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特開2023-2499ガソリンエンジン排出処理システムのための、単金属ロジウム含有四元変換触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002499
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ガソリンエンジン排出処理システムのための、単金属ロジウム含有四元変換触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20221227BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221227BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221227BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221227BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221227BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221227BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J35/04 301C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/24 B
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
F01N3/035 A
F01N3/035 E
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022135079
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2019506430の分割
【原出願日】2017-07-25
(31)【優先権主張番号】16182969.2
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クラフィロン,ヤノーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジームント,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シアニ,アッティリオ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】キンネ,マルクス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガス排出を処理することに加えて、微粒子を捕捉するためにガソリンエンジンと共に使用するのに適した排気システムおよび構成要素を提供する。特に、従来の三元変換(TWC)の下流で使用するためのガソリンエンジン(GPFまたはPFG)用の微粒子フィルターを提供し、組み合わせによって三元変換の完全な機能性を提供する。
【解決手段】炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流を処理するためのガソリン直噴エンジンの下流の排出処理システムであって、フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する密結合三元変換(TWC)複合体と、前記密結合TWC複合体の下流に位置し、微粒子フィルターの壁に浸透する第2のTWC触媒材料を有する触媒微粒子フィルターと、を有し、前記第2のTWC触媒材料は、唯一の白金族金属としてロジウムを含む、排出処理システムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流を処理するためのガソリン直噴エンジンの下流の排出処理システムであって、
フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する密結合三元変換(TWC)複合体と、
前記密結合TWC複合体の下流に位置し、微粒子フィルターの壁に浸透する第2のTWC触媒材料を有する触媒微粒子フィルターと、を有し、
前記第2のTWC触媒材料は、唯一の白金族金属としてロジウムを含む、排出処理システム。
【請求項2】
前記微粒子フィルターが約13μmから約25μmの範囲の平均細孔径を有する、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項3】
前記微粒子フィルターは、約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の非被覆多孔度を有し、前記非被覆多孔度は、前記微粒子フィルターの体積に対する前記微粒子フィルターの細孔の体積の割合である、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項4】
前記触媒微粒子フィルターは、前記微粒子フィルターの非被覆多孔度より小さい被覆多孔度を有する、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項5】
重なっているウォッシュコートの領域を任意に除き、前記微粒子フィルターの壁の表面に触媒材料の層が存在しない、請求項4に記載の排出処理システム。
【請求項6】
前記被覆多孔度は、前記TWC触媒材料のウォッシュコート充填に線形的に比例する、請求項4に記載の排出処理システム。
【請求項7】
前記被覆多孔度は、前記非被覆多孔度の75%と98%の間にある、請求項4に記載の排出処理システム。
【請求項8】
前記被覆多孔度は、前記非被覆多孔度の80%と95%の間にある、請求項7に記載の排出処理システム。
【請求項9】
前記触媒微粒子フィルターの被覆背圧は前記エンジンの性能に悪影響を及ぼさない、請求項4に記載の排出処理システム。
【請求項10】
前記第2のTWC触媒材料は、約2.5μmから約8μmの範囲のd90平均粒子直径を有する、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項11】
前記第2のTWC触媒材料は、前記微粒子フィルターの入口側、出口側、またはその両方に浸透する単一のウォッシュコート組成物からなる、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項12】
第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0%から100%まで入口側に存在し、第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0%から100%まで出口側に存在し、前記第1および第2の単一ウォッシュコート層の少なくとも一つは0%より多い量で存在する、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項13】
第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~100%まで入口側に存在し、第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~100%まで出口側に存在する、請求項12に記載の排出処理システム。
【請求項14】
前記第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~55%まで入口側に存在し、前記第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~55%まで出口側に存在する、請求項13に記載の排出処理システム。
【請求項15】
単一のウォッシュコート層が、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約100%まで入口側に存在し、出口側にはウォッシュコート層が存在しない、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項16】
単一のウォッシュコート層が、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約100%まで出口側に存在し、入口側にはウォッシュコート層が存在しない、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項17】
前記第2のTWC触媒材料を、約0.17g/inから約5g/in(約10g/Lから約300g/L)の範囲の量で含む、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項18】
前記第2のTWC触媒材料は、本質的にロジウム、セリアまたはセリア複合体、およびアルミナからなる、請求項1に記載の排出処理システム。
【請求項19】
炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流の処理のためガソリン直噴エンジンの下流に、および、フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する三元変換(TWC)複合体の下流に、排出処理システム中に配置された触媒微粒子フィルターであって、
約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を有する微粒子フィルター、および
約0.17g/inから約5g/in(10g/Lから300g/L)の範囲の量の第2の三元変換(TWC)触媒材料であって、唯一の白金族金属としてロジウムを含む第2のTWC触媒材料、を有し、
前記触媒微粒子フィルターは、前記微粒子フィルターの非被覆多孔度より小さい被覆多孔度、および、前記微粒子フィルターの非被覆背圧と実質的に同じ被覆背圧を有する、触媒微粒子フィルター。
【請求項20】
前記壁厚は約8ミルであり、
前記第2の三元変換(TWC)触媒材料の量は、約0.17g/inから約1.5g/in(10g/Lから90g/L)の範囲内であり、前記第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み、
前記微粒子フィルターは、約13μmから約25μmの範囲の平均細孔径分布を有する、請求項19に記載の触媒微粒子フィルター。
【請求項21】
炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気ガスを処理する方法であって、
請求項1から19のいずれか一項による触媒微粒子フィルターを得ること、および、
前記触媒微粒子フィルターを、ガソリン直噴エンジン、および、フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する三元変換(TWC)複合体の下流に位置付けることを含み、
前記エンジンの運転時に前記ガソリン直噴エンジンからの排気ガスが前記触媒微粒子フィルターに接触する、方法。
【請求項22】
ガソリン直噴エンジン用の排出処理システムを製造する方法であって、
フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料複合体を有する三元変換(TWC)複合体を、前記ガソリン直噴エンジンの下流に位置付けること;
第2の三元変換(TWC)触媒材料が浸透する微粒子フィルターの壁を有する触媒微粒子フィルターを得ること、前記微粒子フィルターは約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を含み、前記第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み;
前記触媒微粒子フィルターを前記TWC複合体の下流に位置付けること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、微粒子と併せて、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含有するガソリンエンジンのガス流を処理するために使用される触媒を有する排出処理システムに関する。より具体的には、本発明は、ロジウムのみから成る単金属である三元変換(TWC)触媒と微粒子フィルターとを含む四元変換器(FWC)に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンの微粒子排出は、Euro6(2014)基準を含む規制の対象となっている。特に、その動作レジームが微細な微粒子の形成をもたらすある特定のガソリン直噴(GDI)エンジンが開発されている。ガソリンエンジンのための後処理システムは、微粒子物質基準を達成する必要がある。ディーゼル希薄燃焼エンジンによって生成される微粒子とは対照的に、GDIエンジン等のガソリンエンジンによって生成される微粒子は、より微細で、より少ない量である傾向にある。これは、ガソリンエンジンと比較して、ディーゼルエンジンの異なる燃焼条件に起因する。例えば、ガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンよりも高い温度で運転する。また、炭化水素成分が、ディーゼルエンジンと比較して、ガソリンエンジンの排出において異なる。
【0003】
未燃炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物汚染物質の排出は規制され続けている。三元変換(TWC)触媒を含む触媒コンバータはしたがって内燃エンジンの排気ガスラインに位置される。このような触媒は、排気ガス流での酸素による未燃焼炭化水素および一酸化炭素の酸化を促進し、ならびに窒素酸化物の窒素への還元を促進する。
【0004】
微粒子トラップ上または微粒子トラップ内に被覆されたTWC触媒を含む触媒微粒子トラップが、米国特許第8,173,087号(Wei)において提供される。微粒子フィルターを有するガソリンエンジン排出処理システムもまた米国特許第8,815,189号(Arnold)において提供される。
【0005】
排出技術は、排気システムの背圧と容積の制約によって制限されている。すなわち、いかなる新技術も、規定された背圧および容積内において、いずれにも影響を与えないよう最小限にしなければならない。
【0006】
背圧を過度に増大させることなく、効率的なフィルターと共に十分で費用効果の高いTWCを提供し、規制されたHC、NOx、およびCO変換を達成し、微粒子物質排出を満たす、触媒フィルターを提供するという要求が継続してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,173,087号
【特許文献2】米国特許第8,815,189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
炭化水素、窒素酸化物、および一酸化炭素のようなガス排出を処理することに加えて、微粒子を捕捉するためにガソリンエンジンと共に使用するのに適した排気システムおよび構成要素を提供する。関心は、従来の三元変換(TWC)の下流での使用のためのガソリンエンジン(GPFまたはPFG)用の微粒子フィルターを提供し、その組み合わせによって三元変換(TWC)の完全な機能性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様では、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流の処理のためのガソリン直噴エンジンの下流にある排出処理システムを提供し、該排出処理システムは、
フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を含む密結合三元変換(TWC)複合体、および
前記密結合TWC複合体の下流に位置する触媒微粒子フィルターであって、前記微粒子フィルターの壁に浸透する第2のTWC触媒材料を含む触媒微粒子フィルター、を有し、
前記第2のTWC触媒材料は、唯一の白金族金属としてロジウムを含む。
【0010】
微粒子フィルターは、約13μmから約25μmまでの範囲の平均細孔径を有することができる。微粒子フィルターは、約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)までの範囲の壁厚および55%から70%までの範囲の非被覆多孔度を有することができる。触媒微粒子フィルターは、微粒子フィルターの非被覆多孔度よりも小さい被覆多孔度を有することができる。詳細な実施形態において、重なっているウォッシュコートの領域を任意に除き、微粒子フィルターの壁の表面に触媒材料の層は存在しない。別の詳細な実施形態では、被覆多孔度はTWC触媒材料のウォッシュコート充填に線形的に比例する。被覆多孔度は非被覆多孔度の75%から98%の間であり得る。被覆多孔度は非被覆多孔度の80%から95%の間であり得る。被覆多孔度は非被覆多孔度の80%から93%未満の間であり得る。触媒微粒子フィルターの被覆背圧は一般にエンジンの性能に悪影響を及ぼさない。
【0011】
第2のTWC触媒材料は、約2.5μmから約8μmまでの範囲のd90平均粒径を有することができる。第2のTWC触媒材料は、微粒子フィルターの入口側、出口側、またはそれらの両方に浸透する単一ウォッシュコート組成物から形成することができる。
【0012】
第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0~100%まで入口側に存在してもよく、第2の単一のウォッシュコート層は、下流端から微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0~100%まで出口側に存在してもよく、第1および第2の単一ウォッシュコート層の少なくとも一方は0%より多い量で存在する。
【0013】
第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~100%まで入口側に存在してもよく、第2の単一のウォッシュコート層は、下流端から微粒子フィルターの軸長さに沿って最大その約50~100%まで出口側に存在してもよい。第1の単一のウォッシュコート層は、上流端から微粒子フィルターの軸長さに沿って最大その約50~55%まで入口側に存在してもよく、第2の単一のウォッシュコート層は、下流端から微粒子フィルターの軸長さに沿って最大その約50~55%まで出口側に存在してもよい。
【0014】
単一のウォッシュコート層は、上流端から微粒子フィルターの軸長さに沿って最大その約100%まで入口側に存在してもよく、出口側にウォッシュコート層は存在しない。
【0015】
単一のウォッシュコート層は、下流端から微粒子フィルターの軸長さに沿って最大その約100%まで出口側に存在してもよく、入口側にウォッシュコート層は存在しない。
【0016】
第2のTWC触媒材料は、約0.17g/inから約5g/in(約10g/Lから約300g/L)の範囲の量で存在できる。
【0017】
第2のTWC触媒材料は、本質的にロジウム、セリアまたはセリア複合体、およびアルミナを含むことができる。
【0018】
別の態様は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流の処理のためにガソリン直噴エンジンの下流に、および、フロースルー基板上の第1のTWC触媒材料を含む三元変換(TWC)複合体の下流に、排出処理システム内に位置する触媒微粒子フィルターを提供し、該触媒微粒子フィルターは、
約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を有する微粒子フィルター、および
約0.17g/inから約5g/in(10g/Lから300g/L)の範囲の量の第2の三元変換(TWC)触媒材料であって、唯一の白金族金属としてロジウムを含む第2のTWC触媒材料、を含み、
前記触媒微粒子フィルターは、前記微粒子フィルターの非被覆多孔度よりも小さい被覆多孔度、および、前記微粒子フィルターの非被覆背圧と実質的に同じ被覆背圧を有する。
【0019】
壁厚は約8ミルであってよく、第2の三元変換(TWC)触媒材料の量は、約0.17g/inから約1.5g/in(10g/Lから90g/L)の範囲内であってよく、第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み、微粒子フィルターは、約13μmから約25μmの範囲の平均細孔径分布を有することができる。
【0020】
別の態様は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気ガスを処理する方法であり、該方法は、本明細書に開示されたいずれかの実施形態による触媒微粒子フィルターを得ること;および、前記触媒微粒子フィルターをガソリン直噴エンジンおよびフロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する三元変換(TWC)複合体の下流に位置付けること;を有し、エンジンの運転時にガソリン直噴エンジンからの排気ガスが前記触媒微粒子フィルターに接触する。
【0021】
さらなる態様は、ガソリン直噴エンジン用の排出処理システムを製造する方法であって、該方法は、フロースルー基板上に第1の三元変換(TWC)複合体を含む三元変換(TWC)複合材料をガソリン直噴エンジンの下流に位置付けること;第2の三元変換(TWC)触媒材料が浸透する微粒子フィルターの壁を有する触媒微粒子フィルターを得ること、前記微粒子フィルターは約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を含み、前記第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み;前記触媒微粒子フィルターを前記TWC複合体の下流に位置付けること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、添付の図面と関連して本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することでより完全に理解されるであろう。
図1】詳細な実施形態による、エンジン排出処理システムを示す概略図である。
図2】ウォールフローフィルター基板の斜視図である。
図3】ウォールフローフィルター基板のセクションの切断図である。
図4】FWCコーティング設計を示す概略図である。
図5】FWCコーティング設計を示す概略図である。
図6】FWCコーティング設計を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
高い微粒子濾過効率および費用効果の高いガス排出変換を達成するように設計されたガソリン直噴エンジン(GDI)のためのフィルターを提供する。最新技術のガソリン触媒後処理システムは、一般に、2つの触媒、すなわち、エンジンに近接(例えばCC:密結合位置)する第1の触媒および、排気後処理システムに沿って第1の触媒よりさらに下流(例:UF:アンダーフロア位置)の第2の触媒を含む。このようなCC+UF構成に適用される触媒は、異なる温度安定性および変換効率の要求、すなわち、エンジンにより近いCC位置の触媒は、UF位置に配置された触媒よりも高い熱耐性を必要とする要求を有する。本明細書におけるFWC用の触媒配合物は、費用効果の高い解決策を提供するように設計されている。本発明の目的は、UF位置用のFWC配合物であって、活性貴金属として単金属白金族金属であるロジウム(Rh)のみを利用し、バラジウム(Pd)の使用を完全に回避し、結果として大幅にコストを削減する機会を提供する。
【0024】
歴史的には、UF位置において使用されるTWC配合物は、活性貴金属として、PdとRhの両方を含む。Pdは一般にアルミナおよび酸素吸蔵成分の両方と共に使用され、それぞれ炭化水素(HC)の酸化を触媒し、Ce3+/Ce4+酸化還元反応を活性化させる。UF位置においてTWC触媒に使用されるPdの量はHC放出を著しく減少させるには十分ではなく、そしてCe3+/Ce4+酸化還元反応はRhのみの適切な使用によっても効果的に活性化され得ることが明らかになっている。
【0025】
以下の定義が本明細書において使用される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「浸透」という用語は、TWC触媒の微粒子フィルターの多孔性壁への分散を示すのに使用される場合には、特定の組成物が壁厚内の少なくとも中空領域の大部分に浸透し、壁厚全体にわたって内側面に堆積することを意味する。このようにして、前記材料はフィルターの壁全体に分散されるようになる。
【0027】
微粒子フィルターの多孔度は、フィルターの容積に対するフィルター孔の容積の割合である。多孔度を測定する1つの方法は水銀圧入法によるものである。フィルターを切断し、各セクションの多孔度を測定し、結果を平均する。例えば、フィルターは前面/入口部分、中央部分、および後面/出口部分にセクション化することができ、各セクションの多孔度を測定し、そして結果を平均することができる。非被覆多孔度は、いかなる触媒材料も適用されていないフィルターの多孔度である。被覆多孔度は、触媒材料とフィルターの組み合わせである触媒フィルターの多孔度である。触媒微粒子フィルターは、微粒子フィルターの非被覆多孔度よりも小さい被覆多孔度を有することができ、これは、ウォッシュコートが壁の表面上ではなくフィルターの細孔内に存在することを示す。本明細書で使用されるいくつかの方法においては、TWC触媒材料のウォッシュコート充填に対し直線的に比例する被覆多孔度をもたらす結果となり、これは、材料がフィルターの壁ではなく細孔内に存在するためである。被覆多孔度は、非被覆多孔度の75%と98%の間、または80%と95%の間、さらには80%と93%の間にあり得る。
【0028】
フィルターの背圧は、フィルターを通る流動抵抗の尺度であり、例えば、ミリバールの単位で表される。非被覆背圧は、触媒材料が適用されていないフィルターの背圧である。被覆背圧は、触媒材料とフィルターとの組み合わせである触媒フィルターの背圧である。触媒微粒子フィルターは、エンジンの性能に悪影響を及ぼさない被覆背圧を有することができる。悪影響を及ぼさない圧力降下とは、エンジンが広範なエンジン作動モードで概ね同じ性能(例えば、燃料消費)を、被覆状態または非被覆状態のどちらかの状態のフィルター基板の存在下で、発揮することを意味する。
【0029】
「FWC」とは、次に定義される三元変換(TWC)機能に加えて、フィルタリング機能がある四元変換を指す。
【0030】
「TWC」とは、三元変換の機能であって、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物が実質的に同時に変換される機能を指す。ガソリンエンジンは典型的には、0.5Hzから2Hzの摂動周波数で、燃料リッチと燃料リーンの空気燃料混合比(A/F比)(λ=1±約0.01)の間でわずかに振動または摂動するほぼ理論空燃比の反応条件下で運転する。本明細書における「理論空燃比」の使用は、理論空燃比近くのA/F比の振動または摂動を説明するガソリンエンジンの条件を指す。TWC触媒は、様々な空気対燃料比の下で酸素を保持および放出させることができる多価状態を有するセリアなどの酸素吸蔵成分(OSCs)を含む。NOxが還元されているリッチ条件下においては、OSCは未反応のCOおよびHCを消費するために少量の酸素を供給する。同様に、COおよびHCが酸化されているリーン条件下においては、OSCは過剰の酸素および/またはNOxと反応する。結果として、燃料リッチと燃料リーンの空気燃料混合比の間で振動する雰囲気の存在下においても、HC、CO、およびNOxの変換はすべて同時に(または本質的にすべて同時に)行われる。典型的には、TWC触媒は、例えばパラジウムおよび/またはロジウム、任意選択可能な白金など、1種または複数種の白金族金属;酸素吸蔵成分;任意選択可能な促進剤および/または安定剤を含む。リッチ条件下では、TWC触媒はアンモニアを生成することができる。
【0031】
「完全なTWC機能性」への言及は、規制機関および/または自動車製造業者の要求に従って、HCおよびCOの酸化およびNOxの還元が、達成可能であることを意味する。このようにして、変化するA/F(空気燃料)比の環境下において、適切なHC、NOx、およびCOの変換を確実にするために、HC、CO、およびNOxの変換を達成するために白金、パラジウム、およびロジウムなどの白金族金属成分が提供され、十分な酸素吸蔵容量を実現するために十分な酸素吸蔵成分(OSC)提供される。十分な酸素吸蔵容量とは、一般的には自動車製造業者によって定義される完全耐用年数の経時変化後に、触媒が最小量の酸素を吸蔵し、放出することができることを意味する。一例として、有用な酸素吸蔵容量は、酸素1リットルあたり100mgとすることができる。別例では、十分な酸素吸蔵容量は、80時間の1050℃での発熱経時変化後、酸素1リットルあたり200mgとすることができる。十分な酸素吸蔵容量は、オンボード診断(OBD)システムが、機能している触媒を確実に検出するために必要とされる。十分な酸素吸蔵容量が存在しない場合、OBDは、機能していない触媒の警報を引き起こす。高酸素吸蔵容量は、十分な量を上回り、触媒の作動ウインドウを広げ、および自動車製造業者に対してエンジン管理におけるより高い柔軟性を可能にする。
【0032】
酸素吸蔵成分(OSC)への言及は、多価状態を有し、酸素または窒素酸化物などの酸化体と酸化条件下で活発に反応することができるか、または一酸化炭素(CO)または水素などの還元体と還元条件下で反応することができる実体を指す。適切な酸素吸蔵成分の例は、セリアを含む。プラセオジミアもOSCとして含まれてよい。ウォッシュコート層へのOSCの送達は、例えば、混合酸化物の使用によって達成することができる。例えば、セリアは、セリウムとジルコニウムの混合酸化物、および/またはセリウムと、ジルコニウムと、ネオジムの混合酸化物によって送達することができる。例えば、プラセオジミアは、プラセオジムとジルコニウムの混合酸化物、および/またはプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物によって送達することができる。
【0033】
良好な活性および長い寿命を示すTWC触媒は、高表面積の耐火性金属酸化物支持体、例えば、高表面積アルミナ被覆などに配置される1つまたは複数の白金族金属(例えば、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、およびイリジウム)を含む。支持体は、適切な担体または基板、例えば耐火性セラミックもしくは金属ハニカム構造を含むモノリス担体、または、例えば耐火性材料の球体もしくは短い突出したセグメントのような適切な耐火性粒子などの上に担持される。耐火性金属酸化物支持体は、ジルコニア、チタニア、アルカリ土類金属酸化物、例えばバリア、カルシア、もしくはストロンチア、または最も一般的には希土類金属酸化物、例えばセリア、ランタナ、および2つ以上の希土類金属酸化物の混合物等の材料によって、熱分解に対して安定化されてもよい。例えば、米国特許第4,171,288号(Keith)を参照するとよい。TWC触媒はまた、酸素吸蔵成分を含むように作成することもできる。
【0034】
触媒ウォッシュコート層における「支持体」への言及は、貴金属、安定剤、促進剤、結合剤などを会合、分散、含浸、または他の適切な方法によって受容する材料を指す。支持体の例としては、これらに限定されないが、高表面積耐火性金属酸化物および酸素吸蔵成分を含有する複合体とを含む。高表面積耐火性金属酸化物支持体は、20オングストロームより大きい細孔と広い細孔分布を有する支持粒子を指す。高表面積耐火性金属酸化物支持体は、例えば、アルミナ支持体材料は、「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれ、典型的には1グラムあたり60平方メートル(「m/g」)を超え、しばしば最大約200m/g以上のBET表面積を示す。このような活性アルミナは、通常、アルミナのガンマ相およびデルタ相の混合物であるが、かなりの量のエータ、カッパー、およびシータアルミナ相を含有してもよい。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物は、所与の触媒中の触媒成分のうちの少なくともいくつかに対する支持体として使用され得る。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、および他の材料が、そのような使用で知られている。これらの材料の多くは、活性アルミナよりもかなり低いBET表面積を有するという欠点があるが、その欠点は、結果として生じる触媒のより長い耐久性によって相殺される傾向がある。「BET表面積」は、N吸収によって表面積を判定するBrunauer、Emmett、Teller方法を指す通常の意味を有する。
【0035】
1つまたは複数の実施形態は、アルミナ、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリアランタナ-アルミナ、バリアランタナ-ネオジミアアルミナ、およびアルミナ-セリアから成る群から選択される、活性化合物を含む高表面積耐火性金属酸化物支持体を含む。酸素吸蔵成分を含有する複合体の例としては、これらに限定されないが、セリア-ジルコニアおよびセリア-ジルコニア-ランタナを含む。「セリア-ジルコニア複合体」への言及は、いずれの成分の量をも特定せずに、セリアおよびジルコニアを含む複合材料を意味する。適切なセリア-ジルコニア複合体は、これらに限定されないが、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはさらに95%のセリア含有量を有する複合体を含む。ある特定の実施形態では、支持体が100%の名称上セリア含有量(すなわち、>99%純度)を有するバルクセリアを含むことを提供する。
【0036】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されている構成または処理工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施または実行することが可能である。
【0037】
図1では、排出処理システム3は、ライン7を経由して密結合(CC)位置にある第1のTWC触媒9へ排気を運ぶガソリンエンジン5を有している。TWCの下流では、ライン11を経由して排気流を受け取る被覆微粒子フィルター(FWC)13がアンダーフロア(UF)位置にある。ライン15は、さらなる処理構成要素に通じ、および/またはテール管に通じ、そしてシステム外に出ることができる。TWC被覆微粒子フィルター13は、TWCの全機能を集合的に提供し、それによって排出要求を満たすために、CC TWC触媒と併せて作動するように設計されたTWC触媒充填を含有する。
【0038】
微粒子フィルター
微粒子フィルターへの言及は、直噴ガソリンエンジン内での燃焼反応によって生成された微粒子を捕捉するようにサイズ設定され構成された基板を意味する。微粒子の捕捉は、例えば、微粒子(または煤)フィルターの使用により、微粒子の流れの方向の変化が微粒子を排気流から脱落させるような内部蛇行状経路を有するフロースルー基板の使用により、波形金属担体等の金属基板の使用により、または、当業者に既知の他の方法により、生じ得る。排気流から微粒子を落とすことができる粗面を有する管のような、他の濾過装置が適し得る。屈曲のある管もまた適切であり得る。
【0039】
フィルターに関して、図2は、微粒子フィルターに適した例示的なウォールフローフィルター基板の斜視図を示す。TWCまたは酸化触媒組成物を支持するのに有用なウォールフロー基板は、複数の細い実質的に平行なガス流路であって基板の縦方向軸(または軸長さ)に沿って延在するガス流路を有する。典型的に、各流路は、基板本体の一端で塞がれ、交互に反対側の端面で塞がれた流路を有する。このようなモノリス担体は、断面1平方インチあたり最大約300の流路(または「セル」)を含有してもよいが、それよりはるかに少ない数が使用されてもよい。例えば、担体は、約7から300、より一般的には約200から300のセル数(「cpsi」)を1平方インチあたりに有してよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有することができる。FWC用のウォールフロー基板は典型的に、6から14ミルまたは152から356μmの壁厚を有する。被覆がフィルターの軸長さに沿って提供されるように、軸方向ゾーニングが望ましいかもしれない。入口側において、上流端54から測定したときに、被覆は軸長さの最大50%まで(例えば、1から49.9%、または10から45%)、軸長さの50%から75%、またはさらには軸長さの100%まで延びてもよい。出口側において、下流端56から測定したときに、被覆は、軸長さの最大50%まで(例えば、1から49.9%、または10から45%)、軸長さの50%から75%、またはさらには軸長さの100%まで延びてもよい。
【0040】
図2および3は、複数の流路52を有するウォールフローフィルター基板50を示す。流路は、フィルター基板の内壁53によって管状に囲まれる。基板は、入口または上流端54と、出口または下流端56を有する。交互の流路は、入口端において入口プラグ58で、出口端において出口プラグ60で塞がれ、入口54および出口56で対向する市松模様を形成する。ガス流62は、塞がれていないチャネル入口64を通って上流端54に入り、出口プラグ60によって止められ、チャネル壁53(多孔性である)を通って出口側66へと拡散する。フィルターの入口側の被覆は、ガス流62が最初に入口被覆と接触するように、被覆が壁53上または内側に存在することを意味する。フィルターの出口側の被覆は、ガス流62が入口被覆の後に出口被覆と接触するように、被覆が壁53上または内側に存在することを意味する。
【0041】
図4において、第1のウォッシュコート102は入口側の50%から55%の長さで設けられ、第2のウォッシュコート104は出口側の50%から55%の長さで設けられている。図4の実施形態は、全体的なウォッシュコート充填が1.5g/in以上、たとえば、1.5~3g/in、さらには2.5g/inである高いウォッシュコート充填に適し得る。図5において、単一のウォッシュコート102が入口側の長さの100%まで(0%より大きく100%までおよびその間のすべての値を含む)設けられており、出口側にはウォッシュコートは設けられていない。図5の実施形態は、全体的なウォッシュコート充填が1.5g/in未満、例えば0.25g/inから1.5g/in未満、さらには0.5~10g/inである低いウォッシュコート充填に適し得る。図6の実施形態では、単一のウォッシュコート104が出口側の長さの100%まで(0%より大きく100%までおよびその間のすべての値を含む)設けられており、入り口側にはウォッシュコートは設けられていない。図6の実施形態も、全体的なウォッシュコート充填が1.5g/in未満、例えば0.25g/inから1.5g/in未満、またさらには0.5~1.0g/inである低いウォッシュコート充填に適し得る。図4-6において、ウォッシュコートは壁上に配置されてもよく、および/または壁に浸透してもよい。好ましい実施形態では、ウォッシュコートは壁に浸透し、壁上には配置されない。
【0042】
ウォールフローフィルター基板は、コージエライト、アルミナ、シリコンカーバイド、チタン酸アルミニウム、ムライトなどのセラミック様材料、または耐火性の金属から構成され得る。ウォールフロー基板はセラミック繊維複合材料から形成されてもよい。特定のウォールフロー基板は、コージエライト、シリコンカーバイド、およびチタン酸アルミニウムから形成される。そのような材料は、排気流を処理する際に遭遇する環境、特に高温に耐えることができる。
【0043】
本発明のシステムで使用するためのウォールフロー基板は、流体流が物品全体にわたる圧力または背圧を大きく上昇させ過ぎることなく通過する薄い多孔質壁のハニカム(モノリス)を含むことができる。システムで使用されるセラミックウォールフロー基板は、少なくとも40%(例えば40%から70%、さらには55%から70%)の多孔度(非被覆多孔度とも呼ばれる)を有する材料で形成され得る。有用なウォールフロー基板は、10ミクロン以上、好ましくは13から25ミクロンの平均細孔径を有することができる。これらの多孔度およびこれらの平均細孔径を有する基板が以下に記載される技術で被覆される場合、適切なレベルのTWC組成物が基板上に充填され、優れた炭化水素、CO、および/またはNOx変換効率を達成することができる。これらの基板は、触媒充填にもかかわらず、適切な排気流特性、すなわち許容可能な背圧を依然として保持することができる。
【0044】
本発明で使用される多孔質ウォールフローフィルターは、1または複数の触媒材料を構成要素の壁の上に有するかまたは壁の内部に含有するように触媒作用を受ける。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側と出口側の両方に存在してもよく、または壁自体が、全部または一部が触媒材料から成るようにしてよい。本発明は、要素の入口壁および/または出口壁に触媒材料の1つまたは複数のウォッシュコートを使用すること、および触媒材料の1つまたは複数のウォッシュコートの組み合わせを使用することを含む。
【0045】
金属基板に関して、有用な基板は、1つまたは複数の金属または金属合金から構成され得る。金属担体は、波形シートまたはモノリシック形態などの様々な形状で用いられ得る。具体的な金属支持体には、チタンおよびステンレス鋼などの耐熱性金属および金属合金、ならびに鉄が実質的または主成分である他の合金が含まれる。このような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの一つまたは複数を含有してもよく、これらの金属の総量は、有利に少なくとも15重量%の合金、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、最大20重量%のニッケルを、含み得る。前記合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどの1つまたは複数の他の金属を少量または微量含有してもよい。金属担体の表面は、高温例えば1000℃以上で酸化され、担体の表面に酸化層を形成することによって合金の腐食に対する抵抗を高めることができる。そのような高温誘導酸化は、触媒材料の担体への付着を促し得る。
【0046】
被覆ウォールフローフィルター
従来の技術を使用してTWCまたは酸化触媒組成物でウォールフローフィルターをコーティングするために、金属塩を使用して成分混合物が調製され、該混合物は触媒スラリーを形成するため通常は有機および無機塩の混合物である。そのようなスラリーは、典型的には、固形が25%~0%の範囲の固形分で、20℃以上で14から400mPa・sの動的粘度を有し得る。基板は、基板の頂部がスラリーの表面のちょうど上方に位置するように、触媒スラリーの一部に垂直に浸漬される。このようにして、スラリーは、各ハニカム壁の入口面に接触するが、各壁の出口面に接触することが防止される。試料は、スラリー中に約30から60秒間放置される。フィルターはスラリーから除去され、過剰なスラリーは、最初に流路から排出させ、次に圧縮空気を吹き付けることにより(スラリーの浸透方向の反対に)、ウォールフローフィルターから除去される。この従来の技術を使用することによって、触媒スラリーは、フィルターの壁に浸透するが、完成したフィルターで過度な背圧が形成される程度までには、細孔は閉塞されない。この従来の技術を使用することにより、フィルターの被覆多孔度はその非被覆多孔度と実質的に同じであると予想される。被覆フィルターは、典型的には約100℃で乾燥され、より高い温度(例えば、300から450℃および最大590℃)で焼成される。焼成後、触媒充填は、フィルターの被覆重量および非被覆重量の計算によって決定することができる。当業者には明らかなように、触媒、充填は、被覆スラリーの固形分を変化させることによって変更することができる。代替的に、被覆スラリー中にフィルターを繰り返し浸漬し、続いて、上記のように過剰なスラリーを除去することができる。
【0047】
改良された技術を使用してTWCまたは酸化触媒組成物でウォールフローフィルターをコーティングするために、従来の技術と比較して低い粘度を有する触媒スラリーを形成するために無機金属塩だけを使用して成分混合物が調製される。このようなスラリーは、典型的には、25%~0%の範囲の固形分で、20℃で約5から40mPa・s未満、または約5から30mPa・s未満の動的粘度を有し得る。スラリー粘度は、従来の技術よりも少なくとも50%、さらには75~90%のように著しく低い。処理工程ステップの数は、従来の技術と比較して少ない。基板は、塗布されるべきコートの目標長さに等しい基板の長さの分、触媒スラリーの一部に垂直に浸漬される。このようにして、スラリーは各ハニカム壁の入口面と接触し、浸漬の長さにわたって壁に完全に浸透する。試料はスラリー中に約1~6秒間放置される。フィルターはスラリーから除去され、過剰なスラリーは、最初に流路から排出させ、次に圧縮空気を吹き付けることにより(スラリーの浸透方向の反対に)、ウォールフローフィルターから除去される。
【0048】
この技術を使用することによって、触媒スラリーは、フィルターの壁に浸透するが、完成したフィルターで過度な背圧が形成される程度までには、細孔は閉塞されない。この改良された技術を使用することにより、ウォッシュコートは壁の表面上ではなく主にフィルターの細孔内に完全に存在するため、フィルターの被覆多孔度はその非被覆多孔度よりも低い。さらに、従来の技術と比較して、低粘性スラリーの壁へのより効率的な浸透により、被覆長さに沿ってスラリー分布の改善された均一性が達成される。最後に、そのような技術を使用することにより、そして壁への改善されたスラリーの浸透性と均一性の結果として、上記の伝統的な技術の完成したフィルターと比較して、より低い背圧増大が達成される。被覆フィルターは、典型的には約100℃で乾燥され、より高い温度(例えば、300から450℃および最大590℃)で焼成される。焼成後、触媒充填は、フィルターの被覆重量および非被覆重量の計算によって決定することができる。当業者には明らかなように、触媒、充填は、被覆スラリーの固形分を変化させることによって変更することができる。代替的に、被覆スラリー中にフィルターを繰り返し浸漬し、続いて、上記のように過剰なスラリーを除去することができる。
【0049】
触媒複合体ウォッシュコートの調製
触媒複合体は、単一層または多数の層で形成されてもよい。いくつかの場合において、触媒材料の1つのスラリーを調製し、このスラリーを使用して担体上に多数の層を形成することが適切であり得る。複合体は、従来技術で知られた方法により容易に調製することができる。代表的な方法が以下に記載されている。本明細書で使用するとき、用語「ウォッシュコート」は、処理されるガス流が通過するのを可能とするのに十分に多孔性の、例えばハニカム型の担体部材のような基板担体材料に適用される、触媒材料または他の材料の薄い粘着性の被覆という当該分野における通常の意味を有する。したがって、「ウォッシュコート層」は、支持体粒子からなる被覆として定義される。「触媒ウォッシュコート層」は、触媒成分で含浸された支持体粒子からなる被覆である。
【0050】
触媒複合体は、担体上に層状に容易に調製することができる。特定のウォッシュコートの第1層のため、ガンマアルミナ等の高表面積耐熱性金属酸化物の細かく割られた粒子が、適切な媒体中、例えば、水中でスラリー化される。貴金属(例えば、パラジウム、ロジウム、白金、および/またはそれらの組み合わせ)、安定剤、および/または促進剤等の成分を取り込むために、そのような成分は、水溶性または水分散性化合物の混合物または複合物としてスラリーに取り込まれてもよい。典型的に、パラジウムが所望される場合、パラジウム成分は、耐熱性金属酸化物支持体、例えば、活性アルミナ上での成分の分散を達成するために、化合物または複合物の形態で利用される。用語「パラジウム成分」とは、その焼成または使用の際に、触媒的に活性な形態、通常、金属または金属酸化物に分解またそうでなければ変換する何らかの化合物、複合物等を意味する。金属成分の水溶性化合物もしくは水分散性化合物または複合体は、金属成分を耐熱性金属酸化物支持体粒子上に含浸または堆積するために使用される液体媒体が、触媒組成物中に存在し得る金属もしくはその化合物もしくはその複合物または他の成分と不利に反応せず、加熱および/または真空を適用すると、揮発または分解によって金属成分から除去することが可能な限り、使用することができる。いくつかの場合において、触媒が使用され、運転時に遭遇する高温にさらされるまで、液体の除去の完了は起こらない。概して、経済および環境態様の両方の観点から、貴金属の可溶性化合物または複合物の水溶液が利用される。例えば、適切な化合物は、硝酸パラジウムまたは硝酸ロジウムである。
【0051】
本発明の積層触媒複合体の任意の層を調製する適切な方法は、所望の貴金属化合物(例えば、パラジウム化合物)の溶液と、微粉化された高表面積耐熱性金属酸化物支持体、例えば後に水と組み合わされて被覆可能なスラリーを形成する湿潤固体を形成するように前記溶液を実質的に全て吸収する程度に十分に乾燥しているガンマアルミナなどの少なくとも1つの支持体、の混合物を調製することである。1つまたは複数の実施形態において、スラリーは、酸性であり、例えば、約2から約7未満、または好ましくは3から5の範囲のpHを有する。スラリーのpHは、適量の無機酸または有機酸のスラリーへの添加によって低下させてもよい。酸および原材料の適合性が考慮される場合、両方の組み合わせを使用することができる。無機酸は、これに限定されないが硝酸を含む。有機酸は、これに限定されないが酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等を含む。その後、所望される場合、例えばセリウム-ジルコニウム複合体などの酸素吸蔵成分の水溶性または水分散性化合物、例えば酢酸バリウムなどの安定剤、および例えば、硝酸ランタンなどの促進剤、をスラリーに添加してもよい。
【0052】
一実施形態において、スラリーは、その後、実質的に全て固体が約30ミクロン未満の粒子サイズ、すなわち平均直径で約0.1~15ミクロンの粒径を有するように粉砕される。典型的なd90平均粒径第は、約2.5μmから約8μmの範囲である。粉砕は、ボールミル、サーキュラーミル、または他の同様の機器で達成されてもよく、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約30~40重量%であってもよい。
【0053】
追加の層、すなわち、第2および第3の層は調製され、担体への第1の層の堆積のための上述した方法と同じ方法で第1の層上に堆積されてよい。
【0054】
実施形態
様々な実施形態が以下に列挙される。以下に列挙される実施形態は本発明の範囲に従って全ての態様および他の実施形態と組み合わされ得ることは理解されるであろう。
【0055】
実施形態1 炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流を処理するためのガソリン直噴エンジンの下流の排出処理システムであって、
フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する密結合三元変換(TWC)複合体と、
前記密結合TWC複合体の下流に位置し、微粒子フィルターの壁に浸透する第2のTWC触媒材料を有する触媒微粒子フィルターと、を有し、
前記第2のTWC触媒材料は、唯一の白金族金属としてロジウムを含む、排出処理システム。
【0056】
実施形態2 前記微粒子フィルターが約13μmから約25μmの範囲の平均細孔径を有する、実施形態1に記載の排出処理システム。
【0057】
実施形態3 前記微粒子フィルターは、約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の非被覆多孔度を有する、実施形態1または2に記載の排出処理システム。
【0058】
実施形態3.5 前記非被覆多孔度は、前記微粒子フィルターの体積に対する前記微粒子フィルターの細孔の体積の割合である、実施形態1から3のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0059】
実施形態4 前記触媒微粒子フィルターは、前記微粒子フィルターの非被覆多孔度より小さい被覆多孔度を有する、実施形態1から3.5のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0060】
実施形態5 重なっているウォッシュコートの領域を任意に除き、前記微粒子フィルターの壁の表面に触媒材料の層が存在しない、実施形態1から4のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0061】
実施形態5.5 前記触媒材料は前記微粒子フィルターの壁の細孔の外側に存在しない、実施形態1から5のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0062】
実施形態6 前記被覆多孔度は、前記TWC触媒材料のウォッシュコート充填に線形的に比例する、実施形態4、5または5.5のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0063】
実施形態7 前記被覆多孔度は、前記非被覆多孔度の75%と98%の間にある、実施形態4から6のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0064】
実施形態8 前記被覆多孔度は、前記非被覆多孔度の80%と95%の間にある、実施形態4から7のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0065】
実施形態9 前記触媒微粒子フィルターの被覆背圧は前記エンジンの性能に悪影響を及ぼさない、実施形態1から8のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0066】
実施形態10 前記第2のTWC触媒材料は、約2.5μmから約8μmの範囲のd90平均粒子直径を有する、実施形態1から9のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0067】
実施形態11 前記第2のTWC触媒材料は、前記微粒子フィルターの入口側、出口側、またはその両方に浸透する単一のウォッシュコート組成物からなる、実施形態1から10のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0068】
実施形態12 第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0%から100%まで入口側に存在し、第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約0%から100%まで出口側に存在し、前記第1および第2の単一ウォッシュコート層の少なくとも一つは0%より多い量で存在する、実施形態1から11のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0069】
実施形態13 第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~100%まで入口側に存在し、第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~100%まで出口側に存在する、実施形態12に記載の排出処理システム。
【0070】
実施形態14 前記第1の単一ウォッシュコート層は、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~55%まで入口側に存在し、前記第2の単一ウォッシュコート層は、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約50~55%まで出口側に存在する、実施形態13に記載の排出処理システム。
【0071】
実施形態15 単一のウォッシュコート層が、上流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約100%まで入口側に存在し、出口側にはウォッシュコート層が存在しない、実施形態1から11のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0072】
実施形態16 単一のウォッシュコート層が、下流端から前記微粒子フィルターの軸長さに沿ってその約100%まで出口側に存在し、入口側にはウォッシュコート層が存在しない、実施形態1から11のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0073】
実施形態17 前記第2のTWC触媒材料を、約0.17g/inから約5g/in(約10g/Lから約300g/L)の範囲の量で含む、実施形態1から16のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0074】
実施形態18 前記第2のTWC触媒材料は、本質的にロジウム、セリアまたはセリア複合体、およびアルミナからなる、実施形態1から17のいずれか1つに記載の排出処理システム。
【0075】
実施形態19 炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気流の処理のためガソリン直噴エンジンの下流に、および、フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する三元変換(TWC)複合体の下流に、排出処理システム中に配置された触媒微粒子フィルターであって、
約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を有する微粒子フィルター、および
約0.17g/inから約5g/in(10g/Lから300g/L)の範囲の量の第2の三元変換(TWC)触媒材料であって、唯一の白金族金属としてロジウムを含む第2のTWC触媒材料、を有し、
前記触媒微粒子フィルターは、前記微粒子フィルターの非被覆多孔度より小さい被覆多孔度、および、前記微粒子フィルターの非被覆背圧と実質的に同じ被覆背圧を有する、触媒微粒子フィルター。
【0076】
実施形態19.5 前記多孔度は、前記微粒子フィルターの体積に対する前記微粒子フィルターの細孔の体積の割合である、実施形態19に記載の触媒微粒子フィルター。
【0077】
実施形態20 前記壁厚は約8ミルであり、
前記第2の三元変換(TWC)触媒材料の量は、約0.17g/inから約1.5g/in(10g/Lから90g/L)の範囲内であり、前記第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み、
前記微粒子フィルターは、約13μmから約25μmの範囲の平均細孔径分布を有する、実施形態19または19.5に記載の触媒微粒子フィルター。
【0078】
実施形態21 炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、および微粒子を含む排気ガスを処理する方法であって、
実施形態1から19.5のいずれか1つの実施形態による触媒微粒子フィルターを得ること、および、
前記触媒微粒子フィルターを、ガソリン直噴エンジン、および、フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料を有する三元変換(TWC)複合体の下流に位置付けることを含み
【0079】
前記エンジンの運転時に前記ガソリン直噴エンジンからの排気ガスが前記触媒微粒子フィルターに接触する、方法。
【0080】
実施形態22 ガソリン直噴エンジン用の排出処理システムを製造する方法であって、
フロースルー基板上に第1のTWC触媒材料複合体を有する三元変換(TWC)複合体を、前記ガソリン直噴エンジンの下流に位置付けること;
第2の三元変換(TWC)触媒材料が浸透する微粒子フィルターの壁を有する触媒微粒子フィルターを得ること、前記微粒子フィルターは約6ミル(152μm)から約14ミル(356μm)の範囲の壁厚および55%から70%の範囲の多孔度を含み、前記第2のTWC触媒材料は唯一の白金族金属としてロジウムを含み;
前記触媒微粒子フィルターを前記TWC複合体の下流に位置付けること、を含む方法。
【0081】
実施形態23 前記多孔度は、前記微粒子フィルターの体積に対する前記微粒子フィルターの細孔の体積の割合である、実施形態22に記載の方法。
【0082】
実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明の種々の実施形態を説明するのに用いられる。各実施例において、担体は、ウォールフローコージエライトである。各実施例において、多孔度は、微粒子フィルターの体積に対する微粒子フィルターの細孔の体積の割合である。実施例は20℃で約5~40mPa・s未満の範囲の動粘度を有するスラリーを使用する前述の改良された被覆技術に従って製造された。
【0083】
実施例1
比較
基板壁内に三元変換(TWC)触媒を有する低多孔度の比較微粒子フィルターが、1g/in(61g/l)のウォッシュコート充填で調製された。フィルター基板は、長軸が184.9mm、短軸が89.9mmの楕円前面、全長120mm、壁厚8ミル(204μm)の300CPSIを有していた。貴金属充填は、貴金属比Pt/Pd/Rhが0/25/5で、30g/ftに固定された。Pdはセリア40%を含むセリア-ジルコニア酸素吸蔵成分上に支持され、Rhはアルミナ成分上に支持されていた。フィルター基板は、48%の多孔度と13μmの平均細孔径を有していた。
【0084】
実施例2
基板壁内に三元変換(TWC)触媒を有する本発明の微粒子フィルターが、1g/in(61g/l)のウォッシュコート充填で調製された。フィルター基板は実施例1と同じ特性を有していた。単金属白金族金属の充填が、貴金属比Pt/Pd/Rhが0/0/7で、7g/ftに固定され、このようにして貴金属としてRhのみを有する被覆フィルター基板が得られた。Rhはアルミナに支持されていた。セリア40%を含むセリア-ジルコニア酸素吸蔵成分も触媒中に存在していた。
【0085】
実施例3
それぞれ1g/in(61g/l)のウォッシュコートを有する実施例1および2の微粒子フィルターがエンジン上で830℃の床温で50時間エージングされた。微粒子フィルターは、密結合(CC)位置にある同じフロースルーのTWC触媒の後に、ニュー・ヨーロッパ・ドライブ・サイクル(NEDC)で床下位置で測定された。密結合触媒は、総貴金属充填が95g/ftであり、Pt/Pd/Rh金属比が0/90/5である最新のTWC触媒であった。密結合位置でのTWC触媒のウォッシュコート充填は3.8g/inであった。TWC触媒は、エンジン上で1030℃の温度で150時間エージングされた。PMPプロトコルによる微粒子数とともに全炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の排出量は、密結合および床下触媒について測定され、表1に報告された。
【0086】
【表1】
【0087】
微粒子排出数とともに、ガス排出の変換に関して、実施例2の微粒子フィルターの効率変換は、実施例1の比較微粒子フィルターの効率変換と実質的に同じであるが、白金族金属の充填および費用はより低い。当業者にとって、微粒子の濾過効率は、実施例で使用される白金族金属の性質によって影響を受けるのではなく、むしろフィルター特性およびウォッシュコート充填によって影響を受けることは明らかである。したがって、実施例3に関して、ガス状排出のHC、COおよびNOxの変換は実施例1と実施例2の間と実質的に同じである。
【0088】
実施例4
比較
基板壁内に三元変換(TWC)触媒を有する高多孔度の比較微粒子フィルターが、0.83g/in(50g/l)のウォッシュコート充填で調製された。フィルター基板は、直径143.8mmの円形面、長さ152.4mm、壁厚8ミル(204μm)の300CPSIを有していた。貴金属充填は、貴金属比Pt/Pd/Rhが0/1/2で、3g/ftに固定された。Pdはセリア40%を含むセリア-ジルコニア酸素吸蔵成分上に支持され、Rhはアルミナ上に支持された。フィルター基板は、65%の多孔度と20μmの平均気孔径を有していた。
【0089】
実施例5
基板壁内に三元変換(TWC)触媒を有する本発明の微粒子フィルターが、1.16g/in(70g/l)のウォッシュコート充填で調製された。フィルター基板は実施例4と同じ特性を有していた。単金属白金族金属の充填が、貴金属比Pt/Pd/Rhが0/0/3で、3g/ftに固定され、このようにして貴金属としてRhのみを有する被覆フィルター基板が得られた。Rhはアルミナ成分上に支持された。セリア40%を含むセリア-ジルコニア酸素吸蔵成分も触媒中に存在していた。
【0090】
実施例6
実施例4および5の微粒子フィルターは、フレッシュ状態のまま試験された。微粒子フィルターは、密結合(CC)位置にある同じフロースルーのTWC触媒の後に、ニュー・ヨーロッパ・ドライブ・サイクル(NEDC)で床下位置で測定された。密結合触媒は実施例3で使用したものと同じであった。PMPプロトコルによる微粒子数とともに全炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の排出量は、密結合および床下触媒について測定され、表2に報告された。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例5の複合体の効率変換は、微粒子数排出とともにガス状排出の変換に関しては、実施例4の最新技術の複合体の効率変換と実質的に同じであるが、白金族金属としてRhのみを使用する。
【0093】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「実施形態」の言及は、実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して各所における、「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「実施形態において」などの用語の出現は、本発明の同じ実施形態を必ずしも言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0094】
本発明を、上述した実施形態およびその変形を具体的に参照して記述した。本明細書を読み理解すると、さらなる修正および変更が第三者に生じ得る。全てのそのような変形および代替は、それらが本発明の範囲内にある限り含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】