(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024938
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】可塑性医用膜
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20230214BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20230214BHJP
A61K 6/00 20200101ALI20230214BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/44
A61K6/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111168
(22)【出願日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】110129214
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】鐘 ▲敏▼帆
(72)【発明者】
【氏名】袁 敬堯
【テーマコード(参考)】
4C081
4C089
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA12
4C081BB04
4C081BB08
4C081BC02
4C081CA171
4C081CA172
4C081CB012
4C081DA05
4C081DB03
4C081DB07
4C081DC04
4C089AA06
4C089BE07
4C089CA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、可塑性医用膜を提供し、特に、歯科または他の医療専科に用いられる生分解性可塑性医用膜を提供する。
【解決手段】可塑性医用膜は、緻密層と緻密層に設置された多孔質層を含む。緻密層は第1材料で形成され、多孔質層は第2材料で形成される。可塑性医用膜は所定の可塑温度を有する。緻密層の融点は可塑温度に含まれ、多孔質層の融点は、可塑温度より高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料で形成された緻密層と、
第2材料で形成され、且つ前記緻密層に設置された多孔質層と、を備える可塑性医用膜であって、
前記可塑性医用膜は所定の可塑温度を有し、
前記緻密層の融点は前記可塑性医用膜の前記可塑温度に含まれ、前記多孔質層の融点は、前記可塑性医用膜の前記可塑温度より高い、ことを特徴とする可塑性医用膜。
【請求項2】
前記可塑性医用膜が前記可塑温度にある場合、前記緻密層は、可塑化された状態になり、且つ前記多孔質層の形状は、緻密層の形状に沿って変形する、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項3】
前記可塑温度は、45~100℃である、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項4】
前記第1材料の融点は、100℃未満であり、前記第2材料の融点は、100℃以上である、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項5】
前記第1材料の融点は、45~70℃であり、前記第2材料の融点は、100~150℃である、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項6】
前記第1材料の粘度は、0.20~1.87dl/gである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項7】
前記第2材料の粘度は、2.00~6.50dl/gである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項8】
前記多孔質層は、多孔質構造を有し、一部の前記緻密層は、前記多孔質構造内に設置される、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項9】
前記可塑性医用膜の厚みは、200~600μmである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項10】
前記緻密層の厚みは、150~300μmである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項11】
前記多孔質層の厚みは、50~400μmである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項12】
前記第1材料は、ポリカプロラクトンを含み、前記第2材料は、ポリ乳酸を含む、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項13】
前記第1材料の重量平均分子量は、5000~50000g/molである、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項14】
前記可塑性医用膜を37℃の生理食塩水に30分浸した後の引張応力は、10MPaを超える、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項15】
前記可塑性医用膜の温度25℃、絶対湿度50%での引張応力は、10MPaを超える、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【請求項16】
前記可塑性医用膜のISO 7198の測定標準に基づく縫合糸保持強度は、10N以上である、請求項1に記載の可塑性医用膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性医用膜に関し、特に、生分解性可塑性医用膜に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラント手術(dental implant)の前に、一般に骨手術として知られる誘導骨再生(GBR)が通常行われ、インプラント領域の歯の長期的な欠如による歯槽骨(alveolar bone)萎縮の問題を解決する。
【0003】
図1に示すように、骨再生誘導法では、まず歯肉Gを開き、骨の欠損部に骨粉Bを充填することで、ガム(tooth ridge)Rでの骨の生長を促進する。細胞増殖中に歯肉Gや口腔粘膜などの軟部組織が骨の成長空間を占めることを防ぐために、骨粉BをバリアフィルムFで覆うことで、歯槽骨と軟部組織とをバリアし、最後に歯肉Gを縫合する。このように、特定の空間で骨細胞を成長させ、ガムRを再構築するという目的を達成することができる。
【0004】
現在、業界で一般的に使用されているバリアフィルムはコラーゲン(以下、コラーゲンフィルム)で製造されており、コラーゲンの物理特性が弱く、インプラントを行った後に破れやすく、人工骨(artificial bone)の脱落に繋がる。また、コラーゲンフィルムには可塑性を有しない。傷を完全に覆うために、医者が縫合糸または他の方法でコラーゲンフィルムの形状を固定する必要がある。そのため、コラーゲンフィルムは、物理特性が不良で、使いやすさが悪いという問題がある。
【0005】
故に、従来のバリアフィルムをどのように改良してその物理特性を向上させ、且つ使いやすさを高めることで、上記の欠点を克服することは、この事業の解決しよとした重要な課題の一つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、可塑性医用膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、可塑性医用膜を提供することである。可塑性医用膜は、緻密層と緻密層に設置された多孔質層を含む。緻密層は第1材料で形成される。多孔質層は第2材料で形成される。可塑性医用膜は所定の可塑温度を有する。緻密層の融点は可塑性医用膜の可塑温度に含まれ、多孔質層の融点は、可塑性医用膜の可塑温度より高い。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、可塑性医用膜は、可塑温度にある場合、緻密層が可塑化された状態になり、且つ多孔質層の形状は、緻密層の形状に沿って変形する。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、可塑温度は、45~100℃である。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、第1材料の融点は、100℃未満であり、第2材料の融点は、100℃以上である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、第1材料の融点は、45~70℃であり、第2材料の融点は、100~150℃である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、第1材料の粘度は、0.20~1.87dl/gである。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、第2材料の粘度は、2.00~6.50dl/gである。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、多孔質層は、多孔質構造を有し、一部の緻密層は、多孔質構造内に設置される。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、可塑性医用膜の厚みは、200~600μmである。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、緻密層の厚みは、150~300μmである。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、多孔質層の厚みは、50~400μmである。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、第1材料は、ポリカプロラクトンを含み、第2材料は、ポリ乳酸を含む。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、第1材料の重量平均分子量は、5000~50000g/molである。
【0020】
本発明の一つの実施例において、可塑性医用膜を37℃の生理食塩水に30分浸した後の引張応力は、10MPaを超える。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、可塑性医用膜の温度25℃、絶対湿度50%での引張応力は、10MPaを超える。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、可塑性医用膜のISO 7198の測定標準に基づく縫合糸保持強度(Suture retention strength)は、10N以上である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑性医用膜は、「緻密層の融点は可塑温度に含まれ、多孔質層の融点は、可塑温度より高い」といった技術特徴により、可塑性医用膜の物理特性を向上させると共に、可塑性医用膜に可塑性を与える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】骨再生誘導法を説明するための模式図である。
【
図2】本発明に係る可塑性医用膜の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0026】
以下、所定の具体的な実施態様によって「可塑性医用膜」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0027】
本発明に係る可塑性医用膜は、骨再生誘導法に応用することができると共に、骨粉と軟部組織とのバリアフィルムとして用いられる。可塑性医用膜は、良好な物理特性を有するため、従来のインプラント治療においてバリアフィルムが破れやすい問題を改善することができる。また、本発明に係る可塑性医用膜は可塑性を有し、また、温度を適切に調整させることで、可塑性医用膜の形状を変形させて、患部にフィットしやすくなる。従いまして、本発明に係る可塑性医用膜は、より優れた使いやすさを有する。
【0028】
可塑性医用膜の応用は、歯科の手術に限らなく、人体に関する手術に応用することができる。しかしながら、説明の一致性及び本発明の特徴を明確かつ全面的に説明するために、本明細書において、歯科の手術の応用を例として説明を行う。
【0029】
本発明に係る可塑性医用膜は所定の可塑温度の範囲を有する。可塑性医用膜が可塑温度の範囲にある場合、可塑性医用膜の形状を変形させることができる。具体的に説明すると、可塑温度の範囲は、45~100℃であってもよい。説明すべきことは、可塑温度が45~100℃の範囲に含まれた任意の温度は、本発明の可塑温度に含まれる。換言すると、可塑温度の上限及び下限は、45~100℃に含まれた任意の整数であってもよく、例えば、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃または100℃であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0030】
本発明に係る可塑性医用膜をバリアフィルムとして用いる場合、可塑性医用膜を45~100℃の脱イオン水に置くか、若しくは、45~100℃の加熱板で成形させることにより、可塑性医用膜の形状を歯槽骨の形状にフィットさせるようにすることができる。可塑性医用膜が冷却した後に、可塑性医用膜が再成形されることから、再成形された可塑性医用膜が歯槽骨及び骨粉の上に設置されることで、骨粉を完全に包み、それによって、骨粉と軟部組織とをバリアする効果を果たせる。このように、骨再生誘導法の効果を向上させることができる。
【0031】
図2に示すように、本発明に係る可塑性医用膜は、緻密層10と緻密層10に設置された多孔質層20とを備える。
【0032】
緻密層10が良好な物理特性を有することで、可塑性医用膜の全体の物理特性を向上させることができる。緻密層10は細孔を有しないため、上皮細胞と骨細胞とを効果的にバリアすることで、上皮細胞の増生で骨細胞が生長できる空間が占められることを回避することができる。また、緻密層10は可塑性を有すると共に、緻密層10の融点は、可塑温度の範囲に含まれる。従いまして、可塑温度において、緻密層10は可塑化された状態となり、緻密層10は、再成形されることができる。
【0033】
多孔質層20の密度は、緻密層10の密度より低い。多孔質層20は、多孔質構造を有すると共に、曲げ性を有する。一つの実施形態において、一部の緻密層10が多孔質構造内に形成されることで、緻密層10と多孔質層20との間に良好な結合力を有する。可塑性医用膜を使用する時に、多孔質層20が歯槽骨に接触することによって、歯周組織は、多孔質層20の多孔質構造に付着するように成長し、歯槽骨の再生を促進させることができる。また、多孔質層20の融点は、可塑温度より高い。従いまして、可塑性医用膜の可塑温度において、多孔質層20は、可塑化された状態にならないため、緻密層10を支持する役割を果たせる。また、多孔質層20は曲げ性を有するため、多孔質層20の形状は、緻密層10の形状に沿って変形し、可塑性医用膜に可塑性を与えると共に、良好な物理強度に与える。
【0034】
緻密層10は、第1材料で形成される。多孔質層20は、第2材料で形成される。第1材料は、第2材料と異なる。異なる材料を使用することによって、可塑性医用膜は、常温で良好な物理特性を有する共に、可塑温度(45~100℃)で可塑性を有する。
【0035】
具体的に説明すると、第1材料の融点は、100℃未満であり、第2材料の融点は、100℃以上である。更に、第1材料の融点は、45~70℃であり、第2材料の融点は、100~150℃である。このように、緻密層10は、可塑性医用膜に可塑性を与える。
【0036】
可塑温度において、緻密層10は、可塑化された状態であると共に、可塑性医用膜の形状は、調整されることができる。多孔質層20の融点は、可塑温度より高いため、成形過程において、多孔質層20は、本来の形状を維持することができるので、緻密層を支持する効果を果たせる。また、多孔質層20の形状は、緻密層10の形状に沿って変形した上で、変形によって変形応力が存在する。なお、多孔質層20の本来の多孔質構造は、温度の変化によって破壊されることはないので、多孔質層20は依然として、曲げ性を有する。
【0037】
可塑性医用膜の温度が室温に戻った後に、緻密層10の形状は固定され、多孔質層20の形状は、緻密層10と一致している。このように、可塑性医用膜の全体形状は、再成形されることができる。
【0038】
なお、第1材料の粘度は、0.20~1.87dl/gであり、第2材料の粘度は、2.00~6.50dl/gである。このように、多孔質層20は、可塑性医用膜に良好な物理特性を与えて、従来のバリアフィルムの破れやすい問題を解決する。
【0039】
使いやすさを向上するために、本発明に係る可塑性医用膜の厚みを、200~600μmに制御してもよい。なお、可塑性及び物理特性の両方を考量すると、緻密層10の厚みが多孔質層20の厚み以下である。一つの実施形態において、緻密層10の厚みは、150~300μmであり、また、緻密層10の厚みは、175μm、200μm、225μm、250μm又は275μmであってもよい。多孔質層20の厚みは、50~400μmであり、また、多孔質層20の厚みは、75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm、225μm、250μm、275μm、300μm、325μm、350μmまたは375μmであってもよい。
【0040】
一つの実施形態において、第1材料の特性を調整することにより、本発明に係る可塑性医用膜が可塑性及び良好な物理特性を両立することが可能である。緻密層10が可塑温度の範囲で可塑化された状態となるために、第1材料は、重量平均分子量が5000~50000g/molである生分解性高分子であってもよく、好ましくは、第1材料は、重量平均分子量が10000~30000g/molである生分解性高分子であってもよい。一つの実施例において、第1材料は、ポリカプロラクトン(PCL)を含むが、上記の例はあくまでも可能な実施例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0041】
なお、第2材料は、他の生分解性高分子であってもよい。第2材料は、重量平均分子量が100000~600000g/molである生分解性高分子であってもよく、好ましくは、第2材料は、重量平均分子量が150000~350000g/molである生分解性高分子であってもよい。一つの実施例において、第2材料は、ポリ乳酸(PLA)を含むが、上記の例はあくまでも可能な実施例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
本発明に係る可塑性医用膜は、以下の方法で製造されることができるが、本発明はこれに制限されるものではない。多孔質層20の多孔質構造を形成するために、多孔質層20は、不織布紡糸技術、フリーズドライ技術又は静電紡糸技術で製造されてもよい。
【0043】
静電紡糸技術を例として、多孔質層20が静電紡糸技術で製造される場合、まずエレクトロスピニング溶液を調製する必要がある。エレクトロスピニング溶液の配合は、非(低)毒性の配合であり、主に高分子材料及び溶媒を含む。高分子材料の含有量は、エレクトロスピニング溶液の総重量に対して、1~50重量%である。溶媒の含有量は、エレクトロスピニング溶液の総重量に対して、50~99重量%である。
【0044】
高分子材料は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル(PHA)及びポリグリコール酸(PGA)からなる群から選択されてもよい。溶媒は、アセトン、ブタノン、エチレングリコール、イソプロパノール、脱アセチル化キチン(DAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジエチルエーテルからなる群から選択されてもよい。
【0045】
一つの実施例において、高分子材料はポリ乳酸である。紡績安定性及び品質の点から、溶媒は、アセトンとジメチルアセトアミドとの混合物であると共に、アセトンとジメチルアセトアミドとの重量比は、1:9~9:1であってもよい。
【0046】
調製したエレクトロスピニング溶液を貯液槽に入れて、ノズル及びコレクタ板のそれぞれは、高圧電源の正極と負極に電気的に接続される。高圧電源を印加した後に、エレクトロスピニング溶液がノズルから吐出される。電界の作用によって、エレクトロスピニング溶液が硬化されて高分子繊維を形成すると共に、高分子繊維がコレクタ板に堆積される。ノズルの移動を制御することにより、高分子繊維が特定の方向で緊密的に堆積、掛かり合い又は織り交ぜで、厚みが均一な多孔質層20を形成することができる。
【0047】
一つの実施例において、静電紡糸温度は、5~95℃であってもよく、好ましくは、10~90℃である。高圧電源の電圧強度は、5~60キロボルト(KV)であり、好ましくは、10~25KVである。エレクトロスピニング溶液の吐出速度は、0.1~5cc/minである。ノズルとコレクタ板との間にある収集距離は、15~90cmである。
【0048】
多孔質層20が形成された後に、ホットプレスで緻密層10を多孔質層20に設置されることで、本発明に係る可塑性医用膜を製造する。緻密層10がホットプレスで多孔質層20に設置された場合、一部の緻密層10は多孔質構造内に形成されるため、緻密層10と多孔質層20との間に良好な接着力を有する。
【0049】
本発明に係る可塑性医用膜が、従来のバリアフィルムの物理強度の不足及び可塑性を有しない、といった欠点を改良することができることを証明するため、上述した方法で可塑性医用膜を製造した後に、可塑性医用膜に引張応力測定及び縫合糸保持強度の測定を行い、市販のバリアフィルムとの比較を行った。測定の結果は、表1に示すとおりである。
【0050】
表1において、引張応力(乾燥)とは、可塑性医用膜又は従来のバリアフィルムの、温度25℃、絶対湿度50%で測定された引張応力である。引張応力(湿)とは、可塑性医用膜又は従来のバリアフィルムを37℃の生理食塩水に30分浸した後の引張応力である。縫合糸保持強度は、ISO 7198の測定標準に基づいて測定される。
【0051】
【0052】
表1の結果によると、本発明に係る可塑性医用膜は、乾燥環境及び湿気の多い環境の両方で良好な引張応力を有する。本発明に係る可塑性医用膜は、仮に湿気の多い環境においても、ある程度の引張応力を維持することができる。
【0053】
本発明に係る可塑性医用膜に比べて、従来のバリアフィルムの湿気の多い環境での引張応力は不良である。なかでも、架橋コラーゲンフィルムは乾燥環境で良好の引張応力を有するが、環境の湿気が多くなると、架橋コラーゲンフィルムの引張応力が大幅に下がる。従いまして、特定の操作条件において、架橋コラーゲンフィルムは依然として、物理特性が不良な問題を有する。また、非架橋コラーゲンフィルム及びポリ乳酸フィルムは、乾燥環境及び湿気の多い環境の両方で物理特性が不良な問題を有する。
【0054】
具体的に説明すると、本発明に係る可塑性医用膜を37℃の生理食塩水に30分浸した後の引張応力(引張応力(湿))は、10MPaを超える。温度25℃、絶対湿度50%での引張応力(引張応力(乾燥))は、10MPaを超える。
【0055】
なお、本発明に係る可塑性医用膜は、より高い縫合糸保持強度(Suture retention strengt)を有するため、実際に応用する時に、可塑性医用膜が破れにくく、より好ましい使いやすさを有する。
【0056】
具体的に説明すると、本発明に係る可塑性医用膜のISO 7198の測定標準に基づく縫合糸保持強度は、5N以上であり、好ましくは8N以上であり、より好ましくは、10N以上である。
【0057】
このように、本発明に係る可塑性医用膜は、従来のバリアフィルムの物理特性(引張強度、縫合糸保持強度)が不良である欠点を克服することができる。良好な物理特性を有した上で、本発明に係る可塑性医用膜は、可塑性を有する。従いまして、従来のバリアフィルムに比べて、本発明に係る可塑性医用膜は、より優れた使いやすさを有する。
【0058】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑性医用膜は、「緻密層10の融点は可塑温度に含まれ、多孔質層20の融点は、可塑温度の範囲より高い」といった技術特徴により、可塑性医用膜に可塑性を与える。
【0059】
更に説明すると、本発明に係る可塑性医用膜は、「第1材料の融点は、100℃未満であり、第2材料の温度は、100℃を超える」といった技術特徴により、可塑性医用膜に可塑性を与える。
【0060】
更に説明すると、本発明に係る可塑性医用膜は、「第1材料の粘度は、0.20~1.87dl/gである」又は「第2材料の粘度は、2.00~6.50dl/gである」といった技術特徴により、可塑性医用膜の物理特性を向上させると共に、可塑性医用膜に可塑性を与える。
【0061】
更に説明すると、本発明に係る可塑性医用膜は、「多孔質層20は、多孔質構造を有し、一部の緻密層10は、多孔質構造内に設置される」といった技術特徴により、可塑性医用膜の物理特性を向上させる効果を果たせる。
【0062】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…緻密層
20…多孔質層
G…歯肉
B…骨粉
R…ガム
F…バリアフィルム