(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002488
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】電磁波を使用して動作する距離センサを試験する試験装置、および折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチを試験するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
G01S7/40 186
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022099747
(22)【出願日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】17/353,905
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ポール
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AB17
5J070AC02
5J070AF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】技術的労力およびコストをほとんどかけることなく距離センサテストベンチの試験を可能にする。
【解決手段】シミュレーションモードにおいて、受信信号またはこの受信信号から導出された受信信号が遅延ユニットを介して設定可能な時間遅延を伴って供給され、遅延信号は、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成され、遅延信号またはこの遅延信号から導出された遅延信号が放射エレメントを介して出力信号として放射される。試験モードにおいて、試験信号ユニットが試験信号を生成し、試験信号またはこの試験信号から導出された試験信号が放射エレメントを介して出力信号として放射され、解析ユニットが出力信号としての試験信号または導出された試験信号の放射に同期して、試験モードにおいて、受信信号または導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を使用して動作する距離センサ(2)を試験する試験装置(1)であって、前記試験装置(1)は、
自由空間電磁波を受信信号(SRX)として受信する受信エレメント(3)と、
電磁出力信号(STX)を放射する放射エレメント(4)と、
を備え、
シミュレーションモードにおいて、前記受信信号(SRX)または前記受信信号(SRX)から導出された受信信号(S’RX)は、遅延ユニット(5)を介して設定可能な時間遅延(tdelay,set)を伴って供給され、したがって、遅延信号(Sdelay)は、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成され、
前記遅延信号(Sdelay)または前記遅延信号(Sdelay)から導出された遅延信号(S’delay)は、前記放射エレメント(4)を介して出力信号(STX)として放射される試験装置(1)において、
試験モードにおいて、試験信号ユニット(9)は、試験信号(Stest)を生成し、前記試験信号(Stest)または前記試験信号(Stest)から導出された試験信号(S’test)は、前記放射エレメント(4)を介して出力信号(STX)として放射され、
前記試験モードにおいて、解析ユニット(10)は、出力信号(STX)としての前記試験信号(Stest)または前記導出された試験信号(S’test)の放射に同期して、前記受信信号(SRX)または前記導出された受信信号(S’RX)をその位相角(Phi)および/または振幅(A)について解析し、前記位相角(Phi)および/または振幅(A)の求められた値を記憶する、
ことを特徴とする試験装置(1)。
【請求項2】
前記遅延ユニット(5)、前記試験信号ユニット(9)および前記解析ユニット(10)は、ハウジング(13)に包含されており、
前記受信エレメント(3)は、信号線路(14)を介して前記ハウジング(13)に接続されており、これにより前記試験装置(1)の前記ハウジング(13)から離間させて位置決め可能である、
請求項1記載の試験装置(1)。
【請求項3】
前記受信エレメント(3)は、入力ミキサ(11)を有し、
前記受信信号(SRX)は、前記入力ミキサ(11)によってより低い中間周波数へダウンコンバートされ、
このようにして前記受信信号(SRX)から導出された低周波数受信信号(S’RX)は、前記信号線路(14)を介して、少なくとも前記ハウジング(13)に包含された前記解析ユニット(10)へ伝送される、
請求項1または2記載の試験装置(1)。
【請求項4】
前記解析ユニット(10)は、基準信号に対する前記受信信号(SRX)の位相角(Phi)または前記導出された受信信号(S’RX)の位相角(Phi)を、特に前記基準信号が前記試験信号(Stest)または前記導出された試験信号(S’test)である場合に求める、
請求項1から3までのいずれか1項記載の試験装置(1)。
【請求項5】
前記解析ユニット(10)は、出力信号(STX)として放射された前記試験信号(Stest)または出力信号(STX)として放射された前記導出された試験信号(S’test)に関する伝搬時間測定により、前記受信信号(SRX)または前記導出された受信信号(S’RX)をその位相角(Phi)について解析する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の試験装置(1)。
【請求項6】
前記試験信号(Stest)または前記導出された試験信号(S’test)は、パルス、パルス列、連続波信号、または周波数変調された連続波信号である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の試験装置(1)。
【請求項7】
前記解析ユニット(10)は、複数の受信信号(SRX)または複数の導出された受信信号(S’RX)をその位相角(Phi)および/または振幅(A)について解析し、前記位相角(Phi)および/または振幅(A)の複数の値を記憶する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の試験装置(1)。
【請求項8】
外部コンピュータは、通信インタフェース(15)を介して接続可能であり、
前記解析ユニット(10)は、前記受信信号(SRX)または前記導出された受信信号(S’RX)の位相角(Phi)および/または振幅(A)の値を、前記通信インタフェース(15)を介して前記外部コンピュータへ伝送する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の試験装置(1)。
【請求項9】
前記試験信号ユニット(9)は、前記通信インタフェースを介して受信された外部要求に応答して前記試験信号(Stest)を生成し、前記試験信号(Stest)または前記試験信号(Stest)から導出された試験信号(S’test)を、前記放射エレメント(4)を介して出力信号(STX)として放射し、
前記解析ユニット(10)は、前記出力信号(STX)の放射に同期して、前記受信信号(SRX)または前記導出された受信信号(S’RX)をその位相角(Phi)および/または振幅(A)について解析する、
請求項8記載の試験装置(1)。
【請求項10】
折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチ(6)を試験するための方法(16)であって、
前記距離センサテストベンチ(6)は、電磁波を使用して動作する距離センサ(2)を試験する試験装置(1)、ビーム偏向器(7)ならびに試験されるべき距離センサを取り付け器具に収容する保持および位置決め装置(8)を含み、
前記試験装置(1)は、受信エレメント(3)、放射エレメント(4)、遅延ユニット(5)、試験信号ユニット(9)および解析ユニット(10)を含み、前記受信エレメント(3)は、自由空間電磁波を受信信号(SRX)として受信するように機能し、前記放射エレメント(4)は、電磁出力信号(STX)を放射するように機能し、
シミュレーションモードにおいて、前記距離センサ(2)の試験中、前記受信信号(SRX)または前記受信信号(SRX)から導出された受信信号(S’RX)は、前記遅延ユニット(5)を介して設定可能な時間遅延(tdelay,set)を伴って供給され、したがって、遅延信号(Sdelay)は、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成され、
前記距離センサ(2)を試験するために、前記遅延信号(Sdelay)または前記遅延信号(Sdelay)から導出された信号(S’delay)は、前記放射エレメント(4)を介して出力信号(STX)として放射され、
試験モードにおいて、前記試験信号ユニット(9)は、試験信号(Stest)を生成し、前記試験信号(Stest)または前記試験信号(Stest)から導出された試験信号(S’test)は、前記放射エレメント(4)を介して出力信号(STX)として放射され、
前記試験モードにおいて、前記解析ユニット(10)は、出力信号(STX)としての前記試験信号(Stest)または前記導出された試験信号(S’test)の放射に同期して、前記受信信号(SRX)または前記導出された受信信号(S’RX)をその位相角(Phi)および/またはその振幅(A)について解析し、前記位相角(Phi)および/または前記振幅(A)の求められた値を記憶し、
前記遅延ユニット(5)、前記試験信号ユニット(9)および前記解析ユニット(10)は、ハウジング(13)に包含されており、前記ハウジング(13)は、前記距離センサテストベンチ(6)内に定置状態で配置されており、
前記受信エレメント(3)は、信号線路(14)を介して前記ハウジング(13)に接続されており、これにより前記試験装置の前記ハウジング(13)から離間させて位置決め可能であり、
前記距離センサテストベンチ(6)を試験する目的で、前記試験装置(1)の前記受信エレメント(3)は、前記保持および位置決め装置(8)の前記取り付け器具内に配置され、
複数の試験位置に対し、前記保持および位置決め装置(8)の前記取り付け器具内の前記受信エレメント(3)前方の平面において接近が行われ、
複数の試験位置のそれぞれにおいて少なくとも1回の試験動作が行われ、少なくとも位相角(Phi)および/または振幅(A)が求められ、求められた位相角(Phi)および/または振幅(A)の値が記憶される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を使用して動作する距離センサを試験する試験装置であって、自由空間電磁波を受信信号として受信する受信エレメントと、電磁出力信号を放射する放射エレメントと、を備えた、試験装置に関する。シミュレーションモードにおいて、受信信号またはこの受信信号から導出された受信信号が遅延ユニットを介して設定可能な時間遅延を伴って供給され、したがって、遅延信号が遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成され、遅延信号またはこの遅延信号から導出された遅延信号が、放射エレメントを介して出力信号として放射される。
【背景技術】
【0002】
距離センサを試験するための前述の試験装置は、特に自動車分野における、例えば制御ユニットの開発および制御ユニットの試験など、種々の技術分野および用途から知られている。これに関して、例えば国際公開第2020/165191号が参照される。別の用途の分野は、エンドオブラインテストベンチであり、すなわち、製造ラインの最後で製品(ここでは距離センサ)を試験するために使用される設備である。本事例は、電磁波を使用して動作する距離センサの試験に関する。自動車分野では、最も多く主として使用されるセンサはレーダーセンサである。ただし、基本的には、種々の周波数範囲の、例えば可視光の範囲の電磁波で動作する距離センサ、またはレーザー用途(例えばLIDAR)において長いコヒーレンス長を有する電磁波を放出する電磁放射源を使用して動作する距離センサを試験することも可能である。
【0003】
冒頭で説明した試験装置を使用して、試験されるべき距離センサまでの任意の仮想距離で対象物をシミュレートすることができる。ここで考察するタイプの距離センサの基本的な動作方式は、距離センサから放出された電磁波が距離センサの放射範囲内の対象物によって反射され、当該距離センサが反射された電磁波を受信し、この電磁波の伝搬時間から対象物までの距離を求めることにある。信号伝搬時間の算定は直接に行われないことが多いが、スマート信号分析によって、例えば連続波レーダーシステムにおいて周波数差を求めることによって行われる。しかし、ここでは、この詳細は重要ではない。
【0004】
よって、距離センサを試験するために、冒頭に説明した試験装置が距離センサの放射範囲内に位置し、距離センサが放出した自由空間波を受信し、当該受信信号をその遅延ユニットを介して設定された時間遅延に従って遅延させ、次いで、遅延された信号をその放射エレメントを介して試験されるべき距離センサに向かって戻り方向で放射し、これにより、距離センサに、設定された時間遅延に対応する距離だけ離間して配置されて対象物を感受させることができる。
【0005】
距離センサが自由空間へ電磁波を放出すると、放出された電磁波の波面は、距離センサからの距離が増大するにつれて平面状となる。最も単純なケースでは、波は球面波であり、その曲率半径は距離センサからの距離に比例して増大する。距離が大きい場合、得られる波面はほぼ完全に平面状となる。
【0006】
多くのアンテナアセンブリの試験ならびにここで考察している距離センサの試験において、大きな対象物距離がシミュレートされる場合、対応する遅延時間を観察するだけでなく、大きな対象物距離の特徴である平面状の波面で動作させることも重要である。例えば、多くの距離センサが複数の受信エレメントで動作するので、受信された自由空間波の平面性についての検査を行うことができる。ここで、複数の受信エレメントが比較的大きな時間遅延を伴って信号を受信したが、これらの信号が平面状の自由空間波と相関しない各受信エレメント間の位相差を伴っていた場合、このことは、誤った試験結果を生じさせ、または偶発的なエラー状態を引き起こす可能性がある。
【0007】
従来技術では、折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチを使用して、大きな対象物距離をシミュレートすることが知られている。これに関連して、球面状の自由空間波を平面状の波面を有する自由空間波へと再整形する放物線状ビーム偏向器を使用することが一般的である。この場合、このような距離センサテストベンチは、電磁波を使用して動作する距離センサを試験するための前述したタイプの試験装置と、ビーム偏向器と、試験されるべき距離センサを受容する保持および位置決め装置と、を有している。試験装置は、受信エレメントと放射エレメントと遅延ユニットとを有している。距離センサの試験中、距離センサは自由空間電磁波を放出し、この自由空間電磁波は、最初にビーム偏向器に当たり、試験装置に向かって反射され、その後、平面状の波面を有する。ビーム偏向器を介した光路の偏向によっても自由空間波の移動する距離は長くなるが、このことはさほど重要な効果とはならない。最も重要な効果は、平面状の波面の整形にある。前述したように、信号の伝搬時間は試験装置によって形成される。試験装置は、ビーム偏向器によって反射された自由空間波を受信し、これを遅延させ、ビーム偏向器に向かって戻り方向で放出する。ここでも自由空間波は球面状の波面を有しており、ビーム偏向器での反射の際に平面状の波面へと再整形される。その後、シミュレートされて遅延された反射信号が試験されるべき距離センサへと到達し、したがって、適切な機能についての検査を行うことができる。このような遠方界アンテナ測定システムは、コンパクトアンテナテストレンジ(CATR)とも称される。
【0008】
このような距離センサテストベンチの構成要素、すなわち試験装置、ビーム偏向器と、試験されるべき距離センサのための保持および位置決め装置と、は互いに正確に位置合わせされていなければならず、理想的な構成配置からの僅かな逸脱でさえ測定結果に歪みを生じさせて無効な測定結果をもたらす可能性がある。重要なのは、試験されるべき距離センサの直接前方の測定領域、すなわちいわゆる「クワイエットゾーン」、特に受信される自由空間波の伝搬方向に対して垂直な方向での直接前方の領域における波面の平面性が保証されているかどうかという問題である。このことを検証するために、距離センサテストベンチは、正確な調節および較正のために定期的に検査される。このために、試験装置、すなわち距離シミュレータと、適切な試験信号を生成することのできる能動の送信器と、の交換が必要である。また、通常設置される距離センサのクワイエットゾーンの波面を、すなわち到来する自由空間波の振幅および/または位相の測定によって測定することのできる測定装置は、通常試験されるべき距離センサの位置に配置されなければならない。このアプローチはきわめて複雑でありかつコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、技術的労力およびコストをほとんどかけることなく距離センサテストベンチの試験を可能にするデバイスおよび方法に関連するコンセプトを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した電磁波を使用して動作する距離センサの試験を行う試験装置では、前述した課題が、まず、試験モードにおいて、試験信号ユニットが試験信号を生成し、試験信号またはこの試験信号から導出された試験信号が放射エレメントを介して出力信号として放射され、解析ユニットが、出力信号としての試験信号または導出された試験信号の放射に同期して、受信信号または導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析し、試験モードにおける位相角および/または振幅の求められた値を記憶することにより、解決される。試験信号ユニットを実現することにより、試験信号を生成し、必要に応じて放射エレメントを介してこれを外部空間へ放射することができる。このことは、本発明の基礎を成す試験装置では不可能である。なぜなら、こうした試験装置は、適切な時間遅延を伴ってでないかぎり以前に受信した信号を放射できないからである。説明している手段によって、試験装置は、距離センサテストベンチの試験のために設置された位置に置いたままとすることができ、すなわち、試験装置を特別な送信器と交換する必要がなくなる。
【0011】
ここでのアイデアは、送信された試験信号またはこの試験信号から導出された試験信号が、距離センサテストベンチアセンブリにおいて反射され、試験装置によって受信されることである。したがって、この場合に試験装置によって受信される受信信号は、試験モードで送信されて反射された信号に対応する。当該受信信号または当該受信信号から導出された受信信号は、その位相角および/または振幅について解析ユニットにより解析可能である。解析は通常、基準信号に対して実行され、この基準信号は、例えば送信された試験信号であってよい。
【0012】
折り畳まれた光路を有する距離センサのテストベンチでは、全体としてV字状の光路が形成されるように、試験装置と試験されるべき距離センサ(または測定されるべきアンテナ)とが離間して配置されていることが多い。この場合、試験装置の好ましい実施形態は、有利には、遅延ユニット、試験信号ユニットおよび解析ユニットがハウジングに包含されており、受信エレメントが、信号線路を介してハウジングに接続されており、これにより試験装置のハウジングから離間させて位置決め可能であることを特徴とする。受信エレメントが信号線路を介してハウジングに接続されているという場合、このことは、当然ながら、さらなる電子信号処理の目的で、受信信号またはこの受信信号から導出された信号をハウジング内部へ伝送することを可能にする接続を意味する。この実施形態によれば、試験されるべき距離センサの設置位置に受信エレメントを配置することが可能であり、これにより、距離センサの試験位置において試験装置のみにより電磁波の平面性を試験することができる。試験装置自体は電磁波の平面性のいかなる解析も行う必要はなく、重要なのは、受信信号または導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析すること、ならびに試験装置自体においてさらなる解析を実際に行うために、または場合により例えば内部の受信波の平面性を解析するために適切なインタフェースを介して外部コンピュータへ測定値を伝送するために、試験装置において利用可能な対応する測定値を保持することである。
【0013】
試験装置の別の好ましい実施形態では、受信エレメントがミキサを有し、受信信号がミキサによってより低い中間周波数へダウンコンバートされることが提供される。このようにして受信信号から導出された低周波数受信信号は、信号ケーブルを介して、少なくともハウジングに収容された解析ユニットへ伝送される。この実施例では、「受信信号」なる用語と「受信信号から導出された受信信号」なる用語との間で区別が行われる理由が示される。受信信号そのものは、受信エレメントによって受け取られる自由空間波に由来する。受信信号がさらなる信号処理ユニット(すなわち、遅延ユニットまたは解析ユニット)の1つに渡される前にさらなる信号処理が実行される場合、厳密には、対象となる信号はもはや受信信号そのものではなく、受信信号から導出された受信信号となる。これは、前述した、受信信号がより低い中間周波数へダウンコンバートされる例示的な実施形態でのケースである。より低い中間周波数へのダウンコンバートの利点は、こうした低周波数信号の伝送によって、受信エレメントから信号線路を介して試験装置のハウジング内の別の電子ユニットへの伝送経路に課される要求が小さくなることである。
【0014】
ここでの説明では、試験信号ユニットによって生成された試験信号と、出力信号として放射され、試験信号から導出される潜在的な試験信号と、の区別も明確にする。したがって、試験信号が、ダウンコンバートされた中間周波数に対応する比較的低い周波数で生成され、放射エレメントを介して放射される前にミキサによってアップコンバートされることが提供されうる。
【0015】
前述したように、解析ユニットは、好ましくは、特に試験信号または導出された試験信号でありうる基準信号に対しての、受信信号の位相角または導出された受信信号の位相角を求める。
【0016】
試験装置の有利な実施形態は、解析ユニットが、出力信号として放射された試験信号または出力信号として放射された導出された試験信号に関する伝搬時間測定により、受信信号またはこの受信信号から導出された受信信号をその位相角について解析することを提供する。送信信号とこの送信信号に由来する反射された受信信号とのスマート解析によって、例えば周波数変調信号(チャープ信号)を試験信号として使用して送信信号と受信信号とを混合することで、伝搬時間情報を取得可能な種々の方法が公知であり、これにより、このようにして求められた周波数差から容易に伝搬時間情報を得ることができる。
【0017】
特に、試験信号または導出された試験信号は、パルス、パルス列、連続波信号、または周波数変調された連続波信号であることが提供される。
【0018】
試験装置の有利な改良形態は、解析ユニットが、複数の受信信号または複数の導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析し、位相角および/または振幅の複数の値を記憶することを特徴とする。実際の測定プロセスでは、試験モードにおける受信エレメントの位置が試験されるべき距離センサの設置位置に対応し、この位置を変化させることにより、位相角および/または振幅の複数の値が得られる。したがって、通常検査されるべき距離センサのクワイエットゾーンを、1つもしくは2つの位置変数の位置変動によって直線状にまたは2次元的に走査し測定することができる。測定点から測定点まで測定された位相角および/または振幅の偏差は、クワイエットゾーンにおける到来する波の平面性の尺度である。当該偏差によって、試験されるべき距離センサテストベンチが依然として精度要件を満たしているかどうか、または再較正が必要であるかどうかについての結論を引き出すことができる。測定された位相角および/または振幅の波面の平面性についての解析は試験装置において実行可能であるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0019】
有利な実施形態では、試験装置は通信インタフェースを有し、この通信インタフェースを介して外部コンピュータを試験装置に接続することができる。試験装置、特に試験装置の解析ユニットは、この場合、受信信号または導出された受信信号の位相角および/または振幅の少なくとも1つの値を、当該通信インタフェースを介して外部コンピュータへ伝送する。ここで、受信信号の位相角および/または振幅を解析することができ、波の平面性および距離センサテストベンチの種々の構成要素の位置合わせに関しての結論を引き出すことができる。
【0020】
前述した実施形態の有利な改良形態は、試験装置が、通信インタフェースを介して受信された外部要求に応答して試験信号を生成し、試験信号またはこの試験信号から導出された試験信号を、放射エレメントを介して出力信号として放射し、出力信号の放射に同期して、受信信号または導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析することを提供する。
【0021】
試験装置に関する上記の説明から、上述した目的が、折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチを試験するための方法であって、距離センサテストベンチが、電磁波を使用して動作する距離センサを試験する試験装置、ビーム偏向器、ならびに試験されるべき距離センサを取り付け器具に収容する保持および位置決め装置を含む方法によっても達成されることが理解される。試験装置は、受信エレメント、放射エレメント、遅延ユニット、試験信号ユニットおよび解析ユニットを含み、受信エレメントは自由空間電磁波を受信信号として受信するように機能し、放射エレメントは電磁出力信号を放射するように機能する。公知のシミュレーションモードにおいては、距離センサの試験中、受信信号またはこの受信信号から導出された受信信号が遅延ユニットを介して設定可能な時間遅延を伴って供給され、したがって、遅延信号は、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成される。距離センサを試験するために、遅延信号またはこの遅延信号から導出された信号が放射エレメントを介して出力信号として放射される。
【0022】
試験モードにおいては、試験信号ユニットが試験信号を生成し、試験信号またはこの試験信号から導出された試験信号が放射エレメントを介して出力信号として放射される。試験モードにおいては、解析ユニットが、出力信号としての試験信号または導出された試験信号の放射に同期して、受信信号または導出された受信信号をその位相角および/または振幅について解析する。求められた位相角および/または振幅の値は記憶される。
【0023】
さらに、デバイス設計に関して、遅延ユニット、試験信号ユニットおよび解析ユニットをハウジングに包含させることができ、ハウジングは、距離センサテストベンチ内に定置状態で配置されている。試験装置の受信エレメントは、信号線路を介してハウジングに接続されており、これにより試験装置のハウジングから離間させて位置決めすることができる。
【0024】
距離センサテストベンチを試験するために、試験装置の受信エレメントが保持および位置決め装置の取り付け器具に配置され、複数の試験位置に対し、保持および位置決め装置の取り付け器具の受信エレメント前方の軸線に沿ってまたはこの平面において、位置決め装置による接近が行われる。複数の試験位置のそれぞれにおいて少なくとも1回の試験動作が行われ、これにより複数の位相角および/または振幅が求められ、求められた位相角および/または振幅の値が、その位置座標、特に接近が行われた試験位置の位置座標と共に記憶される。受信エレメントの前方において接近が行われる試験位置が位置する軸線または平面は、理想的には、到来する波の予測進行方向に対して垂直に延在している。実際に試験されるべき距離センサの前方のクワイエットゾーンにおける波の平面性は、種々異なる位置において求められた位相角および/または振幅に基づいて推定することができる。波の平面性の算定は試験装置自体で行うことができるが、取得されたデータを、インタフェースを介して外部コンピュータへ伝送し、そこで解析してもよい。
【0025】
各独立請求項による、ここで説明している試験装置および試験方法は、改良され、種々の特定の手法で設計されうる。このことを、以下の図面の各図に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1a,bは、従来技術から公知の、折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチを概略的に示す図である。
【
図2】試験信号ユニットおよび解析ユニットを用いて、電磁波を使用して動作する距離センサを試験する試験装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図2と同様の試験装置を付加的なミキサと共に概略的に示す図である。
【
図4】信号線路を介して試験装置のハウジングに接続された受信エレメントを備えた、電磁波を使用して動作する距離センサを試験する試験装置を概略的に示す図である。
【
図5】受信エレメントおよび放射エレメントの双方が信号線路を介して試験装置のハウジングに接続されている別の試験装置を概略的に示す図である。
【
図6】折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチ内の試験装置と、距離センサテストベンチを試験するための方法と、を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
すべての図は、電磁波を使用して動作する距離センサ2を試験するための試験装置1を示しており、
図1a,bは従来技術から公知の試験装置1を示している。試験装置1の基本機能はシミュレーションモードであり、すべての試験装置1は、距離センサ2から離間されて位置決めされた対象物をシミュレートするように機能し、この離間した対象物が試験されるべき距離センサ2へとシミュレートされる。
【0028】
示されている試験装置1のすべてが、自由空間電磁波を受信信号SRXとして受信する受信エレメント3と電磁出力信号STXを放射する放射エレメント4とを有している。シミュレーションモードにおいて、受信信号SRXまたはこの受信信号SRXから導出された受信信号S’RXが遅延ユニット5を介して設定可能な時間遅延tdelay,setを伴って供給され、したがって、遅延信号Sdelayは、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成される。次いで、遅延信号Sdelayまたはこの遅延信号Sdelayから導出された遅延信号S’delayが放射エレメント4を介して出力信号STXとして放射される。
【0029】
図1a,bは、従来技術における公知の試験装置1の使用を示している。ここで、試験装置1は、折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチ6の一部である。距離センサテストベンチ6において、電磁波を使用して動作する距離センサ2を試験するための試験装置1が、ビーム偏向器7および試験されるべき距離センサ2を収容する保持および位置決め装置8と共に位置決めされている。
図1において、試験されるべき距離センサ2が(例えばエンドオブライン試験中に)湾曲した波面を有する電磁波を放出することを観察できる。ビーム偏向器7は放物線状であり、反射波を平面状の波面を有する波へと整形するように機能する。このことは、曲線および平行な線によってシンボル化されている。
【0030】
距離センサテストベンチ6のシミュレーションモードでは、試験装置1は、試験されるべき距離センサ2のセンシング領域内の任意の距離に離間して配置された対象物をシミュレートするように機能する。試験装置1は、受信エレメント3を介して、距離センサ2が放出した自由空間波S
RXを受信し、受信信号S
RXまたはこの受信信号S
RXから導出された受信信号S’
RXを遅延ユニット5へ供給する。遅延ユニット5では時間遅延t
delay,setを設定することができ、遅延ユニット5は、この場合、設定された遅延t
delay,setに従って受信信号S
RXまたは導出された受信信号S’
RXを遅延させる。当該遅延信号S
delayまたは当該遅延信号S
delayから導出された信号S’
delayは、放射エレメント4を介して出力信号S
TXとして、
図1bに示されているようにビーム偏向器7に向かって放射される。ここで重要なのは、試験装置1がこの場合も出力信号S
TXを湾曲した波面を有する自由空間波として放射することである。次いで、ビーム偏向器7が、このビーム偏向器7によって反射される自由空間波に反射後の平面状の波面を生じさせ、このことは当該方向において特に重要である。
【0031】
冒頭で既に説明したように、大きな対象物距離がシミュレートされる場合、シミュレートされた反射信号が遅延ユニット5によって適切に遅延されることが重要であるのみならず、シミュレートされた反射信号の波面が純粋に幾何学的な理由から遠方界の特性である平面状となることも重要である。特に、距離センサ2が複数の受信エレメント3を有する場合、隣接する受信エレメント3によって受信された波の位相角Phiを解析することができる。反射信号の時間遅延(ひいては当該時間遅延によって求められる対象物距離)に相関しない位相角差が検出された場合、これは、試験されるべき距離センサ2の誤った解釈またはさらにはエラー状態を生じさせる可能性がある。これが、特に当該伝搬方向においてビーム偏向器7によって前方に平面波を形成することが重要である理由である。
【0032】
図示の距離センサテストベンチ6の種々のエレメント間の相違が僅かであっても、結果として、波面が試験されるべき距離センサ2の直接前方の測定領域においてもはや平面状でなくなってしまう。すなわち、いわゆるクワイエットゾーンで波面それ自体が湾曲するかまたは所定の角度で入射してくることになる。
【0033】
図示の距離センサテストベンチ6の適切な機能を保証するために、距離センサテストベンチ6の較正が周期的なインターバルで再検査される。一般的には、このために、試験装置1および距離センサ2の双方がその各設置位置から取り外され、試験装置1の設置位置にある送信機と通常試験されるべき距離センサ2の設置位置にある対応する受信機とを含む、対応する試験装置に交換される。次いで、受信機が、自由空間電磁波の所望のまたは予測される入射方向に対して実質的に垂直な測定平面内で保持および位置決め装置8によって移動可能となり、その後、種々の位置において、到来する自由空間波の位相角と付加的にしばしば振幅とが検出され、これにより、到来する自由空間波の平面性が評価可能となる。受信機のクワイエットゾーンにおける到来する電磁波の平面性が要件を満たしていない場合、距離センサテストベンチ6の種々のエレメントの位置を補正しなければならない。
【0034】
シミュレーションモードにおける、保持および位置決め装置8に配置された試験されるべき距離センサ2の設置位置前方のクワイエットゾーンにおける平面状の波面についての前述した検査は、きわめて複雑でコストがかかる。
【0035】
図2~
図6に示されている試験装置1は、
図1~
図6に示されている試験されるべき距離センサテストベンチ6自体の試験、すなわち試験されるべき距離センサ2の設置位置前方のクワイエットゾーンに到来する波が平面状の位相波面を有するかどうかについての試験を可能にする。したがって、後述する試験装置1を使用すれば、距離センサテストベンチ6の設定を完全に変更する必要はない。むしろ、設定を僅かに変更するのみで十分である。
【0036】
図2~
図5は、距離センサテストベンチ6の較正の前述した検査を可能にする拡張機能を有する、適切に設計された試験装置1のみを示している。各試験装置1は、公知の遅延ユニット5に加えて、試験モードにおいて試験信号S
testを生成する試験信号ユニット9を有し、試験信号S
testまたはこの試験信号S
testから導出された試験信号S’
testが放射エレメント4を介して出力信号S
TXとして放射される。
【0037】
この措置によって、試験装置1は、その受信エレメント3を介して受信信号SRXを受信したかどうかにかかわらず、基本的に、試験装置1の放射エレメント4を介して、波の平面性の測定に適した試験信号を適用するために使用可能な試験信号Stestを、通常は試験されるべき距離センサ2の前方の空間に放射することができる。出力信号STXとしての試験信号Stestまたは導出された試験信号S’testの放射に同期して、解析ユニット10は、同期受信された受信信号SRXまたは導出された受信信号S’RXをその位相角Phiおよび/または振幅Aについて解析する。このことは、図では表記Phi(SRX/S’RX)およびA(SRX/S’RX)によって表されており、ここで、スラッシュは分数の除算線ではなく、代替を示す分離線として理解されたい。次いで、位相角Phiおよび/または振幅Aの求められた値が記憶される。当該試験装置1の実施形態は、基本的に(以前に測定された信号を使用するのみでなく)試験信号Stestを能動的に生成し、結果として生じる受信信号SRXをその位相角Phiおよび/またはその振幅Aについて解析することができ、この解析は、到来する自由空間波の平面性を求めるために不可欠である。
【0038】
図2~
図6では、種々の電子ユニット、すなわち、遅延ユニット5、試験信号ユニット9および解析ユニット10が、純粋に機能的な意味で理解されるべきボックス内に模式的に配置されている。ここで重要なのは、遅延ユニット5および解析ユニット10が、受信信号S
RXまたはこの受信信号S
RXから導出された信号S’
RXをそれぞれ受信することができ、遅延ユニット5および試験信号ユニット9が、相応に、放射エレメント4に接続された信号線路にアクセスして対応する信号を出力できることである。種々のユニットが共通のハードウェアユニット、例えば共通のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複数のハードウェアおよび機能ユニット(例えば、複数のFPGAまたは複数の信号プロセッサ)に実装されているか、または部分的にデジタルかつ部分的にアナログに、または完全にデジタルに実装されているかについての問いは、ここで提示している試験装置1にとって特に重要ではない。
【0039】
図3には、受信信号S
RXまたはこの受信信号から導出された受信信号S’
RXが遅延ユニット5に供給されることの意義が例示されている。受信エレメント3を介して自由空間波として受信された受信信号S
RXは、入力ミキサ11によってより低い中間周波数にダウンコンバートされ、したがって遅延ユニット5または解析ユニット10に供給される信号は、受信信号S
RXではなくダウンコンバージョンによって導出された受信信号S’
RXとなることが示されている。それぞれ、遅延信号S
delayおよびアップコンバートによってこの遅延信号S
delayから導出された遅延信号S’
delay、および出力信号S
TXとして放射される、解析ユニット10によって生成された試験信号S
testまたは出力ミキサ12によるアップコンバートによって導出された試験信号S’
testにも等価のことが当てはまる。これらの特定の実施形態の利点は、遅延ユニット5、試験信号ユニット9および解析ユニット10における信号処理の速度に課される要求が、例えば受信信号S
RXを直接に処理する必要がある場合または対応する高周波遅延信号S
delayもしくは試験信号S
testを直接に生成する必要がある場合に比べて小さくなることである。
【0040】
図2~
図6に示されている例示的な実施形態では、遅延ユニット5、試験信号ユニット9および解析ユニット10は、ハウジング13に包含されている。
図4~
図6では、受信エレメント3は信号線路14を介してハウジングに接続されており、これにより、受信エレメント3を試験装置1のハウジング13から離間させて位置決めすることができる。このことは、受信エレメント3が、テストされるべき距離センサ2が通常配置される距離センサテストベンチ6内の位置に、すなわちシミュレーションモードにおいてすなわち
図6に示されているような保持および位置決め装置8の取り付け器具内に、きわめて容易に移動可能となるという利点である。
【0041】
図2~
図6に示されている例示的な実施形態では、解析ユニット10は、それぞれ試験信号S
testまたは導出された試験信号S’
testである基準信号に対する、受信信号S
RXの位相角Phiまたは導出された受信信号S’
RXの位相角Phiを求める。したがって、先に紹介および説明した表記によれば、位相角Phiは送信信号および受信信号の関数であり、すなわちPhi(S
RX/S’
RX,S
test/S’
test)である。
【0042】
種々の例示的な実施形態に示されている試験信号ユニット9は、種々異なる試験信号Stestを、すなわちパルス、パルス列、連続波信号および周波数変調された連続波信号の形態で生成する。したがって、種々の例示的な実施形態では、解析ユニット10は、出力信号STXとして放射された試験信号Stestまたは出力信号STXとして放射された導出された試験信号S’testに関する伝搬時間測定によって、受信信号SRXまたは導出された受信信号S’RXを、それぞれ異なる手法で、すなわち位相検出器によってまたは直接に、位相角Phiに基づいて解析する。
【0043】
図2~
図6に示されている試験装置の解析ユニット10は、複数の受信信号S
RXまたは複数の導出された受信信号S’
RXをその位相角Phiおよび/または振幅Aについて解析し、当該位相角Phiおよび/または振幅Aの複数の値を記憶する。位相角Phiおよび/または振幅Aの複数の値を求めることは、試験モードでの受信エレメント3の位置が通常は変化するため有意である。これにより、シミュレーションモードで試験されるべき距離センサ2のクワイエットゾーンが、
図6に双方向矢印で示されているように、保持および位置決め装置8で1つもしくは2つの位置変数の位置変化により直線状にまたは2次元的に走査され測定される。測定点から測定点まで測定された位相角Phiおよび/または振幅Aの偏差は、クワイエットゾーンにおける到来波の平面性の尺度である。当該偏差によって、試験されるべき距離センサテストベンチ6が依然として精度要件を満たしているかどうかまたは再較正が必要であるかどうかに関しての結論を引き出すことができる。偏差は、試験装置1自体において求められうるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0044】
図5の試験装置1は通信インタフェース15を有し、この通信インタフェース15を介して、明示的に示されていない外部コンピュータに試験装置1を接続することができる。この場合、試験装置1またはより正確には解析ユニット10が、通信インタフェース15を介して受信信号S
RXまたは導出された受信信号S’
RXの位相角Phiおよび/または振幅Aの値を外部コンピュータへ伝送する。続いて、特に求められた複数の位相角および/または振幅が伝送されると、外部コンピュータが受信された波の平面性に関する解析を実行することができる。
【0045】
図5の試験装置1は、特に外部コンピュータから試験装置1への制御コマンドの伝送にも使用される。このため特に、試験装置1は、通信インタフェースを介して、試験信号ユニット9に試験信号S
testを生成させ、この試験信号S
testを(場合によっては導出された試験信号S’
testの形態で)放射エレメント4を介して出力信号S
TXとして放射させるという外部要求を特に受信することができる。出力信号S
TXの放射に同期して、解析ユニット10は、受信信号S
RXまたは導出された受信信号S’
RXをその位相角Phiおよび/または振幅Aについて解析する。受信信号S
RXは、送信された試験信号S
testによって生じたものである。
【0046】
図6は、折り畳まれた光路を有する距離センサテストベンチ6を示すだけでなく、この距離センサテストベンチ6を試験するための上述した方法16も示している。距離センサテストベンチ6は、電磁波を使用して動作する距離センサ2を試験するための試験装置1、ビーム偏向器7、ならびに試験されるべき距離センサ2を取り付け器具に収容するための保持および位置決め装置8を有している。前述したように、試験装置1は、受信エレメント3、放射エレメント4、遅延ユニット5、試験信号ユニット9および解析ユニット10を備えており、受信エレメント3は自由空間電磁波を受信信号S
RXとして受信する機能を有しており、放射エレメント4は電磁出力信号S
TXを放射する機能を有している。シミュレーションモードでは、受信信号S
RXまたはこの受信信号S
RXから導出された受信信号S’
RXが、遅延ユニット5を介して距離センサ2の試験中に設定可能な時間遅延t
delay,setを伴って供給され、したがって、遅延信号S
delayは、遅延された状態でシミュレートされた反射信号として形成される。距離センサ(2)を試験するために、遅延信号S
delayまたはこの遅延信号S
delayから導出された信号S’
delayが放射エレメント(4)を介して出力信号(S
TX)として放射される。
【0047】
実際の関心対象である試験モードでは、試験信号ユニット9が試験信号Stestを生成し、試験信号Stestまたはこの試験信号Stestから導出された試験信号S’testが放射エレメント4を介して出力信号STXとして放射される。出力信号STXとしての試験信号Stestまたは導出された試験信号S’testの放射に同期して、解析ユニット10が、受信信号SRXまたは導出された受信信号S’RXをその位相角Phiおよび/または振幅について解析する。同期解析とは、試験信号の送信と受信信号の解析とが時間的に相関して行われることを意味する。なぜなら、受信信号は通常送信されて反射された試験信号であるからである。例えば、パルスの伝搬時間が求められる場合、送信と解析とが同期されて、一方が他方よりも僅かに時間的に後に行われる。周波数変調された連続波信号が試験信号として用いられる場合、2つの信号が共に混合されるので、実際には信号の送信と受信信号の解析とが時間的に重複して行われる。いずれの場合にも、次いで求められる位相角Phiおよび/または振幅Aの値が記憶されるが、ここでの記憶は、情報技術の観点から解析ユニット10において当該計算結果が何らかの形式で利用可能でなければならないため、必須である。
【0048】
遅延ユニット5、試験信号ユニット9および解析ユニット10は、
図6の例示的な実施形態を含む例示的な実施形態では、ハウジング13に包含されている。試験装置1およびそのハウジング13は、距離センサテストベンチ6内に定置状態で配置されている。受信エレメント3は信号線路14を介してハウジング13に接続されているので、試験装置1のハウジング13から離間させて位置決め可能である。これにより、試験装置1の受信エレメント3は、距離センサテストベンチ6を試験する目的で、保持および位置決め装置8の取り付け器具内に配置可能となる。複数の試験位置に対し、保持および位置決め装置8の取り付け器具内に配置された受信エレメント3の前方の平面において接近が行われる。このために、保持および位置決め装置8は、特に自身の取り付け器具のまたは自身全体の正確な空間的位置決めを可能にする適切なアクチュエータを有している。
【0049】
複数の試験位置のそれぞれにおいて少なくとも1回の試験動作が行われ、それぞれの場合において少なくとも位相角Phiおよび/または振幅Aが求められ、求められた位相角Phiおよび/または振幅Aの値が記憶される。
【0050】
したがって、シミュレーションモードのためにいずれにせよ必要とされる技術的手段を超える付加的な装置特徴を幾つか設けるのみで、方法16は、距離センサテストベンチ6での試験を可能にし、すなわち試験されるべき距離センサ2の設置位置の前方の平面内に平面状の波面が生じるように依然として較正されているかどうかを検査することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 試験装置
2 距離センサ
3 受信エレメント
4 放射エレメント
5 遅延ユニット
6 距離センサテストベンチ
7 ビーム偏向器
8 保持および位置決め装置
9 試験信号ユニット
10 解析ユニット
11 入力ミキサ
12 出力ミキサ
13 ハウジング
14 信号線路
15 通信インタフェース
16 方法
SRX,S’RX 受信信号、導出された受信信号
STX,S’TX 出力信号、導出された出力信号
tdelay,set 設定された時間遅延
Sdelay,S’delay 遅延信号、導出された遅延信号
Stest,S’test 試験信号、導出された試験信号
Phi 位相角
A 振幅
【外国語明細書】