(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025004
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】色素沈着過剰障害の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/407 20060101AFI20230214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230214BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230214BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230214BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230214BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230214BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230214BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230214BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20230214BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20230214BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
A61K31/407 ZNA
A61P17/00 101
A61K45/00
A61K47/10
A61K8/06
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q19/02
C12N9/12
C12N9/99
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178398
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019554487の分割
【原出願日】2017-12-19
(31)【優先権主張番号】62/435,970
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522408049
【氏名又は名称】ディームバイオント・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DermBiont, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ・ギルクレスト
(72)【発明者】
【氏名】マーク・デ・ソウザ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】色素沈着過剰障害に関する1以上の症状を処置する組成物を提供する。
【解決手段】ルボキシスタウリンまたはその塩を含む組成物であって、抗酸化剤および/またはグリコールをさらに含む、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における皮膚色素沈着を減少させる方法であって、有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)対象に投与することにより、対象における皮膚色素沈着を減少させることを含む、方法。
【請求項2】
皮膚色素沈着を減少させることが、皮膚色素沈着過剰状態に関連する皮膚色素沈着を減少させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
皮膚色素沈着を減少させることが、健常なまたは非疾患状態皮膚色素沈着、例えば不必要な健常な皮膚色素沈着を減少させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化合物が式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
化合物が式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物が式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化合物が式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化合物がルボキシスタウリンまたはその塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
化合物がルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象に投与される化合物が少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
化合物が局所投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
化合物が皮内投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
化合物が皮下投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
投与することが化合物を含むデバイス、例えば真皮パッチを対象、例えば対象の皮膚に接触させることを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化合物が医薬組成物、例えば局所製剤(例えばゲル剤)で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
色素沈着過剰状態が肝斑、炎症後色素沈着過剰、円盤状紅斑性狼瘡、植物性光線皮膚炎、黒子(例えば老人性色素斑)、痣、カフェオレ斑、黒色表皮腫、火傷関連性色素沈着過剰、薬剤誘発性色素沈着過剰(例えばスルホンアミド、テトラサイクリン、NSAID、バルビツレートおよびカルバマゼピン誘発性色素沈着過剰)、傷害誘発性色素沈着過剰、原発性胆汁性肝硬変関連色素沈着過剰、アジソン病関連性色素沈着過剰、色素性母斑、雀卵斑、脂漏性角化症、皮膚癌関連性色素沈着過剰、感染関連性色素沈着過剰(例えば癜風、紅色陰癬)、湿疹、光接触皮膚炎、魚鱗癬、神経線維腫症、または紫外線(UV)被爆、例えば日光曝露または日焼け反応に関連する色素沈着過剰から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
色素沈着過剰状態が肝斑である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
色素沈着過剰状態が炎症後色素沈着過剰である、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
色素沈着過剰状態が黒子(例えば老人性色素斑)である、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
色素沈着過剰状態が日焼け反応である、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
化合物がさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤と組み合わせて投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
さらなる薬剤、例えば治療剤が、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤の1以上から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらなる薬剤が局所投与される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
さらなる薬剤が化合物と同時適用される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
さらなる薬剤および化合物が、共通の領域に異なる時点で適用される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
さらなる薬剤および化合物が同一の単位投与形態に含まれる、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
さらなる薬剤および化合物が異なる単位投与形態に処理される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第二のまたは複数のさらなる薬剤が投与される、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
化合物の二次投与を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
化合物の三次投与を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
7日の期間内に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上の投与を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
14日の期間内に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上の投与を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
21日の期間内に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上の投与を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
30日の期間内に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上の投与を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
化合物が毎日、隔日で、毎週または毎月投与される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
化合物が少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、18か月間、19か月、20か月間、21か月間、22か月間、23か月間またはそれより長期間、毎日投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
化合物が少なくとも年間1、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間または10年間、毎日投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
対象が以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
対象が1回以上の以前の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に化合物を適用することを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に化合物を適用することを含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に化合物を適用することを含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に化合物を適用することを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
対象の皮膚色素沈着過剰状態に関連する皮膚色素沈着を減少させる方法であって、有効量のルボキシスタウリンまたはその塩を対象の皮膚の領域(例えば予め決定された対象の皮膚の領域)に局所投与し、それにより、ルボキシスタウリンまたはその塩の投与前の皮膚の色素沈着と比較して、対象の皮膚の色素沈着を減少させる方法。
【請求項45】
色素沈着過剰状態が肝斑を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
対象の皮膚の領域の健常な色素沈着を減少させる方法であって、有効量のルボキシスタウリンまたはその塩を対象の皮膚の領域(例えば予め決定された対象の皮膚の領域)に局所投与し、それにより、ルボキシスタウリンまたはその塩の投与前の皮膚の色素沈着と比較して、対象の皮膚の色素沈着を減少させる方法。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか一項に記載の方法における使用のための医薬組成物。
【請求項48】
ローション剤、クリーム剤、美容液剤、スプレー剤、ムース剤、エアロゾル剤、エマルジョン剤、ケーキ剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、パッチ剤、ペンシル剤、ウェットティッシュ剤、マスク剤、スティック剤、泡剤、エリキシル剤または濃縮剤として製剤化される、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
ゲル剤としてとして製剤化される、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項50】
さらなる薬剤、例えばヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される治療剤をさらに含む、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項51】
有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)対象の皮膚を有する毛髪に(例えば発毛している毛幹を囲む毛包口で)、適用し、それにより成長した毛の色素沈着を減少させる(例えば対象の成長していない毛の色素沈着と比較して減少させる)ことを含む、方法。
【請求項52】
対象が人工的に着色された、例えば染色された毛を有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
例えば人工的に着色された、例えば染色された毛を有する対象における毛幹の新たな成長部分の色または色調の差異を減少させるのに有効なレジメンにおいて化合物が投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
人工的な色、例えば染色が毛に適用される、例えば再適用される間隔、例えば期間を延長させる、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間まで間隔が延長される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
化合物が式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
化合物が式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
化合物が式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
化合物が式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
化合物がルボキシスタウリンまたはその塩を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
化合物がルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
対象に投与される化合物が少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
化合物が局所投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項64】
化合物が皮内投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項65】
化合物が皮下投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項66】
化合物が医薬組成物、例えば局所製剤(例えばゲル剤)で投与される、請求項51~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
化合物がメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を減少させる、例えば阻害する、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
メラニン形成が、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応により誘発される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
化合物がゲル剤として製剤化された式Iの化合物、式Idの化合物、If-1の化合物、If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
ゲル製剤が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
化合物がメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する、請求項67~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
メラニン形成の減少、例えば阻害が実施例2のアッセイにより測定される、請求項67~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
非全身投与のために製剤化された有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を含む、単位投与形態または製剤。
【請求項74】
化合物が式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項73に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項75】
化合物が式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む、請求項73に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項76】
化合物がルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項73に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項77】
化合物がルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項73に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項78】
局所使用のための、請求項73~77のいずれか一項に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項79】
ゲル剤として製剤化される、請求項73~78のいずれか一項に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項80】
対象に投与したとき、メラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を減少させる、例えば阻害する、請求項73~79のいずれか一項に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項81】
メラニン形成が、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応により誘発される、請求項80に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項82】
化合物が式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項73~81のいずれか一項に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項83】
ゲル製剤が少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む、請求項82に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項84】
メラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する、請求項73~83のいずれか一項に記載の単位投与形態または製剤。
【請求項85】
非全身投与のために製剤化された有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を含む第一の単位投与形態;および
有効量のさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤を含む第二の単位投与形態
を含む、単位投与形態のセット。
【請求項86】
さらなる薬剤がヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される、請求項85に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年12月19日に出願された米国出願番号第62/435,970号の優先権を主張するものであり、その内容はその全体の参照により、本明細書に包含させる。
【背景技術】
【0002】
メラニンは皮膚および毛にそれらの天然色素を与える複合バイオポリマーであり;一般にメラニンが多いほど皮膚および毛の色が濃くなる。メラニンはメラニン形成細胞により産生され、アミノ酸チロシンに由来する。メラニンの生合成における第一かつ律速の段階は、タンパク質キナーゼCアイソフォームβ(PKCβ)によるリン酸化を経て活性化されるオキシダーゼチロシナーゼによる、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンの触媒作用である。チロシナーゼはメラニン形成細胞でのみ発現される。皮膚色素沈着は、とりわけ、メラニン含有メラノソームの数および分布により変化し、最近数週間におけるチロシナーゼの活性を反映する。理論により縛られることを願わないが、チロシナーゼが変異するとき、例えば白皮症障害のように、非機能性であるとき、メラニン産生は減少する、例えば最小限のメラニンが産生されるかまたは全く産生されないと考えられている。
【0003】
皮膚色素沈着過剰状態は、個体の正常な皮膚色の全身的または局所的増加により特徴付けられる。皮膚色素沈着過剰状態は、肝斑、例えば炎症後色素沈着過剰、円板状紅斑性狼瘡および他の形態の増加した上皮メラニン沈着を含む。例えば肝斑は、頬の上部、鼻の上部、口唇および額に一般的に見られる黒い、不規則な、明確に区切られた過剰に色素沈着した斑点および部分により特徴づけられ、時間と共に徐々に現れる。色素沈着過剰はまた、身体の他の部分、特に前腕および首のような日光に当たる部分にも現れ得る。現在の肝斑に対する治療法はヒドロキノン(HQ)、アゼライン酸およびコウジ酸を含み、全てチロシナーゼ活性を減少させる非選択的毒素である。これらの現在の治療法は、一部のみに有効および/または毒性であり;メラニン形成細胞の死滅による永久的な色素消失またはオクロノーシス(紅斑、青色から黒色の皮膚色素沈着および丘疹結節性病変により特徴付けられる永久的な皮膚色素沈着状態)を時々引き起こす。従って、より有効で、標的化され、かつこれらの深刻な副作用を制限する、肝斑のような色素沈着過剰障害を処置するための新規な方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、とりわけ、色素沈着過剰状態を処置するまたは一般に不必要な色素沈着を減少させるための方法に関する。例えば、本発明は、対象に有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)投与することを含む色素沈着過剰状態の新規な処置方法を提供する。本発明はまた、とりわけ、皮膚色素沈着を減少させる新規な方法に関する。例えば、本発明は、対象の皮膚(例えば予め決定された対象の皮膚の領域)に有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)投与することを含む、皮膚色素沈着を減少させる新規な方法を提供する。
【0005】
ある態様において、本発明は、対象に有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)投与し、それにより対象における皮膚色素沈着を減少させることを含む、対象における皮膚色素沈着を減少させる方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施態様において、皮膚色素沈着を減少させることは皮膚色素沈着過剰状態に関連する皮膚色素沈着を減少させることを含む。いくつかの実施態様において、皮膚色素沈着を減少させることは健常または非疾患状態の皮膚色素沈着、例えば不必要な健常な皮膚色素沈着を減少させることを含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、化合物は、式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%のルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は局所投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮内投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮下投与される。
【0008】
いくつかの実施態様において、
式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
ルボキシスタウリンまたはその塩;または
ルボキシスタウリンメシレート
を含む化合物は、メラニン形成、例えば皮膚黒化または色素沈着を減少させる、例えば阻害する。
【0009】
いくつかの実施態様において、メラニン形成は、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応により誘発される。いくつかの実施態様において、化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する。いくつかの実施態様において、メラニン形成の減少、例えば阻害は実施例2のアッセイにより測定される。
【0010】
いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、局所投与に適切である。
【0011】
他の実施態様において、化合物はビスインドリルマレイミドまたはその誘導体を含む。ある実施態様において、ビスインドリルマレイミド誘導体は、ビスインドリルマレイミドI(BIM-1)もしくはビスインドリルマレイミドII(BIM-2)またはその塩から選択される。
【0012】
いくつかの実施態様において、投与することは、化合物を含むデバイス、例えば皮膚パッチを対象、例えば対象の皮膚に接触させることを含む。いくつかの実施態様において、投与することは、例えば皮膚への化合物の浸透を向上させるために、例えばフラクセルレーザーまたはマイクロニードルを用いて皮膚を前処置することを含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、化合物は医薬組成物で投与される。
【0014】
いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は、肝斑、炎症後色素沈着過剰、円盤状紅斑性狼瘡、植物性光線皮膚炎、黒子(例えば老人性色素斑)、痣、カフェオレ斑、黒色表皮腫、火傷関連性色素沈着過剰、薬剤誘発性色素沈着過剰(例えばスルホンアミド、テトラサイクリン、NSAID、バルビツレートおよびカルバマゼピン誘発性色素沈着過剰)、傷害誘発性色素沈着過剰、原発胆汁性肝硬変関連性色素沈着過剰、アジソン病関連性色素沈着過剰、色素性母斑、雀卵斑、脂漏性角化症、皮膚癌関連性色素沈着過剰、感染関連性色素沈着過剰(例えば癜風、紅色陰癬)、湿疹、光接触皮膚炎、魚鱗癬、神経線維腫症または紫外線(UV)被爆、例えば日光曝露もしくは日焼け反応に関連する色素沈着過剰から選択される。
【0015】
いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は肝斑である。いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は炎症後色素沈着過剰である。いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は黒子、例えば老人性色素斑である。いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は日焼け反応である。
【0016】
いくつかの実施態様において、化合物はさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される。
【0017】
いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤が局所投与される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は化合物と同時適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、共通領域にであるが、異なる時間に適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、同一の単位投与形態に含まれる。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、異なる単位投与形態に配置される。いくつかの実施態様において、第二のまたは複数のさらなる薬剤が投与される。いくつかの実施態様において、化合物の二回目の投与が実施される。いくつかの実施態様において、化合物の三回目の投与が実施される。
【0018】
いくつかの実施態様において、7日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、14日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、21日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、30日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。
【0019】
いくつかの実施態様において、化合物は毎日、隔日、毎週または毎月投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、18か月間、19か月間、20か月間、21か月間、22か月間、23か月間またはそれより長期間、毎日投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間または10年間、毎日投与される。
【0020】
いくつかの実施態様において、対象は以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている。いくつかの実施態様において、対象は1回以上の以前の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている。
【0021】
いくつかの実施態様において、方法は、例えば本明細書に記載されるような、予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に化合物を適用することを含む。
【0022】
ある態様において、本発明は対象の皮膚の領域(例えば予め決定された対象の皮膚の領域)に有効量のルボキシスタウリンを局所投与し、それにより、化合物の投与前の皮膚色素沈着と比較して対象の皮膚色素沈着を減少させることを含む、対象の皮膚色素沈着過剰状態に関連する皮膚色素沈着を減少させる方法を提供する。いくつかの実施態様において、色素沈着過剰状態は肝斑を含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、化合物は、式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%のルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は局所投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮内投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮下投与される。
【0024】
いくつかの実施態様において、
式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
ルボキシスタウリンまたはその塩;または
ルボキシスタウリンメシレート
を含む化合物は、メラニン形成、例えば皮膚黒化または色素沈着を減少させる、例えば阻害する。
【0025】
いくつかの実施態様において、メラニン形成は、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応)により誘発される。いくつかの実施態様において、化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する。いくつかの実施態様において、メラニン形成の減少、例えば阻害は実施例2のアッセイにより測定される。
【0026】
いくつかの実施態様において、化合物は式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、局所投与に適切である。
【0027】
他の実施態様において、化合物はビスインドリルマレイミドまたはその誘導体を含む。ある実施態様において、ビスインドリルマレイミド誘導体はビスインドリルマレイミドI(BIM-1)またはビスインドリルマレイミドII(BIM-2)またはその塩から選択される。
【0028】
いくつかの実施態様において、化合物はさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される。
【0029】
いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤が局所投与される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は化合物と同時適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、共通領域にであるが、異なる時間に適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、同一の単位投与形態に含まれる。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、異なる単位投与形態に配置される。いくつかの実施態様において、第二のまたは複数のさらなる薬剤が投与される。いくつかの実施態様において、化合物の二回目の投与が実施される。いくつかの実施態様において、化合物の三回目の投与が実施される。
【0030】
いくつかの実施態様において、7日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、14日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、21日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、30日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。
【0031】
いくつかの実施態様において、化合物は毎日、隔日、毎週または毎月投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、18か月間、19か月間、20か月間、21か月間、22か月間、23か月間またはそれより長期間、毎日投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間または10年間、毎日投与される。
【0032】
いくつかの実施態様において、対象は以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている。いくつかの実施態様において、対象は以前の1回以上の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている。
【0033】
いくつかの実施態様において、方法は、予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に化合物を適用することを含む。
【0034】
ある態様において、本発明は対象の皮膚の領域(例えば予め決定された対象の皮膚の領域)に有効量のルボキシスタウリンを局所投与し、それにより、化合物の投与前の皮膚色素沈着と比較して対象の皮膚色素沈着を減少させることを含む、対象の皮膚色素沈着過剰状態に関連する皮膚色素沈着を減少させる方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施態様において、化合物は、式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%のルボキシスタウリンまたはその塩ルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物は局所投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮内投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮下投与される。
【0036】
いくつかの実施態様において、
式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
ルボキシスタウリンまたはその塩;または
ルボキシスタウリンメシレート
を含む化合物は、メラニン形成、例えば皮膚黒化または色素沈着を減少させる、例えば阻害する。
【0037】
いくつかの実施態様において、メラニン形成は、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応)により誘発される。いくつかの実施態様において、化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する。いくつかの実施態様において、メラニン形成の減少、例えば阻害は、実施例2のアッセイにより測定される。
【0038】
いくつかの実施態様において、化合物は式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、局所投与に適切である。
【0039】
他の実施態様において、化合物はビスインドリルマレイミドまたはその誘導体を含む。ある実施態様において、ビスインドリルマレイミド誘導体は、ビスインドリルマレイミドI(BIM-1)もしくはビスインドリルマレイミドII(BIM-2)またはそれらの塩から選択される。
【0040】
いくつかの実施態様において、化合物はさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される。
【0041】
いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤が局所投与される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は化合物と同時適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、共通領域にであるが、異なる時間に適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、同一の単位投与形態に含まれる。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、異なる単位投与形態に配置される。いくつかの実施態様において、第二のまたは複数のさらなる薬剤が投与される。いくつかの実施態様において、化合物の二回目の投与が実施される。いくつかの実施態様において、化合物の三回目の投与が実施される。
【0042】
いくつかの実施態様において、7日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、14日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、21日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、30日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。
【0043】
いくつかの実施態様において、化合物は毎日、隔日、毎週または毎月投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、18か月間、19か月間、20か月間、21か月間、22か月間、23か月間またはそれより長期間、毎日投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間または10年間、毎日投与される。
【0044】
いくつかの実施態様において、対象は以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている。いくつかの実施態様において、対象は以前の1回以上の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている。
【0045】
いくつかの実施態様において、方法は、予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に化合物を適用することを含む。
【0046】
ある態様において、対象の毛がある皮膚に(例えば発毛している毛幹を囲む毛包口で)有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を非全身的に(例えば局所的、皮内的または皮下的に)適用し、それにより、成長している毛の色素沈着を減少させる(例えば対象の成長していない毛の色素沈着と比較して減少させる)ことを含む、成長している毛の色素沈着を減少させる方法を提供する。
【0047】
いくつかの実施態様において、対象は人工的に着色された、例えば染色された毛を有する。いくつかの実施態様において、化合物は、例えば人工的に着色された毛を有する対象において、新たに成長する毛幹部分と以前の毛幹部分における色または色調の差異を減少させるのに有効なレジメンで投与される。いくつかの実施態様において、化合物の投与は、毛に人工着色、例えば色素を適用する、例えば再適用する間隔、例えば期間を延長させる。いくつかの実施態様において、間隔は少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間まで延長される。
【0048】
いくつかの実施態様において、化合物は、式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物は、式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物を含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物はルボキシスタウリンを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化されたルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、化合物は局所投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮内投与される。いくつかの実施態様において、化合物は皮下投与される。
【0049】
いくつかの実施態様において、
式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
ルボキシスタウリンまたはその塩;または
ルボキシスタウリンメシレート
を含む化合物は、メラニン形成、例えば皮膚黒化または色素沈着を減少させる、例えば阻害する。
【0050】
いくつかの実施態様において、メラニン形成は、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応により誘発される。いくつかの実施態様において、化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、または阻害する。いくつかの実施態様において、メラニン形成の減少、例えば阻害は実施例2のアッセイにより測定される。
【0051】
いくつかの実施態様において、化合物は、例えばゲル剤として製剤化された式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量のルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを含む。いくつかの実施態様において、製剤、例えばゲル製剤は、局所投与に適切である。
【0052】
他の実施態様において、化合物はビスインドリルマレイミドまたはその誘導体を含む。ある実施態様において、ビスインドリルマレイミド誘導体は、ビスインドリルマレイミドI(BIM-1)もしくはビスインドリルマレイミドII(BIM-2)またはそれらの塩から選択される。
【0053】
いくつかの実施態様において、化合物はさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される。
【0054】
いくつかの実施態様において、1以上のさらなる薬剤が局所投与される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は化合物と同時適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、共通領域にであるが、異なる時間に適用される。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、同一の単位投与形態に含まれる。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤および化合物は、異なる単位投与形態に配置される。いくつかの実施態様において、第二のまたは複数のさらなる薬剤が投与される。いくつかの実施態様において、化合物の二回目の投与が実施される。いくつかの実施態様において、化合物の三回目の投与が実施される。
【0055】
いくつかの実施態様において、7日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、14日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、21日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。いくつかの実施態様において、30日間に複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上または15回以上投与される。
【0056】
いくつかの実施態様において、化合物は毎日、隔日、毎週または毎月投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、18か月間、19か月間、20か月間、21か月間、22か月間、23か月間またはそれより長期間、毎日投与される。いくつかの実施態様において、化合物は少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間または10年間、毎日投与される。
【0057】
いくつかの実施態様において、対象は以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている。いくつかの実施態様において、対象は以前の1回以上の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている。
【0058】
いくつかの実施態様において、方法は、予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に化合物を適用することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に化合物を適用することを含む。
【0059】
ある態様において、
式I(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式Id(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-1(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
式If-2(例えば本明細書に記載されるような)の化合物;
ルボキシスタウリンまたはその塩;または
ルボキシスタウリンメシレート
を含む化合物を含む単位投与形態または製剤が本明細書において提供され、ここで単位投与形態または製剤中の化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化または色素沈着を減少させる、例えば阻害するのに十分な量である。ある実施態様において、単位投与形態または製剤、例えばゲル製剤中の化合物は、少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量の式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物のいずれか、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートで存在する。ある実施態様において、単位投与形態または製剤、例えばゲル製剤は、ルボキシスタウリンまたはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートを、少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%または1.5%の用量で含む。ある実施態様において、式Iの化合物、式Idの化合物、式If-1の化合物、式If-2の化合物、ルボキシスタウリンもしくはその塩、例えばルボキシスタウリンメシレートのいずれかの単位投与形態または製剤、例えばゲル製剤は、局所投与に適切である。
【0060】
いくつかの実施態様において、メラニン形成は、例えばUV被爆、例えば日光曝露または日焼け反応により誘発される。いくつかの実施態様において、化合物はメラニン形成、例えば皮膚黒化および色素沈着を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%まで減少させる、例えば阻害する。いくつかの実施態様において、メラニン形成の減少、例えば阻害は、実施例2のアッセイにより測定される。
【0061】
ある態様において、非全身投与のために製剤化された、有効量のPKCβを選択的に阻害する化合物を含む第一単位投与形態;および有効量のさらなる薬剤、例えば治療剤または美容剤を含む第二単位投与形態を含む単位投与形態を提供する。いくつかの実施態様において、さらなる薬剤は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される薬剤を含む。
【0062】
ある態様において、本発明は、本明細書に記載の方法における使用のための医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、ローション剤、クリーム剤、美容液剤、スプレー剤、ムース剤、エアロゾル剤、エマルジョン剤、ケーキ剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、パッチ剤、ペンシル剤、ウェットティッシュ剤、マスク剤、スティック剤、泡剤、エリキシル剤または濃縮剤として製剤される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択される1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤をさらに含む。
【0063】
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術的および科学的用語は、発明の属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは同等の方法および材料は、本発明の実行および試験において使用され得て、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての公報、特許出願、特許および他の引用文献はそれらの全体の参照により包含させる。矛盾する場合、定義を含めて、本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、説明のみを目的とし、限定することを意図しない。
【0064】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】背側マウス皮膚から回収したawl型およびzig-zag型毛の顕微鏡写真。8~9週齢のマウスをワックス脱毛して毛を完全に除去し、毛成長の新たなサイクルのために濾胞を刺激し、ビークル(DMSO:PG)単独(A)、4% HQ(B)、非選択的PKC阻害剤であるビスインドリルマレイミド(Bis) (C)、または高度に選択的PKCβ阻害剤であるルボキシスタウリン(D)で処置した。脱毛21日後、毛を処置された全ての群は、対照群(A)と比較して色が明るく見えた。Bisおよびルボキシスタウリンの両方で処置された群からのzig-zag型毛(最も多い毛幹タイプおよび(真皮中層に存在する)より多い表面濾胞を有するもの)が最も色が明るかった。
【0066】
【
図2】局所適用された化合物の毛色素沈着密度に対する効果を示す(濾胞性メラニン形成細胞において産生され、その後分化して毛幹を形成する濾胞性ケラチン生成細胞へ移動したメラニンの量を反映する)棒グラフ。ImageJ(NIH)ソフトウェアを用いて毛幹中の平均濃淡値を決定した。濃淡値は画素数により除した毛幹における全画素の濃淡値の合計であり;その値は0(白色、色素なし)~255(黒)の範囲である。小さな毛(B)は全ての処置群において大きな毛(A)より顕著に高い明色化効果を示す。小さな毛の濃淡値の中央値を赤線で示す。スチューデントt検定(*<0.05;**<0.01)。(Rubo=ルボキシスタウリン)
【0067】
【
図3】小さな毛に局所適用された化合物の最大明色化効果を示す棒グラフ。小さな毛の主要群の中央濃淡値に基づいて、別個の分析のために色が暗いおよび明るい毛を選択した。中央値より高い値および低い値を有する毛は、それぞれ色が暗い(A)および明るい(B)と考えられた。スチューデントt検定(*<0.05;**<0.01;***<0.001)。(Rubo=ルボキシスタウリン)
【0068】
【
図4】ルボキシスタウリンゲル剤またはプラセボで処置した対象における試験領域のInvestigator Dynamic Grading Assessment (IDGA)の結果を示すグラフ。ゲル剤として製剤化された3つの用量(0.1%、0.5%または1.0%)のルボキシスタウリンゲル剤を投与した。y軸はIDGAスコア(表2に示す)を示す。標準偏差を示すエラーバーとともに、全ての対象に由来する全ての試験部位の平均値をプロットした。(Rubox=ルボキシスタウリン)
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の詳細な説明
タンパク質のタンパク質キナーゼC(PKC)ファミリーは、例えばPKCα、PKCβ(PKCβ1およびPKCβ2)、PKCγ、PKCδ、PKCε、PKCζ、PKCι、PKCθおよびPKCηを含む少なくとも11種の異なるアイソフォームを含むセリン/スレオニンキナーゼ群である。PKCβおよびPKCαの両方は皮膚において発現する;しかしながら、PKCβはメラニン形成細胞において発現するのみであり;一方PKCαはメラニン形成細胞、ケラチン生成細胞および線維芽細胞において発現する。皮膚色素沈着過剰障害は、皮膚の1以上の領域に増加した色素(個体の正常または平均皮膚色素と比較した増加)を産生する、メラニンの全体的または局所的増加(個体の正常または平均皮膚色素と比較した増加)により特徴付けられる。チロシナーゼはメラニン生合成における第一かつ律速段階を媒介し、PKCβによるリン酸化により活性化される。
【0070】
本発明は、選択的PKCβ阻害剤(例えば本明細書に記載の化合物、例えば式Iの化合物、式IIの化合物またはルボキシスタウリン)の局所または非全身的(例えば局所、皮内、皮下)投与を用いた色素沈着過剰状態の新規な処置方法を提供する。非選択的PKC阻害剤であるビスインドリルマレイミド(Bis)が文献に記載されている(例えばPark ら(2004) J of Investigative Dermatology 122: 159-166; および米国特許第5962417号)が、本発明の化合物は選択的PKCβ阻害剤(例えば本明細書に記載の化合物、例えば式Iの化合物、式IIの化合物またはルボキシスタウリン)である。BisはいくつかのPKCアイソフォームの活性を阻害し、例えばBisはPKCβ IC50=18nM;PKCα IC50=8.4nM;およびPKCζ IC50=5.8μMを有する)(Toullec, D.ら 1991. J. Biol. Chem. 266: 15771-15781. PMID: 1874734; Martiny-Baron, G.ら 1993. J. Biol. Chem. 268: 9194-9197. PMID: 8486620; Kiss, Z.ら 1995. Biochim. Biophys. Acta. 1265: 93-95. PMID: 7857990; Zhou, T.ら 1999. Nat. Med. 5: 42-48. PMID: 9883838、参照により各々の内容を本明細書に包含させる)。対照的に、ルボキシスタウリンは選択的かつ強力なPKCβ1およびPKCβ2の阻害剤である(それぞれ、IC50=4.7および5.9nM)が、他のPKCアイソフォームα、γ、δ、ε、ζおよびηについてのIC50値はそれぞれ、360nM、300nM、250nM、600nM、>100,000nMおよび52nMである(Jirousek, M.R., Gillig, J.R., Gonzalez, C.M.ら (S)-13-[(Dimethylamino)methyl]-10,11,14,15-tetrahydro-4,9:16,21-dimetheno-1H,13H-dibenzo[e,k]pyrrolo[3,4-h][1,4,13]oxadiazacyclohexadecene-1,3(2H)-dione (LY333531) and related analogues: Isozyme selective inhibitors of protein kinase Cβ. J Med Chem 39 2664-2671 (1996)、参照により各々の内容を本明細書に包含させる)。
【0071】
Bisのような非選択的PKCβ阻害剤は、他のPKCアイソフォームの阻害による副作用をもたらし得る。例えばη、δおよびαのようないくつかのPKCアイソフォームは、ケラチン生成細胞増殖および分化の調節において役割を果たすと考えられている(例えばDenning MFら, Cell Growth Differ. 1995: 6(2):149-57; Kashiwagi Mら, Biochem. 2002 Dec; 132(6): 853-7; Seo Hら, Experimental & Molecular Medicine (2004) 36, 292-299; doi:10.1038/emm.2004.40; Bollag Wら, Journal of Investigative Dermatology (2009) 129, 2330-2332. doi:10.1038/jid.2009.165; Cabodi Sら, Molecular Cell, Volume 6, Issue 5, November 2000, Pages 1121-1129)。従って、Bisのような非選択的PKC阻害剤は、ケラチン生成細胞増殖、分化および行動に対する効果の可能性を含む、オフターゲット効果を有し得る。
【0072】
本明細書に記載の方法における使用のための典型的な化合物は、ルボキシスタウリン(米国特許第5710145号および米国特許第5559228号も参照、これらは参照により各々の内容を本明細書に包含させる)である。ルボキシスタウリンは468.546g/molの分子量を有し、これは、約500g/mol以上の分子量の化合物が一般に局所送達に適合しないと考えられるため、局所または非全身投与(例えば局所投与)のためには比較的大きな化合物である(Bos JDら (2000) Exp Dermatol. 9(3):165-9)。さらに、ルボキシスタウリンは溶解性が乏しく、鮮やかな橙色であり、化合物の局所投与にさらなる課題を追加している。
【0073】
定義
本明細書において使用される「色素沈着過剰状態」または「色素沈着過剰障害」または「色素沈着過剰疾患」は、個体の正常な皮膚色の全体的または局所的増加により特徴付けられる状態を指す。皮膚色素沈着過剰障害は例えば肝斑、炎症後色素沈着過剰、円盤状紅斑性狼瘡および他の形態の増加した上皮メラニン沈着を含む。色素沈着過剰状態はまた、皮膚の1以上の領域の色素沈着が不必要である、または他の点で過剰な着色として特徴付けられる状態を含み得る。色素沈着過剰状態は、メラニン沈着により媒介される色素沈着過剰状態を含む。
【0074】
本明細書において使用される「選択的PKCβ阻害剤」は、PCKアイソフォームβ(PKCβ1および/またはPKCβ2)に対して特異的な化合物を示す。選択的PKCβ阻害剤は、少なくとも1つの他のPKCアイソフォームと比較して、PKCβに対する高い特異性を有する。ある実施態様において、選択的PKCβ阻害剤は、2以上の他のPKCアイソフォーム(例えばPCKα、PKCγ)と比較して、PKCβに対する高い特異性を有する。ある実施態様において、選択的PKCβ阻害剤は、PKCα、PKCγ、PKCδ、PKCε、PKCζ、PKCι、PKCθおよびPKCηと比較して、PKCβに対する高い特異性を有する。選択的PKCβ阻害剤は、他の非PCKβアイソフォーム(例えばPCKα)の活性を阻害し得る;しかしながら、非PKCβアイソフォームに対する阻害活性は、PKCβ(PKCβ1および/またはPKCβ2)の化合物阻害活性に対して絶対的および相対的に高い。
【0075】
本明細書において使用される「非全身的」は、循環系への導入以外の投与経路を指す。非全身投与は結果的に投与薬物を循環系にもたらし得るが、投与は循環系以外になされる。
【0076】
本明細書において使用される用語「患者」、「対象」、「個体」および「宿主」は、色素沈着過剰状態(例えば選択的PKCβ-阻害剤反応性色素沈着過剰状態またはPKCβ介在性色素沈着過剰状態、例えば肝斑)を有するまたは有することが疑われるヒトまたは非ヒト動物を指す。ある実施態様において、対象はヒトである。ある実施態様において、対象は哺乳動物である。ある実施態様において、対象は齧歯類以外の哺乳動物である。
【0077】
本明細書において使用される、本明細書に記載されるような状態または疾患、例えば色素沈着過剰状態(例えば選択的PKCβ-阻害剤反応性色素沈着過剰状態またはPKCβ介在性色素沈着過剰状態、例えば肝斑)を「処置する(treat)」および「処置する(treating)」とは、状態またはその1以上のその症状の進行、重篤度および/または期間の低減または改善を指す。
【0078】
用語「治療効果」は、本明細書に記載の化合物または組成物の投与によりもたらされる、動物、特に哺乳動物、およびより具体的にはヒトにおける有益な局所的または全身的効果を指す。語句「治療有効量」または「有効量」は、色素沈着過剰状態(例えば選択的PKCβ-阻害剤反応性色素沈着過剰状態またはPKCβ介在性色素沈着過剰状態、例えば肝斑)を合理的な利益/リスク比で処置するのに有効な本明細書に記載の化合物または組成物の量を指す。このような物質の治療有効量は処置される対象および疾患状態、病変の大きさおよび皮膚の状態、対象の年齢、疾患状態の重篤度、投与方法などによって異なり、これらは当業者により容易に決定され得る。
【0079】
本明細書において使用される用語「予め決定された皮膚の領域」は、対象の皮膚の領域、例えば健常な皮膚の領域、または本明細書に記載の状態、例えば本明細書に記載の色素沈着過剰状態(例えば肝斑)または不必要な色素沈着過剰状態を有する皮膚の領域を指す。いくつかの実施態様において、予め決定された皮膚の領域は、例えば皮膚の領域の色量、例えば紅斑または色素沈着の測定に基づいて、選定、例えば選択または特定される。いくつかの実施態様において、予め決定された皮膚の領域は、例えば皮膚の領域に隣接する領域における紅斑または色素沈着の測定に基づいて、選定、例えば選択または特定される。皮膚における色量は、例えば比色計、および例えば本明細書に記載のグレード分けにより測定され得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるように、皮膚における色量をグレード分けするために、Individual Typology Angle (ITA)が使用される。他の実施態様において、本明細書に記載されるように、皮膚における色量をグレード分けするために、Investigator Dynamic Grading Assessment (IDGA)が使用される。
【0080】
選択的PKC-β阻害剤
本発明は、本明細書に記載の疾患または障害(例えば色素沈着過剰状態)を処置するための使用のためのPKC-β阻害剤に関する。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤は、ビスインドリルマレイミド、フタルイミドまたはその誘導体を含む。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤は、式(I):
【化1】
〔式中、
Wは-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-、C
2-C
6アルキレン、置換アルキレン、C
2-C
6アルケニレン、置換アルケニレン、アリール、アリール(CH
2)
mO、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル(CH
2)
mO、-NR
3-、-N(O)R
3-、-C(O)NH-または-NHC(O)-;
XおよびYの各々は独立して、C
1-C
4アルキレン、置換アルキレンであるか、またはX、YおよびWは結合して-(CH
2)
n-AA-を形成し;
各R
1は独立して、水素、ハロ、C
1-C
4アルキル、ヒドロキシル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、ニトロ、-NR
4R
5、または-NHC(O)(C
1-C
4アルキル)であり;
R
2は水素、-CH
3C(O)、-NH
2またはヒドロキシルであり;
R
3は水素、(CH
2)
mアリール、C
1-C
4アルキル、-C(O)O(C
1-C
4アルキル)、-C(O)NR
4R
5、-(C=NH)NH
2、-S(O)(C
1-C
4アルキル)、-S(O)
2(NR
4R
5)または-S(O)
2(C
1-C
4アルキル)であり;
各R
4およびR
5は独立して、水素、C
1-C
4アルキル、フェニル、ベンジルであるか、R
4およびR
5はそれらが結合する窒素と一体となって飽和または不飽和5員環または6員環を形成し;
AAはアミノ酸残基であり;
各mは独立して、0、1、2または3であり;そして
nは独立して、2、3、4または5である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0081】
いくつかの実施態様において、X-W-Yは、さらに置換されていても置換されていなくてもよい4~30個の原子を含む。いくつかの実施態様において、X-W-Yは、さらに置換されていても置換されていなくてもよい5個の原子、6個の原子、7個の原子、8個の原子、9個の原子、10個の原子、11個の原子、12個の原子、13個の原子、14個の原子、15個の原子、16個の原子、17個の原子、18個の原子、19個の原子、20個の原子、21個の原子、22個の原子、23個の原子、24個の原子、25個の原子、26個の原子、27個の原子、28個の原子、29個の原子または30個の原子を含む。いくつかの実施態様において、X-W-Yはさらに置換されていても置換されていなくてもよい10~30個の原子を含む。いくつかの実施態様において、X-W-Yはさらに置換されていても置換されていなくてもよい20~30個の原子を含む。
【0082】
いくつかの実施態様において、R1およびR2の各々は独立して、水素である。いくつかの実施態様において、XおよびYの各々は独立して、アルキレンまたは置換アルキレンである。いくつかの実施態様において、Wは置換アルキレン、-O-、-S-、-C(O)NH-、-NHC(O)-またはNR3である。いくつかの実施態様において、R1およびR2の各々は独立して、水素であり、XおよびYの各々は独立して、アルキレンまたは置換アルキレンであり、Wは置換アルキレン、-O-、-S-、-C(O)NH-、-NHC(O)-またはNR3である。
【0083】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
【化2】
〔式中、
Zは-(CH
2)
p-または-(CH
2)
p-O-(CH
2)
pであり;
R
6はヒドロキシル、-SH、C
1-C
4アルキル、(CH
2)
mアリール、-NH(アリール)、N(CH
3)(CF
3)、NH(CF
3)または-NR
4R
5であり;
R
4は水素またはC
1-C
4アルキルであり;
R
5は水素、C
1-C
4アルキルまたはベンジルであり;
pは0、1または2であり;そして
各mは独立して、2または3である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0084】
いくつかの実施態様において、mは2である。いくつかの実施態様において、mは3である。いくつかの実施態様において、ZはCH2である。いくつかの実施態様において、R6はNH2、NH(CF3)またはN(CH3)2である。いくつかの実施態様において、ZはCH2であり、R6はNH2、NH(CF3)またはN(CH3)2である。いくつかの実施態様において、mは2であり、ZはCH2であり、R6はNH2、NH(CF3)またはN(CH3)2である。
【0085】
他の実施態様において、式(I)の化合物は式(Ib):
【化3】
〔式中、
Zは-(CH
2)
p-であり;
R
6はN(CH
3)(CF
3)、NH(CF
3)または-NR
4R
5であり;
R
4およびR
5の各々は独立して、水素またはC
1-C
4アルキルであり;
R
5は水素、C
1-C
4アルキルまたはベンジルであり;
pは0、1または2であり;そして
各mは独立して、2または3である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0086】
いくつかの実施態様において、mは2である。いくつかの実施態様において、mは3である。いくつかの実施態様において、pは1または2である。いくつかの実施態様において、pは1である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、R6は-NR4R5であり、R4およびR5の各々は独立して、C1-C4アルキル(例えばCH3)である。いくつかの実施態様において、R6はN(CH3)2である。いくつかの実施態様において、mは2であり、pは1である。いくつかの実施態様において、mは2であり、pは1であり、R6はN(CH3)2である。
【0087】
他の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ic):
【化4】
〔式中、
R
6はN(CH
3)(CF
3)、NH(CF
3)または-NR
4R
5である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0088】
いくつかの実施態様において、R6は-NR4R5であり、R4およびR5の各々は独立して、C1-C4アルキル(例えばCH3)である。いくつかの実施態様において、R6はN(CH3)2である。
【0089】
他の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Id):
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、式(Id)の化合物は、9-[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,10,11-テトラヒドロ-9H,18H-5,21:12,17-ジ(メテノ)ジベンゾ[e,k]ピロロ[3,4-h][1,2,13]オキサジアザシクロヘキサデシン-18,20-ジオン、例えばルボキシスタウリンまたはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0090】
他の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ie):
【化6】
〔式中、
AはN(CH
3)
2部分の対イオンである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、式(Ie)の化合物は、9-[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,10,11-テトラヒドロ-9H,18H-5,21:12,17-ジ(メテノ)ジベンゾ[e,k]ピロロ[3,4-h][1,2,13]オキサジアザシクロヘキサデシン-18,20-ジオン塩、例えばルボキシスタウリン塩またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0091】
いくつかの実施態様において、Aは酢酸、安息香酸、臭素、炭酸、塩素、クエン酸、フッ素、フマル酸、グルコン酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素、乳酸、ホスホン酸、リン酸、メタンスルホン酸、スルホン酸、酒石酸またはその塩である。いくつかの実施態様において、Aは酢酸、安息香酸、クエン酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、メタンスルホン酸、酒石酸、またはその塩である。いくつかの実施態様において、Aはメタンスルホン酸またはその塩である。
【0092】
他の実施態様において、式(I)の化合物は、式(If):
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0093】
いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤(例えば式(If)の化合物)は9-[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,10,11-テトラヒドロ-9H,18H-5,21:12,17-ジ(メテノ)ジベンゾ[e,k]ピロロ[3,4-h][1,2,13]オキサジアザシクロヘキサデシン-18,20-ジオンメシレート、例えばルボキシスタウリンメシレートまたはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0094】
式(I)の化合物(例えば式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)または式(If)の化合物)は、溶媒和物、例えば水(すなわち、水和物)、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどとの溶媒和物として存在し得る。溶媒和物の混合物もまた、製造され得る。溶媒和物の供給源は、化合物の合成中、例えば精製(例えば結晶化)または精製(例えば結晶化)の準備における溶媒、またはこのような溶媒に付随する溶媒に由来し得る。ある実施態様において、式(I)の化合物(例えば式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)または式(If)の化合物)は、一水和物または三水和物として存在する。
【0095】
いくつかの実施態様において、式(I)のPKC-β阻害剤は、式(I)の化合物の立体異性体またはラセミ体であり得る。特定の実施態様において、式(If)のPKC-β阻害剤は、式(If-1)または式(If-2):
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤(例えば式(I)の化合物)は、(9S)-9[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,10,11-テトラヒドロ-9H,18H-5,21:12,17-ジ(メテノ)ジベンゾ[e,k]ピロロ[3,4-h][1,2,13]オキサジアザシクロヘキサデシン-18,20-ジオンメシレート(例えば式(If-1))もしくは(9R)-9[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,10,11-テトラヒドロ-9H,18H-5,21:12,17-ジ(メテノ)ジベンゾ[e,k]ピロロ[3,4-h][1,2,13]オキサジアザシクロヘキサデシン-18,20-ジオンメシレート(例えば式(If-2))、例えばルボキシスタウリンメシレートまたはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0096】
式(I)の化合物(例えば式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)または式(If)の化合物)の製造は、全体の参照により本明細書に包含させる米国特許第5,552,396号および米国特許第6,015,807号に記載の方法により達成され得る。しかしながら、式(I)の化合物(例えば式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)または式(If)の化合物)の製造は、当業者に既知の他のプロトコルまたは方法により達成され得る。
【0097】
いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤は式(II):
【化9】
〔式中、
各R
1は独立して、水素、ハロ、C
1-C
4アルキル、ヒドロキシル、C
1-C
4アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、NR
4R
5または-NHC(O)(C
1-C
4アルキル)であり;
R
2は水素、-CH
3C(O)、-NH
2、またはヒドロキシルであり;
各R
4およびR
5は独立して、水素、C
1-C
4アルキル、フェニル、ベンジルであるか、R
4およびR
5はそれらが結合する窒素と一体となって飽和または不飽和5員環または6員環を形成し;
R
7は水素またはC
1-C
4アルキルであり;
R
8は各々が1以上のR
9により置換されシクロアルキルまたはヘテロシクリルであり;
R
9は、各々が場合により1以上のR
10により場合により置換されていてよいC
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり;
各R
10はハロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、シアノまたはニトロであり;そして
各mは独立して、0、1、2または3である〕
の化合物または薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0098】
いくつかの実施態様において、各mは0である。
【0099】
いくつかの実施態様において、R2は水素である。
【0100】
いくつかの実施態様において、R7はC1-C4アルキル(例えばメチルまたはエチル)である。いくつかの実施態様において、R7はメチルである。
【0101】
いくつかの実施態様において、R8はヘテロシクリルである。いくつかの実施態様において、R8は含窒素ヘテロシクリルである。いくつかの実施態様において、R8は6員含窒素ヘテロシクリルである。いくつかの実施態様において、R8はピペリジニル(例えば1、4-ピペリジニル)である。
【0102】
いくつかの実施態様において、R9はヘテロアリールアルキルである。いくつかの実施態様においてR9はnが1、2、3または4である(CH2)n-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9は(CH2)-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9は2-(CH2)-ピリジルである。
【0103】
いくつかの実施態様において、式(II)の化合物は、式(IIa):
【化10】
〔式中、
R
2は水素、-CH
3C(O)、-NH
2、またはヒドロキシルであり;
R
7は水素またはC
1-C
4アルキルであり;
R
9はC
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、ハロ、シアノまたはニトロであり;
R
9aは場合により1以上のR
10で置換されていてよいアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり;そして
各R
10は独立して、ハロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、シアノまたはニトロである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0104】
いくつかの実施態様において、各mは0である。
【0105】
いくつかの実施態様において、R2は水素である。
【0106】
いくつかの実施態様において、R7はC1-C4アルキル(例えばメチルまたはエチル)である。いくつかの実施態様において、R7はメチルである。
【0107】
いくつかの実施態様において、R9aはヘテロアリールアルキルである。いくつかの実施態様において、R9aは、nが1、2、3または4である(CH2)n-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9aは(CH2)-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9aは2-(CH2)-ピリジルである。
【0108】
いくつかの実施態様において、式(II)の化合物は式(IIb):
【化11】
〔式中、
R
9aは場合により1以上のR
10で置換されていてよいアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり;
各R
10は独立して、ハロ、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、シアノまたはニトロである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0109】
いくつかの実施態様において、R9aはヘテロアリールアルキルである。いくつかの実施態様において、R9aはnが1、2、3または4である(CH2)n-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9aは(CH2)-ピリジルである。いくつかの実施態様において、R9aは2-(CH2)-ピリジルである。
【0110】
いくつかの実施態様において、式(II)のPKC-β阻害剤は式(IIc):
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤(例えば式(II)の化合物)は3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-4-(1-(1-(ピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-4-イル)-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(例えば式(IIc))、例えばLY-317615またはエンザスタウリンまたはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤(例えば式(II)の化合物)はエンザスタウリン塩酸塩である。
【0111】
いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤は式(III):
【化13】
〔式中、
X
1およびX
2の各々は独立して、-O-、-NR
4-または-S-であり;
A
1およびA
2の各々は独立して、各々が場合により1以上のR
9で置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールであり;
R
2は水素、-CH
3C(O)、-NH
2、またはヒドロキシルであり;
R
4は水素またはC
1-C
4アルキルであり;そして
R
9はC
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、ハロ、シアノまたはニトロである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0112】
いくつかの実施態様において、X1およびX2の1つは独立して、-NR4-である。いくつかの実施態様において、X1およびX2の各々は独立して、-NR4-である。いくつかの実施態様において、X1およびX2の各々は独立して、-NH-である。
【0113】
いくつかの実施態様において、A1およびA2の1つは独立して、アリールである。いくつかの実施態様において、A1およびA2の各々は独立して、アリールである。いくつかの実施態様において、A1およびA2の各々は独立して、フェニルである。いくつかの実施態様において、A1およびA2の各々は独立して、1つのR9で置換されたフェニルである。いくつかの実施態様において、A1およびA2の各々は、パラ位が1R9で置換されたフェニルである。いくつかの実施態様において、R9はハロ(例えばフルオロ)である。
【0114】
いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤は式(IIIa):
【化14】
〔式中、
X
1およびX
2の各々は独立して、-O-、-NR
4-または-S-であり;
R
2は水素、-CH
3C(O)、-NH
2またはヒドロキシルであり;
R
4は水素またはC
1-C
4アルキルであり;そして
R
9aおよびR
9bの各々はC
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4ハロアルキル、ハロ、シアノまたはニトロである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0115】
いくつかの実施態様において、X1およびX2の1つは独立して、-NR4-である。いくつかの実施態様において、X1およびX2の各々は独立して、-NR4-である。いくつかの実施態様において、X1およびX2の各々は独立して、-NH-である。
【0116】
いくつかの実施態様において、各フェニル環は1つのR9aおよび1つのR9bで置換される。いくつかの実施態様において、各フェニル環はパラ位で1つのR9aおよび1つのR9bで置換される。いくつかの実施態様において、R9aおよびR9bの1つはハロ(例えばフルオロ)である。いくつかの実施態様において、R9aおよびR9bの各々はハロ(例えばフルオロ)である。
【0117】
いくつかの実施態様において、式(III)のPKC-β阻害剤は、式(IIIb):
【化15】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。いくつかの実施態様において、PKC-β阻害剤(例えば式(III)の化合物)は、5,6-ビス(4-フルオロフェノキシ)イソインドリン-1,3-ジオン(例えば式(IIIb))、例えばCGP 53353、CG 53353またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、ラセミ体もしくは溶媒和物である。
【0118】
本明細書に記載の他のPKCβ阻害剤は、例えばParkら (1999) Protein Kinase C- β Activates Tyrosinase by Phosphorylating Serine Residues in Its Cytoplasmic Domain. JBC Vol. 274, No. 23, Issue of June 4, pp. 16470-16478;およびParkら (2004) The receptor for activated C-kinase-I (RACK-I) anchors activated PKC-β on melanosomes. Journal of Cell Science 117 (16) p. 3659に記載のPKCβ偽基質を含む。典型的なPKCβ偽基質は、例えばアミノ酸配列Glu-Asp-Tyr-His-Ser-Leu-Tyr-Gln-Ser-His-Leu(配列番号1)を含むアミノ酸、アミノ酸配列Glu-Asp-Tyr-His-Ser-Leu-Tyr-Gln-Ser-His-Leu(配列番号1)から本質的に成るアミノ酸;およびアミノ酸配列Glu-Asp-Tyr-His-Ser-Leu-Tyr-Gln-Ser-His-Leu(配列番号1)から成るアミノ酸を含む。配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%の相同性を有するPKCβ偽基質もまた、企図される。
【0119】
化学的定義
特定の官能基および化学用語の定義を、下により詳細に記載する。化学元素は元素周期表、CAS version、Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed中表紙により特定され、特定の官能基は一般に、それらの中に記載のとおり定義される。さらに、有機化学の一般則、ならびに特定の官能基部分および反応性は、Thomas Sorrell, Organic Chemistry, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; and Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載される。
【0120】
特に断らない限り、本明細書に示された構造は、その構造の全ての異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または配座))形態;例えば各非対称中心についてのRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体ならびにZおよびE配座異性体を含むこともまた意図する。したがって、本化合物の単一の立体異性体異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何(または配座)混合物は、本発明の範囲内である。特に断らない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内である。さらに、特に断らない限り、本明細書に示された構造は、1以上の同位体富化した原子の存在のみが異なる化合物を含むこともまた意図する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換または13Cもしくは14Cに富化した炭素による炭素の置換を含む本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば分析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブまたは本発明による治療剤として有用である。
【0121】
いくつかの実施態様において、特定のエナンチオマーが好ましい場合、対応するエナンチオマーが実質的に存在せずに提供され得て、「光学に富化した(optically-enriched)」とも称され得る。本明細書で使用される「光学に富化した」は、1つのエナンチオマーの割合が著しく高い化合物が製造されることを意味する。特定の実施態様において、化合物は少なくとも約90重量%の好ましいエナンチオマーで製造される。他の実施態様において、化合物は少なくとも95重量%、98重量%、99重量%または99.9重量%の好ましいエナンチオマーで製造される。好ましいエナンチオマーは、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成および結晶化を含む当業者に既知の任意の方法によりラセミ混合物から単離され得るか、不斉合成により製造される。例えばJacquesら, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen, et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L. Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw Hill, NY, 1962); Wilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照。
【0122】
本明細書において使用される用語「アルキル」は、本明細書においてC1-C10アルキル、C1-C6アルキルおよびC1-C4アルキルとそれぞれ称される直鎖または分枝の1~10個、1~16個または1~4個の炭素原子基のような、飽和環式、直鎖または分枝炭化水素を表す。アルキル基の例は、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、sec-ペンチル、イソ-ペンチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシルなどを含む。
【0123】
本明細書において使用される用語「アルキレン」は、二価のアルキル基を指す。典型的なアルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレンなどである。
【0124】
本明細書において使用される用語「アルケニル」および「アルキニル」は当分野で認識されており、上記アルキルと鎖長および可能性のある置換基において類似するが、少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基を指す。典型的なアルケニル基は、限定されないが、-CH=CH2および-CH2CH=CH2を含む。用語「アルケニレン」および「アルキニレン」は、それぞれ二価のアルケニル基およびアルキニル基を指す。
【0125】
本明細書において使用される用語「アルコキシ」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルコキシ基(例えばC1-C6アルキル-O-) (すなわち、C1-C6アルコキシ)を指す。アルコキシ基の例は、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシまたはヘキシルオキシなどのような基である。
【0126】
本明細書において使用される用語「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である単環式、二環式または多環式炭化水素環系を指す。代表的なアリール基は、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルのような全体的な芳香環系ならびにインダニル、フタルイミジル、ナフトイミジルまたはテトラヒドロナフチルなどのような、芳香族炭素環が1以上の非芳香族炭素と縮合した環系を含む。
【0127】
本明細書において使用される用語「シクロアルキル」は、各環が完全に飽和である、または1以上の不飽和の単位を含むが芳香族性の環が存在しない単環式または縮合、スピロ縮合および/または架橋二環式または多環式炭化水素環系を指す。代表的なシクロアルキル基は、シクロペンチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0128】
本明細書において使用される用語「ハロ」および「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)またはヨウ素(ヨード、-I)を指す。
【0129】
本明細書において使用される用語「ハロアルキル」は、1以上のハロゲン基で置換されたアルキル基、例えばCF3を指す。
【0130】
本明細書において使用される用語「ヒドロキシル」および「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0131】
本明細書において使用される用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環が芳香族であり、かつヘテロ原子を含み;他の環がヘテロシクリルではない単環式、二環式または多環式環系を指す。代表的なヘテロアリールは、(i)各環がヘテロ原子を含み、芳香族である、例えばイミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニル;(ii)各環が芳香族またはシクロアルキルであり、少なくとも1つの芳香環がヘテロ原子を含み、少なくとも1つの他の環が炭化水素環である、または例えばインドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、ピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オン、5,6,7,8-テトラヒドロキノリニルおよび5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニル;(iii)各環が芳香族またはシクロアルキルであり、少なくとも1つの芳香環が他の芳香環と橋頭のヘテロ原子を共有する、例えば4H-キノリジニルである、環系を含む。特定の実施態様において、ヘテロアリールは、5個または6個の環原子を含み、環原子の1個、2個、3個または4個が独立して、N、OおよびSから選択される、単環式または二環式環である。
【0132】
本明細書において使用される用語「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、アリールおよびヘテロアリールが本明細書に記載のものである、(アリール)アルキル基または(ヘテロアリール)アルキル基をそれぞれ指す。
【0133】
本明細書において使用される用語「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの環が飽和または一部不飽和(しかし芳香族ではない)であり、ヘテロ原子を含む単環式または縮合、スピロ縮合および/または架橋二環式および多環式環系を指す。代表的なヘテロシクリルは、(i)全ての環が非芳香族であり、少なくとも1つの環がヘテロ原子を含む、例えばテトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニル;(ii)少なくとも1つの環が非芳香族であり、ヘテロ原子を含み、少なくとも1つの他の環が芳香族炭素環である、例えば1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル;(iii)少なくとも1つの環が非芳香族であり、ヘテロ原子を含み、少なくとも1つの他の環が芳香族であり、ヘテロ原子を含む、例えば3,4-ジヒドロ-1H-ピラノ[4,3-c]ピリジンおよび1,2,3,4-テトラヒドロ-2,6-ナフチリジンである、環系を含む。特定の実施態様において、ヘテロシクリルは、環の各々が3~7個の環原子を含み、環原子の1個、2個、3個または4個が独立して、N、OおよびSから選択される、単環式または二環式環である。
【0134】
本明細書において使用される用語「ニトロ」は、-NO2基を指す。
【0135】
本明細書に記載の本発明の化合物は、「置換された」部分を含み得る。一般に、用語「置換された」は、用語「場合により」が先行するか否かに関わらず、指定された部分の1以上の水素が適切な置換基で置換されていることを意味する。特に断らない限り、「置換された」基は該基の各々の置換可能な位置に適切な置換基を有し得て、任意の所定の構造における1を超える位置が特定の基から選択される1を超える置換基で置換され得るとき、置換基は各位置で同一であるかまたは異なることがある。広範な態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、カルボシクリルおよびヘテロシクリル、芳香族および非芳香族置換基(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらのいずれもそれ自体がさらに置換されていてよい)、ならびにハロゲン、カルボニル(例えばアルデヒド、ケトン、エステル、カルボキシルまたはホルミル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオカルボキシレート、またはチオホルメート)、アミノ、-N(Rb)(Rc) (ここで、各RbおよびRcは独立して、HまたはC1-C6アルキル、シアノ、ニトロ、-SO2N(Rb)(Rc)、-SORdおよびS(O)2Rd(ここで、各Rb、RcおよびRdは独立して、HまたはC1-C6アルキルである)である)を含む。例示的な置換基は、例えば上記の置換基を含む。
【0136】
許容できる置換基は、適切な有機化合物について1以上かつ同一または異なるものであり得る。本発明は、いかなる方法においても有機化合物の許容できる置換基により限定されることを意図しない。「置換」または「置換された」は、このような置換基が置換される原子およびその置換基の許容される原子価に従い、かつその置換が、例えば転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない安定な化合物をもたらすという条件を含むことが、さらに理解される。
【0137】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される塩」は、堅実な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを伴わないヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適切であり、合理的な利益/リスク比に見合った塩を指す。薬学的に許容される塩は、当分野において既知である。例えばBergeらは、参照により本明細書に包含させるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機酸および有機酸ならびに塩基に由来する塩を含む。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロンのような有機酸から形成される、またはイオン交換のような当分野において知られる他の方法を用いることにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ボロン酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、コハク酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。適切な塩基に由来する塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1-4アルキル)4
-塩を含む。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などを含む。適切であるとき、さらなる薬学的に許容される塩は、塩化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸のような対イオンを用いて形成される非毒性アンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオンを含む。
【0138】
医薬組成物
医薬組成物は、1以上の本明細書に記載の化合物および1以上の生理学的または薬学的に許容される担体を含む。用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される材料、組成物またはビークル、例えば任意の対象組成物またはその成分の運搬または輸送に関与する液体もしくは固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル材料を指す。各担体は、対象組成物およびその成分に適合し、患者に無害であるという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として作用し得る材料のいくつかの例は、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのようなデンプン;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテートのようなセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐薬ワックスのような賦形剤;(9)ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)医薬製剤に使用される他の非毒性適合物質を含む。
【0139】
本発明の医薬組成物はまた、特に処置の標的が皮膚を含む局所または非全身適用により容易に到達可能である領域または器官を含むとき、局所的または非全身的に、例えば局所的にまたは皮内的に投与され得る。適切な局所または非全身製剤は、皮膚への投与のために容易に製造される。医薬組成物はローション剤、クリーム剤、美容液剤、スプレー剤、ムース剤、エアロゾル剤、エマルジョン剤、ケーキ剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、パッチ剤、ペンシル剤、ウェットティッシュ剤、マスク剤、スティック剤、泡剤、エリキシル剤または濃縮剤として製剤され得る。医薬組成物は発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、日焼け止め剤、抗酸化剤、レチノイドおよび保湿剤から選択される物質を含むように製剤化され得る。
【0140】
例示的な局所および化粧品医薬組成物
本明細書に記載の医薬組成物は、局所投与のために製剤化され得る。いくつかの実施態様において、局所製剤はエマルジョン剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、オイル剤、軟膏剤、エアロゾルスプレーまたは半固体製剤である。いくつかの実施態様において、局所製剤は、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、フルクトオリゴサッカライド、グルコオリゴサッカライド、デキストロース、スクロース、タルク、水、生理食塩水、尿素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ラノニン、ラノニンアルコール、鉱油、ラベンダー油、キンレンカ抽出油、ソルビタンモノオレート、セチルステアリルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、洗剤、スクロースステアレート、スクロースココエート、スクロースジステアレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリオキシプロピレン-15-ステアリルエーテル、グリセロールステアレート、グリセリン、合成鯨ろう、セチルアルコール、ブチルパラベン、プロピルパラベンおよびメチルパラベンから成る群から選択される担体を含む。
【0141】
本明細書に記載の医薬組成物は、化粧品組成物として製剤化され得る。化粧品組成物は、皮膚科学的に許容されるビークルを含み得る。皮膚科学的に許容されるビークルは、水、鉱油、ワセリン、セレシン、ラノニンアルコール、メチルクロロイソチアゾリノンおよびメチルイソチアゾリノンを含み得る。適切な皮膚科学的担体として使用され得る皮膚軟化薬の例は、限定されないが、ステアリルアルコール、モノリシンオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、ミンク油、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、エイコサニルアルコール、ベンジルアルコール、パルミチン酸セチル、ジメチルポリシロキサンのようなシリコーン油、セバシン酸ジ-n-ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノニン、カカオバター、トウモロコシ油、綿実油、獣脂、ラード、オリーブ油、パーム核油、ナタネ油、ベニバナ種油、月見草油、ダイズ油、ヒマワリ種油、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油、落花生油、ヒマシ油、アセチルラノニンアルコール、ワセリン、鉱油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシルおよびミリスチン酸ミリスチルを含む。2以上の皮膚軟化薬が組成物に含まれ得る。皮膚科学的に許容されるビークルは、化粧品組成物の約10重量%~約99.999重量%、例えば約20重量%~約99.999重量%、約40重量%~約90重量%の量で存在し得る。いくつかの態様において、化粧品組成物はまた、化粧品組成物の最大約98%体積、例えば約5~約80%>体積の水を含む。
【0142】
適切な皮膚科学的担体として使用され得る噴射剤の例は、限定されないが、液化可能なガスまたはハロゲン化噴射剤を含む。噴射剤の具体的な例は、ジメチルエーテル、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、プロパン、ブタン、二酸化炭素、亜酸化窒素またはそれらの組合せを含む。組成物中の噴射剤の量は、組成物の約10%~約60重量%であり得る。
【0143】
適切な皮膚科学的担体として使用され得る溶媒の例は、限定されないが、エチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオールまたはその組合せを含む。
【0144】
適切な皮膚科学的担体として使用され得る乳化剤の例は、ノニオン性、アニオン性またはカチオン性乳化剤を含む。適切な乳化剤は、例えばMcCutcheon's Detergents and Emulsifiers, North American Edition, pp. 317-324 (1986)およびICI Handbook, pp. 1673-1686に開示されている。水中油型および油中水型のローション剤およびクリーム剤のような単層エマルジョンスキンケア製品は、化粧品分野で既知であり、本発明において有用である。多層エマルジョン組成物、例えばエマルジョン剤について教示する、参照により本明細書に包含される米国特許番号第4,254,105号および第4,960,764号に開示される水中油中水型もまた、本発明に有用である。一般に、このような単層または多層エマルジョン剤は水、皮膚軟化剤および乳化剤を必須成分として含む。組成物は、約1%>~約10%>(例えば約2%>~約5%>)の乳化剤を含む。エマルジョン剤は、マイクロエマルジョン剤またはナノエマルジョン剤であり得る。
【0145】
適切な皮膚科学的担体として使用される粉末の例は、限定されないが、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム、コロイド性シリカナトリウムポリアクリレート、テトラ(tetre)アルキルおよび/またはトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学修飾したケイ酸マグネシウムアルミニウム、有機修飾モンモリロン粘土、水和ケイ酸アルミニウム、フュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチレングリコールモノステアレートまたはその組合せを含む。
【0146】
本明細書に記載の化粧品組成物は、皮膚、毛および爪に使用するための組成物において従来使用されるさらなる油溶性材料および/または水溶性材料を含み得る。化粧品組成物に含まれ得る他の適切な薬剤の具体的な例は、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、結合剤、増粘剤、粘性修飾剤、緩衝液、防腐剤、中性またはカチオン性脂質、脂質複合体、リポソーム、ポリマー、日焼け止め剤、滑沢剤、抗酸化剤、タンパク質、アミノ酸、芳香剤、香料、油、植物抽出物のような天然抽出物、バター、ビタミン、pH調整剤、吸収剤、他の皮膚科学的に許容される賦形剤およびそれらの組合せを含む。
【0147】
化粧品組成物は、保湿剤または湿潤剤を含み得る。いくつかの例において、化粧品組成物は他の成分、例えば保湿剤、化粧品アジュバント、抗酸化剤、脱色剤、暗色化剤、アンチエイジング剤、除毛剤、整髪剤、ネイルスタイリング剤、日焼け止め剤、界面活性剤、ブリーチ剤、発泡剤、コンディショナー剤、湿潤剤、芳香剤、着色剤、増粘剤、緩衝剤、防腐剤など、およびそれらの混合物と組み合わせられ得る。これらの成分を含むスキンケア組成物は、本化合物、すなわち本明細書に開示される化合物の活性に影響を与えないように製剤化されるべきである。
【0148】
湿潤剤の例は、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、アラントイン、アセトアミンMEA、カラスムギタンパク質、ヒアルロン酸などを含む。それらは単一でまたは組み合わせて使用され得る。防腐剤もまた、化粧品組成物に含まれ得る。
【0149】
防腐剤は、微生物分解を実質的に予防するのに有用である。適切な防腐剤の例は、フェノキシエタノールおよびパラベン、例えばメチルパラベン、エチルパラベンおよびプロピルパラベン;サリチル酸、クロルヘキシジン塩酸塩、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム塩、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、イソチアゾロンなどを含む。防腐剤の他の例は、以下「化粧品ハンドブック」と称するInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, eds. Wenninger and McEwen (CTFA, 7th ed., 1997)の1654-55頁に記載されている。組成物は、約0.01重量%~約20重量%、(より好ましくは、約0.5重量%>~約5重量%)の防腐剤を含み得る。微生物汚染はまた、ガンマ線照射もしくはマイクロフィルター法により、またはプロテアーゼ阻害活性の除去をもたらさない短時間の熱処理により除去され得る。
【0150】
開示される組成物に含まれ得る芳香剤または香気マスク剤の例は、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、サリチル酸メチル、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、シネオール、リナロール、エチルリナロール、バニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シナモン油、ピメント油、シナモンリーフ油、エゴマ油、ヒメコウジ油、クローブ油、ユーカリ油などを含む。
【0151】
開示される組成物に含まれ得る界面活性剤の例は、アルキル硫酸ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびミリスチル硫酸塩ナトリウム、N-アシルサルコシン酸ナトリウム、例えばN-ラウロイルサルコシン酸ナトリウムおよびN-ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素化ココナツ脂肪酸モノグリセリド硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムおよびN-アシルグルタミン酸、例えばN-パルミトイルグルタミン酸、N-メチルアシルタウリンナトリウム塩、N-メチルアシルアラニンナトリウム塩、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;N-アルキルアミノグリセロール、例えばN-ラウリルジアミノエチルグリセロールおよびN-ミリスチルジアミノエチルグリセロール、N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインおよび2-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノニンアルコール、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセロールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PIURONICTM型界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートおよびその組合せを含む。
【0152】
結合剤または増粘剤の例は、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのアルカリ金属塩およびナトリウムカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルカリ金属塩、例えばアルギン酸ナトリウム、プロピレングリコールアルギン酸エステル、ゴム、例えばカラゲナン、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびアラビアゴムのようなゴムおよび合成結合剤、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンを含む。粘性を変化させるために組成物に添加され得る粘稠剤は、ポリアクリレート、例えばポリアクリルアミドのような他のポリマーを含む。他の粘性修飾剤の例は、粘性修飾剤の教示についてその全体を参照することにより本明細書に包含させる「化粧品ハンドブック」の1692~97頁に記載されている。適切な粘性を達成するために、化粧品組成物は約0.01重量%~約20重量%、例えば約0.1重量%>~約5重量%の粘稠剤を含む。
【0153】
着色剤および芳香剤もまた、本明細書に開示される化合物を含む組成物に含まれ得る。皮膚科学的に許容されるビークルは皮膚軟化剤、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、溶媒、噴射剤、粉末またはそれらの組合せを含み得る。化粧品組成物はまた、保湿剤または湿潤剤を含み得る。いくつかの実施態様において、化粧品組成物は、エマルジョン剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、油剤、軟膏剤、エアロゾルスプレーまたは半固体製剤である。
【0154】
投与経路
本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤の対象への投与は局所的または非全身的、例えば局所、皮内、皮下であり得る。ある実施態様において、本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は局所投与される。ある実施態様において、本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は皮内投与される。ある実施態様において、本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は皮下投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は(前記選択的PKCβ阻害剤を含む)パッチを皮膚(例えば色素沈着過剰障害がある皮膚の領域または色素沈着過剰障害がある皮膚の領域の周辺)に接触させることにより投与される。
【0155】
ある実施態様において、例えば本明細書に記載されるような、予め決定された身体の領域、例えば予め決定された皮膚の領域に選択的PKCβ阻害剤を適用することを含む。ある実施態様において、方法は色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に選択的PKCβ阻害剤を適用することを含む。ある実施態様において、方法は色素沈着過剰状態がある皮膚の領域に隣接する領域に選択的PKCβ阻害剤を適用することを含む。ある実施態様において、方法は不必要なまたは他の点で過剰な色素沈着過剰がある顔、腕、背中または他の領域に選択的PKCβ阻害剤を適用することを含む。
【0156】
投与量
選択的PKCβ阻害剤、例えば本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤の毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な医薬的手法により決定され得る。LD50は集団の50%が死に至る用量である。ED50は集団の50%において治療的に有効な用量である。毒性と治療効果の用量比(LD50/ED50)は治療指数である。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物が使用され得るが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を減少させるために、このような化合物を冒された皮膚の部分へ標的化する送達系を設計するよう注意すべきである。
【0157】
任意の化合物について、細胞培養アッセイ(例えばメラニン形成細胞、例えば黒色腫細胞培養アッセイ)から治療有効用量が始めに予測され得る。細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む皮膚におけるレベルを達成するために、動物モデルにおいてある用量が製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。さらに、全身曝露を確認するために、血漿中のレベルが、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0158】
任意の特定の患者についての特定の投与量および処置レジメンは、使用される特定の化合物の活性、年齢、病変の大きさ、病変数、一般的な健康、性別、食習慣、投与時間、薬物の組合せおよび処置医の判断および処置される特定の疾患の重篤度を含む多様な因子に依存することもまた、理解されるべきである。組成物中の選択的PKCβ阻害剤、例えば本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤の量もまた、組成物中の特定の選択的PKCβ阻害剤に依存する。
【0159】
処置方法
別の態様において、本発明は、例えば局所的または非全身的に、例えば局所的にまたは皮内的に、有効量の選択的PKCβ阻害剤、例えば本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤、例えばルボキシスタウリンを対象に投与し、それにより対象を処置することを含む、色素沈着過剰障害(例えば肝斑)を有する対象の処置方法を提供する。
【0160】
ある実施態様において、方法は選択的PKCβ阻害剤を対象に毎日、隔日、毎週または毎月投与することを含む。ある実施態様において、選択的PKCβ阻害剤を対象に約1日2回、約1日1回、約2日毎、約3日毎、約4日毎、約5日毎、約6日毎、約週1回、約隔週、例えば2週間に1回、約月1回、例えば毎月投与することを含む。ある実施態様において、対象は1回以上の以前の化合物の投与、例えば少なくとも2回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、200回、300回または500回の化合物の投与を受けている。ある実施態様において、対象は以前に化合物で処置され、例えば少なくとも1か月間、6か月間、12か月間、24か月間、36か月間または48か月間処置されている。ある実施態様において、方法は1以上の選択的PKCβ阻害剤の連続投与を含み、例えば対象は少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、12回、15回、20回、50回または100回投与される。ある実施態様において方法は1以上の選択的PKCβ阻害剤の連続投与を含み、例えば対象は少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、12回、15回、20回、50回または100回投与される。ある実施態様において、方法は対象に選択的PKCβ阻害剤を約1時間毎、約2時間毎、約3時間毎、約4時間毎、例えば1日に約3~4回投与することを含む。
【0161】
色素沈着過剰障害
本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は、色素沈着過剰障害、例えば皮膚色素沈着過剰障害、例えば肝斑を処置するために使用され得る。ある実施態様において、色素沈着過剰障害は肝斑である。ある実施態様において、色素沈着過剰障害は炎症後色素沈着過剰である。ある実施態様において、色素沈着過剰障害は黒子(例えば老人性色素斑)である。ある実施態様において、色素沈着過剰障害は紫外線(UV)被爆、例えば日光曝露または日焼け反応に関連する。ある実施態様において、色素沈着過剰障害は日焼け反応である。ある実施態様において、色素沈着過剰状態は、肝斑、炎症後色素沈着過剰、円盤状紅斑性狼瘡、植物性光線皮膚炎、黒子(例えば老人性色素斑)、痣、カフェオレ斑、黒色表皮腫、火傷関連性色素沈着過剰、黒子、薬剤誘発性色素沈着過剰(例えばスルホンアミド、テトラサイクリン、NSAID、バルビツレートおよびカルバマゼピン誘発性色素沈着過剰)、傷害誘発性色素沈着過剰、原発性胆汁性肝硬変関連色素沈着過剰、アジソン病関連性色素沈着過剰、色素性母斑、雀卵斑、脂漏性角化症、皮膚癌関連性色素沈着過剰、感染関連性色素沈着過剰(例えば癜風、紅色陰癬)、湿疹、光接触皮膚炎、魚鱗癬、神経線維腫症または紫外線(UV)被爆、例えば日光曝露もしくは日焼け反応に関連する色素沈着過剰から選択される。
【0162】
ある実施態様において、障害は年齢関連障害以外のものである。
【0163】
組み合わせ処置
本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は、1以上のさらなる薬剤、例えば治療剤と組み合わせて投与され得る。1以上のさらなる薬剤は、限定されないが、ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、日焼け止め剤、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛および二酸化チタンを含み得る。本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤は、先のフラクセルレーザー治療、テープストリッピングまたは角質層の化学的除去と組み合わせて投与され得る。これらの処置は本明細書に記載の選択的PKCβ阻害剤の浸透を向上させる。
【実施例0164】
以下の実施例は説明することを目的とし、いかなる場合も限定することを意図するものではない。
【0165】
実施例1.色素沈着の明色化における選択的PKCβ阻害剤ルボキシスタウリンの有効性
以前の研究は、非選択的PKC阻害剤ビスインドリルマレイミド(Bis)PKC-βによりメラニン形成における律速酵素であるチロシナーゼのリン酸化を阻害することにより、その活性を減少させることを示した(例えばParkら (2004) J of Investigative Dermatology 122: 159-166;米国特許第5962417号)。他のPKCアイソフォームが皮膚において多くの役割を果たすのに対し、PKC-βはチロシナーゼのアクティベーターとして皮膚において独占的に機能していると考えられるため、皮膚の傷を明色化するための薬剤は、好ましくは(例えばとりわけ安全性および副作用を減少させるため)βアイソフォームを選択的に阻害する。以下の実施例は、色素沈着の明色化における選択的PKCβ阻害剤ルボキシスタウリンの有効性を示す。
【0166】
簡潔には、8~9週齢のC47 ΒI/6(3匹/群)を、背中の毛を除去するために脱毛した。これらのマウスは黒い毛を有するが、皮膚にメラニン色素沈着を有さない。毛包におけるメラニン形成細胞は毛色に関与する。4%ヒドロキノン(HQ)、100μm(0.0057%)のBisまたは100μm(0.0057%)のルボキシスタウリンを含む局所製剤(DMSO:プロピレングリコール/25:75)を投与のために製造した。全ての化合物およびビークルを、脱毛後19日間、すなわち脱毛後に新たな毛幹が産生される期間中、脱毛した領域に毎日適用した。guard、awl(真皮深くの大きな濾胞または皮下濾胞)、aucheneおよびzig-zag(より表面に近い真皮におけるより小さな濾胞であり、最も多い毛色)の各タイプの代表的な毛を無作為に引き抜き(50本/マウス1匹)、手術用顕微鏡で撮影した。別の解析として、各マウスからの20本の色が暗いおよび明るい毛を、毛幹を含む画素についての「濃淡値」のコンピューター支援解析を実施した。
【0167】
図1に示すように、awl毛は各群内の色の多様性がほとんどなく、色彩は中程度の差異を示し、全ての実験群は対照群より明るく見えた(
図1AおよびB)。4% HQで処置されたZig-zag毛はビークル対象と比較して最小の色差を示したが、Bis処理毛およびルボキシスタウリン処理毛の両方は色彩が顕著に明るく、非常に変動性であった(
図1A、CおよびD)。毛幹内の平均濃淡値はImageJ(NIH)ソフトウェアを用いて決定した。濃淡値は画素数で除した毛幹における全ての画素の濃淡値の合計であり;値は0(白色、色素なし)~255(黒)の範囲である。Awl毛は、対照値の181と比較して、4% HQの168、Bisの168およびルボキシスタウリンの155の濃淡値における平均減少を示した。Zig-zag毛もまた、対照:159と比較して、4% HQ:156;Bis:127;およびルボキシスタウリン:134で処置した全ての群において濃淡値の顕著な平均減少を示した(
図2)。
【0168】
毛明色化の最大次数(最大薬物曝露に起因する)を決定するために、下に示す各群におけるzig-zag毛と上記の中央濃淡値のさらなる比較を実施した。この分析は全ての群において変動性が小さく(より小さな標準偏差)、群間で高い統計学的に有意な差異をもたらした。4% HQ処理した毛は、対照群よりわずかに明るかったが、ルボキシスタウリン処理した毛は、対照および4% HQ毛より明るかった(
図3)。全体的に、本明細書に記載のインビボ実験データは、ルボキシスタウリンは有効な明色化剤であるのみならず、明色化剤としてHQ(例えば現在の処方美白製品において使用される標準的な濃度である4.0%濃度)より顕著に強力である(例えば0.0057%濃度で)ことを示した。
【0169】
実施例2:健常ボランティアで紫外光誘発性メラニン形成におけるルボキシスタウリンゲル剤を評価する臨床治験
健常ボランティアでルボキシスタウリンまたはプラセボのゲル製剤の紫外(UV)光誘発性メラニン形成阻害能を評価するために、治験を実施した。治験に使用されたルボキシスタウリンの製剤は0.1%、0.5%および1.0%ルボキシスタウリンゲル剤を含んだ。本治験の目的の1つは、ルボキシスタウリンゲル剤の局所投与が紫外光誘発性メラニン形成を阻害し得るかどうかを決定することであった。
【0170】
治験デザイン
各対象5処置部位とした。4か所にルボキシスタウリンゲル剤またはビークルを投与し、1か所は未処置のままとした。治験に使用されたルボキシスタウリンは0.1%、0.5%および1.0%ルボキシスタウリンゲル剤であった。対象、例えば健常ボランティアは、3最小紅斑量(MED)のUV照射、すなわち、紅斑、例えば日光皮膚炎を生じ、数日後に日焼けした色になると考えられるUV線量を適用され、これは、春の真昼の1~2時間の日光への曝露とほぼ同等である。各UV照射は、最小紅斑量(MED)で実施した。3回のMED UV照射の後、対象の4か所にルボキシスタウリンゲル剤またはビークルを投与した。処置された4か所およびUV照射したが未処置である1か所を含む5か所を全て、15日間閉塞下においた。
【0171】
予め決定した本治験の第一エンドポイントは、全ての紅斑、例えば日光皮膚炎が消失したと予測された24日目に得られたIndividual Typology Angle (ITA)比色計読み取り値である。皮膚の色、例えば紅斑または色素沈着を定量的に測定するために、比色計を使用した。数字が小さいほど、より暗い、例えばより日焼けした試験領域であることを示すIndividual Typology Angle (ITA)を用いて色素沈着を測定した。
【0172】
本治験の第二エンドポイントは、7日目、14日目および17日目のITA比色計読み取り;7日目、14日目および17日目のInvestigator Dynamic Grading Assessment (IDGA)スコア;および24日目のメラニンについての生検を含んだ。Investigator Dynamic Grading Assessment (IDGA)スコアは盲検観察者により皮膚における色を評価するために使用される測定法であり、表1に示すように、数字が高いほど、より暗い試験領域を示した。
【表1】
【0173】
1日目に、次の部位:胴回りと肩甲骨の間である背中をウッドランプを使用して、同一でない皮膚の色調および傷について、治験に登録される全ての対象を調査した。MED線量適用のために、多孔太陽光シミュレーターを用いて6回のUV線量を、25%増分で増加させながら、時系列的に中背部の左側に適用した。Duoderm包帯を背中の右側に適用した。試験領域を色素沈着、紅斑および比色計についてグレード分けし、読み取り値を取得した。5つの試験品、すなわち、ルボキシスタウリンゲル剤を各対象に適用した。その後対象に、UV曝露、光増感剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬および他の禁止薬を避け、各対象のMED量を決定するためにUV照射の完了16~24時間後に試験施設に戻るように指示した。
【0174】
ルボキシスタウリンゲル剤をヒドロコロイド包帯(DuoDerm)に空けられた穴の中に設置された金属試験容器(内径φ12mm、外径φ14mm)に適用した。約200μlの5つの試験品を試験容器に置かれたろ紙上にピペットで移した。少なくとも1.5cm離れた6x15mmの穴を有するDuoderm包帯を、同一の穴を有する粘着テープで皮膚に固定した。容器自体を粘着テープでその場に固定し、各々の新たな適用前に除去した。各々の新たな適用前に、各試験区域を軟らかいティッシュで穏やかに浄化することにより残っている標品残留物を除去した。部位を7日目、14日目および17日目に評価するまでヒドロコロイド包帯はその場に留まったが、必要なときは、より頻繁に取り換えた。処置/評価をしなかった日には、臨床センターに戻るまで容器およびパッチをそのまま保持するように対象に指示した。対象は、次回の予定された投与機会に臨床センターに戻った。
【0175】
2日目に、少なくとも450ルクスの温色蛍光灯またはタングステン灯のもと、熟練した評価者がUV曝露の反応をグレード分けした。UV照射に対する紅斑応答についてのグレード尺度を表2に示す。MEDは少なくとも2の紅斑グレードを生じたシリーズの最初の曝露部位として定義される。背中の右側に、3 MEDのUV照射を5か所それぞれに適用した。UV照射の直後に、ルボキシスタウリンゲル剤を適用した。
【表2】
【0176】
3日目、4日目、5日目、6日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、15日目、16日目に、以前に適用したルボキシスタウリンゲル剤を除去した。刺激の兆候および症状について試験部位を評価し、その後ルボキシスタウリンゲル剤を再適用した。
【0177】
7日目、14日目、17日目および24日目に、以前に適用したルボキシスタウリンゲル剤を除去し、Duoderm包帯を除去した。15分後、刺激の兆候および症状について試験部位を評価した。紅斑および色素黒化をその後グレード分けし、比色計測定を実施した。各試験部位の交差偏光および非偏光デジタル画像を撮影した。Duoderm包帯およびルボキシスタウリンゲル剤を、7日目および14日目に再適用した。17日目および24日目には、ルボキシスタウリンゲル剤を適用しなかった。24日目に全ての測定値を取得した後、5か所から皮膚生検を得た。
【0178】
結果
全対象から得られたITA読み取り値は、試験領域、例えばルボキシスタウリンゲル剤を適用した領域の大部分が、表3に要約するように7日目、14日目、17日目および24日目においてプラセボより明るいことを示した。7日目において、0.1%または0.5%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた9/12の試験領域はプラセボより明るく(p値0.07);1.0%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた7/12の試験領域はプラセボより明るかった。14日目において、0.1%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた9/12の試験領域はプラセボより明るく(p値0.07);0.5%または1.0%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた、それぞれ7/12および8/12の試験領域はプラセボより明るかった。17日目において、0.1%、0.5%または1.0%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた9/12の試験領域はプラセボより明るかった(p値0.07)。24日目において、0.1%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた6/12の試験領域、0.5%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた9/12の試験領域および1.0%ルボキシスタウリンゲル剤の適用を受けた7/12の試験領域はプラセボより明るかった。
【表3】
【0179】
図4に示すように、7日目、14日目、17日目および24日目の対象における全ての試験領域のIDGA評価は、プラセボに対してルボキシスタウリンゲル剤を適用した試験領域において、統計学的に有意な(p<0.05)より少ない色素沈着、例えばより明るい色の皮膚を示した。より低いIDGA値はより少ない色素沈着を示す(上の表2を参照)。この減少した色素沈着は、紅斑、例えば日光皮膚炎が完全に消失したUV照射後17日目および24日目に最も認識され、治験医の褐色(日焼け)の認知と競合しなかった。
【0180】
本治験において試験されたルボキシスタウリンゲル剤の全ての用量は、閉鎖下で良好に耐容性であった。毒性、適用部位反応または刺激は、いずれの対象においても観察されなかった。
【0181】
本治験から得られる結果は、いくつかの実施態様において、ルボキシスタウリンゲル製剤、例えば少なくとも0.1%ルボキシスタウリンゲル剤の局所適用は、例えばUV照射により誘発される皮膚黒化および色素沈着、例えばメラニン形成を減少させ得ることを示唆する。いくつかの実施態様において、ルボキシスタウリンゲル製剤、例えば少なくとも0.1%ルボキシスタウリンゲル剤の局所適用は、メラニンのチロシナーゼ産生における減少をもたらし得る。
【0182】
参照による包含
本明細書において言及される全ての公報および特許は、各個々の公報または特許が具体的かつ別個に参照により包含されると示されるように、それらの全体を参照することにより本明細書に包含させる。
【0183】
等価物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施態様についての多くの等価物を認識する、または通常の実験を用いることにより確定することができる。このような等価物は、次の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
ローション剤、クリーム剤、美容液剤、スプレー剤、ムース剤、エアロゾル剤、エマルジョン剤、ケーキ剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、パッチ剤、ペンシル剤、ウェットティッシュ剤、マスク剤、スティック剤、泡剤、エリキシル剤または濃縮剤として製剤化される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
ヒドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイド、アゼライン酸、コウジ酸、レチノイド、グリコール酸、L-アスコルビン酸、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート、アントラニル酸、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、ホモサレート、オクティノセイト、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、エカムスル、酸化亜鉛、二酸化チタン、美容剤、色素、芳香剤、日焼け止め剤、発泡性界面活性剤、ビタミン、ヒドロキシ酸、抗酸化剤、レチノイドまたは保湿剤から選択されるさらなる治療剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
色素沈着過剰状態を処置することが、皮膚色素沈着過剰状態に関連する色素沈着または健常もしくは非疾患状態の皮膚色素沈着を処置することを含む、請求項12に記載の使用のための組成物。
色素沈着過剰状態を処置することが、皮膚色素沈着過剰状態に関連する色素沈着過剰を処置することを含み、色素沈着過剰状態が、肝斑、炎症後色素沈着過剰、円盤状紅斑性狼瘡、植物性光線皮膚炎、黒子(例えば老人性色素斑)、痣、カフェオレ斑、黒色表皮腫、火傷関連性色素沈着過剰、薬剤誘発性色素沈着過剰(例えばスルホンアミド、テトラサイクリン、NSAID、バルビツレートおよびカルバマゼピン誘発性色素沈着過剰)、傷害誘発性色素沈着過剰、原発性胆汁性肝硬変関連色素沈着過剰、アジソン病関連性色素沈着過剰、色素性母斑、雀卵斑、脂漏性角化症、皮膚癌関連性色素沈着過剰、感染関連性色素沈着過剰(例えば癜風、紅色陰癬)、湿疹、光接触皮膚炎、魚鱗癬、神経線維腫症、および紫外線(UV)被爆、例えば日光曝露または日焼け反応に関連する色素沈着過剰から選択されるものである、請求項13に記載の使用のための組成物。
対象の皮膚を有する毛髪に局所的に使用される、対象の成長している毛の色素沈着過剰の処置に使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
対象の成長している毛の色素沈着過剰を処置するための治療または化粧品組成物の製造における化合物の使用であって、前記化合物がルボキシスタウリンまたはその塩を含み、かつ抗酸化剤および/またはグリコールをさらに含むものである、使用。
対象における色素沈着過剰を処置するための治療または化粧品組成物の製造における化合物の使用であって、前記化合物がルボキシスタウリンまたはその塩を含み、かつ抗酸化剤および/またはグリコールをさらに含むものである、使用。