(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025003
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体とその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230214BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230214BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230214BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230214BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230214BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/30
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 S
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/20
A61P31/14
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61P31/18
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178282
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019556600の分割
【原出願日】2018-04-18
(31)【優先権主張番号】PCT/US2017/028206
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516268356
【氏名又は名称】アール-ファーム・オーバーシーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】R-Pharm Overseas, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ラブロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】シュイ・ティン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・バルバショフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・レピク
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・サムソノフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリー・イグナティエフ
(72)【発明者】
【氏名】ショレーナ・アルチュアゼ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】完全ヒト抗PD-L1抗体、およびヒトPD-L1の活性の調節に関連する疾患の治療または予防に該抗体を適用する方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を提供する。開示される完全ヒト抗PD-L1抗体は、腫瘍成長を顕著に阻害する一方で、活性化T細胞に結合することによりT細胞の活性を高めることができる。開示される完全ヒト抗PD-L1抗体は、PD-L1関連のがんおよびその他の関連疾患の診断および治療に使用することができる。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号1、2および3にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号4、5および6にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖;
(2)配列番号7、8および9にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号10、11および12にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖;
(3)配列番号13、14および15にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号16、17および18にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖;
(4)配列番号1、2および19にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号4、5および6にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖;
(5)配列番号7、20および9にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号10、11および12にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖;ならびに
(6)配列番号13、14および15にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖、ならびに配列番号21、17および18にそれぞれ対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖
からなる群から選択されるポリペプチドの群を含む、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
以下の中から選択される配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分:配列番号47、49、51、53もしくは54、または前記配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%同一である配列。
【請求項3】
以下の中から選択される配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分:配列番号48、50、52、55もしくは56、または前記配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%または99%同一である配列。
【請求項4】
抗体全体、二重特異性抗体、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2またはFvに対応する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項5】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に連結ペプチドをさらに含むscFvである、請求項4に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項6】
前記連結ペプチドが配列番号67の配列を含む、請求項5に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項7】
重鎖定常領域が、IgG、IgM、IgE、IgDおよびIgAを含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項8】
重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む群から選択される、請求項7に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項9】
軽鎖定常領域がκ領域またはλ領域である、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分。
【請求項10】
抗体重鎖可変領域をコードすることができる核酸配列を含む核酸分子であって、前記抗体重鎖可変領域が、
(i)配列番号1~3;
(ii)配列番号7~9;
(iii)配列番号13~15;
(iv)配列番号1、2および19;ならびに
(v)配列番号7、20および9
からなる群から選択されるアミノ酸配列の群を含む、核酸分子。
【請求項11】
前記抗体重鎖可変領域が以下の中から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の核酸分子:配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、および配列番号54。
【請求項12】
抗体軽鎖可変領域をコードすることができる核酸配列を含む核酸分子であって、前記抗体軽鎖可変領域が:
(i)配列番号4~6;
(ii)配列番号10~12;
(iii)配列番号16~18;ならびに
(iv)配列番号21、17、および18
からなる群から選択されるアミノ酸配列の群を含む、核酸分子。
【請求項13】
前記抗体重鎖可変領域が以下の中から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の核酸分子:配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号55、配列番号56。
【請求項14】
抗体重鎖可変領域をコードすることができる核酸配列を含む核酸分子を含むベクターであって、前記抗体重鎖可変領域が:
(i)配列番号1~3;
(ii)配列番号7~9;
(iii)配列番号13~15;
(iv)配列番号1、2および19;ならびに
(v)配列番号7、20および9
からなる群から選択されるアミノ酸配列の群を含む、ベクター。
【請求項15】
抗体軽鎖可変領域をコードすることができる核酸配列を含む核酸分子をさらに含み、前記抗体軽鎖可変領域が:
(i)配列番号4~6;
(ii)配列番号10~12;
(iii)配列番号16~18;ならびに
(iv)配列番号21、17、および18
からなる群より選択されるアミノ酸配列の群を含む、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号87のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗PD-L1抗体、または抗体の抗原結合部分。
【請求項17】
配列番号85および配列番号87からなる群から選択される配列を有するポリペプチドをコードすることができる核酸配列を含む核酸分子。
【請求項18】
配列番号86または配列番号88の配列を含む、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
配列番号85および配列番号87からなる群から選択される配列を有するポリペプチドをコードすることができる核酸を含む宿主細胞。
【請求項20】
配列番号85の重鎖および配列番号87の軽鎖を有する抗体、または抗体の抗原結合部分;ならびに医薬的に許容される賦形剤またはアジュバントを含む組成物。
【請求項21】
約5.9のpHを有する、約275mMのセリン、約10mMのヒスチジンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項22】
約5.8のpHを有する、約0.05%のポリソルベート80、約1%のD-マンニトール、約120mMのL-プロリン、約100mMのL-セリン、約10mMのL-ヒスチジン-HClを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ヒトPD-L1の活性の調節に関連する疾患を治療または予防する必要がある患者に配列番号85の重鎖および配列番号87の軽鎖を有する抗体、または抗体の抗原結合部分を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、ヒトPD-L1の活性の調節に関連する疾患または状態を治療または予防する方法。
【請求項24】
前記疾患が肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がんまたは骨肉腫である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患がHBV、HCVまたはHIV感染である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物医学の分野に関連し、完全ヒト抗PD-L1抗体およびその医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞が外因性抗原に反応するとき、休止Tリンパ球に2つのシグナルを提供するために抗原提示細胞(APC)が必要である:最初のシグナルは、TCRの助けによりT細胞がMHC分子に結合した抗原ペプチドを認識する際に生成され、その後、抗原認識シグナルがTCR/CD3複合体を介して伝達される;そして、第2の信号は一連の共刺激分子によって提供される;そして、このようにして、T細胞は正常に活性化されることがあり、その結果、正常な免疫応答が生じる。これらの共刺激分子は、2番目の信号によって生じる効果に応じて、正の共刺激分子または負の共刺激分子のいずれかに分類することができ、正および負の共刺激信号の調節と、前記信号間の相対バランスは、体全体の免疫反応を通じて重要な調節の役割を果たす。
【0003】
PD-1はCD28受容体ファミリーのメンバーであり、前記ファミリーにはCTLA4、CD28、ICOSおよびBTLAもまた含まれる。このファミリーの最初のメンバーであるCD28およびICOSは、モノクローナル抗体を加えたときに発見され、T細胞増殖の増加として観察された[Hutloff et al. (1999) Nature 397: 263-266; Hansen et al. (1980) Immunogenics 10: 247-260]。PD-1のリガンドにはPD-L1とPD-L2が含まれ、受容体がリガンドに結合するとT細胞の活性化と関連サイトカインの分泌を下方制御することが研究結果によりすでに示されている[Freeman et al. (2000) J Exp Med 192: 1027-34; Latchman et al. (2001) Nat Immunol 2: 261-8; Carter et al. (2002) Eur J Immunol 32: 634-43; Ohigashi, et al. (2005) Clin Cancer Res 11: 2947-53]。
【0004】
PD-L1(B7-H1)は、B7ファミリーに属する細胞表面糖タンパク質であり、IgVおよびIgC様領域、膜貫通領域、細胞質尾部領域を含む。1999年に対応する遺伝子が最初に発見およびクローン化され[Dong H, et al. (1999) Nat Med 5: 1365-1369]、糖タンパク質自体がT細胞受容体PD-1と相互作用し、免疫応答の負の調節において重要な役割を果たすと判断された。T細胞で発現するPD-1に作用することに加えて、PD-L1は、T細胞で発現する場合、APC上でCD80と相互作用して負のシグナルを伝達し、T細胞阻害剤として機能することができる。マクロファージ系細胞で発現することに加えて、PD-L1は正常なヒト組織においても低レベルで発現するが、糖タンパク質は、例えば肺がん、卵巣がん、結腸がんおよびメラノーマを含む特定の腫瘍細胞株で比較的高い発現を示す[Iwai et al. (2002) PNAS 99: 12293-7; Ohigashi, et al. (2005) Clin Cancer Res 11: 2947-53]。腫瘍細胞におけるPD-L1の発現の増加がT細胞アポトーシスを上昇させ、それにより、腫瘍細胞が免疫応答を回避するのに重要な役割を果たすことが、研究結果により示唆されている。研究者は、PD-L1遺伝子をトランスフェクトしたP815腫瘍細胞株が特定のCTL溶解に対してインビトロで耐性を示すことがあり、マウスに接種するとき、前記細胞がより高い腫瘍形成性および侵襲性を示し得ることを発見した。これらの生物学的特性は、PD-L1をブロックすることで反転させることができる。PD-1ノックアウトマウスでは、PD-L1/PD-1経路がブロックされ、接種された腫瘍細胞は腫瘍を形成することができない[Dong H et al. (2002) Nat Med 8: 793-800]。
【0005】
高い親和性でPD-L1に結合することができ、したがってPD-1とPD-L1の結合をブロックすることができる抗PD-L1抗体が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の特定の態様において、スクリーニングおよび親和性成熟と組み合わせた酵母ディスプレイシステムを利用して、良好な特異性および比較的高い親和性および安定性を示す完全ヒト抗PD-L1抗体を得て、それにより本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、以下の1つから選択されるCDR領域の群を含む抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分に関する:
(1)配列番号1~3にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号4~6にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列;
(2)配列番号7~9にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号10~12にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列;
(3)配列番号13~15にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号16~18にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列;
(4)配列番号1、2および19にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号4~6にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列;
(5)配列番号7、20および9にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号10~12にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列;
(6)配列番号13~15にそれぞれ対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびに配列番号21、17および18にそれぞれ対応する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、もしくは95%を超えて同一である配列。
【0008】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つは、以下の1つから選択される重鎖可変領域フレームワーク領域の群もまた含む:
1)配列番号22~25にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
2)配列番号30~33にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
3)配列番号38~41にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
4)配列番号30~33にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列。
【0009】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つは、以下の1つから選択される軽鎖可変領域フレームワーク領域の群もまた含む:
1)配列番号26~29にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
2)配列番号30~33にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
3)配列番号38~41にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列;
4)配列番号30~33にそれぞれ対応するFR1、FR2、FR3およびFR4配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%を超えて同一である配列。
【0010】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つは、以下の1つから選択される重鎖可変領域の群を含む:
1)配列番号47、49、51、53もしくは54に対応する配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%同一である配列。
【0011】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分のいずれか1つは、以下から選択される軽鎖可変領域の群を含む:
1)配列番号48、50、52、55もしくは56に対応する配列、または前述の配列の1つとそれぞれ70%、80%、85%、90%、95%もしくは99%同一である配列。
【0012】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つは、抗体全体、二重特異性抗体、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2またはFvに対応する。
【0013】
本発明のいずれの例においても、本発明がscFvにより構成される場合、連結ペプチドもまた、前述の抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖可変領域の間に含まれる。
【0014】
本発明のいくつかの特定の例において、前述の連結ペプチドの配列は、配列番号67に示される通りである。
【0015】
本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分のいずれか1つの例は、抗体全体に対応する。
【0016】
重鎖定常領域が、IgG、IgM、IgE、IgDおよびIgAを含む群から選択される、本発明の第1の態様によって構成される抗PD-L1抗体またはその対応する抗原結合部分のいずれか1つの例。
【0017】
本発明の特定の例において、重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。
【0018】
本発明の特定の例において、重鎖定常領域は、IgG1に対応する。
【0019】
本発明の特定の例において、IgG1アミノ酸配列は配列番号68に示される通りである。
【0020】
軽鎖定常領域がκ領域またはλ領域である、本発明の第1の態様によって構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つ。
【0021】
本発明の特定の例において、κ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号70に示される通りである。
【0022】
本発明の特定の例において、λ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号72に示される通りである。
【0023】
本発明の第2の態様は、抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む核酸分子に関し、ここで、前述の抗体重鎖可変領域は、以下から選択されるアミノ酸配列の群を含む:
(i)配列番号1~3;
(ii)配列番号7~9;
(iii)配列番号13~15;
(iv)配列番号1、2および19;
(v)配列番号7、20および9;
【0024】
本発明の第2の態様によって構成される核酸分子のいずれか1つであって、前述の抗体重鎖可変領域は、以下から選択される核酸配列の群を含む:配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号54、または前述の配列の1つのフレーム領域に含まれるアミノ酸の1つまたはいくつかを置換することによって作成される配列。
【0025】
本発明のいくつかの例において、前述の核酸は、配列番号57~61に示されるものから選択される配列を含む。
【0026】
本発明のいくつかの例において、前述の核酸は、抗体重鎖定常領域をコードする核酸配列もまた含み、前記重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgE、IgDおよびIgAを含む群から選択される。
【0027】
本発明のいくつかの例において、重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む群から選択される。
【0028】
本発明の特定の例において、重鎖定常領域はIgG1に対応する。
【0029】
本発明の特定の例において、IgG1核酸配列は配列番号69に示される通りである。
【0030】
本発明の第3の態様は、抗体軽鎖可変領域をコードすることができる核酸配列を含む核酸分子に関し、ここで、前述の抗体軽鎖可変領域は、以下から選択されるアミノ酸配列の群を含む:
(i)配列番号4~6;
(ii)配列番号10~12;
(iii)配列番号16~18;
(iv)配列番号21、17および18。
【0031】
本発明の第3の態様により構成される核酸分子のいずれか1つであって、前述の抗体軽鎖可変領域は、以下から選択される核酸配列の群を含む:配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号55、配列番号56、または前述の配列の1つのフレーム領域に含まれるアミノ酸の1つまたはいくつかを置換することによって作成された配列。
【0032】
本発明のいくつかの態様において、前述の核酸は、配列番号62~66に示されるものから選択される配列を含む。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、前述の核酸は、抗体軽鎖定常領域をコードすることができる核酸配列も含み、ここで、前記軽鎖定常領域は、κ領域またはλ領域である。
【0034】
本発明の特定の態様において、κ軽鎖定常領域の核酸配列は配列番号70に示される通りである。
【0035】
本発明の特定の態様において、λ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号72に示される通りである。
【0036】
本発明の第4の態様は、本発明の第2または第3の態様により構成される核酸のいずれか1つを含むベクターに関する。
【0037】
本発明の第4の態様により構成されるベクターのいずれかは、本発明の第2の態様により構成される核酸のいずれか1つと、本発明の第3の態様により構成される核酸のいずれか1つを含む。
【0038】
本発明の第5の態様は、本発明の第2または第3の態様により構成される核酸のいずれか1つ、または本発明の第4の態様により構成されるベクターのいずれか1つを含む宿主細胞に関する。
【0039】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つ、ならびに他の生物活性物質を含むコンジュゲートに関し、ここで、前述の抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分は、直接または連結断片を介して、別の生物活性物質にコンジュゲートされている。
【0040】
本発明のいくつかの態様では、前述のさらなる生物活性物質は、化学物質、毒素、ポリペプチド、酵素、同位体、サイトカインまたは直接もしくは間接的に細胞の増殖を阻害することができるかもしくは細胞を殺傷することができるか、そうでなければ細胞をアウリスタチンMMAE(Auristatin MMAE)、アウリスタチンMMAF(Auristatin MMAF)、メイタンシンDM1(Maytansine DM1)、メイタンシンDM4(Maytansine DM4)、カリケアマイシン(calicheamicin)、デュオカルマイシンMGBA(duocarmycin MGBA)、ドキソルビシン(doxorubicin)、リシン、ジフテリア毒素およびその他の関連毒素、I131、インターロイキン、腫瘍壊死因子、ケモカイン、ナノ粒子などの免疫応答の活性化を介して阻害もしくは殺傷することができる他の個々の生物活性物質またはそれらの混合物を含む群から選択される。
【0041】
本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つ、本発明の第2または第3の態様により構成される核酸のいずれか1つ、本発明の第4の態様により構成されるベクターのいずれか1つ、本発明の第5の態様により構成される宿主細胞のいずれか1つ、または本発明の第6の態様により構成されるコンジュゲートのいずれか1つ、ならびに任意の医薬的に許容されるベクターまたは賦形剤および任意の他の生物活性物質を含む組成物(医薬組成物など)に関する。
【0042】
本発明の第7の態様により構成される組成物のいずれか1つ(医薬組成物など)、前述のさらなる生物活性物質には、他の抗体、融合タンパク質または薬物(例えば、化学療法薬および放射線療法薬のような抗がん剤)が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明はさらに、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つを含む試薬または試薬キットに関し、前述の検出試薬または試薬キットは、PD-L1タンパク質またはその誘導体の有無を検出するために使用される。
【0044】
本発明はさらに、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つを含む診断試薬または試薬キットに関し、ここで、前述の診断試薬または試薬キットはインビトロ(細胞や組織など)またはインビボ(ヒトやモデル動物など)でのPD-L1関連疾患(例えば、高いPD-L1発現を示すウイルス感染や、または高いPD-L1発現を示す腫瘍の場合のような、腫瘍またはウイルス感染)の診断において使用される。
【0045】
本発明のいくつかの態様において、前述の抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分は、検出に使用することができるか、または別の試薬で検出することができる蛍光色素、化学物質、ポリペプチド、酵素、同位体、標識などにさらに結合される。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、前述の腫瘍には、肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がん、骨肉腫、甲状腺がん、前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明のいくつかの態様において、前述のウイルス感染には、急性、亜急性または慢性のHBV、HCVまたはHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明はさらに、本発明の第1の態様によって構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つ、第2または第3の態様によって構成される核酸のいずれか1つ、本発明の第4の態様により構成されるベクターのいずれか1つ、本発明の第5の態様により構成される宿主細胞のいずれか1つ、本発明の第6の態様により構成されるコンジュゲートのいずれか1つ、または本発明の第7の態様によって構成される組成物のいずれか1つを使用して、PD-L1関連疾患(例えば、高いPD-L1発現を示すウイルス感染や、または高いPD-L1発現を示す腫瘍の場合のような、腫瘍またはウイルス感染)の予防または治療に使用される薬物を調製する用途に関する。
【0049】
本発明の特定の態様において、前述の腫瘍は、高レベルのPD-L1発現を示す腫瘍などのPD-L1関連腫瘍を指す。
【0050】
本発明の特定の態様において、前述の腫瘍には、肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がん、骨肉腫、甲状腺がん、前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明のいくつかの態様において、前述のウイルス感染には、急性、亜急性または慢性のHBV、HCVまたはHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明はさらに、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つを使用して、PD-L1関連疾患(例えば、高いPD-L1発現を示すウイルス感染や、または高いPD-L1発現を示す腫瘍の場合のような、腫瘍またはウイルス感染)の診断のための試薬または試薬キットを調製する用途に関する。
【0053】
本発明のいくつかの態様において、前述の腫瘍は、高レベルのPD-L1発現を示す腫瘍などのPD-L1関連腫瘍を指す。
【0054】
本発明の特定の態様において、前述の腫瘍には、肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がん、骨肉腫、甲状腺がん、前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明のいくつかの態様において、前述のウイルス感染には、急性、亜急性または慢性のHBV、HCVまたはHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明のいくつかの態様において、前述の抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分は、検出に使用することができるか、または別の試薬で検出することができる蛍光色素、化学物質、ポリペプチド、酵素、同位体、標識などにさらに結合される。
【0057】
本発明はさらに、本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つを使用して、CD80関連疾患の予防または治療のための薬物を調製する用途に関する。
【0058】
本発明の文脈において、上記で言及したCD80関連疾患には、高いCD80発現に関連する疾患が含まれる。
【0059】
本発明はさらに、PD-L1関連疾患(例えば、高いPD-L1発現を示すウイルス感染や、または高いPD-L1発現を示す腫瘍の場合のような、腫瘍またはウイルス感染)を予防または治療するために使用される方法に関し、前述の方法は、任意選択の放射線療法(X線照射など)の投与と組み合わせた、有効な予防または治療用量の本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つ、本発明の第2または第3の態様により構成される核酸のいずれか1つ、本発明の第4の態様により構成されるベクターのいずれか1つ、本発明の第5の態様により構成される宿主細胞のいずれか1つ、本発明の第6の態様により構成されるコンジュゲートのいずれか1つ、または本発明の第7の態様によって構成される組成物のいずれか1つを対象に与えることを含む。
【0060】
本発明のいくつかの態様において、前述の腫瘍は、高レベルのPD-L1発現を示す腫瘍などのPD-L1関連腫瘍を指す。
【0061】
本発明の特定の態様において、前述の腫瘍には、肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がん、骨肉腫、甲状腺がん、前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明のいくつかの態様において、前述のウイルス感染には、急性、亜急性または慢性のHBV、HCVまたはHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明はさらに、有効な予防または治療用量の本発明の第1の態様により構成される抗PD-L1抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つを対象に与えることを含む、CD80関連疾患を予防または治療するために使用される方法に関する。
【0064】
本発明の文脈において、上記で言及したCD80関連疾患には、高いCD80発現に関連する疾患が含まれる。
【0065】
本発明は以下の本文でさらに記載される。
【0066】
本発明の文脈において、特に示さない限り、本文で使用される科学技術用語は、当業者により理解されるようなそれぞれの共通の意味に対応するものとする。さらに、タンパク質および核酸化学、分子生物学、細胞および組織培養、微生物学および免疫学関連の用語、ならびに本文で使用される実験室手順はすべて、それぞれの分野で広く採用されている用語および標準手順に対応する。しかしながら、関連用語の定義および説明を以下に提供して、本発明をさらに明確にする。
【0067】
本発明の文脈において、「抗体」という用語は、通常2対の同一ポリペプチド鎖[各対は1つの「軽」(L)鎖と1つの「重」(H)鎖を有する]からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体の軽鎖は、κまたはλ軽鎖のいずれかに分類されることがある。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεのいずれかに分類することができ、それぞれの対応する抗体アイソタイプは、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義される。軽鎖と重鎖については、可変領域と定常領域はおよそ12以上のアミノ酸「J」領域で接続される一方で、重鎖はおよそ3以上のアミノ酸「D」領域もまた含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)で構成されている。重鎖定常領域は、3つの構造ドメイン(CH1、CH2、CH3)で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成されている。軽鎖定常領域は、1つの構造ドメイン(CL)で構成されている。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(エフェクター細胞など)および古典的な補体系(C1q)の第1のコンポーネントを含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)として知られる、より保存された領域で散在された、ばらつきの大きい領域(相補性決定領域(CDR)として知られる)にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4の順序で配置されている。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VHおよびVL)は、それぞれ抗体の各結合部位を形成する。各領域または構造ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest[National Institutes of Health, Bethesda, Md (1987 and 1991)]またはChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917およびChothia et al. (1989) Nature 342: 878-883により与えられた定義に従う。「抗体」という用語は、抗体を産生するために使用される方法に関して特定の制限を受けない。例えば、それには、特には組換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、例えばIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgM抗体を含む、異なるアイソタイプの抗体であり得る。
【0068】
本発明の文脈において、抗体の「抗原結合部分」とは、抗体の全長に沿った1つまたは複数の部分を指し、ここで、前記部分は、抗体が結合する同じ抗原(例えば、PD-L1)に結合する能力を維持し、インタクトな抗体と競合して、所与の抗原に特異的に結合する。一般的には、全文の引用を介してすべての目的について本明細書に組み込まれるFundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd edition, Raven Press, NY (1989)を参照されたい。抗原結合部分は、組換えDNA技術または全体の抗体の酵素または化学的分解によって生成することができる。いくつかの例において、抗原結合部分には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、ダイアボディおよび類似のポリペプチドが含まれ、これらは、ポリペプチド特異的抗原結合能力を付与することができる抗体の少なくとも一部を含む。
【0069】
本発明の文脈において、「Fd断片」という用語は、VHおよびCH1構造ドメインからなる抗体断片を指す;「Fv断片」という用語は、抗体の単一アームのVLおよびVH構造ドメインからなる抗体断片を指す;「dAb断片」という用語は、VH構造ドメインから構成される抗体断片を指す[Ward et al., Nature 341: 544-546 (1989)];「Fab断片」という用語は、VL、VH、CLおよびCH1構造ドメインから構成される抗体断片を指す;ならびに「F(ab’)2断片」という用語は、ヒンジ領域のジスルフィド架橋を介して接続された2つのFab断片を含む抗体断片を指す。
【0070】
いくつかの場合において、抗体の抗原結合部分は単鎖抗体(例えば、scFv)であり、VLおよびVH構造ドメインは、単一ポリペプチド鎖リンカーとして生成させることによりペアリングを介して一価分子を形成する[例えば、Bird et al., Science 242: 423-426 (1988) および Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883 (1988)を参照されたい]。そのようなscFv分子は、NH2-VL-コネクタ-VH-COOHまたはNH2-VH-コネクタ-VL-COOHの一般構造を持つことができる。適切な従来のコネクタ(連結ペプチド)は、GGGGSアミノ酸配列の繰り返しまたはその変異体で構成されている。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を持つコネクタが使用できるが、変異体もまた使用できる[Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448] 。本発明に使用することができる他のコネクタは、Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8: 725-731, Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31: 94-106, Hu et al. (1996), Cancer Res. 56: 3055-3061, Kipriyanov et al. (1999) , J. Mol. Biol. 293: 41-56 and Roovers et al. (2001) , Cancer Immunolに記載されている。本発明の一態様において、前述の連結ペプチドの配列は(GGGGS)3である。
【0071】
いくつかの例において、抗体は、2つの異なる種類の抗原もしくは抗原エピトープにそれぞれ結合することができる二重特異性抗体によって構成され、一次抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖、またはその抗原結合部分、ならびに二次抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖、またはその抗原結合部分を含む。本発明のいくつかの態様において、前述の二重特異性抗体に含まれる一次抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖、またはその抗原結合部分は、本発明により構成される抗体または対応する抗原結合部分のいずれか1つに対応し得、前述の二重特異性抗体に含まれる二次抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖、またはその抗原結合部分は、異なる抗PD-L1抗体もしくは対応する抗原結合部分、または異なる抗原を標的とする抗体もしくは対応する抗原結合部分に対応し得る。
【0072】
いくつかの場合において、抗体はダイアボディ、すなわち二価抗体に対応し、ここで、VHおよびVL構造ドメインが単一のポリペプチド鎖で発現されるが、使用されるリンカーが短すぎるため、同じ鎖上の2つの構造ドメイン間でペアリングができず、そのことにより、構造ドメインを別の鎖の相補構造ドメインと強制的にペアリングさせ、2つの抗原結合部位が生じる[例えば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993), およびPoljak R.J. et al., Structure 2: 1121-1123 (1994)を参照されたい]。
【0073】
当業者に知られている従来の技術(例えば、組換えDNA技術または酵素的または化学的切断)を使用して、所定の抗体(モノクローナル抗体2E12のような)から抗原結合部分(例えば、上記の抗体断片)を得て、抗体全体について使用されるものと同じ方法を使用して、抗体の抗原結合部分を選択的にスクリーニングすることができる。
【0074】
本発明の文脈において、上記の抗原結合部分には、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、scFv-Fc二価分子、dAbおよび相補性決定領域(CDR)断片、Fab断片、Fd断片、Fab’断片、FvおよびF(ab’)2断片が含まれる。
【0075】
本発明の文脈において、上記のIgG1重鎖定常領域には、G1m(f)、G1m(z)、G1m(z、a)およびG1m(z、a、x)などのアロタイプが含まれる。本発明のいくつかの態様において、前述のIgG1重鎖定常領域はG1m(f)に対応する。
【0076】
本発明の文脈において、前述のκ軽鎖定常領域はKm1、Km1,2およびKm3などのさまざまなアロタイプを含む。本発明のいくつかの態様において、前述のκ軽鎖定常領域はKm3型領域に対応する。
【0077】
本発明の文脈において、前述のλ軽鎖定常領域はλI、λII、λIIIおよびλVIなどのさまざまなアロタイプを含む。本発明のいくつかの態様において、前述のλ軽鎖定常領域はλII型領域に対応する。
【0078】
本発明に関する抗体核酸は、従来の遺伝子工学組換え技術または化学合成法を介しても得ることができる。一方で、本発明に関する抗体核酸の配列には、抗PD-L1抗体重鎖可変領域または抗体分子に属する部分核酸配列が含まれる。一方で、本発明に関する抗体核酸の配列には、抗PD-L1抗体軽鎖可変領域または抗体分子に属する部分核酸配列も含まれる。さらに別の一方で、本発明に関する抗体核酸の配列は、重鎖および軽鎖可変領域に属するCDR配列もさらに含む。相補性決定領域(CDR)は、抗原エピトープに結合する部位であり、本発明の文脈内で、CDR配列はIMGT/V-QUEST(http://imgt.cines.fr/textes/vquest/)を介して検証される。しかしながら、異なる解析法で得たCDR配列はわずかに異なる。
【0079】
本発明の一態様は、抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖および軽鎖可変領域配列をコードする核酸分子に関する。抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖可変領域配列をコードする核酸分子は、それぞれ配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号59に対応する。抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61、およびB50軽鎖可変領域配列をコードする核酸分子は、それぞれ配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号62、配列番号65および配列番号66に対応する。本発明は、抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖および軽鎖可変領域配列をコードする核酸分子の変異体または類似体にも関する。
【0080】
他方で、本発明はまた、さまざまな分離された核酸分子変異体にも関する;具体的には、前記核酸変異体の配列は、以下の核酸配列と少なくとも70%の類似性を示すはずである:配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号59、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号62、配列番号65および配列番号66、ここで少なくとも75%に達する類似性が好ましく、少なくとも80%に達する類似性がより好ましく、少なくとも85%に達する類似性がさらに好ましく、少なくとも90%に達する類似性がさらにより好ましく、少なくとも95%に達する類似性が最も好ましい。
【0081】
本発明はさらに、配列番号47、49、51、53、54、および51のアミノ酸配列の形で抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖可変領域配列をコードする、対応する分離された核酸分子に関する。本発明はまた、配列番号48、50、52、48、55および56のアミノ酸配列の形で抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61、およびB50軽鎖可変領域配列をコードする、対応する核酸分子にも関する。
【0082】
本発明は、前述の核酸分子を含む組換え発現ベクターに関し、さらに、前記分子で形質転換された宿主細胞に関する。さらに、本発明は、前述の核酸分子を含む宿主細胞の特定の条件下での培養、引き続き、本発明に記載の抗体を得るための分離に使用される方法に関する。
【0083】
抗体のアミノ酸配列
モノクローナル抗体mAb B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、対応する核酸配列に由来してもよい。抗体mAb B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号47、49、51、53、54および51に対応する。抗体mAb B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号48、50、52、48、55および56に対応する。
【0084】
一方で、本発明により提供される抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号47、49、51、53、54および51で与えられる配列と少なくとも70%の類似性を示すはずであり、類似性は少なくとも80%に達することが好ましく、類似性は少なくとも85%に達することがより好ましく、類似性は少なくとも90%に達することがさらにより好ましく、類似性は少なくとも95%に達することが最も好ましい。
【0085】
一方で、本発明により提供される抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号48、50、52、48、55および56に示される配列と少なくとも70%の類似性を示すはずであり、類似性は少なくとも80%に達することが好ましく、類似性は少なくとも85%に達することがより好ましく、類似性は少なくとも90%に達することがさらにより好ましく、類似性は少なくとも95%に達することが最も好ましい。
【0086】
抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50の重鎖および軽鎖可変領域のCDRアミノ酸配列は次のように決定される:抗体B60-55の重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1~3に対応する。抗体B60-55の軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4~6に対応する。
【0087】
抗体BII61-62の重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号7~9に対応する。抗体BII61-62の軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10~12に対応する。
【0088】
抗体B50-6の重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13~15に対応する。抗体B50-6の軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号16~18に対応する。
【0089】
一方で、抗PD-L1抗体またはその断片の重鎖のCDRに含まれるアミノ酸配列は、配列番号1~3、7~9、13~15、19および20の1つまたは複数のアミノ酸の変異、付加または欠失を介して得てもよい。好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は3を超えてはならない。より好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は2を超えてはならない。最も好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は1を超えてはならない。
【0090】
一方で、抗PD-L1抗体またはその断片の軽鎖のCDRに含まれるアミノ酸配列は、配列番号4~6、10~12、16~18、および21の1つまたは複数のアミノ酸の変異、追加、または欠失を介して得てもよい。好ましくは、変異、付加、または欠失に供されるアミノ酸の数は3を超えてはならない。より好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は2を超えてはならない。最も好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は1を超えてはならない。
【0091】
抗体B60-55、BII61-62、B50-6、B60、BII61およびB50の重鎖および軽鎖可変領域のFRアミノ酸配列は次のように決定される:抗体B60-55およびB60の重鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号22~25に対応する。軽鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号26~29に対応する。
【0092】
抗体BII61-62の重鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号30~33に対応する。軽鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号34~37に対応する。
【0093】
抗体B50-6およびB50の重鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号38~41に対応する。軽鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号42~45に対応する。
【0094】
抗体BII61の重鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号30~33に対応する。軽鎖可変領域のFR1、FR2、FR3およびFR4配列は、それぞれ配列番号34、46、36、37に対応する。
【0095】
一方で、抗PD-L1抗体の重鎖可変領域のFRに含まれるアミノ酸配列は、配列番号22~46の1つまたは複数のアミノ酸の変異、付加、または欠失を介して得てもよい。好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は3を超えてはならない。より好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は2を超えてはならない。最も好ましくは、変異、付加または欠失に供されるアミノ酸の数は1を超えてはならない。
【0096】
前述の抗体、CDR、またはフレーム領域に含まれるアミノ酸の変異、付加、または欠失後に得られる変異体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する能力を依然として保持するはずである。本発明は、抗原結合部分のそのような変異体もまた含む。
【0097】
前述の抗体の変異体は、配列番号85の完全な重鎖および配列番号87の完全な軽鎖を有する抗体B60-55-1であり、重鎖のC末端の末端リジン残基は無くてもよい。B60-55-1の重鎖は、配列番号86の核酸配列を利用することにより発現させることができる。核酸配列は、発現細胞株へのさらなる組み込みのために発現ベクターに組み込むことができる。B60-55-1の軽鎖は、配列番号88の核酸配列を利用することにより発現させることができる。核酸配列は、発現細胞株へのさらなる組み込みのために発現ベクターに組み込むことができる。
【0098】
B60-55-1抗体は、医薬的に許容される賦形剤またはアジュバントを添加することにより、医薬組成物として製剤化できる。組成物は、約275mMのセリン、約10mMのヒスチジンを含み、約5.9のpH値を有し得る。組成物は、約0.05%のポリソルベート80、約1%のD-マンニトール、約120mMのL-プロリン、約100mMのL-セリン、約10mMのL-ヒスチジン-HClを含み、約5.8のpHを有し得る。
【0099】
本発明により構成されるモノクローナル抗体変異体は、従来の遺伝子工学法により得ることができる。当業者は、核酸変異を用いてDNA分子を修飾する方法を十分にわかっている。さらに、重鎖および軽鎖の変異体をコードする核酸分子もまた化学合成を介して得ることができる。
【0100】
本発明の文脈において、配列同一性および配列類似性パーセンテージを決定するために使用されるアルゴリズムの例には、BLASTおよびBLAST 2.0が含まれ、これらはそれぞれAltschul et al. (1977) Nucl. Acid. Res. 25: 3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410に記載されている。例えば、文献において与えられるパラメータまたはデフォルトパラメータを使用して、本発明により構成されるアミノ酸配列のパーセンテージ類似性をBLASTおよびBLAST 2.0を使用して決定することができる。BLAST分析を実行できるソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介して一般の任意のメンバーが得ることができる。
【0101】
本発明の文脈において、上記の所与のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列には、本文中で概説された方法(例えば、標準パラメータを用いたBLAST分析)が使用される場合、本発明により構成されるポリペプチド配列と少なくとも70%同一であると決定される配列など、前記アミノ酸配列と基本的に同一であるポリペプチド配列が含まれ、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上を示す配列が好ましい。
【0102】
本発明の文脈において、「ベクター」という用語は、特定のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記タンパク質の発現を可能にする核酸送達媒体のタイプを指す。ベクターは、宿主細胞の形質転換、形質導入またはトランスフェクション後に前記宿主細胞内にそれが運ぶ、遺伝物質成分の発現を可能にする。例えば、ベクターには以下が含まれる:プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)のような人工染色体;λファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージおよび動物ウイルス。ベクターとして使用される動物ウイルスの例には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)が含まれる。ベクターには、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、レポーター遺伝子を含む、いくつかの発現制御エレメントが含まれてもよい。さらに、ベクターには複製起点が含まれてもよい。ベクターはまた、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コートなどの細胞への侵入を促進する成分を含んでもよいが、前記成分は上記物質に限定されない。
【0103】
本発明の文脈において、「宿主細胞」という用語は、大腸菌もしくは枯草菌などの原核細胞、酵母細胞もしくはアスペルギルスなどの真菌細胞、ショウジョウバエS2細胞もしくはSf9などの昆虫細胞、または線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NS0細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK 293細胞もしくは他のヒト細胞などの動物細胞を含む、多くの異なる細胞型を含む、ベクターが導入される細胞を指す。
【0104】
本発明により構成される抗体断片は、抗体分子全体の加水分解を介して得ることができる[Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Methods 24: 107-117 (1992)およびBrennan et al., Science 229: 81 (1985)を参照されたい]。さらに、これらの抗体断片は、組換え宿主細胞によって直接生成することもできる[Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11: 548-557 (1999); Little et al., Immunol. Today, 21: 364-370 (2000)においてレビューされる]。例えば、Fab’断片は、大腸菌細胞から直接得られるか、または化学的に結合してF(ab’)2断片を形成することができる[Carter et al., Bio/Technology, 10: 163-167 (1992)]。別の例として、GCN4ロイシンジッパーを使用した連結を介してF(ab’)2断片を得ることができる。さらに、Fv、Fab、またはF(ab’)2断片も、組換え宿主細胞培養培地から直接、単離できる。当業者は、抗体断片の生成についての他の技術を十分にわかっているであろう。
【0105】
本発明の文脈において、「特異的結合」という用語は、抗体と対応する抗原との間で起こる反応など、2つの分子の間のランダムでない結合反応を指す。ここで、一次抗原に結合する抗体の二次抗原に対する結合親和性は非常に弱いか、または検出不能である。特定の態様において、所与の抗原に特異的な抗体は、≦10-5M(例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M)の親和性(KD)で前記抗原に結合し、ここでKDは解離速度の結合速度に対する比(koff/kon)を指し、この量は当業者がよく知る方法で測定することができる。
【0106】
本発明のいくつかの態様において、本発明により構成される抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合し、同時にマウスPD-L1にも結合することができるが、PD-L2またはB7H3には結合しない。
【0107】
本発明のいくつかの態様において、本発明により構成される抗PD-L1抗体は、hPD-L1にhPD-1に対して競合的に結合することができる。
【0108】
本発明の文脈において、PD-L1関連疾患には、例えば、PD-L1に関与する腫瘍およびウイルス感染、特に高レベルのPD-L1発現に関連する腫瘍およびウイルス感染が含まれる。
【0109】
本発明のいくつかの態様では、前述の腫瘍には、肺がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、メラノーマ、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、子宮がん、骨肉腫、甲状腺がん、前立腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、前述のウイルス感染には、急性、亜急性または慢性のHBV、HCVまたはHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明の文脈において、20の従来のアミノ酸およびそれらの略語は従来の用法に従う。Immunology - A Synthesis (2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。
【発明の効果】
【0112】
本発明は、酵母ディスプレイ技術をスクリーニングおよび親和性成熟を組み合わせて使用して、良好な特異性および比較的高い親和性および安定性を示す完全ヒト抗PD-L1抗体を得る。ここで、前記抗体はヒトPD-L1に特異的に結合することができ、または、同時にマウスPD-L1にも結合することができるが、B7H3またはPD-L2には結合しない;また、前記抗体は、活性化されたT細胞に結合して、T細胞の活性化をさらに増強し、腫瘍成長の顕著な阻害をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】精製した抗hPD-L1 scFvによるhPD-L1/hPD-1リガンド受容体結合の阻害。X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸はSA-PE蛍光強度を表す。Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはB50 scFvに対応し、DはB60 scFvに対応し、EはBII61 scFvに対応する。
【
図2】親和性成熟スクリーニング後のhPD-L1酵母に対する親和性の増加を示す酵母ここで、X軸はmycの蛍光強度を表し(全抗体断片を発現する酵母に対応するmyc陽性)、Y軸は抗原結合能を示す蛍光強度SA-APCを表す。
【
図3-1】親和性成熟後に得られた抗体がhPD-1と競合してhPD-L1に結合する能力の比較ここで、横軸は抗体濃度に対応し(単位:ng/ml)、縦軸はOD値に対応する。A)BII61-62とBII61の比較を示す、B)B50とB50-6の比較を示す、C)B60とB60-55の比較を示す。
【
図3-2】親和性成熟後に得られた抗体がhPD-1と競合してhPD-L1に結合する能力の比較ここで、横軸は抗体濃度に対応し(単位:ng/ml)、縦軸はOD値に対応する。A)BII61-62とBII61の比較を示す、B)B50とB50-6の比較を示す、C)B60とB60-55の比較を示す。
【
図4】抗hPD-L1抗体およびhPD-L1結合能のELISA測定ここで、横軸は抗体濃度に対応し(単位:ng/ml)、縦軸はOD値に対応する。
【
図5-1】抗hPD-L1およびhPD-1の、hPD-L1との競合結合の競合ELISA測定ここで、横軸は抗体濃度に対応し(単位:ng/ml)、縦軸はOD値に対応する。グラフ#5はBII61-62 mAbに対応し、グラフ#2はB50-6 mAbに対応し、グラフ#3はB60-55 mAbに対応する。
【
図5-2】抗hPD-L1およびhPD-1の、hPD-L1との競合結合の競合ELISA測定ここで、横軸は抗体濃度に対応し(単位:ng/ml)、縦軸はOD値に対応する。グラフ#5はBII61-62 mAbに対応し、グラフ#2はB50-6 mAbに対応し、グラフ#3はB60-55 mAbに対応する。
【
図6】hPD-L1の抗hPD-L1およびCD80競合結合の競合ELISA測定
【
図7-1】抗hPD-L1抗体特異性の検出ここで、X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸は対応する抗体結合の蛍光強度を表し、Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはBII61-62 mAbに対応し、DはB60-55 mAbに対応し、EはB50-6 mAbに対応する;(1)はhPD-L1-EGFPタンパク質に対応し、(2)はhB7H3-EGFPに対応し、(3)はhPD-L2-EGFPタンパク質に対応する。
【
図7-2】抗hPD-L1抗体特異性の検出ここで、X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸は対応する抗体結合の蛍光強度を表し、Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはBII61-62 mAbに対応し、DはB60-55 mAbに対応し、EはB50-6 mAbに対応する;(1)はhPD-L1-EGFPタンパク質に対応し、(2)はhB7H3-EGFPに対応し、(3)はhPD-L2-EGFPタンパク質に対応する。
【
図7-3】抗hPD-L1抗体特異性の検出ここで、X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸は対応する抗体結合の蛍光強度を表し、Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはBII61-62 mAbに対応し、DはB60-55 mAbに対応し、EはB50-6 mAbに対応する;(1)はhPD-L1-EGFPタンパク質に対応し、(2)はhB7H3-EGFPに対応し、(3)はhPD-L2-EGFPタンパク質に対応する。
【
図8-1】抗hPD-L1抗体とmPD-L1結合能。ここで、X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸は対応する抗体結合の蛍光強度を表す。Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはB60-55 mAbに対応し、DはBII61-62 mAbに対応し、EはB50-6 mAbに対応する;(1)はhPD-L1-EGFPタンパク質に対応し、(2)はmPD-L1-EGFPタンパク質に対応する。
【
図8-2】抗hPD-L1抗体とmPD-L1結合能。ここで、X軸はEGFP蛍光強度を表し、Y軸は対応する抗体結合の蛍光強度を表す。Aはブランク対照に対応し、Bは陰性対照に対応し、CはB60-55 mAbに対応し、DはBII61-62 mAbに対応し、EはB50-6 mAbに対応する;(1)はhPD-L1-EGFPタンパク質に対応し、(2)はmPD-L1-EGFPタンパク質に対応する。
【
図9】抗hPD-L1抗体とカニクイザルPD-L1の結合能力
【
図10】抗hPD-L1抗体によるCD4
+T細胞の活性化
【
図11】腫瘍成長における抗hPD-L1抗体B50-6の阻害活性
【
図12】腫瘍成長における抗hPD-L1抗体B60-55およびBII61-62の阻害活性ここで、Aは、3 mg/kgの用量を使用した場合の腫瘍成長のBII61-62 mAbおよびB60-55阻害に対応する;Bは異なる用量を使用した場合の腫瘍成長におけるBII61-62 mAbの阻害効果に対応する。
【
図13】B60-55と抗体2.41H90Pの安定性の比較ここで、Aは経時的なB60-55および抗体2.41H90PのIC50値に対応する。Bは経時的な抗体二量体の割合に対応する;CはB60-55加速安定性試験で得られた競合ELISA結果に対応する。
【
図14】CaPure-HAでのB60-55-1のクロマトグラフィー;B60-55-1保持時間は約45分である。
【
図15】TSKgel G3000SW
XL(Tosoh)カラムでの精製B60-55-1のサイズ排除クロマトグラフィー分析。
【
図16】精製B50-55-1のクマシー染色SDS-PAGE分析:レーン1-還元条件下、レーン2-非還元条件下、レーン3-分子量マーカー。
【
図17】SPR測定の代替捕捉アプローチ:パネルA - 抗ヒトIgGは抗体を捕捉するようにチップ上に固定化し;B60-55-1またはアテゾリズマブ(atezolizumab)を固定した抗体によって捕捉し、さまざまな濃度のPD-L1-Hisリガンドを適用した。パネルB - PD-L1-Fc融合タンパク質をセンサーチップ上に直接固定し、さまざまな濃度のB60-55-1またはアテゾリズマブを適用した。パネルC - PD-L1-Fc融合タンパク質およびPD-L1-Hisの両方の相互作用を調査するために、B60-55-1またはアテゾリズマブをチップ上に直接固定化した; PD-L1-HisタグまたはPD-L1-Fcの濃度範囲を適用した。
【
図18】PD-L1-Hisタグリガンドの固定した比較薬抗体アテゾリズマブまたはB60-55-1への結合のセンサーグラム;アプローチは左パネルに模式的に示されており、キネティックパラメータは表にまとめた;抗ヒト捕捉抗体をセンサーチップに固定し、アテゾリズマブまたはB60-55-1を捕捉した後、さまざまな濃度のPD-L1-Hisリガンドを続けた:パネルA - アテゾリズマブの結果;パネルB - B60-55-1の結果。
【
図19】固定したPD-L1-Fc融合タンパク質へのアテゾリズマブまたはB60-55-1の結合のセンサーグラム;アプローチは左パネルに模式的に示されており、キネティックパラメータは表にまとめた;さまざまな濃度のB60-55-1またはアテゾリズマブをチップに適用した。パネルA - アテゾリズマブの結果;パネルB - B60-55-1の結果。
【
図20】PD-L1-HisまたはPD-L1-Fcの固定化B60-55-1への結合のセンサーグラム;アプローチは左パネルに模式的に示されており、キネティックパラメータは表にまとめた。
【
図21】PD-L1-HisまたはPD-L1-Fcの固定化アテゾリズマブへの結合のセンサーグラム;アプローチは左パネルに模式的に示されており、キネティックパラメータは表にまとめた。
【
図22】B60-55-1とアテゾリズマブは、Promega ADCC Reporter Bioassay Kitの対照抗体と比較してADCC活性を有さない。
【
図23】C1qへのB60-55-1およびアテゾリズマブ結合の評価。
【
図24】MLRアッセイにおけるT細胞活性化に対するB60-55-1および比較薬抗体の濃度依存効力。
【
図25】薬物治療に際しての体重変化;矢印は投与時間を示す。
【
図26】薬物治療に際しての腫瘍容量阻害;矢印は投与時間を示す。
【
図27】グループ分け(n=8)後、29日間の観察期間中の3つのグループにおける個々の腫瘍成長。
【
図29】以下の表7に示す実験計画からの3つの試験グループの平均腫瘍容量。
【
図30】以下の表7において示されている実験計画の21日目と41日目での3つの試験グループの平均腫瘍容量;各日の3つのカラムは、グループ1(左)、2(中央)、3(右)に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0114】
以下のセクションでは、本発明の態様を以下の例を介してさらに説明する;しかしながら、当業者によって理解されるべきであるように、以下の例は本発明を説明するためにのみ使用されるのであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下の例で指定されていない条件は、従来使用されている条件または製造業者が推奨する条件に設定されよう。製造業者が指定されていない試薬または機器はすべて、市販の標準製品に対応する。
【実施例0115】
組換えヒトPD-L1およびPD-1発現および関連EGFP細胞の調製。
ヒトPD-L1の細胞外ドメインのアミノ酸配列は、タンパク質データベースUniprotに含まれるPD-L1(Q9NZQ7)のアミノ酸配列(すなわち、Q9NZQ7に含まれる残基1から残基238の配列)に基づいて得られた;IgG1-Fcの構造ドメインのアミノ酸配列は、タンパク質データベースUniprotに含まれるヒト免疫グロブリンgamma1(IgG1)(P01857)の定常領域のアミノ酸配列に基づいて得られた(すなわち、P01857に含まれる残基104から残基330の配列);および、IgG1-Fcの構造ドメインのアミノ酸配列は、タンパク質データベースUniprotに含まれるヒト免疫グロブリンgamma1(IgG1)(P01868)の定常領域のアミノ酸配列に基づいて得られた(すなわち、P01868に含まれる残基98から残基324の配列)。オンラインツールDNAworks(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を使用して、対応コードするDNA配列を設計し、hPD-L1-FcおよびhPD-L1-muFc融合タンパク質遺伝子を得て、同じ方法を使用してhPD-1-Fc遺伝子を得た。増強した緑色蛍光タンパク質(EGFP)のアミノ酸配列(C5MKY7)、ならびにヒトPD-L1のアミノ酸配列(Q9NZQ7)、マウスPD-L1のアミノ酸配列(Q9EP73)およびヒトのアミノ酸配列PD-1(Q15116)は、タンパク質データベースUniprotに含まれる情報に基づいて得られた。オンラインツールDNAworks(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を使用して、対応コードするDNA配列を設計し、PD-L1-EGFP融合タンパク質遺伝子を得て、同じ方法を使用してhPD-1-EGFPおよびmPD-L1-EGFP遺伝子を得た。対応するDNA断片は、人工合成によって得られた。合成した遺伝子配列は、Fermentas製のHindIIIとEcoRIで二重切断され、市販のベクターpcDNA4/myc-HisA(Invitrogen、V863-20)にクローンし、その後、プラスミドが正確に構築されて組換えプラスミドDNA;すなわち、pcDNA4-hPD-L1-Fc、pcDNA4-hPD-L1-muFc、pcDNA4-hPD1-Fc、pcDNA4-hPD-L1-EGFP、pcDNA4-hPD1-EGFPおよびpcDNA4-mPD-L1-EGFPが得られたことを確認するために配列決定を行った。
【0116】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、実験室で培養した樹状細胞(DC細胞)からヒトPD-L2およびB7H3遺伝子を増幅した(前記DC細胞は、PBMCから単離された単核細胞のTNF-α成熟により得られた)。使用した遺伝子増幅プライマーは以下の通りである:
PDL2-F HindIII:GCGCAAGCTTGCCACCATGATCTTCCTCCTGCTAATG(配列番号74)、
PDL2-R EcoI:
GCCGAATTCGATAGCACTGTTCACTTCCCTC(配列番号75);
hB7H3-F HindIII:GCGCAAGCTTGCCACCATGCTGCGTCGGCGGGGCAGC(配列番号76);
hB7H3-R BamHI:GCGCGAATTCGGCTATTTCTTGTCCATCATCTTC(配列番号77)
【0117】
次いで、得られたPCR産物をFermentas HindIIIおよびEcoRIを使用して二重切断し、前もって構築されたpcDNA4-hPD-L1-EGFPにクローニング後、プラスミドが正確に構築され組換えプラスミドDNA;すなわち、pcDNA4-hPD-L2-EGFPおよびpcDNA4-hB7H3-EGFPが得られたことを確認するために配列決定を行った。
【0118】
対応するEGFP組換えプラスミドをHEK293[ATCC、CRL-1573(商標)]細胞にトランスフェクトし、hPD-L1、mPD-L1、hPD-L2およびhB7H3の発現を確認するためにトランスフェクションの48時間後に蛍光活性化細胞分類(FACS)を実行した。
【0119】
タンパク質産生のために、pcDNA4-hPD-L1-Fc、pcDNA4-hPD-L1-muFc、およびpcDNA4-hPD1-Fcを一時的にHEK293細胞にトランスフェクトした。組換え発現プラスミドをFreestyle293培地に希釈し、形質転換に必要なPEI(ポリエチレンイミン)溶液に加えた後、各プラスミド/PEI混合物をそれぞれ別々に細胞懸濁液に加え、37℃、10%CO2および90rpmで培養した;同時に、50μg/Lのインスリン様成長因子(IGF-1)の補充添加が行われた。その4時間後、EX293培地、2mMグルタミン、および50μg/L IGF-1の補充添加を行い、135rpmで培養を継続した。さらに24時間後、3.8mMバルプロ酸ナトリウム(VPA)を添加した。5~6日間の培養後、一過性発現培養液の上清を回収し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを使用して一次精製し、以下の例に使用するためにhPD-L1-Fc、hPD-L1-muFcおよびhPD-1-Fcタンパク質サンプルを得た。このようにして得られたタンパク質サンプルをSDS-PAGEを使用した予備試験に供し、標的バンドが明らかに見られた。
上記のように得られた単鎖抗体scFv遺伝子と以前に得られたIgG1-Fc遺伝子を融合し、Fermentas HindIIIおよびEcoRI酵素の二重切断を使用して市販ベクターpEE6.4(Lonza)にクローニングし、その後、標準的な分子クローニング手順に従ってクローニングおよびプラスミドミニプレップを行った。抽出されたプラスミドをHEK293細胞で一時的に発現し、プロテインAカラムを使用して精製した。
hPD-L1-EGFP細胞を0.5%PBS-BSA緩衝液に再懸濁し、その後、前述の精製抗hPD-L1 scFv抗体を加え、一方で同時に、2μgのhIgGIタンパク質を陰性対照として使用し、hPD-1-Fcを陽性対照に加え、対応する対照を確立した。使用した二次抗体は、eBioscienceの抗hIg-PEであった。染色が完了した後、フローサイトメトリーで検出を行った。上記の方法を使用して、細胞表面PD-L1抗原に結合できる抗体を同定した。
スクリーニングと同定の後、好ましい特性を示した3つの抗体株が得られた:B50、B60およびBII61。結果からわかるように、3つの抗hPD-L1抗体株すべてがhPD-1受容体との結合をブロックすることができた。