IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェンウォール、インコーポレイテッドの特許一覧

特開2023-24955血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法
<>
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図1
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図2
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図3
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図4
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図5
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図6
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図7
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図8
  • 特開-血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023024955
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】血液からの血小板の分離および単核細胞の返還のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A61M1/02 125
A61M1/02 123
A61M1/02 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022125181
(22)【出願日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】63/230,228
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キュンヨーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血小板を血液から分離し単核細胞を変換するシステムおよび方法、血小板を血液から分離するためのシステムおよび方法が提供される。
【解決手段】血液処理システムは、使い捨て流体流回路と組み合わせて使用され得る遠心血液分離装置10を含む。血液分離に先立って、処理されるべき血液の体積、収集されるべき血小板の体積、および/または、血液分離手順中に供給源からの採血を完了するために必要とされる時間が決定される。この決定に基づいて、手順セットポイントが採血の完了から計算される。血液は供給源から分離器に引き出され、その中で血液は単核細胞含有画分と血小板含有画分とに分離される。血小板含有画分の少なくとも一部は分離器から搬送され、分離器内の単核細胞含有画分の体積が増加する。単核細胞含有画分は手順セットポイントにおいて分離器から供給源に搬送される。その後、採血と分離が終了される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から血小板を分離する方法であって、
処理されるべき血液の量、および/または、収集されるべき血小板の量、および/または、採血を完了する時間、および/または、血液分離手順の間に血液源からの採血を完了するために必要な時間を決定することと、
採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定することと、
供給源から血液を引き出し、前記血液を分離器に搬送することと、
前記血液を前記分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離することと、
前記血小板含有画分の少なくとも一部を前記分離器から搬送し、前記分離器内の前記単核細胞含有画分の体積を増加させることと、
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送することと、
採血と血液分離を終了することとを含む、方法。
【請求項2】
採血の後に再注入段階を実行することを含み、前記再注入段階は前記分離器の内容物を前記供給源に搬送することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定することは、前記採血の完了の前に設定された時間である手順セットポイントを選択または決定することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または計算することは、1日の特定の時刻である手順セットポイントを選択または決定することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または計算することは、前記採血の完了前に前記供給源から引き出されるために残っている血液の設定された体積である手順セットポイントを選択または決定することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
採血がいつ完了するかの計算または決定を調整することを含み、
前記調整は、前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送が生じる採血の開始後の時間または体積を変化させ、前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送が生じる採血の終了前の採血の時間または体積を変化させない、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記血液を前記分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離することは、
前記血液を前記分離器内の第1ステージ内で血漿画分、赤血球画分および単核細胞画分とに分離することと、
前記血漿画分を前記分離器内の前記第1ステージから前記分離器内の第2ステージ内に搬送することと、
前記第2ステージ内の前記血漿画分を前記血小板含有画分と実質的に細胞を含有しない血漿画分とに分離することとを含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送することは、前記血漿画分が前記分離器内の前記第1ステージから前記第2ステージに搬送される速度を減少することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記分離器内の前記第1ステージ内の前記血漿画分と前記赤血球画分との間の界面の位置を検出することを含み、前記血漿画分が前記分離器内の前記第1ステージから前記第2ステージに搬送される速度は前記界面が前記第1ステージ内の第1の位置から前記第1ステージ内の第2の位置に移動するまで減少される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
実質的にすべての前記単核細胞含有画分を前記分離器から搬送するために計算された予め定められた時間の長さの間または予め定められた体積の血液が供給源から引き出される間、前記界面が前記第2の位置に維持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送することは、前記単核細胞含有画分を前記分離器内の前記第1ステージから前記赤血球画分とともに搬送することを含む、請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送することは、採血の終了まで継続する、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送することは、前記採血の終了まで継続しない、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記分離器は遠心分離器である、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
流体流回路と組み合わせて使用するための血液分離装置であって、
分離器と、
ポンプシステムと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
(a)処理されるべき血液の量、および/または、収集されるべき血小板の量、および/または、採血を完了する時間、および/または、血液分離手順の間に血液源からの採血を完了するために必要な時間を決定し、
(b)採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定し、
(c)血液分離手順を実行し、前記血液分離手順は、
供給源から血液を引き出し、前記血液を分離器に搬送するように前記ポンプシステムを操作することと、
前記血液を前記分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離するために前記分離器を操作することと、
前記血小板含有画分の少なくとも一部を前記分離器から搬送し、前記分離器内の前記単核細胞含有画分の体積を増加させるために前記ポンプシステムを操作することと、
前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送するために前記ポンプシステムを操作することを含み、
(d)採血を終了するように構成されている、血液分離装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記分離器の内容物を前記供給源に搬送するように前記ポンプシステムを操作することによって、採血の終了の後に再注入段階を実行するように構成されている、請求項15に記載の血液分離装置。
【請求項17】
前記分離器は、第1ステージと第2ステージを含み、前記単核細胞含画分と血小板含有画分は前記分離器内の前記第1ステージ内で分離される、請求項15または請求項16に記載の血液分離装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記採血の完了の前に設定された時間である手順セットポイントを決定するように構成されている、請求項15から請求項17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【請求項19】
前記制御部は、1日の特定の時刻である手順セットポイントを決定するように構成されている、請求項15から請求項17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記採血の完了前に前記供給源から引き出されるために残っている血液の設定された体積である手順セットポイントを決定するように構成されている、請求項15から請求項17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【請求項21】
前記制御部は、採血がいつ完了するかの決定を調整するように構成されており、前記調整は、前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送をするように前記ポンプが動作する採血の開始後の時間または体積を変化させ、前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送をするように前記ポンプが動作する採血の終了前の採血の時間または体積を変化させない、請求項15から請求項20までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【請求項22】
前記制御部は分離手順を実行するように構成されており、前記分離手順は、
前記血液を血漿画分、赤血球画分および単核細胞画分とに分離するために前記分離器を操作することと、
前記血漿画分を前記分離器内の前記第1ステージから前記分離器内の第2ステージ内に搬送するために前記ポンプシステムを操作することと、
前記第2ステージ内の前記血漿画分を前記血小板含有画分と実質的に細胞を含有しない血漿画分とに分離するために前記分離器を操作することを含む、請求項15から請求項21までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【請求項23】
前記制御部は分離手順を実行するように構成されており、前記分離手順は、前記手順セットポイントにおいて前記単核細胞含有画分を前記分離器から前記供給源に搬送する間、前記血漿画分が前記分離器内の前記第1ステージから前記第2ステージに搬送される速度を減少するために前記ポンプシステムを操作することを含む、請求項22に記載の分離装置。
【請求項24】
前記制御部は、分離手順の間に、前記分離器内の前記第1ステージ内の前記血漿画分と前記赤血球画分との間の界面の位置を検出するように構成されており、前記血漿画分が前記分離器内の前記第1ステージから前記第2ステージに搬送される速度は前記界面が前記第1ステージ内の第1の位置から前記第1ステージ内の第2の位置に移動するまで減少される、請求項23に記載の分離装置。
【請求項25】
前記制御部は、前記分離手順の間に、実質的にすべての前記単核細胞含有画分を前記分離器から搬送するために計算された予め定められた時間の長さの間または予め定められた体積の血液が供給源から引き出される間、前記界面を前記第2の位置に維持するように構成されている、請求項22から請求項24までのいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項26】
前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送をするように前記ポンプが動作することは、前記単核細胞画分を前記分離器内の前記第1ステージから前記赤血球画分とともに搬送するように前記ポンプシステムを操作することを含む、請求項22から請求項25までのいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項27】
前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送をするように前記ポンプが動作することは、採血の終了まで継続する、請求項15から請求項26までのいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項28】
前記手順セットポイントにおいて前記分離器から前記供給源への前記単核細胞含有画分の搬送をするように前記ポンプが動作することは、採血の終了まで継続しない、請求項15から請求項26までのいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項29】
前記分離器は遠心分離器である、請求項15から請求項28までのいずれか1項に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照により内容が本明細書に組み込まれる、2021年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/230,228号の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[技術分野]
本発明は、血液分離に関する。より具体的には、本発明は、分離手順中に血液から血小板を分離し、単核細胞を血液源に戻すためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
[関連技術の説明]
種々の血液処理システムは、血液を2つ以上の成分部分に分離することを可能にし、これは、献血目的および潜在的に有害または有害な血液状態または障害を有する個人の治療に有用であり得る。
【0004】
このようなシステムが血液成分の提供に使用される場合、通常、ドナーから全血が採取され、特定の血液の構成要素または成分が除去および収集され、残りの血液成分がドナーに戻される。このように特定の成分のみを除去することで、ドナーの体が正常に戻るまでの時間が短縮される可能性があり、全血を採取するよりも頻繁に献血を行うことができる。これにより、医療に利用できる血漿や血小板などの血液成分の全体的な供給が増加する。
【0005】
通常、全血は遠心分離によってその成分に分離される。これには、全血が採取された後、供給源に戻される前に、遠心分離器を通過する必要がある。血液の汚染および供給源の感染の可能性を回避するために(供給源が生体ドナーまたは患者の場合)、血液は、遠心分離の過程全体で密封された滅菌流体流システム内に含まれていることが好ましい。したがって、典型的な血液処理システムは、血液を回転させて圧送するハードウェア(駆動システム、ポンプ、弁アクチュエータ、プログラム可能な制御部など)を含む恒久的で再利用可能な遠心分離器アセンブリと、ハードウェアと連携して搭載された密封され滅菌された流体処理アセンブリを含む。遠心分離器アセンブリは、収集または処理手順中に流体処理アセンブリの使い捨ての分離室に係合し、回転させる。しかしながら、血液は流体処理アセンブリとのみ実際に接触し、このアセンブリは一度だけ使用され、その後廃棄される。
【0006】
遠心血液分離装置は当技術分野で知られており、現在商業的に実施されている。1つの既知の分離装置が図1~7に示されている。
【0007】
図1は、血液を2つ以上に分離するための血液処理システム(図3)を構成するために、使い捨て流体流回路12(図2)と組み合わせて使用され得る例示的な市販の遠心血液分離装置10を示す。図示の血液分離装置10は現在、イリノイ州レークズーリックのフェンウォール、インコーポレイテッドによってAMICUS(登録商標)分離器として販売されており、フェンウォール、インコーポレイテッドは、ドイツ、バードホンブルクのフレセニウス カビ アーゲーの関連会社であり、米国特許第5,868,696に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。装置10は、様々な流体を処理するために使用することができるが、全血、血液成分、または他の生物学的細胞物質の懸濁液を処理するのに特に適している。
【0008】
装置10は、血液成分を遠心分離するために使用される遠心分離器14(図3)として構成された分離器を含む。装置10は、血液を様々な成分および副成分に分離するようにプログラムされ得る。例えば、例示的な血液分離手順では、遠心分離器14は、全血を多血小板血漿と赤血球に分離するように操作され、多血小板血漿はその後、乏血小板血漿と血小板または血小板濃縮物に分離される。
【0009】
図示の遠心分離器14は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,316,667号に示されているタイプのものである。遠心分離器は、ボウル16およびスプール18を備え、これらはバケットまたは筐体20内に受け入れられる。ボウル16とスプール18はヨーク22上で動作位置とローディング/アンローディング位置との間で枢動される。ボウル16およびスプール18がローディング/アンローディング位置にあるとき、流回路12の分離室26はスプール18の周りに巻き付けられ(図4)、遠心分離器14内で、ボウル16とスプール18との間に画定された環状ギャップ内に配置される。図4に示されるタイプの分離室26およびその動作のさらなる詳細は、米国特許第5,316,667号にも見出すことができる。
【0010】
室26は、典型的には、周囲で一緒にシールされた一対の可撓性で変形可能な材料(例えば、ポリ塩化ビニル材料)のシートで形成される。室26が遠心分離器14に取り付けられたとき、シートの一方は高G(外壁)壁90を画定し、他方のシートは、遠心分離器14の回転軸により近く配置される低G(内)壁92を画定する。複数のポート30、32、34、36、および38は、密閉された周囲を通って延び、室26の内部と流回路12の他の構成要素との間の流体の流れを可能にする。
【0011】
図示の室26は、第1の室40および第2の室42を画定し、室26内の分離された血液成分の流れを方向付ける複数の内部シールをさらに含む。図5に示すように、図示の室26の第1ステージ40に関連する3つのポート30、32、および34がある。符号32で識別されるポートは、血液を血液源から第1ステージ40に運ぶために使用される。他の2つのポート30およびポート34は、第1ステージ40を出る分離された血液成分のための出口ポートとして機能する。より具体的には、第1の出口ポート34は、第1ステージ40から低密度の血液成分を運び、第2の出口ポート30は、第1ステージ40から高密度の血液成分を運ぶ。
【0012】
流回路12の他の部分は、バケット20の外側に留まることができる。図示の実施形態では、血液分離室26に接続された様々な管は、使用中にバケット20の外側に延在するアンビリカス28に束ねられる(図3)。図4および図5に示すように、流回路12のアンビリカス28は、個々の管によって血液分離室26のポート30、32、34、36、および38に取り付けられ得る。アンビリカス28は、室26の第1ステージ40および第2ステージ42を互いに、および使用中に遠心分離器14の外側に配置される流回路12の構成要素と相互接続する。
【0013】
アンビリカス28の管は、流回路12(図2)のカセット50A、50B、および50Cに接続することができ、カセット50A、50B、および50Cは、カセット内に定義された弁ステーションの操作を介して、互いに流体連通に、そして流体連通を解除して選択的に配置され得る複数の流体流セグメントを画定する成形部品である。血液分離装置10の前面パネル52は、流回路12のカセット50A、50B、および50Cを収容するための複数のカセットホルダ54(図1)を含む。各カセットホルダ54は、流体流回路12のカセット50A、50B、50Cの異なる1つを、所望の動作位置で2つの対向する側縁に沿って受け取り、把持する。各カセットホルダ54は、一対の蠕動ポンプステーションまたはポンプ56を含む。カセットがカセットホルダ54によって把持されると、カセットから延びる管ループ58(図2)がポンプ56と作動的に係合する。ポンプ56は、システム制御部のコマンドの下で操作され、流体が関連付けられたカセットを通って流れるようにする。
【0014】
装置10の前面パネル52は、少なくとも1つの光学ラインモニタ58などの追加の構成要素を含むことができる。提供される場合、光学ラインモニタ58は、流回路12の管または流体流導管を受容して、そこを流れる流体を光学的に監視することができる。前面パネル52はまた、流回路12の管または流体流導管を受容して、その導管を通る流体の流れを選択的に許可および防止する様々なク傾斜路60を含むことができる。
【0015】
ユーザインターフェース画面62(例えば、タッチ画面)は、前面パネル52の上(図1のように)または他の位置に配置することができる。ユーザインターフェース画面62により、操作者は装置10のシステム制御部(例えば、マイクロプロセッサ)と対話して、制御部に命令を提供し(例えば、特定の手順を実行する)、ならびに制御部に処置中に使用される情報(例えば、血液源の血液の血小板前計数)を提供することができる。ユーザインターフェース画面62は、操作者に指示(例えば、血液源を流回路12に接続または切断するため)および情報(例えば、操作者に流回路12の流体流導管の閉塞を警告する)を提供し得る。
【0016】
前述のように、流体流回路12の様々な構成要素は、可撓性管または任意の他の適切な流体流導管によって接続され得る。図示の流回路12は、1対の血液源アクセス装置64および66(例えば、瀉血針)を含む「2針」システムであり、一方は供給源から流回路12に血液を引き込むのに役立ち、他方は流体を供給源に戻す役割を果たす。他の実施形態では、流回路は、単一の血液源アクセス装置(例えば、瀉血針)を使用して、血液源から血液を採取し、流体を血液源に運ぶ「単一針」システムとして構成することができる。
【0017】
分離手順を開始するために、操作者は、装置10が実行できる様々な手順の中から手順を選択することができる(例えば、ユーザインターフェース画面62を使用して)。操作者は、システム制御部が要求するさまざまな情報を入力して、制御部が手順をより適切に実行できるようにすることができる。制御部には、血液源の総血液量、血液源の血液の血小板の事前計数または初期血小板濃度、および手順の終わりまでに血液源の血液について達成されるべき血小板の事後計数または目標血小板濃度が提供され得る。処理される血液の総量もシステム制御部に提供され得る。
【0018】
システム制御部が必要な入力をすべて受信し、必要な予備計算とステータスチェックを実行したとき(例えば、流回路12が適切に設置されていること、および装置10のさまざまな構成要素が適切に機能していることを確認するため)、流回路12をプライミングすると、分離手順を開始することができる。
【0019】
システム制御部は、ポンプ56のうちの1つまたは複数に、血液源アクセス装置64のうちの1つを介して血液源から流回路12に血液を引き込むように指示する。血液が赤血球(すなわち、高密度血液成分)および多血小板血漿(すなわち、低密度血液成分)に分離されるように、遠心分離器14が十分な速度で回転軸を中心に室26を回転させると、血液は入口ポート32を介して分離室26の第1ステージ40に入る。赤血球は、出口ポート30を介して血液源に戻され、多血小板血漿は、出口ポート34を介して第1ステージ40から運ばれ、入口ポート38を介して第2ステージ42に運ばれる。第2ステージ42において、多血小板血漿は、乏血小板血漿と、血小板または血小板濃縮物とに分離される。乏血小板血漿は、第2ステージ42から除去され、出口ポート36を介して血液源に戻されてもよく、血小板/血小板濃縮物が第2ステージ42に蓄積され、最終的に収集容器86に移送される。
【0020】
より具体的には、分離手順中、入口ポート32に関連付けられた流体通路98は、血液を、低密度収集領域100のすぐ隣の円周流路に直接導く。図6に示されるように、血液は光学的に密な層106に分離し、これは、細胞成分が遠心力の影響下で室26の高G(外)壁90に向かって移動するにつれて形成される。光学的に密な層106は、赤血球を含む(したがって、本明細書では「RBC層」と呼ばれる)が、遠心分離器14が回転する速度に応じて、他の細胞成分(例えば、より大きな白血球、および血小板)もRBC層106に存在し得る。
【0021】
RBC層106の成分の動きは、密度の低い血液成分を室26の低G(内)壁92に向かって半径方向に移動させ、第2の、光学的に密度の低い層108を形成する。光学的に密度の低い層108は、血漿および血小板を含む(したがって、本明細書では「PRP層」と呼ばれる)が、遠心分離器14が回転する速度および血液が遠心分離器14内に存在する時間の長さに応じて、他の成分(例えば、より小さい白血球)もPRP層108に存在し得る。
【0022】
RBC層106とPRP層108との間の遷移は、一般に、界面110と呼ばれる(図6)。室26内の界面110の位置は、血液処理中に動的に変化する可能性がある。界面110の位置が高すぎる場合(すなわち、低G壁92および出口ポート34に近すぎる場合)、赤血球がこぼれて低密度収集領域100に入り、多血小板血漿の質に悪影響を与える可能性がある。一方、界面110の位置が低すぎる場合(すなわち、低G壁92から離れすぎている場合)、装置10の収集効率が損なわれる可能性がある。血液分離装置10は、界面傾斜路112上で見える界面110の位置を光学的に見て調整するためのビューイングヘッドまたは界面センサーアセンブリを含んでもよい。
【0023】
血液が第1ステージ40でRBC層106とPRP層108に分離されている間、上述のように、第2ステージ42の(第1ステージ40から受け取った)PRP層108の部分は、血小板または血小板濃縮物126および乏血小板血漿128に分離している(図7)。同時に、(とりわけ)単核細胞(本明細書では「MNC」と呼ばれる)およびより大きな血小板を含むバフィーコートが、界面110またはそれに隣接する第1ステージ内で発達する。上述のように、界面110は、それが第1ステージ40内の適切な位置にとどまることを確実にするために監視され、これにより、バフィーコートが血液分離中に(RBC層106またはPRP層108のいずれかと共に第1ステージ40を出るよりも)第1ステージ40内に留まるようになり、体積が増加する。
【0024】
採血および分離は、システム制御部によって終了されるまで継続する。次いで、第2ステージ42に蓄積する血小板/血小板濃縮物126が採取または収集され、続いて再注入段階が続き、室26内に残っている流体(バフィーコートを含む)が血液源に戻される。
【0025】
このタイプの血小板分離および収集方法は効果的であることが証明されているが、バフィーコート内の単核細胞成分の不十分な戻りのために、ドナーまたは患者が白血球減少症を経験する可能性があることが最近判明した。例えば、上記のタイプの処置は、MNCが血液源に戻されるのではなく、1×10個のオーダーのMNCが分離室に残る可能性があることが分かっている。
【0026】
この問題は、上記のタイプの収集後の再注入段階を省略したシステムではさらに大きくなる可能性がある。例えば、コロラド州レイクウッドのテルモ ビーシーティー、インコーポレイテッドによって販売されているTRIMA ACCEL(登録商標)収集装置を使用して実行される血小板収集または除去手順は、1×10~1×1010のオーダーのMNCが患者またはドナーに戻らない可能性があることがわかっている。
【0027】
より少ないMNCを廃棄物として残す手順(例えば、1×10のオーダーのMNC)は、白血球減少症の発生を大幅に減少させる。したがって、そのような改善されたMNC返還が可能である血小板除去または血小板収集手順を提供することは有利であろう。
【発明の概要】
【0028】
以下に説明し特許請求する装置およびシステムにおいて別々にまたは一緒に具現化することができる本主題のいくつかの態様が存在する。これらの態様は、単独で、または本明細書に記載された主題の他の態様と組み合わせて使用することができ、これらの態様を一緒に説明することは、本明細書に添付された特許請求の範囲においてこれらの態様を別々に使用すること、またはそのような態様を別々にまたはセットとして異なる組み合わせで請求することを排除することを意図するものではない。
【0029】
一態様では、血液源の血液から血小板を分離する方法が提供される。この方法は、処理される血液の体積、および/または収集される血小板の体積、および/または採血を完了する時間、および/または血液分離手順中に供給源からの採血を完了するのに必要な時間を決定することを含む。採血の完了から計算された手順セットポイントが選択または決定される。次に、血液が供給源から引き出され、分離器に運ばれる。血小板含有画分の少なくとも一部は、分離器内の単核細胞含有画分の体積を増加させながら、分離器から搬送される。単核細胞を含む画分は、手順セットポイントで分離器から供給源に運ばれる。その後、採血および血液分離が終了する。
【0030】
別の態様では、流体流回路と組み合わせて使用するための血液分離装置が提供される。血液分離装置は、分離器、ポンプシステム、および制御部を含む。制御部は、(a)処理される血液の体積、および/または収集される血小板の体積、および/または採血を完了する時間、および/または分離手順中に血液源から採血を完了するのに必要な時間を決定し、(b)採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定し、(c)血液分離手順を実行し、(d)採血を終了するように構成されている。血液分離手順は、供給源から分離器に血液を引き込むためにポンプシステムを操作すること、血液を血小板含有画分と単核細胞含有画分に分離するために分離器を操作すること、血小板含有画分の少なくとも一部を遠心分離器から搬送しながら、単核細胞含有画分を分離器内で体積を増加させるためにポンプシステムを操作すること、単核細胞含有画分を分離器から供給源に手順セットポイントで搬送するために、ポンプシステムを操作することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例示的な市販の血液分離装置の斜視図である。
【0032】
図2図1の血液分離装置と組み合わせて使用することができる例示的な使い捨て流体流回路の概略図である。
【0033】
図3図1の血液分離装置の一部を破断して断面にした側面図であり、装置の遠心ボウルおよびスプールが作動位置にあり、その上に図2の流体流回路が取り付けられている。
【0034】
図4】直立位置にあり、図2の流体流回路の血液分離室を担持する、図3に示される遠心分離器のスプールの上面斜視図である。
【0035】
図5】スプールと接続されていない、図4に示される血液分離室の平面図である。
【0036】
図6】血液分離室と関連して遠心分離器によって担持される界面傾斜路の拡大斜視図であり、傾斜路上の所望の位置にあるときの室内の遠心分離された赤血球層および多血小板血漿層を示す。
【0037】
図7】血小板除去または収集手順中の血液分離室の第2ステージにおける血小板/血小板濃縮物および乏血小板血漿の位置の拡大斜視図である。
【0038】
図8】本開示による手順の一部中の血液分離室の第1ステージの概略図である。
【0039】
図9】本開示による手順の第2の部分中の血液分離室の第1ステージの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に開示される実施形態は、本主題の説明を提供することを目的としており、主題は、詳細に示されていない様々な他の形態および組み合わせで具現化され得ることが理解される。したがって、本明細書に開示される特定の設計および特徴は、添付の特許請求の範囲で定義される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0041】
本開示による血小板収集および除去手順は、上述の手順と同様に進行し、図1~7に示されるものと同様のシステムを使用して実行され得る。しかし、本明細書に記載の原理は、特定の構成のシステムおよび/または工程または段階の特定の順序に限定されないことを理解されたい。むしろ、本明細書に記載のMNC返還原理は、異なる方法で血小板収集および/または除去手順を実行する、さまざまに異なる構成の血液処理システム(例えば、上記のAMICUS(登録商標)およびTRIMA ACCEL(登録商標)システム)を使用して適用することができる。実際、本明細書に記載の原理は、手順の過程でMNC(例えばバフィーコート内)が(遠心分離器として、または別の構成として構成された)分離器に蓄積される任意の血液処理システムおよび血小板収集または除去手順に適用できることが企図される。
【0042】
本開示による血小板収集および除去手順は、採血の終了から計算された手順セットポイントを確立し、その時点でMNC返還工程を実行することによって、より多くのMNCをドナーまたは患者に戻すことができる(例えば、AMICUS(登録商標)型システムを使用する場合、分離室内に1×10のオーダーのMNCのみを残す)。採血の終了は、任意の適切なアプローチに従って決定することができる。これは、処置前の患者またはドナーの血液の血小板含有量を示す、血小板事前計数などの1つまたは複数の事前計数の使用を含み得る。他の関連情報には、例えば、採取される血小板の目標体積または量、および/または目標血小板事後計数(処置終了時の患者またはドナーの血液の血小板含有量を示す)が含まれ得る。処置を開始する前に患者またはドナーの血液の組成に関する情報を取得することは有利であるが、必須ではないことを理解すべきである。例えば、血小板の事前計数が利用できない場合、血液の血小板含有量は、任意の適切なアプローチを使用して手順の過程で決定され得る。
【0043】
分離装置の分離効率に関する知識とともに適切な情報を用いて、血小板の目標容積または量を採取するため、または目標血小板事後計数を達成するために、患者またはドナーからどれだけの血液を採取しなければならないかを決定することが可能である。システム制御部は、その計算された採血体積を使用して、(システムのさまざまな構成要素の予想される動作速度に基づいて)採血が終了する時刻(開始時刻がわかっているとき、または患者またはドナーが特定の時刻までのみ利用可能であるとき)および/または採血の期間を決定する。したがって、採血の終点はさまざまな方法(採血すべき体積、適切な体積の血液が引き出される時刻、適切な体積の血液を引き出すのに必要な時間の長さ、等)で表現できることを理解する必要がある。制御部は、必要に応じて、予想外の遅延が生じた場合(例えば、閉塞や不規則な流れにより、予想より採血が遅い場合)など、手順の過程で採血終了の計算を調整するように構成することができる。
【0044】
次いで、システム制御部は、予想される採血の終了から計算される手順セットポイントを確立することができる。採血の終了がさまざまな方法で表現されるように、手順セットポイントもさまざまな方法(血液の体積、時刻、時間の長さなど)で表現される。例えば、採血の終了が採血される血液の体積で表される場合、制御部は、採血の終了から特定の体積を、選択するか、または提供されることができ、これが、その時点でMNCが血液源に戻る手順セットポイントとなる。手順セットポイントを確立するための基準として体積が選択される場合、具体的な体積は、本開示の範囲から逸脱することなく(分離室の構成などの要因に応じて)変化し得るが、この体積は、分離室内のMNCのすべてまたは少なくとも実質的にすべてが、室に流入する選択された量の血液によって分離室から移動されることを保証するのに十分な大きさを選択することが有利であり得る。ドナーまたは患者から2リットルの血液を採取する例示的な実施形態では、約25mLから約100mLの範囲の体積を選択することができる。25mLの体積が選択されている場合、手順セットポイントは、ドナーから1.975リットルの血液が採取されたときに設定される。別の例では、採血の終了が採血を終了しなければならない時間に関して表現される場合(例えば、ドナーまたは患者が一日の特定の時間までしか利用できない場合)、制御部は、その時点で分離器内のMNCを血液源に返還する、採血の終了から特定の時間を選択、または提供される。
【0045】
手順セットポイントを確立するための基準として時間が選択される場合、具体的な体積は、本開示の範囲から逸脱することなく(分離室の構成などの要因に応じて)変化し得るが、分離室内のMNCのすべてまたは少なくとも実質的にすべてが、その時間中に室内に流入する血液によって分離室から移動されることを保証するのに十分な長さの時間を選択することが有利であり得る。特定の時間は、例えば、手順の終了から約1分から約5分の間であり得る。これには、特定の時間(たとえば、採血を12:00に終了する必要があり、5分の時間が選択されている場合は11:55)、または採血が終了する前の特定の時間の長さ(たとえば、採血が1時間続くと計算された場合、手順セットポイントは手順の終了から2分、すなわち、58分経過後に設定できる)に手順セットポイントを設定することが含まれる場合がある。手順の途中で計算された採血時間が変更された場合、MNC返還が実行される時間も変更される可能性がある。たとえば、採血が1時間持続するように最初に計算された前の例では、手順セットポイントが2分間で、手順の過程で5分の遅延があった場合、再計算された採血時間は1時間5分になる。この場合、その時点でMNC返還がされる採血終了からMNCの返還までの時間は変わらず(採血終了の2分前)、MNCの返還時間は調整される(採血開始後58分から採血開始後1時間3分後へ)。
【0046】
手順セットポイントを設定し、任意の前処置工程(回路のプライミングなど)を実行した後、システム制御部は、装置のポンプの1つまたは複数に、血液源(ドナー/患者)から分離室に血液を引き込むように指示する。血液は分離室に入り、バフィーコートまたはMNCを含む画分が他の血液成分から分離され、他の成分の一部またはすべてが収集されるか、供給源に戻される一方、分離室内のバフィーコートまたはMNCを含む体積が増加する。上述のように、分離室の構成、およびバフィーコートまたはMNC含有画分を他の血液成分から分離する方法は、本開示の範囲から逸脱することなく変更することができる。
【0047】
例示的な実施形態によれば、AMICUS(登録商標)分離器を使用して実施される血小板収集または除去処置中に、供給源から引き出された血液は、入口ポート232を介して図8に示される分離室の第1ステージ240に入る。そして、赤血球または赤血球画分206(すなわち、高密度血液成分)と、多血小板血漿または血漿画分208(すなわち、低密度血液成分)とに分離される。赤血球は、出口ポート230を介して第1ステージ240から除去され(通常、血液源に戻される)、多血小板血漿は、第1ステージ240から第2出口ポート234を介して運び出され、室の入口ポートを介して第2ステージに運び入れられる。第2ステージでは、多血小板血漿が乏血小板血漿と血小板または血小板濃縮物に分離される。血小板の少ない血漿は、出口ポートを介して第2ステージから除去され(血液源に戻される場合もある)、血小板/血小板濃縮物は第2ステージに蓄積され、最終的に収集容器に移される。
【0048】
上述のように、MNCおよび他の血液細胞(すなわち、血小板および白血球)が赤血球から沈降するので、赤血球画分206と血漿画分208との間の界面210において、またはそれに隣接して、バフィーコートまたはMNC含有画分212が生じる。手順の大部分について、血漿画分208が第1ステージ240から第2ステージに出て、赤血球画分206が出て、ドナー/患者に戻される間、MNC含有画分212は主に界面210に存在する。この間、界面210は、高G壁290と低G壁292との間の特定の距離である第1の位置(図8に示す)に維持される。この位置は、第1ステージ240に関連付けられた界面傾斜路上に提示されるように、赤血球画分206によって占められる第1ステージ240の厚さまたは高さのパーセンテージとして表すことができる。一実施形態では、これは30~50%(すなわち、赤血球画分206が高G壁290と低G壁292との間の空間の30~50%を占めている状態)であり得る。一実施形態では、例えば約40%とすることができる。
【0049】
界面210の位置は、赤血球画分206および血漿画分208が第1ステージ240から運ばれる相対速度によって調節される。一実施形態では、血漿出口234にポンプが関連付けられているが、赤血球出口230に関連付けられているポンプはなく、第1ステージ240からの赤血球の流れは、血液が第1ステージ240に流入する速度と、血漿画分208が第1ステージ240から排出される速度の差に等しい。したがって、界面210(したがって、MNC含有画分212)の位置は、血漿ポンプの動作速度を変更することによって調整することができ、速度が増加すると、界面210が低G壁292により近く移動し、速度が減少すると、界面210が高G壁290に近づく。これは、界面210の位置を調整および制御するための1つの可能なアプローチにすぎず、本開示の範囲から逸脱することなく他のアプローチを使用できることを理解されたい。
【0050】
図9は、手順セットポイントでのMNC返還中の第1ステージ内の様々な分離された血液成分の位置を示す。上述のように、手順セットポイントで、システム制御部は、処理装置の他の構成要素(例えば、血漿ポンプ)を制御して、界面310を第1の位置(図8に示す)から高G壁390により近い第2の位置(図9)に移動させる。この時点での界面310の正確な位置は、本開示の範囲から逸脱することなく変更することができ、第2の位置は、赤血球出口330を介して第1ステージ340を出るようにMNC含有画分312を高G壁390に十分近づけるために適切なものである。MNC含有画分312は、赤血球出口330を介して赤血球画分306と共に第1ステージ340から流出し、MNC含有画分312および赤血球画分306はドナー/患者に戻される(採血が完了する前)。例示的な実施形態(定常状態分離中、界面が第1ステージ内の30~50%の第1の位置に維持される)では、制御部は、界面を20~40%の第2の位置に移動させることができる。界面が40%の第1の位置に維持される別の例示的な実施形態では、制御部は、界面を30%の第2の位置に移動させることができる。
【0051】
上述のように、界面の位置は、第1ステージの血漿出口でポンプを遅くするなど、任意の許容可能な方法によって下げることができる。血漿ポンプの動作速度が低下すると、室の第2ステージへの血漿画分の体積流量が低下することが分かるであろう。したがって、血小板収集効率を過度に低下させないように、分離室からMNC含有画分を除去するのに必要な時間だけ、界面を第2の位置に維持することが有利であり得る。したがって、分離室からMNC含有画分を除去するために必要なものに応じて、MNC返還段階が採血の終了まで続く必要がある場合がある(例えば、採血終了の2分前に開始し、2分間続く場合)、または、代わりに、採血が終了する前にMNC返還段階を終了することも許容される場合がある(たとえば、採血終了の2分前に開始し、定常状態の分離条件に戻る前に2分間だけ継続する場合など)。ただし、一般的に言えば、手順セットポイントで実行されるMNC返還段階は、通常、採血と分離の期間に比べて比較的短くなる(たとえば、1時間の手順の場合は1~2分)。血小板の収集効率の低下はわずかである。
【0052】
採血および分離は、システム制御部によって終了されるまで継続する。次に、第2ステージで蓄積した血小板/血小板濃縮物を(例えば、遠心分離器の回転を停止し、血小板を分離室からポンプで排出することによって)採取または収集し、その後、室内に残っている(MNC含有画分を含む)流体を血液源に再注入する任意の再注入段階を行う(AMICUS(登録商標)分離器を使用した従来の血小板収集または除去手順の最後に行われるように)。
【0053】
上述のように、処理途中のMNC返還を実行することによって従来の手順を修正することにより、室内に残るMNCの数を1×10のオーダーのMNC(従来の血小板収集または除去手順の終了時)から1×10のオーダーのMNCに減らすことができ、はるかに多くのMNCをドナーまたは患者に返還することが可能になる。
【0054】
上述のように、本明細書に記載のMNC返還原理は、特定の血液分離システムでの使用に限定されない。例えば、TRIMA ACCEL(登録商標)システムは、血漿、血小板、白血球、および赤血球が運ばれる白血球減少または「LRS」室を使用する。LRS室は血小板を白血球(MNCを含む)から分離し、血小板を白血球減少血小板生成物として収集コンパートメントに押し出す。白血球(MNCを含む)は、ドナー/患者に戻される別のラインまたは流れに運ぶことができる。このシステムの詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,963,901号に記載されている。
【0055】
AMICUS(登録商標)システムとは異なり、TRIMA ACCEL(登録商標)分離器は、処理の最後に再注入段階を実行せず、代わりに、手順が始まった後の特定の時間に白血球を血液源に戻すようにスケジュールする。このアプローチは、本明細書に記載のMNC返還へのアプローチと類似しているように見えるかもしれないが、(本開示による)採血終了前の特定の時間に行われる予定のMNC返還段階と、採血開始から一定時間後に予定されているMNC返還段階との違いは重要である。
【0056】
上述したように、多くの理由のいずれかにより、採血は予想時間とは異なる時間に実際に終了することがある。この場合、採血開始後の特定の時間(採血終了直前に発生するように意図されている可能性がある)にMNC返還段階をスケジュールすると、MNC返還と採血の間に予想よりも大きな隔たりが生じ、容認できないほど大量のMNCが分離器に廃棄物として残る可能性がある。本明細書に記載の原理を採用し、採血の終了から計算された特定の手順セットポイントで実行されるようにMNC返還段階をスケジュールすることにより、採血終了前の特定の時間にMNC返還段階が確実に行われるようにすることができる。その結果、ドナーまたは患者へのMNCの返還が増加する。
【0057】
[態様]
態様1.血液から血小板を分離する方法であって、処理されるべき血液の量、および/または、収集されるべき血小板の量、および/または、採血を完了する時間、および/または、血液分離手順の間に血液源からの採血を完了するために必要な時間を決定することと、採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定することと、供給源から血液を引き出し、血液を分離器に搬送することと、血液を分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離することと、血小板含有画分の少なくとも一部を分離器から搬送し、分離器内の単核細胞含有画分の体積を増加させることと、手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送することと、採血と血液分離を終了することとを含む、方法。
【0058】
態様2.採血の後に再注入段階を実行することを含み、再注入段階は分離器の内容物を供給源に搬送することを含む、態様1に記載の方法。
【0059】
態様3.採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定することは、採血の完了の前に設定された時間である手順セットポイントを選択または決定することを含む、態様1または態様2に記載の方法。
【0060】
態様4.採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または計算することは、1日の特定の時刻である手順セットポイントを選択または決定することを含む、態様1または態様2に記載の方法。
【0061】
態様5.採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または計算することは、採血の完了前に供給源から引き出されるために残っている血液の設定された体積である手順セットポイントを選択または決定することを含む、態様1または態様2に記載の方法。
【0062】
態様6.採血がいつ完了するかの計算または決定を調整することを含み、調整は、手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送が生じる採血の開始後の時間または体積を変化させ、手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送が生じる採血の終了前の採血の時間または体積を変化させない、態様1から態様5までのいずれか1項に記載の方法。
【0063】
態様7.血液を分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離することは、血液を分離器内の第1ステージ内で血漿画分、赤血球画分および単核細胞画分とに分離することと、血漿画分を分離器内の第1ステージから分離器内の第2ステージ内に搬送することと、第2ステージ内の血漿画分を血小板含有画分と実質的に細胞を含有しない血漿画分とに分離することとを含む、態様1から態様6までのいずれか1項に記載の方法。
【0064】
態様8.手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送することは、血漿画分が分離器内の第1ステージから第2ステージに搬送される速度を減少することを含む、態様7に記載の方法。
【0065】
態様9.さらに、分離器内の第1ステージ内の血漿画分と赤血球画分との間の界面の位置を検出することを含み、血漿画分が分離器内の第1ステージから第2ステージに搬送される速度は界面が第1ステージ内の第1の位置から第1ステージ内の第2の位置に移動するまで減少される、態様8に記載の方法。
【0066】
態様10.実質的にすべての単核細胞含有画分を分離器から搬送するために計算された予め定められた時間の長さの間または予め定められた体積の血液が供給源から引き出される間、界面が第2の位置に維持される、態様9に記載の方法。
【0067】
態様11.手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送することは、単核細胞含有画分を分離器内の第1ステージから赤血球画分とともに搬送することを含む、態様7から態様10までのいずれか1項に記載の方法。
【0068】
態様12.手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送することは、採血の終了まで継続する、態様1から態様11までのいずれか1項に記載の方法。
【0069】
態様13.手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送することは、採血の終了まで継続しない、態様1から態様11までのいずれか1項に記載の方法。
【0070】
態様14.分離器は遠心分離器である、態様1から態様13までのいずれか1項に記載の方法。
【0071】
態様15.流体流回路と組み合わせて使用するための血液分離装置であって、分離器と、ポンプシステムと、制御部とを備え、制御部は、(a)処理されるべき血液の量、および/または、収集されるべき血小板の量、および/または、採血を完了する時間、および/または、血液分離手順の間に血液源からの採血を完了するために必要な時間を決定し、(b)採血の完了から計算された手順セットポイントを選択または決定し、(c)血液分離手順を実行し、血液分離手順は、供給源から血液を引き出し、血液を分離器に搬送するようにポンプシステムを操作することと、血液を分離器の中で血小板含有画分と単核細胞含有画分とに分離するために分離器を操作することと、血小板含有画分の少なくとも一部を分離器から搬送し、分離器内の単核細胞含有画分の体積を増加させるためにポンプシステムを操作することと、手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送するためにポンプシステムを操作することを含み、(d)採血を終了するように構成されている、血液分離装置。
【0072】
態様16.制御部は、分離器の内容物を供給源に搬送するようにポンプシステムを操作することによって、採血の終了の後に再注入段階を実行するように構成されている、態様15に記載の血液分離装置。
【0073】
態様17.分離器は、第1ステージと第2ステージを含み、単核細胞含画分と血小板含有画分は分離器内の第1ステージ内で分離される、態様15または態様16に記載の血液分離装置。
【0074】
態様18.制御部は、採血の完了の前に設定された時間である手順セットポイントを決定するように構成されている、態様15から態様17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【0075】
態様19.制御部は、1日の特定の時刻である手順セットポイントを決定するように構成されている、態様15から態様17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【0076】
態様20.制御部は、採血の完了前に供給源から引き出されるために残っている血液の設定された体積である手順セットポイントを決定するように構成されている、態様15から態様17までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【0077】
態様21.制御部は、採血がいつ完了するかの決定を調整するように構成されており、調整は、手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送をするようにポンプが動作する採血の開始後の時間または体積を変化させ、手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送をするようにポンプが動作する採血の終了前の採血の時間または体積を変化させない、態様15から態様20までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【0078】
態様22.制御部は分離手順を実行するように構成されており、分離手順は、血液を血漿画分、赤血球画分および単核細胞画分とに分離するために分離器を操作することと、血漿画分を分離器内の第1ステージから分離器内の第2ステージ内に搬送するためにポンプシステムを操作することと、第2ステージ内の血漿画分を血小板含有画分と実質的に細胞を含有しない血漿画分とに分離するために分離器を操作することを含む、態様15から態様21までのいずれか1項に記載の血液分離装置。
【0079】
態様23.制御部は分離手順を実行するように構成されており、分離手順は、手順セットポイントにおいて単核細胞含有画分を分離器から供給源に搬送する間、血漿画分が分離器内の第1ステージから第2ステージに搬送される速度を減少するためにポンプシステムを操作することを含む、態様22に記載の分離装置。
【0080】
態様24.制御部は、分離手順の間に、分離器内の第1ステージ内の血漿画分と赤血球画分との間の界面の位置を検出するように構成されており、血漿画分が分離器内の第1ステージから第2ステージに搬送される速度は界面が第1ステージ内の第1の位置から第1ステージ内の第2の位置に移動するまで減少される、態様23に記載の分離装置。
【0081】
態様25.制御部は、分離手順の間に、実質的にすべての単核細胞含有画分を分離器から搬送するために計算された予め定められた時間の長さの間または予め定められた体積の血液が供給源から引き出される間、界面を第2の位置に維持するように構成されている、態様22から態様24までのいずれか1項に記載の分離装置。
【0082】
態様26.手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送をするようにポンプが動作することは、単核細胞画分を分離器内の第1ステージから赤血球画分とともに搬送するようにポンプシステムを操作することを含む、態様22から態様25までのいずれか1項に記載の分離装置。
【0083】
態様27.手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送をするようにポンプが動作することは、採血の終了まで継続する、態様15から態様26までのいずれか1項に記載の分離装置。
【0084】
態様28.手順セットポイントにおいて分離器から供給源への単核細胞含有画分の搬送をするようにポンプが動作することは、採血の終了まで継続しない、態様15から態様26までのいずれか1項に記載の分離装置。
【0085】
態様29.分離器は遠心分離器である、態様15から態様28までのいずれか1項に記載の分離装置。
【0086】
上記の実施形態および例は、本主題の原理のいくつかの応用例を示していることが理解されるであろう。本明細書で個別に開示または請求された特徴の組み合わせを含む、請求された主題の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正がなされ得る。これらの理由から、本明細書の範囲は上記の説明に限定されず、以下の特許請求の範囲に記載されている通りであり、特許請求の範囲は、本明細書で個別に開示または請求された特徴の組み合わせを含む、本明細書の特徴を対象とし得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】