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特開2023-25000(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025000
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230214BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61K31/4523
A61P35/00
A61P17/00
A61K31/437
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178184
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2020184868の分割
【原出願日】2016-06-30
(31)【優先権主張番号】62/187,009
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504408797
【氏名又は名称】エクセリクシス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, エイドリアン エスティー. クレア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌の治療に用いられる、特異的にMEKを阻害する化合物を提供する。
【解決手段】本開示は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩に関する。また本開示は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩を含む医薬品組成物にも関する。また本開示は、癌の治療方法であって、それを必要とする患者に(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩を投与することを含む、方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項2】
形態Aと称され、以下のうちの少なくとも1によって特徴づけられる、請求項1に記載の結晶性フマル酸塩:
(i)実質的に図2に示されるような、dDMSO中のH NMRスペクトル、
(ii)実質的に図3に示されるような、dDMSO中の13C NMRスペクトル、
(iii)175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される3以上のピークを有する、13C NMR固体スペクトル、
(iv)実質的に図4に示されるような、13C NMR固体スペクトル、
(v)4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される3以上の2θ値を有する粉末X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)(結晶性形態の測定は室温で行われる)、
(vi)実質的に図10に示されるパターンに従う、粉末X線回析(XRPD)パターン、ならびに、
(vii)実質的に図8に従う、示差走査熱量測定サーモグラム。
【請求項3】
前記塩は、175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される3以上のピークを有する、13C NMR固体スペクトルによって特徴づけられる、請求項1に記載の、形態Aと称される、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項4】
前記塩は、4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される3以上の2θ値を含む粉末X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)によって特徴づけられ、結晶性形態の測定は室温で行われる、請求項1に記載の、形態Aと称される、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項5】
前記塩は、前記塩の重量に基づき少なくとも90重量%の形態Aである、請求項1~4に記載の(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項6】
請求項1~4に記載の、形態Aと称される、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩、及び医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬品組成物。
【請求項7】
癌を治療するための医薬品を製造するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の、形態Aと称される、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の使用。
【請求項8】
癌治療における療法ための、請求項1~4のいずれかに1項に記載の、形態Aと称される、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の使用。
【請求項9】
メラノーマ(BRAF V600変異メラノーマを含む)、乳癌(三種陰性乳癌を含む)、結腸直腸癌(KRAS変異結腸直腸癌を含む)、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、及び膵癌からなる群から選択される癌を治療するための医薬品として使用する、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項10】
前記癌は、BRAF V600変異メラノーマである、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
ベムラフェニブと組み合わせて、メラノーマ治療のための医薬品として使用される、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【請求項12】
対象におけるBRAF V600変異メラノーマの治療方法であって、化合物Iの結晶性フマル酸塩の治療有効量を、単独でまたはベムラフェニブと組み合わせて治療を必要とする前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記化合物Iの結晶性フマル酸塩がベムラフェニブの前または後、もしくは同時に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶媒中に溶解したフマル酸を溶媒に溶解した化合物Iの混合物に添加し、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩を形成すること、及び得られた形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の結晶を採取すること
を含む、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月30日に出願された米国仮特許出願第62/187,009号に対する優先権を主張する。上述の出願の全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩に関する。また本開示は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩を含む医薬品組成物にも関する。また本開示は、癌の治療方法であって、それを必要とする患者に(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩を投与することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、癌治療における飛躍的な改善は、新規な機構により作用する治療薬の同定と関連している。癌治療において開発さる可能性のある1つの機構は、MEK([M]APK/[E]RK[K]inase)の調節である。MEK阻害は、異常なERK/MAPK経路シグナル伝達によって起こる癌の治療に有望な方策を示す(Solit et al.,2006;Wellbrock et al.,2004)。MEK-ERKシグナル伝達カスケードは、増殖因子、サイトカイン、及びホルモンに応答して細胞増殖、増殖、分化、ならびにアポトーシスを制御する保存経路である。この経路は、しばしばヒト腫瘍においてアップレギュレートされる、または異変するRasの下流で機能する。MEKは、Ras機能の不可欠なエフェクターである。ERK/MAPK経路が全腫瘍の30%においてアップレギュレートされており、K-Ras及びB-Rafにおける発癌性活性化突然変異は、全ての癌の各々22%及び18%同定されている(Allen et al.,2003;Bamford S,2004;Davies et al.,2002;Malumbres and Barbacid、2003)。悪性黒色腫の66%(B-Raf)、膵臓癌の60%(K-Ras)及び4%(B-Raf)、結腸直腸癌の50%(結腸、具体的には、K-Ras:30%,B-Raf:15%)、肺癌の20%(K-Ras)、27%(B-Raf)乳頭及び脱分化甲状腺癌、ならびに子宮内膜癌の10~20%(B-Raf)を含むヒト癌の大部分は活性化Ras及びRaf突然変異を有する。ERK経路の阻害、特に、MEKキナーゼ活性の阻害は、細胞間接触及び運動性の低下ならびに血管内皮成長因子(VEGF)発現のダウンレギュレーションに概して起因して抗転移及び抗血管新生効果をもたらす。さらに、ドミナントネガティブなMEKまたはERKの発現は、細胞培養において、及びin vivoでのヒト腫瘍異種移植片の初期及び転移成長において見られるように突然変異体Rasの形質転換能力を低下させた。したがって、MEK-ERKシグナル伝達経路は、治療的介入の標的となる適切な経路であり、MEKを標的とする化合物は、多くの治療可能性を示す。
【0004】
特異的にMEKを阻害する1つの化合物は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンであり、これは以下の化学構造を有する:
化合物I

WO2007/044515は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの合成を記載し、かつこの分子のMEKを阻害、制御、及び/または調節する治療活性を開示する(Biochemical Assay、268ページ)。化合物Iは、米国、ヨーロッパ、及び他のメラノーマを治療する場所でベムラフェニブ(ゼルボラフ(登録商標))との組み合わせで認可されている。
【0005】
治療効果に加え、薬剤開発企業は、加工、製造、保存性及び/または薬剤としての有用性に適した性質を有する治療薬の好適な形態を提供するため努力している。したがって、所望の性質の一部または全てを有する形態の開発は、薬剤開発において重要である。
【0006】
出願者は、癌などの増殖性疾患を治療するための医薬品組成物に用いる好適な性質を有する化合物Iの結晶性塩形態を発見した。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、本明細書に記載のように、化合物Iの結晶性フマル酸塩に関する。化合物Iのフマル酸塩は以下の構造を有し、かつヘミフマル酸塩として同定されている:
【0008】
また本開示は、化合物Iの結晶性フマル酸塩を含む医薬品組成物に関する。
【0009】
また本開示は、化合物Iの結晶性フマル酸塩の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の赤外線スペクトルを示す。
図2】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩のDMSO-d中のH NMRスペクトルを示す。
図3】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩のDMSO-d中の13C NMRスペクトルを示す。
図4】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の13C NMR固体スペクトルを示す。
図5】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の、正のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。
図6】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の、負のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。
図7】メタノール中の、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の紫外ペクトルを示す。
図8】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の示差走査熱量測定トレースを示す。
図9】非晶形と称される化合物Iのフマル酸塩の示差走査熱量測定トレースを示す。
図10】形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩のXRPDディフラクトグラムを示す。
図11】非晶形と称される化合物Iのフマル酸塩のXRPDディフラクトグラムを示す。
図12】25℃において、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩に関する、動的水分吸着/脱着等温線を示す、グラフである。
図13】非晶形と称される化合物Iのフマル酸塩の、25℃における動的水分吸着/脱着等温線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、化合物Iの結晶性フマル酸塩に関する。また本発明は、本開示の化合物Iの結晶性フマル酸塩を含む、新規な組成物に関する。記載の化合物Iの結晶性フマル酸塩の治療用途及びそれらを含む治療組成物は本開示の別々の態様を表す。化合物Iの結晶性フマル酸塩を特徴づけるために使用する技術を以下の実施例に記載する。これらの技術は、単独でまたは組み合わせで、化合物Iの結晶性フマル酸塩を特徴づけるために使用してよい。化合物Iの結晶性フマル酸塩はまた、本開示の図面を参照することによって特徴づけることができる。
【0012】
化合物Iの結晶性フマル酸塩は熱力学的に安定であることが見いだされ、広範な実験の後で同定された唯一の結晶形であり、非吸湿性であり、製造において一貫して形成される。一方、非晶形は非結晶性であり、吸湿性であり、かつ結晶性形態Aに転換する。加えて、化合物Iの塩を製造しようとする場合、フマル酸塩のみが単結晶形態であった。製造することができる他の塩は、非結晶または結晶質と非晶質の混合物であった。
【0013】
化合物Iの結晶性フマル酸塩
本開示は、化合物Iの結晶性フマル酸塩に関する。また本開示は、化合物Iの結晶性フマル酸塩の医薬品組成物に関する。フマル酸塩は、(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノン(化合物I)とフマル酸を化合させることにより製造されてよく、2:1の化合物I:フマル酸の化学量論を有する塩を形成する。化合物Iの結晶性フマル酸塩はヘミフマル酸塩を指してもよい。
【0014】
フマル酸は以下の構造を有する:
【0015】
XL518、GDC-0973、コビメチニブ、[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル]{3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル}-メタノン及びCotellic(商標)を含む、化合物Iの様々な名称が存在する。
【0016】
化合物Iは、様々な異なる手法のいずれかに従い、グラムスケール(1kg未満)またはキログラムスケール(1kg超)のいずれかで調製することができる。グラムスケール法は、化合物Iの合成(実施例22b)を記載するWO2007/044515に記述されており、この文書は全体が参照により本明細書に組み入れられる。あるいは、WO2014/059422に記述されている手順を用いてキログラムスケールで化合物Iを調製することができ、これも全体が参照により本明細書に組み入れられ、以下の実施例において提供される。
【0017】
形態Aは25℃において1.6mg/mLの水溶性を有する。25℃/0%相対湿度(RH)及び25℃/90%RHの状況下で、形態Aは、アッセイ、純度、水分及び溶解における変化を示さなかった。DSCは、形態Aは239℃の融点まで安定であると示した。溶媒の損失は観察されなかった。
【0018】
本明細書に記載の形態Aは、以下のうちの少なくとも1によって特徴づけられる:
(i)実質的に図2に示されるような、DMSO-d中のH NMRスペクトル、
(ii)実質的に図3に示されるような、DMSO-d中の13C NMRスペクトル、
(iii)175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される3以上のピークを有する、13C NMR固体スペクトル、
(iv)実質的に図4に示されるような、13C NMR固体スペクトル、
(v)4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される3以上の2θ値を有する粉末X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)(結晶性形態の測定は室温で行われる)、
(vi)図10に示されるパターンに実質的に従うX線粉末回折(XRPD)パターン、ならびに
(vii)図8に実質的に従う示差走査熱量測定サーモグラム。
【0019】
一実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)のうちの少なくとも2によって特徴づけられる。
【0020】
他の実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)のうちの少なくとも3によって特徴づけられる。
【0021】
他の実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)のうちの少なくとも4によって特徴づけられる。
【0022】
他の実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)のうちの少なくとも5によって特徴づけられる。
【0023】
他の実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)のうちの少なくとも6によって特徴づけられる。
【0024】
他の実施形態においては、形態Aは(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、または(vii)の全てによって特徴づけられる。
【0025】
一実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、13C NMR固体スペクトルにおいて175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される1、2、3、4、または5のピークによって特徴づけられる。
【0026】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmの13C NMR固体スペクトルから選択される1以上のピークによって特徴づけられる。
【0027】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、175.3、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmの13C NMR固体スペクトルから選択される1、2、3、4、または5のピークによって特徴づけられる。
【0028】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、175.3、173.6、155.5、及び153.5、±0.2ppmの13C NMR固体スペクトルから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0029】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、175.3、173.6、117.5、及び153.5、±0.2ppmの13C NMR固体スペクトルから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0030】
一実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、175.3、173.6、117.5、及び155.5、±0.2ppmの13C NMR固体スペクトルから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0031】
一実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)において、4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される1、2、3、4、または5のピークによって特徴づけられる。
【0032】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)において、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0033】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)において、4.6、12.1、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0034】
他の実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)において、4.6、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0035】
一実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)において、4.6、12.1、13.2及び13.6±0.2°2θから選択される1、2、3、または4のピークによって特徴づけられる。
【0036】
形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩の他の固体特性は図に示され、以下の実施例において考察される。一実施形態においては、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル-メタノンの結晶性フマル酸塩は、以下にほぼ等しい単位格子パラメータによって特徴づけられる。
結晶系:正方晶
空間群:P43212
晶癖:薄板状
単位格子サイズ
a=7.8825Å
b=7.8825Å
c=76.846Å
α=90°
β=90°
γ=90°
温度:293K
格子体積:4774.7Å
格子単位中の分子:8
密度:1.637g/cm
形態Aの単位格子パラメータは約25℃、例えば、外気温または室温において計測した。
【0037】
他の実施形態においては、本開示は実質的に純粋な形態で、態様及び/または実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の形態Aに関する。
【0038】
また本開示は、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製方法に関する。形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製、固体特性、及び特徴は、以下の実施例に記載される。
【0039】
医薬品組成物
本開示の他の態様は、化合物Iの結晶性フマル酸塩、及び医薬的に許容される1以上の賦形剤を含む医薬品組成物に関する。化合物Iの結晶性フマル酸塩の量は、治療的に有効量であってよい。本開示の他の態様は、化合物Iの結晶性フマル酸塩、またはそれらの組み合わせ、及び医薬的に許容される賦形剤を含む固体もしくは分散液医薬品組成物に関する。
【0040】
一実施形態においては、製剤は錠剤製剤である。一般に錠剤は、混合、造粒及び錠剤化により、活性薬剤、充填剤、崩壊剤ならびに滑沢剤から形成される。
【0041】
充填剤は当該技術分野において公知であり、例えば、限定されることなく、糖類、糖アルコール、セルロース系、及び他の充填剤が挙げられる。好適な糖類及び糖アルコールの非限定例としては、デキストレイト、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、イソマルト、ソルビトール、スクロース、糖球、キシリトール、フルクトース、ラクチトール、エリトリトール、マルチトール、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、トレハロース及びラフノースが挙げられる。セルロース系の非限定例としては、微晶性セルロース(「MCC」)及びケイ化MCCが挙げられる。他の充填剤の非限定例としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、キチン、キトサン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、パルミチン酸ステアリン酸グリセリン、水素添加植物油、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリメタクリレート、塩化カリウム、粉末セルロース、アルファ化でんぷん、塩化ナトリウム、でんぷん、タルク、ならびに二及び三塩基性リン酸カルシウムが挙げられる。本開示のいくつかの態様においては、充填剤はラクトース、MCC、ケイ化MCC、二塩基性リン酸カルシウム、マンニトール、イソマルト、アルファ化でんぷん、及びそれらの組み合わせである。
【0042】
崩壊剤は当該技術分野において公知である。非限定例としては、カルボキシメチルスターチナトリウム(グリコール酸でんぷんナトリウム)などの加工でんぷん;クロスポビドンなどの架橋ポリビニルピロリドン;クロスカルメロースナトリウムなどの加工セルロース;架橋アルギン酸;ジェランガム及びキサンタンガムなどのガム;ケイ化カルシウムが挙げられる。本開示のいくつかの態様においては、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸でんぷんナトリウム、及びそれらの組み合わせである。本開示のいくつかの態様においては、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム、グリコール酸でんぷんナトリウム、及びそれらの組み合わせである。
【0043】
滑沢剤は当該技術分野において公知である。非限定例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、水素添加植物油、ポリエチレングリコール(4000~6000)、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。本開示のいくつかの態様においては、滑沢剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせである。
【0044】
本開示の錠剤製造の一態様においては、充填剤、崩壊剤及び滑沢剤がスクリーンを通過することにより砕塊され、砕塊したプレブレンド材料を形成する。砕塊したプレブレンド材料は、ブレンド装置で活性薬剤と組み合わされ、混合されプレブレンドを形成する。プレブレンドは乾式造粒装置で造粒され(例えば、造粒、製粉及びスクリーニングにより)、顆粒剤を形成する。充填剤、崩壊剤及び滑沢剤は顆粒剤中に粒内成分として存在する。さらなる崩壊剤及び滑沢剤はスクリーンを通過することによって砕塊し、ブレンド装置において顆粒剤と組み合わされる砕塊材料と形成し、かつ混合され最終ブレンドを形成する。最終ブレンドは錠剤化装置で錠剤化され、核錠を形成する。核錠は、フィルムコーティング装置においてコーティング混合物で被覆され、被覆錠剤を形成する。
【0045】
本明細書で用いられる、粒内とは、顆粒剤中に成分を包含するように造粒の前に添加される成分を指す。さらに、本明細書で用いられる、粒外とは、錠剤圧縮におけるような、圧縮の前に顆粒剤と組み合わせる成分を指す。
【0046】
本開示の他の錠剤製造工程においては、粒内充填剤及び粒内崩壊剤をスクリーニングならびにブレンダー装置内で活性薬剤と組み合わせることにより破塊する。続いて成分を混合し、一次プレブレンドを形成する。粒内滑沢剤は、スクリーニング及びブレンダー装置内で一次プレブレンドと組み合わせることにより破塊される。続いて成分を混合し、プレブレンドを形成する。プレブレンドは造粒装置において、造粒、製粉及びスクリーニングにより乾式造粒され、顆粒剤を形成する。粒外崩壊剤を、スクリーニングによって破塊し、ブレンダー装置内で顆粒剤と組み合わせる。続いて成分を混合し、一次最終ブレンドを形成する。粒外滑沢剤を、スクリーニングによって破塊し、ブレンダー装置内で一次最終ブレンドと組み合わせる。続いて成分を混合し、最終ブレンドを形成する。最終ブレンドを錠剤化装置で錠剤化し、核錠を形成する。フィルムコート個体混合物を水と組み合わせ、懸濁装置で懸濁し、フィルムコーティング混合物を形成した。核錠をフィルムコーティング装置においてコーティング混合物で被覆し、被覆錠剤を形成した。
【0047】
本開示の一つの特定の製造態様は、以下のプレブレンディング、造粒/製粉及びスクリーニング、最終ブレンディング、錠剤化、ならびにコーティングステップを含む。プレブレンドは2ステップにおいて形成される。第1のステップにおいては、粒内ラクトース一水和物、粒内クロスカルメロースナトリウム、及び粒内微晶性セルロースをスクリーニングして破塊し、ブレンダーに入れる。破塊は、振動シフターまたはインラインシフターを使用して、材料を1.0mmメッシュスクリーンに通過させるなどの当業者に公知の方法により行ってよい。続いて、コビメチニブヘミフマル酸塩形態Aをブレンダーに装填し、ブレンダー内容物をブレンディング速度6rpmで30分間混合する。第2のステップにおいては、粒内ステアリン酸マグネシウムを0.5mmメッシュスクリーンに通過させて破塊するためスクリーニングし、内容物をブレンディング速度6rpmで8分間混合してプレブレンドを製造する。いくつかのかかる態様においては、420,000錠を製造するのに適したプレブレンドバッチが製造され、プレブレンドは22.982kgの微結晶性セルロース、15.322kgのラクトース一水和物、1.008kgのクロスカルメロースナトリウム及び0.126kgのステアリン酸マグネシウムを含む。プレブレンドはローラー圧縮によって乾式造粒され、製粉、1mmスクリーンを通ってスクリーニングされる。いくつかのかかる態様においては、粒子サイズD[v,0.5]が38μm未満である活性薬剤に対し、ローラー圧縮力は2kN/cmに設定され、ギャップサイズは5mmである。いくつかの他のかかる態様においては、粒子サイズD[v,0.5]が少なくとも38μmである活性薬剤に対し、ローラー圧縮力は2kN/cm~4kN/cmに設定され、ギャップサイズは4mm~5mmである。最終ブレンドは2ステップで形成される。第1のステップにおいては、上記の通り、破塊するため、粒外クロスカルメロースナトリウム1.0mmスクリーンに通してスクリーニングし、ブレンダー内で顆粒剤と組み合わせる。ブレンダー内容物をブレンディング速度6rpmで10分間混合する。第2のステップにおいては、粒外ステアリン酸マグネシウムを破塊するため0.5mmスクリーンに通してスクリーニングし、ブレンダーに装填し、内容物をブレンディング速度6rpmで8分間混合して最終ブレンドを形成する。420,000錠を製造するのに適した最終ブレンドバッチが製造される態様においては、粒外クロスカルメロースナトリウムの量は1.008kgであり、粒外ステアリン酸マグネシウムの量は0.63kgである。最終ブレンドを回転錠剤化プレスなどのプレスで、主要圧縮力14kN~19kNで圧縮し、錠剤コアを形成する。錠剤コアを、当該技術分野において公知のパンコーティング装置を用いてコーティング懸濁液の噴霧により被覆する。420,000錠を製造するのに適した最終ブレンドバッチが製造されるいくつかの他のかかる態様においては、コーティング懸濁液は0.806kgのポリビニルアルコール、0.504kgの二酸化チタン、0.407kgのマクロゴール/PEG3350、0.298kgのタルク、及び適当量の精製水を含み、コーティング懸濁液を形成する。いくつかの他のかかる態様においては、コーティング組成物はOpadry II White 85F18422である。420,000錠の製造に好適なバッチサイズ以外のバッチサイズは、同じ比率の成分で調製することができる。
【0048】
好適なブレンダーは当該技術分野において公知であり、均一に2以上の成分を混合するために通常医薬品工業において採用される、Vシェイプブレンダー、ダブルコーンブレンダー、ビン(コンテナー)ブレンダー及びロータリードラムブレンダーを含む、任意の装置を含む。配合ブレンダー容量、ブレンダー充填率、回転速度及び回転時間は、成分の本質的に均一な混合物を達成するために、日常的な実験に基づいて当業者によって適宜に決定され得る。ブレンダー容量は、適切には50L、100L、200L、250L、またはそれ以上である。ブレンダー充填率の選択は、対流及び3次元材料移動を可能とし、適切には、約30%~約60%、約45%~約65%、約32%~約53%または約32%~40%などの約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、ならびにそれらの範囲である。ブレンド時間は、好適には5分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分またはそれ以上である。回転速度は、適切には、例えば、2rpm、3rpm、4rpm、5rpm、6rpm、7rpm、8rpm、9rpmまたは10rpmである。
【0049】
乾式造粒、製粉及びスクリーニング装置は当該技術分野において公知であり、Gertis、Fitzpatrick(登録商標)、及びFruend-Vectorを含むいくつかの製造業者から市販で入手可能である。通常、かかる装置はローラー圧縮力、ギャップ幅、ローラー速度及び供給率の制御を提供する。ローラー表面は滑らかでも刻み付きでもよく、または一方のローラー表面が滑らかで他方のローラー表面が刻み付きであってもよい。様々な様態のいずれにおいても、プレブレンドをローラー圧縮機の供給ホッパーに装填する。特定の力及びギャップサイズにおいてローラー圧縮を行い、かつ工程は好適にはギャップ制御下で実施する。形成されたリボンをスクリーンに通して細かくし、顆粒剤を製造する。本開示のいくつかの態様においては、スクリーンはミルと一体化している。ギャップサイズは、適切には約2mm~5mm、約2mm~4mm、約3mm~5mm、もしくは約4mm~5mm、などの2mm、約3mm、約4mmまたは約5mm、及びそれらの範囲である。ローラー圧縮力は適切には、約1kN/cm~約8kN/cm,約2kN/cm~約5kN/cm約または2kN/cm~約4kN/cmなどの約1kN/cm、約2kN/cm、約3kN/cm、約4kN/cm、約5kN/cm、約6kN/cm、約7kN/cmもしくは約8kN/cm、及びそれらの範囲である。製粉スクリーンサイズは、適切には約0.5mm~約2.5mm、約0.5mm~約2.0mm、約0.5mm~約1.5mm、約0.5mm~約1.25mm、約0.75mm~約2.5mm、約0.75mm~約2.0mm、約0.75mm~約1.5mm、約0.75mm~約1.25mmなどの0.5mm、0.75mm、1.0mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2.0mm、2.25mmもしくは2.5mm、及びそれらの範囲である。本開示のいくつかの特定の態様においては、1.0mmの製粉スクリーンを使用する。
【0050】
適切な錠剤プレスは当該技術分野において公知であり、例えば、Riva-Piccola、Fette、Bosch Packaging Technology、GEA及びNatoli Engineering Companyから市販で入手可能である。通常、それぞれの錠剤は硬化鋼で作られたダイスの中で顆粒をプレスすることによって作られる。ダイスは中心に穴が開いた円盤型である。ダイスの頂部及び底部に適合する2つの硬化鋼パンチによってダイスの中央で粉末を圧縮し、それにより錠剤を形成する。錠剤圧縮は、粉末を詰め込み、錠剤形成のための主圧縮力の適用の前にわずかにブレンドを圧縮することを含む第1のプレ圧縮段階を有する二段階で行ってよい。錠剤を圧縮の後ダイスから駆出する。本開示のいくつかの態様においては、圧縮力は約5kN~約20kN、約14kN~約19kN、約14kN~約18kN、または約8kN~約13kNなどの約5kN、約6kN、約7kN、約8kN、約9kN、約10kN、約11kN、約12kN、約13kN、約14kN、約15kN、約16kN、約17kN、約18kN、約19kNもしくは約20kN、及びそれらの範囲である。本開示のいくつかの態様においては、約60mgの活性薬剤を含む錠剤は、約14kN~約18kNの圧縮力で形成されうる。本開示の他の態様においては、約20mgの活性薬剤を含む錠剤は、約8kN~約13kNの圧縮力で形成されうる。
【0051】
いくつかの態様においては、錠剤コアは、表Aに示される成分及び濃度範囲(重量%)を含む。
表A
【0052】
本開示のいくつかの態様においては、錠剤コアは、20mgの活性薬剤を含む錠剤に基づいて、表Bに示される成分及び濃度範囲(重量%)を含む。20mg以外、例えば40mgまたは60mgの活性薬剤を含む錠剤に関しては、20mg錠剤に関して以下に開示される様々な成分の比が維持される。
表B
【0053】
本開示のいくつかの態様においては、錠剤コアは、20mgの活性薬剤を含む錠剤に基づいて、表Cに示される成分及び濃度範囲(重量%)を含む。
表C
【0054】
本開示のいくつかの態様においては、錠剤コアは、20mgの活性薬剤を含む錠剤に基づいて、表Dに示される成分及び濃度範囲(重量%)を含む。
表D
【0055】
本開示のいくつかの態様においては、被覆錠剤コアは、20mgの活性薬剤を含む錠剤に基づいて、表Eに示される成分及び濃度範囲(重量%)を含む。フィルムコーティング組成物の成分及び濃度範囲(重量%)を表Fに示す。
表E
表F
【0056】
治療方法
本開示の他の態様は、癌の治療方法であって、それを必要とする患者に化合物Iの結晶性フマル酸塩を投与することを含む、方法に関する。特定の実施形態においては、化合物Iの結晶性フマル酸塩は形態Aである。投与される化合物Iの結晶性フマル酸塩の量は、治療的に許容される有効量であってよい。
【0057】
本開示の他の態様においては、治療方法はそれを必要とする患者に、上記の化合物Iの結晶性フマル酸塩及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む医薬品組成物投与することにより実施することができる。本開示の他の態様は、上記のように、癌の治療方法に関する。治療される癌は、メラノーマ(BRAF V600変異メラノーマを含む)、乳癌(三種陰性乳癌を含む)、結腸直腸癌(KRAS変異結腸直腸癌を含む)、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、及び膵癌である。
【0058】
BRAF阻害剤はメラノーマの治療に使用されており、ベムラフェニブは現在メラノーマの治療に使用されているBRAF阻害剤である。したがって、本開示の他の態様は、患者におけるメラノーマの治療方法に関し、この方法は治療を必要とする患者に、治療的に有効量の化合物Iの結晶性フマル酸塩を単独でまたはベムラフェニブと組み合わせて投与することを含む。一実施形態においては、化合物Iの結晶性フマル酸塩をベムラフェニブの前または後、もしくは同時に投与する。他の実施形態においては、メラノーマはBRAF V600変異メラノーマである。特定の実施形態においては、BRAF V600変異の切除不能または転移性メラノーマを有する患者に化合物Iの結晶性フマル酸塩を投与する。本開示の他の態様は、患者におけるBRAF V600変異メラノーマの治療方法に関し、この方法は治療を必要とする患者に、治療的に有効量の化合物Iの結晶性フマル酸塩を単独でまたはベムラフェニブと組み合わせて投与することを含む。一実施形態においては、化合物Iの結晶性フマル酸塩をベムラフェニブの前または後、もしくは同時に投与する。特定の実施形態においては、BRAF V600変異の切除不能または転移性メラノーマを有する患者の治療のため、ゼルボラフ(登録標章)(ベムラフェニブ)と組み合わせて化合物Iの結晶性フマル酸塩を投与する。
【0059】
チロシンキナーゼ阻害剤は非小細胞肺癌(NSCLC)を治療するために使用されている。ゲフィチニブ及びエルロチニブは、現在NSCLCの治療に使用されている、チロシンキナーゼと呼ばれる上皮増殖因子の受容体を標的とする血管新生阻害剤である。他の化合物は、MEHD7945Aのように、非小細胞肺癌の治療のために臨床開発中である。したがって、本開示の他の態様は、患者における非小細胞肺癌(NSCLC)の治療方法に関し、この方法はこの方法は治療を必要とする患者に、治療的に有効量の化合物Iの結晶性フマル酸塩を、任意でエルロチニブまたはゲフィチニブと組み合わせて投与することを含む。他の実施形態においては、組み合わせはエルロチニブとの組み合わせである。他の実施形態においては、組み合わせはMEHD7945Aとの組み合わせである。
【0060】
本開示の他の態様は、制御不能の、異常な、及び/または望まれない細胞活動と関連している疾病または障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療的に有効量の形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩を投与することを含む、方法に関する。この治療方法を、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の医薬品組成物を投与することにより行ってよい。
【0061】
本開示の他の態様は、上記の疾患または障害の治療のための薬剤を製造するための、上記の実施形態のいずれかによる形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の使用に関する。医薬品組成物は化合物Iの結晶性フマル酸塩を含む任意の医薬形態であってよい。医薬品組成物は、例えば錠剤、カプセル、外用、または経皮であってよい。通常医薬品組成物は、約1重量%~約99重量%の活性化合物(複数可)、または活性化合物(複数可)の結晶性形態、及び99重量%~1重量%の1以上の好適な医薬賦形剤を含む。一実施例においては、組成物は約5重量%~約75重量%の活性化合物であり、残りは以下に論ずる好適な医薬賦形剤である。
【0062】
「治療的に有効」量の化合物Iの結晶性フマル酸塩は、癌に罹患する患者を治療するのに十分な量を指す。本開示による治療的に有効量は、本明細書で論ずる病状及び障害の治療または予防に治療的に有益な量である。本開示の化合物Iの結晶性フマル酸塩は、キナーゼのシグナル伝達、特にWO2007/044515に記載されるようなMEK1/2を阻害、制御及び/または調節する治療活性を有する。
【0063】
任意の特定の患者の治療に必要な実際量は、治療している病状及び重症度;採用される特定の医薬品組成物;患者の年齢、体重、総体的な健康、性別及び食事;投与の方法;投与の時間;投与の経路;及び本開示による活性組成物(複数可)の排泄経路、または活性組成物(複数可)の結晶性形態;採用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される任意の薬剤;ならびに医療分野において周知の他のかかる要因を含む種々の要因に左右されるであろう。これらの要因は、Goodman及びGilman’s “The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Tenth Edition,A.Gilman,J.Hardman and L.Limbird,eds.,McGraw-Hill Press,155-173,2001において論じられ、これは本明細書に参照により組み込まれる。本開示による活性化合物(複数可)、または活性化合物(複数可)の結晶性形態及びそれらを含む医薬品組成物は、抗癌剤または一般的に癌の治療をしている患者に投与する他の薬剤と組み合わせて使用してよい。それらはまた、単一の医薬組成物中に1以上のかかる薬剤と同時製剤化されてもよい。
【0064】
医薬品組成物のタイプに応じて、医薬的に許容される賦形剤は、任意の1または当該技術分野において公知の賦形剤の組合せから選択されてよい。医薬的に許容される賦形剤の選択は、使用される投与の所望の方法によって部分的に決定される。本開示の医薬品組成物、つまり、本開示の活性化合物(複数可)、または活性化合物(複数可)の結晶性形態の1のために、賦形剤は、活性化合物(複数可)が結晶であろうとなかろうと、活性化合物(複数可)が実質的に特定の形態を維持するように選択されるべきである。すなわち、任意の賦形剤は実質的に活性化合物(複数可)の形態を変化させるべきでない。また、望ましくない生物学的効果を生じさせるか、そうでなければ医薬組成物の任意の他の成分と有害な方法で相互作用することなどによって、担体が活性化合物の形態と不適合でないようにすべきである。
【0065】
本開示の医薬品組成物は、医薬製剤分野において公知の方法により調製してよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)を参照のこと。固体剤形においては、化合物Iを少なくとも1のクエン酸ナトリウムもしくは医薬的に許容される賦形剤もしくは二リン酸カルシウムまたは(a)例えばでんぷん、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸などの充填剤もしくは増量剤などの他の賦形剤;(b)例えば、セルロース誘導体、でんぷん、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシアゴムなどの結合剤;(c)例えば、グリセロールなどの保湿剤;(d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカ粉、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、錯体シリケート及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)例えば、パラフィンなどの溶液抑制剤;(f)例えば、4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)例えば、セチルアルコール、及びモノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム他などの湿潤剤;(h)例えば、カオリン及びベントナイトなどの吸着剤;ならびに(i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤もしくはそれらの混合物と混合する。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0066】
通常、アジュバントと呼ばれ、医薬製剤分野において公知の医薬的に許容される賦形剤を、本開示の医薬品材料に使用してもよい。これらは、保存料、湿潤剤、懸濁剤、甘味料、香料、芳香剤、乳化剤、及び分配剤を含むが、これらに限定されない。微生物の活動の防止を、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸他などの抗菌剤及び抗真菌剤によって保障することができる。例えば、糖類、塩化ナトリウム他などの等張剤を含むことが所望され得る。必要に応じて、本開示の医薬品組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質、及び例えば、クエン酸、ソルビタンラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ならびにブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化物質を含んでもよい。
【0067】
上記の固形剤形は、腸溶性コーティング及び他の当該技術分野において周知のものなどのコーティングならびに外殻を有して製造してよい。それらは鎮静剤を含んでよく、腸管の特定の部分において、遅発性様式で活性化合物または化合物を放出するような組成物であってもよい。使用してよい組込組成物の例は、重合物質及びワックスである。活性化合物は、適切な場合、上記の賦形剤の1以上と共にマイクロカプセル化形態であってよい。
【0068】
活性化合物に加えて、懸濁液は例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシオキシド、ベントナイト、寒天及びトラガント、またはこれらの物質の混合物、他などの懸濁剤を含んでよい。
【0069】
直腸内投与のための組成物は、例えば、活性化合物(複数可)、もしくは活性化合物(複数可)の結晶性形態を、例えば好適な非刺激性賦形剤もしくは通常の温度で固形であるが、体温では液体であり、したがって好適な体腔内では溶解し、その中に活性成分を放出するココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスと混合することにより調製することができる坐薬である。
【0070】
活性化合物(複数可)、または活性化合物(複数可)の結晶性形態がそれらの製剤中で維持されるため、固形剤形は本開示の医薬品組成物に好適である。カプセル、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含む、経口投与のための固形剤形が、特に好適である。かかる固形剤形においては、活性化合物(複数可)は少なくとも1の不活性の、医薬的に許容される賦形剤と混合されている。純粋な形態におけるまたは適切な医薬品組成物における活性化合物(複数可)、または活性化合物(複数可)の結晶性形態の投与は、類似の有用性を果たす投与もしくは薬剤の、許容可能な方法のいずれかを介して行われうる。したがって、例えば、経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、局所的、経皮的、腟内、膀胱内、槽内、もしくは直腸に、固形、半固形、凍結乾燥粉末の形態、もしくは、例えば錠剤、座薬、丸剤、軟カプセル剤もしくは硬ゼラチンカプセル剤、散剤、液剤、懸濁液またはエアロゾル、他などの液体剤形、好ましくは正確な投与量の簡単な管理に適した単位剤形において投与されてよい。投与における1つの好ましい経路は、治療される病状の重症度に応じて調節されうる簡便な投与計画を用いた経口投与である。
【0071】
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノン(化合物I)の調製
化合物Iは、WO2014/059422に記載のように調製することができ、これは全内容が参照により本明細書に組み入れられ、かつ一般的にはスキーム1に示される。塩基の存在下で、市販で入手可能な(3S,5R,8aS)-3-フェニル-ヘキサヒドロ-オキサゾロ[3,2-a]ピリジン-カルボニトリルVIIと市販で入手可能なtert-ブチル「-3-オキソ-1-アデチジンカルボキシレートVIIaとの反応により化合物VIが調製される。化合物VIを、酸の存在下で、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物還元剤と処理し、続いて水性水酸化ナトリウムと処理して化合物Vを得る。酸を用いたVの脱保護により化合物IVを得られ、これを、触媒量のピリジンの存在下で、酸塩化物IVaと結合してIIIを得る。IIIの水素化によりピペリジン誘導体IIを得る。最後に、IIと2-フルオロ-4-ヨードアニリンIIaのカップリングにより、所望の化合物を得る。
スキーム1
結晶性形態の一般的な製造方法
【0072】
結晶性形態は、例えば、好適な溶媒混合物からの結晶化または再結晶;昇華;融解物からの発達;他の相からの個体変換;超臨界流体からの結晶化;及びジェット噴霧が挙げられるが、これらに限定されない種々の方法により調製されうる。溶媒混合物の結晶性形態の結晶化または再結晶技術としては、例えば、溶媒の蒸去;溶媒混合物の温度の低下;化合物及び/またはその塩の過飽和溶媒混合物の結晶播種;化合物及び/またはその塩の過飽和溶媒混合物からの結晶播種;溶媒混合物の凍結乾燥;ならびに溶媒混合物への貧溶媒(対溶媒)の添加が挙げられるが、これらに限定されない。ハイスループット結晶化技術を用いて多形を含む結晶性形態を調製することができる。
【0073】
多形を含む薬剤の結晶、調製方法、及び薬剤結晶の性質決定は、Solid-State Chemistry of Drugs,S.R.Byrn,R.R.Pfeiffer、及びJ.G.Stowell,2nd Edition,SSCI,West Lafayette,Indiana(1999)で論じられている。
【0074】
溶媒を使用する結晶化技術においては、通常、溶媒(複数可)は例えば、化合物の溶解性;利用する結晶化技術;及び溶媒の蒸気圧が挙げられるが限定されない1以上の要因に基づいて選択される。溶媒の組合せを使用してよい。例えば、化合物を第1の溶媒中に溶解し、続いて貧溶媒を添加し、溶液中の化合物の溶解度を低下させ、結晶の形成を沈殿させる溶液を得ることができる。貧溶媒は、その中の化合物の溶解性が低い溶媒である。
【0075】
結晶の調製において使用できる1つの方法においては、化合物Iのフマル酸塩を、懸濁及び/または好適な溶媒中で撹拌し、溶解を促進する加熱されてよいスラリーを得ることができる。本明細書で用いられる「スラリー」という用語は、化合物の飽和溶液を意味し、かかる溶液はさらなる量の化合物を含み、与えられた温度で化合物及び溶媒の不均一混合物を得ることができる。
【0076】
播種された結晶を任意の結晶化混合物に添加し、結晶化を促進してよい。播種は、特定の多形の成長を制御するために、及び/または結晶性生成物の粒径分布を制御するために使用され得る。したがって、必要とされる種子の量の計算は、例えば、「Programmed Cooling Batch Crystallizers,」J.W.Mullin及びJ.Nyvlt,Chemical Engineering Science,1971,26,3690377に記載されているように、利用可能な種子の大きさならびに平均生成物粒子の所望の大きさに依存する。一般に、バッチ内において効果的に結晶の成長を制御するために、小型の種子が必要とされる。小型の種子は、ふるい、製粉、もしくは大きな結晶の微粒子化によって、または溶液の微晶性化によって生成される。製粉または結晶の微粒子化において、所望の結晶性形態からの結晶化度の変化(つまり、非晶性または他の多形性形態への変化)を避けるため、管理するべきである。
【0077】
冷却した結晶化混合物を、真空下で濾過し、単離した固形生成物を、冷再結晶化溶媒などの好適な溶媒で洗浄してよい。洗浄した後、生成物を窒素パージ下で乾燥させ、所望の結晶性形態を得ることができる。例えば、示差走査熱量測定(DSC);粉末X線回析(XRPD);及び熱重量分析(TGA)が挙げられるが、これらに限定されない好適な分光法または解析技術によって生成物を解析し、化合物の結晶性形態を形成されたことを保障される。得られた結晶性形態は、結晶化手順で元来用いられている化合物の重量に基づいて、約70重量%を超える単離収率、好ましくは約90重量%を超える単離収率で生成することができる。場合により、生成物は補助製粉またはメッシュスクリーンを通過させることにより破塊されてもよい。
【0078】
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって、当業者によってより容易に理解され得る。明確にするため、別個の実施形態の文脈において、上記及び下記に記載される本発明の定の特徴を組み合わせて単一の実施形態を形成しもよいことを理解されたい。反対に、簡便にするため、単一の実施形態の文脈において記載される本開示の様々な特徴を、それらのサブコンビネーションを形成するように組み合わせてもよい。本開示はさらに以下の実施例によって説明され、実施例は開示内容の範囲または精神をそれらに記載された特定の手順に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0079】
本明細書に記載されている定義は、参照により本明細書に組み込まれるいずれの特許、特許出願、及び/または特許出願公開に記載された定義よりも優先される。すべての測定値は実験誤差の影響を受ける場合があり、本発明の精神の範囲内である。
【0080】
本明細書で用いられる「非結晶」とは結晶性ではない分子及び/またはイオンの固形を指す。非結晶個体は、明確な最大値を有するX線回析パターンを示さない。
【0081】
本明細書で用いられる「実質的に純粋」という用語は、かかる結晶性形態の重量に基づいて少なくとも約90重量%を含む形態Aを意味する。「少なくとも約90重量%」という用語は、均等論の適用性を特許請求の範囲に限定することを意図するものではないが、例えば、言及された結晶形の重量に基づいて90、約91、約92 約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99及び約100重量%が挙げられるが、これらに限定されない。形態Aの残りは、例えば結晶形態を調製する場合に生じる、化合物Iのフマル酸塩の他の形態(複数可)及び/または反応不純物ならびに/もしくは加工不純物を含み得る。反応不純物及び/または加工不純物の存在は、例えば、クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法、質量分析、及び/または赤外線分光法などの当該技術分野において公知の解析技術によって同定することができる。
【0082】
他の態様において、本発明は、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製方法に関し、以下を含む:
溶媒中に溶解したフマル酸を溶媒に溶解した化合物Iの混合物に添加し、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩を形成すること;及び
得られた形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の結晶を採取すること。
【0083】
この実施形態において、使用される溶媒は極性溶媒である。特定の溶媒中のフマル酸及び/または化合物Iの溶解性に応じて、完全に溶解するためには穏やかな加熱(40~80℃)を必要としうる。例えば、フマル酸はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールもしくはイソプロパノール他)などの極性プロトン性溶媒中に、単独でもしくは1以上の他の溶媒とまたは水との混合物として溶解させることができる。あるいは、フマル酸をテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、他などの非プロトン溶媒に溶解させることができる。同様に、化合物Iはジクロロメタンもしくはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールもしくはイソプロパノール他)などの極性プロトン性溶媒中に、単独でもしくは1以上の他の溶媒とまたは水との混合物として溶解させることができる。次いで、フマル酸溶液を化合物Iの溶液に添加し、得られた混合物を沈殿物が形成するまで静置させてよい。いくつかの場合において、結晶形成を促進するために、得られた混合物を冷却または種子結晶を添加する。他の場合においては、結晶形成を促進するために、ヘプタン他のような非極性炭化水素溶媒などの貧溶媒が使用される。
【0084】
したがって、別の態様では、本発明は、以下を含む形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製方法に関する:
第1の溶媒に化合物Iを溶解させて第1の混合物を形成すること;
第2の溶媒にフマル酸を溶解させて第2の混合物を形成すること;
第1の混合物を第2の混合物に冷却しながら添加し、沈殿物として結晶を形成すること;及び
形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の結晶を採取すること。
【0085】
前態様におけるように、使用される溶媒は極性溶媒である。特定の実施形態においては、第1及び第2の溶媒は同一であり、イソプロパノールと水の混合物である。一実施形態においては、イソプロパノールの水に対する比は9:1である。他の実施形態においては、イソプロパノールの水に対する比は4:1である。他の実施形態においては、イソプロパノールの水に対する比は85:15である。通常、1重量当量の化合物Iにつき約7~11重量当量の第1の溶媒が使用され、1重量当量のフマル酸につき2.0~3.0重量当量の第2の溶媒が使用される。より詳細には、1重量当量の化合物Iにつき約8~10重量当量の第1の溶媒が使用され、1重量当量のフマル酸につき2.4~2.7重量当量の第2の溶媒が使用される。
【0086】
1つのフマル酸の分子は、2つの分子を有する塩を形成し、化合物Iのヘミフマル酸塩を形成する。したがって、1重量当量の化合物Iにつき約0.5当量のフマル酸が使用される。通常、1重量当量の化合物Iにつき0.51~0.53当量が使用される。
【0087】
典型的な実施例においては、フマル酸を添加する前に、例えば、第1の溶媒に溶解した化合物Iを活性化炭素に通過させて濾過する。次いで、第2の溶媒に溶解させたフマル酸を第1の溶媒中の化合物Iの溶液に、約40~90℃;より好ましくは60~85℃;さらに好ましくは75~80℃の温度で穏やかに加熱しながらゆっくりと添加する。場合によっては、播種結晶を化合物I及びプロパノール/水溶媒中のフマル酸の混合物に添加してよい。結晶化プロセスを完了させるため、混合物を約20℃に冷却してよい。得られた結晶を濾過により単離する。
【0088】
さらなる態様においては、本発明は、以下を含む形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製方法に関する:
溶媒中に溶解したフマル酸を溶媒中に溶解した化合物Iの混合物を添加し、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩を形成すること。
【0089】
この態様の一実施形態においては、プロセスは形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の種子結晶を混合物に添加することを含む。
【0090】
さらなる実施形態においては、本発明は、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調製方法であって、非結晶形態の化合物Iを、溶媒中に65~80℃の温度で穏やかに加熱しながら溶解し、次いで結晶形態が得られるまで、得られた混合物を冷却すること含む、方法に関する。一実施形態においては、種子結晶を混合物に添加してよい。他の実施形態においては、混合物を20℃まで冷却してよい。次いで、得られた結晶を濾過により単離する。
【0091】
実施形態
本発明は、以下の非限定実施形態によって特徴づけられる。
【0092】
実施形態1.形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0093】
実施形態2.前記塩が以下のうちの少なくとも1によって特徴づけられる、実施形態1の形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩:
(i)実質的に図2に示されるような、dDMSO中のH NMRスペクトル、
(ii)実質的に図3に示されるような、dDMSO中の13C NMRスペクトル、
(iii)175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される3以上のピークを有する、13C NMR固体スペクトル、
(iv)実質的に図4に示されるような、13C NMR固体スペクトル、
(v)結晶性形態の測定は室温で行われる、4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される3以上の2θ値を有する粉末X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)、
(vi)実質的に図10に示されるパターンに従う、粉末X線回析(XRPD)パターン、ならびに
(vii)実質的に図8に従う、示差走査熱量測定サーモグラム。
【0094】
実施形態3.前記塩が、175.3、173.6、117.5、155.5、及び153.5、±0.2ppmから選択される3以上のピークを有する、13C NMR固体スペクトルによって特徴づけられる、実施形態1の形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0095】
実施形態4.前記塩が、4.6、12.1、13.2、13.6及び14.5±0.2°2θから選択される3以上の2θ値を有する粉末X線回析パターン(CuKα λ=1.5418Å)によって特徴づけられ、結晶性形態の測定は室温で行われる、実施形態1の形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0096】
実施形態5.前記塩が、前記塩の重量に基づいて、最小90重量%形態Aである、実施形態1~4の形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0097】
実施形態6.形態Aと称される実施形態1~3の(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩、及び医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬品組成物
【0098】
実施形態7.癌を治療するための医薬品製造のための形態Aと称される実施形態1~5の(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の使用。
【0099】
実施形態8.癌治療における療法で使用するための、形態Aと称される実施形態1~5の(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0100】
実施形態9.メラノーマ(BRAF V600変異メラノーマを含む)、乳癌(三種陰性乳癌を含む)、結腸直腸癌(KRAS変異結腸直腸癌を含む)、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、及び膵癌からなる群から選択される癌を治療するための医薬品として使用するための、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0101】
実施形態10.前記癌はBRAF V600変異メラノーマである、実施形態9の使用。
【0102】
実施形態11.メラノーマ治療のための医薬品としてベムラフェニブと組み合わせた、形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩。
【0103】
実施形態12.患者におけるBRAF V600変異メラノーマの治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療的に有効量の化合物Iの結晶性フマル酸塩を、単独でまたはベムラフェニブと組み合わせて投与することを含む、方法。
【0104】
実施形態13.前記化合物Iの結晶性フマル酸塩をベムラフェニブの前または後、もしくは同時に投与する、実施形態12の方法
【0105】
実施形態14.溶媒中に溶解したフマル酸を、溶媒中に溶解した化合物Iの混合物に添加し、化合物Iの結晶性フマル酸塩を形成することを含む、形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩の調整方法。
【実施例0106】
以下の実施例は本発明の範囲を例示説明する。当業者が本発明をより明確に理解し実施できるように、以下の実施例及び調製物を提供する。これらは、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単にそれらの例示的で代表的なものであるとみなされるべきである。
【0107】
実施例1
3-((3S,5R,8aS)-5-シアノ-3-フェニル-ヘキサヒドロ-オキサゾロ[3,2-a]ピリジン-5-イル)-3-ヒドロキシ-アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの合成
【0108】
(3S,5R,8aS)-3-フェニル-ヘキサヒドロ-オキサゾロ[3,2-a]ピリジン-カルボン酸(20.0g、87.6mmol、1.0当量)及びジメチルテトラヒドロピリミドン(DMPU、11.3g、87.6mmol、1.0当量)のTHF(95.1mL)中の混合物を、透明の液体が得られるまで10分間撹拌した。続いて混合物を-70℃~-80℃まで冷却し、内部温度を-70℃~-80℃に維持しながら、30分にわたってリチウムジイソプロピルアミン(ヘプタン、THF及びエチルベンゼン中28%溶液)(35.2g、92mmol、1.05当量)を添加した。添加が完了した後、混合物を-70℃~-80℃でさらに2時間撹拌し、続いて内部温度が-70℃~-80℃を維持する間、30分を超えて3-オキソ-アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(16.2g、94.6mmol、1.08当量)を添加した。添加が完了した後、反応混合物を-70℃~-80℃で1時間撹拌した。
【0109】
別個のフラスコに、塩化ナトリウム溶液(10.3g)、脱イオン水(103.0g)及び酢酸(5.29g、87.6mmo、1.0当量)を用意し、0℃まで冷却した。内部温度を10℃未満に維持しながら、30分にわたって反応混合物を反応停止混合物に添加した。反応混合物のフラスコをTHF(26.7g)ですすぎ、すすぎ液を反応停止混合物と組み合わせた。5℃で20分間激しく撹拌した後、撹拌を停止し、層を分離させた。下部水相を廃棄した。酢酸エチル(61.8g)及び脱イオン水(68.5g)を有機相に添加した。5℃で10分間の激しく撹拌した後、撹拌を停止し、層を分離させ、下部水相を廃棄した。洗浄手順を脱イオン水(68.5g)でもう一度繰り返した。
【0110】
有機相を減圧下(ジャケット温度約40~45℃、圧力=200~180mbar)で、総体積120mLの蒸留物が得られるまで濃縮し、黄みがかった溶液を得た。減圧を解放し、ヘプタン(102.0g)を、10分にわたって添加した。残留容量が一定に保たれるような速度でヘプタン(177g)を添加することにより、減圧下での蒸留(ジャケット温度約35~40℃、圧力=250~110mbar)を続けた。10分の蒸留の後、濃く、撹拌可能な懸濁液が得られた。減圧を解放し、イソプロパノール(10.2g)を35℃で15分にわたって添加した。懸濁液を45℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、懸濁液を、2時間にわたって0℃まで冷却し、1時間0℃を保持した。懸濁液をガラス濾過器で濾過した。フラスコ及び濾過ケーキをプレ冷却(約5℃)ヘプタン(46.6g)で洗い流し、湿ったケーキを減圧下において、一定重量まで40℃で一晩乾燥させ、わずかにベージュ色の結晶として表題化合物を得た。
HPLC純度:91.9%-面積 Mp.(DSC:外挿ピーク:151.80℃.1H-NMR(600MHz,CDCl3):7.30~7.50(m,5 H),4.17 - 4.27(m,3 H),3.94~4.01(m,2 H),4.11-4.1(m,2 H),4.09(d,1 H),3.95(d,1H),3.87(dd,1H),3.76(dd,1H),3.54~3.70(br,1H),2.85~3.03(br,1H),2.18~2.25(m,1H),2.12(br,1H),1.97~2.04(m,1H),1.85~1.94(m,1H),1.61~1.79(m,3H),1.41(s,9H).MS(EI):m/z=400.48([M+H]+,100%)
【0111】
実施例2
3-ヒドロキシ-3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-yl]アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの合成
【0112】
3-((3S,5R,8aS)-5-シアノ-3-フェニル-ヘキサヒドロ-オキサゾロ[3,2-a]ピリジン-5-イル)-3-ヒドロキシ-アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(12.0g、30.0mmo、1.0当量)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(3.18g、50.6mmol、1.68当量)のEtOH(70mL)中の混合物を30℃まで加熱し、EtOH(20mL)中の暖かい混合物である酢酸(3.63ml、63.5mmol、2.1当量)に2時間以内でゆっくりと添加した。続いて、得られた混合物を、さらに3時間70℃~75℃で撹拌した。反応が完了した後、混合物を23℃まで冷却し、30分以内でゆっくりとトルエン(100mL)及びNaOH水溶液(60g、10%-w/w)の混合物に添加し、15分間撹拌した。反応フラスコを急冷混合物で洗い流した。層が分離し、有機相をトルエン(30mL)で洗浄した。組み合わせた有機相を減圧下(ジャケット温度約35~40℃、200~85mbar)で、80mL(70.82g)の黄みがかった生成物溶液を得られるまで濃縮した。PHLC純度:97.6%面積
【0113】
分析目的のため、生成物溶液をロータリーエバポレーターで十分に濃縮し、EtOHで処理し、再び十分に濃縮して19.2gの泡沫状生成物を得た。残渣を、酢酸エチル(30mL)及びMeOH(15mL)の混合物に溶解し、酢酸エチルを溶出剤として使用し、シリカゲル120gで、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した。それぞれ100mLの、6画分のうち3~5画分を組み合わせ、ロータリーエバポレーターにより真空下で十分に濃縮して無色泡沫状物14.6gを得た。再度残渣をヘプタン/酢酸エチル2:1(v / v)の最少混合物に再度溶解し、ヘプタン/酢酸エチル2:1(v/v)を溶出液として使用して190gのシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した 。700mLの前留分の後、10のその後の画分(合計800mL)を組み合わせ、ロータリーエバポレーターにより真空下で十分に蒸発させ(浴温35℃、圧力20mbar以上)、残渣を35℃で一晩乾燥させ、表題化合物を無色の固体として得た。Mp.外挿ピーク220.9℃(発熱分解を伴った溶融)H-NMR(600MHz,CDCl):δ7.38~7.41(m,2H),7.34~7.38(m,2H),7.27~7.30(m,1H),4.28~4.50(br,1H),4.19(dd,1H),4.11~4.1(m,2H),4.09(d,1H),3.95(d,1H),3.87(dd,1H),3.83(t,1 H),3.08 - 3.16(m,1H),2.85(ddd,1H),2.57(ddd,1H),1.76~1.84(m,1H),1.68~1.75(m,1H),1.53~1.58(m,1H),1.41~1.48(bs,9 H),1.31~1.41(m,2H),1.21~1.31(m,2H).MS(EI):m/z=377.24([M+H] ,100%).C2132に対するEA:計算値:C 66.99,H8.57,N7.44;実測値C67.38,H8.50,N7.29
【0114】
実施例3
3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]-アゼチジン-3-オールジヒドロクロリドの合成
【0115】
トルエン中の3-ヒドロキシ-3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(69.8g、29.6mmol、1.0当量)の溶液を、23~27℃で12分内での水(30.1g)及びHCl(37%、7.22g、73.3mmol、2.5当量)の混合物と処理し、10分間撹拌した。得られた二相性混合物を50℃まで30分以内で加熱し、50℃4時間撹拌し続けた。完全に変換した後、混合物を室温まで減温し、相を分離させた。水相をトルエン(36mL)で洗浄し、相を分離させ44.2gの黄みがかった水溶液生成物を得た。PHLC純度:96.3%-面積
【0116】
分析目的のため、生成物溶液をロータリーエバポレーター(浴温45℃)で十分に濃縮させた。黄みがかった油状残渣をMeOH(190mL)に溶解させ、再度十分にロータリーエバポレーターによって、真空化で濃縮させた。残渣をMeOH/酢酸エチル1:1(v/v)の混合物の最小量に取り、MeOH/酢酸エチル1:1(v/v)の混合物を溶出剤として用い、シリカゲル(150g)でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。400mLの前留分を採取し、廃棄し、その後の画分(1.5L)を合わせ、真空下(浴温40℃、圧力20mbar以上)でロータリーエバポレーターによって完全に濃縮し、MeOH(20mL)に溶解した黄みがかった油状物が得られた。油状物を室温で酢酸エチル(80mL)に滴下して添加すると、生成物が沈殿した。固体を濾過し酢酸エチル(30mL)ですすいだ。恒量まで30℃の真空下で一晩乾燥し、無色固体として表題化合物(22.0g)を得た。Mp.(DSC):Tonset114.2 °C,外挿ピーク:123.4℃.1H NMR(600MHz,DMSO-d6):δ9.50~9.64(br,1H),8.91~9.03(br,1 H),7.78(s,1H),7.62~7.56(m,2 H),7.41~7.52(m,3H),6.03(bs,1H),4.56~4.67(m,1H),4.45(dd,1 H),4.25~4.33(m,2H),4.23(dd,1H),4.18(dd,1 H),3.95~4.05(m,1H),3.83(dd,1H),3.45~3.54(m,1 H),3.26~3.40(m,1H),1.67~1.86(m,4H),1.55~1.65(m,1H),1.37~1.51(m,1H).MS(EI):m/z = 277([M+H] 遊離塩基100%).C1626Clに対するEA水(9.2%-w/w)及びHCl(2.0当量に代わる2.1当量)に対する補正:計算値:C49.44,H7.80,N7.21,O 16.40,Cl19.15;実測値C48.76,H 7.48,N 7.36,O16.44,Cl 19.11.
【0117】
実施例4
{3-ヒドロキシ-3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]-アゼチジン-1-イル}-(2,3,4-トリフルオロ-フェニル)-メタノン
【0118】
2,3,4-トリフルオロ-ベンゾイルクロライド:
2,3,4-トリフルオロ安息香酸(100g、568mmol、1.0当量)を、トルエン(1000mL)中で懸濁し、ピリジン(0.254mL、3.15mmol、0.0055当量)で処理した。得られた懸濁液を60~70℃に加熱すると、混合物は透明な黄みがかった溶液となった。この温度で、塩化オキサリル(94.4g、729mmol、1.3当量)を、156分にわたってゆっくりと添加した。添加が完了した後、完全になるまで10分間撹拌し続けた。真空下(ジャケット温度:60~70℃、圧力:200~100mbar)での蒸留により、トルエン(360mL)を部分的に除去した。水溶液を室温まで冷却し、黄みがかりわずかに濁った溶液636gを得、それをN雰囲気中で保存し、その後のステップでさらに処理するにことなく使用した。HPLC純度:99.2%-面積
【0119】
{3-ヒドロキシ-3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]-アゼチジン-1-イル}-(2,3,4-トリフルオロ-フェニル)-メタノン:
3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]-アゼチジン-3-オールジヒドロクロライド水溶液(43.5g)をEtOH(24mL)で処理し10分間室温で撹拌した。この混合物に、261mLの水中のリン酸三カリウムの溶液(28.8g、136mmol、4.7当量)を14分以内に10~20℃のバッチ温度で加え、混合物を15℃で15分間撹拌した(pH11.9)。この水溶液に、滴下漏斗によって34gの上記の2,3,4-トリフルオロ安息香酸(34.0g、29.8mmol、1.0当量)を、激しく撹拌しながら、32分にわたって10~20℃のバッチ温度で加えた。滴下漏斗をトルエン(1.2mL)ですすぎ、二相性混合物を室温で60分間撹拌した。相を分離させ、水相を廃棄した。有機相を水(42g)中の炭酸ナトリウム(3.36g、31.5mmol、1.09当量)で洗浄し、室温で30分撹拌した。層を分離させ、有機相を塩化ナトリウム水溶液(30g、10%w/w)で洗浄した。ロータリーエバポレーター(浴温50℃、圧力200mbar未満)において、有機相を体積約30%まで濃縮した。残渣をEtOH(23mL)に取り入れ、40~50℃で5分間撹拌した。再度、溶液をロータリーエバポレーター(浴温50℃、圧力200mbar未満、17ml蒸留物)で濃縮し、非常に粘稠性の油状物を得た。残渣を再度EtOH(23mL)に取り入れ、10分間撹拌し、目的の容量(53mL、46.06g)に達するために再度さらにEtOH(12mL)で希釈した。HPLC純度:85.0%-面積
【0120】
分析目的のため、生成物溶液(90mL)を濾過して濾過残渣をEtOH(15mL)で洗浄した。ロータリーエバポレーター(浴温40℃、圧力150mbar未満)において、溶液を完全に濃縮し、残渣をMTBE(40mL)に取り入れ、続いて再度十分に濃縮し、次いで酢酸エチル(29mL)及びヘプタン(40mL)の混合物に取り入れ、次いで十分に濃縮し、次いで再度MTBE(20mL)及びヘプタン(50mL)の混合物に取り入れ、再度十分に濃縮し、最終的に泡沫状固体(32.5g)を得た。固体残渣(32.0g)を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、シリカゲル(150g)フラッシュクロマトグラフィーにより、酢酸エチルを溶出剤として使用して精製した。200mLを前処理した後、6画分(800mL)を合わせて、ロータリーエバポレーター(浴温40℃、圧力20mbar以上)において完全に濃縮し、28.0gのわずかに黄、黄みがかった油状物を得た。室温で、油状物残渣をジクロロメタン(20mL)に取り入れ、ヘプタン(150mL)で希釈し、ロータリーエバポレーターで再度十分に濃縮し、続いて残渣をMTBE(20mL)に溶解し、再度ロータリーエバポレーター内の溶媒を完全に除去することにより、ゴム状泡沫物を得た。この泡沫物をトルエン(30mL、室温)に溶解し、室温で滴下漏斗により20分を超えてヘプタン(400mL)滴下して加えると、生成物は沈殿し始めた滴下漏斗をトルエン(4mL)ですすぎ、懸濁液を室温で1時間撹拌し続けた。固体を濾去し、反応器及び濾過ケーキを濾液ならびに続いてヘプタン(15mL)で2回すすいだ。35℃の真空下で、重量が17.88gの無色の個体が得られるまで乾燥した。HPLC純度:97.0%-面積,残渣溶媒:トルエン(1.2%-w/w)及びヘプタン(2.3%-w/w).Mp(視覚的):Tonset:55~73℃(発熱分解を伴った溶融).HNMR(400 MHz,DMSO-d,120℃):δ7.41~7.47(m,2H),7.27~7.32(m,2H),7.21~7.26(m,2H),7.12~7.19(m,1H),5.21(bs,1H),4.35(bd,1 H),4.22(bs,1H),4.05(dd,1H),3.91~4.01(m,1H),3.74~3.90(m,4H),3.01(dd,1H),2.75~2.84(m,1H),2.49~2.59(m,1H),1.68~1.81(m,1H),1.51~1.65(m,1H),1.23~1.50(m,3H),1.09~1.22(m,1H).MS(EI):m/z=435([M+H],100%).C2325に対するEA,残渣トルエン(1.2%-w/w)及びヘプタン(2.3%-w/w)に対する補正:計算値:C 64.38,H6.07,F12.66,N6.22;実測値C64.01,H6.04,F12.63,N 6.35.
【0121】
実施例5
((S)-3-ヒドロキシ-3-ピペリジン-2-イル-アゼチジン-1-イル)-(2,3,4-トリフルオロ-フェニル)-メタノンヒドロクロリドの合成
【0122】
アルゴン下、185mLのガラス質加圧滅菌器にPd/C(3.37g、1.3mmol、0.04当量、60.2%ww水、10%wwパラジウム炭素)、水(0.22g)及びEtOH(53mL、46g、29mmol、1.0当量)中の{3-ヒドロキシ-3-[(S)-1-((S)-2-ヒドロキシ-1-フェニル-エチル)-ピペリジン-2-イル]-アゼチジン-1-イル}-(2,3,4-トリフルオロ-フェニル)-メタノンを充填した。混合物をEtOH(13mL)、酢酸(4.15mL、72mmol、2.5当量)、及び水性塩酸(2.5ml、37%-w/w、30mmol、1.0当量)で処理した。加圧滅菌器を不活性化し、2barのHで加圧し、反応を2barのH圧で、25℃で12時間行った。圧力を加圧滅菌器から解放し、懸濁液をMeOH(25mL)で処理し、30分間撹拌し続け、アルゴン保護下において濾紙上で濾過した。加圧滅菌器及び濾過残渣をMeOH(4mL)ですすいだ。合わせた濾液を減圧下で、初期体積の約20~30パーセントまで蒸発させた。残渣をイソプロパノール(38.5mL)で、30~35℃において処理し、1時間撹拌し、20~25℃に冷却し、水(0.58g)及び塩酸(2.5mL、37%-ww、30mmol、1.0当量)で処理した。得られた懸濁液を25~35℃の真空下で、約22mLの体積に達するまで濃縮し、25~35℃でMTBE(31mL)を添加した。最終懸濁液を5~10℃まで冷却し、1時間撹拌し、次いで濾過した。濾過ケーキを低温MTBE(12mL)ですすぎ、35℃の真空化で、重量が一定になるまで乾燥し、表題化合物を無色固体として得た。HPLC純度:99.6%-範囲Mp.(DSC):Tonset:246.3℃,算出ピーク:248.8℃(発熱分解による溶融).1H NMR(400MHz,DMSO-d,120°C):δ8.59(bs,2H),7.14~7.48(m,2H),6.54(bs,1 H),4.39(dd,1 H),4.23(dd,1 H),3.85~3.97(m,2 H),3.27~3.35(m,1H),3.20~3.27(m,1 H),2.80~2.95(m,1 H),1.78~1.88(m,2 H),1.64~1.78(m,2 H),1.40~1.64(m,2 H).MS(EI):m/z = 315(遊離塩基の[M+H] 、100%).C1517xHclに対するEA:計算値:C 51.36,H5.17,N7.99,F16.25;測定値C51.19,H4.89,N 7.91,F16.06.
【0123】
実施例6
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノン(化合物I)の合成
【0124】
((S)-3-ヒドロキシ-3-ピペリジン-2-イル-アゼチジン-1-イル)-(2,3,4-トリフルオロ-フェニル)-メタノンヒドロクロリド(15.0g、42.8mmol、1.0当量)及び2-フルオロ-4-ヨード-アニリン(11.1g、47mmol、1.1当量)のTHF(90mL)中溶液に、THF中のLiHMDS(149g、20.7%w/w、184mmol、4.3当量)を、88分にわたって20~30℃で添加した。撹拌を2時間続けた。完全に変換した後、混合物を、水(75mL)中の硫酸(12.0g、96%~w /w、118mmol、2.75当量)の混合物に25分にわたって添加し、1時間撹拌し続けた。層を分離させ、有機相を水(60mL)及びトルエン(96mL)の混合物で洗浄した。有機相を真空化で約150mLの体積まで濃縮した。トルエン(250mL)を添加し、ジャケット温度55℃で、トルエン(400mL)を連続的に投与することによってバッチ体積を一定に保ちながら圧力84mbarで残留THFを留去すると、生成物の沈殿が遅くなった。続いてバッチ温度を2時間以内に10℃に下げ、懸濁液を10℃で一晩撹拌し続けた。生成物を濾別し、ケーキを冷トルエン(150mL)ですすいだ。35℃の真空化で、重量が一定になるまで乾燥し、表題化合物を無色固体(20.66g)として得た。PHLC純度:99.7%-範囲M.p(DSC):Tonset: 166.7℃,計算ピーク:168.2℃(91.5 J/g).H NMR(600 MHz,CDCl):δ8.28 - 8.48(br,1 H),7.39(dd,1 H),7.32(ddd,1 H),7.09 - 7.14(m,1 H),6.75 - 6.86(br,1 H),6.60(ddd,1 H),4.10(d,2 H),4.05 - 4.20(br,1 H),3.93 - 4.04(br,1 H),3.09(d,1 H),2.70(d,1 H),2.56 - 2.67(br,1 H),1.68 - 1.87(m,1 H),1.50 - 1.64(m,2 H),1.25 - 1.38(m,2 H),1.07 - 1.24(m,1 H).MS(EI):m/z = 532([M+H],100%).C21213Iに対するEA:計算値:C47.47,H3.98,N7.91,F10.73;実測値C47.68,H4.00,N7.66,F10.80.
【0125】
実施例7
形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノン(化合物I)の結晶性フマル酸塩の調整
【0126】
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノン(80kg)を2-プロパノール/水88:12w/w(9重量当量(w当量))に77℃で溶解させ、活性化炭素で濾過した。フマル酸(0.52当量)を、2-プロパノール/水88:12w/w(2.6w当量)に溶解させた。初期量のフマル酸溶液(全量の8%)を(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの濾過溶液に77℃で溶解させた。播種結晶(0.023w当量)を懸濁液として2-プロパノール/水88:12w/w(0.2w当量)に77℃で添加した。残った量のフマル酸溶液を6時間以内で同一の温度で添加した。結晶化を完了させるため、懸濁液を7時間以内で20℃まで冷却した。化合物Iの結晶性フマル酸塩形態Aを遠心分離により単離し、2-プロパノール(例えば、0.6w当量)で洗浄し、減圧下で、最大55℃で乾燥させ、破塊した。
【0127】
形態Aと称される(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の性質決定例
【0128】
元素分析
元素分析結果を1178.71g/molの相対分子量及び C4646の組成からから算出し、表1に示す。結果は上記の構造と一致している。
表1:C4646の元素分析
【0129】
赤外線分光法
iD5 ATRアクセサリを備えたThermoScientificのiS5フーリエ変換赤外(FTIR)分光光度計を使用した。赤外線(IR)スペクトルは、4000~650cm-1の範囲内で反射IR測定値として記録され、図1に示されている。IRスペクトルは上記の構造と一致している。特徴的なIR伸縮の概要を表2に示す。
表2:化合物Iのフマル酸塩のIR割り当て
【0130】
ジメチルスルホキシド溶液中のNMRスペクトル
核磁気共鳴(NMR)測定を、Bruker Avance600及び400MHz分光計で行った。600MHzの機械には5mmのTCI、z-gradient CryoProbeが装備され、400MHzの機械には5mmのBBFO、z-gradient Probeが装備されていた。試料は、全ての陽子検出実験のために、DMSO-d6(D、99.8%)0.75mL中の形態Aと称される化合物Iの結晶性フマル酸塩6mgを溶解することによって調製した。13C-NMR及び19F-NMRのためには、0.75mLのDMSO-d6に62mgを溶解させた。
【0131】
H-NMR(600MHz,25℃でのDMSO-d6):25℃で600MHzでのH-NMRスペクトルは、ヘミフマル酸塩の存在を証明する、遊離塩基とフマル酸塩との2:1関係を示し、信号の積分値は6.62及び6.42ppmであった。アゼチジン環には8のプロトンシグナルがあり、一方で4しか予想されず、1:1の比率で2の信号セットが存在することを示す。
【0132】
H NMR(d6DMSO)は図2に示される。δ8.54(s,1H)8.50(s,1H),7.57(dd,2H),7.37(dd,2H),7.31(m,2H),7.18(m,2H),6.67(t,2H),6.42(s,2H),4.25(d,IH),4.15 d,1H),4.09(d,1H)4.01(d,1H),3.92(d,1H),3.86(d,1H),3.71(t,2H)3.03(d,2H),2.79(m,2H)8,38(t,2H),1.62(m,6H)1.24(m 6H)(2.50五重項1.9DMSO)
【0133】
13C NMR(dDMSO)は図3に示される。δ168.0,167.5,152.3,151.4,143.6,135.2,133.2,131.3,130.5,124.6,123.7,123.0,122.7,119.8,119.6,110.7,81.6,81.5,70.3,70.3,63.0,61.8,60.7,60.6,59.0,58.1,45.5,45.4,24.1,23.7,23.1,39.5(DMSO-d
【0134】
液体状態NMR分光法の結果を支持するため、構造の解明のために固体NMR分光法も行った。液体NMR法においては、回転異性体混合物をもたらす自由回転において観察された制限のために、いくつかの信号が2倍になるが、固体NMR分光法の結果はこの立体障害の影響を受けない。したがって、より明確なピーク同定が、固体NMR分光法を使用する化合物Iのフマル酸塩に可能である。
【0135】
形態Aの13C NMRは図4に示される。δ175.3,173.6,168.9,155.5,153.5,144.4,142.5,137.0,136.0 135.5,132.0,130.5,127.2,125.0,124.0,117.9m 108.0,82.2,71.7,64.0,59.3,56.2,45.0,25.3,24.0,22.2
【0136】
形態Aの13C固体NMRは他の(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの構造の解明に使用する分析技術からの結果を確証する。遊離塩基の構造中及び対イオンの構造中に存在するすべての炭素をスペクトルで検出する。
【0137】
19F-NMR(25℃での600MHz,DMSO-d6):19F-NMRは3つのフッ素原子を示した。
【0138】
質量分析
アジレント6520QTOF分光計を、ESI正CID MSMS及びESI負MSに使用した。化合物Iのフマル酸塩について得られた陽イオンエレクトロスプレー質量スペクトルを図5に示す。562.0714m/zの[M+H]は化合物I(遊離塩基)の化学式と一致している。M+Hの断片化挙動は、衝突誘起解離(CID)によって試験された。窒素を衝突ガスとして使用した。すべてのフラグメントは、化合物Iの構造と良好な相関関係にあった。
【0139】
フマル酸塩化合物I[M-H]について得られた負のエレクトロスプレー質量スペクトル(図6)は、m/z=115.0045(計算値:m/z=115.0037;差m/ z=0.0008)であり、それはフマル酸塩対イオンの存在を示す。
【0140】
X線回折による(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノン形態A結晶性フマル酸塩の結晶構造分析
粉末X線回析(XRPD)試験
単結晶をループに乗せ、大気温度で測定した。データは、シンクロトロン放射を伴うDECTRIS Pilatus 6M検出器及びプログラムXDSで処理されたデータを備えたSwiss Light SourceビームラインX10SAで収集した。結晶構造を解析し、ShelXTL(Bruker AXS,Karlsruhe)で精緻化した。
【0141】
形態Aと称される化合物Iのフマル酸塩の構造は、カーン・インゴルド・プレローグ順位測に従い、(S)-立体配置を有する1のキラル中心を含む。構造を証明するために、単結晶判定を行った。溶媒のゆっくりとした蒸発により、アセトニトリル/水(1:1)中の希薄溶液から単結晶を結晶化させた。結晶化によって立体配座が変化しないことを証明するために、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を加えて行った。結晶データを表3に要約する。
表3: 形態A結晶データ
形態Aの子立体構造及び結晶構造パラメータを表3に示す。形態Aの結晶構造では、ピペリジン窒素はプロトン化され、フマル酸は脱プロトン化される。フマル酸塩は、2つのピペリジン及び異なる活性の分子からの2つのOH基によって配位される。結晶充填は無限の分子間水素結合鎖により特徴づけられる。絶対構造パラメータ(Flackパラメータ:0.048、esd 0.013)によって示されるように、ピペリジン環のキラル炭素原子の立体配置が(S)であることが確認された。
【0142】
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の紫外スペクトル
約200nm、239nm、276nm及び310nmのUV-Vis吸収極大は、それぞれ芳香族環部分ならびにn→π孤立電子対のπ→π遷移を示す。図7におけるスペクトルは、化合物Iのフマル酸塩の構造と一致し、かつ構造内に存在する発色団の期待される特徴を示す。
【0143】
(S)-[3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)フェニル][3-ヒドロキシ-3-(ピペリジン-2-イル)アゼチジン-1-イル]-メタノンの結晶性フマル酸塩の構造解明:多型性
15を超える化合物Iの塩形態を、例えば、安息香酸、マロン酸、フマル酸、マンデル酸、酢酸及びオロチン酸から調製された塩を含む臨床開発のための適合性について評価した。安息香酸、マロン酸、マンデル酸、酢酸及びオロチン酸が、溶媒及び条件に応じて非晶質塩、結晶塩、または非晶質塩と結晶塩の混合物を形成する場合、以下に説明するようにフマル酸から調製された塩が最も望ましいことが明らかとなった。
【0144】
化合物Iのフマル酸塩の結晶性固形の包括的な選別により、1つの結晶形態(A型)及び1つの非晶質形態(非晶質形態)が明らかとなった。無溶媒で非吸湿性である形態Aは、熱力学的に安定な形態であり、かつ製造プロセスによって一貫して生成される形態である。非晶形は、非結晶性であり、吸湿性である。非晶形は、加熱及び水中の溶媒媒介相転移によって形態Aに変換することが観察されている。多形選別中に行われる約3000の結晶化実験において、さらなる多形相は観察されなかった。DSC測定値及び温度調整XRPDに基づいて、融解が発生するまでの過熱下での多形相は観察されなかった。工程条件(溶媒2-プロパノール/水 88:12、温度:20℃)を用いたスラリー実験においては、非晶形は速やかに形態Aに変換した。加熱下において、90℃~200℃で非晶形は形態Aに変換した。
【0145】
示差走査熱量測定(DSC)及び粉末X線回析(XRPD)によって、形態A及び非晶形を識別することができる。さらに、形態Aと非晶形の違いは、ラマン分光法及び13C固体核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて実証されている。
【0146】
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler-Toledo社製機器(DSC820/821e/1;FRS05センサー)を用いてDSCサーモグラムを記録した。試料約2~6mgをアルミニウム蒸発皿に入れ、アルミニウム蓋で密封した。加熱前に蓋を自動的に穿孔した。通常、窒素下の試料を10K/分の比率で最大250℃まで加熱した。
【0147】
結晶性形態Aは239.6℃(Tonset)で融解を起こした。融解及び分解が重複しているので、融解熱ならびにTextra.pol.は決定されなかった(図8)。
【0148】
非晶形は、116.2℃(粉砕から)及び120.6℃(凍結乾燥から)のガラス転移を示し、続いて150℃~200℃の結晶化に起因する発熱事象が形態Aに現れた。約225℃を超えると、材料が融解し始める(図9)。
【0149】
形態A及び非晶形の粉末X線回析
周囲条件でSTOE社製STADI P回折計(CuKα線[1.54Å]、一次モノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲3°~42°2-θ、総測定時間約30分)を用いて、透過幾何学におけるX線回析パターンを記録した。試料を用意し、さらなる材料の処理(例えば、粉砕またはふるい)をせずに分析した。
【0150】
表4に示されるように、結晶性形態Aは2-θ値に発現する、一連の特徴的な回析ピーク位置によって選択的に同定される。個々の形態に特徴的なXRPD回折図を図10及び図11に示す。
表4
【0151】
結晶性形態A及び非晶形の固有溶解速度
それぞれの固有溶解測定のため、フラットディスク(表面積=0.5cm)に約15kNの負荷をかけて、結晶性形態Aまたは非晶形試料からペレットを製造した。圧縮後、それぞれのペレットをXRPDによって点検し、ペレット成型工程中に多形性変換が起きていないことを確かめた。使用した実験条件を表5にまとめる。
表5
【0152】
形態A及び非晶形(凍結乾燥から)のバッチを使用して、それぞれの固体形態の固有溶出速度を決定した。固有の溶解は、一定の表面積を溶解媒体に曝すことによって異なる結晶形態の特徴付けを可能にする。得られた結果を表6にまとめる。
表6
【0153】
それぞれの形態の固有溶解速度は大いに異なる。データに基づき、非晶形は、結晶性形態Aより約35倍速い固有溶解速度を有する。
【0154】
結晶性形態A及び非晶形の吸湿性
水分吸着/脱離データをDVS-1/DVS-HT/DVS-内因性(SMS表面測定システム)水分バランスシステムで収集した。吸着/脱着等温線は、25℃で0%RH(相対湿度)から90%RHの範囲で段階的に測定した。RHの次のレベル(重量基準が満たされない場合、最大平衡時間24時間)に切り替える基準として、0.002mg/分未満の重量変化が選択された。データを試料の初期水分量に対して修正;つまり、0%RHで試料が乾燥した後の重量をゼロ点として取った。所定の物質の吸湿性は、表7に示すように、RHを0%RHから90%RHに上げたときの質量の増加を特徴とする。
表7
【0155】
結晶性形態Aの水分吸着/脱着データが図12に示されている。標準的な動的蒸気収着実験のタイムスケールの間、変換は観察されなかった。0%RHから90%RHの間では、形態Aは最小かつ可逆的な±0.1%の重量増加または損失を示し、したがって、非吸湿性であると分類される。
【0156】
非晶形の水分吸着/脱着データは図13に提供される(凍結乾燥から)。標準的な動的蒸気収着実験のタイムスケールの間、変換は観察されなかった。0%RHから90%RHの間では、非晶形は可逆的な±12.1%の重量増加または損失を示し、したがって、吸湿性であると分類される。
【0157】
前述の開示は、明瞭化及び理解のために、例示及び実施例によっていくらか詳細に記載されている。本発明は、様々な具体的かつ好ましい実施形態及び技術を参照して説明されている。しかし、本発明の精神及び範囲内にとどまりながら、多くの変形及び修正させることができることを理解されたい。当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で変更及び修正を実施できることは明らかであろう。したがって、上記の説明は例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照せずに決定されるべきであり、かかる請求項が権利を与えられる等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された一発明。
【外国語明細書】