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特開2023-2493オゾン検知用インキ組成物、オゾンインジケーター、及び印刷物
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  • 特開-オゾン検知用インキ組成物、オゾンインジケーター、及び印刷物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002493
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】オゾン検知用インキ組成物、オゾンインジケーター、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20221227BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221227BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20221227BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20221227BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C09D11/02
C09B67/20 F
G01N31/00 L
G01N31/22 121C
G01N21/78 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100080
(22)【出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021102869
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 あゆみ
【テーマコード(参考)】
2G042
2G054
4J039
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA07
2G042BB10
2G042CB01
2G042DA08
2G042FA11
2G042FC06
2G054AA01
2G054CA08
2G054CE02
2G054EA06
2G054GE06
4J039AB02
4J039AE02
4J039BA21
4J039BE02
4J039BE12
4J039EA21
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】過酸化水素ガスによる変色が抑えられたオゾン検知用インキ組成物及びオゾンインジケーターを提供すること。
【解決手段】 変色色素、溶剤、及び変色促進剤を含むオゾン検知用インキ組成物であって、
さらに、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする、オゾン検知用インキ組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色色素、溶剤、及び変色促進剤を含むオゾン検知用インキ組成物であって、
さらに、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする、オゾン検知用インキ組成物。
【請求項2】
前記変色促進剤は疎水性シリカを含む、請求項1に記載のオゾン検知用インキ組成物。
【請求項3】
前記オゾン検知用インキ組成物100質量%中における前記アルキルフェノール樹脂、前記テルペンフェノール樹脂及び前記ニトロセルロースの総量が0.01~15質量%である、請求項1又は2に記載のオゾン検知用インキ組成物。
【請求項4】
さらに非変色色素を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のオゾン検知用インキ組成物。
【請求項5】
基材上に、請求項1~4の何れか1項に記載のオゾン検知用インキ組成物を含む変色層を有するオゾンインジケーター。
【請求項6】
さらに非変色層を有する、請求項5に記載のオゾンインジケーター。
【請求項7】
さらにオーバーコート層を有する、請求項5又は6に記載のオゾンインジケーター。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項に記載のオゾン検知用インキ組成物を含む印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン検知用インキ組成物、オゾンインジケーター、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは優れた殺菌効果を有しており、器具類等の殺菌若しくは消毒、又は病院の手術室のような特殊な雰囲気中における殺菌、消毒、若しくは消臭に利用されている。一方で、オゾンは毒性が極めて高いために人体への影響が懸念されることから、使用する濃度には限界がある。また、光化学スモッグ予報においては、大気中のオキシダント濃度が重要な要素となる。
【0003】
このため、オゾン濃度をモニターするために、その検知方法が種々開発されており、特許文献1では、簡便にオゾンの存在を検知可能な手段として、オゾンインジケーターが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のオゾンインジケーターは、オゾンガス同様に滅菌に使用される過酸化水素ガスに対しても反応して変色するという課題がある。したがって、特許文献1に開示されるオゾンインジケーターでは、オゾンガスによる滅菌が行われていなくとも、仮に過酸化水素ガスが存在していればオゾンガスによる滅菌が実施されたと誤認される懸念がある。また、オゾンガス及び過酸化水素ガスの双方のガスによるそれぞれの滅菌工程を備える滅菌装置では、どちらのガスにより変色したのか判別することができない。
【0005】
このように、オゾンガスによる滅菌操作の実施をより正確に判断できるオゾンインジケーターが切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3856411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、過酸化水素ガスによる変色が抑えられたオゾン検知用インキ組成物及びオゾンインジケーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される少なくとも一種を含むオゾン検知用インキ組成物とすることで、過酸化水素ガスによる変色を抑制できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下のオゾン検知用インキ組成物、オゾンインジケーター、及び印刷物を提供する。
項1.
変色色素、溶剤、及び変色促進剤を含むオゾン検知用インキ組成物であって、
さらに、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする、オゾン検知用インキ組成物。
項2.
前記変色促進剤は疎水性シリカを含む、項1に記載のオゾン検知用インキ組成物。
項3.
前記オゾン検知用インキ組成物100質量%中における前記アルキルフェノール樹脂、前記テルペンフェノール樹脂及び前記ニトロセルロースの総量が0.01~15質量%である、項1又は2に記載のオゾン検知用インキ組成物。
項4.
さらに非変色色素を含む、項1~3の何れかに記載のオゾン検知用インキ組成物。
項5.
基材上に、項1~4の何れかに記載のオゾン検知用インキ組成物を含む変色層を有するオゾンインジケーター。
項6.
さらに非変色層を有する、項5に記載のオゾンインジケーター。
項7.
さらにオーバーコート層を有する、項5又は6に記載のオゾンインジケーター。
項8.
項1~4の何れかに記載のオゾン検知用インキ組成物を含む印刷層を有する印刷物。
【発明の効果】
【0010】
以上にしてなる本発明に係るオゾン検知用インキ組成物又はオゾンインジケーターは、過酸化水素による変色が抑えられ、オゾンガスをより選択的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)変色層の保護構造の実施態様の概略断面図。(b)(c)変色層の保護構造の実施態様を上から見た概略図。
図2】(a)変色層の保護構造のその他の実施態様の概略断面図。(b)変色層の保護構造のその他の実施態様を上から見た概略図。
図3】ハーフカットを有する実施態様の説明図。
図4】ハーフカットを有するその他の実施態様の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.オゾン検知用インキ組成物)
本発明のオゾン検知用インキ組成物は、変色色素、溶剤、及び変色促進剤を含む。また、本発明のオゾン検知用インキ組成物は、上記に加えてアルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0013】
(1.1.変色色素)
変色色素としては、オゾン検知用インキ組成物に採用される公知の色素を広く使用することができ、特に限定はない。具体的には、メチン系、アントラキノン系、オキサジン系、アゾ系、チアジン系、及びトリアリールメタン系の色素を使用することができる。これらは一種のみを単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。但し、これらの中でも、メチン系色素を使用することが好ましい。
【0014】
メチン系色素としては、メチン基を有する色素であればよい。従って、本発明において、ポリメチン系色素、シアニン系色素等もメチン系色素に包含される。これらは、公知又は市販のメチン系色素から適宜採用することができる。具体的には、C.I.Basic Red 12、C.I.Basic Red 13、C.I.Basic Red 14、C.I.Basic Red 15、C.I.Basic Red 27、C.I.Basic Red 35、C.I.Basic Red 36、C.I.Basic Red 37、C.I.Basic Red 45、C.I.Basic Red 48、C.I.Basic Yellow 11、C.I.Basic Yellow 12、C.I.Basic Yellow 13、C.I.Basic Yellow 14、C.I.Basic Yellow 21、C.I.Basic Yellow 22、C.I.Basic Yellow 23、C.I.Basic Yellow 24、C.I.Basic Violet 7、C.I.Basic Violet 15、C.I.Basic Violet 16、C.I.Basic Violet 20、C.I.Basic Violet 21、C.I.Basic Violet 39、C.I.Basic Blue 62、C.I.Basic Blue 63等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0015】
アントラキノン系色素としては、アントラキノンを基本骨格とするものであれば限定的でなく、公知のアントラキノン系分散染料等も使用できる。特にアミノ基を有するアントラキノン系色素が好ましい。より好ましくは、第一アミノ基及び第二アミノ基の少なくとも1種のアミノ基を有するアントラキノン系色素である。この場合、各アミノ基は、2以上有していてもよく、これらは互いに同種又は相異なってもよい。
【0016】
より具体的には、例えば1,4-ジアミノアントラキノン(C.I.Disperse Violet 1)、1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-メチルアミノアントラキノン(C.I.Disperse Red 4)、1-アミノ-4-メチルアミノアントラキノン(C.I.Disperse Violet 4)、1,4-ジアミノ-2-メトキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 11)、1-アミノ-2-メチルアントラキノン(C.I.Disperse Orange 11)、1-アミノ-4-ヒドロキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 15)、1,4,5,8-テトラアミノアントラキノン(C.I.Disperse Blue 1)、1,4-ジアミノ-5-ニトロアントラキノン(C.I.Disperse Violet 8)等を挙げることができる(カッコ内はカラーインデックス名)。
【0017】
その他にもC.I.Solvent Blue 14、C.I.Solvent Blue 35、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Red 52、C.I.Solvent Red 114、C.I.Vat Blue 21、C.I.Vat Blue 30、C.I.Vat Violet 15、C.I.Vat Violet 17、C.I.Vat Red 19、C.I.Vat Red 28、C.I.Acid Blue 23、C.I.Acid Blue 80、C.I.Acid Violet 43、C.I.Acid Violet 48、C.I.Acid Red 81、C.I.Acid Red 83、C.I.Reactive Blue 4、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Disperse Blue 7等として知られている色素も使用することができる。
【0018】
オキサジン系色素としては、下記式(I)~(III)の少なくとも1つのオキサジン環を有するものであれば特に限定されない。例えば、オキサジン環を1つ有するモノオキサジン系色素、オキサジン環を2つ有するジオキサジン系色素等も包含される。
【0019】
【化1】
【0020】
また、かかるオキサジン系色素として、助色団として少なくとも1つの置換又は未置換のアミノ基を有する塩基性染料、置換基としてさらにOH基、COOH基等を有するクロム媒染色素等の何れも使用することができる。
【0021】
これらのオキサジン系染料は、1種又は2種以上で使用することができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。より具体的には、カラーインデックス名で表記すれば、C.I. Basic Blue 3、C.I. Basic Blue 12、C.I. Basic Blue 6、C.I. BasicBlue 10、C.I. Basic Blue 96等のオキサジン系色素を用いることが望ましい。特に、C.I. Basic Blue 3等がより望ましい。
【0022】
アゾ系色素としては、発色団としてアゾ基-N=N-を有するものであれば限定されない。例えば、モノアゾ色素、ポリアゾ色素、金属錯塩アゾ色素、スチルベンアゾ色素、チアゾールアゾ色素等が挙げられる。より具体的にカラーインデックス名で表記すれば、C.I.Solvent Red 1、C.I.Solvent Red 3、C.I.Solvent Red 23、C.I.Disperse Red 13、C.I.Disperse Red 52、C.I.Disperse Violet 24、C.I.Disperse Blue 44、C.I.Disperse Red 58、C.I.Disperse Red 88、C.I.Disperse Yellow 23、C.I.Disperse Orange 1、C.I.DisperseOrange 5、C.I.Solvent Red 167:1等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0023】
チアジン系色素としては、特に限定されることなく、公知又は市販のものから選ぶことができる。例えば、C.I.Basic Blue 9、C.I.Basic Blue 25、C.I.Basic Blue 24、C.I.Basic Blue 17、C.I.Basic Green 5、C.I.Solvent Blue 8等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0024】
トリアリールメタン系色素としても特に限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、C.I.Basic Blue 1、C.I.Basic Blue 26、C.I.Basic Blue 5、C.I.Basic Blue 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Violet 12、C.I.Basic Violet 14、C.I.Basic Violet 3、C.I.Solvent Green 15、C.I.Solvent Violet 8等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらトリアリールメタン系染料の中でも、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Blue 1等を好適に用いることができる。
【0025】
本発明のオゾン検知用インキ組成物中における変色色素の含有量は、当該組成物100質量%中に0.01~10質量%とすることが好ましく、0.01~5質量%とすることがより好ましい。変色色素の含有量を0.01質量%以上とすることにより、オゾンへの曝露によるインジケーターの変色を確認しやすくなる。
【0026】
(1.2.溶剤)
溶剤としては、上記色素及びバインダー樹脂等を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール又は多価アルコール系、エーテル系、ケトン系及びグリコールエーテル系等の各種溶剤が挙げられる。これら溶剤は、使用する変色色素、非変色色素、変色促進剤及び油溶性樹脂の溶解性等に応じて適宜選択すれば良く、また、適度な乾燥速度を有するものが好ましい。上記溶剤としては、水、アルコール、グリコールエーテル系溶剤等が好ましく、グリコールエーテル系溶剤が特に好ましい。上記溶剤は1種又は2種以上で使用することができる。
【0027】
溶剤の含有量は、用いる変色色素、非変色色素、変色促進剤及び油溶性樹脂の種類等に応じて適宜決定でき、特に限定されず、オゾン検知用インキ組成物100質量%中、30~99質量%とすることが好ましく、40~95質量%とすることがより好ましい。溶剤の含有量を30質量%~99質量%以下とすることにより、適切な粘度の組成物を得ることができ、当該組成物の良好な印刷性が得られる。なお、組成物全体における各成分の固形分の合計量は、組成物全体から当該溶剤の合計量を除いた量となる。つまり、組成物全体における各成分の固形分の合計量は、本発明の組成物100質量%中、1~70質量%とすることが好ましく、5~60質量%とすることがより好ましい。
【0028】
(1.3.変色促進剤)
変色促進剤としては、界面活性剤(ノニオン系界面活性剤及び/又はカチオン系界面活性剤)、及び酸素含有添加剤等を例示することができる。かかる変色促進剤としては、例えば特開2015-205995号公報に開示されるものを使用することが可能であり、特に限定はない。
【0029】
但し、本発明のオゾン検知用インキ組成物に使用する変色促進剤としては、オゾンに曝露されることによる変色促進作用を有するものが好ましく、疎水性シリカを使用することが特に好ましい。
【0030】
疎水性シリカとしては公知のものを広く使用可能であり、特に限定はない。また、疎水性シリカには、シリカ粉末を疎水化剤で疎水化処理した疎水性シリカが含まれるものとする。
【0031】
上記疎水化剤としては、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーン樹脂、ハロシラン、シラザン及びアルコキシシラン等を使用することができる。
【0032】
疎水性シリカは、市場から入手される汎用品も好適に使用可能であり、たとえば、商品名として、Nipsil(登録商標)SS-10、SS-40、SS-50及びSS-100(東ソー・シリカ株式会社)、AEROSIL(登録商標) R972、RX200及びRY200( 日本アエロジル株式会社)、SIPERNAT(登録商標) D10、D13及びD17(エボニックジャパン株式会社)、TS-530、TS-610、TS-720(キャボットカーボン社)、AEROSIL R202、R805及びR812(エボニックジャパン株式会社)、REOLOSIL(登録商標) MT-10、DM-10、及びDM-20S(株式会社トクヤマ)、並びにSYLOPHOBIC(登録商標) 100、702、505及び603(富士シリシア化学株式会社)等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理をされている疎水性シリカを使用することが好ましい。その中でも特に、ジメチルジクロロシランで疎水化処理されている疎水性シリカを使用することがより好ましい。
【0034】
前記疎水性シリカの非表面積としては、30~200 m/gのものが好ましく、70~150 m/gのものがより好ましい。上記した疎水性シリカは、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0035】
かかる変色促進剤の使用量としては、本発明のオゾン検知用インキ組成物100質量%中に0.1~30質量%とすることが好ましく、1.0~20質量%とすることがより好ましい。組成物100質量%中に、変色促進剤を0.1質量%以上使用することにより、オゾンの検知感度を向上させることができる。また、本発明の組成物を基材に印刷する際の、基材への良好な定着性を得るために、組成物100質量%中の変色促進剤の含有量を30質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
(1.4.アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロース)
本発明の組成物は、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂又はニトロセルロースを含む。本発明者は、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースは、過酸化水素ガスによるオゾン検知用インキ組成物の変色を抑制する作用を有していることを見出した。アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂又はニトロセルロースを含まない場合、過酸化水素ガスによる変色が進行してしまう。
【0037】
アルキルフェノール樹脂としては、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、「タマノル1010R」、「タマノル100S」、「タマノル200N」「タマノル510」、「タマノル521」「タマノル526」「タマノル586」「タマノル7509」(以上、荒川化学工業株式会社)、「PR2500」「PR1501」「PR1140」(以上昭和電工マテリアルズ株式会社)等を例示することができる。これらは、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
但し、上記した中でも、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、さらに好ましくは、軟化点が75~145℃のノボラック型アルキルフェノール樹脂を採用することにより、過酸化水素ガスによる変色を顕著に抑制することができる。かかるアルキルフェノール樹脂として、「タマノル100S」、「タマノル200N」、「タマノル510」、「タマノル7509」を例示できる。
【0039】
テルペンフェノール樹脂としても、公知の樹脂を広く使用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、「タマノル803L」「タマノル901」(以上、荒川化学工業株式会社)、「YP-90」、「YP-90L」、「YSポリスターS145」、「YSポリスター#2100」、「YSポリスター#2115」、「YSポリスター#2130」、「YSポリスターT80」、「YSポリスターT100」、「YSポリスターT115」、「YSポリスターT130」、「YSポリスターT145」、「マイティエースG125」、「マイティエースG150」(以上、ヤスハラケミカル株式会社)を例示することができる。これらは一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0040】
また、ニトロセルロースとしては、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。但し、JIS-K6703(1995)に明示される、窒素分L、Hと記号とを組み合わせて分類されるニトロセルロースの中で、H1/2、H1/4、H1/8、L1/8、L1/4、又はL1/2を使用することが好ましい、H1/2のニトロセルロースとして、より具体的には、KCNC社製のRS1/2などを例示することができる。これらは、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースについては、何れか一種のみを使用してもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、ノボラック型アルキルフェノール樹脂又はテルペンフェノール樹脂を使用すれば、耐熱性に優れた組成物を得ることができる。アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂及びニトロセルロースの使用量は、一種のみを単独で使用する場合であっても、複数種を併用する場合であっても、本発明の組成物100質量%中に総量で0.01~15質量%とすることが好ましく、1.0~10.0質量%とすることがより好ましい。
【0042】
(1.5.バインダー樹脂)
本発明の組成物は、必要に応じてバインダー樹脂を含むことも好ましい。バインダー樹脂としては、例えば、筆記用、印刷用等のインキ組成物に用いられている公知の樹脂を幅広く採用できる。例えば、マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース系樹脂(但し、ニトロセルロース系樹脂は除外する。)、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂(但し、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂は除外する。)、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルイミダゾール樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、アミノ樹脂等を挙げることができる。これらは、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0043】
バインダー樹脂の含有量は、使用するバインダー樹脂の種類、用いる変色色素の種類等に応じて適宜決定できるが、一般的にはオゾン検知用インキ組成物100質量%中0.5~50質量%程度とすることが好ましく、1~35質量%程度とすることがより好ましく、1~20質量%とすることがさらに好ましい。バインダー樹脂が0.5質量%以上含まれることにより、本発明のインキ組成物を印刷する際に、十分な定着性を得ることができる。また、バインダー樹脂量を50質量%以下とすることにより、組成物の粘度が過度となることなく、良好な取扱性を得ることができる。
【0044】
(1.6.非変色色素)
本発明の組成物は、さらに非変色色素を含むことができる。
【0045】
本明細書において、非変色色素とは、オゾンにより退色したり無色化したり、色相、明度の変化などを全く又は殆ど起こさない色素であると定義される。非変色色素としては、特に限定されず、例えば顔料、染料等が挙げられる。顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、キナクリドン系等の顔料が挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系、キノン系、シアニン系、フタロシアニン系、インジゴ系等の染料が挙げられる。中でもフタロシアニン系色素を使用することが好ましい。変色後の視認性の観点から、変色色素の補色を選択することが好ましい。当該非変色色素は、1種又は2種以上で使用することができる。
【0046】
非変色色素を含む場合、組成物中では変色色素と非変色色素が一様に混合している状態になるため、組成物は無色ではなくなる。例えば、組成物中の変色色素が青色、非変色色素が黄色の場合は、この組成物を用いたインジケーターは、初期色が緑色で経時的に黄色に変化していく。また、非変色色素を含む場合、インジケーターの変色後の色としては、非変色色素の色を呈していることが好ましい。
【0047】
非変色色素を添加する場合、非変色色素の10質量%程度の分散体を使うことがある。視認性向上の観点から、本発明のオゾン検知用インキ組成物100質量%中、非変色色素の含有量は0.5~30質量%とすることが好ましく、0.5~15質量%とすることがより好ましい。
【0048】
(1.7.添加剤)
本発明の組成物は、その効果又は目的を害しない範囲内で、さらに、任意に添加剤を含んでもよい。添加剤としては、特に限定されず、例えば、レベリング剤、増粘剤、分散剤等が挙げられる。
【0049】
レベリング剤としては、特に限定されず、例えばシリコーンオイル等が挙げられる。
【0050】
増粘剤としては、本発明の組成物に増粘効果を付与するとともに塗布性を向上させることができるものが好ましい。増粘剤としては、例えば、珪酸塩鉱物及び珪酸塩合成物等があげられる。
【0051】
分散剤としては、特に限定されず、例えば、高分子分散剤(例えば、ソルスパース41000、ソルスパース45000、ソルスパース54000、ソルスパース66000(以上ルーブリゾール社製))、界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
上記各種添加剤を添加する場合、その合計含有量は特に限定されないが、本発明のオゾン検知用インキ組成物100質量%中、0.01~10質量%とすることが好ましく、0.01~5質量%とすることがより好ましい。
【0053】
(2.オゾン検知用インキ組成物の製造方法)
本発明の組成物の調製方法としては、特に限定されず、例えば、上記各成分を公知の方法により混合、撹拌することにより調製することができる。
【0054】
(3.オゾンインジケーター)
本発明は、さらにオゾンへの曝露を検知するための、オゾンインジケーターに係る発明を包含する。当該インジケーターは、基材及びオゾン検知用インキ組成物を含む変色層を有し、さらに任意で非変色層、オーバーコート層、粘着層、変色層保護構造を有する。
【0055】
(3.1.基材)
基材としては、変色層を形成及び支持できるものであれば特に制限されない。例えば、金属又は合金材料(アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、ブリキ箔、錫箔等)、プラスチックス(ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等の各種ポリエステル)、セロファン、アセチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩酸ゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニル、ポリアミド、ポリフッ化エチレン等のフィルム又は成形体)、繊維類(紙、木質材料、不織布、織布、その他の繊維シート)、無機材料(セラミックス、ガラス、コンクリート、石膏類)、これらの複合材料等を用いることができる。基材のサイズ(縦・横のサイズ、厚さ等)は、インジケーターの種類に応じて適宜設定することができる。
【0056】
(3.2.変色層)
変色層は、本発明の組成物から形成される。当該形成方法としては、例えば、基材上に本発明の組成物の塗膜を形成する方法等が挙げられる。具体的には、本発明組成物を基材上に塗布後、乾燥させることにより、変色層を形成することが好ましい。
【0057】
本発明の組成物を基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート等の公知の塗布方法;シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法等を用いることができる。本発明において、塗布には、塗布以外の印刷、浸漬等の概念も含まれている。
【0058】
本発明の組成物を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。乾燥温度は特に限定されず、60~100℃程度が好ましい。
【0059】
なお、当該変色層は、本発明組成物を基材上に塗布後、乾燥させること等により形成されるため、変色層中には組成物由来の溶剤や溶媒は、全く又は殆ど存在しない。本発明のインジケーターにおける変色層の厚さは、特に限定されず、視認性、印刷物の取扱いの観点から、500nm~2mm程度とすることが好ましく、1~100μm程度とすることがより好ましい。
【0060】
(3.3.非変色層)
本発明のインジケーターは、変色層の視認性を高めるために、下地層として変色しない非変色層を有することもできる。非変色層としては、変色層でのオゾンと変色色素の反応に影響を及ぼさなければ特に限定されず、顔料及び/又は染料を含む組成物により形成することができる。
【0061】
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、キナクリドン系等の顔料が挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系、キノン系、シアニン系、フタロシアニン系、インジゴ系等の染料が挙げられる。
【0062】
非変色層用の組成物は、油溶性樹脂、増量剤、溶剤等を必要に応じて含むことができる。油溶性樹脂、増量剤、溶剤としては、上述と同様のもの等が挙げられ、それぞれ1種又は2種以上で用いることができる。
【0063】
非変色層を形成する方法としては、特に限定されず、上記変色層と同様の公知の塗布方法、印刷方法等を用いることができる。また、非変色層の厚さは、インジケーターの種類に応じて適宜設定することができる。
【0064】
本発明では、変色層と非変色層とをどのように組み合わせてもよい。例えば、変色層の変色により初めて変色層と非変色層の色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成したり、あるいは、変色によって初めて変色層及び非変色層との色差が消滅したりするように形成することもできる。本発明では、特に変色によって初めて変色層と非変色層との色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成することが好ましい。
【0065】
色差を識別できるようにする場合には、例えば変色層の変色により初めて文字、図柄及び記号の少なくとも一種が現れるように変色層及び非変色層を形成すればよい。本発明では、文字、図柄及び記号は、変色を知らせる全ての情報を包含する。これらの文字等は、使用目的等に応じて適宜デザインすればよい。
【0066】
また、変色前における変色層と非変色層とを互いに異なる色としてもよい。または、両者を実質的に同じ色とし、変色後に初めて変色層と非変色層との色差(コントラスト)が識別できるようにしても良い。
【0067】
本発明において、層構成の好ましい態様としては、例えば、(i)変色層が、基材の少なくとも一方の主面上に隣接して形成されているインジケーター、(ii)基材上に、前記非変色層及び前記変色層が順に形成されており、前記非変色層が前記基材の主面上に隣接して形成されており、前記変色層が前記非変色層の主面上に隣接して形成されているインジケーター、が挙げられる。
【0068】
(3.4.オーバーコート層)
本発明のインジケーターは、必要に応じて、オーバーコート層を有していてもよい。当該オーバーコート層は、インジケーターの最外層に配置される。そのため、基材上に変色層のみを有する場合、基材上に変色層と非変色層を有する場合のいずれにおいても(例えば上記(i)、(ii)の層構成)、変色層に隣接してオーバーコート層が形成されて、インジケーターの最外層に配置される。当該オーバーコート層を有することにより、インジケーターの変色層が外気に直接接触するのを抑制して、インジケーターの変色感度を制御(変色速度をさらに抑制)することができる。また、オーバーコート層の形成により変色層の塗膜強度を高めることもできる。
【0069】
オーバーコート層としては、樹脂を含む組成物により形成することができる。当該樹脂としては、特に限定されないが、例えば上記油溶性樹脂と同様のもの等が挙げられ、1種又は2種以上で用いることができる。また、オーバーコート層の厚さは、特に限定されず、印刷物の取扱いの観点から、500nm~2mm程度が好ましく、1~100μm程度がより好ましい。
【0070】
オーバーコート層用の組成物は、溶剤等を必要に応じて含むことができる。例えば、上記樹脂は、溶剤に溶解して使用することができる。溶剤としては、上述と同様のもの等が挙げられ、1種又は2種以上で用いることができる。
【0071】
オーバーコート層を形成する方法としては、特に限定されず、上記変色層と同様の公知の塗布方法、印刷方法等を用いることができる。
【0072】
(3.5.粘着層)
本発明のインジケーターは、必要に応じて、基材裏面(変色層形成面とは逆面)に粘着層を有していてもよい。基材裏面に粘着層を有することにより、本発明のインジケーターを対象物に確実に固定することができる。
【0073】
粘着層の成分としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。また、粘着層の厚さは、インジケーターの種類に応じて適宜設定することができる。
【0074】
(3.6.変色層保護構造)
上記した変色層の耐擦過性は、必ずしも高くないため、例えばインジケーターの保存時にインジケーター同士を重ね合わせる際、摩擦により変色層が損傷することがある。かかる変色層の損傷を避けるため、変色層保護構造を設けることも好ましい。
【0075】
かかる保護構造の第一の実施態様としては、例えば図1にあるような、変色層12の周囲を1点(図1(b))もしくは複数点(図1(c))で囲うように、変色層の厚み以上の高さ(変色層の厚みを100%とした時に、100%以上であることが好ましい。後述する保護フィルムを設けない場合には101%以上であることが好ましい。)の凸構造11aを設け、さらに当該凸構造11aに接着させて変色層12を覆うように保護フィルム14を設けることが好ましい。また、変色層12の上に、例えば柱状構造の凸構造11bをさらに設けることも好ましい。
【0076】
変色層保護構造の第二の実施態様としては、図2に示すように、粘着層15を介して凸構造11aと保護フィルム14とを基材13及び変色層12上に設けることもできる。粘着層は、例えば糊又は両面テープにより構成することができる。
【0077】
ここで、図2、3に示すようにハーフカット16を形成しておき、保護フィルム14及び凸構造11a(又は、図4に示すように保護フィルム14のみ)をインジケーターより除いたのち、ハーフカット16をカットすることにより、取り出されたものをインジケーターとして使用するような態様も好適である(図3図4)。取り出されたものを使用することで、粘着剤など余分なものを滅菌装置内に持ち込まずにすみ、装置内のコンタミを防ぐことができる。
【0078】
(4.印刷物)
本発明の印刷物は、本発明のオゾン検知用インキ組成物を含む印刷層を有するものである。本発明組成物を印刷する対象物としては、製品管理されるべき製品等が挙げられる。製品としては、特に限定されないが、例えば食品、医薬品、防虫剤、除湿剤、消臭剤等、使用期限があるもの等が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物を製品に直接印刷できる場合は、直接印刷すればよく、製品に直接印刷できない場合は、その製品の外装袋等に印刷すればよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0081】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0082】
(実施例1~22、比較例1~4)
下記各表に示す組成(表中の各成分の配合量の単位は、質量%である。)で各原料を混合及び攪拌し、オゾン検知用インキ組成物を作製した。得られた組成物を、スクリーン印刷機を用いてポリエチレン製の基材に印刷し、恒温槽に静置(70℃×10分間)して乾燥させてインジケーターを得た。
【0083】
(オゾンガス及び過酸化水素ガスに対する変色確認試験)
各実施例及び比較例のインジケーターを、オゾンガス及び過酸化水素ガスで曝露処理した。処理条件は、オゾンガスはCT値(オゾンガス濃度×曝露時間)5,000ppm・minで処理を行い、過酸化水素ガスはCT値(過酸化水素ガス濃度×暴露時間)50,000ppm・minで処理を行い、処理後のインジケーターの変色を確認した。
【0084】
(色差の算出方法)
インジケーターの変色の評価については、インジケーターの処理前後の色調を測定し、色差を算出することにより実施した。具体的には、市販の測色計を用い、各インジケーターをオゾンガス、過酸化水素ガスで処理する前後の色調を測定することで、L*a*b*色空間における、明度を表すL*、色相と彩度を表す色度a*及びb*の値を得ることができる。これらのL*、a*及びb*の値を用い、下記式(1)により色差ΔE*abを算出した。
【式1】
【0085】
【0086】
(実施例1~7)
変色色素にメチン系色素であるC.I,Basic Red 14、またはアントラキノン系染料(C.I.Disperse Voilet 1)、またはアゾ系染料(C.I.Disiperse Red 58)、チアジン系染料(C.I.Basic Blue 9)を使用し、ノボラック型のアルキルフェノール樹脂であるタマノル100Sまたはニトロセルロースである硝化綿RS1/2を使用することで、オゾンガスのみで変色し、過酸化水素ガスでは変色しなかった(表1)。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例8~15)
変色色素にメチン系色素であるC.I,Basic Red 14を使用し、ノボラック型のアルキルフェノール樹脂であるタマノル100Sを使用した場合、0.01%~10.0%の範囲で、オゾンガスに対する色差よりも過酸化水素ガスに対する色差ΔE*abが小さくなり、オゾンガスよりも過酸化水素ガスに対して変色が進まなかった。オゾンガスに対する色差ΔE*ab(O3)と過酸化水素ガスに対する色差ΔE*ab(H2O2)の比ΔE*ab(O3)/ΔE*ab(H2O2)は大きいほど過酸化水素抑制効果が高い。3.4以上でおおむね目視判別できることから、過酸化水素に対する変色が抑えられていると評価した(△)。そして、4.1以上である場合に○、5.4以上は顕著な効果が得られるとして◎と評価した(表2)。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例11、16~19)
変色色素にメチン系色素であるC.I,Basic Red 14を使用し、ノボラック型のアルキルフェノール樹脂の、タマノル100S、タマノル510、非ノボラック型のアルキルフェノール樹脂のタマノル526、タマノル586,テルペンフェノール樹脂のYP-90Lを使用した。これらを使用するといずれも、ΔE*ab(O3)/ΔE*ab(H2O2)が4.1以上(○および◎)になり、過酸化水素ガスに対して変色が進まなかった(表3)
【0091】
(耐熱性評価試験)
実施例11及び16~19のインジケーターを使用し、オゾンガス、過酸化水素ガスで未処理のインジケーターを恒温槽中で130℃1時間の加熱試験を行った。加熱前後でL*、a*、b*の値を測定して、色差ΔE*abを算出した。色差ΔE*abが20未満の場合に、十分な耐熱性を有すると判断した。ノボラック型のアルキルフェノール樹脂とテルペンフェノール樹脂を使用した場合、加熱前後の色差色差ΔE*abが20以下で小さく、耐熱性がよいことが確認された。
【0092】
【表3】
【0093】
(実施例20~22)
変色色素にメチン系色素であるC.I,Basic Red 14を使用し、ノボラック型のアルキルフェノール樹脂のタマノル100Sとニトロセルロースの硝化綿RS1/2の両方を使用しても、ΔE*ab(O3)/ΔE*ab(H2O2)が5.4以上(◎)になり、過酸化水素ガスに対して変色が進まなかった(表4)。
【0094】
【表4】
【符号の説明】
【0095】
10 インジケーター
11 凸構造
11a 凸構造
11b 凸構造
12 変色層
13 基材
14 保護フィルム
15 粘着層
16 ハーフカット
図1
図2
図3
図4