投射材混在物を受け、上方から下方に向け各スクリーンの目が次第に細かくなる如く、最上層に異物スクリーンを有する異物選別室、中上層に大ガラス粒スクリーンを有する大ガラス粒選別室、中下層に投射材スクリーンを有する投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室が積層状に配され、それら各選別室の夫々に遠心方向に延伸された送出路を有した振動篩を備えた選別機構が設けられ、当該投射材選別室と加圧タンクとを繋ぎ、該選別機構の振動篩の投射材選別室に残された投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒を含む混合投射材を、当該ブラスト機構の加圧タンクに循環供給する投射材循環回路が設けられ、該投射材循環回路を通して当該ブラスト機構の加圧タンクに供給された混合投射材が、同ブラスト機構のブラストホースを通じて当該積層ガラスに投射されるものとなり、また、当該選別機構の振動篩の異物選別室、大ガラス粒選別室、および、小ガラス粒・投射材破砕粒選別室の夫々に残された素材が、夫々の粒度のガラス素材と投射材素材と、樹脂などの異物とに分別され、夫々に再生利用可能となるものとされた構成からなる積層ガラス剥離装置となる。
【0012】
(関連する発明1)
上記した積層ガラス剥離装置に関連し、この発明には、それを利用した積層ガラスのリサイクル処理方法も包含している。
即ち、ブラスト室内に設置した積層ガラスに対し、ブラスト機構から圧縮空気を伴った投射材を投射し、ガラスのみを粉砕しながら剥がし、回収したガラス粒を、最上層に異物選別室、中上層に大ガラス粒選別室、中下層に投射材選別室、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室を有する選別機構としての振動篩の、最上層の異物選別室より投入し、該最上層の異物選別室、中上層の大ガラス粒選別室、および、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室の夫々に留まった樹脂粒、金属粒および破砕ガラス粒を含む回収物は、夫々の用途にリサイクルし、該中下層の投射材選別室に留まった投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材を、当該ブラスト機構に循環供給し、投射材として利用するようにした、この発明の基本をなす前記何れか一記載の積層ガラス剥離装置を利用した積層ガラスのリサイクル処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、この発明の積層ガラス剥離装置によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成により、積層ガラスから板状のガラス層のみをより経済的且つ効率的に分離、除去可能とする上、破砕、分離、回収されたガラスや樹脂、金属などの混在物中から、カレット状のガラスをより効率的に選別、分離することができる新たな積層ガラス剥離技術を提供することができ、選別機構の振動篩の上下4層の選別室の中、最上層の異物選別室、中上層の大ガラス粒選別室、および、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室に留まるガラスや樹脂、金属などの混在物は、夫々の粒度毎に自動的に分別されるから、その後のリサイクル処理の効率を格段に高めることができ、さらに、選別機構の振動篩の上下4層の選別室の中、上から3番目の投射材選別室に留まるガラス・投射材混在物を、投射材循環回路を介してブラスト機構の加圧タンクに循環するものとされているから、投射材の使用量を大幅に節減することができ、格段に経済的な運転を実現できるものになるという秀でた特徴が得られるものである。
【0014】
加えて、ブラスト室の底部に設けられたスクリューコンベア、および、該ブラスト室の内周壁から該スクリューコンベアに向け傾斜された漏斗状の収集壁からなる底部回収機構が設けられ、該ブラスト室の背壁の外がわに、該底部回収機構が収集したガラス・投射材混在物を上昇搬送するバケットエレベーター、および、該ガラス・投射材混在物を選別機構に供給するセパネーターを有する縦搬送機構が設けられたものは、選別機構に振動篩を採用するのに格段に有利なものとなり、より効率的な自動選別を実現化できるものとなる。
【0015】
さらに、ブラスト室の前壁に、両手用のグローブを有した左右一対の作業孔および覗き窓が設けられ、ブラスト機構の投射・停止操作用ペダル、および、ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作用ペダルを有したペダルスイッチが設けられたものは、作業者によるブラスト作業を実現化するものとなり、また、ブラスト室内に、自動作業機が設置され、該自動作業機の制御、ブラスト機構の投射・停止操作、および、当該ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作を自動制御する統合制御装置が設けられたものは、作業者が不要となり、自動的に積層ガラスへのブラスト処理を、より効率的且つより経済的に行うことができるものとなる。
【0016】
そして、ブラスト室内・外の少なくとも何れか一方に、統合制御装置に接続されたカメラが設けられ、ワーク保持機構上の積層ガラスのガラス層の剥離状態を撮影し、該統合制御装置が、該カメラからの画像情報に基づき、投射ノズルへの圧縮空気および投射材の投射・停止操作、自動作業機の動作、および、ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作を自動的にフィードバック制御するものとされたものは、より高精度に積層ガラスのガラス層を隈無く除去することができるものとなり、ブラスト処理の斑によって該積層ガラスの表面に残存してしまった場合のガラス片の除去などの後処理を必要とせず、作業者による手作業と同等の処理を実現化することができるものとなる。
【0017】
投射材が、直径0.8ないし1.2mmとされ、選別機構が、その振動篩の異物選別室の異物選別スクリーンを5メッシュ、同振動篩の大ガラス粒選別室の大ガラス粒選別スクリーンを12メッシュ、同振動篩の投射材選別室の投射材選別スクリーンを20メッシュとされたものは、異物選別室に留まった樹脂片は樹脂資源としてリサイクル利用することができ、大ガラス粒選別室に留まった大ガラス粒は、ガラス製品用のカレットとしてリサイクル利用することができ、投射材選別室に留まった投射材および該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒は、混合投射材としてブラスト機構に循環し、再利用することができ、さらに、小ガラス粒・投射材破砕粒選別室に留まった小ガラス粒および投射材破砕粒の混合物は、夫々の成分毎に分離することにより、小ガラス粒はグラスウールなどの原料としてリサイクル利用することができる上、投射材破砕粒は、金属原料としてリサイクル利用することができるから、積層ガラスのリサイクル処理の効率を格段に高めるものとなる。
【0018】
さらに、投射材が磁性素材製のものとされ、選別機構の振動篩の最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室より延伸された送出路の送出端に、小ガラス粒と投射材破砕粒とに分離するマグネットセパレーターを有する小ガラス粒選別機構が設けられたものは、該小ガラス粒選別機構から、小ガラス粒および投射材破砕粒が夫々に自動的に分離された状態に送出されるから、夫々の成分毎にそのままリサイクル利用することができるものとなる。
【0019】
そして、この発明の積層ガラス剥離装置を利用した積層ガラスのリサイクル処理方法によれば、選別機構の上下4層の選別室を有する振動篩によって選別された、樹脂粒、金属粒および破砕ガラス粒を含む回収物が、その粒度毎に選別された上、上から3段目の投射材選別室に留まった投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材を、ブラスト機構に循環供給するようにし、投射材の減少を防ぐことができるから、より経済的に可動することが可能となり、加えて、、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室に留まった小ガラス粒と投射材破砕粒との混合物を、小ガラス粒選別機構のマグネットセパレーターに投入し、小ガラス粒と投射材破砕粒とに分離し、夫々の用途にリサイクルするようにすれば、小ガラス粒はガラス製品用の原料として、また、投射材破砕粒は、金属製品の原料としてそのまま再生利用することができ、リサイクル処理の作業効率を格段に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
ブラスト室は、処理の対象となる積層ガラスを、ブラスト処理可能に収容可能とし、該積層ガラスを内部に収容および外部へ取り出し可能とする機能を担い、ブラスト処理によって飛散される投射材やガラス片、そのたの破片類などが衝突しても不用意に外部に漏らさない程度に充分な強度を有する壁面で囲まれたものとし、底部には、ブラスト処理に伴い落下した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を自動的に回収する底部回収機構を有するものとしなければならず、さらに、後述する実施例にも示しているように、特に、作業中に投射材やガラス破砕物などが飛散する内側周壁には、耐摩耗性ゴムからなるゴムライニングが貼着されたものとしたり、ブラスト処理に伴って発生する粉末状の破砕物を外部に漏らすことなく、しかも作業用の視界を確保可能な状態に清浄化可能なものとしたりするのが良い。
【0021】
また、後述する実施例にも示している通り、ブラスト室は、その周壁に積層ガラスを出入れ可能とする開閉扉、両手用のグローブが装着された作業孔、および、作業用の覗き窓などが設けられたものとするのが良く、また、天壁がわには、粉粒状物の分離除去機能を有する空気浄化機構部が設けられ、該ブラスト室内を強制的に換気または循環の少なくとも何れか一方を可能とされた吸排気口が開口され、さらに、作業用の照明灯、および、投射ノズルを有するブラストホースが垂下されたものとすることができ、底部がわには、漏斗状の収集壁が設けられ、同漏斗状の収集壁の下端に底部回収機構のスクリューコンベアが横設されたものとするのが良く、該スクリューコンベアは、ベルトコンベアに置き換えることが可能である外、一端から他端に向けて下り勾配を持って配された樋状路に置き換えられ、ガラス・投射材混在物が、その自重によって滑落し自動的に送り移動されるものとすることができる。
【0022】
ワーク保持機構は、ブラスト室内に、処理対象となる積層ガラスを一定の姿勢に支持可能とする機能を分担し、例えば、積層ガラスを垂直、水平または傾斜された姿勢に支持する支持台や支持枠、治具類などとすることができる外、積層ガラスを水平姿勢に支持可能なベルトコンベア、および、該ベルトコンベアを、ブラスト処理を行うブラスト室外の作業者がわ、または、ロボットアームなどの自動作業機がわへ向け送り駆動する駆動部が設けられたものとすることができ、該ベルトコンベアには、そのベルトに積層ガラスを、吸盤などを介して仮固定可能とする仮固定機構、または、突条や鈎爪、突起などを介して支持可能とするズレ防止機構などの何れかが設けられたものとすることができ、後述する実施例にも示しているように、該ベルトコンベアのベルト表面には、搭載された積層ガラスLGの進行方向の横ずれを防止する左右突条または左右突起列の少なくとも何れか一方の左右の横ズレ防止機構が設けられ、さらに、同ベルトコンベア30のベルト表面の、一周の1/2毎となる合計2箇所に、夫々積層ガラスLGの進行方向の後退を防止するよう、進行方向に直交する方向の横断突条、または、同方向に並ぶ突起列の何れか一方の縦ズレ防止機構が設けられたものとすることができる。
【0023】
ブラスト機構は、ブラスト室内のブラストホースに、圧縮空気および投射材を供給し、ブラスト処理可能とする機能を担い、ブラスト室外に設置され、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気と共に投射材をブラストホースに供給する加圧タンクを有し、投射材は、新規投入の場合を除き、選別機構の投射材スクリーンによって選別された投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材となる。
【0024】
選別機構は、ブラスト室内で発生し、回収されたガラス・投射材混在物を受け、最大、中大、中小、最小の4つの粒度範囲毎に分配し、該中小の粒度範囲に分類された投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒を含む混合投射材を、加圧タンクに循環供給する機能を分担し、上方から下方に向け各スクリーンの目が次第に細かくなる如く、最上層に異物スクリーンを有する異物選別室、中上層に大ガラス粒スクリーンを有する大ガラス粒選別室、中下層に投射材スクリーンを有する投射材選別室、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室が積層状に配され、それら各選別室の夫々に遠心方向に延伸された送出路を有した振動篩を備えたものとしなければならない。
【0025】
投射材循環回路は、選別機構の振動篩の投射材スクリーンを有する投射材選別室に留まった投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒を含む混合投射材を、当該加圧タンクに循環供給する機能を分担し、投射材選別室と加圧タンクとを繋ぐ配管路としなければならず、後述する実施例にも示しているように、高所に設置された振動篩の投射材選別室から、それよりも低い位置に設置された加圧タンクに接続された下り勾配を有した配管路とするのが良く、このような重力を利用した移送が困難な場合には、コンベアやエレベーターなどの強制的移送機構に置き換えられたものとすることができる。
【0026】
小ガラス粒選別機構は、選別機構の振動篩の最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室に残された小ガラス粒と投射材破砕粒との混合粒を、小ガラス粒と投射材破砕粒とに自動的に分離する機能を担い、比重差により分離可能な遠心分離機とすることができる外、後述する実施例にも示している通り、マグネットセパレーターを有するものとすることができる。
縦搬送機構は、ブラスト室の底部の底部回収機構が回収した破砕ガラス粒、投射材および樹脂片などの異物が混在するガラス・投射材混在物を上昇搬送し、選別機構の振動篩の最上層の異物選別室に供給する機能を分担し、上り勾配を有するベルトコンベアとすることができる外、後述する実施例にも示しているように、上端にセパネーターが設けられたバケットエレベーターとすることが可能である。
【0027】
ペダルスイッチは、ブラスト室の外に配した作業者が、両手を作業孔のグローブに挿し入れ、ブラスト室内の投射ノズルを操作しながらブラスト処理を行う場合に、ブラストホースを通じ、投射ノズルから噴射される投射材の停止、噴射の操作を可能とする機能を分担し、さらにまた、ワーク保持機構がベルトコンベアである場合に、ベルトコンベアの送り移動、停止の操作を可能とする機能を分担し、ブラスト室の作業孔や覗き窓などの下方など作業者が操作し易い位置に配されたものとすべきである。
【0028】
投射材は、ブラスト処理の対象となる積層ガラスのガラス層に衝突され、その衝撃力によって該ガラス層を破砕、分離する機能を分担し、ガラス層を効率的に破壊可能な程度に硬質且つ比重の大きな素材製の粒とすべきであり、より具体的には、金属製の円柱形または球形のものとするのが望ましく、振動篩の大ガラス粒選別室の大ガラス粒選別スクリーンを通過可能であってしかも投射材選別室の投射材選別スクリーンを通過不能な粒径のものとしなければならず、より具体的に示すならば、20メッシュを通過不能な粒径0.841mm,ないし、12メッシュを通過可能な粒径1.68mmの円柱形または球形の鋼、鉄、ステンレス鋼、チタン合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、銅合金、アルミニウム合金などの少なくとも何れかの金属または、ガラスや各種セラミックなどの少なくとも何れかとするのが望ましく、例えば、新モース硬度2ないし14の何れかであって、しかも比重2.5ないし8.8の何れかのものとするのが良く、さらに具体的には、後述する実施例にも示すように、粒径0.8ないし1.2mmの円柱形の磁性を有し、新モース硬度6,比重7.6のステンレス鋼製のものとすると、亜鉛などよりも硬く、鋼よりも剛性に優れて割れにくく耐久性に優れ、且つ比重が大きく、しかも両端に円形の角を有しているから、ガラス層への衝突に伴う応力の集中が得られ易く、より効果的に破砕することができるものになる。
【0029】
この発明の積層ガラス剥離装置は、作業者自らが、ブラストホースの投射ノズルやワーク保持機構のベルトコンベアを操作しながら積層ガラスのガラス層を分離するものとすることができる外、ブラスト室内に積層ガラスが平置きされるよう、上面が水平に設置されたワーク保持機構としてのベルトコンベアの送り方向に対し、交叉する水平なガイドレールが、同ベルトコンベアの上がわに架け渡され、該ガイドレールに沿って進退移動し、ブラストホースの投射ノズルを下向きに保持し、ベルトコンベアの送り方向をX方向とした場合に、ガイドレールのY方向(該X方向と交叉する方向)に移動するヘッドに投射ノズルを有したプロッターからなる自動作業機を有するものとすることができ、また、該プロッターのガイドレールの両端がワーク保持機構としてのベルトコンベアの送り方向に直交する方向に対峙する両辺に沿って、該送り方向に進退移動自在に移動し、該ヘッドが平面のX-Y方向に移動する自動作業機を有するものとすることができ、該ワーク保持機構としてベルトコンベアは、積層ガラス用の支持台に置き換えられたものとすることができる。
【0030】
そしてまた、この発明の積層ガラス剥離装置は、後述する実施例にも示しているように、ブラスト室内にブラストホースの投射ノズルを自動的に三次元操作するロボットアームなどの自動作業機が設けられたものとすることができ、さらにまた、ブラスト室内・外の少なくとも何れか一方に、統合制御装置に接続されたカメラが設けられ、ワーク保持機構上の積層ガラスのガラス層の剥離状態を撮影し、該統合制御装置が、該カメラからの画像情報に基づき、投射ノズルへの圧縮空気および投射材の投射・停止操作、ロボットアームなどの自動作業機の動作、および、ワーク保持機構のベルトコンベアの送り・停止操作を自動的にフィードバック制御するものとされたものとすることができる。
【0031】
ブラスト処理の対象となる積層ガラスは、樹脂シートなどの樹脂層に板ガラスなどのガラス層が積層、貼着され、一体化されたものであるということができ、太陽電池モジュールの金属フレームおよび端子箱などの外装部品類を取り外した太陽電池パネルや、板ガラス間に樹脂フィルムなどの中間層が挟み込まれた防犯ガラスまたは自動車用のフロントガラスなどの合わせガラスなどとすることが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面は、この発明の積層ガラス剥離装置の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】積層ガラス剥離装置を示す左側面図である。
図2】積層ガラス剥離装置を示す正面図である。
図3】積層ガラス剥離装置を示す右側面図である。
図4】積層ガラス剥離装置を示す背面図である。
図5】積層ガラス剥離装置を示す平面図である。
図6】加圧タンクを示す断面図である。
図7】選別機構の振動篩を一部断面化して示す正面図である。
図8】選別機構の振動篩を示す平面図である。
図9】選別機構の振動篩の最上層にある異物選別室の外周壁を示す断面図である。
図10】小ガラス粒選別機構としてのマグネットセパレーターを示す正面図である。
図11】マグネットセパレーターを示す右側面図である。
図12】マグネットセパレーターを示す平面図である。
図13】自動作業機としてのロボットアームが設けられた積層ガラス剥離装置を示す右側面図である。
図14】太陽電池パネルのブラスト処理を開始した状態を示す平面図である。
図15】太陽電池パネルのブラスト処理が途中まで進行した状態を示す平面図である。
図16】太陽電池モジュールの断面を示す側面図である。
図17】金属フレームおよび端子箱が取り外された太陽電池パネルの断面を示す側面図である。
図18】太陽電池パネルからカバーガラスが除去されたバックシートの断面を示す側面図である。
図19】太陽電池パネルのガラスを剥がす工程を示すフローチャートである。
図20】振動篩の最上層の異物選別室に留まる大きな樹脂片などの異物を示す写真画像である。
図21】振動篩の中上層の大ガラス粒選別室に留まる大ガラス粒を示す写真画像である。
図22】振動篩の中下層の投射材選別室に留まる投射材、および、該投射材と同等の粒径の破砕ガラス粒の混合投射材を示す写真画像である。
図23】小ガラス粒選別機構のマグネットセパレーターによって選別された小ガラス粒を示す写真画像である。
図24】小ガラス粒選別機構のマグネットセパレーターによって選別された投射材破砕粒を示す写真画像である。
【実施例0033】
図1ないし図12に示す事例は、積層ガラスLGを収容するブラスト室2が設けられ、該ブラスト室2の外に投射材の加圧タンク40、および、投射ノズルPNが該ブラスト室2内に配されたブラスト機構4が設けられ、該ブラスト室2の底部20に、ガラス・投射材混在物を回収する底部回収機構6を有し、最上層に異物選別室FR、中上層に大ガラス粒選別室LR、中下層に投射材選別室PR、および、最下層に小ガラス粒・投射材破砕粒選別室SRが配された振動篩70を備えた選別機構7が設けられ、当該投射材選別室PRと加圧タンク40とを繋ぐ投射材循環回路8が設けられてなる、この発明の積層ガラス剥離装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0034】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の積層ガラス剥離装置1は、そのブラスト室2が、作業者が起立姿勢でブラスト作業し易い高さ(例えば750mmないし1160mm)位置に、ブラスト処理の対象となる積層ガラスLGとしての太陽電池パネルSPを、長辺が左右、短辺が前後に向けられた姿勢に平置き可能となる寸法に設定されたワーク保持機構3のベルトコンベア30が、水平姿勢且つ前後方向に送り移動可能に設置され、その駆動軸が該ブラスト室2の左側壁23にシールベアリングなど密閉を確保可能な軸受け構造を介して貫通し、外がわに延伸され、同左側壁23の外がわに設けられた駆動部DMに接続され、回転駆動されるものとなっている。
【0035】
ブラスト室2の右側壁24には、外がわからベルトコンベア30上に太陽電池パネルSPを搬入および搬出可能とするアップスライド型の開閉扉25がシール構造を有して設けられ、また、同ブラスト室2の前壁26および左右側壁23,24のベルトコンベア30よりも下がわから、同ブラスト室2の底部20までの範囲には漏斗状の収集壁60が設けられ、右側壁24の該開閉扉25の下方に対応する、該漏斗状の収集壁60には、メンテナンス扉MD,MDがシール構造を有して設けられており、該漏斗状の収集壁60の内がわ下端の間には、メッシュ2ないしメッシュ4の何れかとされたパンチングメタル61が水平板状に配され、さらに、該パンチングメタル61の直下には、ブラスト室2の前後方向に延びる樋状路63が設けられ、該樋状路63内には、同ブラスト室2の前方から後方に送り方向が設定されたクリューコンベア60が水平姿勢に設けられ、該前壁26の収集壁61の下がわに配された駆動モーターDMが、該スクリューコンベア60に接続され底部回収機構6とされている。
【0036】
そして、ブラスト室2の天壁27の内壁には、背壁22がわに向けて照明するよう傾斜された照明灯LT,LTが吊下されており、また、同ブラスト室2の前壁26の天壁27寄りの位置には、換気吸入口VPが下向きに開口されている一方、同背壁22の天壁27寄りの位置には、排気吸い出し口EPが下向きに開口され、該排気吸い出し口EPの上方に向けられた排気口は、該ブラスト室2の外がわに設置された、後述する縦搬送機構VTの密閉型のエレベーターボックスEBの中途部に水平方向に横断する如く連通状に密閉接続され、さらに上方に吸い上げる配管路を経由し、該エレベーターボックスEBの隣に設置された自然落下型またはサイクロン型などの何れかの強制排気式であってブラスト機構4と共に起動・停止する集塵機DCに密閉状に接続され、該、換気吸入口VP,排気吸い出し口EPおよび集塵機DCからなる空気清浄機構APが設けられ、該換気吸入口VPよりブラスト室2内に清浄な外気を取り込み、ブラスト処理作業中にワーク保持機構3上の太陽電池パネルSPを鮮明に視認可能とすると共に、該排気吸い出し口EPから同ブラスト室2の微細粒子状物を含む空気を吸い出し、さらに、エレベーターボックスEB内に浮遊する微細粒子状物含む空気も吸引し、該集塵機DCが空気中に含まれる微細粒子状物を分離回収し、清浄な空気を外部に放出するものとなっている。
【0037】
ブラスト室2の前壁26のベルトコンベア30よりも僅かに高く、作業者の左右の腕の高さ位置には、左右の手を夫々挿し通すことができるよう水平に並ぶ合計4個の作業孔28,28,……が開口され、それら左右の作業孔28,28,……には夫々左右の作業用のグローブが、同ブラスト室2内に延伸されるよう装着され、さらに、それら作業孔28,28,……の直上には、同ブラスト室2内に向けて凹設され、僅かに斜め下向きに傾斜された同前壁26に、中央および左右の計3枚の覗き窓PW,PW,PWが、ガラス張りされたものとなっており、さらに、ブラスト室2内の該覗き窓PW,PW,PWの上方となる天壁27からは、同ブラスト室2の外がわから引き込まれたブラスト機構4のブラストホースBHの投射ノズルPNが、同ブラスト室2内のベルトコンベア30上であって、作業用のグローブが届く範囲に垂下されたものとなっており、また、該ブラスト室2の前壁26の外がわ左上には、当該積層ガラス剥離装置1の各部を操作可能な操作パネルCPが設けられている。
【0038】
ブラスト室2の背壁22の外がわであって、底部回収機構6のスクリューコンベア62の送出端に相当する位置には、縦搬送機構VTが配されており、該縦搬送機構VTは、スクリューコンベア62から送り出されたガラス・投射材混在物を、地上3600mm前後の高さまで垂直搬送するバケットエレベーターBEと、同バケットエレベーターBEを密閉状に包囲するエレベーターボックスEBが設けられ、該エレベーターボックスEBの上端に密閉型のセパレーターSRが配され、該セパレーターSRの外がわには、バケットエレベーターBEを駆動する駆動モーターDMが設けられたものとなっている。
【0039】
図1図2図4図5図7ないし図9に示すように、縦搬送機構VTのセパレーターSRの下向きとされた先端には、地上2705mmないし1840mm程度の高さ範囲内に設置された選別機構7の丸型のアウトリングタイプの振動篩70の上端の供給口STに接続されており、該振動篩70は、駆動スプリングDSに回転自在に支持され、上下にアンバランスウェイトUW,UWが配された振動体VBおよび該振動体VBを回転駆動する駆動モーターDMが内蔵された台座PDが、架台MTの上に設置され、該台座PD上には、下から、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室MR,中下層の投射材選別室PR,中上層の大ガラス粒選別室LR、および、最上層の異物選別室FRが順に、合計4層が重ね合わせ状に配されたものとなっており、該最上層の異物選別室FRは、上部中央に当該供給口STが設けられ、底部に異物選別スクリーンFS(5メッシュ)が設けられており、該中上層の大ガラス粒選別室LRは、その底部に大ガラス粒選別スクリーンLS(12メッシュ)が設けられ、該中下層の投射材選別室PRは、その底部に投射材選別スクリーンMS(20メッシュ)が設けられ、各選別室FR,LR,PR,MRからは夫々送出路DP,DP,……が遠心方向に延出されたものとなっている。
【0040】
図4ないし図7に示すように、中下層の投射材選別室PRから延出された送出路DPは、投射材循環回路8を通じ、支脚上に設置された直圧式の加圧タンク40の地上1850mm前後に配されたホッパー部41に接続され、同加圧タンク40は、該ホッパー部41より僅かに下の高さ位置に減圧弁42が設けられ、また、該ホッパー部41の下端開口には、同加圧タンク40外に設置された圧縮空気供給源5から延伸され、中途部が加圧タンク40の周壁を貫通し、同加圧タンク40内に引き込まれた弁制御用配管43の先端に設けられた直圧弁44が配され、同加圧タンク40の下端には、該弁制御用配管43の中途部から分岐され、ブラストホースBHに繋がる高圧空気配管45の中途部に開口された投射材導入孔46が、投射材量調整バルブ47を介して接続されたものとなっており、当該ホッパー部41から同加圧タンク40内に、粒径0.8ないし1.2mm、より具体的には、粒径9mm、新モース硬度6(ビッカース硬度400ないし600HV),比重7.6の磁性を有するステンレス製、円柱形の投射材PMの複数個が充填されたものとなっている。
【0041】
ワーク保持機構3のベルトコンベア30の駆動部DMの図示しないスイッチを操作するペダル、および、ブラスト機構4の高圧空気配管45の中途部に設けられた図示しない電磁弁を操作するペダルの合計2個の操作ペダルが並んで配された図示しないペダルスイッチが、ブラスト室2の前壁26の外がわであって、ブラスト作業を行う作業者の足下となる位置に配されたものとなっている。
【0042】
図1図4図5図10ないし図12に示すように、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室MRから延出された送出路DPは、小ガラス粒選別機構9のマグネットセパレーター90のセパレーターボックス91の上端に開口するホッパー92に接続されており、同セパレーターボックス91の内部には、該ホッパー92の直下となる位置に、筒状の周壁を有する回転ドラム93が水平軸をもって軸支され、該回転ドラム93の内部には、図10の正面視で6時ないし12時の範囲に永久磁石または電磁石の少なくとも何れか一方が固定状に内蔵され、該回転ドラム93の水平軸の当該セパレーターボックス91外に延伸された端部には従動プーリー94が設けられ、該回転ドラム93の水平方向となるセパレーターボックス91外に設けられた駆動モーターDMの駆動プーリー95との間に伝動ベルト96が巻き掛けられ、該回転ドラム93が、反時計回りに回転駆動されるものとされ、さらに、該従動プーリー94の軸からセパレーターボックス91外に調速ハンドル97が突設され、該調速ハンドル97は、従動プーリー94の巻き掛け直径を変え、回転ドラム93の回転速度を調節するものとなっており、該回転ドラム93の直下には、同回転ドラム93の6時の直下位置を境に、9時がわに分岐された非磁性物の小ガラス粒が落下する非磁性物誘導路98、また、6時の直下位置を境に、3時がわに分岐された磁性物の投射材破砕粒が落下する磁性物誘導路99が設けられたものとなっている。
【0043】
図1および図2図4ないし図7および図10に示すように、選別機構7の振動篩70の最上層の異物選別室FRの送出路DPの送出端の下方には、異物選別スクリーンFS(5メッシュ)を通過しなかった直径4mmを超えたガラス片、プラスチック片、および、金属片などを収容する図示しない異物回収用バケットが配され、また、中上層の大ガラス粒選別室LRの送出路DPの送出端の下方には、大ガラス粒選別スクリーンLS(12メッシュ)を通過しなかった直径4mmか、それより小さく、しかも直径1.68mmよりも大きな大ガラス粒を収容する図示しない大ガラス粒回収用バケットが配され、そして、中下層の投射材選別室PRの送出路DPの送出端の下方には、前述の如く加圧タンク40のホッパー部41に繋がる投射材循環回路8に接続され、投射材選別スクリーンMS(20メッシュ)を通過しなかった直径1.68mmか、それよりも小さく、しかも直径0.84mmよりも大きく、投射材((直径0.8ないし1.2mm)と略同等の大きさのガラス粒および投射材の混合物が供給されるものとなっており、さらにまた、最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室MRの送出路DPの送出端には、小ガラス粒選別機構9のマグネットセパレーター90のホッパー92が接続され、該マグネットセパレーター90の非磁性物誘導路98の下方には、非磁性粒用バケットが配され、磁性物誘導路99の下方には、磁性粒用バケットが配されたものとなっている。
【0044】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の積層ガラス剥離装置1は、図1ないし図12図14ないし図19に示すように、廃棄された太陽電池モジュールSM(図16)から、端子箱TBおよび金属フレームMFが取り外された積層ガラスとしての太陽電池パネルSP(図17)から、ガラス層としてのカバーガラスCG(板ガラス)を除去(図18)するブラスト処理方法に利用することが可能であり、以下にその作業工程について示して行くこととする。
【0045】
作業者は、ブラスト室2の開閉扉25を開き、太陽電池パネルSPをカバーガラスCGが上向きとなる姿勢としてベルトコンベア30上に平置きし(a)、該開閉扉25を閉じ(b)てから、該ブラスト室2の前壁26がわに移動し、左右の作業孔28,28を通じて両手を左右のグローブに差し通し(c)、利き手で投射ノズルPNを掴み(d)、ペダルスイッチの投射・停止操作用ペダルを踏み込み(e)、加圧タンク40に圧縮空気を送り込み、投射ノズルPNから投射材を噴射させ(f)、作業者(ブラスト室2の前壁26)に近いがわから、図14および図15の実線矢印に示すように、投射ノズルPNを操作し、細い二点鎖線の円形状の輪郭範囲内に投射材を投射しながら、封止材層ECを残し、該封止材層ECの下にある太陽電池セルSC、配線材WMおよびバックシートBSを残すよう、表面のカバーガラスCGのみ破砕しながら吹き飛ばし(g)、作業者の手前がわから、奥がわへカバーガラスCG(同14および図15中のハッチング範囲)を順次、除去しながら、該ペダルスイッチの送り・停止操作用ペダルを操作し、ベルトコンベア30を駆動させ、太陽電池パネルSPのカバーガラスCGが除去され、封止材層EC、太陽電池セルSC、配線材WMおよびバックシートBSなどの柔軟性部品だけが残された範囲を、該ベルトコンベア30の下がわに送りこみ、最終的に表裏反転された状態(バックシートが上がわの状態)か、ロール状に巻き取られた状態かの何れかとなって、該ベルトコンベア30の下方に送り込まれるように、ブラスト処理を進め、ブラスト処理を終えた後、ベルトコンベア30およびブラスト機構4を停止し、開閉扉25を開き、封止材層EC、太陽電池セルSC、配線材WMが一体のままのバックシートBSをブラスト室2外に取り出すこととなる。
【0046】
そして、ブラスト処理によってブラスト室2内に飛散する投射材、および、破砕ガラス粒および封止材ECの表層の樹脂粒などは、その一部の最も細かな破砕粒子が、同ブラスト室2内の空中に舞い上がることとなるが、空気清浄機構APの換気吸入口VPから吸い込まれた清浄な外気に入れ替わり、排気吸い出し口EPから吸い出され、該ブラスト室2内が清浄化され、覗き窓PWの視界を良好に保つことができる上、開閉扉25を開いたときにも、微細な粒子がブラスト室2外に漏出するのを防ぐものとなり、さらに、該排気吸い出し口EPから吸い出された最も細かな粒子を含む空気は、縦搬送機構VTのエレベーターボックスEB内の微細な粒子を含む空気と合流しながら、集塵機DCに強制的に吸い込まれ、空気中の微粒子が回収され、浄化された空気だけが同集塵機DC外に放出されるから、縦搬送機構VTおよびそれに繋がる底部回収機構6の稼働各部に微細粒子が蓄積するのを防ぎ、機械的なトラブルを未然に防止することができる上、清浄な作業環境を維持し、安全性と作業効率をより高めたものとなる。
【0047】
また、ブラスト室2内に舞い上がらず、下に落下した投射材、破砕ガラス粒、封止材粒EC,金属粒、および、封止材片や金属片などの混在するガラス・投射材混在物が、左側壁23,右側壁24および前壁26の下方のパンチングメタル61の孔を通り、漏斗状の収集壁60に沿って樋状路63に落下し、ブラスト機構4の起動に連動して駆動するスクリューコンベア62の回転駆動により、背壁22の外がわまで搬送され、縦搬送機構VTのバケットエレベーターBEのエレベーターボックスEB,EB,……に自動的に汲み上げ上昇される(h)。
【0048】
セパレーターSRまで上昇されたガラス・投射材・封止材混在物は、セパレーターSRを介して、図7ないし図9に示す選別機構7の加振されている振動篩70の最上層の異物選別室FRに供給され(j)、その異物選別スクリーンFS(5メッシュ)によって選別され、同異物選別スクリーンFS(5メッシュ)を通過せず、該最上層の異物選別室FRに残された大きい封止材片などが、送出路DPを通じ、該最上層の異物選別室FRの外に落下され、下方に設置された回収バケットに、図20に示す状態に回収される。
【0049】
最上層の異物選別室FR内から異物選別スクリーンFS(5メッシュ)を通過し、直下の中上層の大ガラス粒選別室LRに落下したガラス・投射材混在物は、大ガラス粒選別スクリーンLS(12メッシュ)上で加振され、同大ガラス粒選別スクリーンLSを通過せず、該中上層の大ガラス粒選別室LRに残された大ガラス粒が、送出路DPを通じ、該中上層の大ガラス粒選別室LRの外に落下され、下方に設置された回収バケットに、図21に示す状態に回収される(k)。
中上層の該大ガラス粒選別室LR内から大ガラス粒選別スクリーンLS(12メッシュ)を通過し、直下の中下層に投射材選別室PRに落下したガラス・投射材混在物は、投射材選別スクリーンMS(20メッシュ)上で加振され、同投射材選別スクリーンMSを通過せず、該中下層に投射材選別室PRに残された投射材と略同径のガラス・投射材混在物は、図22に示す状態となり、送出路DPを通じ、該中下層に投射材選別室PRの外に送出され、図4および図5に示す投射材循環回路8を通じ、加圧タンク40に循環供給されることとなる(m)。
【0050】
図1図4図5図10ないし図12に示すように、該中下層に投射材選別室PR内から、投射材選別スクリーンMS(20メッシュ)を通過し、直下の最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室MRに落下した投射材よりも細かいガラス・投射材破砕粒混在物は、送出路DPを通じ小ガラス粒選別機構9のマグネットセパレーター90のホッパー92に投下され、回転ドラム93の周壁面に接した細かいガラス・投射材混在物の中、磁性を有する投射材破砕粒が、同回転ドラム93内の永久磁石(または電磁石)に吸着され、非磁性の細かいガラス粒や細かな封止材粒が、非磁性物誘導路98を通って落下され、その下方に設置された回収バケットに、図23に示す状態に回収され、また、磁性を有する投射材破砕粒が、非磁性物誘導路98を通り過ぎた位置で、永久磁石(または電磁石)の吸着力から解放され、磁性物誘導路99を落下し、その下方に設置された回収バケットに、図24に示す状態に回収されることとなる(n)。
【実施例0051】
図13に示すものは、、ブラスト室2内に、自動作業機RAが設置され、該自動作業機RAには該ブラスト室2外から同ブラスト室2内に引き込まれたブラストホースBHの投射ノズルPNが設けられ、該ブラスト室2内の自動作業機RAよりも下方であって同ブラスト室2内の底部回収機構6よりも上方となる同ブラスト室2内には、積層ガラスSPを水平姿勢に載置可能とされ、該ブラスト室2の背壁22がわから同前壁26がわに向けて送り可能なルトコンベア30、および該ベルトコンベア30を駆動する駆動部DMを有するワーク保持機構3が設けられ、当該投射ノズルPNへの圧縮空気および投射材の投射・停止操作、当該自動作業機RAの制御、および、当該ワーク保持機構3のベルトコンベア30の送り・停止操作を自動制御する統合制御装置CDが設けられた、この発明の積層ガラス剥離装置における代表的な他の実施例を示すものである。
この実施例の積層ガラス剥離装置1は、その基本的構成が、前記実施例1と同じものとなっているから、構成の異なる部分についてのみ、以下に示すこととする。
【0052】
この実施例の最も特徴的な自動作業機RAは、ブラスト室2の同前壁26寄りとなる天壁27から垂下された状態に設置され、先端に設けられた投射ノズルPNを三次元移動可能なロボットアームRAとされ、該ブラスト室2内・外の少なくとも何れか一方に、当該統合制御装置CDに接続されたカメラCMが設けられ、ベルトコンベア30上の積層ガラスとしての太陽電池パネルSP(図14ないし図18参照)のガラス層としてのカバーガラスCGの剥離状態を撮影し、該統合制御装置CDが、該カメラCMからの画像情報に基づき、投射ノズルPNへの圧縮空気および投射材PMの投射・停止操作、ロボットアームRAの動作、および、ベルトコンベア30の送り・停止操作を自動的にフィードバック制御するものとなっており、さらに、該ベルトコンベア30のベルト表面には、搭載された太陽電池パネルSPの進行方向の不用意な横ずれを防止するよう互いに対をなし平行する左右突条または左右突起列の少なくとも何れか一方の左右の横ズレ防止機構が設けられ、さらに、同ベルトコンベア30のベルト表面の、一周の1/2毎となる合計2箇所に、夫々太陽電池パネルSPの進行方向の不用意な後退を防止するよう、進行方向に直交する方向の横断突条、または、同方向に並ぶ突起列の何れか一方の縦ズレ防止機構が設けられたものとなっている。
【0053】
(実施例2の作用・効果)
この発明の積層ガラス剥離装置1は、図13ないし図18に示すように、作業者が、操作パネルCPの主電源を投入操作すると統合制御装置CDが起動し、同作業者が、開閉扉25を開き、ワーク保持機構3のベルトコンベア30上に積層ガラスとしての太陽電池パネルSPを平置き状とし、その左右端が左右の横ズレ防止機構に、また、ブラスト室2の背壁22がわとなる同後端が縦ズレ防止機構に夫々係合するよう載置し、開閉扉25を閉じ、操作パネルCPから起動操作を行うと、当該統合制御装置CDがカメラCMからの映像信号に基づき、太陽電池パネルSPの配置を認識し、同統合制御装置CDは、ロボットアームRAの投射ノズルPNを該太陽電池パネルSPの一角に向け、投射を開始するよう制御し、同統合制御装置CDは、該カメラCMからの映像信号に基づき、カバーガラスCGの残存範囲を認識し、且つ、ベルトコンベア30の送り量を加味しながら、該ロボットアームRA(投射ノズルPN)を、同図14および図15の実線矢印に示すように、投射材の投射を隈無く進め、同図14および図15の白抜き矢印に示すように、ブラスト室2の背壁22がわのカバーガラスCGの残存範囲(同図14および図15のハッチング範囲)を、同ブラスト室2の前壁26寄りの、該ロボットアームRAの直下付近まで、当該ベルトコンベア30の送り動作によって移動するよう制御し、該ベルトコンベア30の送り移動中、および、停止した後も、統合制御装置CDは、該カメラCMからの映像信号を受け続け、且つ、ベルトコンベア30の送り量を加味しながらロボットアームRAを、カバーガラスCGの残存範囲に投射ノズルPNの投射範囲が追随するよう自動制御し、ブラスト作業を中断することなく継続するものとなり、太陽電池パネルSPのカバーガラスCGが除去された範囲は、封止材層EC、太陽電池セルSCおよび配線材WMが残された柔軟に変形し易いバックシートBSとなっているから、当該ベルトコンベア30の下がわに回り込まれ、パンチングメタル61上に次第に移動され、最終的に、該パンチングメタル61上にブラスト処理を終えた1枚目のバックシートBSが平置き状に配され、統合制御装置CDは、投射材の投射を停止し、ロボットアームRAを待機姿勢に戻し、その機能を停止するよう制御する。
【0054】
該ロボットアームRAが待機姿勢となった後、作業者が開閉扉25を開き、該パンチングメタル61上のブラスト処理を終えた1枚目のバックシートBSをブラスト室2の外に取り出し、同ベルトコンベア30上に2枚目の太陽電池パネルSPを平置き状とし、その左右端が左右の横ズレ防止機構に、また、ブラスト室2の背壁22がわとなる同後端が縦ズレ防止機構に夫々係合するよう載置し、開閉扉25を閉じ、操作パネルCPから起動操作を行うと、前記同様に2枚目の太陽電池パネルSPのカバーガラスCGが除去され、ブラスト処理を終え、該ベルトコンベア30の下まで移動された該2枚目のバックシートBSは、パンチングメタル61上に平置き状となり、統合制御装置CDが、投射材の投射を停止し、ロボットアームRAを待機姿勢に戻し、その機能を停止した後、作業者が、開閉扉25を開き、該2枚目のバックシートBSをブラスト室2外に取り出すことになる。
【0055】
(結 び)
叙述の如く、この発明の積層ガラス剥離装置、および、それを利用した積層ガラスのリサイクル処理方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの太陽電池モジュールや合わせガラスなどからガラスを分離する技術に比較して、積層ガラスから、ガラスのみをより経済的且つ効率的に分離、除去可能とする上、破砕、分離、回収されたガラスや樹脂、金属などの混在物中から、カレット状のガラスをより効率的に選別、分離できるものとなるから、今後、耐用年数を経過した使用済みの太陽電池モジュールが大量に発生することが予想されている現状の中、その再生処理に携わるリサイクル業界、および、ガラス製品を生産するガラス業界はもとより、劣化や破損によって性能が低下したり故障したりして修理不可能となった太陽電池モジュールや合わせガラスなどを適正に処理したいと希望する太陽電池発電業界、防犯ガラスを取り扱う建築業界、および、自動車用ガラスを取り扱う自動車整備業界などからも高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0056】
1 積層ガラス剥離装置
2 ブラスト室
20 同 底部
21 同 内周壁
22 同 背壁
23 同 左側壁
24 同 右側壁
25 同 開閉扉
26 同 前壁
27 同 天壁
28 同 作業孔
MD 同 メンテナンス扉
PW 同 覗き窓
LT 同 照明灯
AP 空気清浄機構
VP 同 換気吸入口
EP 同 排気吸い出し口
DC 同 集塵機
CP 同 操作パネル
3 ワーク保持機構
30 同 ベルトコンベア
DM 同 駆動部
4 同 ブラスト機構
40 同 加圧タンク
41 同 ホッパー部
42 同 減圧弁
43 同 弁制御用配管
44 同 直圧弁
45 同 高圧空気配管
46 同 投射材導入孔
47 同 投射材量調整バルブ
BH 同 ブラストホース
PN 同 投射ノズル
5 圧縮空気供給源(圧縮空気)
6 底部回収機構
60 同 漏斗状の収集壁
61 同 パンチングメタル
62 同 スクリューコンベア
63 同 樋状路
7 選別機構
70 同 振動篩
PD 同 台座
DS 同 駆動スプリング
UW 同 アンバランスウェイト
VB 同 振動体
ST 同 供給口
FR 同 最上層の異物選別室
FS 同 異物選別スクリーン(5メッシュ)
LR 同 中上層の大ガラス粒選別室
LS 同 大ガラス粒選別スクリーン(12メッシュ)
PR 同 中下層の投射材選別室
MS 同 投射材選別スクリーン(20メッシュ)
MR 同 最下層の小ガラス粒・投射材破砕粒選別室
DP 同 送出路
MT 同 架台
8 投射材循環回路
9 小ガラス粒選別機構
90 同 マグネットセパレーター
91 同 セパレーターボックス
92 同 ホッパー
93 同 回転ドラム
94 同 従動プーリー
95 同 駆動プーリー
96 同 伝動ベルト
97 同 調速ハンドル
98 同 非磁性物誘導路
99 同 磁性物誘導路
VT 縦搬送機構
BE 同 バケットエレベーター
EB 同 エレベーターボックス
SR 同 セパレーター
RA 自動作業機(ロボットアーム)
CD 統合制御装置
CM 同 カメラ
SM 太陽電池モジュール
SP 同 太陽電池パネル
MF 同 金属フレーム
CG 同 カバーガラス(板ガラス)
EC 同 封止材層
SC 同 太陽電池セル
WM 同 配線材
BS 同 バックシート
TB 同 端子箱




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24